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JP2009220793A - タイヤ - Google Patents

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JP2009220793A
JP2009220793A JP2008070315A JP2008070315A JP2009220793A JP 2009220793 A JP2009220793 A JP 2009220793A JP 2008070315 A JP2008070315 A JP 2008070315A JP 2008070315 A JP2008070315 A JP 2008070315A JP 2009220793 A JP2009220793 A JP 2009220793A
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Daisuke Nohara
大輔 野原
Daisuke Nakagawa
大助 中川
Sukekazu Takahashi
祐和 高橋
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Bridgestone Corp
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Abstract

【課題】インナーライナーに用いるゴム状弾性層と熱可塑性樹脂フィルム間の高温時の剥離抗力が高く、耐久性に優れるタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ内面に、一層以上の熱可塑性樹脂フィルム層(A)2と、該熱可塑性樹脂フィルム層(A)2の表面に隣接して配設されたゴム状弾性層(B)3とを含むインナーライナー1を具えるタイヤにおいて、前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)2と前記ゴム状弾性層(B)3との150℃での平均はく離力が0.05kN/m以上であることを特徴とするタイヤである。
【選択図】図1

Description

本発明は、タイヤ内面に熱可塑性樹脂フィルム層とゴム状弾性層とを含むインナーライナーを具えるタイヤに関し、特に熱可塑性樹脂フィルム層とゴム状弾性層間の高温時の剥離抗力を増大させ、耐久性が改善されたタイヤに関するものである。
従来、空気漏れを防止しタイヤの内圧を保持するためにタイヤ内面に空気バリア層として配設されるインナーライナーには、ブチルゴムやハロゲン化ブチルゴム等を主原料とするゴム組成物が使用されている。しかしながら、これらブチル系ゴムの含有量を増大すると、未加硫ゴムの強度が低下し、ゴム切れやシート穴あき等を生じ易く、特にインナーライナーを薄ゲージ化する際には、タイヤ製造時に内面のコードが露出し易いという問題がある。このため、ブチル系ゴムの含有量は制限され、該ブチル系ゴムを主原料とするゴム組成物をインナーライナーに使用する場合、インナーライナーの厚さを1mm前後とする必要があった。そのため、タイヤに占めるインナーライナーの重量が約5%程度となり、タイヤの重量を低減して自動車の燃費を向上させる上で障害となっている。
そこで、近年の省エネルギーの社会的な要請に伴い、自動車タイヤの軽量化を目的として、インナーライナーを薄ゲージ化するための手法が提案されている。例えば、ナイロンフィルム層や塩化ビニリデン層をインナーライナーとして従来のブチル系ゴムの代わりに用いる手法が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンドからなる組成物のフィルムをインナーライナーに用いることが開示されている。
しかしながら、これらのフィルムを用いる方法は、タイヤ軽量化はある程度可能であるとしても、マトリクス剤が結晶性の樹脂材料であるために、特に5℃以下の低温での使用時における耐クラック性や耐屈曲疲労性が通常用いられるブチル系ゴムを配合したゴム組成物の層より劣るという欠点があり、また、タイヤの製造も複雑となる。
一方、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することがある)は、ガスバリア性に優れていることが知られている。該EVOHは、空気透過量がブチル系ゴムを配合したインナーライナー用ゴム組成物の100分の1以下であるため、50μm以下の厚さでも、タイヤの内圧保持性を大幅に向上することができる上、タイヤを重量低減することが可能である。したがって、空気入りタイヤの空気透過性を改良するために、EVOHをタイヤインナーライナーに用いることは有効であると言える。例えば、EVOHからなるタイヤインナーライナーを有する空気入りタイヤが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、通常のEVOHをインナーライナーとして用いた場合、タイヤの内圧保持性を改良する効果が大きいものの、通常のEVOHはタイヤに通常用いられているゴムに比べ弾性率が大幅に高いため、屈曲時の変形で破断したり、クラックが生じることがあった。そのため、EVOHからなるインナーライナーを用いた場合、タイヤ使用前の内圧保持性は大きく向上するものの、タイヤ転動時に屈曲変形を受けた使用後のタイヤでは、内圧保持性が使用前と比べて低下することがあった。
この問題を解決する手段として、例えばエチレン含有量20〜70モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体60〜99重量%及び疎水性可塑剤1〜40重量%からなる樹脂組成物をインナーライナーに使用する技術が開示されている(例えば、特許分献4参照)。しかしながら、かかるインナーライナーの耐屈曲性については、必ずしも十分に満足し得るものではない。したがって、ガスバリア性を保持したまま、高度の耐屈曲性を有し、薄ゲージ化が可能なインナーライナーの開発が望まれていた。
特開平7−40702号公報 特開平7−81306号公報 特開平6−40207号公報 特開2002−52904号公報
このような状況下、本発明者らが検討したところ、かかるインナーライナーとして、耐屈曲性に優れるゴム状弾性層と、ガスバリア性に優れる熱可塑性樹脂フィルム層とを接合し一体化してなる積層体が有効であることが分かった。
しかしながら、上記ゴム状弾性層と熱可塑性樹脂フィルム層とを接合し一体化してなる積層体をインナーライナーとして用いる場合、高温でのゴム状弾性層と熱可塑性樹脂フィルム層との接着力が低いと、例えば、加硫時にゴム状弾性層と熱可塑性樹脂フィルム層との接合面ではく離が発生する傾向があった。
そこで、本発明の目的は、インナーライナーに用いるゴム状弾性層と熱可塑性樹脂フィルム層間の高温時の剥離抗力が高く、耐久性に優れるタイヤを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂フィルム層(A)とゴム状弾性層(B)とを含み、該熱可塑性樹脂フィルム層(A)とゴム状弾性層(B)との150℃での平均はく離力が0.05kN/m以上であるインナーライナーをタイヤ内面に配設することで、タイヤの耐久性を向上させ、ガスバリア性が改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のタイヤは、タイヤ内面に、一層以上の熱可塑性樹脂フィルム層(A)と、該熱可塑性樹脂フィルム層(A)の表面に隣接して配設されたゴム状弾性層(B)とを含むインナーライナーを具えるタイヤにおいて、
