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JP5095377B2 - 無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂、無機微粒子分散ペースト組成物、グリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物及びグリーンシート - Google Patents

無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂、無機微粒子分散ペースト組成物、グリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物及びグリーンシート Download PDF

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本発明は、無機微粒子分散ペースト組成物に使用した場合に、無機微粒子の分散性に優れ、焼結後の残留炭素が少なく低温雰囲気下であっても脱脂処理が可能であり、かつ、機械的強度の高いグリーンシートを得ることが可能なバインダー樹脂、無機微粒子分散ペースト組成物、グリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物及びグリーンシートに関する。
近年、導電性粉末、セラミック粉末、ガラス粒子等の無機微粒子をバインダー樹脂に分散させた無機微粒子分散ペースト組成物が、様々な形状の焼成体を得るために用いられている。例えば、導電性粉末として金属微粒子を分散させたペースト組成物は、回路形成やコンデンサーの製造等に用いられ、セラミック粉末やガラス粒子を分散させたセラミックペーストやガラスペーストは、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPともいう)の誘電体層の製造や積層セラミックコンデンサの製造等に用いられている。
積層セラミックコンデンサ等の積層型の電子部品は、例えば、特許文献1に開示されているように、一般に次のような工程を経て製造される。
まず、バインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加える。次いで、ボールミル等により均一に混合し脱泡を行って一定粘度を有するセラミックスラリー組成物を得る。得られたセラミックスラリー組成物をドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム又はステンレス鋼プレート等の支持体面で流延成形する。次いで、加熱等により有機溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
得られたセラミックグリーンシート上に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗工したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を製造する。この積層体中に含まれるバインダー樹脂成分等を熱分解させて除去する処理(いわゆる「脱脂処理」)を行った後、焼成して得られたセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結によって形成させる工程を経て、積層セラミックコンデンサが得られる。
近年、積層セラミックコンデンサ等の電子部品に対しては、軽量小型化及び価格の低廉化が強く求められている。従って、これらを製造する際に必要となるセラミック積層体においては一層当たりのシート厚みを薄くしたり、さらなる多層化を推し進めたりすることが行われる一方、その内部電極を形成するにあたっては高価なPt、Pd、Ag等に代わる安価な卑金属材料、例えば、Niや高周波特性に優れたCu等を主成分として含む導電性ペーストを使用することが行われている。
このような卑金属材料を主成分とする導電性ペーストを用いて内部電極を形成する場合、製造工程の途中で、積層素体の脱バインダー処理及び焼成処理を非酸化性雰囲気中で行う必要があるが、特に、導電性ペーストがCuを主成分とするものである場合には、酸素含有雰囲気中で高温加熱すると、良質の絶縁体である酸化物が形成されてしまうため、非酸化性雰囲気中で焼成温度を低くして焼成する必要がある。
しかしながら、非酸化性雰囲気中での焼成を行った際には、グリーンシート中のバインダーが炭素として残存し、炭素の存在に起因して発生した気孔(ポア)が焼成体中に残ることになるため、製造後の電子部品における特性上の不都合が生じていた。
そこで、低温分解性に優れるアクリル樹脂をバインダ−として用いることが検討されている。即ち、アクリル樹脂は低温下においても解重合(重合体が単量体に分解する化学反応)を起こし得るから、グリーンシート中における炭素の残存率(以下、残炭率という)を低下させることが可能であると考えられるからである。例えば、特許文献2には、高温残留重量が極めて少ないアクリル系樹脂を用いる方法が開示されている。
しかし、アクリル樹脂は、原料粉末の分散性が悪く、グリーンシートの均質性が損なわれていた。また均質性の悪化に伴って、グリーンシートのシート強度、シート伸び率、シート成形密度等の物性が低下していた。
これに対して、特許文献3及び特許文献4には、短鎖ポリアルキレンエーテルを側鎖に有するメタアクリルモノマーをバインダー樹脂として用いることで、焼結性を向上させつつ、バインダー樹脂の極性を高め、金属との親和性を改善している。
しかしながら、これらの技術では、バインダーの極性を高める効果を発現させるため、ポリアルキレンエーテルが用いられているものの、得られるグリーンシートは、依然として機械的強度に劣るものとなっていた。
