JP5074708B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
したがって、前記のブチル系ゴムの配合量は自ら制限され、該ブチル系ゴムを配合したゴム組成物を用いる場合、空気バリア性の点からインナーライナー層の厚さは、1mm前後が必要であった。そのため、タイヤに占めるインナーライナー層の重量は約5%程度となり、タイヤの重量を低減し、自動車燃費を向上するための障害となっていた。
そこで、近年の省エネルギーの社会的な要請に伴い、自動車タイヤの軽量化を目的として、インナーライナー層を薄ゲージ化するための手法が提案されている。例えば、ナイロンフイルム層や塩化ビニリデン層をインナーライナー層として従来のブチル系ゴムの代わりに用いる手法が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンドからなる組成物のフイルムをインナーライナー層に用いることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
一方、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することがある。)はガスバリア性に優れていることが知られている。EVOHは、空気透過量がブチル系ゴムを配合したインナーライナーゴム組成物の100分の1以下であるため、50μm以下の厚さでも、内圧保持性を大幅に向上することができる上、タイヤを重量低減することが可能である。したがって、空気入りタイヤの空気透過性を改良するために、EVOHをタイヤインナーライナーに用いることは有効であると言える。例えばEVOHからなるタイヤインナーライナーを有する空気入りタイヤが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
この問題を解決するためには、例えばエチレン含有量20〜70モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体60〜99重量%及び疎水性可塑剤1〜40重量%からなる樹脂組成物を用いてなるタイヤ内面用インナーライナーが開示されているが(例えば、特許分献5参照)、耐屈曲性については、必ずしも十分に満足し得るものではない。
したがって、ガスバリア性を保持したまま、高度の耐屈曲性を有し、薄ゲージ化が可能なインナーライナーの開発が望まれていた。
このようなインナーライナーとしては、ガスバリア性が良好で屈曲性の優れた単層又は、特に多層の熱可塑性樹脂フイルムが考えられる。この場合、該樹脂フイルム層を接着剤層を介して円筒形にジョイントする必要があるが、このジョイント部の未加硫時におけるせん断接着力が高く、成形後保管中のグリーンタイヤ(生タイヤ)のジョイント部のずれ量が少ないことが要求される。
すなわち、本発明は、
(1) インナーライナー層として(A)単層又は多層熱可塑性樹脂フイルムを使用するタイヤを製造する際に、前記(A)層が(B)接着剤層を介してジョイントされ、ジョイント部の未加硫時せん断接着力が10kPa以上であることを特徴とする空気入りタイヤ、
(2) インナーライナー層として(A)単層又は多層熱可塑性樹脂フイルムを使用するタイヤを製造する際に、前記(A)層が(B)接着剤層を介してジョイントされ、タイヤ成型後にずれるグリーンタイヤのジョイント部のジョイント長さ(ずれ量)が未加硫時で5mm/day以下である上記(1)の空気入りタイヤ、
(3) インナーライナー層として(A)単層又は多層熱可塑性樹脂フイルムを使用するタイヤを製造する際に、前記(A)層が(B)接着剤層を介してジョイントされ、ジョイント部の未加硫時せん断接着力が10kPa以上であるとともに、タイヤ成型後にずれるグリーンタイヤのジョイント部のジョイント長さ(ずれ量)が未加硫時で5mm/day以下である上記(1)又は(2)の空気入りタイヤ、
(4) 前記未加硫時のジョイント部のせん断接着力が40kPa以上である上記(1)〜(3)いずれかの空気入りタイヤ、
(5) 前記タイヤ成型後にずれるグリーンタイヤのジョイント部のジョイント長さ(ずれ量)が未加硫時で2mm/day以下である上記(1)〜(4)いずれかの空気入りタイヤ、
(6) 前記(A)単層又は多層熱可塑性樹脂フイルム層が、エチレン含有量25〜50モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対して、エポキシ化合物1〜50重量部を反応させて得られる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる層を含む上記(1)〜(5)いずれかの空気入りタイヤ、
(7) (A)単層又は多層熱可塑性樹脂フイルム層の表面層として熱可塑性ウレタン系エラストマーを用いる上記(1)〜(6)いずれかの空気入りタイヤ、
(8) (A)層が(B)接着剤層を構成する(C)接着剤組成物用いて接着する上記(1)〜(7)いずれかの空気入りタイヤ、
(9) (C)接着剤組成物が、(a)ゴム成分と、その100質量部当たり、(b)架橋剤及び架橋助剤としてポリ−p−ジニトロソベンゼン、1,4−フェニレンジマレイミドのうち少なくとも一種を0.1質量部以上含む上記(8)の空気入りタイヤ、