前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)と前記ゴム状弾性層(B)との150℃での平均はく離力が0.05kN/m以上であることを特徴とする。
本発明のタイヤは、インナーライナー及びタイヤ加硫用ブラダー表面の双方に離型剤を塗布することなく、金型内で加硫成型して製造されることが好ましい。
本発明のタイヤの好適例において、前記インナーライナーは、前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)と前記ゴム状弾性層(B)とが、接着剤層(C)を介して接合されてなる。
本発明のタイヤは、前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)と前記ゴム状弾性層(B)との150℃での平均はく離力が0.2kN/m以上であることが好ましい。
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)の少なくとも一層が、エチレン含有量が20〜50モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対し、エポキシ化合物1〜50質量部を反応させて得られる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層からなる。ここで、前記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層は、前記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体からなるマトリクス中に、ヤング率が500MPa以下の柔軟樹脂又はエラストマーを分散させた樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物における前記柔軟樹脂又はエラストマーの含有率が10〜60質量%であることが好ましい。
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)が架橋されている。
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)が、最外層及び最内層の少なくとも一方に、熱可塑性ウレタン系エラストマーからなる層を具える。
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記ゴム状弾性層(B)が、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムの内の少なくとも一方を含む。
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記ゴム状弾性層(B)が、ジエン系エラストマーを含む。
本発明のタイヤに用いるインナーライナーにおいて、前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)と前記ゴム状弾性層(B)とが接着剤層(C)を介して接合される場合、
前記接着剤層(C)に、ゴム成分(a)100質量部に対し、ポリ-p-ジニトロソベンゼン及び1,4-フェニレンジマレイミドの内の少なくとも一方を0.1質量部以上配合した接着剤組成物を用いることが好ましい。
本発明のタイヤに用いるインナーライナーにおいて、前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)と前記ゴム状弾性層(B)とが接着剤層(C)を介して接合される場合、
前記接着剤層(C)に用いる接着剤組成物のゴム成分(a)が、クロロスルホン化ポリエチレンを10質量%以上、又はブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムの内の少なくとも一方を50質量%以上含むことが更に好ましい。
本発明のタイヤに用いるインナーライナーにおいて、前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)と前記ゴム状弾性層(B)とが接着剤層(C)を介して接合される場合、
前記接着剤層(C)に用いる接着剤組成物が、ゴム成分(a)100質量部に対し、更に充填剤を2〜50質量部含むことが更に好ましい。ここで、前記充填剤としては、カーボンブラックが一層好ましい。
本発明のタイヤに用いるインナーライナーにおいて、前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)と前記ゴム状弾性層(B)とが接着剤層(C)を介して接合される場合、
前記接着剤層(C)に用いる接着剤組成物が、ゴム成分(a)100質量部に対し、更にゴム用加硫促進剤を0.1質量部以上含むことが更に好ましい。ここで、前記ゴム用加硫促進剤としては、チウラム系加硫促進剤及び置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤が一層好ましい。
本発明のタイヤに用いるインナーライナーにおいて、前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)と前記ゴム状弾性層(B)とが接着剤層(C)を介して接合される場合、
前記接着剤層(C)に用いる接着剤組成物が、ゴム成分(a)100質量部に対し、更に樹脂及び低分子量重合体の内の少なくとも一方を0.1質量部以上含むことが更に好ましい。ここで、前記樹脂としては、C5系樹脂、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂及びロジン系樹脂が一層好ましい。
本発明によれば、一層以上の熱可塑性樹脂フィルム層(A)とゴム状弾性層(B)とを含み、該熱可塑性樹脂フィルム層(A)とゴム状弾性層(B)との150℃での平均はく離力が0.05kN/m以上であるインナーライナーを具えた、耐久性に優れ、ガスバリア性を向上させることが可能なタイヤを提供することができる。
以下に、本発明のタイヤに用いるインナーライナーを、図を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のタイヤに用いるインナーライナーの一例の断面図であり、図2は、本発明のタイヤに用いるインナーライナーの他の例の断面図であり、図3は、本発明のタイヤに用いるインナーライナーの他の例の断面図である。図1に示すインナーライナー1は、熱可塑性樹脂フィルム層(A)2と、該熱可塑性樹脂フィルム層(A)2の表面に隣接して配設されたゴム状弾性層(B)3とを含む。ここで、本発明のタイヤに用いるインナーライナー1は、熱可塑性樹脂フィルム層(A)2とゴム状弾性層(B)3との150℃での平均はく離力が0.05kN/m以上であることを要し、0.2kN/m以上であることが好ましい。インナーライナー1における熱可塑性樹脂フィルム層(A)2とゴム状弾性層(B)3との150℃での平均はく離力が0.05kN/m以上であれば、高温時での剥離抗力が高く、加硫時にゴム状弾性層(B)と熱可塑性樹脂フィルム層(A)との接合面で見られたはく離の発生を抑制することができる。このため、かかるインナーライナーを具えるタイヤは、耐久性に優れ、ガスバリア性を向上させることができる。なお、従来のインナーライナーには、熱可塑性樹脂フィルム層(A)とゴム状弾性層(B)のはく離を防ぐために市販の接着剤を使用するものもあるが、熱可塑性樹脂フィルム層(A)及びゴム状弾性層(B)表面に存在する官能基と従来の接着剤との反応性は低く、150℃での平均はく離力が0.05kN/m未満であったため、ゴム状弾性層(B)と熱可塑性樹脂フィルム層(A)との接合面においてはく離が見られ、タイヤとしての耐久性は高いものではなかった。