特公平3−35762号公報 特開2001−307548号公報 特許第3355694号公報 特開平6−072759号公報
本発明は、上記現状に鑑み、無機微粒子分散ペースト組成物に使用した場合に、無機微粒子の分散性に優れ、焼結後の残留炭素が少なく低温雰囲気下であっても脱脂処理が可能であり、かつ、機械的強度の高いグリーンシートを得ることが可能なバインダー樹脂、無機微粒子分散ペースト組成物及びグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物を提供することを目的とする。
本発明は、無機微粒子を含有する無機微粒子分散ペースト組成物に用いられる無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂であって、メチルメタクリレートに由来するセグメント、イソブチルメタクリレートに由来するセグメント、及び、ポリエチレングリコールモノメタクリレートに由来するセグメントを有し、メチルメタクリレートに由来するセグメントの含有量が30〜35重量%、イソブチルメタクリレートに由来するセグメントの含有量が40〜50重量%、ポリエチレングリコールモノメタクリレートに由来するセグメントの含有量が15〜30重量%であり、かつ、ポリエチレングリコールモノメタクリレートは、エチレンオキサイドの繰り返し数が30以上である無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂である。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、イソブチルメタクリレート及びポリオキシアルキレンエーテルモノメタクリレートに、メチルメタクリレートを加えて共重合体とし、ポリオキシアルキレンエーテルモノメタクリレートの比率を所定の範囲内とした場合、驚くべきことに、悪化が予測されていた熱分解性に顕著な改善が見られ、特に300℃で加熱保持した場合における分解時間が大幅に短縮されることを見出した。加えて、このような構成のバインダー樹脂を用いた場合、燃焼時における煤の発生が抑制され、焼結後の残留炭素を低減させることが可能となることを見出した。しかしながら、このようなバインダー樹脂を用いて得られる成形体は脆い物性を示し、セラミックスグリーンシート等に用いること困難であった。
そこで、本発明者らは更に鋭意検討した結果、ポリオキシアルキレンエーテルモノメタクリレートとして、ポリエチレングリコールモノメタクリレートを用い、更にそのエチレンオキサイドの繰り返し数を30以上とすることで飛躍的に樹脂の伸長特性が改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
図1は、(A)メチルメタクリレート(MMA)単重合体;(B)イソブチルメタクリレート(IBMA)単重合体;(C)IBMA70重量%とポリプロピレングリコールモノメタクリレート(PPGMA)30重量%とからなる共重合体;(D)MMA30重量%とIBMA60重量%とPPGMA10重量%とからなる共重合体、を0℃から600℃まで昇温した場合の分解特性(TG・DTA)を示すグラフである。
図1に示すように、(A)は、(B)や(C)と比較して、熱分解性が劣っており、特に300℃以上の温度での熱分解性が極めて悪いものとなっている。
しかしながら、(C)にMMAを加え、所定の比率の共重合体とした(D)は、300℃以上の温度での熱分解性が大幅に改善し、特に300℃付近での分解特性が極めて優れるものとなっていることがわかる。これは、(A)では、重合体の高次構造が分解挙動に影響して、熱分解温度が高くなるが、上記3種類のセグメントを組み合わせることに加えて、各セグメントの含有量を所定量とすることで、メチルメタクリレートが本来有する低温分解特性を充分に発揮することができるためであると考えられる。
図2は、メチルメタクリレート(MMA)30重量%と、イソブチルメタクリレート(IBMA)60重量%と、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(PPGMA)10重量%とからなる共重合体の重量平均分子量を変更させた場合における伸長特性を示したものである。なお、重量平均分子量(Mw)が25万である場合を(A)、Mwが15万である場合を(B)、Mwが8万である場合を(C)とした。
図2に示すように、破断点応力は共重合体の重量平均分子量に依存し、降伏点前にサンプルが破壊する。
図3は、ポリプロピレングリコールモノメタクリレートに代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA、繰り返し数30)を用いた場合の引張特性を示すグラフである。MMA40重量%、IBMA45重量%、MPEGMA15重量%からなり、Mwが11万の共重合体を用いる場合を(A);MMA34重量%、IBMA39重量%、MPEGMA27重量%からなり、Mwが5万の共重合体を用いる場合を(B)とした。図3に示すように、(A)よりも(B)の方が格段に樹脂の伸長特性が改善されていることがわかる。従って、MPEGMA成分を用いた場合、重量平均分子量に関係なく、伸長特性を改善することができ、特に、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートを20重量%以上添加した場合、共重合体の伸長特性が改善する。このように共重合体の伸長特性が改善するのはポリエチレンオキサイドの構造に由来するものであると考えられる。
