以下、本発明に係る可搬型放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下、可搬型放射線画像撮影装置を単に放射線画像撮影装置と表す。また、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。
[放射線画像撮影装置]
[第1の実施の形態]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレータ3や基板4等が収納された可搬型(カセッテ型)の装置として構成されている。
筐体2は、少なくとも放射線の照射を受ける側の面R(以下、放射線入射面Rという。)が放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。なお、図1や図2では、筐体2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、筐体2を一体的に角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
また、図1に示すように、筐体2の側面部分には、電源スイッチ36や、LED等で構成されたインジケータ37、図示しないバッテリ41(後述する図7参照)の交換等のために開閉可能とされた蓋部材38等が配置されている。また、本実施形態では、蓋部材38の側面部には、外部と無線で通信するための通信手段であるアンテナ装置39が埋め込まれている。
また、図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。なお、本実施形態では、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに貼り合わされるようになっている。シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、それぞれ放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも、例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図3や図4の拡大図に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15により、接続された走査線5にオン電圧が印加され、ゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、放射線検出素子7内で発生し蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5にオフ電圧が印加され、ゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内で発生した電荷を放射線検出素子7内に蓄積させるようになっている。
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図5に示す断面図を用いて簡単に説明する。図5は、図4におけるX−X線に沿う断面図である。
基板4の面4a上に、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が図中上方から照射されると、電磁波は放射線検出素子7のi層76に到達して、i層76内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、シンチレータ3から照射された電磁波を電荷に変換するようになっている。
また、p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。本実施形態では、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態では、放射線検出素子7として、上記のようにp層77、i層76、n層75の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7にバイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
図3や図4に示すように、本実施形態では、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で1本の結線10に結束されている。
本実施形態では、図3に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、IC12a等のチップが組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1の基板4部分が形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路図である。
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78にそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。
また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22は、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を制御するようになっている。なお、本実施形態では、バイアス線9の結線10に、結線10(バイアス線9)を流れる電流の電流量を検出する電流検出手段43が設けられているが、これについては後で説明する。
また、本実施形態では、放射線検出素子7のp層77側(図5参照)に第2電極78を介してバイアス線9が接続されていることからも分かるように、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極78にバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極74側にかかる電圧以下の電圧が印加されるようになっている。
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(図7、図8中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図7、図8中ではGと表記されている。)は、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる各走査線5の各ラインL1〜Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図7、図8中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
走査駆動手段15は、本実施形態では、電源回路15aとゲートドライバ15bとを備えており、ゲートドライバ15bに接続されている各走査線5を介してTFT8のゲート電極8gに印加する電圧を制御するようになっている。
具体的には、走査駆動手段15の電源回路15aは、ゲートドライバ15bから各走査線5に印加するオン電圧やオフ電圧の電圧値をそれぞれ所定の電圧値に設定して、ゲートドライバ15bに供給するようになっている。また、走査駆動手段15のゲートドライバ15bは、パルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)により各走査線5に印加するオン電圧のパルス波のパルス幅やデューティ比を変調できるようになっている。
走査駆動手段15から各走査線5を介したTFT8に対するオン電圧の印加のさせ方については後で詳しく説明する。
各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、読み出しIC16には所定個数の読み出し回路17が設けられており、読み出しIC16が複数設けられることにより、信号線6の本数分の読み出し回路17が設けられるようになっている。
読み出し回路17は、増幅回路18と、相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling)回路19と、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とで構成されている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
本実施形態では、増幅回路18はチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続されて構成されている。また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には初期電圧V0が印加されるようになっている。なお、初期電圧V0は適宜の値に設定される。