また、本発明のタイヤに用いるインナーライナーは、図2に示す通り、熱可塑性樹脂フィルム層(A)2とゴム状弾性層(B)3とが、接着剤層(C)4を介して接合されることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルム層(A)2及びゴム状弾性層(B)3を接着剤層(C)4を介して接合することで、熱可塑性樹脂フィルム層(A)2とゴム状弾性層(B)3間の接着力を容易に確保することができ、これらの層間における150℃での平均はく離力を向上させることができる。更に、熱可塑性樹脂フィルム層(A)2とゴム状弾性層(B)3との150℃での平均はく離力は、各層を構成する各種配合剤の種類及び配合割合を適宜選択して、上記の範囲に調整することもできる。
なお、図1及び図2に示すインナーライナーは、熱可塑性樹脂フィルム層(A)を一層のみ有するが、本発明のタイヤに用いるインナーライナーは、熱可塑性樹脂フィルム層(A)を二層以上有してもよい。
本発明のタイヤに用いるインナーライナーにおいて、熱可塑性樹脂フィルム層(A)の少なくとも一層は、エチレン含有量が20〜50モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対し、エポキシ化合物1〜50質量部を反応させて得られる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層からなることが好ましい。本発明のタイヤに用いるインナーライナーの熱可塑性樹脂フィルム層(A)の少なくとも一層に、上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層を用いると、熱可塑性樹脂フィルム層(A)の弾性率が低下し、屈曲時の耐破断性を高め、クラックが発生し難くなる。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン含有量が25〜50モル%であることを要し、30〜48モル%であることが好ましく、35〜45モル%であることが一層好ましい。エチレン含有量が25モル%未満では、耐屈曲性、耐疲労性及び溶融成形性が悪化することがあり、一方、50モル%を超えると、ガスバリア性を十分に確保できないことがある。また、該エチレン−ビニルアルコール共重合体は、ケン化度が90%以上であることことが好ましく、95%以上であることが更に好ましく、99%以上であることが一層好ましい。ケン化度が90%未満では、ガスバリア性及び成形時の熱安定性が不十分となることがある。更に、該エチレン−ビニルアルコール共重合体は、メルトフローレート(MFR)が190℃、2160g荷重下で0.1〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜25g/10分であることが更に好ましい。
本発明において、上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造方法は、特に限定されないが、エチレン−ビニルアルコール共重合体とエポキシ化合物とを溶液中で反応させる製造方法が好適に挙げられる。より詳しくは、エチレン−ビニルアルコール共重合体の溶液に、酸触媒又はアルカリ触媒存在下、好ましくは酸触媒存在下、エポキシ化合物を添加し、反応させることによって変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を製造することができる。反応溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。また、酸触媒としては、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸及び三フッ化ホウ素等が挙げられ、アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキシド等が挙げられる。なお、触媒量は、エチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対し、0.0001〜10質量部の範囲が好ましい。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体に反応させるエポキシ化合物としては、一価のエポキシ化合物が好ましい。二価以上のエポキシ化合物は、エチレン−ビニルアルコール共重合体と架橋反応し、ゲル、ブツ等を発生して、インナーライナーの品質を低下させるおそれがある。なお、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造容易性、ガスバリア性、耐屈曲性及び耐疲労性の観点から、一価のエポキシ化合物の中でも、グリシドール及びエポキシプロパンが特に好ましい。また、上記エポキシ化合物は、エチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対して1〜50質量部を反応させることを要し、2〜40質量部を反応させることが好ましく、5〜35質量部を反応させることが更に好ましい。
上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層には、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体からなるマトリクス中に、ヤング率が500MPa以下の柔軟樹脂又はエラストマーを分散させた樹脂組成物を用いることが好ましい。上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体からなるマトリクス中に、上記柔軟樹脂又はエラストマーを分散させると、弾性率が大幅に低下し、屈曲時の破断やクラックの発生を抑制することができる。ここで、上記柔軟樹脂又はエラストマーは、マトリクス中に均一に分散させるため、水酸基と反応する官能基を有することが好ましい。水酸基と反応する官能基としては、無水マレイン酸残基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。水酸基と反応する官能基を有する柔軟樹脂又はエラストマーとして、具体的には、無水マレイン酸変性水素添加スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、無水マレイン酸変性超低密度ポリエチレン等が挙げられる。また、上記柔軟樹脂又はエラストマーのヤング率が500MPa以下であれば、一般に変性エチレン−ビニルアルコール共重合体よりヤング率が低く、熱可塑性樹脂フィルム層(A)の弾性率を低下させることができる。