(10) (C)接着剤組成物が、(a)ゴム成分として、クロロスルホン化ポリエチレン10質量%以上を含む上記(9)の空気入りタイヤ、
(11) (C)接着剤組成物がさらに、(c)充填剤2〜50質量部含む上記(8)〜(10)いずれかの空気入りタイヤ、
(12) (C)接着剤組成物が、(c)充填剤としてカーボンブラックを含む上記(11)の空気入りタイヤ、
(13) (C)接着剤組成物において、(a)ゴム成分が、ブチルゴム及び/又はハロゲン化ブチルゴム50質量部%以上を含む上記(8)〜(12)いずれかの空気入りタイヤ、
(14) (C)接着剤組成物がさらに、(d)ゴム用加硫促進剤0.1質量部以上含む上記(8)〜(13)いずれかの空気入りタイヤ、
(15) 前記(d)ゴム用加硫促進剤が、チウラム系及び/又は置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤である上記(14)の空気入りタイヤ、
(16) (C)接着剤組成物がさらに、(e)樹脂、低分子量ポリマーのうち少なくとも1種を0.1重量部以上含む上記(8)〜(15)いずれかの空気入りタイヤ、
(17) (e)成分における樹脂が、C5系樹脂、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂及びロジン系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種である上記(16)の空気入りタイヤ、
(18) 前記樹脂が、フェノール系樹脂である上記(17)の空気入りタイヤ、
(19) (e)成分における低分子量重合体の重量平均分子量が、ポリスチレン換算で1,000〜100,000である上記(16)の空気入りタイヤ、
(20) (C)成分における低分子量重合体の重量平均分子量が、ポリスチレン換算で1,000〜50,000である上記(19)の空気入りタイヤ、
(21) (e)成分における低分子量重合体が、分子内に二重結合を有する重合体である上記(16)〜(20)いずれかの空気入りタイヤ、
(22) (e)成分における低分子量重合体が、スチレン単位を含む重合体である上記(16)〜(21)いずれかの空気入りタイヤ、及び
(23) (e)成分における低分子量重合体が、スチレン−ブタジエン共重合体である上記(22)の空気入りタイヤ、
を提供するものである。
前記未加硫時のジョイント部のせん断接着力が、10kPa以上あることが必要であるが、40kPa以上あることがより好ましい。また、前記タイヤ成型後保管中にずれるグリーンタイヤのジョイント部のジョイント長さ(ずれ量)が未加硫時で5mm/day以下であることが好ましく、未加硫時で2mm/day以下であることがより好ましい。
特に、未加硫時のジョイント部のせん断接着力を上記範囲にすることによって本発明に用いられるインナーライナーは、ガスバリア性、耐屈曲性に優れ、かつ製造中におけるジョイント部に起因する不具合の生じない成形作業性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
ジョイント部のせん断接着力の上限については特に制限はないが、通常400
kPa程度である。
尚、ここで「ジョイント」とは、通常インナーライナー層の両端を重ね合わせ
たオーバーラップジョイントであり、そのジョイント幅については特に制限は無
く、タイヤザイズ等によって適宜決定されるが、通常5〜20mm程度である。
また、「グリーンタイヤ」とは、成形後未加硫の生タイヤのことをいう。
前記素材の中で、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂は、空気透過量が極めて低く、ガスバリア性に優れており、好ましい素材である。また、熱可塑性ウレタン系エラストマーは、耐水性とゴムに対する接着性に優れており、特に多層フイルムにおいて、外層部分に配置して使用することが好ましい。
この変性処理に用いられるエチレン−ビニルアルコール共重合体においては、エチレン単位含有量は25〜50モル%であることが好ましい。良好な耐屈曲性及び耐疲労性を得る観点からは、エチレン単位含有量は、より好適には30モル%以上であり、さらに好適には35モル%以上である。また、ガスバリア性の観点からは、エチレン単位含有量は、より好適には48モル%以下であり、さらに好適には45モル%以下である。エチレン単位含有量が25モル%未満の場合は耐屈曲性及び耐疲労性が悪化するおそれがある上、溶融成形性が悪化するおそれがある。また、50モル%を超えるとガスバリア性が不足する場合がある。
さらに、前記エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度は好ましくは90モル%以上であり、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは98モル%以上であり、最適には99モル%以上である。ケン化度が90モル%未満では、ガスバリア性及び積層体作製時の熱安定性が不充分となるおそれがある。