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。電荷リセット用スイッチ18cがオフの状態で、放射線検出素子7のTFT8がオン状態とされると(すなわち、TFT8のゲート電極8gに走査線5を介してオン電圧が印加されると)、当該放射線検出素子7から放出された電荷がコンデンサ18bに流入して蓄積され、蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。
増幅回路18は、このようにして、各放射線検出素子7から出力された電荷量に応じて電圧値を出力して電荷電圧変換して増幅するようになっている。また、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされると、増幅回路18の入力側と出力側とが短絡されてコンデンサ18bに蓄積された電荷が放電されて増幅回路18がリセットされるようになっている。なお、増幅回路18を、放射線検出素子7から出力された電荷に応じて電流を出力するように構成することも可能である。
増幅回路18の出力側には、相関二重サンプリング回路(CDS)19が接続されている。相関二重サンプリング回路19は、本実施形態では、サンプルホールド機能を有しており、この相関二重サンプリング回路19におけるサンプルホールド機能は、制御手段22から送信されるパルス信号によりそのオン/オフが制御されるようになっている。
すなわち、相関二重サンプリング回路19は、増幅回路18がリセットされた後、電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態とされて、放射線検出素子7から放出された電荷がコンデンサ18bに流入して蓄積され始めた時点で制御手段22から1回目のパルス信号を受信すると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値を保持する。
そして、その時点から所定時間経過した後、放射線検出素子7から放出された電荷がコンデンサ18bに流入して蓄積された時点で制御手段22から2回目のパルス信号を受信すると、その時点で再び増幅回路18から出力されている電圧値を保持して、それらの電圧値の差分値を下流側に画像データとして出力するようになっている。
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データは、アナログマルチプレクサ21に送信され、アナログマルチプレクサ21から順次A/D変換器20に送信される。そして、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データに変換されて記憶手段40に出力されて順次保存されるようになっている。
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータにより構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記憶手段40が接続されている。
また、制御手段22には、前述したアンテナ装置39が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段40、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ41が接続されている。このように、バッテリ41は、放射線画像撮影装置1のハウジング2内に内蔵されており、バッテリ41には、外部装置からバッテリ41に電力を供給してバッテリ41を充電する際の接続端子42が取り付けられている。
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、そのサンプルホールド機能のオン/オフを制御する等の各種の処理を実行するようになっている。
また、制御手段22は、放射線技師等の操作者により電源スイッチ36が操作される等して手動で、或いは、外部装置からアンテナ装置39を介して無線で、信号が入力されることにより、各部材に対する電力の供給状態を、放射線検出素子7等への電力の供給を停止して必要な部材にのみ電力を供給する省電力モード(sleepモード)と、放射線検出素子7等に電力を供給して放射線画像撮影を可能とする撮影可能モード(wake upモード)との間で切り替えることができるように構成されている。
省電力モードでは、放射線検出素子7等に電力が供給されないため、バッテリ41の電力消費を抑制することができるが、放射線画像撮影を行うことはできない。また、撮影可能モードでは、放射線検出素子7等の各部材に電力が供給されて放射線検出が可能な状態となるが、バッテリ41の電力が消費される。そのため、制御手段22は、各部材に対する電力の供給状態を撮影可能モードに切り替えた後、所定時間経過しても放射線画像撮影装置1に放射線が照射されない場合には、各部材に対する電力の供給状態を省電力モードに切り替えるようになっている。
電流検出手段43は、各バイアス線9が結束された結線10内を流れる電流を検出するようになっている。本実施形態では、電流検出手段43は、図示を省略するが、結線10に直列に接続される所定の抵抗値を有する抵抗と、抵抗の両端子間の電圧を測定する差動アンプとを備えて構成されており、差動アンプで抵抗の両端子間の電圧を測定することで結線10を流れる電流を電圧値に変換して検出するようになっている。
電流検出手段43に備えられる前記抵抗としては、各バイアス線9や結線10を流れる微弱な電流を増幅して電圧値に変換するために比較的大きな抵抗値を有する抵抗が用いられるようになっており、電流検出手段43は、検出した結線10の電流量に相当する電圧値を制御手段22に出力するようになっている。
なお、例えば放射線画像撮影時の放射線照射によって放射線検出素子7内に蓄積された電荷を読み出す際に、バイアス線9や結線10等にも電流が流れるが、電流検出手段43の抵抗の抵抗値が比較的大きいと、バイアス線9や結線10等を流れる電流の妨げとなる。
そのため、電流検出手段43には前記抵抗の両端子間を短絡する図示しないスイッチが設けられており、制御手段22は、通常の状態ではこのスイッチをオン状態として抵抗の両端子間を短絡させておき、バイアス線9や結線10等に流れる電流量に相当する電圧値の情報が必要な場合等にスイッチをオフ状態に切り替えて、電流検出手段43から検出した結線10の電流量に相当する電圧値を制御手段22や走査駆動手段15に出力させるようになっている。
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用について説明するとともに、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1における走査駆動手段15から各走査線5を介したTFT8に対するオン電圧の印加のさせ方について説明する。
放射線画像撮影装置1の制御手段22(図7参照)は、放射線画像撮影を行うために操作者により手動で、或いは外部装置からアンテナ装置39を介して無線で覚醒信号が入力されると、放射線画像撮影装置1の各部材に対する電力の供給状態を省電力モードから撮影可能モードに切り替える。
走査駆動手段15の電源回路15aには、走査線5を介して各放射線検出素子7のスイッチ手段であるTFT8のゲート電極8gに印加するオフ電圧Voff、すなわち各放射線検出素子7のTFT8を閉じるためのオフ電圧Voffとして、例えば図9に示すように−10[V]の電圧値を印加するように設定されている。
そして、制御手段22は、各部材に対する電力の供給状態が省電力モードから撮影可能モードに切り替わると走査駆動手段15に信号を送信し、走査駆動手段15の電源回路15aは、制御手段22から信号を受信すると、ゲートドライバ15bに対してオフ電圧Voffを設定する。そして、走査駆動手段15のゲートドライバ15bは、走査線5の全てのラインL1〜Lxを介して全てのTFT8に対してオフ電圧Voffを印加する(時刻T0)。
また、制御手段22は、各部材に対する電力の供給状態が省電力モードから撮影可能モードに切り替わると、バイアス電源14に信号を送信して、バイアス電源14から各バイアス線9や結線10を介して各放射線検出素子7に対して所定の電圧値のバイアス電圧を印加させる。
この後、各放射線検出素子7のリセット処理が行われるが、本実施形態では、このリセット処理の際、走査駆動手段15は、走査線5の全てのラインL1〜Lxを介して全てのTFT8に対して通常のオン電圧である例えば+15[V]のオン電圧Von3を印加するのではなく、異なる複数の電圧値Von1、Von2、Von3のオン電圧を印加し、オン電圧Von1、Von2、Von3をリセット処理開始時から段階的に増加させるようにして(すなわち、Von1<Von2<Von3)、各走査線5を介してTFT8のゲート電極8gに印加する電圧を制御して、各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流出する電流Iを制限するようになっている。