また、上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層に用いる樹脂組成物における柔軟樹脂又はエラストマーの含有率は、耐屈曲性及びガスバリア性を高めるという観点から、10〜60質量%の範囲が好ましい。更に、上記柔軟樹脂又はエラストマーは、耐屈曲性及びガスバリア性を高めるという観点から、平均粒径が2μm以下であることが好ましい。なお、上記樹脂組成物中の柔軟樹脂又はエラストマーの平均粒径は、例えば、サンプルを凍結し、該サンプルをミクロトームにより切片にして、透過電子顕微鏡(TEM)で観察する。
また、熱可塑性樹脂フィルム層(A)が複数層からなる場合、上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層のみから構成されてもよいし、更に他の層を有してもよく、本発明のタイヤに用いるインナーライナーの熱可塑性樹脂フィルム層(A)は、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層の他、更に図3に示すように他の層、好ましくは熱可塑性ウレタン系エラストマーからなる層を有してもよい。
図3は、本発明のタイヤに用いるインナーライナーの他の例の断面図である。図示例のインナーライナー1は、熱可塑性樹脂フィルム層(A)2として、上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層5と、該層5に隣接して配設された二層の熱可塑性ウレタン系エラストマーからなる層6とを含む。本発明のタイヤに用いるインナーライナーは、上記熱可塑性樹脂フィルム層(A)の最外層及び最内層の少なくとも一方に、好ましくは上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層に隣接して、熱可塑性ウレタン系エラストマーからなる層を具えることで、例えば、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層に破断・亀裂が生じても、亀裂が伸展し難く、大きな破断及びクラック等の弊害を抑制し、タイヤの内圧保持性を十分に維持することができる。
なお、上記熱可塑性ウレタン系エラストマーは、例えば、ポリオールと、イソシアネート化合物と、短鎖ジオールとの反応によって得られる。ポリオール及び短鎖ジオールは、イソシアネート化合物との付加反応により、直鎖状ポリウレタンを形成する。ここで、ポリオールは、熱可塑性ウレタン系エラストマーにおいて柔軟な部分となり、イソシアネート化合物及び短鎖ジオールは硬い部分となる。なお、熱可塑性ウレタン系エラストマーは、原料の種類、配合量、重合条件等を変えることで、広範囲に性質を変えることができる。
上記熱可塑性樹脂フィルム層(A)は、更に架橋されていることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルム層(A)が架橋されていないと、タイヤの加硫工程でインナーライナーが著しく変形して不均一となり、インナーライナーのガスバリア性、耐屈曲性、耐疲労性が低下するおそれがある。ここで、架橋方法としては、エネルギー線を照射する方法が好ましく、該エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、α線、γ線等の電離放射線が挙げられ、これらの中でも電子線が特に好ましい。電子線の照射は、熱可塑性樹脂フィルム層(A)をフィルムやシート等の成形体に加工した後に行うことが好ましい。ここで、電子線の線量は、10〜60Mradの範囲が好ましく、20〜50Mradの範囲が更に好ましい。また、上記熱可塑性樹脂フィルム層(A)は、接着剤層(C)との粘着性を向上させるために、酸化法や凹凸化法等によって表面処理を施してもよい。上記酸化法としては、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理等が挙げられ、凹凸化法としては、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの中でもコロナ放電処理が好ましい。
上記熱可塑性樹脂フィルム層(A)は、20℃、65%RHにおける酸素透過量が3.0×10-12cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下であることが好ましく、1.0×10-12cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下であることが更に好ましく、5.0×10-13cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下であることが一層好ましい。
上記熱可塑性樹脂フィルム層(A)の成形方法は、特に制限されず、単層フィルムの場合には、従来公知の方法、例えば溶液流延法、溶融押出法、カレンダー法等を採用することができ、これらの中でも、Tダイ法やインフレーション法等の溶融押出法が好適である。一方、多層フィルムの場合には、共押出しによるラミネート法が好適に採用される。なお、熱可塑性樹脂フィルム層(A)の厚さの合計は、インナーライナーの薄ゲージ化の観点から、1〜200μmが好ましく、10〜150μmが更に好ましく、20〜100μmが一層好ましい。
本発明のタイヤに用いるインナーライナーにおいて、上記ゴム状弾性層(3)は、ゴム成分としてブチルゴム及び/又はハロゲン化ブチルゴムを含むことが好ましい。ここで、上記ハロゲン化ブチルゴムとしては、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム及びそれらの変性ゴム等が挙げられる。また、上記ハロゲン化ブチルゴムは、市販品を利用することができ、例えば、「Enjay Butyl HT10−66」(登録商標)[エンジェイケミカル社製,塩素化ブチルゴム]、「Bromobutyl 2255」(登録商標)[JSR(株)製,臭素化ブチルゴム]、「Bromobutyl 2244」(登録商標)[JSR(株)製,臭素化ブチルゴム]等を挙げることができる。また、塩素化又は臭素化した変性ゴムの例としては、「Expro50」(登録商標)[エクソン社製]等が挙げられる。
上記ゴム状弾性層(B)におけるゴム成分中のブチルゴム及び/又はハロゲン化ブチルゴムの含有率は、耐空気透過性を向上させる観点から、50質量%以上であるのが好ましく、70〜100質量%であるのが更に好ましい。ここで、上記ゴム成分としては、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムの他、ジエン系エラストマー等を用いてもよい。これらゴム成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ジエン系エラストマーとして、具体的には、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、シス-1,4-ポリブタジエン(BR)、シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン(1,2BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。
上記ゴム状弾性層(B)は、上記ゴム成分に、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、補強性充填剤、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、ゴム用加硫促進剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
