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JP5007576B2 - 車両挙動制御装置 - Google Patents

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JP5007576B2
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Description

本発明は、車両のピッチング挙動を制御する車両挙動制御装置に関する。
制動時に発生する車両のピッチングを抑制するため、アンチダイブジオメトリを備えた前輪側サスペンション及びアンチリフトジオメトリを備えた後輪側サスペンションが広く知られている。これらによれば、制動時におけるダイブ(車体前方が沈み込む現象)を抑制するアンチダイブ効果、及び制動時におけるリフト(車体後方が浮き上がる現象)を抑制するアンチリフト効果が発揮されて制動時におけるピッチングが抑制される。以下、「アンチダイブ」及び「アンチリフト」を「アンチピッチング」とも総称する。
ピッチングの抑制度合いを大きくするためには、車輪に付与される制動力に対するアンチピッチング効果が大きいアンチピッチングジオメトリを採用することが考えられる。しかしながら、余りにアンチピッチング効果が大きいアンチピッチングジオメトリを採用すると、悪路走行時等において車輪(タイヤ)の接地点に入力され得る車体前後方向の力が車体に対して上下方向の力として伝達される程度が大きくなり、乗り心地が悪化する。換言すれば、特に、非制動時において乗り心地が悪化するという問題が発生する。
以上より、アンチピッチング効果が大きくないアンチピッチングジオメトリを採用して非制動時の乗り心地を良好に維持しつつ制動時のピッチングを効果的に抑制することが要求される。このため、例えば、特許文献1、2では、制動時において、アンチピッチングジオメトリを規定するサスペンション部材のストロークや取付位置が変更されてアンチピッチングジオメトリによるアンチピッチング効果がより大きくなる方向へアンチピッチングジオメトリが変更される。これにより、非制動時の乗り心地を良好に維持しつつ制動時のピッチングが効果的に抑制され得る。
特開平11−151921号公報 特開平6−64436号公報
しかしながら、上述した文献に記載された装置では、制動時において上記サスペンション部材のストロークや取付位置を変更する構成を実現するため、サスペンション装置に特殊な機構を設ける必要があり、この結果、製造コストの増大、車両への搭載性の悪化、生産性の悪化等の新たな問題が発生する。
本発明は係る問題に対処するためになされたものであって、その目的は、サスペンション装置に特殊な機構を設けることなく、非制動時の乗り心地を良好に維持しつつ制動時のピッチングを効果的に抑制し得る車両挙動制御装置を提供することにある。
本発明に係る車両挙動制御装置は、アンチダイブジオメトリ及びアンチリフトジオメトリをそれぞれを有する前輪側及び後輪側のサスペンションと、前記前輪及び後輪に付与される制動力をそれぞれ独立に制御可能なブレーキ制御装置とを備えた車両に適用される。ここにおいて、後輪に付与される制動力の変化に対する前記アンチリフトジオメトリによるアンチリフト効果の大きさの変化が前輪に付与される制動力の変化に対する前記アンチダイブジオメトリによるアンチダイブ効果の大きさの変化よりも大きい。
本発明に係る車両挙動制御装置は、運転者によるブレーキ操作部材の操作中において前記前輪及び後輪の制動力の総和が前記ブレーキ操作部材の操作量に応じた要求値になり且つ前記前輪及び後輪の制動力の配分が前記前輪及び後輪のロックが同時に発生する理想配分と等しいか、又は前記理想配分よりも後輪側の配分が小さい基本配分になるように前記ブレーキ制御装置を制御する基本配分手段と、前記ブレーキ操作部材の操作が開始され且つその操作開始時の前記操作量の増大速度が所定速度よりも大きい場合、前記車両の前傾方向を正とするピッチ角の角加速度が正から負に変化する時点まで、前記前輪及び後輪の制動力の総和が前記要求値になり且つ前記前輪及び後輪の制動力の配分が前記基本配分よりも後輪側の配分が大きい第1配分になるように前記ブレーキ制御装置を制御する第1配分制御手段とを備える。ここにおいて、前記基本配分としては、例えば、後輪のロックが発生し得ない程度に後輪の制動力の配分が小さい配分が使用され得る。
これによれば、制動時では原則的に、前輪及び後輪の制動力の総和がブレーキ操作部材の操作量に応じた要求値になり且つ前輪及び後輪の制動力の配分が前記基本配分になるように前輪及び後輪の制動力が調整される。
一方、ブレーキ操作部材の操作が開始され且つその操作開始時のブレーキ操作部材の操作量(操作力、操作ストローク等)の増大速度が所定速度よりも大きい場合、即ち、急激なブレーキ操作が開始されてピッチ角に大きな乱れが発生し得る場合、前輪及び後輪の制動力の総和がブレーキ操作部材の操作量に応じた要求値に維持されつつ前輪及び後輪の制動力の配分が前記基本配分に代えて前記基本配分よりも後輪側の配分が大きい第1配分になるように調整される。即ち、第1配分の場合、基本配分の場合に比して、前輪の制動力の一部が後輪の制動力に移されて、前輪の制動力が減少し後輪の制動力が前輪の制動力の減少量と等しい量だけ増大する。前輪及び後輪の制動力の総和は、基本配分の場合と同じ値(=要求値)に維持される。
ここで、一般に、アンチピッチングジオメトリによるアンチピッチング効果(アンチピッチング力、アンチピッチングモーメント)は、車輪に付与される制動力の大きさが大きいほど大きくなる。加えて、上述のように、後輪の制動力の変化に対するアンチリフトジオメトリによるアンチリフト効果(アンチリフト力、アンチリフトモーメント)の大きさの変化が前輪の制動力の変化に対するアンチダイブジオメトリによるアンチダイブ効果(アンチダイブ力、アンチダイブモーメント)の大きさの変化よりも大きい。
従って、上述した基本配分から第1配分への変更による前輪の制動力の減少によるアンチダイブ効果の大きさの減少量よりも、上述した基本配分から第1配分への変更による後輪の制動力の増大によるアンチリフト効果の大きさの増大量が大きくなる。即ち、車両全体としてみれば、第1配分の場合、基本配分の場合に比して、アンチピッチング効果が大きくなる。即ち、ピッチ角が増大し難くなる。
以上より、上記構成によれば、急激なブレーキ操作が開始されてピッチ角に大きな乱れが発生し得る場合において、前輪及び後輪の制動力配分を基本配分から第1配分に変更することで、サスペンション装置に特殊な機構を設けることなく、アンチピッチング効果を大きくしてピッチ角を増大し難くすることができる。従って、アンチピッチング効果が大きくないアンチピッチングジオメトリを備えたサスペンションを採用して非制動時の乗り心地を良好に維持しつつ制動時のピッチング(ピッチ角の乱れ)を効果的に抑制することができる。
加えて、上記構成によれば、前輪及び後輪の制動力配分が第1配分に調整される期間が、急激なブレーキ操作の開始から、車両の前傾方向を正とするピッチ角の角加速度が正から負に変化する時点(換言すれば、ピッチ角の角速度が増大状態から減少状態に変化する時点)までに限定される。ここで、後述するように、このように前輪及び後輪の制動力配分が第1配分に調整される期間を限定すると、ピッチング挙動の収束性が効果的に高められ得ることが判明している(図5を参照)。これにより、ピッチング挙動の収束性を効果的に高めつつ前輪及び後輪の制動力配分を早期に基本配分に戻すことができる。
