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JP5023441B2 - ダイカスト金型用鋼部材の熱処理方法 - Google Patents

ダイカスト金型用鋼部材の熱処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、工具鋼からなり所定以上の質量を有するダイカスト金型用鋼部材の熱処理方法に関する。
従来、熱間ダイス鋼の焼き入れは、マルテンサイト単相化を図るため、以下の条件が必要とされていた。
(1)焼き入れ温度から600℃付近までは、粒界炭化物の析出とパーライト変態とを回避するため、一定以上の冷却速度で急冷する。
(2)更に、ベーナイト変態を回避するため、250〜150℃まで急冷する。
例えば、焼き入れによる歪みや割れを防ぎ、ヒートクラックが生じにくい靭性の高い鋼製の金型を得るため、焼き入れ温度から650〜300℃の温度帯までは、トルースタイトまたは粒界炭化物が析出する冷却速度よりも速い速度で冷却し、その後ポリマー液中で冷却することで、ベーナイトの析出を抑制する金型の焼き入れ方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−182948号公報(第1〜12頁)
しかし、大型化する金型では、冷却速度を速く且つ均一にしにくいため、前記(1)焼き入れ温度から600℃付近まで、粒界炭化物の析出とパーライト変態とを回避するための急冷、および(2)ベーナイト変態を回避するための250〜150℃までの急冷、の双方を満たすことは、困難であった。このため、大型の金型を焼き入れにより強靱化することは、至難であった。
しかも、上記(1)、(2)の双方の条件を満たす焼き入れは、金型の変形量(歪)が大きくなる傾向にあるため、その後で仕上げ加工による修正のための工数が増加する、という問題もあった。
本発明は、背景技術において説明した問題点を解決し、大型のダイカスト金型用鋼部材であっても、確実に強靱化でき且つ歪や割れが生じにくい焼き入れ工程を含むダイカスト金型用鋼部材の熱処理方法を提供する、ことを課題とする。
課題を解決するための手段および発明の効果
即ち、本発明によるダイカスト金型用鋼部材の熱処理方法(請求項1)は、質量が50kg以上であるダイカスト金型用鋼部材に対し、以下の冷却ステップを施す焼き入れ工程と、焼き戻し工程とを施す、ことを特徴とする。
焼き入れ工程の第1冷却ステップ:焼き入れ温度からパーライト変態およびフェライト変態の少なくとも一方が開始し得る温度までの高温度帯において、パーライト相およびフェライト相の析出が回避できる平均冷却速度で冷却する。
焼き入れ工程の第2冷却ステップ:ベーナイト変態開始温度からベーナイト変態終了温度およびマルテンサイト変態終了温度よりも低温度までの低温度帯において、1℃/分以上の平均冷却速度CTで冷却する。但し、平均冷却速度CTは、500℃からマルテンサイト変態開始温度Ms(あるいは、べーナイト変態開始温度Bs)までの平均冷却温度C2Uが5℃/分以上であり、且つこれからマルテンサイト変態終了温度Mf(あるいは、べーナイト変態終了温度Bf)までの平均冷却温度C2Lが1℃/分以上である。
焼き戻し工程:上記焼き入れ工程後に、該焼き入れを施された前記鋼部材を、50750℃に加熱および保持する。
前記方法によれば、第1冷却ステップの高温度帯では、パーライト相およびフェライト相が析出し始めるパーライト変態およびフェライト変態の開始温度および開始時間(ノーズタイム)を回避できる冷却速度(3℃/分超)で急冷されるため、焼き入れ温度時と同じオーステナイト相を母層として、上記高温度帯を通過できるこの結果、パーライト相およびフェライト相の析出を防ぎ、後述する低温度帯での変態によって、強靱化を図ることが可能となる尚、第1冷却ステップでは、炭化物が上記オーステナイト相中に析出することがある
