本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、地上波ディジタルテレビジョン放送、例えばDVB−Tの無線信号を受信する受信装置に関する。無線信号は、前述のごとく、OFDM信号によって構成されており、OFDM信号には、SP信号が含まれている。受信装置は、受信したOFDM信号に対してFFT(Fast Fourier Transform)を実行することによって、OFDM信号を時間領域から周波数領域へ変換する。このような、FFTを計算するためのFFTウインドウを設定する際のタイミングが、前述のシンボル同期タイミングに相当する。また、SP信号をもとに遅延プロファイルを推定し、推定した遅延プロファイルからシンボル同期タイミングを導出する場合、先行波と遅延波とを誤って識別してしまうと、最適なタイミングからずれたシンボル同期タイミングとなってしまう。これに対応するために、本実施例に係る受信装置は、以下の処理を実行する。
受信装置は、受信信号のGIと有効シンボル間の自己相関値から第1のシンボル同期タイミングを決定するとともに、第1のシンボル同期タイミングを前方にシフトすることによって第2のシンボル同期タイミングを決定する。また、受信装置は、第1のシンボル同期タイミングと第2のシンボル同期タイミングとのそれぞれによって、FFTを実行する。さらに、受信装置は、SP信号から伝送路特性を導出し、これに対してIFFTを実行することによって、遅延プロファイルを導出する。その結果、第1のシンボル同期タイミングに対応した遅延プロファイル(以下、「第1の遅延プロファイル」という)と、第2のシンボル同期タイミングに対応した遅延プロファイル(以下、「第2の遅延プロファイル」という)とが導出される。
また、受信装置は、第1の遅延プロファイルと第2の遅延プロファイルとにおいて対応したエコーパスを特定し、特定したエコーパス同士のパワーレベルを比較する。第1の遅延プロファイルのエコーパスのパワーレベルが第2の遅延プロファイルのエコーパスのパワーレベルよりしきい値以上で大きい場合、受信装置は、エコーパスを遅延波とみなす。第1の遅延プロファイルのエコーパスのパワーレベルが第2の遅延プロファイルのエコーパスのパワーレベルよりしきい値以下で小さい場合、受信装置は、エコーパスを先行波とみなす。第1の遅延プロファイルのエコーパスのパワーレベルと第2の遅延プロファイルのエコーパスのパワーレベルの差異がしきい値内であれば、受信装置は、メインパスに対するエコーパスの見かけ上の出現位置によって先行波か遅延波を判定する。
図1は、本発明の実施例に係る受信装置100の構成を示す。受信装置100は、アンテナ10、RF部12、AD部14、ベースバンド処理部16、制御部18を含む。アンテナ10は、図示しない送信装置からの無線信号を受信する。ここで、無線信号は、無線周波数帯に属し、OFDM信号によって構成されている。また、OFDM信号は、OFDMシンボルの繰り返しによって構成されている。図2は、受信装置100に入力されるOFDMシンボルの構成を示す。図の横軸方向が周波数に相当し、図の縦軸方向が時間に相当し、図の左側にシンボル番号を示す。図中の「○」がデータ信号に相当し、「P」がSP信号に相当する。このように、SP信号は、OFDM信号の周波数領域および時間領域において離散的に挿入されている。また、SP信号は、受信装置100にとって既知の信号であり、伝送路特性を推定するために使用される。図1に戻る。
ここで、DVB−Tでは、2kモードと8kモードとが規定されている。2kモードとは、IFFTのポイント数が2048サンプルである場合に相当し、8kモードとは、IFFTのポイント数が8192サンプルである場合に相当する。以下では、8kモードを説明の対象にする。RF部12は、アンテナ10において順次受信したOFDMシンボルに対して、無線周波数帯からベースバンドへの周波数変換を実行する。また、RF部12は、ベースバンドに周波数変換したOFDMシンボルを出力する。なお、ベースバンドの信号は、一般的に同相成分と直交成分にて形成される。そのため、2本の信号線が示されるべきであるが、ここでは、図面を明瞭にするために1本の信号線を示す。また、RF部12は、チューナ機能、増幅機能等も有するが、ここでは、それらの説明を省略する。
