JP5089833B2 - ポリマー電池用包装材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐酸性、耐有機溶剤性を有する接着剤を用いた積層体に関し、特にポリマー電池用パウチ等への利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、各種の素材をラミネートした各種の積層体を用いたパウチが主として包装材料として利用されている。一方、最近、積層体からなるパウチ内にポリマー電池本体を収納するポリマー電池の開発がなされている。
ポリマー電池は、リチウム2次電池ともいわれ、高分子ポリマー電解質を持ち、リチウムイオンの移動で電流を発生する電池といわれ、正極・負極活物質が高分子ポリマーからなるものを含むものである。
リチウム電池の構成は、正極集電材(アルミ、ニッケル)/正極活性物質層(金属酸化物、カーボンブラック、金属硫化物、電解液、ポリアクリロニトリル等の高分子正極材料からなる)/電解質層/(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、炭酸ジメチル、エチレンメチルカーボネート等のカーボネート系電解液、リチウム塩からなる無機固体電解質、ゲル電解質等からなる/負極活性物質層(リチウム金属、合金、カーボン、電解液、ポリアクリロニトリル等の高分子負極材料/負極集電材(銅、ニッケル、ステンレス)及び、それらを包装する外装体からなる。
ポリマー電池の用途としては、パソコン、携帯端末装置(携帯電話、PDA等)、ビデオカメラ、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星等に用いられる。
そして、該ポリマー電池の構造は、アルミニウム、ニッケル等からなる正極集電材、金属酸化物、カーボンブラック、金属硫化物、電解液、ポリアクリルニトリル等の高分子正極材料からなる正極活性物質層、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、炭酸ジメチル、炭酸エチル、エチレンメチルカーボネート等のカーボネート系電解液、リチウム塩からなる無機固体電解質、ゲル電解質等からなる電解質層、リチウム金属、合金、カーボン、電解液、ポリアクリルニトリル等の負極活性物質層、銅、ニッケル、ステンレス等の負極集電材から構成するポリマー電池本体とそれを包装する外装体からなる。
前記ポリマー電池の外装体としては、金属をプレス加工し円筒状または直方体状等に容器化した金属製缶、あるいは、最外層/アルミニウム/シーラント層から構成される多層フィルムを袋状にしたものが用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、ポリマー電池の外装体として次のような問題があった。金属製缶においては、容器外壁がリジッドであるため、電池自体の形状が決められてしまう。その為、ハード側を電池に合わせ設計するため、該電池を用いるハードの寸法が電池により決定されてしまい形状の自由度が少なくなる。
また、多層フィルムからなる袋状の外装体は、前記金属缶のように、電池自体により、電池を用いるハードの形状の自由度の制限は無くなるが、ポリマー電池の外装体として要求される物性・機能を、十分に満足しうる包装材料はいまだ開発されていないのが現状である。前記要求される物性・機能とはつぎのようなものである。
例えば、ポリマー電池の外装体としては、前記ポリマー電池本体の基体部とハードと電池本体とをつなぐ電極の一部を外気と遮断した密封系に保持する必要があり、そのために、前記多層フィルムの最内層は、前記電極と接着性、特にヒートシール性を有することが必要である。電極は金属により構成されているため、前記最内層は金属とのヒートシール性が求められている。
また、ポリマー電池は、充電/放電による内容物である電池の温度上昇によるヒートシールの安定性と密封系の確保や、使用される環境温度が、例えば夏季における車のダッシュボードや、冬季における寒冷地での使用などに耐えるために用いられるハードとともに、耐熱性、耐寒性が求められ、前記の厳しい環境下においても、外装体としてヒートシールの安定性と密封系の確保が要求される。
また、ポリマー電池の場合、その電池内容物として、カーボネート系溶剤とリチウム塩からなる電解質が外装体に悪影響を及ぼし多層フィルム層間の接着強度を低下させることがあった。すなわち、溶剤(カーボネート系)を含むため、溶剤が多層フィルム層間の接着層を膨潤化させ接着強度を低下させる。
さらに、電解質の加水分解により酸と熱が発生し、金属から構成されるバリア層を腐食させ層間の接着強度を低下させ、また、発生する熱のために電池が発火することもある。また温度上昇により電池の起電力の低下が起こり、接続されている機器が停止、故障することもある。
これらの問題の要因となる前記電解質の加水分解は、いずれも、電池の密封系内に外部からの水分が浸入することによる。従って、外装体としては、外部からの水蒸気を遮断する(バリア性)が求められる。
また、ポリマー電池に限らず、電池の外装体としては、該外装体の回りにある機器(ハード)と通電しないこと、また、電極同士が接触通電しショートすることがない構造が求められる。
ポリマー電池の外装体として、前記金属缶、袋のほかに、成形トレイと蓋材とにより密封する形状も考えられる。この場合にも、ヒートシール性を有する最内層樹脂の選択と、前記トレイを成形する際の、成形性のよい積層体が求められていた。