更には、上記構成によれば、前記基本配分として、前輪及び後輪のロックが同時に発生する前記理想配分と等しい配分、又は前記理想配分よりも後輪側の配分が小さい配分が使用される。従って、前輪及び後輪の制動力配分が基本配分に制御されている間において後輪が前輪に先行してロックする現象の発生を抑制することができる。
また、本発明に係る車両挙動制御装置は、前記第1配分制御手段に加え、或いは代えて、前記ブレーキ操作部材の操作中において前記操作量の減少速度(増大方向で正の値)が所定速度(負の値)よりも小さい場合、前記車両の前傾方向を正とするピッチ角の角加速度が負から正に変化する時点まで、前記前輪及び後輪の制動力の総和が前記要求値になり且つ前記前輪及び後輪の制動力の配分が前記基本配分に代えて前記基本配分よりも後輪側の配分が小さい第2配分になるように前記ブレーキ制御装置を制御する第2配分制御手段を備えてもよい。
これによれば、制動時においてブレーキ操作部材の操作量(操作力、操作ストローク等)の減少速度が所定速度よりも小さくなった場合、即ち、急激なブレーキ解除操作が開始されてピッチ角に大きな乱れが発生し得る場合、前輪及び後輪の制動力の配分が前記基本配分に代えて前記基本配分よりも後輪側の配分が小さい第2配分になるように調整される。即ち、第2配分の場合、基本配分の場合に比して、後輪の制動力の一部が前輪の制動力に移されて、後輪の制動力が減少し前輪の制動力が後輪の制動力の減少量と等しい量だけ増大する。前輪及び後輪の制動力の総和は、基本配分の場合と同じ値(=要求値)に維持される。
従って、この場合、上述した基本配分から第2配分への変更による前輪の制動力の増大によるアンチダイブ効果の大きさの増大量よりも、上述した基本配分から第2配分への変更による後輪の制動力の減少によるアンチリフト効果の大きさの減少量が大きくなる。即ち、車両全体としてみれば、第2配分の場合、基本配分の場合に比して、アンチピッチング効果が小さくなる。即ち、ピッチ角が減少し難くなる。
以上より、上記構成によれば、急激なブレーキ解除操作が開始されてピッチ角に大きな乱れが発生し得る場合において、前輪及び後輪の制動力配分を基本配分から第2配分に変更することで、サスペンション装置に特殊な機構を設けることなく、アンチピッチング効果を小さくしてピッチ角を減少し難くすることができる。従って、制動解除時のピッチング(ピッチ角の乱れ)を効果的に抑制することができる。
加えて、上記構成によれば、前輪及び後輪の制動力配分が第2配分に調整される期間が、急激なブレーキ解除操作の開始から、車両の前傾方向を正とするピッチ角の角加速度が負から正に変化する時点(換言すれば、ピッチ角の角速度が減少状態から増大状態に変化する時点)までに限定される。これにより、後述するように、ピッチング挙動の収束性を効果的に高めることができる(図7を参照)。
以下、本発明による車両挙動制御装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両挙動制御装置10を搭載した車両の概略構成を示している。
この車両挙動制御装置10は、所謂ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムを備えていて、ブレーキペダルBPとブレーキ液圧回路とが分離されている。車両挙動制御装置10は、ストロークシミュレータ機構20と、車輪FR,FL,RR,RLにブレーキ液圧による制動力を発生させるためのハイドロリックユニット30を含んで構成されている。
ストロークシミュレータ機構20には、ブレーキペダルBPのストロークに応じた適切な反力(=ブレーキペダル踏力Fp)をブレーキペダルBPに付与する周知の反力付与機構が内蔵されている。係る反力付与機構については詳細な説明を省略する。これにより、運転者は、ブレーキペダルBPの操作時において適切なブレーキペダルフィーリングを得ることができるようになっている。
ハイドロリックユニット30は、図示しない複数の電磁弁、液圧ポンプ、モータ等を含んだ周知の構成の一つを備えていて、車輪**のホイールシリンダW**の液圧(ホイールシリンダ液圧Pw**)を個別に調整できるようになっている。なお、変数等の末尾に付された「**」は、同変数等が何れの車輪に関するものであるかを示すために同変数の末尾に付される「fl」「fr」「rl」「rr」の包括表記である。
車両挙動制御装置10は、車輪**の車輪速度に応じた周波数を有する信号をそれぞれ出力する電磁ピックアップ式の車輪速度センサ41**と、上述したブレーキペダル踏力Fpを示す信号を出力する踏力センサ42と、車体のピッチ角θpを示す信号を出力するピッチ角センサ43とを備えている。ピッチ角θpは、車体前傾時に正の値を採り車体後傾時に負の値を採る。
また、車両挙動制御装置10は電気制御装置50を備えている。電気制御装置50は、互いにバスで接続されたCPU51、ROM52、RAM53、バックアップRAM54、インターフェース55等からなるマイクロコンピュータである。インターフェース55は、前記センサ41**〜43と接続され、センサ41**〜43からの信号をCPU51に供給するとともに、CPU51の指示に応じてハイドロリックユニット30の電磁弁、及びモータ等に駆動信号を送出するようになっている。
(サスペンションのアンチピッチングジオメトリ)
次に、図1に示した車両挙動制御装置10(以下、「本装置」とも称呼する。)を搭載した車両のサスペンションが備えるアンチピッチングジオメトリについて図2を参照しながら簡単に説明する。図2に示したように、前輪側サスペンションのストロークに起因する車体に対する前輪(FR,FL)の動きの瞬間中心Cfは、車体側面視にて前輪の接地点Efよりも上方且つ車体後方に位置している。なお、この瞬間中心Cfの車体側面視での位置は、前輪側サスペンションのストローク量に応じて時々刻々と変化する。
この瞬間中心Cfと接地点Efとを結ぶ線分を前輪側仮想リンクとみなした場合、この前輪側仮想リンクが制動時に受ける軸方向の圧縮力Flinkfの水平方向成分Ffは前輪の制動力として働く。一方、この圧縮力Flinkfの垂直方向成分Fadは、前輪側サスペンションが車体前方部を上方へ持ち上げる力、即ち、アンチダイブ力として働く。このように、前輪側サスペンションは、制動時にアンチダイブ効果を発揮するアンチダイブジオメトリを有している。
他方、後輪側サスペンションのストロークに起因する車体に対する後輪(RR,RL)の動きの瞬間中心Crは、車体側面視にて後輪の接地点Erよりも上方且つ車体前方に位置している。なお、この瞬間中心Crの車体側面視での位置も、後輪側サスペンションのストローク量に応じて時々刻々と変化する。
この瞬間中心Crと接地点Erとを結ぶ線分を後輪側仮想リンクとみなした場合、この後輪側仮想リンクが制動時に受ける軸方向の引張り力Flinkrの水平方向成分Frは後輪の制動力として働く。一方、この引張り力Flinkrの垂直方向成分Falは、後輪側サスペンションが車体後方部を下方へ沈み込ませる力、即ち、アンチリフト力として働く。このように、後輪側サスペンションは、制動時にアンチリフト効果を発揮するアンチリフトジオメトリを有している。