変性処理は、前記の未変性エチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対して、エポキシ化合物を、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは2〜40質量部、さらに好ましくは5〜35質量部を反応させることにより行うことができる。この際、適当な溶媒を用いて、溶液中で反応させるのが有利である。
本発明に用いられる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体のメルトフローレート(MFR)(190℃、21.18N荷重下)は特に制限はされないが、良好なガスバリア性、耐屈曲性及び耐疲労性を得る観点からは、0.1〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜25g/10分であることがより好ましく、0.5〜20g/10分であることがさらに好ましい。但し、変性EVOHの融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは21.18N荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。
種類としては、(イ)カプロラクトン型(カプロラクトンを開環して得られるポリラクトンエステルポリオール)、(ロ)アジピン酸型(=アジペート型)<アジピン酸とグリコールとのアジピン酸エステルポリオール>、(ハ)PTMG(ポリテトラメチレングリコール)型(=エーテル型)<テトラヒドロフランの開環重合で得られたポリテトラメチレングリコール>などがある。
本発明における(A)樹脂フイルム層の厚さは、熱可塑性樹脂フイルムの積層体をインナーライナーとして用いる場合の薄ゲージ化の観点から、200μm以下が好ましい。したがって、(A)層の厚さの下限は1μm程度であり、より好ましい厚さは10〜150μm、さらに好ましい厚さは20〜100μmの範囲である。
このような多層フイルムの具体例としては、前記の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体フイルムの両面に、それぞれ熱可塑性ウレタン系エラストマーフイルムが積層された三層構造の多層フイルムを挙げることができる。
この(A)層を構成する樹脂フイルムは、その上に設けられる接着剤層との密着性を向上させるために、所望により、少なくとも接着剤層側の面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材フイルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
当該接着剤組成物においては、(a)ゴム成分については特に制限はなく、ジョイント部における(A)熱可塑性樹脂フイルム層同士や、(A)熱可塑性樹脂フイルム層と隣接するゴム状弾性層の種類とその組み合わせ等によってそれぞれに優れたタック性及び平均はく離力を確保するために適宜決定されるが、通常、50質量%以上のブチルゴム及び/又はハロゲン化ブチルゴムやジエン系ゴムを用いることが好ましい。
前記ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム及び/又はハロゲン化ブチルゴムを挙げることができるが、ブチル系ゴムの中では、加硫速度が速く、耐熱性、接着性、他の不飽和ゴムとの相溶性に優れる点から、ハロゲン化ブチルゴムが好ましい。前記ハロゲン化ブチルゴムとしては、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、その変性ゴムなどが含まれる。例えば塩素化ブチルゴムとしては「Enjay Butyl HT10−66」(エンジェイケミカル社製、商標)があり、臭素化ブチルゴムとしては「ブロモブチル2255」(エクソン社製、商標)がある。また、変性ゴムとしてイソモノオレフィンとパラメチルスチレンとの共重合体の塩素化又は臭素化変性共重合体を用いることができ、例えば「Expro50」(エクソン社製、商標)などとして入手可能である。
該(a)成分としては、接着剤層の作業性及び平均はく離力などの点から、ハロゲン化ブチルゴム70〜100質量%を含むものが好ましい。
前記ジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレン合成ゴム(IR)、シス1,4−ポリブタジエン(BR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(1,2BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。中でも天然ゴム、ブタジエンゴムなどが好適である。
本発明においては、平均はく離力の点から、特にハロゲン化ブチルゴム70質量%以上、クロロスルホン化ポリエチレン10質量%以上及び天然ゴム及び/又はイソプレンゴム5質量%以上を含むことが好ましい。