AD部14は、ベースバンドのOFDMシンボルに対して、アナログ−デジタル変換を実行する。その結果、AD部14は、デジタル信号に変換されたOFDMシンボルを出力するが、以下、デジタル信号に変換されたOFDMシンボルも単にOFDMシンボルと呼ぶ。ベースバンド処理部16は、OFDMシンボルに対して、FFT処理、シンボル同期タイミング検出処理等を実行した後に、OFDMシンボルを復調する。ベースバンド処理部16の処理の詳細は後述する。制御部18は、受信装置100全体の動作タイミングを制御する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた受信機能を有したプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図3は、受信装置100にて解決すべき課題の概要を示す。図3は、図2に示されたSP信号をもとに導出された遅延プロファイルを示す。ここでは、有効シンボル長を8192サブキャリアに相当する896μsecとし、メインパスに加えて、遅延波あるいは先行波(以下、「エコーパス」と総称する)が存在する場合を想定する。なお、SP信号の伝送路特性から遅延プロファイルを導出するためには、図2に示した時間軸方向のSP信号間のサブキャリアに対して、伝送路特性の時間軸補間がなされる。
そのため、時間軸補間値はサブキャリア全体に対して3分の1の情報量しか持たないことになる。この3分の1にダウンサンプルされた伝送路特性をもとに、IFFT演算等によって遅延プロファイルを導出した場合、図3のごとく、帯域内に3ペアの繰り返し成分が出現する。ここでは、繰り返し出現したメインパスを「M」、「M’」、「M’’」と示し、繰り返し出現したエコーパスを「C」、「C’」、「C’’」と示す。つまり、パス情報を観測できる有効な帯域は3分の1に減少する。
パス情報を観測できる有効な帯域は3分の1に減少しているので、エコーパスC’に着目すると、エコーパスC’は、メインパスM’に対して有効シンボル長896μsecの3分の1のさらに半分の149μsec以下の時間だけ進んだ先行波といえる。また、エコーパスC’は、メインパスMに対して有効シンボル長896μsecの3分の1のさらに半分の149μsec以上遅れた遅延波ともいえる。つまり、エコーパスC’がメインパスM’に対する先行波である可能性と、エコーパスC’がメインパスMに対する遅延波である可能性とが両立し、特定できなくなる。その結果、シンボル同期タイミングが適切に設定されなくなる。
図4は、ベースバンド処理部16の構成を示す。ベースバンド処理部16は、サンプリング補間部50、AFC部52、同期タイミング粗検出部54、同期タイミング制御部56、FFT部58、コンティニュアスパイロット信号抽出部60、SFO/CFOトラッキング部62、TPS信号抽出部64、TPS信号復号部66、スキャッタードパイロット抽出部68、チャネル推定部70、時間軸補間部72、IFFT部74、遅延プロファイル記憶部76、遅延プロファイル比較部78、遅延プロファイル補正部80、同期タイミング微調整部82、係数選択部84、周波数軸補間フィルタ部86、等化部88、デマッパ部90を含む。
サンプリング補間部50は、図示しないAD部14からOFDMシンボルを受けつける。また、サンプリング補間部50は、後述のSFO/CFOトラッキング部62から受けつけた信号をもとに、OFDMシンボルに対するサンプリング周波数オフセットを補正する。サンプリング補間部50は、補正したOFDMシンボルをAFC部52へ出力する。AFC部52は、サンプリング補間部50からOFDMシンボルを受けつける。また、AFC部52は、後述のSFO/CFOトラッキング部62から受けつけた信号をもとに、OFDMシンボルに対するキャリア周波数オフセットを補正する。AFC部52は、補正したOFDMシンボルを同期タイミング粗検出部54およびFFT部58へ出力する。なお、サンプリング補間部50におけるサンプリング周波数オフセットの補正、AFC部52におけるキャリア周波数オフセットの補正には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。