本発明は、ポリマー電池を収納するケースに用いる包装材料として、水蒸気その他のガスバリア性に優れ、また、耐突き刺し性等をはじめ機械的強度があり、また高温においても使用可能であり、電解液に対しても安定した積層体を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、最外層/バリア層/最内層、または、最外層/バリア層/中間層/最内層からなる積層体であるポリマー電池用包装材料であって、当該最外層が、耐熱性、耐ピンホール性、成形性、絶縁性を備えた基材から構成され、当該バリア層が、水蒸気バリア性、成形性、耐酸性を備えたバリア性基材から構成され、当該中間層は、絶縁性、成形性を備えた中間基材から構成され、当該最内層が、熱融着性、耐熱性、耐寒性、電解液適性、絶縁性を備えたヒートシール性基材から構成され、前記最内層が共押出しされた多層構成からなると共に前記最内層の表出面が金属接着性をもたないポリオレフィン系樹脂からなり、外に露出させる電極と最内層との間に不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン、金属イオン架橋ポリエチレン、エチレンまたはプロピレンのいずれかとアクリル酸またはアクリル酸誘導体またはメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体のいずれかを共重合した共重合体物のいずれかから形成される熱接着性タブ材が使用されて密封されるポリマー電池に使用されることを特徴とするポリマー電池用包装材料である。上記積層体の層間には、接着剤層が介在し、上記最外層を構成する基材が、延伸ポリエステル系樹脂、延伸ポリアミド系樹脂のいずれかから構成され、さらに上記最外層が、複数の基材で構成されるものを含み、上記バリア層の厚さが、少なくとも15μm以上であるアルミニウム箔から構成されると共に上記バリア層を構成するアルミニウム箔に、リン酸塩、クロム酸塩、リン酸クロム、リン酸亜鉛からなる耐酸性皮膜が形成されてなるものを含み、上記バリア層を構成するアルミニウム表面に保護層が形成され、上記保護層が、少なくともエポキシ系、フェノール系、メラミン系、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン系の樹脂、アクリル系樹脂およびこれらの変性物のいずれか一つを含むものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるポリマー電池用包装材料について図等を用いてより詳細に説明する。
図1は、本発明のポリマー電池用包装材料の実施例を示す、(a)基本的層構成、(b)ポリマー電池の構造を説明する斜視図、(c)X1 −X1 部の断面図、(d)X2 −X2 部の断面図である。図2は、本発明のポリマー電池用包装材料の別の実施例を示す、(a)基本的層構成、(b)ポリマー電池の構造を説明する斜視図、(c)エンボスタイプの外装体のポリマー電池の斜視図、(d)X3 −X3 部の断面図である。図3は、本発明の積層体の別の実施例を示す断面図である。図4は、本発明における外装体とタブとの接着の別の実施例を示す説明図で、(a)ポリマー電池の斜視図、(b)熱接着性タブ材を接着したポリマー電池本体の斜視図、(c)熱接着性タブ材を接着した別のポリマー電池本体の斜視図、(d)および(e)はそれぞれの熱接着性タブ材を用いた場合のX4 −X4 部断面図である。図5は、本発明の積層体を用いるポリマー電池のパウチタイプの外装体の形状を示す平面図とそれぞれのタイプの断面図である。図6は、本発明の積層体を用いるポリマー電池のエンボスタイプの外装体の形状を示す(a)片面エンボスタイプの底材の斜視図、(a′)X9 −X9 部断面図、(b)両面エンボスタイプの斜視図、(b′)X1 0−X10部断面図、(c)エンボスタイブにおけるタブの位置を示す別の例の概念図、(d)タブをさらに別の位置に設けた例の概念図である。
【0006】
本発明の課題について、本発明者らは鋭意研究の結果、多層構造からなる包装材料であって、次に説明する各材質からなる積層体とすることによって本発明の課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに到った。本発明にかかるポリマー電池は、図1(b)および図1(c)に示すように、ポリマー電池本体2をピロータイプ(以下、パウチタイプ)の形状の外装体4の中に封入し、電極の一部を外装体の外に露出させた構造である。
または、図2(b)および図2(d)に示すように、少なくとも片面の積層体を成形(以下、エンボス)とて底材とし、該底材の、エンボス部8にポリマー電池本体2を収納し、蓋材7として他の積層体によりポリマー電池本体2を被覆し、周辺をヒートシールして密封するものである。
前記、パウチタイプとエンボスタイプ(以下、カップタイプと記載することがある)とに関する外装体の形態については後に詳細に説明する。
そして、前記積層体は、基本的には、最外層/バリア層/最内層の3層からなり、また、バリア層と最内層との間に中間層を設けた4層構成としてもよい。
図1(a)は、前記4層タイプの積層体を示している。そして、それぞれの層は以下に順次説明する材質とする。本発明のポリマー電池は、図1(d)に示すように、電極3の一部を含むヒートシール部を形成するものである。
【0007】
本発明における積層体10の前記最外層11は、延伸ポリエステル又は延伸ナイロンからなるが、この時、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。またナイロンとしてはポリアミド系樹脂、すなわち、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,6とナイロン6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアトジパミド(MXD6)等の結晶性ナイロンおよび非晶性ナイロンが挙げられる。
【0008】
前記最外層11は、ポリマー電池として用いられる場合、ハードと直接接触する部位であるため、基本的に絶縁性を有する樹脂層がよい。フィルム単体でのピンホールの存在、および加工時のピンホールの発生等を考慮すると、最外層は 6μm以上の厚さが必要であり、好ましい厚さとしては12〜25μmである。
【0009】
本発明においては、最外層11は耐ピンホール性および電池の外装体とした時のハードとの絶縁性を向上させるために積層化することも可能である。
その場合、最外層11が2層以上の樹脂層を少なくとも一つ含み、各層の厚みが 6μm以上、好ましくは12から25μmである。最外層11を積層化する例としては、図示はしないがつぎの1)〜6)が挙げられる。
1)延伸ポリエチレンテレフタレート/ 延伸ナイロン
2)延伸ポリエチレンテレフタレート/ ポリエチレン