ポリ−p−ジニトロソベンゼンは、ハロゲン化ブチルゴムのような二重結合の少ないゴムに対して、有効な架橋剤であり、ポリ−p−ジニトロソベンゼンを加えて熱処理することにより未加硫配合物のコールドフローを防止し、押し出し特性、加硫物の物理特性を改良するし、また可塑度を調節することができる。
また、1,4−フェニレンジマレイミドを用いた加硫は炭素−炭素の共有結合が生成し、耐熱性、耐老化性を向上させる。特にクロロスルホン化ポリエチレンゴムに対しても有効な架橋剤である。
当該接着剤組成物における(c)成分の充填剤としては、無機フィラー及び/又はカーボンブラックを用いることができる。無機フィラーとしては、例えば湿式法によるシリカ(以下、湿式シリカと称する。)、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、モンモリロナイト、マイカ、スメクタイト、有機化モンモリロナイト、有機化マイカ及び有機化スメクタイトなどを挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記カーボンブラックの種類は特に制限はなく、従来ゴムの補強用充填剤として慣用されているものの中から任意のものを適宜選択して用いることができ、例えばFEF、SRF、HAF、ISAF、SAF、GPFなどが挙げられる。
本発明においては、前記無機充填剤とカーボンブラックとの合計含有量は、耐空気透過性、耐屈曲疲労性、耐低温クラック性及び加工性などのバランスの面から、ゴム成分100質量部当たり、30〜200質量部の範囲が好ましく、特に50〜140質量部の範囲が好適である。
当該接着剤組成物においては、この(c)成分である充填剤の含有量は、前記(a)成分であるゴム成分100質量部当たり、タック性及び平均はく離力などの点から、2〜50質量部、好ましくは5〜35質量部の範囲で選定される。
チウラム系加硫促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、活性化テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドなどが挙げられる。
本発明においては、前記のチウラム系加硫促進剤及び置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤の中から選ばれる少なくとも一種が用いられるが、これらの中で、置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤が好ましく、特にジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛が好適である。
(e)成分の樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、変性テルペン系樹脂、テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂、ロジン系樹脂,C5、C9石油樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、スチレン樹脂などが挙げられるが、これらの中で、C5留分樹脂、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂及びロジン系樹脂が好適である。
C5留分樹脂としては、ナフサの熱分解によって得られる、通常1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテン等のオレフィン系炭化水素、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエンなどのジオレフィン系炭化水素等を重合又は共重合した石油樹脂が挙げられる。
フェノール系樹脂としては、例えばp-t-ブチルフェノールとアセチレンを触媒の
存在下で縮合させた樹脂、アルキルフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物などを挙げることができる。
ロジン系樹脂としては、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化、ライム化などで変性したロジン誘導体を挙げることができる。これらの樹脂は一種を単独で用いてもよいが、これらの中で、特にフェノール系樹脂が好ましい。
この低分子量スチレン−ブタジエン共重合体は、例えばシクロヘキサンなどの炭化水素溶媒中において、有機リチウム化合物開始剤をエーテル又は第3級アミンの存在下で用いて、ブタジエンとスチレンとを、50〜90℃程度で共重合させることにより製造することができる。得られた共重合体の分子量は、有機リチウム化合物の量で、ミクロ構造はエーテル又は第3級アミンの量によって制御することができる。
本発明においては、(e)成分として、前記低分子量重合体を一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。あるいは前述の樹脂一種以と前記低分子量重合体一種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、この(e)成分は、前記(a)成分のゴム成分100質量部に対し、5質量部以上用いることが好ましく、より好ましくは5〜40質量部特に好ましくは10〜30質量部の割合で用いられる。