このように、制動時において、前輪側サスペンションが有するアンチダイブジオメトリによるアンチダイブ効果と後輪側サスペンションが有するアンチリフトジオメトリによるアンチリフト効果とによるアンチピッチング効果が発揮されて、アンチピッチングモーメントMpが車両の重心G周りに発生する。この結果、制動時においてピッチングが抑制され得るようになっている。
いま、車体側面視において前輪側仮想リンクと水平線とのなす角度をθf,後輪側仮想リンクと水平線とのなす角度をθrとすると、上記アンチダイブ力Fad、及びアンチリフト力Falはそれぞれ、下記(1)式、(2)式にて表すことができる。このように、アンチダイブ力Fad、及びアンチリフト力Falはそれぞれ、前輪の制動力Ff、及び後輪の制動力Frが大きいほど大きくなる。
Fad=Ff・tanθf …(1)
Fal=Fr・tanθr …(2)
また、角度θf、及び角度θrが大きいほど、アンチダイブ力Fad、及びアンチリフト力Falが大きくなり、この結果、よりアンチピッチング効果が大きいアンチピッチングジオメトリを得ることができる。ここで、上述したように、余りにアンチピッチング効果が大きいアンチピッチングジオメトリを採用すると、悪路走行時等の非制動時において乗り心地が悪化するという問題が発生する。従って、この車両では、角度θf、及び角度θrが比較的小さめに設定されてアンチピッチング効果が大きくないアンチピッチングジオメトリが採用されている。
加えて、この車両では、「θf<θr」の関係が成立するように前輪側、及び後輪側のサスペンション(具体的には、瞬間中心Cf,Crの位置)が設計されている。この結果、後輪の制動力Frの変化に対するアンチリフト力Fal(アンチリフト効果の大きさ)の変化勾配(=tanθr)が前輪の制動力Ffの変化に対するアンチダイブ力Fad(アンチダイブ効果の大きさ)の変化勾配(=tanθf)よりも大きい。換言すれば、前後輪の制動力が同じだけ変化した場合、アンチリフト力Falの変化量がアンチダイブ力Fadの変化量よりも大きくなる。
(制動開始時におけるピッチング抑制制御の概要)
本装置では、制動時において、通常、前後輪の制動力配分が図3に示した基本配分曲線に対応する基本配分に調整される。この基本配分は、後輪が前輪に先行してロックする現象の発生を抑制できる程度に後輪の制動力の配分が小さい配分である。
具体的には、踏力センサ42から得られるブレーキペダル踏力Fpに基づいて目標減速度Gtが決定され、この目標減速度Gtに対応する等G線と基本配分曲線との交点が決定される。そして、前後輪の制動力がこの交点に対応する値にそれぞれ一致するように前輪側及び後輪側のホイールシリンダ液圧がハイドロリックユニット30によりそれぞれ制御される。なお、左右前輪のホイールシリンダ液圧は同圧に設定され、左右後輪のホイールシリンダ液圧も同圧に設定される。
図4(a)は、前後輪の制動力配分がこの基本配分で一定に調整される場合の一例を示している。この例の場合、前輪の制動力Ff=Ff1,後輪の制動力Fr=Fr1、アンチダイブ力Fad=Fad1、アンチリフト力Fal=Fal1、アンチピッチングモーメントMp=Mp1となっている。
図5に示した破線は、制動中において前後輪の制動力配分が基本配分で一定に調整される場合において、時刻t1から急激なブレーキペダルBPの操作が実行された場合における、ピッチ角θp、ピッチ角θpの時間微分値であるピッチ角速度dθp、及びピッチ角速度dθpの時間微分値であるピッチ角加速度ddθpの変化の一例を示している。なお、この急激なブレーキペダル操作により、ブレーキペダル踏力Fpが時刻t1にて「0」から値Fp1にステップ的に変化したものとする。また、前後輪の制動力配分が基本配分に調整される場合においてブレーキペダル踏力Fpが値Fp1で一定の場合、ピッチ角θpは値θp1に収束するものとする。
時刻t1以降、制動により車両の重心Gに車体前方向への慣性力が働くことで、前輪側サスペンションが縮み側にストロークし後輪側サスペンションが伸び側にストロークする。この結果、車体が前傾し、図5に破線で示したように、ピッチ角θpが増大していく。なお、この過程において、ピッチ角加速度ddθpは、時刻t1の直後において正の極大値(ピーク値)をとり、時刻t1の極短時間後の時刻t2にて正から負に変化する。
この場合、ピッチ角θpに比較的大きなオーバーシュートが発生し、この結果、ピッチ角θpの値θp1への収束が遅れている。これは、以下の理由に基づく。即ち、上述したように、この車両ではアンチピッチング効果が大きくないアンチピッチングジオメトリが採用されている。この結果、十分なアンチピッチングモーメントMpが発生し得ないから、時刻t1の直後におけるピッチ角加速度ddθpの上記ピーク値が大きい正の値となる。このため、時刻t1の直後におけるピッチ角速度dθp(従って、ピッチ角θpの増加勾配)も大きくなり、その後において、ピッチ角θpに比較的大きなオーバーシュートが発生する。
このようなピッチ角θpのオーバーシュートの発生を抑制するためには、制動開始直後におけるピッチ角加速度ddθpの上記ピーク値を小さい正の値に抑えることが効果的である。このためには、制動開始の直後においてアンチピッチングモーメントMpをより大きくする必要がある。
このため、本装置では、急激な制動操作が開始された場合、制動開始からピッチ角加速度ddθpが正から負に変化する時点まで(即ち、時刻t1〜t2の間)、前後輪の制動力配分が基本配分に代えて基本配分よりも後輪側の配分が大きい第1配分に調整される。以下、このように前後輪の制動力配分を第1配分に調整する制御を「ピッチング抑制制御1」とも称呼する。この第1配分としては、前後輪が同時にロックする場合に対応する前後輪の制動力配分である理想配分(図3における理想配分曲線に対応する配分)が使用される。
図4(b)は、図4(a)に示した例において前後輪の制動力配分を基本配分から理想配分へ変更した場合における、前輪の制動力Ff、後輪の制動力Fr、アンチダイブ力Fad、アンチリフト力Fal、及びアンチピッチングモーメントMpの変化を示している。図4(b)において、白矢印は基本配分の場合(即ち、図4(a)と同じ場合)を、黒矢印は理想配分の場合を示している。
理想配分の場合、基本配分の場合に比して、前輪の制動力Ffの一部が後輪の制動力Frに移される。図4(b)に示した例では、前輪の制動力Ffが値Ff1からΔF1だけ減少して値Ff2となり、後輪の制動力Frが値Fr1からΔF1だけ増大して値Fr2となっている。即ち、前輪の制動力Ffと後輪の制動力Frの総和は、基本配分の場合と同じ値に維持される。また、前輪の制動力FfがΔF1だけ減少したことによりアンチダイブ力Fadが値Fad1から値Fad2に減少し、後輪の制動力FrがΔF1だけ増大したことによりアンチリフト力Falが値Fal1から値Fal2に増大している。