本発明のバインダー樹脂は、メチルメタクリレートに由来するセグメント、イソブチルメタクリレートに由来するセグメント、及び、ポリエチレングリコールメタクリレートに由来するセグメントを有する。上記3種類のセグメントを有し、かつ、ポリエチレングリコールメタクリレートに由来するセグメントの含有量を所定量とすることで、例えば、グリーンシートのバインダー樹脂として用いた場合に、得られるグリーンシートは、伸長特性が良好で、かつ、低温での脱脂を実現することができ、かつ、焼結後の残留炭素の低減を図ることが可能となる。
なお、本明細書において、低温脱脂とは、窒素置換等を行わない通常の空気雰囲気下において、300℃で1時間保持した際にバインダー樹脂の初期重量の99.5重量%以上が分解されることを意味する。
本発明のバインダー樹脂はメチルメタクリレートに由来するセグメントとイソブチルメタクリレートに由来するセグメントを含有する。
メチルメタクリレートは本来低温で分解する材料であるが、その高次構造が分解温度を高める働きをもたらす。そのため、イソブチルメタクリレートと共重合させることでメチルメタクリレートの高次構造を解消し、低温分解化が可能となる。メチルメタクリレートとイソブチルメタクリレートに由来するセグメントの熱分解モードは解重合で分解揮発物はそれぞれのモノマーである。
更に、メチルメタクリレートにはポリアルキレンエーテルとの共重合した際に発生する分解ガスの分子量を小さくする働きがあり、脱脂後の無機微粒子表面への分解物の吸着を抑える働きを有すると考えられる。
本発明のバインダー樹脂中のメチルメタクリレートに由来するセグメントの含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は60重量%である。10重量%未満であると、バインダー樹脂のTgが低くなり、シートが柔らかくなるため、取り扱い性が悪くなることがある。60重量%を超えると、分解終了温度が高温化してしまう可能性がある。
本発明のバインダー樹脂は、イソブチルメタクリレートに由来するセグメントを有する。
上記イソブチルメタクリレートに由来するセグメントを有することで、メチルメタクリレートに由来するセグメントが本来有する低温分解特性を充分に発揮することができる。
また、一般にアクリル側鎖の炭素数が多くなると、樹脂の熱分解温度は高くなるが、メチルメタクリレートに由来するセグメントとイソブチルメタクリレートに由来するセグメントとを組み合わせは、炭素数の少ない中でも最も熱分解温度を低下させることができる。
本発明のバインダー樹脂中のイソブチルメタクリレートに由来するセグメントの含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は70重量%である。10重量%未満であると、分解終了温度が高温化してしまうことがある。70重量%を超えると、バインダー樹脂のTgが低くなり、シートが柔らかくなるため、取り扱い性が悪くなる。
なお、メチルメタクリレートの由来するセグメントの高次構造による熱分解温度の向上を防止するため、上記イソブチルメタクリレートに由来するセグメントの比率は、上記メチルメタクリレートに由来するセグメントの比率よりも大きくすることが好ましい。
本発明のバインダー樹脂は、ポリエチレングリコールモノメタクリレートに由来するセグメントを有する。上記ポリエチレングリコールモノメタクリレートに由来するセグメントは、エチレンオキサイドセグメントが結晶性構造を取るため、他の分子鎖から伸びたポリエチレングリコール鎖と共晶を形成し、疑似架橋点を形成する。そのため、ゴムに似た性質が得られ、伸長特性が大幅に改善することができる。
上記ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、メトキシエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)クリレート等のポリエチレングリコールと他種のポリエーテル類との共重合体でポリエチレングリコール組成比が高く結晶性を示すものや、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)クリレート等のポリエチレングリコール末端にアルキル基を有するもの等が挙げられる。
上記ポリエチレングリコールモノメタクリレートのエチレンオキサイドの繰り返し数の下限は30である。30未満であると、結晶性が発現せず、疑似架橋点として働かないため、伸長特性が改善しないことがある。
上記ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの含有量の下限は15重量%、上限は30重量%である。15重量%未満であると、エチレンオキサイドの繰り返し数が比較的少ないポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを用いた場合、結晶化したポリエチレンオキサイドドメイン中に他のポリマーに起因するポリエチレンオキサイドが共晶を形成する可能性が低くなり、疑似架橋点として働かないため、所望の伸長特性が充分に発揮されず、30重量%を超えると、重合時にゲル化などを生じやすくなる。従って、エチレンオキサイドの繰り返し数が長ければ長いほどポリエチレングリコールモノメタクリレートの含有量を少なくすることが可能となる。
本発明のバインダー樹脂は、上記メチルメタクリレートに由来するセグメント、イソブチルメタクリレートに由来するセグメント、及び、ポリオキシアルキレンエーテルモノメタクリレートに由来するセグメントに加えて、所望の機能性を付加するため、本発明の効果を損なわない範囲で、極性基を有するモノマーに由来するセグメントを有していてもよい。
上記極性基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート等が挙げられる。
上記極性基を有するモノマーに由来するセグメントを有する場合、上記極性基を有するモノマーに由来するセグメントの含有量は5重量%未満であることが好ましい。5重量%以上であると、低温での熱分解性が損なわれたり、無機微粒子に付着する煤が多くなり、焼結体の残留炭素が多くなったりすることがある。