本発明のタイヤに用いるインナーライナーにおいて、熱可塑性樹脂フィルム層(A)とゴム状弾性層(B)とが接着剤層(C)を介して接合される場合、該接着剤層(C)に、ゴム成分(a)100質量部に対し、ポリ-p-ジニトロソベンゼン及び1,4-フェニレンジマレイミドの内の少なくとも一方を0.1質量部以上配合した接着剤組成物を用いることが好ましい。上記接着剤組成物に架橋剤及び架橋助剤としてポリ-p-ジニトロソベンゼン及び/又は1,4-フェニレンジマレイミドを用いることで、熱可塑性樹脂フィルム層(A)及びゴム状弾性層(B)に対する接着剤層(C)の粘着性が向上し、熱可塑性樹脂フィルム層(A)とゴム状弾性層(B)間の高温時の剥離抗力を向上させることができる。また、ポリ-p-ジニトロソベンゼン及び/又は1,4-フェニレンジマレイミドの配合量は、ゴム成分(a)100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることが更に好ましい。ポリ-p-ジニトロソベンゼン及び/又は1,4-フェニレンジマレイミドの配合量がゴム成分(a)100質量部に対し0.1質量部未満では、高温時の剥離抗力を十分に改良することができない。
上記接着剤組成物に用いるゴム成分(a)は、特に制限されず、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ジエン系ゴム等が挙げられ、これらの中でもクロロスルホン化ポリエチレン、並びにブチルゴム及び/又はハロゲン化ブチルゴムが好ましい。上記クロロスルホン化ポリエチレンは、塩素と亜硫酸ガスを用いてポリエチレンを塩素化及びクロロスルホン化することによって得られる飽和主鎖構造を有する合成ゴムであり、耐候性、耐オゾン性、耐熱性等に優れ、ガスバリア性も高い。また、上記クロロスルホン化ポリエチレンとしては、市販品を利用することができ、例えば、商品名「ハイパロン」[デュポン社製]等が挙げられる。更に、上記ゴム成分(a)におけるクロロスルホン化ポリエチレンの含有率は、平均はく離力を向上させる観点から、10質量%以上が好ましく、10〜40質量%が好ましい。一方、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムは、上記ゴム状弾性層(B)において説明したとおりであり、上記ゴム成分(a)におけるブチルゴム及び/又はハロゲン化ブチルゴムの含有率は、接着剤層(c)の作業性及び平均はく離力等の観点から、50質量%以上が好ましい。なお、上記ゴム成分(a)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記接着剤組成物は、更にゴム用加硫促進剤、充填剤、樹脂、低分子量重合体等を含有することが好ましく、また、上記成分の他に、例えば、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を目的に応じて適宜配合してもよい。
上記ゴム用加硫促進剤としては、チウラム系加硫促進剤、置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、チオ尿素系加硫促進剤、キサンテート系加硫促進剤等が挙げられ、これらの中でもチウラム系加硫促進剤、置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤が好ましい。これらゴム用加硫促進剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。また、上記ゴム用加硫促進剤の配合量は、ゴム成分(a)100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3〜3質量部の範囲が更に好ましい。
上記ゴム用加硫促進剤として好適なチウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、活性化テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド等が挙げられる。
一方、上記ゴム用加硫促進剤として好適な置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸カリウム、エチルフェニルジチオカルバミン酸鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン等が挙げられる。
上記充填剤としては、無機充填剤、カーボンブラック等が好適に挙げられる。ここで、無機充填剤としては、湿式シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、モンモリロナイト、マイカ、スメクタイト、有機化モンモリロナイト、有機化マイカ、有機化スメクタイト等が好ましい。一方、カーボンブラックとしては、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFグレードのものが好ましい。これら充填剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。また、上記充填剤の配合量は、ゴム成分(a)100質量部に対し、2〜50質量部であることが好ましく、5〜35質量部であることが更に好ましい。
上記接着剤組成物は、該接着剤組成物の粘着性と、熱可塑性樹脂フィルム層(A)とゴム状弾性層(B)との貼り付け作業性の双方を向上させるため、ゴム成分(a)100質量部に対し、更に樹脂及び/又は低分子量重合体を0.1質量部以上含むことが好ましく、5〜40質量部含むことが更に好ましく、10〜30質量部含むことが一層好ましい。
上記樹脂としては、C系樹脂、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂、ロジン系樹脂等が好ましく、これらの中でもフェノール系樹脂が特に好ましい。上記フェノール系樹脂は、例えば、触媒の存在においてp-t-ブチルフェノールとアセチレンとの縮合、又はアルキルフェノールとホルムアルデヒドの縮合によって得られる。また、上記テルペン系樹脂としては、β-ピネン樹脂及びα-ピネン樹脂等のテルペン系樹脂が挙げられ、かかるテルペン系樹脂に対し水素添加を行うことで水添テルペン系樹脂が得られる。更に、上記変性テルペン系樹脂は、フリーデルクラフト型触媒の存在においてテルペンとフェノールとの反応により、或いはホルムアルデヒドとの縮合によって得ることができる。また、ロジン系樹脂としては、例えば、天然ロジン、又は該天然ロジンを水素添加、不均化、二量化、エステル化、ライム化等で変性したロジン誘導体を挙げることができる。これら樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記低分子量重合体は、ポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜100,000であるのが好ましく、1,000〜50,000であるのが更に好ましい。該低分子量重合体としては、スチレン−ブタジエン共重合体であることが好ましい。ここで、スチレン−ブタジエン共重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒中で、重合開始剤として有機リチウム化合物をランダマイザーとしてエーテル又は第3級アミンの存在下で用い、50〜90℃の温度でブタジエンとスチレンとを共重合させることでスチレン−ブタジエン共重合体を製造することができる。得られた共重合体は、重合開始剤の量を調節することで重量平均分子量を制御することができ、また、共重合体の共役ジエン化合物部分のミクロ構造は、ランダマイザーを用いて制御することができる。なお、上記低分子量重合体は、一種単独で用いてもよく、上記樹脂と組み合わせて用いてもよい。