更に、前記第2冷却ステップの低温度帯では、1℃/分以上の平均冷却速度で冷却するため、400℃〜マルテンサイト変態開始温度の間で、マルテンサイト変態またはベーナイト変態が開始され易くなるまた、130℃になるまで上記速度で冷却するため、残留オーステナイト相を低減できるこの結果、500℃〜400℃超の温度帯での変態を防止できる即ち、粗大な結晶粒のマルテンサイト相またはベーナイト相が析出する事態を防止できるので、前記焼き戻し工程を施すことで、ダイカスト金型用鋼部材の強靱化を図ることができる
従って、例えば、質量が数100kg〜1トンに達する比較的大型のダイカスト金型用鋼部材を、確実に強靱化でき且つ変形や割れを生じずに熱処理できるため、当該処理後においてヒートクラックなどを予防することが可能となる。
しかも、前記焼き入れ工程の後で前記焼き戻し工程を施すので、前記熱処理工程の後でも残った残留オーステナイト相を分解し、且つ微細な炭化物を排出した安定した前記マルテンサイト相またはベーナイト相の組織になるため、当該鋼種本来の特性を発揮させることができる。
尚、本発明の対象となるダイカスト金型用鋼部材を質量で50kg以上としたのは、比較的小さな鋼部材の場合、前記(1)、(2)の条件を同時に満たす焼き入れが容易であるため、冷却速度を速くし且つ均一にしにくい大型の金型などの鋼部材を対象としたものである。熱処理を施す鋼部材は、ダイカスト金型のように複雑な形状を呈するが、上記50kg以上の質量である鋼部材を仮に立方体で表現すれば、体積が6330cmで、各辺の長さは18.5cmである。
また、本発明には、前記焼き入れ工程の第1冷却ステップの高温度帯と第2冷却ステップの低温度帯との間における中間温度帯では、焼き入れすべきダイカスト金型用鋼部材の断面における最高温度部位と最低温度部位との差が200℃以下となるように制御する、ダイカスト金型用鋼部材の熱処理方法(請求項2)も含まれる。
これによれば、ダイカスト金型用鋼部材の内部における冷却温度の差が200℃以下に抑制されるため、各部位間にわたる冷却による変形量(歪)を、0.2%以下に低減することができる。この結果、例えば、鋼部材が一辺の長さが500〜1000mmの大型の金型であっても、多大の工数の矯正工程が不要となるため、コストダウンが可能となる。尚、前記断面内部の温度差を150℃以下にした場合には、鋼部材の変形量を0.1%以下に抑制することが可能である。
尚、前記焼き戻し工程での加熱温度が50℃未満では、残留オーステナイト相が分解できず、一方750℃を越えると、前記オーステナイト相に逆変態するおそれが高くなるので、係る温度範囲を除いたものである。例えば、鋼部材がJIS:SKD61の場合、好ましい焼き戻しの条件は、550〜650℃×1〜2時間であるが、係る条件の焼き戻しを2〜5回程度繰り返し行っても良い。
以下において、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明と比較例とにおける焼き入れ工程の概略を示す温度−時間グラフ、図2は、本発明の焼き入れ工程および焼き戻し工程の温度履歴を示すグラフである以下において、熱処理の対象としたダイカスト金型用鋼部材は、JIS:SKD61からなり、サイズが10.5×10.5×56mmの試験片である
図1,図2に示すように、本発明例のダイカスト金型用鋼部材(以下、単に鋼部材という)は、1030℃の焼き入れ温度に加熱され、約2時間保持することで均熱化され、平均結晶粒径がdγのオーステナイト相(γ相)となる。
上記鋼部材を、例えば油中に挿入し、図1中のカーブした実線で示すように、1030℃(焼き入れ温度)からパーライト変態およびフェライト変態の少なくとも一方の変態終了温度(線)Pf,Ff(具体的には、600℃)までの高温度帯htにおいて、パーライト相およびフェライト相の析出が回避できる平均冷却速度C1で冷却(急冷)する第1冷却ステップを行う。係る平均冷却速度C1は、具体的には3℃/分超であり、例えば、放置冷却、衝風冷却、高温冷媒中での冷却などの方法が用いられる。
図3のグラフは、前記平均冷却速度C1を変化させて熱処理方法を施した複数の前記試験片から切り出した10×10×55mmのJIS3試験片について、室温での衝撃試験を行った結果を示す。これによれば、平均冷却速度C1が3℃/分超では、高いレベルの衝撃値(A)であった。これは、高温度帯htでの冷却中において、オーステナイト相の粒界に、例えば、図1中で示すVC(炭化物)が析出するが、靭性への悪影響は小さいことを示している。一方、3℃/分以下では、衝撃値(B)が急激に低下した。これは、平均冷却速度C1が低過ぎたため、パーライト相が析出したことによる。