本発明のバインダー樹脂は、分子末端に水素結合性官能基を少なくとも1個以上有することが好ましい。上記水素結合性官能基が分子末端のみに存在することで、低温熱分解性等の本発明の効果を損なうことなく、無機微粒子分散ペースト組成物とした場合に、多量に配合しなくても適度な粘度を確保することができる。
上記水素結合性官能基としては特に限定されず、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。なかでも、熱分解時の影響が少ない等の理由から、水酸基、カルボキシル基が好適である。また、上記水素結合性官能基は少なくとも1個有すればよいが、多いほど、無機微粒子分散ペースト組成物中の無機微粒子の分散性が向上する。
本発明のバインダー樹脂は、ポリスチレン換算による重量平均分子量の好ましい下限が2万、好ましい上限が100万である。2万未満であると、粘度が充分に得られず貯蔵安定性が悪くなることがある。100万を超えると、得られる無機微粒子分散ペースト組成物の糸曳性や溶媒への溶解性に問題が生じることがある。
なお、ポリスチレン換算による数平均分子量の測定は、カラムとして例えばSHOKO社製カラムLF−804等を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行うことで得ることができる。
本発明のバインダー樹脂の製造する方法としては特に限定されず、例えば、メチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート及びポリエチレングリコールモノメタクリレートを原料モノマーとし、連鎖移動剤及び有機溶剤等を含有するモノマー混合液を調製した後、該モノマー混合液に重合開始剤を添加し、上記原料モノマーを共重合させる方法が挙げられる。
また、本発明のバインダー樹脂の分子末端のみに水素結合性官能基を導入する方法としては、例えば、水素結合性官能基を有する連鎖移動剤のもとで、上述したメチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート及びポリエチレングリコールモノメタクリレートからなる原料モノマーをフリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等の従来公知の方法で共重合する方法や、水素結合性官能基を有する重合開始剤のもとで、上述したモノマーをフリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等の従来公知の方法で共重合する方法が挙げられる。なお、これらの方法は併用してもよい。
また、バインダー樹脂の分子末端のみに水素結合性官能基が導入されたことは、例えば、13C−NMRにより確認することができる。
上記水素結合性官能基を有する連鎖移動剤としては、特に限定されず、例えば、水素結合性官能基として水酸基を有するメルカプトプロパンジオール、水素結合性官能基としてカルボキシル基を有するチオグリセロール、メルカプトコハク酸、メルカプト酢酸、水素結合性官能基としてアミノ基を有するアミノエタンチオール等が挙げられる。
上記水素結合性官能基を有する重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、P−メンタンヒドロペルオキシド(日油社製「パーメンタH」)、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド(日油社製「パークミルP」)、1,2,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド(日油社製「パーオクタH」)、クメンヒドロペルオキシド(日油社製「パークミルH−80」)、t−ブチルヒドロペルオキシド(日油社製「パーブチルH−69」)、過酸化シクロヘキサノン(日油社製「パーヘキサH」)、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、t−アミルヒドロパーオキサイド、Disuccinic acid peroxide(パーロイルSA)等が挙げられる。
また、本発明のバインダー樹脂と、有機溶剤と、無機微粒子とを用いて無機微粒子分散ペースト組成物を作製することができる。
本発明のバインダー樹脂、有機溶剤、及び、無機微粒子を含有する無機微粒子分散ペースト組成物もまた、本発明の1つである。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、無機微粒子を含有する。
上記無機微粒子としては特に限定されず、例えば、銅、銀、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラス等の低融点ガラス、BaMgAl1017:Eu、ZnSiO:Mn、(Y、Gd)BO:Eu等の蛍光体、種々のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属錯体等が挙げられる。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物における上記無機微粒子の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限が10重量%、好ましい上限が90重量%である。10重量%未満であると、粘度が充分に得られないことがあり、塗工性が低下することがあり、90重量%を超えると、無機微粒子を分散させることが困難になることがある。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテートテキサノール、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール等が挙げられる。