本発明のタイヤに用いるインナーライナーの製造方法としては、例えば、上記接着剤組成物を有機溶媒に分散又は溶解した塗工液を、熱可塑性樹脂フィルム層(A)の表面に塗布及び乾燥して接着剤層(C)を形成し、次に、該接着剤層(C)の表面にゴム状弾性層(B)を貼り合わせ、加硫処理を行うことにより本発明のタイヤに用いるインナーライナーを製造することができる。また、該インナーライナーの製造方法は、上記塗工液をゴム状弾性層(B)の表面に塗布及び乾燥して接着剤層(C)を形成し、該接着剤層(C)の表面に熱可塑性樹脂フィルム層(A)を貼り合わせて加硫処理を行ってもよい。更に、該インナーライナーの製造方法は、熱可塑性樹脂フィルム層(A)とゴム状弾性層(B)を直接貼り合わせ、加硫処理を行ってもよい。なお、上記加硫処理温度は、100℃以上が好ましく、125〜200℃の範囲が更に好ましく、130〜180℃の範囲が一層好ましい。また、上記加硫処理時間は、10〜120分の範囲が好ましい。
上記接着剤組成物と有機溶媒との混合方法は、常法により行い、かかる方法で調製した塗工液中の接着剤組成物の濃度は、5〜50質量%の範囲が好ましく、10〜30質量%の範囲が更に好ましい。ここで、有機溶媒としては、トルエン、キシレン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、クロロホルム、メチルエチルケトン等が挙げられる。これら有機溶媒は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、上記有機溶媒において、ヒルデブランド(Hildebrand)溶解度パラメーター(δ値)は、14〜20MPa1/2の範囲であることが好ましい。ここで、ヒルデブランド溶解度パラメーター(δ値)が、上記特定範囲内にあると、有機溶媒とゴム成分(a)との親和性が高くなる。
次に、図を参照しながら本発明のタイヤを詳細に説明する。図4は、本発明のタイヤの一例の部分断面図である。図4に示すタイヤは、一対のビード部7及び一対のサイドウォール部8と、両サイドウォール部8に連なるトレッド部9とを有し、上記一対のビード部7間にトロイド状に延在して、これら各部7,8,9を補強するカーカス10と、該カーカス10のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置された2枚のベルト層からなるベルト11と、上記ビード部7内に夫々埋設したリング状のビードコア12のタイヤ半径方向外側に配置したビードフィラー13とを具え、更に、該カーカス10の内側のタイヤ内面にはインナーライナー14が配置されている。ここで、本発明のタイヤは、インナーライナー14に上述したインナーライナーを適用することを特徴とする。本発明のタイヤは、上記インナーライナーを具えることで、加硫時に見られたはく離の発生が抑制され、耐久性に優れる。
なお、図4に示すタイヤにおいて、インナーライナー14には、図1,2,3に示す構造のインナーライナーを用いることが好ましく、図1,2,3におけるゴム状弾性層3が、カーカス10の内側のタイヤ内面に接合されることが好ましい。
また、図4に示すタイヤのカーカス10は、一枚のカーカスプライから構成されており、また、上記ビード部7内に夫々埋設した一対のビードコア12間にトロイド状に延在する本体部と、各ビードコア12の周りでタイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部とからなるが、本発明のタイヤにおいて、カーカス10のプライ数及び構造は、これに限られるものではない。
更に、図4に示すタイヤのベルト11は、二枚のベルト層から構成されており、各ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層、好ましくは、スチールコードのゴム引き層からなり、更に、二枚のベルト層が、該ベルト層を構成するコードが互いにタイヤ赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト11を構成している。なお、図中のベルト11は、二枚のベルト層からなるが、本発明のタイヤにおいて、ベルト11を構成するベルト層の枚数は、これに限られるものではない。
本発明のタイヤは、例えば、成形ドラムの周上に、インナーライナー、カーカス、ベルト、トレッド等を適宜積層して生タイヤを作製した後、該生タイヤを加硫成型することで製造できる。ここで、生タイヤの加硫成型においては、通常、生タイヤの内面を形成するインナーライナーにタイヤ加硫用ブラダーが密着することを防止するため、インナーライナー及びタイヤ加硫用ブラダー表面の少なくとも一方に、シリコーンオイル等の離型剤が塗布される。しかしながら、本発明のタイヤに用いるインナーライナーは、一層以上の熱可塑性樹脂フィルム層(A)を含むため、タイヤ加硫用ブラダー表面と密着し難く、これにより、剥離故障の原因が排除されている。従って、本発明のタイヤにおいては、インナーライナー及びタイヤ加硫用ブラダー表面の双方に離型剤を塗布することなく、金型内で加硫成型することができる。このため、離型剤を塗布する工程を省くことができ、製造コストを低減することができる。
なお、本発明のタイヤにおいて、タイヤ内圧を保持する気体としては、その機能を発揮できる気体であればいずれも用いることができ、例えば、空気、窒素、ヘリウム等が挙げられる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<製造例1 変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造>
加圧反応槽に、エチレン含量44モル%、ケン化度99.9モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(MFR:5.5g/10分(190℃、21.18N荷重下))2質量部及びN-メチル-2-ピロリドン8質量部を仕込み、120℃で、2時間加熱攪拌することにより、エチレン−ビニルアルコール共重合体を完全に溶解させた。これにエポキシ化合物としてエポキシプロパン0.4質量部を添加後、160℃で4時間加熱した。加熱終了後、蒸留水100質量部に析出させ、多量の蒸留水で充分にN-メチル-2-ピロリドン及び未反応のエポキシプロパンを洗浄し、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を得た。さらに、得られた変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を粉砕機で粒子径2mm程度に細かくした後、再度多量の蒸留水で十分に洗浄した。洗浄後の粒子を8時間室温で真空乾燥した後、2軸押出機を用いて200℃で溶融し、ペレット化した。