以上の結果から、平均冷却速度C1は、3℃/分超としたものである。尚、高温度帯htで最も重要なことは、フェライト相やパーライト相の析出を回避することであり、炭化物のある程度の析出は、許容し得ることが分かった。
また、衝撃値を高めるには、図4,図5のグラフに示すように、後述する焼き戻し工程後の硬度(HRC)を下げると共に、焼き入れ温度におけるオーステナイト相の平均結晶粒径dγを小さくすると良い、ことも確認された。
一方、図1中の右側にカーブした一点鎖線で示すように、パーライト変態またはフェライト変態の開始線Ps,Fsに抵触する比較例Aは、パーライト相またはフェライト相が析出するため、本発明から外れる。
また、重量が50kg未満の比較的小型の鋼部材を対象とする比較例Bは、図1中の左側にカーブした二点鎖線で示すように、本発明例よりも、速い冷却速度で冷却しても、鋼部材全体がほぼ均一に冷却されるため、焼き割れや変形を生じにくい。また、係る比較例Bの小型の鋼部材は、高温度帯htにおける炭化物の析出も回避し易いので、強靱化は比較的容易である。これらのため、本発明は、重量が50kg以上の鋼部材を対象としたものである。
引き続いて冷却される本発明例の前記鋼部材は、図1に示すように、600〜500℃の中間温度帯mtでは、その断面における最高温度部位と最低温度部位との差が200℃以下となるような平均冷却速度、例えば3℃/分で冷却するように制御される。この結果、中間温度帯mtにおいて、冷却に伴う鋼部材の変形量を0.2%以下に抑制でき、次の第2冷却ステップを良好に行うことも可能となる。尚、上記温度差が150℃以下では、変形量を0.1%以下に抑制できた。
次に、ベーナイト変態開始温度Bsからベーナイト変態終了温度Bfおよびマルテンサイト変態終了温度Mfよりも低い制御冷却終了温度Tfまで、即ち、前記鋼部材では、500℃以下で且つ制御終了温度の130℃までの低温度帯ltにおいては、図2に示すように、1℃/分以上の平均冷却速度CTで冷却される。
前記平均冷却速度CTは、図2に示すように、厳密には、500℃からマルテンサイト変態開始温度Ms(あるいは、ベーナイト変態開始温度Bs)までの平均冷却速度C2Uと、これからマルテンサイト変態終了温度Mf(あるいは、ベーナイト変態終了温度Bf)である制御冷却終了温度Tf(例えば130℃)までの平均冷却速度C2Lとの2段階に区分される。
以下では、マルテンサイト変態開始温度Msは、単にMsとし、ベーナイト変態開始温度Bsは、単にBsと記する。
上記平均冷却速度C2Uは、マルテンサイト変態およびベーナイト変態の少なくとも一方が、400℃〜Msの範囲で開始するような値、例えば2℃/分以上である。この結果、400℃超の温度帯で変態が開始された際に、析出する粗大な結晶粒のマルテンサイト相またはベーナイト相の混入を防止できる。
ここで、対象とする鋼部材(JIS:SKD61)における変態開始温度(MsあるいはBs)の影響を調べた。
先ず、前記オーステナイト相の平均結晶粒径dγと平均冷却速度C1とを一定として、前記平均冷却速度C2Uと変態開始温度(MsあるいはBs)との関係を、図6のグラフで示す。これによれば、平均冷却速度C2Uが小さいほど、変態開始温度は高くなり、特に平均冷却速度C2Uが5℃/分未満になると、変態開始温度は著しく高くなることが判明した。従って、上記速度C2Uは、5℃/分以上が必須とされる。
また、前記平均結晶粒径dγ、平均冷却速度C1、平均冷却速度C2L、および、制御終了温度Tfを一定として、変態開始温度(MsまたはBs)と焼き戻し工程後の硬度(HRC)との関係を、図7のグラフで示す。これによれば、変態開始温度(MsまたはBs)が高く且つ上記硬度が高いほど、衝撃値は低くなるので、衝撃値を高めるには、変態開始温度(MsまたはBs)を400℃以下にし、且つ上記硬度を下げる必要があることが判明した。