なかでも、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノールが好ましく、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテートがより好ましい。なお、これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記有機溶剤は、沸点が150℃以上であることが好ましい。150℃未満であると、印刷プロセス中に溶剤が揮発してしまい、ペーストの粘度が高まり、印刷できなくなることがある。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物におけるバインダー樹脂の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限が5重量%、好ましい上限が30重量%である。上記バインダー樹脂の含有量が、上記範囲内であると、低温で焼成しても脱脂可能な無機微粒子分散ペースト組成物を作製することができる。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物における上記有機溶剤の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は5重量%、好ましい上限は60重量%である。この範囲を外れると、塗工性が低下したり、無機微粒子を分散させることが困難となったりすることがある。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、密着促進剤を含有してもよい。
上記密着促進剤としては、特に限定されないが、アミノシラン系シランカップリング剤が好適に用いられる。
上記アミノシラン系シランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
アミノシラン系シランカップリング剤以外にも、グリシジルシラン系シランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、その他シランカップリング剤であるジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等も好適に用いることができ、これらを複数用いても良い。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、塗工後のレベリングを促進させる目的でノニオン系界面活性剤を含有することが好ましい。
上記ノニオン系界面活性剤としては特に限定されないが、HLB値が10以上20以下のノニオン系界面活性剤であることが好ましい。ここで、HLB値とは、界面活性剤の親水性、親油性を表す指標として用いられるものであって、計算方法がいくつか提案されており、例えば、エステル系の界面活性剤について、鹸化価をS、界面活性剤を構成する脂肪酸の酸価をAとし、HLB値を20(1−S/A)等の定義がある。具体的には、脂肪鎖にアルキレンエーテルを付加させたものが好適であり、具体的には例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等が好適に用いられる。なお、上記ノニオン系界面活性剤は、熱分解性がよいが、大量に添加すると無機微粒子分散ペースト組成物の熱分解性が低下することがあるため、含有量の好ましい上限は5重量%である。
また、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物では、更に、添加剤として、可塑剤、粘着付与剤、保存安定剤、消泡剤、熱分解促進剤、酸化防止剤等を含有させてもよい。これらの添加剤は、特に限定されるものではなく、この分野で通常用いられるものを適宜選択することができる。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物の製造方法としては特に限定されず、従来公知の方法が挙げられ、各成分をボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法等が挙げられる。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、無機微粒子としてガラス粉末を用いた場合、ガラスペースト組成物として好適に使用することができる。また、無機微粒子としてセラミック粉末を用いた場合はセラミックペースト組成物、無機微粒子として蛍光体粉末を用いた場合は蛍光体ペースト組成物、無機微粒子として導電性粉末を用いた場合は導電ペースト組成物として好適に使用することができる。
無機微粒子としてガラス粉末又はセラミックス粉末を用いることで、グリーンシートの材料として好適に使用することができる。これらの用途で本発明の無機微粒子分散ペースト組成物を用いることで、低温での脱脂が可能となり、焼結時における無機微粒子の焼結中の酸化を最低限度に抑えることが可能となる。このようなグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物もまた本発明の1つである。