3)延伸ナイロン/ポリエチレン
【0010】
上記最外層11はドライラミネーション、押出しラミネーション等でバリア層12と接着される。
【0011】
前記バリア層12は、外部からポリマー電池1の内部に特に水蒸気が浸入することを防止するための層で、バリア層単体のピンホール、及び加工適性(パウチ化、エンボス成形性)を安定化し、かつ耐ピンホールをもたせるために厚さ15μm以上のアルミニウム、ニッケルなどの金属、又は、無機化合物、例えば酸化珪素、アルミナ等が挙げられるが、バリア層として好ましくは20〜80μmの軟質アルミニウムとする。
ピンホールの発生をさらに改善し、ポリマー電池の外装体のタイプをエンボスタイプとする際、エンボス部におけるクラック等の発生のないものとするために、本発明者は鋭意研究の結果、バリア層として用いるアルミニウムの材質が、鉄含有量が0.3 〜9.0 %、好ましくは、0.7 〜2.0 %とすることによって、鉄を含有しないアルミニウムと比較して、アルミニウムの展延性がよく、積層体として折り曲げによるピンホールの発生がすくなくなり、かつ前記エンボスタイプの外装体のためのエンボス時の側壁部の形成も容易にできることを見いだした。前記鉄含有量が0.3 %未満の場合は、ピンホールの発生の防止、成形性の改善等の効果が認められず、また、前記アルミニウムの鉄含有量が9.0 %を超える場合は、アルミニウムとしての柔軟性が阻害され、積層体として製袋性が悪くなる。
【0012】
さらに、本発明者らは、ポリマー電池の電解質と水分との反応で生成するフッ化水素酸(化学式:HF)により、アルミニウム表面の溶解、腐食を防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させ、積層体形成時のアルミニウムと最内層との接着力の安定化を図る課題に対して、アルミニウム表面に耐酸性皮膜の形成および保護層の形成、そして前記各技術を複合して実施することによって前記課題の解決に顕著な効果のあることを見いだした。
【0013】
アルミニウム表面に設ける耐酸性改質皮膜としては、リン酸塩系、クロム酸系の皮膜が挙げられる。リン酸塩系としては、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム、リン酸クロムである。
【0014】
また、接着性向上処理として、アルミニウム表面のカップリング処理および/または粗面化が挙げられる。前記カップリング処理として利用できるものとしては、シラン系カップリング剤、有機チタン系、有機アルミ系の各カップリング剤が利用できる。
有機チタン系カップリング剤としては、テトラアルコキシチタン、チタンアシレート、チタンキレート等、また、有機アルミ系カップリング剤としては、トリアルコキシアルミニウム、アルミニウムキレート、アルミニウムアシレート等が利用できる。
接着性向上処理として、アルミニウム表面の粗面化も効果を示す。すなわち、アルミニウム表面に存在する酸化アルミニウム(化学式:AL2 O3 )の除去と表面粗度を大きくし、表面積の増加、およびアンカー効果を発現させ接着性の向上を目的としアルミニウム表面をエッチング、酸またはアルカリで洗浄することもできる。
【0015】
前記保護層の形成は、アルミニウム表面に、前記耐酸性改質剤を含有するエポキシ系、フェノール系、メラミン系、ポリエステル系、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン系、およびこれらの変性物のいずれか一つを含む樹脂層を設けるものである。
【0016】
また、前記の各表面処理を複合して用いることもできる。例えば、
(1) アルミニウム/ 耐酸性皮膜の形成
(2) アルミニウム/ 耐酸性皮膜の形成/ 保護層の形成
【0017】
本発明においては、さらに、前記耐酸性改質剤を含有する前記保護層に加えて、前記耐酸性改質剤を含有しない、エポキシ樹脂、フェノノール樹脂、メラミン樹脂、オレフィン樹脂不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン樹脂、アクリル系樹脂およびこれらの変性物のいずれか一つを含む第2保護層を形成してもよい。
この場合の第2保護層の形成方法としては、例えば、
(1) アルミニウム/ 耐酸性皮膜の形成/ 第2保護層の形成
(2) アルミニウム/ 耐酸性皮膜の形成/ 保護層の形成/ 第2保護層の形成
とすることができる。
【0018】
本発明においては、バリア層12または前記保護層と最内層14との間に中間層13を設けてもよい。前記中間層は前記バリア層12の保護と、製袋の際のヒートシールの熱と圧力によってヒートシール層である最内層14が薄くなり、電極3とアルミニウム(バリア層12)と接触(短絡発生)することを防止するものである。
また、中間層13は電池の環境適性( 耐熱性、耐寒性) を安定化するために積層するが、厚さ10μm以上、融点は80℃以上であって、好ましくは12から25μmのポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、または、これらの変性物および混合物から形成される少なくとも1 層含むものとする。
前記ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネートおよびこれらの共重合体または変性物が挙げられる。また、前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、シングルサイト系触媒を用いて重合したエチレンーα・オレフィン共重合体、金属イオン含有ポリエチレン、エチレンとメタクリル酸またはアクリル酸誘導体の共重合物、ポリブテン、不飽和カルボン酸グラフトポリエチレン、不飽和カルボン酸グラフトポリプロピレン、不飽和カルボン酸グラフトポリメチルペンテンおよびこれらの変性物が挙げられる。
これらの樹脂は延伸又は未延伸の状態のどちらでも用いることができる。
【0019】