更に、前記平均冷却速度C1、平均冷却速度C2L、制御終了温度Tf、および、焼き戻し工程後の硬度(HRC)を一定として、前記オーステナイト相の平均結晶粒径dγと変態開始温度(MsまたはBs)との関係を、図8のグラフで示す。これによれば、上記平均結晶粒径dγが小さく且つ変態開始温度(MsまたはBs)が低くなるほど、衝撃値を高められることが判明した。
以上の図6〜図8のグラフの結果から、変態開始温度(MsまたはBs)を、400℃〜Msの間にする必要があることが判明した。尚、変態開始温度(MsまたはBs)を、400℃〜Msの間で開始させる冷却方法には、比較的低温(20〜200℃)の冷媒中での冷却が有効である。係る冷媒には、水、油、水溶性焼き入れ剤などが含まれる。また、本発明の鋼部材は、その組成や冷却条件などにより、図1中のカーブした実線で示すように、低温度帯ltでは、マルテンサイト変態またはベーナイト変態の何れかを生じる。
変態が400℃〜Msの間で開始されても、それ以降の平均冷却速度C2Lを、1℃/分以上にしないと、焼き戻し工程後において強靱な鋼部材を得られなくなる。その理由は、特にベーナイト変態中での平均冷却速度C2Lが低いと、新たに析出する変態相(マルテンサイト相、ベーナイト層、またはこれらの混合層、以下同じ)が粗大となり、焼き戻し後における鋼部材の強靱化を妨げるためである。
ここで、上記変態開始後の平均冷却速度C2Lの影響を調べた。
先ず、前記平均結晶粒径dγ、平均冷却速度C1,C2U、および、制御終了温度Tfを一定として、上記変態開始後の平均冷却速度C2Lと、焼き戻し後の衝撃値および硬度(HRC)との関係を図9のグラフに示す。
これによれば、平均冷却速度C2Lが高くなり、且つ上記硬度(HRC)が低くなるほど、衝撃値は高くなり、特に1℃/分以上では著しく高くなることが判明した。これは、新たに析出する変態相が微細化されるためであり、特にベーナイト変態中のベーナイト相では顕著であった。
また、前記平均冷却速度C1,C2U、制御終了温度Tf、および、焼き戻し後の硬度(HRC)を一定として、上記変態開始後の平均冷却速度C2Lと前記平均結晶粒径dγと衝撃値との関係を、図10のグラフに示す。これによれば、平均冷却速度C2Lが高くなり、且つ平均結晶粒径dγが小さくなるほど、衝撃値は高くなることが判明した。
以上の結果から、鋼部材の衝撃値を高めるには、前記平均結晶粒径dγを小さくし、且つ平均冷却速度C2Lを1℃/分以上とすると共に、焼き戻し後の硬度(HRC)を下げる必要があることが判明した。
尚、上記平均冷却速度C2Lを得る方法は、比較的低温の冷媒(水、油、水溶性焼き入れ剤)中での冷却が有効である。
引き続いて、前記平均冷却速度C2Lで冷却される本発明例の鋼部材は、図1,図2に示すように、上記速度C2Lによる制御冷却を、マルテンサイト変態終了温度Mfあるいはベーナイト変態終了温度Bf(以下、単にMfあるいはBfと記載する)または、これよりも低温の130℃以下まで継続する。その理由は、1℃/分以上の平均冷却速度C2Lによる制御冷却が終了した時点で、オーステナイト相が多く残留していると、その後の工程で、係る残留オーステナイト相が粗大なベーナイト相となって、鋼部材の強靱化を阻害するためである。尚、鋼の成分にもよるが、上記Mfの代表値は、約130℃であり、上記Bfの代表値は、250〜130℃の範囲内である。
ここで、対象とする鋼部材(JIS:SKD61)における制御冷却終了温度Tfの影響を調べた。先ず、前記平均結晶粒径dγ、平均冷却速度C1,CT(C2U,C2L)を一定として、鋼部材の衝撃値と制御冷却終了温度Tfと焼き戻し後の硬度(HRC)との関係を、図11のグラフに示す。これによれば、制御冷却終了温度Tfが低くなるほど、衝撃値は高くなり、特に130℃以下で著しく高くなった。また、焼き戻し後の硬度(HRC)が低いほど、衝撃値は高くなる傾向も示した。
更に、前記平均冷却速度C1,CT(C2U,C2L)と、焼き戻し後の硬度(HRC)とを一定として、鋼部材の衝撃値と制御冷却終了温度Tfと前記平均結晶粒径dγとの関係を、図12のグラフに示す。これにても、制御冷却終了温度Tfが低くなるほど、衝撃値は高くなり、特に130℃以下で著しかった。また、前記平均結晶粒径dγが小さいほど、衝撃値は高くなる傾向も示した。
