JP5095377B2 - 無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂、無機微粒子分散ペースト組成物、グリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物及びグリーンシート - Google Patents
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まず、バインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加える。次いで、ボールミル等により均一に混合し脱泡を行って一定粘度を有するセラミックスラリー組成物を得る。得られたセラミックスラリー組成物をドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム又はステンレス鋼プレート等の支持体面で流延成形する。次いで、加熱等により有機溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
しかしながら、非酸化性雰囲気中での焼成を行った際には、グリーンシート中のバインダーが炭素として残存し、炭素の存在に起因して発生した気孔(ポア)が焼成体中に残ることになるため、製造後の電子部品における特性上の不都合が生じていた。
しかし、アクリル樹脂は、原料粉末の分散性が悪く、グリーンシートの均質性が損なわれていた。また均質性の悪化に伴って、グリーンシートのシート強度、シート伸び率、シート成形密度等の物性が低下していた。
しかしながら、これらの技術では、バインダーの極性を高める効果を発現させるため、ポリアルキレンエーテルが用いられているものの、得られるグリーンシートは、依然として機械的強度に劣るものとなっていた。
以下に本発明を詳述する。
そこで、本発明者らは更に鋭意検討した結果、ポリオキシアルキレンエーテルモノメタクリレートとして、ポリエチレングリコールモノメタクリレートを用い、更にそのエチレンオキサイドの繰り返し数を30以上とすることで飛躍的に樹脂の伸長特性が改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
図1に示すように、(A)は、(B)や(C)と比較して、熱分解性が劣っており、特に300℃以上の温度での熱分解性が極めて悪いものとなっている。
しかしながら、(C)にMMAを加え、所定の比率の共重合体とした(D)は、300℃以上の温度での熱分解性が大幅に改善し、特に300℃付近での分解特性が極めて優れるものとなっていることがわかる。これは、(A)では、重合体の高次構造が分解挙動に影響して、熱分解温度が高くなるが、上記3種類のセグメントを組み合わせることに加えて、各セグメントの含有量を所定量とすることで、メチルメタクリレートが本来有する低温分解特性を充分に発揮することができるためであると考えられる。
図2に示すように、破断点応力は共重合体の重量平均分子量に依存し、降伏点前にサンプルが破壊する。
なお、本明細書において、低温脱脂とは、窒素置換等を行わない通常の空気雰囲気下において、300℃で1時間保持した際にバインダー樹脂の初期重量の99.5重量%以上が分解されることを意味する。
メチルメタクリレートは本来低温で分解する材料であるが、その高次構造が分解温度を高める働きをもたらす。そのため、イソブチルメタクリレートと共重合させることでメチルメタクリレートの高次構造を解消し、低温分解化が可能となる。メチルメタクリレートとイソブチルメタクリレートに由来するセグメントの熱分解モードは解重合で分解揮発物はそれぞれのモノマーである。
上記イソブチルメタクリレートに由来するセグメントを有することで、メチルメタクリレートに由来するセグメントが本来有する低温分解特性を充分に発揮することができる。
また、一般にアクリル側鎖の炭素数が多くなると、樹脂の熱分解温度は高くなるが、メチルメタクリレートに由来するセグメントとイソブチルメタクリレートに由来するセグメントとを組み合わせは、炭素数の少ない中でも最も熱分解温度を低下させることができる。
なお、ポリスチレン換算による数平均分子量の測定は、カラムとして例えばSHOKO社製カラムLF−804等を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行うことで得ることができる。
また、バインダー樹脂の分子末端のみに水素結合性官能基が導入されたことは、例えば、13C−NMRにより確認することができる。
本発明のバインダー樹脂、有機溶剤、及び、無機微粒子を含有する無機微粒子分散ペースト組成物もまた、本発明の1つである。
上記無機微粒子としては特に限定されず、例えば、銅、銀、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al2O3・SiO2系無機ガラス、MgO・Al2O3・SiO2系無機ガラス、LiO2・Al2O3・SiO2系無機ガラス等の低融点ガラス、BaMgAl10O17:Eu、Zn2SiO4:Mn、(Y、Gd)BO3:Eu等の蛍光体、種々のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属錯体等が挙げられる。
上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテートテキサノール、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール等が挙げられる。
なかでも、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノールが好ましく、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテートがより好ましい。なお、これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記密着促進剤としては、特に限定されないが、アミノシラン系シランカップリング剤が好適に用いられる。
上記アミノシラン系シランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
アミノシラン系シランカップリング剤以外にも、グリシジルシラン系シランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、その他シランカップリング剤であるジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等も好適に用いることができ、これらを複数用いても良い。
上記ノニオン系界面活性剤としては特に限定されないが、HLB値が10以上20以下のノニオン系界面活性剤であることが好ましい。ここで、HLB値とは、界面活性剤の親水性、親油性を表す指標として用いられるものであって、計算方法がいくつか提案されており、例えば、エステル系の界面活性剤について、鹸化価をS、界面活性剤を構成する脂肪酸の酸価をAとし、HLB値を20(1−S/A)等の定義がある。具体的には、脂肪鎖にアルキレンエーテルを付加させたものが好適であり、具体的には例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等が好適に用いられる。なお、上記ノニオン系界面活性剤は、熱分解性がよいが、大量に添加すると無機微粒子分散ペースト組成物の熱分解性が低下することがあるため、含有量の好ましい上限は5重量%である。