具体的には、図9に示すように、走査駆動手段15の電源回路15aは、まず、ゲートドライバ15bに対して第1のオン電圧Von1を設定する。そして、走査駆動手段15のゲートドライバ15bは、走査線5の全てのラインL1〜Lxを介して全てのTFT8に対して第1のオン電圧Von1を印加する(時刻T1)。
そして、所定の時間が経過した後、走査駆動手段15の電源回路15aは、続いて、ゲートドライバ15bに対して第2のオン電圧Von2を設定する。そして、走査駆動手段15のゲートドライバ15bは、走査線5の全てのラインL1〜Lxを介して全てのTFT8に対して第2のオン電圧Von2を印加する(時刻T2)。
そして、さらに所定の時間が経過した後、走査駆動手段15の電源回路15aは、続いて、ゲートドライバ15bに対して通常のオン電圧である第3のオン電圧Von3を設定する。そして、走査駆動手段15のゲートドライバ15bは、走査線5の全てのラインL1〜Lxを介して全てのTFT8に対して第3のオン電圧Von3を印加する(時刻T3)。
なお、このように、本実施形態では、オン電圧をVon1、Von2、Von3の3段階で引き上げる場合について説明するが、オン電圧を2段階で引き上げるように構成してもよく、或いは4段階以上で引き上げるように構成することも可能である。また、一旦引き上げたオン電圧を途中の段階で引き下げるように構成してもよく、オン電圧を何段階で引き上げるかや、その電圧値をどのように上下させるかは適宜決められる。
ゲート電極8gに第1のオン電圧Von1が印加されるとTFT8がオン状態となり、各放射線検出素子7から第1電極74付近に溜まっていた余分な電荷(本実施形態では電子)が信号線6にそれぞれ流出する。一方、各放射線検出素子7の反対側の電極である第2電極78付近には第1電極74付近に溜まっていた余分な電荷とは正負が反対の電荷(本実施形態では正孔)が溜まっているが、電荷(電子)の信号線6への流出にあわせて、その電荷(正孔)も各バイアス線9に流出し、結線10を通ってバイアス電源14に流れ込む。
しかし、本実施形態では、上記のように最初に印加される第1のオン電圧Von1の電圧値は、第3のオン電圧Von3である通常のオン電圧の電圧値(例えば+15[V])よりも低い(図10(A)参照)。そのため、バイアス電源14に流れ込む電流を電流検出手段43でモニタすると、図10(B)に示すように、第1のオン電圧Von1が印加された場合も通常の電圧値のオン電圧(第3のオン電圧Von3)が印加された場合も、各放射線検出素子7の第2電極78からバイアス線9の結線10に流れ込む電流Iは同様に上昇するが、第1のオン電圧Von1が印加された場合(実線)には、通常の電圧値のオン電圧が印加された場合(一点鎖線)より低い値で電流Iの上昇が止まり、緩やかに下降し始める。
続いて、走査線5の全てのラインL1〜Lxを介して全てのTFT8に対して印加されるオン電圧の電圧値が第2の電圧値Von2に引き上げられると(図11(A)参照)、図11(B)に示すように、バイアス線9の結線10に流れ込む電流Iは再度上昇する。しかし、この場合も、印加される第2のオン電圧Von2の電圧値は、第3のオン電圧Von3である通常のオン電圧の電圧値(例えば+15[V])よりも低いため、通常の電圧値のオン電圧が印加された場合(一点鎖線)より低い値で電流Iの上昇が止まり、緩やかに下降し始める。
そして、最後に、走査線5の全てのラインL1〜Lxを介して全てのTFT8に対して印加されるオン電圧の電圧値が通常のオン電圧である第3の電圧値Von3に引き上げられると(図12(A)参照)、図12(B)に示すように、バイアス線9の結線10に流れ込む電流Iは再度上昇する。しかし、この場合、第1のオン電圧Von1が印加されていた時刻T1から時刻T2の間と、第2のオン電圧Von2が印加されていた時刻T2から時刻T3の間に、各放射線検出素子7から既に多くの余分な電荷が流出してしまっている。
そのため、通常のオン電圧である第3のオン電圧Von3が印加されても、電流Iは、通常の電圧値のオン電圧が印加された場合(一点鎖線)のピーク値までは上昇せず、それより低い値でピークとなり、その後は減少していく。
なお、各放射線検出素子7から余分な電荷が流出しても、前述したように、各放射線検出素子7内では熱励起等により暗電荷が発生し続けるため、電流Iは0[A]まで下がらず、図12(B)に示すように、各放射線検出素子7から流出する暗電荷の総和に相当する電流量Idまでしか減少しない。
また、このように電流検出手段43により検出されるバイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iが、蓄積電荷のない状態で各放射線検出素子7から流出する暗電荷の総和に相当する電流量Id、或いはそれに近い値まで減少した時点で、全TFT8に印加する電圧を第3のオン電圧Von3からオフ電圧Voffに切り替えて各TFT8をオフ状態とするように構成することも可能である。
しかし、本実施形態では、放射線画像撮影の直前に行われる放射線検出素子7のリセット処理の場合には、後述するように、電流検出手段43によるバイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iの変化を監視して放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始を検出するように構成されており、バイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iの変化を監視し易くするため、走査駆動手段15は、時刻T3で走査線5の全てのラインL1〜Lxを介して全てのTFT8に対して第3のオン電圧Von3を印加した後、全TFT8に印加する電圧を第3のオン電圧Von3からオフ電圧Voffに切り替えずに、図9に示したように、所定の時間が経過した時点(時刻T4)でTFT8に印加するオン電圧を第4の電圧値Von4に低下させるようになっている。
そして、各走査線5を介して各TFT8に対してこの低下させた第4のオン電圧Von4を印加し続け、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始が検出された時点(時刻T5)で全TFT8に印加する電圧を第4のオン電圧Von4からオフ電圧Voffに切り替えるようになっている。以下、この点について説明する。
放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始(時刻T5)は、例えば放射線画像撮影装置1に放射線の線量を検出する放射線センサ等を取り付けておくことで検出することも可能であるが、本実施形態では、前述したように、電流検出手段43によるバイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iの変化を監視することにより放射線画像撮影装置1自体で検出するようになっている。
すなわち、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、照射された放射線がシンチレータ3で可視光等の別の波長の電磁波に変換され、その電磁波が直下の放射線検出素子7に入射する。入射した電磁波は放射線検出素子7のi層76(図5参照)に到達して、i層76内で電子正孔対が発生する。
放射線検出素子7内には、バイアス電源14からバイアス線9等を介して印加されたバイアス電圧により所定の電位勾配が形成されているため、放射線検出素子7内で発生した電子正孔対のうち、一方の電荷(本実施形態では電子)が第1電極74側に移動する。また、この一方の電荷と等量の他方の電荷(本実施形態では正孔)は、放射線検出素子7の第2電極78側に移動する。
その際、TFT8がオン状態とされていれば、放射線検出素子7の第1電極74からTFT8を介して電子が信号線6に流出し、それにあわせて、それと等量の正孔が放射線検出素子7の第2電極78からバイアス線9に流出して結線10中を流れ、電流検出手段43で検出される。このように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、バイアス線9の結線10中を流れる電流の電流量Iが増加するため、電流検出手段43により検出されるバイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iの変化を監視し、電流量Iが増加したことを検出することで、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始を検出することができる。
そのため、図9に示したように、時刻T3で全てのTFT8に対して第3のオン電圧Von3を印加した後、引き続き、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始が検出されるまで全TFT8に印加する電圧を第3のオン電圧Von3のまま維持するように構成することも可能である。