特に該(e)成分としてフェノール系樹脂を用いる場合得られる接着剤組成物は、優れたタック性を示すことから好ましい。
まず、有機溶媒に、前記(C)接着剤組成物を構成する各成分を加え、溶解又は分散させて、有機溶媒を含む接着剤組成物からなる塗工液を調製する。
この際、有機溶媒として、(a)ゴム成分の良溶媒であるヒルデブランド(Hildebrand)溶解度パラメーターδ値が14〜20MPa1/2の有機溶剤が好ましく用いられる。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、クロロホルム、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
このようにして調製された塗工液の固形分濃度は、塗工性や取り扱い性などを考慮して適宜選定されるが、通常5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲である。
次に、前記塗工液を、(A)層を構成する樹脂フイルム表面に塗工・乾燥したのち、(A)層を(B)接着剤層を介してジョイントする成形工程を経て、グリーンタイヤを加熱・加硫処理することにより、本発明の空気入りタイヤが得られる。
エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、α線、γ線等の電離放射線が挙げられ、好ましくは電子線が挙げられる。
電子線の照射方法に関しては、樹脂フイルムを電子線照射装置に導入し、電子線を照射する方法が挙げられる。電子線の線量に関しては特に限定されないが、好ましくは10〜60Mradの範囲内である。照射する電子線量が10Mradより低いと、架橋が進み難くなる。一方、照射する電子線量が60Mradを超えると樹脂フイルムの劣化が進行しやすくなる。より好適には電子線量の範囲は20〜50Mradである。
本発明の空気入りタイヤに用いられるインナーライナー層は、特定組成の接着剤組成物を用いてジョイントすることにより、該ジョイント部はタック性が良好で、未加硫時におけるせん断接着力に優れるなどの特徴を有している。
図1は、本発明の係わるインナーライナー層を用いてなる空気入りタイヤの一例を示す部分断面図であって、該タイヤはビードコア1の周りに巻回されてコード方向がラジアル方向に向くカーカスプライを含むカーカス層2と、カーカス層のタイヤ半径方向内側に配設された本発明に用いる積層体からなるインナーライナー層3と、該カーカス層のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配設された2枚のベルト層4を有するベルト部と、ベルト部の上部に配設されたトレッド部5と、トレッド部の左右に配置されたサイドウォール部6から構成されている。
尚、図示はされていないが、インナーライナー層3は接着剤14を介してオーバーラップジョイントされている。
図2は、前記空気入りタイヤにおける本発明に係わるインナーライナー層の一例の断面詳細図であって、インナーライナー層3は、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体層11の両面に、それぞれ熱可塑性ウレタン系エラストマー層12a及び12bがラミネートされてなる樹脂フイルム層13と、接着剤層14からなる構造を有している。
製造例1 変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造
加圧反応槽に、エチレン含量44モル%、ケン化度99.9モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(MFR:5.5g/10分(190℃、21.18N荷重下)2質量部及びN−メチル−2−ピロリドン8質量部を仕込み、120℃で、2時間加熱攪拌することにより、エチレン−ビニルアルコール共重合体を完全に溶解させた。これにエポキシ化合物としてエポキシプロパン0.4質量部を添加後、160℃で4時間加熱した。加熱終了後、蒸留水100質量部に析出させ、多量の蒸留水で充分にN−メチル−2−ピロリドン及び未反応のエポキシプロパンを洗浄し、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を得た。さらに、得られた変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を粉砕機で粒子径2mm程度に細かくした後、再度多量の蒸留水で十分に洗浄した。洗浄後の粒子を8時間室温で真空乾燥した後、2軸押出機を用いて200℃で溶融し、ペレット化した。
製造例1で得られた変性EVOHと、エラストマーとして熱可塑性ポリウレタン((株)クラレ製、クラミロン3190)とを使用し、2種三層共押出装置を用いて、下記共押出成形条件で三層フイルム(熱可塑性ポリウレタン層/変性EVOH層/熱可塑性ポリウレタン層)を作製した。各層の厚みは、変性EVOH層、熱可塑性ポリウレタン層ともに20μmである。