本発明のグリーンシートの製造方法としては、例えば、本発明のバインダー樹脂を溶剤に溶解させ、界面活性剤や分散剤、可塑剤等を添加し、攪拌、均一なビヒクルを作成した後、無機微粒子を添加し、ボールミルの分散装置を用いて均一に分散させる。得られたグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物をロールコーター、ダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーター等の塗工方式によって支持フィルム上に均一に塗膜を形成する方法等が挙げられる。
上記支持フィルムの厚みは、例えば、20〜100μmが好ましい。
また、支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましく、これにより、転写工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
(1)バインダー樹脂、無機微粒子分散ペースト組成物の調製
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラプルフラスコに、メチルメタクリレート(MMA)30重量部、イソブチルメタクリレート(IBMA)45重量部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(MPEGMA、共栄社化学社製ライトエステル041MA、PEO繰り返し数30)25重量部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン、有機溶剤として酢酸ブチル100重量部とを混合し、モノマー混合液を得た。
このようにして得られた(メタ)アクリル樹脂の酢酸ブチル溶液50重量部に、無機粉体としてアルミナ(平均粒子径2.0μm)50重量部を添加し、高速攪拌機で混練し、無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
得られた無機微粒子分散ペースト組成物を、予め離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる支持フィルム(幅400mm,長さ30m,厚さ38μm)上にブレードコーターを用いて塗布し、形成された塗膜を100℃で10分間乾燥することにより溶剤を除去することにより、厚さ50μmの無機粉体含有樹脂層を支持フィルム上に形成した。次いで、前記無機粉体含有樹脂層上に、予め離型処理したPETよりなるカバーフィルム(幅400mm,長さ30m,厚さ25μm)を貼り付けることにより、グリーンシートを製造した。
実施例1におけるアクリルモノマー混合液の組成を表1に記載の内容に変更し、実施例1と同じ方法で無機微粒子分散ペースト組成物、グリーンシートを作製した。
ここで実施例2、比較例1、2、5、6において使用したメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(MPEGMA)は実施例1と同様のものである。また、実施例3、4においては、エチレンオキサイド繰り返し数90のMPEGMA(日油社製、ブレンマーPME4000)、比較例3においては、エチレンオキサイド繰り返し数23のMPEGMA(日油社製、ブレンマーPME1000)、比較例4においては、エチレンオキサイド繰り返し数9のMPEGMA(共栄社化学社製、ライトエステル130MA)を用いた。
実施例1〜4及び比較例1〜6で得られたバインダー樹脂、無機微粒子分散ペースト組成物及びグリーンシートについて以下の評価を行った。結果を表2に示した。
実施例、比較例で作製したメタアクリル樹脂の酢酸ブチル溶液を離型処理したPETフィルムにアプリケーターを用いて0.2032mm(8ミル)の厚みで塗工し、100℃送風オーブンで10分間乾燥させ、樹脂シートを作成した。方眼紙をカバーフィルムとして用い、はさみで幅1cmの短冊片を作製した。23℃、50RH条件下で島津製作所社製オートグラフAG−ISを用いてチャック間距離3cm、引張速度10mm/minにて引張試験を行い、破断に要した歪みを評価した。
破断歪みが50%以上の物を○、50%未満の物を×とした。
実施例、比較例で作製したグリーンシートをガラス基板に転写し、窒素置換したマッフル炉にて10℃/minにて300℃まで昇温し、300℃の状態にて1時間保持し、焼結を終了した。マッフル炉から取り出し、グリーンシートの焼き色を目視にて確認した。
着色のない物を◎、淡黄色を○、茶色を×と判定した。
実施例、比較例で作製したグリーンシートに片側を離型処理したPETフィルムを保護フィルムをとして貼り合わせ、ガラスシートを作製した。
得られたガラスシートを直径が15cm、長さ50cmのポリプロピレンパイプに巻き付け、ロール状態で23℃の室温にて24時間養生した。
ロール端部から5m、10mの部分を切断し、グリーンシートにクラックなどの不具合が発生しているか、目視で確認した。クラックが発生していた物を×、発生していない物を○とした。
一方、メチルメタクリレート又はイソブチルメタクリレートの何れかが配合されていない比較例1及び2は、300℃における焼結性が悪く、エチレンオキサイド繰り返し数が小さいメトキシポリエチレングリコールメタクリレートを用いた比較例3、4やメトキシポリエチレングリコールの添加量が少ない比較例5は樹脂の伸長特性が悪く、その結果、巻き取り評価時にクラックが入り、シート組成には適さないことが確認された。メトキシポリエチレングリコールメタクリレート組成比を高めた比較例6では焼結体に煤が多く付着し、シートには適さないことが確認された。
Claims (4)
- 無機微粒子を含有する無機微粒子分散ペースト組成物に用いられる無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂であって、
メチルメタクリレートに由来するセグメント、イソブチルメタクリレートに由来するセグメント、及び、ポリエチレングリコールモノメタクリレートに由来するセグメントを有し、
メチルメタクリレートに由来するセグメントの含有量が30〜35重量%、イソブチルメタクリレートに由来するセグメントの含有量が40〜50重量%、ポリエチレングリコールモノメタクリレートに由来するセグメントの含有量が15〜30重量%であり、かつ、
前記ポリエチレングリコールモノメタクリレートは、エチレンオキサイドの繰り返し数が30以上である
ことを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂。 - 請求項1記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂を用いることを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物。
- 請求項1記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂又は請求項2記載の無機微粒子分散ペースト組成物を用いてなることを特徴とするグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物。
- 請求項3記載のグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物を用いてなることを特徴とするグリーンシート。
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