しかし、放射線検出素子7の製造段階では、TFT8をオン状態とすると第1電極74と第2電極78との間があたかも導線で接続されているように電流が流れてしまう異常な放射線検出素子7が形成されてしまう。そして、そのような状況でTFT8に高い第3のオン電圧Von3を印加し続けると、正常な放射線検出素子7では内部で発生する暗電荷に対応する僅かな電流が流れるだけであるが、異常な放射線検出素子7ではあたかも導通しているかのような大きい電流が流れるため、バッテリ41の電力が浪費されてしまう。
そこで、本実施形態では、図9に示したように、走査駆動手段15は、時刻T3で走査線5の全てのラインL1〜Lxを介して全てのTFT8に対して第3のオン電圧Von3を印加した後もTFT8にオン電圧を印加するが、そのオン電圧を、所定の時間が経過した時点(時刻T4)で第4の電圧値Von4に低下させるようになっている。
この第4のオン電圧Von4は、この第4のオン電圧Von4をTFT8のゲート電極8gに印加してTFT8をオン状態とした場合にTFT8を流れ得るオン電流の電流量が、正常な放射線検出素子7に流れる、暗電流を含むリーク電流の電流量と同等、或いはそれを少し上回る量になるような電圧値に設定される。
そのため、正常な放射線検出素子7からは暗電荷に対応する僅かな電流が流出する状態となり、また、異常な放射線検出素子7についても、それから流出する電流量を、正常な放射線検出素子7に流れる暗電流を含むリーク電流の電流量と同量程度まで減少させることが可能となる。そして、バイアス線9の結線10中を流れる電流Iを、各放射線検出素子7から流出する暗電荷の総和に相当する電流量Id(図12(B)参照)に近い値まで減少させることが可能となるため、バッテリ41の電力の消費を抑制して、バッテリ41の消耗を防止することが可能となる。
また、放射線の照射が開始されるまで、TFT8に第4のオン電圧Von4を印加し続けることで、放射線の照射が開始されるまでに各放射線検出素子7内で発生する暗電荷が各放射線検出素子7から流出して除去されるため、最終的に得られる画像データの中から、少なくとも放射線の照射開始までに発生するノイズ成分を的確に除去することが可能となる。
そして、図13に示すように、電流検出手段43により検出されるバイアス線9の結線10中を流れる電流の電流量Iが増加することで放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始が検出されると、その時点(時刻T5)で、図9に示したように、全TFT8のゲート電極8gに印加する電圧を第4のオン電圧Von4からオフ電圧Voffに一斉に切り替える。
なお、時刻T5で放射線の照射が開始されたことが検出されて各TFT8のゲート電極8gにオフ電圧Voffが印加されると、各TFT8はオフ状態となり、各放射線検出素子7から電荷がほとんど流出しなくなる。
また、時刻T5以降も、放射線画像撮影のために放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が続き、放射線検出素子7内で電子正孔対が発生し続ける。
放射線検出素子7内で発生する電子正孔対は、電位勾配により電子が第1電極74側に移動し、正孔が第2電極78側に移動して分離されるが、放射線検出素子7から流出できなくなるため、放射線検出素子7内に蓄積される。そして、各放射線検出素子7内には、被写体を透過して当該放射線検出素子7に照射された放射線のエネルギ(本実施形態では、当該放射線がシンチレータ3に照射されシンチレータ3で変換された電磁波のエネルギ)に比例した電荷が蓄積される。
そして、放射線の照射が終了すると、走査駆動手段15は、図14に示すように、今度は、ゲートドライバ15bから信号読み出し用のオン電圧Von(本実施形態では第3の電圧値Von3と同じ通常のオン電圧)を印加する走査線5のラインL1〜Lxを順次切り替えて(すなわち走査して)、各放射線検出素子7から蓄積された電荷を読み出すようになっている。
その際、走査線5の各ラインL1〜Lxに接続されているTFT8のゲート電極8gにオン電圧Vonが印加されると、放射線検出素子7の第1電極74に蓄積された電子がTFT8を介して信号線6に放出され、読み出し回路17(図7等参照)で電荷電圧変換されて増幅される等して画像データに変換され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データに変換されて記憶手段40に保存される。
一方、放射線検出素子7の第1電極74からの電子の流出にあわせて、放射線検出素子7の第2電極78からは蓄積されていた正孔がバイアス線9に流出し、結線10を流れてバイアス電源14に流入する。なお、この放射線検出素子7からの電荷の読み出しの際には、バイアス線9や結線10を流れる電流の電流量Iを検出する必要はないため、制御手段22は、電流検出手段43のスイッチをオン状態として電流検出手段43の抵抗の両端子間を短絡させておく。
この後は、必要に応じて、ダーク読取処理等が行われる。すなわち、上記のように、本実施形態の放射線画像撮影装置1では、放射線の照射が開始され、各TFT8のゲート電極8gに印加していた第4のオン電圧Von4をオフ電圧Voffに切り替える(時刻T5)までは、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷は、TFT8がオン状態となっているため流出し、少なくとも放射線の照射開始までに発生するノイズ成分が画像データから除去される。
しかし、時刻T5に電圧がオフ電圧Voffに切り替えられて各TFT8がオフ状態とされた後は、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷は各放射線検出素子7内に蓄積される。そして、各放射線検出素子7内に蓄積された暗電荷は、上記の走査線5の各ラインL1〜Lxごとの各放射線検出素子7からの画像データの読み出しの際(時刻T61〜T6x)に画像データとともに読み出される。
そのため、各放射線検出素子7の画像データには、時刻T5から各ラインごとの読み出し開始時刻T61〜T6xまでの各期間ΔT1〜ΔTxに各放射線検出素子7内に蓄積された暗電荷に対応するオフセット分がそれぞれ含まれている。このオフセット分を画像データから差し引くことで、放射線の照射により発生した真の電荷に対応する画像データが得られる。そして、このオフセット分を算出する処理がダーク読取処理である。
ダーク読取処理では、走査線5の最終ラインであるラインLxまでの各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理が終了すると、まず、上記と同様にして、各放射線検出素子7のリセット処理が行われる。
リセット処理では、時刻T7に各TFT8に印加する電圧をオフ電圧Voffから第1のオン電圧Von1に切り替え、図14では記載を省略する時刻T8にオン電圧を第1の電圧値Von1から第2の電圧値Von2に上昇させ、時刻T9にオン電圧を第2の電圧値Von2から通常のオン電圧の電圧値である第3の電圧値Von3に上昇させて、時刻T10に各TFT8に印加するオン電圧を第3のオン電圧Von3から第4のオン電圧Von4に低下させる。そして、時刻T11に各TFT8に印加する電圧を第4のオン電圧Von4からオフ電圧Voffに切り替える。
時刻T11に電圧がオフ電圧Voffに切り替えられて各TFT8がオフ状態とされると、その後、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷は各放射線検出素子7内に蓄積される。そして、ダーク読取処理では、放射線画像撮影装置1に放射線を照射せずに、走査線5の各ラインL1〜Lxごとに放射線画像撮影の場合と同じ各期間ΔT1〜ΔTxだけ放置して、各放射線検出素子7内に暗電荷を蓄積させる。
ダーク読取処理における各期間ΔT1〜ΔTxに各放射線検出素子7に蓄積される暗電荷は、放射線画像撮影時における各期間ΔT1〜ΔTxに各放射線検出素子7に蓄積される暗電荷とそれぞれ等量になるはずであるから、各期間ΔT1〜ΔTx経過した後、上記と同じタイミングで、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから信号読み出し用のオン電圧Vonを印加する走査線5のラインL1〜Lxを順次切り替えて(すなわち走査して)、各放射線検出素子7から蓄積された暗電荷を読み出し、読み出し回路17で電荷電圧変換して増幅する等、上記と同様の処理を行って、それぞれダーク読取値として記憶手段40に保存する。
このようにして得られたダーク読取値をそのままオフセット分とするように構成することも可能であり、また、例えば上記のダーク読取処理を複数回行って、各放射線検出素子7ごとに得られた複数回分のダーク読取値の平均値等を算出する等して、それをオフセット分とするように構成することも可能である。このようにしてダーク読取処理を行うことで、画像データを補正するためのオフセット分を的確に取得することが可能となる。
また、上記のように、本発明に特有の各放射線検出素子7のリセット処理は、放射線画像撮影のために放射線画像撮影装置1の各部材に対する電力の供給状態を省電力モードから撮影可能モードに切り替えた場合だけでなく、ダーク読取処理のためのリセット処理(図14の時刻T7〜T11参照)等においても行われる。