ここで、上述したように、「θf<θr」の関係が成立していることに起因して、前後輪の制動力が同じだけ変化した場合、アンチリフト力Falの変化量がアンチダイブ力Fadの変化量よりも大きくなる。即ち、図4(b)に示した例では、アンチリフト力Falの増大量ΔFal1(=Fal2−Fal1)は、アンチダイブ力Fadの減少量ΔFad1(=Fad1−Fad2)よりも大きい。従って、車両全体としてみれば、理想配分の場合、基本配分の場合に比して、アンチピッチング効果が大きくなり、アンチピッチングモーメントMpは値Mp1から値Mp2に増大する。これにより、ピッチ角θpが増大し難くなる。
図5に示した実線は、制動開始からピッチ角加速度ddθpが正から負に変化する時点までの間(即ち、時刻t1〜t2)だけ、ピッチング抑制制御1が実行される場合における、ピッチ角θp、ピッチ角速度dθp、及びピッチ角加速度ddθpの変化の一例を示している。
この場合、時刻t1以降から比較的大きなアンチピッチングモーメントMpが発生し得るから、図5の実線に示したように、時刻t1の直後におけるピッチ角加速度ddθpの上記ピーク値が小さい正の値となる。このため、時刻t1の直後におけるピッチ角速度dθp(従って、ピッチ角θpの増加勾配)も小さくなり、この結果、その後においてピッチ角θpのオーバーシュートが消滅し、ピッチ角θpが値θp1に早期に収束している。
なお、本装置では、ピッチング抑制制御1の終期がピッチ角加速度ddθpが正から負に変化する時点(即ち、時刻t2)に設定されている。これにより、ピッチ角θpの収束性が効果的に高められることが種々の実験、シミュレーション等と通して確認されている。
これは、以下の理由に基づくと考えられる。第1に、ピッチ角加速度ddθpが正から負に変化する時刻t2が到来する頃には、ピッチ角θpが或る程度大きい値となっていることで、前輪側、及び後輪側サスペンションのストローク量も或る程度大きい値となっている。従って、ピッチ角を増大させる方向に働く後輪側サスペンションの車体支持スプリングの力が大きく減少するとともにピッチ角を減少させる方向に働く前輪側サスペンションの車体支持スプリングの力が大きく増大し、これによってアンチピッチング効果が発揮されるようになる。この結果、時刻t2以降、ピッチング抑制制御1の実行によりアンチピッチングモーメントMpを大きくする必要性が乏しくなり、時刻t2以降もピッチング抑制制御1を継続すると、却ってピッチ角θpの収束性が低くなる。
第2に、ブレーキペダル踏力Fpが値Fp1で一定の場合において、前後輪の制動力配分が基本配分に代えて理想配分に調整される場合、ピッチ角θpは値θp1に代えて値θp2(<θp1)に収束する。ピッチング抑制制御1の終期を余りに遅い時期に設定すると、ピッチ角θpが2点鎖線で示すように値θp2に収束する。この場合、ピッチング抑制制御1の終了により前後輪の制動力配分が基本配分に戻されると、ピッチ角θpが値θp2から値θp1に向けて再び増大していき、ピッチ角θpに不必要に乱れが発生し得る。
以上、本装置では、急激な制動操作が開始されてピッチ角θpに大きな乱れ(オーバーシュート)が発生し得る場合、ピッチング抑制制御1が実行されて、ピッチ角θpの乱れが効果的に抑制され得る。以上が、制動開始時におけるピッチング抑制制御(ピッチング抑制制御1)の概要である。
(制動解除開始時におけるピッチング抑制制御の概要)
本装置は、上述したピッチング抑制制御1に加えて、制動解除開始時にも、ピッチング抑制制御1と同様の原理に基づくピッチング抑制制御を実行する。以下、図6、図7はそれぞれ、図4、図5に対応している。
図6(a)は、図4(a)と同様、前後輪の制動力配分が基本配分で一定に調整される場合の一例を示している。
図7に示した破線は、制動中において前後輪の制動力配分が基本配分で一定に調整される場合において、時刻t1から急激な制動解除操作が実行された場合を示している。
図7に破線で示したように、時刻t1以降、制動解除により、ピッチ角θpが或る値から減少していく。この過程において、ピッチ角加速度ddθpは、時刻t1の直後において負の極小値(ピーク値)をとり、時刻t1の極短時間後の時刻t2にて負から正に変化する。
この場合、ピッチ角θpに比較的大きなオーバーシュートが発生し、この結果、ピッチ角θpの「0」への収束が遅れている。これは、以下の理由に基づく。即ち、制動解除開始(時刻t1)の直後では、前後輪の制動力Ff,Frが残存しているからアンチダイブ力Fad,アンチリフト力Falに基づくアンチピッチングモーメントMpが残存している。この残存するアンチピッチングモーメントMpが時刻t1の直後におけるピッチ角加速度ddθpの減少を助勢する方向に機能し、この結果、ピッチ角加速度ddθpの上記ピーク値が大きい負の値となる(絶対値が大きくなる)。このため、時刻t1の直後におけるピッチ角速度dθp(負の値)が小さくなり(絶対値が大きくなり)、ピッチ角θpの減少勾配も小さくなる(絶対値が大きくなる)。従って、その後において、ピッチ角θpに比較的大きなオーバーシュートが発生する。
このようなピッチ角θpのオーバーシュートの発生を抑制するためには、制動解除開始の直後におけるピッチ角加速度ddθpの上記ピーク値を絶対値が小さい負の値に抑えることが効果的である。このためには、制動解除開始の直後においてアンチピッチングモーメントMpをより小さくする必要がある。
このため、本装置では、急激な制動解除操作が開始された場合、制動解除開始からピッチ角加速度ddθpが負から正に変化する時点まで(即ち、時刻t1〜t2の間)、前後輪の制動力配分が基本配分に代えて基本配分よりも後輪側の配分が小さい第2配分(図3における第2配分曲線に対応する配分)に調整される。以下、このように前後輪の制動力配分を第2配分に調整する制御を「ピッチング抑制制御2」とも称呼する。
図6(b)は、図6(a)に示した例において前後輪の制動力配分を基本配分から第2配分へ変更した場合における、前輪の制動力Ff、後輪の制動力Fr、アンチダイブ力Fad、アンチリフト力Fal、及びアンチピッチングモーメントMpの変化を示している。図6(b)において、白矢印は基本配分の場合(即ち、図6(a)と同じ場合)を、黒矢印は第2配分の場合を示している。
第2配分の場合、基本配分の場合に比して、後輪の制動力Frの一部が前輪の制動力Ffに移される。図6(b)に示した例では、後輪の制動力Frが値Fr1からΔF2だけ減少して値Fr3となり、前輪の制動力Ffが値Ff1からΔF2だけ増大して値Ff3となっている。即ち、前輪の制動力Ffと後輪の制動力Frの総和は、基本配分の場合と同じ値に維持される。また、前輪の制動力FfがΔF2だけ増大したことによりアンチダイブ力Fadが値Fad1から値Fad3に増大し、後輪の制動力FrがΔF2だけ減少したことによりアンチリフト力Falが値Fal1から値Fal3に減少している。
ここで、上述したように、「θf<θr」の関係が成立していることを鑑みれば、図6(b)に示した例では、アンチリフト力Falの減少量ΔFal2(=Fal1−Fal3)は、アンチダイブ力Fadの増大量ΔFad2(=Fad3−Fad1)よりも大きい。従って、車両全体としてみれば、第2配分の場合、基本配分の場合に比して、アンチピッチング効果が小さくなり、アンチピッチングモーメントMpは値Mp1から値Mp3に減少する。これにより、ピッチ角θpが減少し難くなる。
図7に示した実線は、制動解除開始からピッチ角加速度ddθpが負から正に変化する時点までの間(即ち、時刻t1〜t2)だけ、ピッチング抑制制御2が実行される場合を示している。