本発明におけるポリマー電池用包装材料の最内層14は、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン、エチレンとアクリル酸誘導体、エチレンとメタクリル酸誘導体との共重合体系樹脂、金属イオン架橋ポリエチレン、およびこれらの変性物または混合物から形成される。最内層の厚さは、20μm以上、また最内層を形成する樹脂の融点が70℃以上、ビカット軟化点が60℃以上が好ましい。最内層には、金属接着性を持たないポリオレフィン系樹脂14’を用いることもできるが、この場合には、電極3と最内層との間に前記不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン、金属イオン架橋ポリエチレン、エチレンまたはプロピレンのいずれかとアクリル酸またはアクリル酸誘導体またはメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体のいずれかを共重合した共重合体物のいずれかから形成される熱接着性タブ材(厚さ15μm以上)16を用いることによって、タブと外装体とが完全に接着され、密封することができる。具体的には、図4(b)に示すように、電極の熱接着部に電極より巾の広い熱接着性タブ材16を載置し、外装体に挿入して熱接着して密封する。図4(d)は、この場合の熱接着後のX4−X4断面を模式的に示したものである(但し、最外層、バリア層、中間層は1層として示している)。また、図4(c)は、電極3の電極の熱接着部に熱接着性タブ材16を巻き付けて外装体に挿入して熱接着して密封した例であり、図4(e)は、この場合の熱接着後のX4−X4断面を図4(d)と同じように模式的に示したものである。
【0020】
さらに、最内層14はパウチタイプ、エンボスタイプともに熱融着法により電極タブをサンドイッチした状態で密封系を形成する。ところが、熱融着部分の最内層としてのオレフィン樹脂は、その特性から脆くなり、簡単にクラック、ピンホールが発生し易くなる。また、熱融着時、電極用タブの端部部分は、前記タブの厚さ分最内層を潰すことでピンホールの発生をなくしているが、最内層の耐熱性を上げるために融点が高いオレフィン系樹脂の単層とすると、高温、高圧、長時間溶着する必要がある。この場合、熱融着自体が内容物である電池の特性を低下させたり、また包装材料の他の構成層、例えば最外層のポリエステルやナイロンが熱収縮を起こしたりすることで包装材料としての機能低下を起こす。このような課題を解決するために、本発明者らは、種々研究の結果、最内層を多層化することにより、前記課題に効果のあることを見いだし本発明を完成するに到った。最内層の多層化は、具体的には、
(1)ランダムまたはブロックプロピレン系/ホモプロピレン系
(2)エチレン−プロピレン共重合体/ポリエチレン/エチレン−プロピレン共重合体
(3)ホモプロピレン系/ランダムプロピレン系
(4)ランダムプロピレン系/ホモプロピレン系/ランダムプロピレン系
(5)ランダムプロピレン系/ブロックプロピレン系/ランダムプロピレン系
(6)ランダムプロピレン系/ブテン共重合ランダムプロピレン系
(7)ホモプロピレン系/ブテン共重合ランダムプロピレン系
を挙げることができる。
a)ポリプロピレン系としては、
1)ホモタイプポリプロピレン(融点150℃以上、ビカット軟化点140℃以上)
2)エチレン−プロピレン共重合体(融点110℃以上、ビカット軟化点100度以上のランダムタイププロピレンまたはブロックプロピレンまたはブテン共重合ランダムプロピレン樹脂=ターポリマー)
b)ポリエチレン系としては、
3)融点90℃以上、ビカット軟化点80℃以上の低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン‐プロピレン‐ジエン共重合体、エチレン‐プロピレン‐ブテン共重合体、シングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン‐α・オレフィン共重合体を挙げることができる。
【0022】
さらに、最内層14は、エンボス成形性を安定化するために、動摩擦係数、及び静摩擦係数が0.5以下、好ましくは0.2以下とすることが望ましい。該摩擦係数を達成するためにエルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド系滑剤を500ppm以上、または分子量10万以上のジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン系のシリコーン系滑剤を1000ppm以上、またはパウダー状シリコーン樹脂を3%以上添加することが好ましい。
【0023】
本発明のポリマー電池用包装材料を構成する積層体の各層には、適宜、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(エンボス成形、パウチ化)適性を向上、安定化する目的のために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理をしてもよい。
【0024】
本発明の積層体の最外層、バリア層、或いは最外層、バリア層、中間層、最内層の各層の形成または各層間の積層方法等は、具体的にはTダイ法、インフレーション法、共押出し法等を用いて製膜することができ、必要に応じて、コーティング、蒸着、紫外線硬化、電子線硬化等の技法により2次膜を形成してもよく、また、貼り合わせは、ドライラミネーション、押出しラミネーション、共押出しラミネーション、サーマルラミネーション(熱ラミネーション)等の方法により積層化しうる。前記ドライラミネーションをする場合であって、前記バリア層よりも外側における積層においては、通常のドライラミネート接着剤を用いて積層してもよい。ただし、バリア層よりも最内層側においてドライラミネーションをする場合には後述のような組成の接着剤を用いることが好ましい。
【0025】
ポリマー電池用外装体を形成する積層体の構成がドライラミネート法による接着である場合に、ポリマー電池の電解質成分であるカーボネート系溶剤による層間剥離およびリチウム塩と水との反応により発生するフッ化水素によるバリア層の最内層側表面での接着面剥離等の課題に対して、本発明者らは鋭意研究の結果、前記積層体のバリア層よりも内側における各層の接着をドライラミネートする際の接着剤の成分を次の組成とすることによって、前記層間剥離、バリア層表面での接着面剥離のない耐熱性に優れた積層体とすることができた。