同期タイミング粗検出部54は、AFC部52からOFDMシンボルを受けつける。また、同期タイミング粗検出部54は、OFDMシンボルを有効シンボル期間だけ遅延させ、遅延させたOFDMシンボルと受けつけたOFDMシンボルとの自己相関を実行する。つまり、OFDMシンボルに対して、ガードインターバル部分と有効シンボル部分との自己相関値が導出される。さらに、同期タイミング粗検出部54は、相関値のピークを検出し、検出タイミングを第1のシンボル同期タイミングとして、同期タイミング制御部56に供給する。
同期タイミング制御部56は、同期タイミング粗検出部54から供給された第1のシンボル同期タイミングをFFT部58へ設定する。FFT部58では、設定された第1のシンボル同期タイミングをFFTウインドウの先頭タイミングとして、OFDMシンボルから有効シンボルを切り出す。これは、OFDMシンボルからガードインターバルを除去することに相当する。つまり、FFT部58は、ガードインターバルと有効シンボルとの組合せが含まれたOFDMシンボルを受けつけ、かつ有効シンボルの期間をもとに規定されたFFTウインドウにてOFDMシンボルから有効シンボルを抽出する。また、FFT部58は、切り出したOFDMシンボルに対してFFT演算を実行することによって、時間領域のOFDMシンボルを周波数領域のOFDMシンボルへ変換する(以下、周波数領域のOFDMシンボルも「OFDMシンボル」という)。その結果、図2のようにサブキャリア単位に分離された信号が出力される。
コンティニュアスパイロット信号抽出部60では、FFT部58からOFDMシンボルを受けつける。また、コンティニュアスパイロット信号抽出部60は、各OFDMシンボル共通のサブキャリアに配置されたコンティヌアスパイロット信号を抽出する。なお、コンティヌアスパイロット信号は、予め定められたサブキャリアに配置されている。コンティニュアスパイロット信号抽出部60は、抽出したコンティヌアスパイロット信号をSFO/CFOトラッキング部62へ出力する。
SFO/CFOトラッキング部62は、コンティニュアスパイロット信号抽出部60からコンティヌアスパイロット信号を受けつける。SFO/CFOトラッキング部62は、コンティニュアスパイロット信号からサンプリング周波数オフセット値およびキャリア周波数オフセット値を導出する。なお、これらの導出には、公知の技術が使用されればよい。また、SFO/CFOトラッキング部62は、サンプリング補間部50に対して、サンプリング周波数オフセットを補正するための制御を実行するとともに、AFC部52に対して、キャリア周波数オフセットを補正するための制御を実行する。
TPS信号抽出部64は、FFT部58からOFDMシンボルを受けつける。また、TPS信号抽出部64は、各OFDMシンボル共通のサブキャリアに配置されたTPS(Transmission parameter signaling)信号を抽出する。ここで、OFDMシンボルのうち、一部のサブキャリアにTPS信号が配置され、残りのサブキャリアにデータが配置されている。2kモードでは、TPS信号が17のサブキャリアに配置され、8kモードでは、TPS信号が86のサブキャリアに配置されている。また、TPS信号は、データ信号を復調するために必要な情報が含まれた制御信号である。TPS信号において、変調方式としてDBPSK(Differential Binary Phase Shift Keying)が採用されており、誤り検出/訂正方式としてBCH符号(Bose−Chaudhuri−Hocquenghem code)が採用されている。TPS信号抽出部64は、抽出したTPS信号をTPS信号復号部66へ出力する。
TPS信号復号部66は、TPS信号抽出部64からTPS信号を受けつける。TPS信号復号部66は、TPS信号からフレーム同期符号を検出し、先頭フレームを特定する。その後、TPS信号復号部66は、フレーム同期符号に続く、各種TPS信号を復号する。スキャッタードパイロット抽出部68では、TPS信号復号部66からフレーム同期符号を受けつけるとともに、FFT部58からOFDMシンボルを受けつける。スキャッタードパイロット抽出部68は、TPS信号復号部66にて検出されたフレーム同期符号をもとに、OFDMシンボルからシンボルごとに異なったサブキャリアに配置されたSP信号を抽出する。つまり、図2のように配置されたSP信号が抽出される。スキャッタードパイロット抽出部68は、抽出したSP信号をチャネル推定部70へ出力する。