以上の結果から、マルテンサイト変態(あるいは、ベーナイト変態)開始後では、平均冷却速度C2Lによる制御冷却を130℃以下の制御冷却終了温度Tfまで、維持する必要があることが判明した。
尚、前記平均冷却速度CTが1℃/分以上であっても、これを構成する平均冷却速度C2Uが5℃/分以上で且つC2L1℃/分以上でないと、鋼部材の衝撃値が低下する。即ち、平均冷却速度C2Uが5℃/分未満になるか、あるいは、C2L1℃/分未満になると、変態が高温で始まることで、変態相が粗大となったり、あるいは、新たに析出する変態相が粗大となって、衝撃値を低下させる。このため、平均冷却速度C2Uを5℃/分以上とし、且つC2Lを1℃/分以上にする必要がある。
また、焼き入れ工程の直後に、鋼部材に残留するオーステナイト相は、その後の緩冷(130℃から室温までの間、あるいは焼き戻し工程後の冷却中)により、粗大なベーナイト相に分解するが、その量が40vol%未満であれば、衝撃値への悪影響は極く小さいことも判明した。係る結果から、焼き入れ時に存在したオーステナイト相の60vol%以上が、130℃以下の制御冷却終了温度Tfに至った時点でマルテンサイト相またはベーナイト相に相変態していることが望ましい。
そして、焼き入れ工程を経て室温まで冷却された鋼部材は、図2に示すように、50〜750℃の温度Ttに加熱され、且つ1〜2時間保持した後、室温まで冷却する焼き戻し工程を施される。鋼部材がJIS:SKD61の場合、550〜650℃×1〜2時間の条件で焼き戻す。これにより、鋼部材中の残留オーステナイト相は分解し、組織全体が安定したマルテンサイト相またはベーナイト相となり、鋼種ごとの本来の特性を顕在化でき、且つ硬度(HRC)を40〜50にすることができる。尚、係る焼き戻し工程は、複数回繰り返して行っても良い。
以上のような焼き入れ工程および焼き戻し工程を経る本発明の熱処理方法によれば、例えば、ダイカスト金型などの大型の鋼部材であっても、確実に強靱化でき且つ変形や焼き割れを生じずに熱処理できるため、当該熱処理後の使用時において、ヒートクラックなどの予防も可能となる。
以下において、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明する。
実機検証には、JIS:SKD61からなり、質量が750kgで、900×450×210mmのダイカスト用金型であって、中央部に窪みがあり、四隅に4本の脚を有する形態のものを複数個用意した。予め、係る金型の断面内に熱電対を12本挿入し、各種の焼き入れ工程における温度履歴をサンプリングした。
上記複数の金型を1030℃(焼き入れ温度)に30分間均熱し、表1に示す種々の冷却パターン(平均冷却速度C1,C2U,C2Lなど)による焼き入れ・焼き戻し工程をそれぞれに施した。尚、焼き入れと焼き戻しの均熱時間は、全て共通とし、焼き入れ工程では、500℃の炉中に各金型を挿入し、それらの断面内における最大温度差を小さくする方法を用いた。
また、焼き戻し工程後の硬度(HRC)は、焼き戻し条件を制御することで、全ての金型をHRC45になるように調整した。更に、各金型を、実際のダイカスト鋳造に同じ条件で適用し、それらの寿命を相対的な比によって表1に示した。
表1に示すように、本発明による実施例1〜3,7〜9では、焼き戻し後の変形量が0.2%以下、衝撃値は26J/cm以上、寿命比は、最長の実施例1,7を1とした場合の比で、0.96以上となった。また、焼き割れも皆無であった。
係る結果から、実施例1〜3,7〜9によれば、熱処理中における変形量が小さいため、矯正などの後工程や再作製が不要となり、衝撃値も比較的高いので、大きな金型であるにも拘わらず、長寿命で優れた耐久性を奏することが確認できた。
Figure 0005023441