その接着剤とは主剤と硬化剤とからなり、主剤が、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オクタンニ酸、ノナンニ酸、ウンデカンニ酸、パルミチン酸を少なくとも2種以上含む酸成分と、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコールを少なくとも1種含むアルコール成分からなるポリエステル系樹脂と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のブレンドからなり、硬化剤がポリイソシアネート成分(TDI 、MDI 、IPDI、HDI 、XDI)からなるものである。
【0026】
また、前記押出しラミネーションあるいは熱ラミネーションをする際の樹脂として不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを用いることによって、接着性とともに耐内容物性も向上する。
【0027】
また、前記押出しラミネーションをする場合、接着する各層間の接着力を安定化する接着促進化方法として、接着する層の接着面にポリエステル系、ポリエーテル系、ウレタン系、ポリエーテルウレタン系、ポリエステルウレタン系、イソシアネート系、ポリオレフィン系、ポリエチレンイミン系、シアノアクリレート系、有機チタン化合物系、エポキシ系、イミド系、シリコーン系およびこれらの変性物、または混合物等の樹脂を1 μm程度塗工したり、オゾン処理等による表面活性化処理を行うことができる。
【0028】
本発明の積層体を積層化する方法として、3層構成の場合、本発明の積層体を積層する方法として、代表的に次の3方法、すなわち、
1)第1基材として、最外層/バリア層の積層体と最内層からなる第2基材積層体をそれぞれ準備し熱ラミネーションする、
2)第1基材として最外層/バリア層、第2基材として最内層を準備し押出しラミネーション(共押出しを含む)する方法、この場合必要に応じ、再度熱ラミネーション工程を施す、
3)すべてをドライラミネーションで貼りあわせる
のいずれの方法を用いてもよい。
【0029】
また、4層構成の場合には、積層化する方法として、代表的に次の3方法、すなわち、
1)第1基材として、最外層/バリア層の積層体と中間層/最内層からなる第2基材積層体をそれぞれ準備し熱ラミネーションする
2)第1基材として最外層/バリア層、第2基材として中間層の一部/最内層の積層体、または最内層のみを準備し中間層により押出しラミネーション(共押出しを含む)する、この場合必要に応じ、再度熱ラミネーション工程を施す
3)すべてをドライラミネーションで貼りあわせる
のいずれの方法を用いてもよい。
【0030】
さらに、中間層には、気体、液体、イオン透過防止薄膜層としてスパッタリグ法、化学蒸着法、物理的蒸着法を用いアルミニウム層のような金属薄膜層、酸化アルミや酸化錫のような金属酸化物層、コーティング法を用い塩化ビニリデン層等を形成することで、さらに、バリア層に対する電解質構成物質の透過を防止し安定した接着性を持たせることができる。
【0031】
【実施例】
以上に説明した本発明のポリマー電池用包装材料としての積層体の層構成を、以下に記載のように作成し、パウチタイプ、エンボスタイプとしてポリマー電池の包装材料としてそれぞれ具体的に用いて評価した。なお、以下の説明において、フィルム名物質名、加工法等は、次の略称を用いた。
<略称>延伸ポリエステル:OPET、延伸ポリアミド:ON、アルミニウム:AL、共重合延伸ポリエステル:COPET、リン酸クロム皮膜:PC、3価クロム皮膜:3C、リン酸亜鉛皮膜:PZ、リン酸カルシウム皮膜:PCa、ポリエステルポリウレタン系接着剤:PUD、ポリエーテルウレタン系接着剤:PED、不飽和カルボン酸グラフトランダムプロピレン接着剤:PAD、不飽和カルボン酸グラフトポリエチレン接着剤:PEAD、熱ラミネーション:TL、ドライラミネーション:DL、樹脂溶融押出しラミネーション:EC、アンカーコート:ANC、エポキシ:EP、フェノール:FN、メラミン:MR、アクリル:AC、ポリエステル:PET、不飽和カルボン酸グラフトランダムプロピレン:PPA、不飽和カルボン酸グラフトポリエチレン:PPEA、エチレンーメタクリル酸メチル共重合体:EAM、ホモプロピレン:PH、ランダムプロピレン:PR、ブテン共重合ランダムプロピレン:BR、高密度ポリエチレン:HD、低密度ポリエチレン:LD、=は、積層に用いた物質名を示す。また、ドライラミネートのみの記載で、用いた接着剤名の記載のないものは、ポリエステルウレタン系接着剤を用いてラミネートしたものである。
<評価内容>下記の各包装材料を用いてパウチまたはカップを作成して次の性能について評価した。
1.電解液適性
疑似電解液を注入密封シール後、60℃、30日保管時のバリア層と最内層、または、バリア層と中間層のデラミの有無を検査した。
2.水蒸気バリア性
40℃、90%RH、30日保管時の水分量が300PPM以下であること。
3.最内層シール強度変化
−40℃、30日保管後、室温(23℃)1時間放置後の強度が15mm巾で9.8N(1kgf)以上であること。
4.電極タブ短絡防止性
電極タブを最内層で挟み、電極タブを挟んだ部分を190℃、3.5秒、0.3MPaでシールした時、
(1)最外層部分にピンホールがなく、また、バリア層から剥がれていないことを確認する。
(2)電極タブとバリア層の接触を検査する。
5.成形品(カップ)の場合の成形性
3.1mmの深さになるように、オス型とメス型とを用い、冷間状態でプレス成形する。この時、オス型とメス型とのクリアランスは1mmとした。そして100個成形した時の成形部分のピンホールの発生を検査した。疑似電解液はエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(重量比率)に、1M 6弗化リン酸リチウム(LiPF6)を添加したもの。
基本ヒートシール条件は、190℃、3.5秒、0.3MPa
<パウチタイプでの実施例>
・パウチ:4方シールタイプ