この場合、時刻t1以降、ピッチ角加速度ddθpの減少を助勢する方向に機能するアンチピッチングモーメントMpが小さい値となるから、図7の実線に示したように、時刻t1の直後におけるピッチ角加速度ddθpの上記ピーク値が絶対値が小さい負の値となる。このため、時刻t1の直後におけるピッチ角速度dθp(負の値)が大きくなり(絶対値が小さくなり)、ピッチ角θpの減少勾配も大きくなる(絶対値が小さくなる)。この結果、その後においてピッチ角θpのオーバーシュートが消滅し、ピッチ角θpが「0」に早期に収束している。
なお、本装置では、ピッチング抑制制御2の終期がピッチ角加速度ddθpが負から正に変化する時点(即ち、時刻t2)に設定されている。これにより、ピッチ角θpの収束性が効果的に高められることが種々の実験、シミュレーション等と通して確認されている。
これは、以下の理由に基づくと考えられる。即ち、ピッチ角加速度ddθpが負から正に変化する時刻t2が到来する頃には、ピッチ角θpが或る程度小さい値となっていることで、前輪側、及び後輪側サスペンションのストローク量も或る程度小さい値となっている。従って、ピッチ角を増大させる方向に働く後輪側サスペンションの車体支持スプリングの力が大きく増加するとともにピッチ角を減少させる方向に働く前輪側サスペンションの車体支持スプリングの力が大きく減少し、これによってアンチピッチング効果が発揮されないようになる。この結果、時刻t2以降、ピッチング抑制制御2の実行によりアンチピッチングモーメントMpを小さくする必要性が乏しくなり、時刻t2以降もピッチング抑制制御2を継続すると、却ってピッチ角θpの収束性が低くなる。
以上、本装置では、急激な制動解除操作が開始されてピッチ角θpに大きな乱れ(オーバーシュート)が発生し得る場合、ピッチング抑制制御2が実行されて、ピッチ角θpの乱れが効果的に抑制され得る。以上が、制動解除開始時におけるピッチング抑制制御の概要である。
(実際の作動)
次に、本装置の実際の作動について、電気制御装置50のCPU51が実行するルーチンをフローチャートにより示した図8〜図10、及び図3を参照しながら説明する。
<ピッチング抑制制御1の開始・終了判定>
CPU51は、図8に示したピッチング抑制制御1の開始・終了判定を行うルーチンを所定時間(例えば、6msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU51はステップ800から処理を開始し、ステップ805に進んで、フラグZ1の値が「0」であるか否かを判定する。ここで、フラグZ1は、その値が「1」のときピッチング抑制制御1が実行中であることを示しその値が「0」のときピッチング抑制制御1が非実行中であることを示す。
フラグZ1=0の場合(ピッチング抑制制御1が非実行中の場合)、CPU51はステップ810に進み、ブレーキペダル踏力Fpが「0」から「0」以外に変化したか否か(即ち、制動操作が開始されたか否か)を判定し、「Yes」と判定する場合、ステップ815にてブレーキペダル踏力Fpの増大速度dFpが所定値Aよりも大きいか否かを判定する。即ち、ステップ810、及びステップ815では、急激な制動操作が開始されたか否かが判定される。
ステップ810、815の何れかにて「No」と判定する場合、CPU51はステップ895に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、フラグZ1の値は「0」に維持される。一方、ステップ810、815にて共に「Yes」と判定する場合、CPU51はステップ820に進み、フラグZ1の値を「0」から「1」に変更する。
一方、フラグZ1=1の場合(ピッチング抑制制御1が実行中の場合)、CPU51はステップ805にて「No」と判定してステップ825に進み、ピッチ角加速度ddθpが正から負に変化したか否かを判定し、「No」と判定する場合、ステップ895に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、フラグZ1の値は「1」に維持される。ピッチ角加速度ddθpは、ピッチ角センサ43から得られるピッチ角θpを2回時間微分することで得られる。一方、ステップ825にて「Yes」と判定する場合、CPU51はステップ830に進み、フラグZ1の値を「1」から「0」に変更する。
このように、図8のルーチンの繰り返し実行により、フラグZ1=0の場合において急激な制動操作が開始された場合、フラグZ1の値が「0」から「1」に変更され、フラグZ1=1の場合においてピッチ角加速度ddθpが正から負に変化すると、フラグZ1の値が「1」から「0」に変更される。
<ピッチング抑制制御2の開始・終了判定>
CPU51は、図9に示したピッチング抑制制御2の開始・終了判定を行うルーチンを所定時間(例えば、6msec)の経過毎に繰り返し実行している。この図9のルーチンは、図8のルーチンと類似しているから、その詳細な説明を省略する。フラグZ2は、その値が「1」のときピッチング抑制制御2が実行中であることを示しその値が「0」のときピッチング抑制制御2が非実行中であることを示す。
この図9のルーチンの繰り返し実行により、フラグZ2=0の場合において急激な制動解除操作が開始された場合、即ち、制動中(Fp>0)においてブレーキペダル踏力Fpの増大速度dFpが所定値(−B)よりも小さくなった場合、フラグZ2の値が「0」から「1」に変更され、フラグZ2=1の場合においてピッチ角加速度ddθpが負から正に変化すると、フラグZ2の値が「1」から「0」に変更される。
<ブレーキ制御>
また、CPU51は、図10に示したブレーキ制御を行うルーチンを所定時間(例えば、6msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU51はステップ1000から処理を開始し、ステップ1005に進んで、フラグZ1=Z2=0であるか否かを判定する。
いま、急激な制動操作が開始された直後であるものとすると(図3の点aを参照)、Z1=1(ステップ820を参照)、Z2=0となっている。この場合、CPU51はステップ1005にて「No」と判定してステップ1010に進み、フラグZ1=1であるか否かを判定し、「Yes」と判定してステップ1015に進む。
CPU51はステップ1015に進むと、理想配分制御指示を行う。これにより、踏力センサ42から得られるブレーキペダル踏力Fpに基づく目標減速度Gtに対応する等G線と理想配分曲線との交点が決定され、前後輪の制動力Ff,Frがこの交点に対応する値にそれぞれ一致するように前輪側及び後輪側のホイールシリンダ液圧がハイドロリックユニット30によりそれぞれ制御される。この結果、前後輪の制動力配分が理想配分に調整される。このステップ1015が前記「第1配分手段」に対応する。
このような処理は、フラグZ1=0になるまで繰り返し実行される。従って、ピッチ角加速度ddθpが正から負に変化するまで前後輪の制動力配分が理想配分に調整され続ける(即ち、ピッチング抑制制御1が継続される。図3の点a〜点bを参照)。
ピッチ角加速度ddθpが正から負に変化すると(図3の点bを参照)、フラグZ1が「1」から「0」に戻る(ステップ830を参照)。従って、Z1=Z2=0となるから、CPU51はステップ1005にて再び「Yes」と判定するようになり、ステップ1020に進み、フラグZ1の値が「1」から「0」に変更された時点から所定期間内であるか否かを判定する。