本発明のグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物に用いられる溶剤としては、特にトルエンや酢酸ブチル、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン等が好ましい。また、上記溶剤の添加量は用いる塗工プロセスによって適宜選択することが望ましく、特に限定されるものではない。更に、本発明のグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物における上記無機微粒子及び無機微粒子の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限が50重量%、好ましい上限が95重量%である。50重量%未満であると、樹脂分が多く焼結性に問題が発生する可能性があり95重量%を超えると、無機微粒子等を分散させることが困難でシート化できないことがある。
本発明のグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物を片面離型処理を施した支持フィルム上に塗工し、溶剤を乾燥させ、シート状に成形することで、グリーンシートを製造することができる。このようなグリーンシートもまた本発明の1つである。
本発明のグリーンシートの製造方法としては、例えば、本発明のバインダー樹脂を溶剤に溶解させ、界面活性剤や分散剤、可塑剤等を添加し、攪拌、均一なビヒクルを作成した後、無機微粒子を添加し、ボールミルの分散装置を用いて均一に分散させる。得られたグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物をロールコーター、ダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーター等の塗工方式によって支持フィルム上に均一に塗膜を形成する方法等が挙げられる。
本発明のグリーンシートを製造する際に用いる支持フィルムは、耐熱性及び耐溶剤性を有すると共に可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可撓性を有することにより、ロールコーター、ブレードコーターなどによって支持フィルムの表面にグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物を塗布することができ、得られるグリーンシート形成フィルムをロール状に巻回した状態で保存し、供給することができる。
上記支持フィルムを形成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレン等の含フッ素樹脂、ナイロン、セルロース等が挙げられる。
上記支持フィルムの厚みは、例えば、20〜100μmが好ましい。
また、支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましく、これにより、転写工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
本発明によれば、無機微粒子分散ペースト組成物に使用した場合に、無機微粒子の分散性に優れ、焼結後の残留炭素が少なく低温雰囲気下であっても脱脂処理が可能であり、かつ、機械的強度の高いグリーンシートを得ることが可能なバインダー樹脂、無機微粒子分散ペースト組成物、グリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物及びグリーンシートを提供することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)バインダー樹脂、無機微粒子分散ペースト組成物の調製
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラプルフラスコに、メチルメタクリレート(MMA)30重量部、イソブチルメタクリレート(IBMA)45重量部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(MPEGMA、共栄社化学社製ライトエステル041MA、PEO繰り返し数30)25重量部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン、有機溶剤として酢酸ブチル100重量部とを混合し、モノマー混合液を得た。
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながら湯浴が沸騰するまで昇温した。重合開始剤を酢酸ブチルで希釈した溶液を加えた。また重合中に重合開始剤を含む酢酸ブチル溶液を数回添加した。
重合開始から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。これにより、(メタ)アクリル樹脂の酢酸ブチル溶液を得た。得られた重合体について、カラムとしてSHOKO社製カラムLF−804を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は表1のとおりであった。
このようにして得られた(メタ)アクリル樹脂の酢酸ブチル溶液50重量部に、無機粉体としてアルミナ(平均粒子径2.0μm)50重量部を添加し、高速攪拌機で混練し、無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
(2)グリーンシートの作製
得られた無機微粒子分散ペースト組成物を、予め離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる支持フィルム(幅400mm,長さ30m,厚さ38μm)上にブレードコーターを用いて塗布し、形成された塗膜を100℃で10分間乾燥することにより溶剤を除去することにより、厚さ50μmの無機粉体含有樹脂層を支持フィルム上に形成した。次いで、前記無機粉体含有樹脂層上に、予め離型処理したPETよりなるカバーフィルム(幅400mm,長さ30m,厚さ25μm)を貼り付けることにより、グリーンシートを製造した。
(実施例2〜4、比較例1〜6)
実施例1におけるアクリルモノマー混合液の組成を表1に記載の内容に変更し、実施例1と同じ方法で無機微粒子分散ペースト組成物、グリーンシートを作製した。