・包装形態寸法:40mm×60mm(シール巾5mm)
・積層の順番は、実施例に限定されるものではなく適宜変更しうる。
<実施例としての積層体の構成>記載は、いずれも左が外面、右側が内側(ポリマー電池本体側)である。
[実施例1]
最外層である延伸ポリエステルフィルム12μmと3価クロム皮膜からなる耐酸性皮膜を設けたアルミニウム25μmとをドライラミネーションし、前記耐酸性皮膜面に保護層としてアクリルフィルム5μmをドライラミネーションし、さらに前記保護層面に中間層として延伸ポリエステル6μmをドライラミネーションし、さらに前記中間層の面に最内層としてランダムプロピレン5μmとホモプロピレン30μmとランダムプロピレン10μmとの共押出しフィルムを熱ラミネーションして[実施例1]の包装材料を得た。略号により示すと
OPET12/PUD/AL25/3C/PUD/AC5/PUD/OPET6/TL/PR5//PH30//PR10
であり、以下、作成した実施例も同様に略号による記載とする。略号の後に記載の数字は層の厚さμmを示す。また、//は共押出製膜の層間を示す、+はブレンドを示す。
[実施例2]
最外層として、延伸ポリエステルフィルム12μmと延伸ナイロン15μmとをドライラミネートし、前記延伸ナイロン面に3価クロム皮膜からなる耐酸性皮膜を設けたアルミニウム25μmをポリエーテルウレタン系接着剤でドライラミネーションし、前記耐酸性皮膜面にアクリル樹脂4μmの保護層を設け、該保護層面に最内層としてホモプロピレン40μmとランダムプロピレン10μmとの共押出しフィルムをドライラミネーションして[実施例2]の包装材料を得た。
OPET12/PUD/ON15/PED/AL25/3C/AC4/PUD/PH40//PR10
[実施例3]
延伸ナイロンとアルミニウムとをポリエステルポリウレタン系接着剤でドライラミネーションし、アクリル樹脂の保護層面と最内層のホモプロピレン面とを不飽和カルボン酸グラフトランダムプロピレン接着剤を接着性樹脂として熱ラミネーションしたこと以外は実施例2と同じ方法により積層して[実施例3]の包装材料を得た。
OPET12/PUD/ON15/PUD/AL25/3C/AC4/TL=PAD/PH40//PR10
[実施例4]
最外層として、延伸ポリエステルフィルム12μmと延伸ナイロン15μmとをドライラミネートし、前記延伸ナイロン面にリン酸亜鉛皮膜からなる耐酸性皮膜を設けたアルミニウム25μmをドライラミネーションし、前記耐酸性皮膜面に最内層としてランダムプロピレン5μmとホモプロピレン20μmとランダムプロピレン10μmとの共押出しフィルムの前記ランダムプロピレン5μm面とを不飽和カルボン酸グラフトランダムプロピレン接着剤を接着性樹脂として熱ラミネーションして[実施例4]の包装材料を得た。
OPET12/PUD/ON15/PUD/AL25/PZ/TL=PAD/PR5//PH20//PR10
[実施例5]
最外層として、延伸ポリエステルと延伸ナイロンとをポリエーテルウレタン系接着剤を用いてドライラミネートし、耐酸性皮膜として3価クロム皮膜を形成したアルミニウム25μmと最外層の延伸ナイロン面とをドライラミネートし、前記耐酸性皮膜面に、保護層としてアクリル樹脂4μmを形成し、該保護層面に中間層として延伸ポリエステル6μmをドライラミネートし、ランダムプロピレン40μmとブテン共重合ランダムプロピレン20μmとの共押出しフィルムのランダムプロピレン面と中間層とをドライラミネートして[実施例4]の包装材料を得た。
OPET12/PED/ON15/PUD/AL25/3C/AC4/PUD/OPET6/PUD/PR40//BR20
[実施例6]
最外層として、延伸ポリエステルと延伸ナイロンとをドライラミネートし、前記延伸ナイロン面と耐酸性皮膜としてリン酸亜鉛皮膜を形成したアルミニウム25μmをドライラミネートし、耐酸性皮膜面に、保護層としてアクリル樹脂3μmを形成し、該保護層面に、第1中間層として、ランダムプロピレン10μmを不飽和カルボン酸グラフトランダムプロピレン接着剤を接着性樹脂として、また、第2中間層として延伸ポリエステルフィルム6μmにポリエステルウレタン系接着剤をアンカーコートした、当該アンカーコート面と熱ラミネートし、該第2中間層に、最内層としてランダムプロピレン10μmとホモプロピレン20μmとブテン共重合ランダムプロピレン20μmとの共押出しフィルムとし、前記ランダムプロピレン10μm面をドライラミネートして[実施例6]の包装材料を得た。
OPET12/PUD/ON15/PUD/AL25/PZ/AC3/TL=PAD/PR10/ACN=PUD/OPET6/PUD/PR10//PH20//BR20
<パウチタイプ仕様評価>
前記実施例について各項目での評価した結果は、次の通りで、いずれも良好な性能が得られた。
1.電解液適性:デラミの発生無し
2.水蒸気バリア性:300PPM以下
3.最内層シール強度
−40℃保持 9.8N/15mm巾以上
120℃保持 9.8N/15mm巾以上
4.電極タブ短絡防止性
最外層とバリア層とのデラミ無し
最外層のピンホール無し
電極タブとバリア層との接触無し
<カップタイプでの実施例>
・カップ:長方形トレー容器
・包装形態寸法:42mm×58mm×深さ3.1mm(シール巾5mm)ただし、成形部寸法30mm×45mm×深さ3.1mm(側壁部テーパー5度)
・最内層の動摩擦係数μを末尾の[ ]内に記載した
<実施例としての積層体の構成>記載は、前記パウチの場合と同じように、いずれも左が外面、右側が内側U(ポリマー電池本体側)である。
[実施例7]
最外層としての共重合延伸ポリエステル16μmと耐酸性皮膜として3価クロム皮膜2μmを形成したアルミニウム50μmとをドライラミネートし、アルミニウムの前記耐酸性皮膜面に、保護層としてアクリル樹脂5μmを形成し、該保護層面に中間層として共重合延伸ポリエステル16μmをドライラミネートし、最内層としてランダムプロピレン5μmとホモプロピレン30μmとランダムプロピレン10μmとを共押出し製膜して、前記中間層と前記最内層のランダムプロピレン5μm面とをドライラミネートして[実施例7]の包装材料を得た。用いたアルミニウムAL(♯3)は、微成分として、鉄1.5%、珪素0.09%、マンガン0.5%を含有するものであった。