なお、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量及びケン化度は、重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒とした1H-NMR測定[日本電子社製「JIM−GX−500型」を使用]で得られたスペクトルから算出した値である。また、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体のメルトフローレート(MFR)は、メルトインデクサーL244[宝工業株式会社製]の内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーにサンプルを充填し、190℃で溶融した後、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーを使用して均等に荷重をかけ、シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより単位時間あたりに押出される樹脂量(g/10分)から求めた。但し、エチレン−ビニルアルコール共重合体の融点が190℃付近あるいは190℃を超える場合は、2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿して算出した値をメルトフローレート(MFR)とした。
<製造例2 3層フイルムの作製>
製造例1で得られた変性EVOHと、エラストマーとして熱可塑性ポリウレタン((株)クラレ製、クラミロン3190)とを使用し、2種3層共押出装置を用いて、下記共押出成形条件で3層フイルム(熱可塑性ポリウレタン層/変性EVOH層/熱可塑性ポリウレタン層)を作製した。各層の厚みは、変性EVOH層、熱可塑性ポリウレタン層ともに20μmである。
共押出成形条件は以下のとおりである。
層構成:
熱可塑性ポリウレタン/変性EVOH/熱可塑性ポリウレタン
(厚み20/20/20、単位はμm)
各樹脂の押出温度:
C1/C2/C3/ダイ=170/170/220/220℃
各樹脂の押出機仕様:
熱可塑性ポリウレタン:
25mmφ押出機 P25−18AC(大阪精機工作株式会社製)
変性EVOH:
20mmφ押出機 ラボ機ME型CO−EXT(株式会社東洋精機製)
Tダイ仕様:
500mm幅2種3層用 (株式会社プラスチック工学研究所製)
冷却ロールの温度:50℃
引き取り速度:4m/分
<製造例2' 単層フィルムの作製>
製造例1で得られた変性EVOHを使用し、製造例2の条件に準じて厚さ20μmの単層フィルムを得た。
<製造例3 未加硫ゴム状弾性層の作製>
天然ゴム30質量部及び臭素化ブチルゴム(Br-IIR)[JSR(株)製,Bromobutyl 2244]70質量部に対して、GPFカーボンブラック[旭カーボン社製,#55]60質量部、SUNPAR2280[日本サン石油社製]7質量部、ステアリン酸[旭電化工業社製]1質量部、加硫促進剤[大内新興化学工業社製,ノクセラーDM]1.3質量部、酸化亜鉛[白水化学工業社製]3質量部及び硫黄[軽井沢精錬所製]0.5質量部を配合してゴム組成物を調製し、厚さ500μmの未加硫ゴム状弾性体シートを作製した。
<製造例4 未加硫ゴム状弾性層の作製>
天然ゴム100質量部に対して、GPFカーボンブラック[旭カーボン社製,#55]60質量部、SUNPAR2280[日本サン石油社製]7質量部、ステアリン酸[旭電化工業社製]1質量部、加硫促進剤[大内新興化学工業社製,ノクセラーDM]1.3質量部、酸化亜鉛[白水化学工業社製]3質量部及び硫黄[軽井沢精錬所製]0.5質量部を配合してゴム組成物を調製し、厚さ500μmの未加硫ゴム状弾性体シートを作製した。
<製造例5 接着剤組成物−1及び塗工液の調製>
表1に示す配合処方の接着剤組成物を常法により調製した後、得られた接着剤組成物100質量部をトルエン(δ値:18.2MPa1/2)1000質量部に加え、溶解又は分散して接着剤塗工液を調製した。
Figure 2009220793
<製造例6 接着剤組成物−2及び塗工液の調製>
表2に示す配合処方の接着剤組成物を常法により調製した後、得られた接着剤組成物100質量部をトルエン(δ値:18.2MPa1/2)1000質量部に加え、溶解又は分散して接着剤塗工液を調製した。
Figure 2009220793
<製造例7 接着剤組成物−3及び塗工液の調製>
表3に示す配合処方の接着剤組成物を常法により調製した後、得られた接着剤組成物100質量部をトルエン(δ値:18.2MPa1/2)1000質量部に加え、溶解又は分散して接着剤塗工液を調製した。
Figure 2009220793
(実施例1)
日新ハイボルテージ株式会社製電子線照射装置「生産用キュアトロンEBC200−100」を使用して、製造例2で得られた三層フィルム(熱可塑性ポリウレタン/変性EVOH/熱可塑性ポリウレタン)に、加速電圧200kV、照射エネルギー30Mradの条件にて電子線照射し架橋処理を施し、多層熱可塑性樹脂フィルムとして使用した。製造例5で調製した接着剤塗工液を、上記架橋した多層熱可塑性樹脂フィルムの片面に塗布し、乾燥処理した後、製造例3で得られた未加硫ゴム状弾性体シートと貼り合せることにより、インナーライナーを作製した。得られたインナーライナーを用い、常法により加硫工程を経て乗用車用空気入りタイヤ(195/65R15)を試作した。
なお、150℃での平均はく離力及びドラム走行後のタイヤ内面性状を下記の方法で測定及び評価した。結果を表4に示す。
(1)平均はく離力の測定
JIS K6854−3[接着剤−はく離接着強さ試験方法(T型はく離)]に準拠して、150℃においてT型はく離試験を行い、平均はく離力(kN/m)を測定した。なお、試験片の幅は10mmのものを用いた。
(2)走行後タイヤ内面性状の評価
上記試作タイヤについて、空気圧140kPaで80km/hの速度に相当する回転数のドラム上に荷重6kNで押し付けて、10,000km走行を実施した。そのドラム走行後のタイヤのインナーライナー外観を目視観察して、次のような評価基準に基づいて熱可塑性樹脂フィルム層の剥離状態を評価した。
◎ フィルム層のはく離は無く問題無し(試作タイヤ10本全て問題なし)
○ フィルム層のはく離は無くほぼ問題無し(試作タイヤ10本中1本のみに軽度のはく離が見られたが耐久性上は問題なし)
× フィルム層のはく離有り
(実施例2)
製造例5で調製した接着剤組成物−1の塗工液を製造例6で調製した接着剤組成物−2の塗工液に変えた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。
(実施例3)
製造例5で調製した接着剤組成物−1の塗工液を製造例7で調製した接着剤組成物−3の塗工液に変えた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。
(実施例4)
製造例3で得られた未加硫ゴム状弾性体シートを製造例4で得られた未加硫ゴム状弾性体シートに変えた以外は、実施例3と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。
(実施例5)
製造例2で得られた三層フィルムに代えて、製造例2'で得られた単層フィルムを用いた以外は、実施例3と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。