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、異なる複数の電圧値Von1、Von2、Von3のオン電圧を印加し、オン電圧Von1、Von2、Von3をリセット処理開始時から段階的に増加させるようにして、各走査線5を介してTFT8のゲート電極8gに印加する電圧を制御する。
そのため、図12(B)に示すように、各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流出する電流Iが制限され、バイアス線9や結線10を流れる電流の電流量Iは、リセット処理時に最初から各TFT8に通常のオン電圧を印加した場合(図中の一点鎖線参照)に比べてそのピークが低くなる。そのため、放射線検出素子7のリセット処理が繰り返され、バイアス線9や結線10に多大な電流が流れることが繰り返されて結線10等が断線する確率を確実に低下させることが可能となり、事実上、結線10等の断線を防止することが可能となる。
また、放射線検出素子7のリセット処理を必要以上に頻繁に繰り返す必要がなくなるため、リセット処理を繰り返してバッテリの消費電力量が増大することを的確に防止して、バッテリの消耗を防止することが可能となる。さらに、全てのTFT8を同時にオン状態として各放射線検出素子7のリセット処理を同時に行うように構成すれば、各放射線検出素子7から余分な電荷を十分に除去する時間を確保しつつ、全放射線検出素子7のリセット処理に要する時間を短縮することが可能となる。
[第2の実施の形態]
上記の第1の実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8に印加するオン電圧の電圧値を第1の電圧値Von1から第2の電圧値Von2を経て第3の電圧値Von3に段階的に変化(増加)させることで、各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流出する電流Iを制限する場合について説明した。
しかし、TFT8に印加する電圧を制御して、各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流出する電流Iを制限する手法としては、この他にも、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8に印加するオン電圧のパルス幅やデューティ比を変調させて、時間的に短いパルス幅のオン電圧を複数回印加するようにして、各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流出する電流Iを制限することも可能である。第2の実施形態に係る放射線画像撮影装置では、このようにしてバイアス線9や結線10に流出する電流Iを制限する場合について説明する。
第2の実施形態に係る放射線画像撮影装置では、各手段等の構成は上記の第1の実施形態の場合と同様であるので、第1の実施形態と同じ符号を付して説明する。また、第1の実施形態では、走査駆動手段15から各TFT8のゲート電極8gに対して図9に示したような各電圧をそれぞれ印加したが、本実施形態では、走査駆動手段15から各TFT8のゲート電極8gに対して、図15に示すような短いパルス幅のオン電圧Vonを複数回印加するようになっている。
なお、本実施形態では、オン電圧の電圧値Vonは、上記の第1の実施形態における通常のオン電圧の電圧値Von3(信号読み出し用のオン電圧Vonに等しい。)が印加されるようになっているが、これ以外の電圧値のオン電圧を印加するように構成することも可能である。
本実施形態では、走査駆動手段15は、制御手段22が放射線画像撮影装置の各部材に対する電力の供給状態を省電力モードから撮影可能モードに切り替える等して送信した信号を受信すると、図15に示すように、ゲートドライバ15bから走査線5の全ラインL1〜Lxを介して全てのTFT8のゲート電極8gに例えば−10[V]のオフ電圧Voffを印加する(時刻t0)。
そして、走査駆動手段15は、走査線5の全てのラインL1〜Lxを介して全てのTFT8のゲート電極8gにオン電圧Vonを印加し(時刻t1)、所定の時間が経過した後(すなわち予め設定されたパルス幅のオン電圧Vonの印加が終了した後)、TFT8のゲート電極8gに印加する電圧をオン電圧Vonからオフ電圧Voffに切り替える(時刻t2)。
走査駆動手段15は、その後、このTFT8のゲート電極8gに印加する電圧のオン電圧Vonとオフ電圧Voffとの切り替えを、本実施形態では、予め設定された回数(複数回)だけ繰り返す(時刻t3〜t7)。
このようにTFT8のゲート電極8gに印加する電圧をオン電圧Vonとオフ電圧Voffとの間で切り替えた場合、まず、時刻t1でTFT8のゲート電極8gにオン電圧Vonが印加されてTFT8がオン状態となると、各放射線検出素子7の第1電極74付近に溜まっていた余分な電荷(本実施形態では電子)がTFT8を介して信号線6にそれぞれ流出する。
一方、各放射線検出素子7の反対側の電極である第2電極78付近には第1電極74付近に溜まっていた余分な電荷とは正負が反対の電荷(本実施形態では正孔)が溜まっているが、電荷(電子)の信号線6への流出にあわせて、その電荷(正孔)も各バイアス線9に流出し、結線10を通ってバイアス電源14に流れ込む。
そのため、バイアス電源14に流れ込む電流を電流検出手段43でモニタすると、図16に示すように、各放射線検出素子7からバイアス線9の結線10に流れ込む電流Iが上昇する。そして、そのTFT8のゲート電極8gにそのままオン電圧Vonを印加し続けると、図中一点鎖線で示すように、従来の放射線画像撮影装置の場合と同様に、各放射線検出素子7からバイアス線9の結線10に流れ込む電流Iが上昇し続け、最大値にまで達する。
しかし、本実施形態では、各放射線検出素子7からバイアス線9の結線10に流れ込む電流Iが最大値に達する以前に、TFT8のゲート電極8gに印加される電圧がオン電圧Vonからオフ電圧Voffに切り替えられるようになっており、時刻t2で電圧がオフ電圧Voffに切り替えられてTFT8がオフ状態となると、各放射線検出素子7からTFT8を介して信号線6に流出する余分な電子の流れが遮断されて止まる。そして、それにあわせて各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流出する余分な正孔の流れも止まり、各放射線検出素子7からバイアス線9の結線10に流れ込む電流Iが減少し始める。
そして、TFT8に印加される電圧がオン電圧Vonに切り替えられるとバイアス線9の結線10を流れる電流Iが増加し(時刻t3、t5、t7)、TFT8に印加される電圧がオフ電圧Voffに切り替えられるとバイアス線9の結線10を流れる電流Iが減少する(時刻t4、t6)という現象を繰り返しながら、各放射線検出素子7に蓄積された余分な電荷が放出されていく。
なお、本実施形態においても、前述したように各放射線検出素子7内では熱励起等により暗電荷が発生し続けるため、電流Iは0[A]まで下がらず、図16に示すように、各放射線検出素子7から流出する暗電荷の総和に相当する電流量Idまでしか減少しない。そのため、電流検出手段43により検出されるバイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iが、各放射線検出素子7から流出する暗電荷の総和に相当する電流量Id、或いはそれに近い値まで減少した時点で、全TFT8に印加する電圧のオン電圧Vonとオフ電圧Voffとの間での切り替えを終了するように構成することが可能である。
本実施形態においても、放射線画像撮影の直前に行われる場合以外の放射線検出素子7のリセット処理においては、走査駆動手段15は、バイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iが各放射線検出素子7から流出する暗電荷の総和に相当する電流量Id、或いはそれに近い値まで減少した時点で、全TFT8に印加する電圧のオン電圧Vonとオフ電圧Voffとの間での切り替えを終了し、全TFT8に印加する電圧をオフ電圧Voffに切り替えるようになっている。
しかし、本実施形態においても上記の第1の実施形態と同様に、放射線画像撮影の直前に行われるリセット処理の場合には、全TFT8に印加する電圧のオン電圧Vonとオフ電圧Voffとの間での切り替えを終了した時点で(図15の時刻t8参照)、TFT8に印加する電圧をオフ電圧Voffに切り替えずに、上記の第1の実施形態における低下させたオン電圧である第4のオン電圧Von4と同じ電圧値のオン電圧Von4をTFT8に印加するようになっている。
そして、時刻t9に放射線画像撮影装置1に対して放射線の照射が開始されるまで、各走査線5を介して各TFT8に対してこの低下させた第4のオン電圧Von4を印加し続けるようになっている。その目的や効果、第4のオン電圧Von4として設定すべき電圧値等については、前述した第1の実施形態の場合と全く同様である。