ここで実施例2、比較例1、2、5、6において使用したメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(MPEGMA)は実施例1と同様のものである。また、実施例3、4においては、エチレンオキサイド繰り返し数90のMPEGMA(日油社製、ブレンマーPM4000)、比較例3においては、エチレンオキサイド繰り返し数23のMPEGMA(日油社製、ブレンマーPM1000)、比較例4においては、エチレンオキサイド繰り返し数9のMPEGMA(共栄社化学社製、ライトエステル130MA)を用いた。
<評価>
実施例1〜4及び比較例1〜6で得られたバインダー樹脂、無機微粒子分散ペースト組成物及びグリーンシートについて以下の評価を行った。結果を表2に示した。
(1)樹脂伸長性
実施例、比較例で作製したメタアクリル樹脂の酢酸ブチル溶液を離型処理したPETフィルムにアプリケーターを用いて0.2032mm(8ミルの厚みで塗工し、100℃送風オーブンで10分間乾燥させ、樹脂シートを作成した。方眼紙をカバーフィルムとして用い、はさみで幅1cmの短冊片を作製した。23℃、50RH条件下で島津製作所社製オートグラフAG−ISを用いてチャック間距離3cm、引張速度10mm/minにて引張試験を行い、破断に要した歪みを評価した。
破断歪みが50%以上の物を○、50%未満の物を×とした。
(2)焼結性
実施例、比較例で作製したグリーンシートをガラス基板に転写し、窒素置換したマッフル炉にて10℃/minにて300℃まで昇温し、300℃の状態にて1時間保持し、焼結を終了した。マッフル炉から取り出し、グリーンシートの焼き色を目視にて確認した。
着色のない物を◎、淡黄色を○、茶色を×と判定した。
(3)巻き取り性試験
実施例、比較例で作製したグリーンシートに片側を離型処理したPETフィルムを保護フィルムをとして貼り合わせ、ガラスシートを作製した。
得られたガラスシートを直径が15cm、長さ50cmのポリプロピレンパイプに巻き付け、ロール状態で23℃の室温にて24時間養生した。
ロール端部から5m、10mの部分を切断し、グリーンシートにクラックなどの不具合が発生しているか、目視で確認した。クラックが発生していた物を×、発生していない物を○とした。
Figure 0005095377
Figure 0005095377
表2に示すように、実施例で得られたバインダー樹脂、グリーンシートにおいては、何れも良好な結果が得られた。
一方、メチルメタクリレート又はイソブチルメタクリレートの何れかが配合されていない比較例1及び2は、300℃における焼結性が悪く、エチレンオキサイド繰り返し数が小さいメトキシポリエチレングリコールメタクリレートを用いた比較例3、4やメトキシポリエチレングリコールの添加量が少ない比較例5は樹脂の伸長特性が悪く、その結果、巻き取り評価時にクラックが入り、シート組成には適さないことが確認された。メトキシポリエチレングリコールメタクリレート組成比を高めた比較例6では焼結体に煤が多く付着し、シートには適さないことが確認された。
本発明によれば、無機微粒子分散ペースト組成物に使用した場合に、無機微粒子の分散性に優れ、焼結後の残留炭素が少なく低温雰囲気下であっても脱脂処理が可能であり、かつ、機械的強度の高いグリーンシートを得ることが可能なバインダー樹脂、無機微粒子分散ペースト組成物及びグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物を提供することができる。
各種アクリル共重合体の熱分解挙動(TG・DTA)を示すグラフである。 各種アクリル共重合体の伸長特性を示すグラフである。 各種アクリル共重合体の伸長特性を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 無機微粒子を含有する無機微粒子分散ペースト組成物に用いられる無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂であって、
    メチルメタクリレートに由来するセグメント、イソブチルメタクリレートに由来するセグメント、及び、ポリエチレングリコールモノメタクリレートに由来するセグメントを有し、
    メチルメタクリレートに由来するセグメントの含有量が30〜35重量%、イソブチルメタクリレートに由来するセグメントの含有量が40〜50重量%、ポリエチレングリコールモノメタクリレートに由来するセグメントの含有量が15〜30重量%であり、かつ、
    前記ポリエチレングリコールモノメタクリレートは、エチレンオキサイドの繰り返し数が30以上である
    ことを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂。
  2. 請求項1記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂を用いることを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物。
  3. 請求項1記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂又は請求項2記載の無機微粒子分散ペースト組成物を用いてなることを特徴とするグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物。
  4. 請求項3記載のグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物を用いてなることを特徴とするグリーンシート。
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