現時点は、ピッチ角加速度ddθpが正から負に変化した直後であるから前記所定期間内である。従って、CPU51はステップ1020にて「Yes」と判定してステップ1025に進み、第1つなぎ制御指示を行う。第1つなぎ制御とは、前後輪の制動力配分を理想配分から基本配分へと徐々に戻していく制御である。
このような処理は、前記所定期間が経過するまで繰り返し実行される。従って、前記所定期間が経過するまで第1つなぎ制御が継続されて前後輪の制動力配分が理想配分から基本配分へと徐々に変更されていく(図3の点b〜点cを参照)。
前記所定期間が経過すると(図3の点cを参照)、CPU51はステップ1020にて「No」と判定するようになり、ステップ1030に進み、フラグZ2の値が「1」から「0」に変更された時点から所定期間内であるか否かを判定する。
CPU51は、現時点では「No」と判定してステップ1035に進んで、基本配分制御指示を行う。これにより、前後輪の制動力配分が基本配分に調整される。このステップ1035が前記「基本配分手段」に対応する。
このような処理は、フラグZ1=Z2=0が成立しなくなるまで(即ち、急激な制動解除操作が開始されるまで)繰り返し実行される。従って、急激な制動解除操作が開始されるまで前後輪の制動力配分が基本配分に調整され続ける(図3の点c〜点dを参照)。
この状態にて、急激な制動解除操作が開始された直後であるものとすると(図3の点dを参照)、Z1=0、Z2=1(ステップ920を参照)となっている。この場合、CPU51はステップ1005にて「No」と判定してステップ1010に進み、「No」と判定してステップ1040に進む。
CPU51はステップ1040に進むと、第2配分制御指示を行う。これにより、前後輪の制動力配分が第2配分に調整される(図3の点eを参照)。このステップ1040が前記「第2配分手段」に対応する。
このような処理は、フラグZ2=0になるまで繰り返し実行される。従って、ピッチ角加速度ddθpが負から正に変化するまで前後輪の制動力配分が第2配分に調整され続ける(即ち、ピッチング抑制制御2が継続される。図3の点e〜点fを参照)。
ピッチ角加速度ddθpが負から正に変化すると(図3の点fを参照)、フラグZ2が「1」から「0」に戻る(ステップ930を参照)。従って、Z1=Z2=0となるから、CPU51はステップ1005にて再び「Yes」と判定するようになり、ステップ1020に進み、「No」と判定してステップ1030に進む。
現時点は、ピッチ角加速度ddθpが負から正に変化した直後であるから前記所定期間内である。従って、CPU51はステップ1030にて「Yes」と判定してステップ1045に進み、第2つなぎ制御指示を行う。第2つなぎ制御とは、前後輪の制動力配分を第2配分から基本配分へと徐々に戻していく制御である。
このような処理は、前記所定期間が経過するまで繰り返し実行される。従って、前記所定期間が経過するまで第2つなぎ制御が継続されて前後輪の制動力配分が第2配分から基本配分へと徐々に変更されていく(図3の点f〜点gを参照)。
前記所定期間が経過すると(図3の点gを参照)、CPU51はステップ1030にて「No」と判定するようになり、ステップ1035に進んで、基本配分制御指示を行う。これにより、前後輪の制動力配分が基本配分に戻される(図3の点g〜点aを参照)。
図11は、時刻t11にて急激な制動操作が開始された場合における前後輪の制動力、車体減速度、及びピッチ角の変化に関するシミュレーション結果の一例を示す。図11の破線は、制動中において常に基本配分制御が実行される場合を示し、図11の実線は、上述した図8〜図10に示したフローチャートに沿って本装置によりブレーキ制御(具体的には、ピッチング抑制制御1、第1つなぎ制御、及び基本配分制御)が行われる場合を示している。図11では、時刻t11〜t12の間、ピッチング抑制制御1が実行され、その後、第1つなぎ制御、基本配分制御が順に実行されている。
図11から理解できるように、本装置によりピッチング抑制制御1が実行されることでピッチ角の増大速度が減少し、この結果、ピッチ角のオーバーシュートが大幅に抑制され得る(実線を参照)。また、ピッチング抑制制御1(即ち、理想配分制御)中における前後制動力の総和は基本配分制御の場合と同じ値に維持されるから、ピッチング抑制制御1が実行されても車体減速度は基本配分制御の場合と同じように推移する。従って、運転者の減速リーリングに違和感が生じることがない。
図12は、制動中において時刻t21にて急激な制動解除操作が開始された場合における前後輪の制動力、車体減速度、及びピッチ角の変化に関するシミュレーション結果の一例を示す。図12の破線は、制動中において常に基本配分制御が実行される場合を示し、図12の実線は、上述した図8〜図10に示したフローチャートに沿って本装置によりブレーキ制御(具体的には、ピッチング抑制制御2、第2つなぎ制御、及び基本配分制御)が行われる場合を示している。図12では、時刻t21以前にて基本配分制御が実行され、時刻t21〜t22の間、ピッチング抑制制御2が実行され、その後、第2つなぎ制御、基本配分制御が順に実行されている。
図12から理解できるように、本装置によりピッチング抑制制御2が実行されることでピッチ角の減少速度が減少し、この結果、ピッチ角のオーバーシュートが大幅に抑制され得る(実線を参照)。また、ピッチング抑制制御2(即ち、第2配分制御)中における前後制動力の総和は基本配分制御の場合と同じ値に維持されるから、ピッチング抑制制御2が実行されても車体減速度は基本配分制御の場合と同じように推移する。従って、運転者の減速リーリングに違和感が生じることがない。
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る車両挙動制御装置は、アンチダイブジオメトリ及びアンチリフトジオメトリをそれぞれを有する前輪側及び後輪側のサスペンションを備えた車両に適用される。この前後輪サスペンションは、アンチリフトジオメトリによるアンチリフト効果の大きさがアンチダイブジオメトリによるアンチダイブ効果の大きさよりも大きいように設計されている。通常、制動中において前後輪の制動力配分が基本配分に調整される。一方、急激な制動操作が開始された場合、制動開始からの所定の短期間においてのみ、前後輪の制動力配分が基本配分に代えて基本配分よりも後輪の制動力配分が大きい第1配分(=理想配分)に調整される。これにより、アンチリフト効果の大きさの増大量がアンチダイブ効果の大きさの減少量よりも大きくなって車両全体としてみればアンチピッチングモーメントが増大する。
この結果、急激な制動操作が開始されてピッチ角に大きな乱れが発生し得る場合において、サスペンション装置に特殊な機構を設けることなくアンチピッチング効果を大きくしてピッチ角を増大し難くすることができる。従って、アンチピッチング効果が大きくないアンチピッチングジオメトリを備えたサスペンションを採用して非制動時の乗り心地を良好に維持しつつ制動時のピッチング(ピッチ角の乱れ)を効果的に抑制することができる。