また、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始(時刻t9)を、例えば放射線画像撮影装置1に取り付けられた放射線センサ等で検出して把握したり、或いは、電流検出手段43によるバイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iの変化を監視することで検出することも、前述した第1の実施形態で説明したとおりである。
さらに、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理や各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理、或いは、その後のダーク読取処理では、上記の各放射線検出素子7のリセット処理および各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理と同じタイミングでTFT8のゲート電極8gに印加する電圧を制御することも、前述した第1の実施形態で説明した制御(図14参照)と同様にして行われる。
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置によれば、放射線検出素子7のリセット処理の際に、前述した特許文献4に記載されたような従来の手法のようにパルス幅が長いオン電圧Vonを1回だけスイッチ手段であるTFT8に印加するのではなく、TFT8に印加するオン電圧Vonのパルス幅やデューティ比を変調させて、このような従来の手法で印加されるオン電圧Vonのパルス幅よりも短いパルス幅のオン電圧VonをTFT8に印加し、かつ、TFT8へのオン電圧Vonの印加を複数回行うように、TFT8に印加する電圧を制御する。
そのため、図16に示すように、各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流出する電流Iが制限され、バイアス線9や結線10を流れる電流の電流量Iは、リセット処理時に各TFT8に通常のオン電圧を印加し続けた場合(図中の一点鎖線参照)に比べてそのピークが低くなる。そのため、放射線検出素子7のリセット処理が繰り返され、バイアス線9や結線10に多大な電流が流れることが繰り返されて結線10等が断線する確率を確実に低下させることが可能となり、事実上、結線10等の断線を防止することが可能となる。
また、放射線検出素子7のリセット処理を必要以上に頻繁に繰り返す必要がなくなるため、リセット処理を繰り返してバッテリの消費電力量が増大することを的確に防止して、バッテリの消耗を防止することが可能となる。さらに、全てのTFT8を同時にオン状態として各放射線検出素子7のリセット処理を同時に行うように構成すれば、各放射線検出素子7から余分な電荷を十分に除去する時間を確保しつつ、全放射線検出素子7のリセット処理に要する時間を短縮することが可能となる。
[第3の実施の形態]
上記の第1および第2の実施形態に係る放射線画像撮影装置では、TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧の電圧値をVon1からVon2、Von3へと増加させるタイミング(第1の実施形態)や、オン電圧Vonのパルス幅等(第2の実施形態)を予め実験的に求めておくことを前提に説明した。それらの場合でも有効にその有利な効果を発揮させることができる。
しかし、例えば、制御手段22が放射線画像撮影装置の各部材に対する電力の供給状態を省電力モード(sleepモード)から撮影可能モード(wake upモード)に切り替えた後、放射線検出素子7のリセット処理を行うまでの時間が長いと、一般的に、各放射線検出素子7内で発生し蓄積される暗電荷等の余分な電荷の量が多くなり、短いと、余分な電荷の量が少なくなる。
そのため、各部材に対する電力の供給状態が撮影可能モードに切り替えられた後、放射線検出素子7のリセット処理が行われるまでの時間の長短によって、各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流れ出す電流の電流量Iが大きくなったり小さくなったりする。
また、例えば、放射線画像撮影の対象となる被写体の放射線画像撮影装置1の放射線入射面R(図1参照)に占める割合が小さいと、放射線が被写体を透過せずに放射線入射面Rに直接到達する割合が増加する。このように放射線が放射線入射面Rに直接到達した部分に対応する放射線検出素子7では多くの電子正孔対が発生し、読み出し処理でも発生した電子正孔対の全てを読み出し切れずに、その後に行われるダーク読取処理におけるリセット処理で、比較的大量の電荷がバイアス線9や結線10に流れ出す場合がある。
しかし、例えば胸部のレントゲン撮影のように、被写体の放射線画像撮影装置1の放射線入射面R(図1参照)に占める割合が大きいと、放射線が被写体を透過せずに放射線入射面Rに直接到達して放射線の強い照射を受ける部分の割合が減るため、ダーク読取処理におけるリセット処理では、上記の場合に比べれば少量の電荷しかバイアス線9や結線10に流れ出さない。
このように、各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流れ出す電流の電流量Iは放射線画像撮影装置の状況に応じて変化する。
そこで、第3の実施形態では、走査駆動手段15は、放射線検出素子7のリセット処理の際に、電流検出手段43により検出されたバイアス線9の結線10を流れる電流に基づいて走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8に印加するオン電圧を制御して、各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流出する電流を制限するようになっている。
具体的には、例えば、電流検出手段43により検出されるバイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iに予め所定の閾値を設定しておき、例えば上記の第2の実施形態において、走査駆動手段15は、電流検出手段43から出力されるバイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iがこの閾値に達すると、TFT8に印加していたオン電圧Vonをオフ電圧Voffに切り替え、バイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iが減少すると、新たにTFT8にオン電圧Vonを印加し、バイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iが再度上昇して閾値に達すると、TFT8に印加していたオン電圧Vonをオフ電圧Voffに切り替える。
このように、走査線5の各ラインL1〜Lxを介してTFT8に印加する電圧をオン電圧Vonとオフ電圧Voffの間で切り替える制御を繰り返すように構成することで、各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流出する電流を制限するようになっている。
また、上記の第1の実施形態においても、例えば、TFT8に第1のオン電圧Von1を印加して一旦上昇したバイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iが所定量まで減少した時点で、TFT8に印加する電圧を第2のオン電圧Von2に引き上げ、再度上昇したバイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iが所定量まで減少した時点で、TFT8に印加する電圧を第3のオン電圧Von3に引き上げる。
このように、バイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iに応じて走査線5の各ラインL1〜Lxを介してTFT8に印加するオン電圧Vonを段階的に引き上げる制御を行うように構成することで、各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流出する電流を制限することができる。
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置によっても、第1および第2の実施形態に係る放射線画像撮影装置と同様の効果を奏することが可能となる。
また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置によれば、放射線画像撮影装置の状況に応じて変化する各放射線検出素子7に蓄積された余分な電荷の量、すなわち電流検出手段43により検出されるバイアス線9や結線10を流れる電流の電流量Iに基づいて、走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧を的確に制御して、各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流出する電流を、放射線画像撮影装置の状況に応じて確実に制限することが可能となる。