(比較例1)
実施例1において、製造例5で調製した接着剤組成物−1の塗工液を塗布しないこと以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。
(比較例2)
製造例5で調製した接着剤組成物−1の塗工液に代えて、市販の接着剤組成物[東洋化学研究所製,メタロックR−46]を塗布したこと以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 2009220793
表4から明らかなように、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、高温での剥離抗力が高く、加硫時にゴム状弾性層と熱可塑性樹脂フィルム層間でのはく離が抑制され、耐久性が向上していることが分かる。
本発明のタイヤに用いるインナーライナーの一例の断面図である。 本発明のタイヤに用いるインナーライナーの他の例の断面図である。 本発明のタイヤに用いるインナーライナーの他の例の断面図である。 本発明のタイヤの一例の断面図である。
符号の説明
1 インナーライナー
2 熱可塑性樹脂フィルム層(A)
3 ゴム状弾性層(B)
4 接着剤層(C)
5 変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層
6 熱可塑性ウレタン系エラストマーからなる層
7 ビード部
8 サイドウォール部
9 トレッド部
10 カーカス
11 ベルト
12 ビードコア
13 ビードフィラー
14 インナーライナー

Claims (19)

  1. タイヤ内面に、一層以上の熱可塑性樹脂フィルム層(A)と、該熱可塑性樹脂フィルム層(A)の表面に隣接して配設されたゴム状弾性層(B)とを含むインナーライナーを具えるタイヤにおいて、
    前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)と前記ゴム状弾性層(B)との150℃での平均はく離力が0.05kN/m以上であることを特徴とするタイヤ。
  2. インナーライナー及びタイヤ加硫用ブラダー表面の双方に離型剤を塗布することなく、金型内で加硫成型して製造したことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記インナーライナーは、前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)と前記ゴム状弾性層(B)とが、接着剤層(C)を介して接合されてなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
  4. 前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)と前記ゴム状弾性層(B)との150℃での平均はく離力が0.2kN/m以上であることを特徴とする請求項1又は3に記載のタイヤ。
  5. 前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)の少なくとも一層が、エチレン含有量が20〜50モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対し、エポキシ化合物1〜50質量部を反応させて得られる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層からなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
  6. 前記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層が、前記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体からなるマトリクス中に、ヤング率が500MPa以下の柔軟樹脂又はエラストマーを分散させた樹脂組成物からなり、
    前記樹脂組成物における前記柔軟樹脂又はエラストマーの含有率が10〜60質量%であることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ。
  7. 前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)が架橋されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
  8. 前記熱可塑性樹脂フィルム層(A)が、最外層及び最内層の少なくとも一方に、熱可塑性ウレタン系エラストマーからなる層を具えることを特徴とする請求項1又は5に記載のタイヤ。
  9. 前記ゴム状弾性層(B)が、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムの内の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
  10. 前記ゴム状弾性層(B)が、ジエン系エラストマーを含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
  11. 前記接着剤層(C)に、ゴム成分(a)100質量部に対し、ポリ-p-ジニトロソベンゼン及び1,4-フェニレンジマレイミドの内の少なくとも一方を0.1質量部以上配合した接着剤組成物を用いることを特徴とする請求項3に記載のタイヤ。
  12. 前記ゴム成分(a)が、クロロスルホン化ポリエチレンを10質量%以上含むことを特徴とする請求項11に記載のタイヤ。
  13. 前記ゴム成分(a)が、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムの内の少なくとも一方を50質量%以上含むことを特徴とする請求項11に記載のタイヤ。
  14. 前記接着剤組成物が、ゴム成分(a)100質量部に対し、更に充填剤を2〜50質量部含むことを特徴とする請求項11に記載のタイヤ。
  15. 前記充填剤が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項14に記載のタイヤ。
  16. 前記接着剤組成物が、ゴム成分(a)100質量部に対し、更にゴム用加硫促進剤を0.1質量部以上含むことを特徴とする請求項11に記載のタイヤ。
  17. 前記ゴム用加硫促進剤が、チウラム系加硫促進剤及び置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤の内の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項16に記載のタイヤ。
  18. 前記接着剤組成物が、ゴム成分(a)100質量部に対し、更に樹脂及び低分子量重合体の内の少なくとも一方を0.1質量部以上含むことを特徴する請求項11に記載のタイヤ。
  19. 前記樹脂が、C5系樹脂、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂及びロジン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項18に記載のタイヤ。
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