また、この場合、前記第1配分として、理想配分が使用される。これにより、基本配分から第1配分への変更に起因して後輪が前輪に先行してロックする現象の発生を抑制し得る範囲内において、基本配分から第1配分への変更によるアンチピッチング効果の増大量を最大とすることができる。
加えて、制動中において急激な制動解除操作が開始された場合、制動解除開始からの所定の短期間においてのみ、前後輪の制動力配分が基本配分に代えて基本配分よりも後輪の制動力配分が小さい第2配分に調整される。これにより、アンチリフト効果の大きさの減少量がアンチダイブ効果の大きさの増大量よりも大きくなって車両全体としてみればアンチピッチングモーメントが減少する。
この結果、急激な制動解除操作が開始されてピッチ角に大きな乱れが発生し得る場合において、サスペンション装置に特殊な機構を設けることなくアンチピッチング効果を小さくしてピッチ角を減少し難くすることができる。従って、制動解除時のピッチング(ピッチ角の乱れ)を効果的に抑制することができる。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、ピッチング抑制制御1(即ち、理想配分制御)の終期である「ピッチ角加速度ddθpが正から負に変化する時点」、並びに、ピッチング抑制制御2(即ち、第2配分制御)の終期である「ピッチ角加速度ddθpが負から正に変化する時点」が到来したか否かが、ピッチ角センサ43から得られるピッチ角θpを2回時間微分して得られるピッチ角加速度ddθpに基づいて判定されているが(ステップ825、925を参照)、ピッチ角センサ43に代えてピッチ角速度センサにより検出されるピッチ角速度を1回時間微分して得られるピッチ角加速度が利用されてもよい。また、車体の前後にそれぞれ設けられた各車高センサの検出結果に基づいて得られるピッチ角加速度が利用されてもよい。
また、急激な制動操作の開始から「ピッチ角加速度ddθpが正から負に変化する時点」までの時間、並びに、急激な制動解除操作の開始から「ピッチ角加速度ddθpが負から正に変化する時点」までの時間は、車体の諸元等から得られる車体のピッチング方向の固有振動数を利用して予め推定することもできる。従って、ピッチング抑制制御1、2の継続時間を上記固有振動数に基づいて予め決定されている一定時間に設定してもよい。
また、上記実施形態においては、前記第1配分として理想配分が使用されているが、理想配分よりも後輪側の配分が小さい配分(であって且つ基本配分よりも後輪側の配分が大きい配分)が使用されてもよい。
また、上記実施形態においては、前記第2配分として、基本配分よりの後輪側の配分が小さい配分であって、且つ、制動解除操作開始時点でのブレーキペダル踏力Fpの増大速度dFp(負の値)が小さいほど(絶対値が大きいほど)より後輪側の配分が小さい配分が使用されてもよい。
また、上記実施形態においては、前記基本配分として、理想配分よりも後輪側の配分が小さい配分が使用されているが、理想配分と等しい配分が使用されてもよい。この場合、前記第1配分としては、理想配分よりも後輪側の配分が大きい配分が使用される。更には、前記基本配分として、理想配分よりも後輪側の配分が小さい配分が使用され、且つ前記第1配分として、理想配分と等しいか、又は理想配分よりも後輪側の配分が大きい配分が使用されてもよい。
また、上記実施形態においては、ピッチング抑制制御1の開始条件として、ステップ810、815の条件が使用されているが、これに車両走行中であることを加えても良い。同様に、ピッチング抑制制御2の開始条件として、ステップ910、915の条件が使用されているが、これに車両走行中であることを加えても良い。車両走行中であるか否かは、車輪速度センサ41**から得られる車体速度が「0」であるか否かに基づいて判定され得る。
加えて、上記実施形態においては、前記「ブレーキ制御装置」として、所謂ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムが使用されているが、「ブレーキ制御装置」として、非制御時においてマスタシリンダ圧そのものが各ホイールシリンダにそれぞれ供給され、制御時において各ホイールシリンダ圧を独立してマスタシリンダ圧と異なる圧力に調整可能なシステムを採用してもよい。この場合、非制御時において前後輪の制動力配分が基本配分となるように各車輪のブレーキ装置(ブレーキパッド、ブレーキディスク等)が設計され、ピッチング抑制制御1,2実行中においてのみ各ホイールシリンダ圧がマスタシリンダ圧と異なる圧力に調整されて第1、第2配分が達成される。
本発明の実施形態に係る車両挙動制御装置を搭載した車両の概略構成図である。 図1に示した車両のサスペンションが備えるアンチピッチングジオメトリを説明するための図である。 前後輪の制動力配分の制御目標として使用される基本配分、理想配分、及び第2配分を示したグラフである。 図4(a)は、前後輪の制動力配分が基本配分で一定に調整される場合における種々の力及びアンチピッチングモーメントの一例を示した図である。図4(b)は、図4(a)に示した例において前後輪の制動力配分を基本配分から理想配分へ変更した場合における種々の力及びアンチピッチングモーメントの変化を示した図である。 急激な制動操作が開始された場合における、ピッチ角、ピッチ角速度、及びピッチ角加速度の変化の一例を、制動中において基本配分が常に採用される場合と、制動開始からの短期間において理想配分が採用される場合とで比較しながら示したタイムチャートである。 図6(a)は、前後輪の制動力配分が基本配分で一定に調整される場合における種々の力及びアンチピッチングモーメントの一例を示した図である。図6(b)は、図6(a)に示した例において前後輪の制動力配分を基本配分から第2配分へ変更した場合における種々の力及びアンチピッチングモーメントの変化を示した図である。 急激な制動解除操作が開始された場合における、ピッチ角、ピッチ角速度、及びピッチ角加速度の変化の一例を、制動中において基本配分が常に採用される場合と、制動解除開始からの短期間において第2配分が採用される場合とで比較しながら示したタイムチャートである。 図1に示したCPUが実行するピッチング抑制制御1の開始・終了判定を行うためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行するピッチング抑制制御2の開始・終了判定を行うためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行するブレーキ制御を行うためのルーチンを示したフローチャートである。 急激な制動操作が開始された場合における、前後輪の制動力、車体減速度、及びピッチ角の変化に関するシミュレーション結果の一例を示したタイムチャートである。 急激な制動解除操作が開始された場合における、前後輪の制動力、車体減速度、及びピッチ角の変化に関するシミュレーション結果の一例を示したタイムチャートである。
符号の説明
10…車両挙動制御装置、30…ハイドロリックユニット、41**…車輪速度センサ、42…踏力センサ、43…ピッチ角センサ、50…電気制御装置、51…CPU

Claims (5)

  1. アンチダイブジオメトリ及びアンチリフトジオメトリをそれぞれを有する前輪側及び後輪側のサスペンションであって後輪に付与される制動力の変化に対する前記アンチリフトジオメトリによるアンチリフト効果の大きさの変化が前輪に付与される制動力の変化に対する前記アンチダイブジオメトリによるアンチダイブ効果の大きさの変化よりも大きい前輪側及び後輪側のサスペンションと、