[放射線画像撮影システム]
上記の第1〜第3の実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、放射線センサを設けたり、バイアス線9の結線10を流れる電流の電流量Iを検出する電流検出手段43を活用して、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了を検出する場合について説明した。しかし、放射線画像撮影装置1に放射線センサや電流検出手段43が設けられていないものも多い。
そのような場合には、放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線発生装置等から放射線の照射の開始や終了を知らせる信号を放射線画像撮影装置1に送信するように構成することが可能である。
また、実際の放射線発生装置では、放射線発生装置の放射線源が起動されてから放射線が照射されるまでに1秒程度の時間がかかる場合が多い。そのため、放射線源の起動から照射までの時間を使って、放射線画像撮影装置1に放射線画像撮影前のリセット処理を行わせるように構成することが可能である。
以下では、それを実現するための放射線画像撮影システムについて説明する。図17は、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。放射線画像撮影システム50は、図17に示すように、例えば、放射線を照射して図示しない患者の一部である被写体の撮影を行う撮影室R1と、放射線技師等の操作者が被写体への放射線の照射等の操作を行う前室R2とに配置される。
本実施形態では、撮影室R1には、前述した放射線画像撮影装置1(可搬型放射線画像撮影装置1)を装填可能なブッキー装置51や、被写体に照射する放射線を発生させる図示しないX線管球を備える放射線発生装置の放射線源52、放射線画像撮影装置1と他の装置とが無線通信する際にこれらの通信を中継する無線アンテナ53を備えた無線アクセスポイント(基地局)54等が設けられている。
また、前室R2には、放射線源52からの放射線の照射開始を指示するための照射開始スイッチ55等を備えた放射線発生装置の操作卓56や、放射線画像撮影装置1に内蔵された後述するタグを検出するタグリーダ57等が設けられている。また、放射線発生装置の操作卓56やタグリーダ57等は、撮影室外に設けられたコンソール58に接続されている。
コンソール58では、放射線画像撮影システム50で取得された画像データやダーク読取値等を用いて画像処理が行われ、放射線画像の生成等が行われるようになっている。なお、コンソール58を前室R2に設けることも可能である。また、コンソール58には、ハードディスク等で構成された記憶手段59が接続されている。
放射線画像撮影装置1の構成については第1〜第3の実施形態で述べたとおりであるが、本実施形態では、さらに、放射線画像撮影装置1には、図示しないタグが内蔵されている。本実施形態では、タグとして、いわゆるRFID(Radio Frequency IDentification)タグと呼ばれるタグが用いられており、タグには、タグの各部を制御する制御回路や放射線画像撮影装置1の固有情報を記憶する記憶部がコンパクトに内蔵されている。なお、固有情報には、例えば当該放射線画像撮影装置1に割り当てられた識別情報としてのカセッテIDやシンチレータの種類情報、サイズ情報、解像度等が含まれる。
また、放射線画像撮影装置1は、ブッキー装置51に装填されない、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。すなわち、放射線画像撮影装置1を単独の状態で例えば撮影室R1内に設けられた支持台や図17に示すように臥位撮影用のブッキー装置51B等に配置してその放射線入射面R(図1参照)上に被写体である患者の手等を載置したり、或いは、例えばベッドの上に横臥した患者の腰や足等とベッドとの間に差し込んだりして用いることもできるようになっている。この場合、例えばポータブルの放射線源52B等から、被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線を照射して放射線画像撮影が行われる。
ブッキー装置51には、放射線画像撮影装置1を所定の位置に保持するためのカセッテ保持部51aが設けられており、カセッテ保持部51aに放射線画像撮影装置1が装填できるようになっている。また、本実施形態では、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bとがそれぞれ設けられている。また、本実施形態では、各ブッキー装置51A、51Bは、それぞれケーブルや無線アクセスポイント(基地局)54等を介して放射線発生装置の操作卓56等と接続されている。
撮影室R1には、被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線を照射するX線管球を備える放射線源52が少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、立位撮影用および臥位撮影用のブッキー装置51A、51Bに対して1つの放射線源52Aが共用されるようになっている。なお、各ブッキー装置51A、51Bに、別々の放射線源を対応付けて設けるように構成することも可能である。
放射線源52Aは、例えば撮影室R1の天井からつり下げられて配設されるようになっており、撮影時には後述する操作卓56からの指示に基づいてセットアップされ、図示しない移動手段により所定の位置にまで移動され、放射線の照射方向が所定の方向を向くようにその向きが調整されるようになっている。
また、本実施形態では、立位撮影用のブッキー装置51Aや臥位撮影用のブッキー装置51Bには対応付けられていないポータブルの放射線源52Bも設けられており、ポータブルの放射線源52Bは、撮影室R1内の任意の場所にも持ち運びでき、任意の方向に放射線を照射できるようになっている。
なお、本実施形態では、ポータブルの放射線源52Bも、操作卓56からの指示に基づいてセットアップされるようになっているが、この他にも、例えば、操作者が手動でセットアップしたり、放射線画像撮影装置1からポータブルの放射線源52Bに無線信号を送信してセットアップするように構成することも可能である。
放射線源52のX線管球としては、回転陽極X線管球を用いた放射線源が好ましく用いられる。X線管球は、陰極から放射される電子線を陽極に衝突させることで放射線を発生させるように構成されている場合が多いが、電子線が陽極の同じ位置に衝突し続けると、熱の発生等で陽極が損傷する。そのため、回転陽極X線管球では、陽極を回転させて電子線が衝突する位置が同じ位置にならないようにすることで、陽極の長寿命化が図られるようになっている。
前室R2には、放射線源52からの放射線の照射開始を指示するための照射開始スイッチ55を備えた放射線発生装置の操作卓56が設けられている。なお、図17では、操作卓56と照射開始スイッチ55とが別体のように記載されているが、必ずしも別体として構成する必要はない。
操作卓56は、CPUや専用のプロセッサ(processor)を備えるコンピュータで構成されている。また、照射開始スイッチ55は、図18(A)〜(C)に示すように、棒状のボタン部55aと、ボタン部55aを図中矢印Sで示される方向に押下可能に支持する筐体部55bとで構成されている。そして、ボタン部55aは、図18(A)に示すように、筐体部55bから上方に突出した円筒部55a1と、その内部からさらに上方に突出した円柱部55a2とで構成されている。
そして、図18(B)に示すように、操作者により円柱部55a2が円筒部55a1の上端部分まで押し込まれて、ボタン部55aがいわゆる半押しされると、操作卓56から所定の放射線源52に対して起動信号が送信されるようになっており、放射線源52は、起動信号を受信すると、X線管球の陽極の回転を開始して起動するようになっている。この起動信号は、無線アクセスポイント54を介して放射線画像撮影装置1にも送信されるようになっている。
また、図18(C)に示すように、操作者により照射開始スイッチ55のボタン部55aの円筒部55a1と円柱部55a2とが筐体部55bの上端部分までさらに押し込まれて、ボタン部55aがいわゆる全押しされると、操作卓56から所定の放射線源52に対して照射信号が送信されるようになっており、放射線源52は、照射信号を受信すると、放射線を照射するようになっている。この照射信号も、無線アクセスポイント54を介して放射線画像撮影装置1にも送信されるようになっている。