COPET16/PUD/AL(♯3)50/3C/AC5/PUD/COPET16/PUD/PR5//PH30//PR10[0.2]
[実施例8]
保護層のアクリル樹脂の厚さを4μmとしたこと、最内層をランダムプロピレン40μmとブテン共重合ランダムプロピレン20μmとの共押出しフィルムとし、ランダムプロピレンをラミネート面としたこと以外は実施例7と同じ方法により積層して[実施例8]の包装材料を得た。
COPET16/PUD/AL(♯3)50/3C/AC4/PUD/COPET16/PUD/PR40//BR20[0.18]
[実施例9]
最内層をランダムプロピレン10μmとホモプロピレン20μmとブテン共重合ランダムプロピレン20μmとの共押出しフィルムとし、ランダムプロピレン面をラミネート面としたこと以外は実施例7と同じ方法により積層して[実施例9]の包装材料を得た。
COPET16/PUD/AL(♯3)50/3C/AC5/PUD/COPET16/PUD/PR10//PH20//BR20[0.5]
[実施例10]
最外層としての共重合延伸ポリエステル16μmと耐酸性皮膜として3価クロム皮膜を形成したアルミニウム50μmとをドライラミネートし、アルミニウムの前記耐酸性皮膜面に、保護層としてアクリル樹脂4μmを形成し、最内層としてホモプロピレン40μmとランダムプロピレン10μmとを共押出し製膜して、前記保護層面と前記最内層のホモプロピレン面とをドライラミネートして[実施例10]の包装材料を得た。用いたアルミニウムAL(♯3)は、微成分として、鉄1.5%、珪素0.09%、マンガン0.5%を含有するものであった。
COPET16/PUD/AL(♯3)50/3C/AC4/PUD/PH40//PR10[0.22]
[実施例11]
最内層として、ホモプロピレン30μmとランダムプロピレン10μmとの共押出しフィルムとし、保護層面と、最内層のホモプロピレン面とを不飽和カルボン酸グラフトランダムポリプロピレン接着剤を熱接着性樹脂として熱ラミネートしたこと以外は実施例10と同じ方法により積層して[実施例11]の包装材料を得た。
COPET16/PUD/AL(♯3)50/3C/AC4/TL=PAD/PH30//PR10[0.2]
[実施例12]
保護層を不飽和カルボン酸グラフトランダムポリプロピレン6μmとしたこと、最内層をランダムプロピレン5μmとホモプロピレン30μmとランダムプロピレン10μmとの共押出しフィルムとし、前記保護層と最内層のランダムプロピレン5μm面をラミネート面として熱ラミネートしたこと以外は実施例12と同じ方法により積層して[実施例12]の包装材料を得た。
COPET16/PUD/AL(♯3)50/3C/PPA6/TL=PAD/PR5//PH30//PR10[0.2]
[実施例13]
最外層としての共重合延伸ポリエステル16μmと耐酸性皮膜としてリン酸亜鉛皮膜を形成したアルミニウム50μmとをドライラミネートし、アルミニウムの前記耐酸性皮膜面に、保護層としてアクリル樹脂3μmを形成し、該保護層面に第1中間層としてランダムプロピレン10μmを不飽和カルボン酸グラフトランダムポリプロピレン接着剤を熱接着性樹脂として熱ラミネートし、また、第2中間層として共重合延伸ポリエステル16μmにポリエステルウレタン系接着剤をアンカーコートした、当該アンカーコート面と同時に熱ラミネートし、最内層として、ランダムプロピレン10μmとホモプロピレン20μmとブテン共重合ランダムプロピレン20μmとの共押出しフィルムとし、前記第2中間層と前記最内層のランダムプロピレン面とをポリエステルウレタン系接着剤でドライラミネートして[実施例13]の包装材料を得た。用いたアルミニウムAL(♯3)は、微成分として、鉄1.5%、珪素0.09%、マンガン0.5%を含有するものであった。
COPET16/PUD/AL(♯3)50/PZ/AC3/TL=PAD/PR10/ANC=PUD/COPET16/PUD/PR10//PH20//BR20[0.4]
<カップタイプ仕様評価>
前記実施例について各項目での評価した結果は、次の通りで、いずれも良好な性能が得られた。
1.電解液適性:デラミの発生無し
2.水蒸気バリア性:300PPM以下
3.最内層シール強度
−40℃保持 9.8N/15mm巾以上
120℃保持 9.8N/15mm巾以上
4.電極タブ短絡防止性
最外層とバリア層とのデラミ無し
最外層のピンホール無し
電極とバリア層との接触無し
5.成形性:ピンホールの発生無し
【0032】
具体的な層構成として別の実施例を図3に示す。この積層体は、最外層とバリア層とをドライラミネーション(DL−1)し、バリア層を表面処理TRして保護層15を設けて第1基材とし、中間層をドライラミネーション(DL−2)した2層タイプとし、さらに、最内層14をドライラミネーション(DL−3)した第2基材とを熱接着性フィルムを介在させて熱ラミネートして熱ラミネート層TLを形成したものである。
【0033】
ポリマー電池の形態(パウチタイプの外装体)本発明の積層体をポリマー電池の外装体を構成する包装材料として用いる場合の前記外装体の形態は、パウチタイプまたはエンボスタイプ(カップタイプ)が挙げられる。前記パウチタイプは、前述のピロータイプの他、図5(a)に示す三方シールタイプ、図5(b)に示す四方シールタイプのような形態がある。いずれの形態においても、シール端部にタブ(電極)の一部を含む密封シールとし、タブの一部が外装体の外部に露出するものである。また、前記タブは、図5(c)、図5(d)あるいは、図4(e)に示すように、外装体のシール部の任意の位置から外部に露出させてもよい。
【0034】