チャネル推定部70は、スキャッタードパイロット抽出部68からSP信号を受けつける。チャネル推定部70は、受けつけたSP信号と、予め記憶したSP信号とをもとに、SP信号が配置された伝送路特性を算出する。このような伝送路特性は、伝送路の周波数特性ともいえる。チャネル推定部70は、伝送路特性を時間軸補間部72へ出力する。時間軸補間部72は、SP信号が配置されたサブキャリアでの伝送路特性に対して、時間軸方向に補間する。ここで、補間には、例えば線形補間が使用される。時間軸補間部72は、補間した伝送路特性をIFFT部74および周波数軸補間フィルタ部86へ出力する。
IFFT部74は、時間軸補間部72から伝送路特性を受けつける。IFFT部74は、伝送路特性が配置されていないサブキャリアに「0」を割り当てた後、IFFTを実行する。その結果、周波数領域の伝送路特性が時間領域の伝送路特性へ変換される。時間領域の伝送路特性が、遅延プロファイルである。ここで、当該遅延プロファイルが、前述の第1の遅延プロファイルに相当する。IFFT部74は、第1の遅延プロファイルを遅延プロファイル記憶部76へ出力する。
遅延プロファイル記憶部76は、IFFT部74から第1の遅延プロファイルを受けつける。図5は、遅延プロファイル記憶部76に記憶される第1の遅延プロファイルのパス情報を示す。ここで、メインパスが「M」と示され、エコーパスが「C」と示される。遅延プロファイル記憶部76は、メインパスMに対して、有効シンボル長896μsecの3分の1の±149μsecの第1の遅延プロファイル観測窓120内のエコーパスCのパス情報を抽出する。ここで、パス情報は、ポジションTc、パワーレベルPcと示される。遅延プロファイル記憶部76は、パス情報を記憶する。ここで、遅延プロファイル観測窓を有効シンボル長の3分の1にしている理由は、DVB−T規格において離散的に配置されたSP信号による伝送路特性の時間軸補間値が、前述のごとく、有効シンボル全体に対して3分の1にダウンサンプルされているからである。図4に戻る。
同期タイミング制御部56は、遅延プロファイル記憶部76での記憶がなされた後、第2のシンボル同期タイミングを設定する。図6は、同期タイミング制御部56において設定されるタイミングを示す。同期タイミング制御部56は、第1のシンボル同期タイミング122を一定期間、例えばGI期間だけ前方にシフトさせることによって、第2のシンボル同期タイミング124をFFT部58に設定する。つまり、第1のシンボル同期タイミング122でのFFTウインドウと、第2のシンボル同期タイミング124でのFFTウインドウとは、周期が共通していながらも、シフト量が互いに異なっている。図4に戻る。以上の処理の結果、FFT部58は、OFDMシンボルに対して、第1のシンボル同期タイミング122でのFFTウインドウおよび第2のシンボル同期タイミング124でのFFTウインドウを使用しながら、時間領域から周波数領域への変換を実行する。
スキャッタードパイロット抽出部68、チャネル推定部70、時間軸補間部72、IFFT部74は、新たに設定された第2のシンボル同期タイミングにもとづくOFDMシンボルに対して、前述の処理を実行する。その結果、IFFT部74は、第2のシンボル同期タイミングに対応した第2の遅延プロファイルを導出する。つまり、チャネル推定部70からIFFT部74は、複数種類のFFTウインドウを使用しながら、OFDMシンボルに含まれたSP信号に対する遅延プロファイルを推定する。図7は、IFFT部74にて導出される第2の遅延プロファイルのパス情報を示す。ここで、メインパスが「M」と示され、エコーパスが「D」と示される。遅延プロファイル記憶部76は、メインパスMに対して、有効シンボル長896μsecの3分の1の±149μsecの第2の遅延プロファイル観測窓126内のエコーパスDのパス情報を抽出する。ここで、パス情報は、ポジションTd、パワーレベルPdと示される。図4に戻る。