共押出成形条件は以下のとおりである。
層構成:
熱可塑性ポリウレタン/変性EVOH/熱可塑性ポリウレタン
(厚み20/20/20、単位はμm)
各樹脂の押出温度:
C1/C2/C3/ダイ=170/170/220/220℃
各樹脂の押出機仕様:
熱可塑性ポリウレタン:
25mmφ押出機 P25−18AC(大阪精機工作株式会社製)
変性EVOH:
20mmφ押出機 ラボ機ME型CO−EXT(株式会社東洋精機製)
Tダイ仕様:
500mm幅2種三層用 (株式会社プラスチック工学研究所製)
冷却ロールの温度:50℃
引き取り速度:4m/分
接着剤組成物(配合単位:質量部)
*Br-IIR:(JSR社製 Bromobutyl 2244) 90
*クロロスルホン化ポリエチレン:(Dupnt・Dow ElastomersLLC社製 ハイパロン) 10
*カーボンブラック:(東海カーボン社製 シーストNB) 10
*フェノール樹脂:(住友ベークライト社製 PR-SC-400) 20
*ステアリン酸:(新日本理化社製 50S ) 1
*酸化亜鉛:(白水化学工業社製 ハクスイテック) 3
*P-ジニトロソベンゼン:(大内新興化学工業社製バルノックDNB) 3
*1,4フェニレンジマレイミド:(大内新興化学工業社製バルノックPM) 3
*加硫促進剤:(大内新興化学工業社製 ノクセラーZTC) 1
*加硫促進剤:(大内新興化学工業社製 ノクセラーDM) 0.5
*加硫促進剤:(大内新興化学工業社製 ノクセラーD) 1
*硫黄:(鶴見化学社製 金華印微粉硫黄) 1.5
上記配合組成に従って常法により混練りした後、該接着剤組成物を、有機溶剤としてトルエン1000質量部に加え、溶解又は分散して各接着剤塗工液を調製した。
カーボンブラックの量を60質量部とした以外は製造例3と同様にして接着剤組成物及び塗工液の調製を行った。
カーボンブラックの量を45質量部とした以外は製造例3と同様にして接着剤組成物及び塗工液の調製を行った。
カーボンブラックの量を60質量部、フェノール樹脂の量を5質量部とした以外は製造例3と同様にして接着剤組成物及び塗工液の調製を行った。
カーボンブラックの量を45質量部、フェノール樹脂の量を5質量部とした以外は製造例3と同様にして接着剤組成物及び塗工液の調製を行った。
日新ハイボルテージ株式会社製電子線照射装置「生産用キュアトロンEBC200-100」を使用して、製造例2で得られた三層フイルム(熱可塑性ポリウレタン/変性EVOH/熱可塑性ポリウレタン)に、加速電圧200kV、照射エネルギー30Mradの条件にて電子線照射し架橋処理を施し、多層熱可塑性樹脂フイルムとして使用した。
製造例3で得られた接着剤組成物−1、100質量部に、有機溶剤としてトルエン1000質量部に加え、溶解又は分散して接着剤塗工液を調製した。その塗工液を、上記架橋した多層熱可塑性樹脂フイルムの片面に塗布し、乾燥処理した後、フイルムの接着剤塗布面と接着剤非塗布面とを張り合わせた試験用サンプルを作製し、これにてせん断接着力測定及び保持力試験を実施した。
さらに、前記フイルムを長方形に切り出し、一端の接着剤塗布面ともう一端の接着剤非塗布面とを張り合わせるオーバーラップジョイントをすることで円筒形にし、それをタイヤ最内面に張合わせる成形工程により、多層熱可塑性樹脂フイルムをインナーライナーとした未加硫タイヤ(195/65R15用)を作製した。尚、ジョイント幅は10mmであった。得られたグリーンタイヤを室温で一日放置し、そのタイヤ内面の多層熱可塑性樹脂フイルムジョイント部のジョイント性状を確認し、タイヤとして製造可能であるか否かを評価した。
せん断接着力、保持力(ずれ量)及び成形後の熱可塑性樹脂フイルムジョイント部のジョイント性状を確認した結果を第1表に示す。
(1)せん断接着力の測定
せん断接着力:JIS Z1541に準拠し試験サンプルフィルムをステンレス板に固定し、フイルムを上記実施例の様に張り合わせ、5kgローラーで1往復圧着し、72時間養生後、23℃で引張速度50mm/分で試験体が破断するまでの最大荷重を測定。
(2)保持力(ずれ)の測定
JIS Z1541に準拠して、ステンレス板にフイルムを上記実施例の様に張り合わせた試験片を貼付け、室温において9.8Nの荷重をかけてズレを測定した。
(3)成形後グリーンタイヤのジョイント部の確認
上記実施例で記載したように、得られたグリータイヤを室温で一日放置し、そのグリーンタイヤ内面の多層熱可塑性フイルムジョイント部のジョイントの性状を確認し、ジョイント部が剥がれタイヤとして製造可能でないものを×、タイヤとして問題なく製造可能であるものを○とした。
実施例1において、製造例5で得られた接着剤組成物を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行った。せん断接着力、保持力(ずれ量)及び成形後の熱可塑性樹脂フイルムジョイント部のジョイント性状を確認した結果を第1表に示す。