一方、表1に示すように、比較例1〜5は、変形量が0.17%以下と小さいにも拘わらず、衝撃値が14J/cm以下と低く、型寿命比も0.78以下と短くなった。その原因は、比較例1では、平均冷却速度C1が2.1℃/分と低く、比較例2では、制御冷却終了温度Tfが200℃と高く、比較例3では、変態開始温度Ms(Bs)が408℃高く、比較例4では、平均冷却速度C2Lが0.9℃/分と低いことによる。更に、比較例5は、平均冷却速度C1、平均冷却速度C2L、態開始温度Ms(Bs)、および、平均冷却速度C2U,C2Lが本発明の規定範囲から外れていたため、前記のように衝撃値と寿命とが最も低下したものである。
以上のような実施例1〜3,7〜9の結果により、本発明の効果が確認された。
本発明は、以上において説明した実施の形態および実施例に限定されない。
例えば、本発明は、質量が50kg以上のダイカスト金型用鋼部材であれば、適用することが可能である。
また、冷却方法は、焼き入れ工程での前記平均冷却速度C1,CT,C2U,C2Lや、焼き戻しの冷却速度を遵守できるのであれば、水冷、油冷、衝風冷却、水溶性媒体中への浸漬など、各種の方法が適宜選択される。
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々に改変することができる。
本発明の熱処理方法における焼き入れ工程を示す温度−時間グラフ。 本発明の焼き入れ工程および焼き戻し工程の温度履歴を示すグラフ。 焼き入れ工程中の平均冷却速度C1と衝撃値との関係を示すグラフ。 焼き戻し後の硬度の区分による図3と同種のグラフ。 焼き入れ時の平均結晶粒径dγの区分による図3と同種のグラフ。 変態開始温度と平均冷却速度C2Uとの関係を示すグラフ。 焼き入れ工程中の変態開始温度と衝撃値との関係を示すグラフ。 焼き入れ時の平均結晶粒径dγの区分による図7と同種のグラフ。 焼き戻し後の硬度の区分による図7と同種のグラフ。 平均冷却速度C2Lと衝撃値との関係を示すグラフ。 制御冷却終了温度Tfと衝撃値との関係を示すグラフ。 焼き入れ時の平均結晶粒径dγの区分による図11と同種のグラフ。
ht………………………………高温度帯
mt………………………………中間温度帯
lt………………………………低温度帯
Pf………………………………パーライト変態終了温度
Ff………………………………フェライト変態終了温度
Ms………………………………マルテンサイト変態開始温度
Bs………………………………ベーナイト変態開始温度
Mf………………………………マルテンサイト変態終了温度
Bf………………………………ベーナイト変態終了温度
C1,CT,C2U,C2L…平均冷却速度
Tf………………………………制御冷却終了温度
Tt………………………………焼き戻し温度

Claims (2)

  1. 量が50kg以上であるダイカスト金型用鋼部材に対し、以下の冷却ステップを施す焼き入れ工程と、焼き戻し工程とを施す、ことを特徴とするダイカスト金型用鋼部材の熱処理方法。
    焼き入れ工程の第1冷却ステップ:焼き入れ温度から600℃までの高温度帯において、パーライト相およびフェライト相の析出が回避できる3℃/分超の平均冷却速度で冷却する。
    焼き入れ工程の第2冷却ステップ:500℃以下で且つ130℃までの低温度帯において、1℃/分以上の平均冷却速度CTで冷却する。但し、平均冷却速度CTは、500℃からマルテンサイト変態開始温度Ms(あるいは、べーナイト変態開始温度Bs)までの平均冷却温度C2Uが5℃/分以上であり、且つこれからマルテンサイト変態終了温度Mf(あるいは、べーナイト変態終了温度Bf)までの平均冷却温度C2Lが1℃/分以上である。
    焼き戻し工程:上記焼き入れ工程後に、該焼き入れを施された前記鋼部材を、50750℃に加熱および保持する。
  2. 前記焼き入れ工程の第1冷却ステップの高温度帯と第2冷却ステップの低温度帯との間における中間温度帯では、焼き入れすべきダイカスト金型用鋼部材の断面における最高温度部位と最低温度部位との差が200℃以下となるように制御する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト金型用鋼部材の熱処理方法。
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