JP4937647B2 - 銀担持ゼオライトを有効成分として含有する水稲種子消毒剤および該消毒剤による稲病害の防除方法 - Google Patents
銀担持ゼオライトを有効成分として含有する水稲種子消毒剤および該消毒剤による稲病害の防除方法 Download PDFInfo
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Description
5.2wt%等)する農園芸用殺菌剤が開示され、稲苗のイネもみ枯細菌病等の防除に効
果がある旨記載されている。
(i)銀濃度が25〜100ppmの上記銀担持ゼオライト含有懸濁液に、イネもみ枯細菌病菌液を添加して得られた液体に、水稲種子を32℃で24時間浸漬した後、育苗箱に播種し、発病程度を試験したこと;
(ii)イネ苗立枯細菌が含まれた菌液に水稲種子を浸漬し該細菌病を接種した後、この水稲種子を上記水中懸濁製剤に浸漬処理あるいは、この水稲種子に水中懸濁製剤を吹付け処理した後、育苗箱に播種し、32℃で2日間育苗して出芽させたのち、ハウスに移して育苗し、発病程度を試験したこと;
(iii)イネばか苗病に自然感染した籾に、上記(ii)の試験を行ったこと;などが記載されている。
また、これら公報には、実質上廃液が出ない処理方法については全く言及されていない。
17年10月11日発行)の第289〜290頁(非特許文献1)]。
れらの病害を防除することは健全な苗生産をするために極めて重要な課題である。種子伝染性病害の防除では、糸状菌性および細菌性病害を同時に防除する必要がある。しかしながら、細菌性病害の防除においては、従来、通常、無機系銅化合物を有効成分とする無機系銅種子消毒剤、有機系銅を有効成分とする有機系銅種子消毒剤、TMTD(チウラム)剤、オキソリニック酸剤およびカスガマイシン剤が広く使用されているが、これらの種子消毒剤には、イネ苗立枯細菌病などの細菌性病害の防除に対しては必ずしも十分でないか、ヒトや魚類、作物に対する安全性が不十分であるか、あるいは継続使用すると薬剤耐性菌が発生してしまい十分な防除効果が発揮できないなどの問題点がある。
いない。
しても高い防除効果を発揮し、作物に対する薬害安全性も高く、省力的かつ廃液のでない処理方法を可能とする新しい種子消毒剤および該消毒剤を用いた種子、特に水稲種子に対する病害の防除方法を提供することを目的としている。
本発明に係る水稲種子消毒剤は、その好適態様では、銀担持ゼオライト中の銀イオンの含有量が上記のように少なく、さらには、種子消毒剤中の銀担持ゼオライトの含有量も上記範囲にあると、特に水中浸種後に催芽処理して播種される、水中浸種後催芽処理前の水稲種子用として使用すれば、処理すべき廃液量が少なく環境への負荷が少なくでき、作業者の安全性に優れ、十分な防除効果が発揮される、作業の省略化・効率化に有効であるなどの点で好適である。
理された稲種籾を育苗箱に播種し、覆土することを特徴とする。
除できる。
また、本発明の種子消毒剤および処理方法によれば、稲に薬害を与えることもなく、従来の種子消毒に比べて薬液への浸漬、風乾などの作業も不要であり、これまでの種子消毒のように薬液に浸漬しないため種子消毒液の残液が生じないので廃液処理も不要であるなど、環境への安全性向上と作業の省略化を図ることができる。
[水稲種子消毒剤]
本発明に係る水稲種子消毒剤は、銀イオンを担持したゼオライトである「銀担持ゼオライト」を有効成分として含有するが、この銀担持ゼオライトは、(銀を担持していない)ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部又は全部を銀イオンで置換することにより得られる。
範囲内にあればよいが、好ましくは、両方の測定法による「銀担持ゼオライト中の銀イオンの含有量」が何れも上記範囲にあることが望ましい。
本発明に係る水稲種子消毒剤は、上記水稲種子消毒剤が稲病害の糸状菌性病害用または細菌性病害用として好適である。本発明に係る水稲種子消毒剤が好適に適用可能な糸状菌性病害としては、イネいもち病、イネばか苗病、イネごま葉枯病などが挙げられ、また細菌性病害としては、イネ苗立枯細菌病、イネもみ枯細菌病、イネ褐条病などが挙げられる。
(銀担持ゼオライト)