遅延プロファイル比較部78は、遅延プロファイル記憶部76から、第1の遅延プロファイルのパス情報を受けつけるとともに、IFFT部74から、第1の遅延プロファイルのパス情報を受けつける。前者は、図5に示されたポジションTc、パワーレベルPcに相当し、後者は、図7に示されたポジションTd、パワーレベルPdに相当する。遅延プロファイル比較部78は、パワーレベルPcとパワーレベルPdとを比較し、比較結果を遅延プロファイル補正部80へ出力する。
遅延プロファイル補正部80は、遅延プロファイル比較部78から比較結果を受けつけるとともに、パス情報も受けつける。遅延プロファイル補正部80は、比較結果をもとに、エコーパスが先行波であるか、遅延波であるかを決定する。ここで、遅延プロファイル補正部80は、判定条件として4つのケースを予め規定しており、比較結果およびパス情報からひとつのケースを選択する。図8は、遅延プロファイル補正部80において規定される先行波あるいは遅延波の判定条件を示す。図示のごとく、判定条件欄210、判定結果欄212が含まれている。判定条件欄210の中に、ケース1からケース4までの4つのケースが示されている。
まず、遅延プロファイル補正部80は、比較結果をもとに、ふたつのエコーパス成分間のパワーレベルの差異、つまり|Pc−Pd|がしきい値以上であるか否かを判定する。しきい値以上であれば、遅延プロファイル補正部80は、ケース1およびケース2を選択する。一方、しきい値未満であれば、遅延プロファイル補正部80は、ケース3およびケース4を選択する。ケース1およびケース2を選択した場合、遅延プロファイル補正部80は、第1のシンボル同期位置に対するエコーパスパワーレベルPcと、第2のシンボルの同期位置に対するエコーパスパワーレベルPdとを比較する。
前者が後者よりも小さければ、遅延プロファイル補正部80はケース1を選択し、前者が後者よりも大きければ、遅延プロファイル補正部80はケース2を選択する。さらに、遅延プロファイル補正部80は、ケース1の場合にエコーパスが先行波であると決定し、ケース2の場合にエコーパスが遅延波であると決定する。つまり、ケース1およびケース2を選択した場合、遅延プロファイル補正部80は、エコーパスの大きさをもとに、当該エコーパスが先行波であるか遅延波であるかを決定する。
一方、ケース3およびケース4を選択した場合、遅延プロファイル補正部80は、エコーパスとメインパスとのタイミング差を導出する。具体的に説明すると、遅延プロファイル補正部80は、エコーパスが先行波であると仮定したときのエコーパスとメインパスとのタイミング差(以下、「第1値」という)を導出する。また、遅延プロファイル補正部80は、エコーパスが遅延波であると仮定したときのエコーパスとメインパスとのタイミング差(以下、「第2値」という)を導出する。
第1値が第2値よりも小さければ、遅延プロファイル補正部80はケース3を選択し、第1値が第2値よりも大きければ、遅延プロファイル補正部80はケース4を選択する。さらに、遅延プロファイル補正部80は、ケース3の場合にエコーパスが先行波であると決定し、ケース4の場合にエコーパスが遅延波であると決定する。つまり、ケース3およびケース4を選択した場合、遅延プロファイル補正部80は、メインパスとエコーパスとのタイミング差をもとに、当該エコーパスが先行波であるか遅延波であるかを決定する。図4に戻る。
また、遅延プロファイル補正部80は、先行波であるか遅延波であるかの判定結果をもとに、遅延プロファイルを補正するとともに、遅延プロファイル窓範囲を決定する。図9は、遅延プロファイル補正部80において規定される遅延プロファイルの補正処理を示す。図示のごとく、ケース欄200、補正前の遅延プロファイル欄202、補正後の遅延プロファイル欄204が含まれる。ケース欄200に示されているケース1からケース4は、図9の判定条件欄210に示されたケース1からケース4に対応する。補正前の遅延プロファイル欄202には、遅延プロファイル窓128に対するメインパス「M」とエコーパス「E」とが示されている。