本発明のポリマー電池用包装材料において、外装体4の形状を図2(b)に示すように、エンボスタイプとする場合がある。この場合、底材6は、電池本体の収納部となるエンボス部8と、蓋材7と密封シールするフランジ部9とからなる。底材の包装材料6は図2(a)に示すように4層構成の積層体を基本とするが、その最外層11および/または中間層13に用いるポリエステル系樹脂をポリエチレンテレフタレート共重合体またはポリブチレンテレフタレート共重合体とし、フィルム化における延伸倍率を小さくすることが好ましい。前記共重合体とすることによって、底材の成形形状がシャープとなり、また、容器とした時、図6(a′)に示す開口部巾(T)と深さ(D)がD/T=1/50以上で、かつ、側面テーパーθが130 °以下とすることが可能となり成形がし易い。また、バリア層としてアルミニウムを用いる場合には、成形によるピンホールの発生の心配のない厚さとして、その厚さを30μm以上とすることが望ましい。片面のみをエンボスする場合には、その蓋材7はエンボスをしないために、共重合体にする必要はない。両面エンボスをする場合には、両面に前記底材の積層体を用いればよい。
ポリマー電池の外装体をエンボスタイプにすることによって電池本体の収納性がよくなる。
なお、エンボスタイプの外装体におけるタブについても、パウチタイプと同様に、図6(c)あるいは図6(d)に示すように、外装体のシール部の任意の位置から外部に露出させてもよい。
【0035】
【発明の効果】
本発明のポリマー電池用包装材料による形成されるパウチタイプの外装体により、ポリマー電池自体がフレキシビリティをもち、金属缶を用いるより軽量化が可能となり、かつ、トータル層厚を薄くすることができ、電池として省スペース化が可能となった。特に、ポリマー電池用包装材料としてバリア性に優れ、該バリア性を長期に維持し得ることができ、耐熱性、耐寒性、耐内容物性等に優れた包装材料とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリマー電池用包装材料の実施例を示す、(a)基本的層構成、(b)ポリマー電池の構造を説明する斜視図、(c)X1 −X1 部の断面図、(d)X2 −X2 部の断面図である。
【図2】本発明のポリマー電池用包装材料の別の実施例を示す、(a)基本的層構成、(b)ポリマー電池の構造を説明する斜視図、(c)エンボスタイプの外装体のポリマー電池の斜視図、(d)X3 −X3 部の断面図である。
【図3】本発明の積層体の別の実施例を示す断面図である。
【図4】本発明における外装体とタブとの接着の別の実施例を示する説明図で、(a)ポリマー電池の斜視図、(b)熱接着性タブ材を接着したポリマー電池本体の斜視図、(c)熱接着性タブ材を接着した別のポリマー電池本体の斜視図、(d)および(e)はそれぞれの熱接着性タブ材を用いた場合のX4 −X4 部断面図である。
【図5】本発明の積層体を用いるポリマー電池のパウチタイプの外装体の形状を示す平面図とそれぞれのタイプの断面図である。
【図6】本発明の積層体を用いるポリマー電池のエンボスタイプの外装体の形状を示す(a)片面エンボスタイプの底材の斜視図、(a′)X9 −X9 部断面図、(b)両面エンボスタイプの斜視図、(b′)X10−X10部断面図、(c)エンボスタイブにおけるタブの位置を示す別の例の概念図、(d)タブをさらに別の位置に設けた例の概念図である。
【符号の説明】
1 ポリマー電池
2 ポリマー電池本体
3 電極
4 外装体
5 ヒートシール部
5f 背シール部
6 底材
7 蓋材
8 エンボス部
9 フランジ部
10 積層体(包装材料)
11 最外層
12 バリア層
13 中間層
14 最内層
15 保護層
16 熱接着性タブ材
TR 表面処理層
DL ドライラミネート層
TL 熱ラミネート層
Claims (8)
- 最外層/バリア層/最内層、または、最外層/バリア層/中間層/最内層からなる積層体であるポリマー電池用包装材料であって、当該最外層が、耐熱性、耐ピンホール性、成形性、絶縁性を備えた基材から構成され、当該バリア層が、水蒸気バリア性、成形性、耐酸性を備えたバリア性基材から構成され、当該中間層は、絶縁性、成形性を備えた中間基材から構成され、当該最内層が、熱融着性、耐熱性、耐寒性、電解液適性、絶縁性を備えたヒートシール性基材から構成され、前記最内層が共押出しされた多層構成からなると共に前記最内層の表出面が金属接着性をもたないポリオレフィン系樹脂からなり、外に露出させる電極と最内層との間に不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン、金属イオン架橋ポリエチレン、エチレンまたはプロピレンのいずれかとアクリル酸またはアクリル酸誘導体またはメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体のいずれかを共重合した共重合体物のいずれかから形成される熱接着性タブ材が使用されて密封されるポリマー電池に使用されることを特徴とするポリマー電池用包装材料。
- 上記積層体の層間には、接着剤層が介在していることを特徴とする請求項1記載のポリマー電池用包装材料。
- 上記最外層を構成する基材が、延伸ポリエステル系樹脂、延伸ポリアミド系樹脂のいずれかから構成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のポリマー電池用包装材料。
- 上記最外層が、複数の基材で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー電池用包装材料。
- 上記バリア層の厚さが、少なくとも15μm以上であるアルミニウム箔から構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー電池用包装材料。
- 上記バリア層を構成するアルミニウム箔に、リン酸塩、クロム酸塩、リン酸クロム、リン酸亜鉛からなる耐酸性皮膜が形成されたことを特徴とする請求項5記載のポリマー電池用包装材料。
- 上記バリア層を構成するアルミニウム表面に保護層を形成させたことを特徴とする請求項5記載のポリマー電池用包装材料。
- 上記保護層が、少なくともエポキシ系、フェノール系、メラミン系、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン系の樹脂、アクリル系樹脂およびこれらの変性物のいずれか一つを含むものであることを特徴とする請求項7に記載のポリマー電池用包装材料。
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