なお、起動信号や照射信号を、無線アクセスポイント54を介して放射線発生装置の操作卓56や照射開始スイッチ55から放射線画像撮影装置1に送信する代わりに、照射開始スイッチ55の半押しや全押しの状態をそれぞれ検出して、照射開始スイッチ55が半押しされた場合に起動信号(或いは放射線源52を起動したことを表す信号)を放射線画像撮影装置1に送信し、照射開始スイッチ55が全押しされた場合に照射信号(或いは放射線源52から放射線が照射されたことを表す信号)を放射線画像撮影装置1に送信するボタン操作検出手段60を設けるように構成することも可能である。
なお、照射開始スイッチ55の上記の構成は、本発明に特有の構成ではなく、通常の放射線画像撮影システムの操作卓で多く採用されている構成であり、通常、ボタン部55aを半押ししてから1秒程度の時間が経過した後に全押しすることができるように構成されている。
また、前室R2の入口の近傍には、前述したRFIDの技術を用いて放射線画像撮影装置1と情報をやりとりするタグリーダ57(図17参照)が設置されており、タグリーダ57は、前室R2や撮影室R1に入室し或いは退室する放射線画像撮影装置1を検出して、その情報をコンソール58に送信するようになっている。そして、コンソール58で撮影室R1や前室R2に存在する放射線画像撮影装置1を管理するようになっている。
放射線画像撮影装置1は、放射線画像撮影に向けて、放射線技師等の操作者により電源スイッチ36が操作される等して各部材に対する電力の供給状態を省電力モード(sleepモード)から撮影可能モード(wake upモード)に切り替えられて、ブッキー装置51に装填されるなどする。
そして、放射線画像撮影装置1の放射線入射面R側に患者の一部である被写体がセットされる。なお、本実施形態の放射線画像撮影システム50では、放射線画像撮影装置1は各部材に対する電力の供給状態が撮影可能モードに切り替えられた段階では各放射線検出素子7のリセット処理を開始しないが、この段階で各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成してもよいことは上記の放射線画像撮影装置1の各実施形態で述べたとおりである。
そして、操作者が前室R2の放射線発生装置の操作卓56に移動して照射開始スイッチ55のボタン部55aを半押しすると、操作卓56から所定の放射線源52に対して起動信号が送信されて、放射線源52がX線管球の陽極の回転を開始して起動するとともに、この起動信号(或いは放射線源52を起動したことを表す信号)が操作卓56や照射開始スイッチ55或いはボタン操作検出手段60から無線アクセスポイント54を介して放射線画像撮影装置1にも送信される。
起動信号が、無線アクセスポイント54の無線アンテナ53を介して無線で、或いは無線アクセスポイント54からケーブルを通ってブッキー装置51を介して有線で、送信されてくると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、走査駆動手段15に対して各放射線検出素子7のリセット処理を行うように指示を出す。
走査駆動手段15は、制御手段22からの指示に応じて、上記の放射線画像撮影装置1の実施形態(特に図9や図14、図15等参照)で説明したように、走査線5の全ラインL1〜Lxを介して各放射線検出素子7のスイッチ手段であるTFT8のゲート電極8gに所定の電圧値のオン電圧Vonを印加する。
すなわち、放射線画像撮影装置1が第1の実施形態に係る放射線画像撮影装置であれば、走査線5の全ラインL1〜Lxを介してTFT8のゲート電極8gに電圧値が異なる各オン電圧Von1、Von2、Von3を電圧値が段階的に増加するように印加する。また、放射線画像撮影装置1が第2の実施形態に係る放射線画像撮影装置であれば、走査線5の全ラインL1〜Lxを介してTFT8のゲート電極8gに短いパルス幅のオン電圧Vonを複数回印加する。
そして、本実施形態では、いずれの場合もオン電圧Vonの電圧値を低下させて、走査線5の全ラインL1〜Lxを介してTFT8のゲート電極8gに対して低下させたオン電圧Von4を印加し続ける。
そして、操作者が操作卓56の照射開始スイッチ55のボタン部55aを半押しした後、1秒程度の時間が経過してから照射開始スイッチ55のボタン部55aを全押しすると、操作卓56から所定の放射線源52に対して照射信号が送信されて、放射線源52から放射線が照射される。また、この照射信号(或いは放射線源52から放射線が照射されたことを表す信号)が操作卓56や照射開始スイッチ55或いはボタン操作検出手段60から無線アクセスポイント54を介して放射線画像撮影装置1に送信される。
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、操作卓56や照射開始スイッチ55等から送信されてきた照射信号を受信すると、放射線の照射開始を知らせる信号を走査駆動手段15に送信する。走査駆動手段15は、制御手段22からの信号を受信すると、走査線5の全ラインL1〜Lxを介してTFT8のゲート電極8gに対して印加していたオン電圧Von4をオフ電圧Voffに切り替えて全てのTFT8をオフ状態にする。
このようにして、各放射線検出素子7で発生する電荷が各放射線検出素子7に蓄積される。この後の処理は、上記の放射線画像撮影装置1の実施形態で述べた処理と同様に処理が行われ、放射線の照射が終了すると、走査駆動手段15は、例えば図14に示したように、ゲートドライバ15bから信号読み出し用のオン電圧Vonを印加する走査線5のラインL1〜Lxを順次切り替えながら、各放射線検出素子7から蓄積された電荷を読み出して画像データに変換して記憶手段40に記憶させる。
また、その後、ダーク読取処理が行われ、ダーク読取処理では、各放射線検出素子7のリセット処理が行われた後、各TFT8のゲート電極8gにオフ電圧Voffが印加され、放射線が照射されない状態で所定時間放置された後、走査線5の各ラインL1〜Lxごとに各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が画像データの読み出し処理と同じタイミングでダーク読取値として読み出されて記憶手段40に記憶される。
このようにして得られた各放射線検出素子7ごとの画像データやダーク読取値は、コンソール58に送信されてダーク読取値に基づいてオフセット分が算出され、画像データからオフセット分が差し引かれる等して、各放射線検出素子7ごとの最終的な画像データが算出されて、放射線画像が生成される。
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50によれば、上記の各実施形態における放射線画像撮影装置の効果を有効に発揮することが可能となる。
また、放射線源52に対して起動信号が送信されて放射線画像撮影装置1の各放射線検出素子7のリセット処理が開始され、放射線源52に対して照射信号が送信されて放射線の照射が検出され各放射線検出素子7のTFT8のゲート電極8gに印加する電圧がオフ電圧Voffに切り替えられるまで1秒程度の時間が存在する。
そのため、各放射線検出素子7に蓄積されている余分な電荷を十分に放出させて除去することが可能となるとともに、必要以上に長い時間TFT8のゲート電極8gにオン電圧Von4を印加して放射線画像撮影装置1のバッテリ41の電力が浪費されてしまうことを的確に防止することが可能となり、バッテリ41の消耗を防止することが可能となる。
なお、上記の各実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50では、放射線検出素子7のリセット処理の際、放射線画像撮影装置1の走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxを介してスイッチ手段である全TFT8に同時にオン電圧Von(第1のオン電圧Von1)を印加する場合について説明した.
しかし、図3に示したように、基板4の検出部Pに配列された複数の走査線5を、例えば図中の上半分と下半分等の複数のグループに分け、各走査線5を介してスイッチ手段であるTFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Vonを、それぞれ別の時刻に、かつ、1つのグループに属する走査線5に接続されたTFT8については同時に印加してリセット処理を行うように構成することも可能である。
このように構成すれば、各グループに属する走査線5にTFT8が接続された各放射線検出素子7からは、グループごとに別のタイミングでバイアス線9や結線10に電流Iが流れ出すため、各グループごとに流れる電流の電流Iをそれぞれ小さくすることが可能となる。
そのため、各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に流出する電流Iがより制限され、バイアス線9や結線10を流れる電流の電流量Iのピークをより低下させることが可能となり、放射線検出素子7のリセット処理を繰り返しても、結線10等が断線する確率をより低下させることが可能となる。そして、事実上、結線10等の断線を防止することが可能となる。