ケース1の場合、前述のごとく、エコーパスは先行波であるので、補正後の遅延プロファイル欄204に示されたように、エコーパスEは、299μsecだけ前方にシフトされる。また、エコーパスEのシフトにあわせて、遅延プロファイル窓128もシフトされる。ケース2の場合、前述のごとく、エコーパスEは遅延波であるので、補正後の遅延プロファイル欄204に示されたように、エコーパスEは、299μsecだけ後方にシフトされる。また、エコーパスEのシフトにあわせて、遅延プロファイル窓128もシフトされる。なお、ケース3およびケース4の場合、補正後の遅延プロファイル欄204に示されたように遅延プロファイル窓128が設定される。図4に戻る。遅延プロファイル補正部80は、処理結果を同期タイミング微調整部82へ出力する。
同期タイミング微調整部82は、遅延プロファイル補正部80において補正した遅延プロファイルをもとに、OFDMシンボルから有効シンボルを切り出すために最適なシンボル同期タイミングを設定するためのタイミングオフセット値を導出する。つまり、同期タイミング微調整部82は、遅延プロファイル補正部80での決定内容、つまり遅延プロファイルに応じて、FFT部58が使用すべきFFTウインドウのタイミングを決定する。また、同期タイミング微調整部82は、導出したタイミングオフセット値を同期タイミング制御部56へ出力する。なお、同期タイミング微調整部82における最適なシンボル同期タイミングの導出方法は、エコーパスが先行波であるか、遅延波であるかによって異なる。ここでは、前者を説明した後に、後者を説明する。
図10は、同期タイミング微調整部82においてエコーパルスが先行波であるときのシンボル同期タイミングの最適化処理を示す。エコーパスがGI長を超える場合欄220とエコーパスがGI長内に存在する場合欄222が含まれている。そのため、同期タイミング微調整部82は、エコーパルスが先行波であることを確認した後に、エコーパルスとメインパスとのタイミング差を導出する。タイミング差がGI長を超える場合、同期タイミング微調整部82は、エコーパスがGI長を超える場合欄220の内容にしたがって、シンボル同期タイミングを決定する。具体的には、同期タイミング微調整部82は、メインパスのタイミングからGI長進んだタイミングをシンボル同期タイミングターゲット130に設定するようにタイミングオフセット値を導出する。ここで、タイミングオフセット値は、第2のシンボル同期タイミング124とシンボル同期タイミングターゲット130との差異に相当する。つまり、同期タイミング微調整部82は、GI長をもとに、シンボル同期タイミングターゲット130を決定する。
一方、タイミング差がGI長内に存在する場合、同期タイミング微調整部82は、エコーパスがGI長内に存在する場合欄222の内容にしたがって、シンボル同期タイミングを決定する。具体的には、同期タイミング微調整部82は、先行波のタイミングをシンボル同期タイミングターゲット130に設定するようにタイミングオフセット値を導出する。ここでも、タイミングオフセット値は、第2のシンボル同期タイミング124とシンボル同期タイミングターゲット130との差異に相当する。なお、複数の先行波が存在する場合、同期タイミング微調整部82は、最先の先行波のタイミングをシンボル同期タイミングターゲット130に設定する。
図11は、同期タイミング微調整部82においてエコーパルスが遅延波であるときのシンボル同期タイミングの最適化処理を示す。エコーパスがGI長を超える場合欄224とエコーパスがGI長内に存在する場合欄226とが含まれているが、シンボル同期タイミングの最適化については処理が共通するので、ここではまとめて説明する。同期タイミング微調整部82は、メインパスのタイミングをシンボル同期タイミングに決定する。つまり、同期タイミング微調整部82は、メインパスの位置をシンボル同期タイミングターゲット130に設定するようにタイミングオフセット値を求める。また、ここでも、タイミングオフセット値は、第2のシンボル同期タイミング124とシンボル同期タイミングターゲット130との差異に相当する。図4に戻る。同期タイミング微調整部82は、タイミングオフセット値を同期タイミング制御部56へ出力する。