    前記前輪及び後輪に付与される制動力をそれぞれ独立に制御可能なブレーキ制御装置(30)と、
    を備えた車両に適用される車両挙動制御装置であって、
    運転者によるブレーキ操作部材(BP)の操作中において前記前輪及び後輪の制動力の総和が前記ブレーキ操作部材(BP)の操作量(Fp)に応じた要求値になり且つ前記前輪及び後輪の制動力の配分が、前記前輪及び後輪のロックが同時に発生する理想配分と等しいか、又は前記理想配分よりも後輪側の配分が小さい基本配分になるように前記ブレーキ制御装置(30)を制御する基本配分手段(50、1035)と、
    前記ブレーキ操作部材(BP)の操作が開始され且つその操作開始時の前記操作量(Fp)の増大速度が所定速度(A)よりも大きい場合、前記車両の前傾方向を正とするピッチ角(θp)の角加速度(ddθp)が正から負に変化する時点まで、前記前輪及び後輪の制動力の総和が前記要求値になり且つ前記前輪及び後輪の制動力の配分が、前記基本配分よりも後輪側の配分が大きい第1配分になるように前記ブレーキ制御装置(30)を制御する第1配分制御手段(50、図8のルーチン、1015)と、
    を備えた車両挙動制御装置。
  2. アンチダイブジオメトリ及びアンチリフトジオメトリをそれぞれを有する前輪側及び後輪側のサスペンションであって後輪に付与される制動力の変化に対する前記アンチリフトジオメトリによるアンチリフト効果の大きさの変化が前輪に付与される制動力の変化に対する前記アンチダイブジオメトリによるアンチダイブ効果の大きさの変化よりも大きい前輪側及び後輪側のサスペンションと、
    前記前輪及び後輪に付与される制動力をそれぞれ独立に制御可能なブレーキ制御装置(30)と、
    を備えた車両に適用される車両挙動制御装置であって、
    運転者によるブレーキ操作部材(BP)の操作中において前記前輪及び後輪の制動力の総和が前記ブレーキ操作部材(BP)の操作量(Fp)に応じた要求値になり且つ前記前輪及び後輪の制動力の配分が、前記前輪及び後輪のロックが同時に発生する理想配分と等しいか、又は前記理想配分よりも後輪側の配分が小さい基本配分になるように前記ブレーキ制御装置(30)を制御する基本配分手段(50、1035)と、
    前記ブレーキ操作部材(BP)の操作中において前記操作量(Fp)の減少速度が所定速度(−B)よりも小さくなった場合、前記車両の前傾方向を正とするピッチ角(θp)の角加速度(ddθp)が負から正に変化する時点まで、前記前輪及び後輪の制動力の総和が前記要求値になり且つ前記前輪及び後輪の制動力の配分が、前記基本配分よりも後輪側の配分が小さい第2配分になるように前記ブレーキ制御装置(30)を制御する第2配分制御手段(50、図9のルーチン、1040)と、
    を備えた車両挙動制御装置。
  3. 前輪側サスペンションのストロークに起因する前記車両の車体側面視での前記車体に対する前輪の動きの瞬間中心(Cf)が前記前輪の接地点(Ef)よりも上方且つ車体後方に位置するアンチダイブジオメトリを有する前輪側サスペンションと、
    後輪側サスペンションのストロークに起因する前記車体側面視での前記車体に対する後輪の動きの瞬間中心(Cr)が前記後輪の接地点(Er)よりも上方且つ車体前方に位置するアンチリフトジオメトリを有する後輪側サスペンションであって、前記後輪に付与される制動力の変化に対する前記アンチリフトジオメトリによるアンチリフト効果の大きさの変化が前記前輪に付与される制動力の変化に対する前記アンチダイブジオメトリによるアンチダイブ効果の大きさの変化よりも大きい後輪側のサスペンションと、
    前記前輪及び後輪に付与される制動力をそれぞれ独立に制御可能なブレーキ制御装置(30)と、
    運転者によるブレーキ操作部材(BP)の操作中において前記前輪及び後輪の制動力の総和が前記ブレーキ操作部材(BP)の操作量(Fp)に応じた要求値になり且つ前記前輪及び後輪の制動力の配分が、前記前輪及び後輪のロックが同時に発生する理想配分と等しいか、又は前記理想配分よりも後輪側の配分が小さい基本配分になるように前記ブレーキ制御装置(30)を制御する基本配分手段(50、1035)と、
    前記ブレーキ操作部材(BP)の操作が開始され且つその操作開始時の前記操作量(Fp)の増大速度が所定速度(A)よりも大きい場合、前記車両の前傾方向を正とするピッチ角(θp)の角加速度(ddθp)が正から負に変化する時点まで、前記前輪及び後輪の制動力の総和が前記要求値になり且つ前記前輪及び後輪の制動力の配分が、前記基本配分よりも後輪側の配分が大きい第1配分になるように前記ブレーキ制御装置(30)を制御する第1配分制御手段(50、図8のルーチン、1015)と、
    を備えた車両挙動制御装置。
  4. 前輪側サスペンションのストロークに起因する前記車両の車体側面視での前記車体に対する前輪の動きの瞬間中心(Cf)が前記前輪の接地点(Ef)よりも上方且つ車体後方に位置するアンチダイブジオメトリを有する前輪側サスペンションと、
    後輪側サスペンションのストロークに起因する前記車体側面視での前記車体に対する後輪の動きの瞬間中心(Cr)が前記後輪の接地点(Er)よりも上方且つ車体前方に位置するアンチリフトジオメトリを有する後輪側サスペンションであって、前記後輪に付与される制動力の変化に対する前記アンチリフトジオメトリによるアンチリフト効果の大きさの変化が前記前輪に付与される制動力の変化に対する前記アンチダイブジオメトリによるアンチダイブ効果の大きさの変化よりも大きい後輪側のサスペンションと、
    前記前輪及び後輪に付与される制動力をそれぞれ独立に制御可能なブレーキ制御装置(30)と、
    運転者によるブレーキ操作部材(BP)の操作中において前記前輪及び後輪の制動力の総和が前記ブレーキ操作部材(BP)の操作量(Fp)に応じた要求値になり且つ前記前輪及び後輪の制動力の配分が、前記前輪及び後輪のロックが同時に発生する理想配分と等しいか、又は前記理想配分よりも後輪側の配分が小さい基本配分になるように前記ブレーキ制御装置(30)を制御する基本配分手段(50、1035)と、
    前記ブレーキ操作部材(BP)の操作中において前記操作量(Fp)の減少速度が所定速度(−B)よりも小さくなった場合、前記車両の前傾方向を正とするピッチ角(θp)の角加速度(ddθp)が負から正に変化する時点まで、前記前輪及び後輪の制動力の総和が前記要求値になり且つ前記前輪及び後輪の制動力の配分が、前記基本配分よりも後輪側の配分が小さい第2配分になるように前記ブレーキ制御装置(30)を制御する第2配分制御手段(50、図9のルーチン、1040)と、
    を備えた車両挙動制御装置。
  5. 請求項1又は請求項3に記載の車両挙動制御装置において、
    前記基本配分が前記理想配分よりも後輪側の配分が小さい配分に設定され、前記第1配分が、前記理想配分と等しいか、又は前記理想配分よりも後輪側の配分が大きい配分に設定された車両挙動制御装置。
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