実施例1において、製造例7で得られた接着剤組成物を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行った。せん断接着力、保持力(ずれ量)及び成形後の熱可塑性樹脂フイルムジョイント部のジョイント性状を確認した結果を第1表に示す。
実施例1において、製造例3の接着剤組成物を塗布しないこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。せん断接着力、保持力(ずれ量)及び成形後の熱可塑性樹脂フイルムジョイント部のジョイント性状を確認した結果を第1表に示す。
実施例1において、東洋化学研究所製メタロックR−46である市販の接着剤組成物を塗布したこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。せん断接着力、保持力(ずれ量)及び成形後の熱可塑性樹脂フイルムジョイント部のジョイント性状を確認した結果を第1表に示す。
実施例1において、製造例4の接着剤組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。せん断接着力、保持力(ずれ量)及び成形後の熱可塑性樹脂フイルムジョイント部のジョイント性状を確認した結果を第1表に示す。
実施例1において、製造例6の接着剤組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。せん断接着力、保持力(ずれ量)及び成形後の熱可塑性樹脂フイルムジョイント部のジョイント性状を確認した結果を第1表に示す。
2:カーカス層
3:インナーライナー層
4:ベルト部
5:トレッド部
6:サイドウォール部
7:ビードフィラー
11:変性エチレン−ビニルアルコール共重合体層
12a、12b:熱可塑性ウレタン系エラストマー層
13:樹脂フイルム層
14:接着剤層
Claims (11)
- インナーライナー層として(A)単層又は多層熱可塑性樹脂フイルムを使用するタイヤを製造する際に、前記(A)層が(B)接着剤層を介してジョイントされ、ジョイント部の未加硫時せん断接着力が10kPa以上であり、(A)層が(B)接着剤層を構成する(C)接着剤組成物を用いて接着し、(C)接着剤組成物の(a)ゴム成分が臭素化ブチルゴム50質量%以上及びクロロスルホン化ポリエチレン10質量%以上を含むことを特徴とする空気入りタイヤ。
- インナーライナー層として(A)単層又は多層熱可塑性樹脂フイルムを使用するタイヤを製造する際に、前記(A)層が(B)接着剤層を介してジョイントされ、タイヤ成型後にずれるグリーンタイヤのジョイント部のジョイント長さ(ずれ量)が未加硫時で5mm/day以下である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記未加硫時のジョイント部のせん断接着力が40kPa以上である請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記タイヤ成型後にずれるグリーンタイヤのジョイント部のジョイント長さ(ずれ量)が未加硫時で2mm/day以下である請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記(A)単層又は多層熱可塑性樹脂フイルム層が、エチレン含有量25〜50モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対して、エポキシ化合物1〜50質量部を反応させて得られる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる層を含む請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記(A)単層又は多層熱可塑性樹脂フイルム層の表面層として熱可塑性ウレタン系エラストマーを用いる請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記(C)接着剤組成物が、(a)ゴム成分と、その100質量部当たり、(b)架橋剤及び架橋助剤としてポリ−p−ジニトロソベンゼン、1,4−フェニレンジマレイミドのうち少なくとも一種を0.1質量部以上含む請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記(C)接着剤組成物がさらに、(c)充填剤2〜50質量部を含む請求項1〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記(C)接着剤組成物が、(c)充填剤としてカーボンブラックを含む請求項8に記載の空気入りタイヤ。
- 前記(C)接着剤組成物がさらに、(d)ゴム用加硫促進剤0.1質量部以上を含む請求項1〜9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記(d)ゴム用加硫促進剤が、チウラム系及び/又は置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤である請求項10に記載の空気入りタイヤ。
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