同期タイミング制御部56は、同期タイミング微調整部82からタイミングオフセット値を受けつけると、タイミングオフセット値だけ第2のシンボル同期タイミングをシフトさせる。同期タイミング制御部56は、FFTウインドウをシフトさせ、これをFFT部58に設定する。その後、コンティニュアスパイロット信号抽出部60、SFO/CFOトラッキング部62、サンプリング補間部50、AFC部52、スキャッタードパイロット抽出部68、チャネル推定部70、時間軸補間部72は、微調整されたシンボル同期タイミングにもとづくOFDMシンボルに対して前述の処理を実行する。
係数選択部84は、遅延プロファイル補正部80において決定された遅延プロファイル窓範囲に応じて、周波数軸補間フィルタ部86にて伝送路特性の時間軸補間値を周波数軸補間するために、予め用意してあるフィルタ係数のセットを選択する。等化部88は、周波数軸補間フィルタ部86で伝送路特性の時間軸補間値をさらに周波数軸方向に補間した伝送路特性を使用してOFDMシンボルの振幅および位相成分を補正する。等化部88は、等化結果をデマッパ部90へ出力する。デマッパ部90は、等化結果に対して軟判定を実行する。その際、QPSKやQAMなどの変調方式や階層化方式等の情報が使用される。つまり、デマッパ部90は、OFDMシンボルを復調する。
以上の構成による受信装置100の動作を説明する。同期タイミング粗検出部54は、時間領域のOFDMシンボルに対して自己相関処理を実行し、相関値のピークを検出することによって、第1のシンボル同期タイミングを導出する。同期タイミング制御部56は、第1のシンボル同期タイミングもとにしたFFTウインドウをFFT部58に設定する。FFT部58は、時間領域のOFDMシンボルに対してFFTを実行することによって、周波数領域のOFDMシンボルを生成する。スキャッタードパイロット抽出部68、チャネル推定部70、時間軸補間部72、IFFT部74は、第1の遅延プロファイルを導出する。その後、同期タイミング制御部56は、第1のシンボル同期タイミングを前方にシフトすることによって第2のシンボル同期タイミングを導出し、第2のシンボル同期タイミングもとにしたFFTウインドウをFFT部58に設定する。
FFT部58、スキャッタードパイロット抽出部68、チャネル推定部70、時間軸補間部72、IFFT部74は、第2の遅延プロファイルを導出する。遅延プロファイル比較部78は、第1の遅延プロファイルでのエコーパスと第2の遅延プロファイルでのエコーパスとを比較し、遅延プロファイル補正部80は、エコーパスが先行波であるか遅延波であるかを決定する。さらに、遅延プロファイル補正部80は、決定内容をもとに遅延プロファイルを補正し、同期タイミング微調整部82は、補正した遅延プロファイルをもとに、シンボル同期タイミングを導出する。同期タイミング制御部56は、シンボル同期タイミングをFFT部58に設定する。
本発明の実施例によれば、第1のシンボル同期タイミングに対応したエコーパスと、第2のシンボル同期タイミングに対応したエコーパスとを比較することによって、シンボル同期タイミングを導出するので、先行波あるいは遅延波の特定の正確性を向上できる。また、先行波あるいは遅延波の特定の正確性が向上されるので、シンボル同期タイミングの正確性を向上できる。また、シンボル同期タイミングの正確性が向上されるので、受信特性を向上できる。また、エコーパスのパワーレベル差が大きければ、パワーレベルをもとに先行波あるいは遅延波を特定するので、特定の正確性を向上できる。
また、エコーパスのパワーレベル差が大きければ、タイミングをもとに先行波あるいは遅延波を特定するので、特定の正確性の悪化を抑制できる。また、先行波である場合、シンボル同期タイミングを可能な限り前方に設定するので、先行波を考慮したシンボル同期タイミングを設定できる。また、離散的なSP信号をもとに遅延プロファイルを生成する場合において、メインパスと先行波、あるいは遅延波の到着時刻のずれが、時間軸補間された伝送路特性のダウンサンプル率の半分を超えるような場合においても、正しく先行波、あるいは遅延波を特定できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、ベースバンド処理部16は、各遅延プロファイルに対してひとつのエコーパスを考慮している。しかしながらこれに限らず例えば、ベースバンド処理部16は、複数のエコーパスを考慮してもよい。その際、遅延プロファイル比較部78は、各エコーパスに対して、先行波であるか遅延波であるかを決定する。また、同期タイミング微調整部82は、複数のエコーを補正した後の遅延プロファイルに対して、シンボル同期タイミングを導出する。例えば、同期タイミング微調整部82は、最も前方に配置されているエコーパスをもとにシンボル同期タイミングを導出する。本変形例によれば、シンボル同期タイミングの導出精度を向上できる。
本発明の実施例において、同期タイミング制御部56は、第1のシンボル同期タイミングと第2のシンボル同期タイミングとをFFT部58に設定している。しかしながらこれに限らず例えば、同期タイミング制御部56は、3種類以上のシンボル同期タイミングをFFT部58に設定してもよい。本変形例によれば、さまざまなFFTウインドウにおけるエコーパス成分が導出されるので、シンボル同期タイミングを詳細に設定できる。
本発明の実施例において、同期タイミング制御部56は、第1のシンボル同期タイミングをGIだけずらすことによって、第2のシンボル同期タイミングを導出している。しかしながらこれに限らず例えば、同期タイミング制御部56は、GI以外の量だけ、第1のシンボル同期タイミングをずらすことによって、第2のシンボル同期タイミングを導出してもよい。本変形例によれば、第2のシンボル同期タイミングの設定の自由度を向上できる。
本発明の実施例において、時間軸補間部72において補間した伝送路特性は、IFFT部74に入力されている。しかしながらこれに限らず、時間軸補間部72において補間した伝送路特性は、周波数軸補間フィルタ部86において周波数軸補間された後、IFFT部74に入力されてもよい。その際、周波数軸補間フィルタ部86の係数選択には、遅延プロファイル導出段階では正確なパス分布が不明であるので、有効シンボル長896μsecの3分の1の±149μsecの範囲の帯域を通過させるフィルタ係数が採用される。本変形例によれば、ベースバンド処理部16の構成の自由度を向上できる。
本発明の実施例において、同期タイミング制御部56は、第1のシンボル同期タイミングをFFT部58に設定し、第1の遅延プロファイルが導出された後、第2のシンボル同期タイミングをFFT部58に設定する。つまり、第1のシンボル同期タイミングに対する処理と、第2のシンボル同期タイミングに対する処理とが、シリアルに実行される。しかしながらこれに限らず、FFT部58、スキャッタードパイロット抽出部68、チャネル推定部70、時間軸補間部72、IFFT部74等がふたつ備えられてもよい。このような構成によれば、第1のシンボル同期タイミングに対する処理と、第2のシンボル同期タイミングに対する処理とが、パラレルに実行される。同時に実行されるので、遅延プロファイル記憶部76が不要になる。また、同期タイミング制御部56は遅延プロファイル比較の段階において、ふたつのFFT部58に対して、第1のシンボル同期タイミングと第2のシンボル同期タイミングとを供給する。本変形例によれば、処理を高速化できる。また、同一シンボルにてエコーパスのパワーレベルを比較できるので、より正確に先行波、遅延波を判定できる。
10 アンテナ、 12 RF部、 14 AD部、 16 ベースバンド処理部、 18 制御部、 50 サンプリング補間部、 52 AFC部、 54 同期タイミング粗検出部、 56 同期タイミング制御部、 58 FFT部、 60 コンティニュアスパイロット信号抽出部、 62 SFO/CFOトラッキング部、 64 TPS信号抽出部、 66 TPS信号復号部、 68 スキャッタードパイロット抽出部、 70 チャネル推定部、 72 時間軸補間部、 74 IFFT部、 76 遅延プロファイル記憶部、 78 遅延プロファイル比較部、 80 遅延プロファイル補正部、 82 同期タイミング微調整部、 84 係数選択部、 86 周波数軸補間フィルタ部、 88 等化部、 90 デマッパ部、 100 受信装置。