この水稲種子消毒剤に配合されている銀担持ゼオライトは、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部又は全部を銀イオンで置換等したものであるが、使用されるゼオライトとしては、天然ゼオライトおよび合成ゼオライトのいずれも用いることができる。ゼオライトは一般に三次元骨格構造を有するアルミノシリケートであり、一般式としてXM2/nO・Al2O3・YSiO2・ZH2Oで表示される。ここでMはイオン交換可能なイオン
を表し、通常は1又は2価の金属イオンである。nは(金属イオン)の原子価である。X
およびYはそれぞれの金属酸化物、シリカ係数、Zは結晶水の数を示している。
が、上記したように、通常0.1〜15重量%、さらには1〜10重量%であるものが好ましい。
(銀担持ゼオライトの調製)
上記銀担持ゼオライトは、例えば、以下の方法により製造される。
ことによって適宜制御することができる。例えば、銀担持ゼオライトの銀イオン含有量としては、前期水溶液中の銀イオン濃度を0.002M/リットル〜0.15M/リットルとすることによって、銀イオン含有量が0.1〜5%の銀担持ゼオライトを得ることができる。
乾燥は、常圧下で105℃〜115℃の温度に保持するか、または減圧(1〜30to
rr)下に70〜90℃の温度に保持して行うのが好ましい。
<水稲種子消毒剤の調製(製剤化方法)>
本発明の水稲種子消毒剤は、好適には上記製法で調製された銀担持ゼオライトを1種又
は2種以上用い、前述したような従来より公知の方法を適宜利用することにより調製でき
る。
例えば、固体担体としては、鉱物質粉末(例:カオリン、ベントナイト、クレー、タルク、けいそう土、シリカ、バーミュキュライト、炭酸カルシウムなど)、天然高分子(例:小麦粉、でんぷん、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチンなど)、糖類(例:グルコース、マルトース、ラクトース、シュークロースなど)、硫安、尿素などが挙げられる。
プロピレンブロックポリマー、ラウリル硫酸ナトリウムなどが使用される。
水和剤
例えば、水和剤では、上記銀担持ゼオライト100重量部に対して、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどの非イオン型界面活性剤を1〜1000重量部の量で、また、リグニンスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン型界面活性剤を1〜1000重量部の量で、ホワイトカーボン、クレーなどの固体担体、増量剤を1〜10000重量部の量で用い、各成分を一度に、あるいは任意の順序で少しずつ配合し、均一になるまで混合、粉砕することにより、所望の水和剤が得られる。
フロアブル剤
例えば、フロアブル剤では、上記銀イオン含量の上記銀担持ゼオライト100重量部に対して、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどの非イオン型界面活性剤を1〜1000重量部の量で、また、リグニンスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン型界面活性剤を1〜1000重量部の量で、キサンタンガムなどの増粘剤を0.1〜100重量部の量で、水を100〜10000重量部の量で一度に、あるいは任意の順序で少しずつ配合し、均一になるまで混合、分散することにより、所望のフロアブル剤が得られる。
[稲病害の防除方法]
本発明に係る稲病害の防除方法では、水中に浸種した後、上記何れかに記載の種子消毒剤にて粉衣処理、(該消毒剤(の薬液)にて)吹き付け処理あるいは塗抹処理の何れかの処理を行い、その後、そのままあるいは催芽処理し、次いで、処理された稲種籾を育苗箱に播種し、覆土することを特徴とする。
また、催芽処理条件としては、例えば、30〜32℃[例:32℃]×15〜18時間[例:15時間]程度が育苗初期の生育の勢いを確保するなどの点で望ましい。
以下、上記稲病害の防除方法についてさらに具体的に説明する。
で所定薬量を均一に吹き付ければよい。
稲種籾は水中に浸種することにより十分吸水(積算温度60〜100℃)させた後、次の方法により本発明の種子消毒剤で処理することが望ましい。
また吹き付け処理する場合は、消毒剤を水で1〜1000倍に希釈し、得られた薬液を上記の方法により種籾1kg当り1〜100ml、好ましくは10ml〜30mlの量を吹き付け処理する。
また、本発明の稲病害の省力防除方法は、上記の種子消毒剤をその他の殺菌剤、やその他の殺虫剤、植物成長調節剤、肥料などと混合して用いることができる。
[発明の効果]
本発明の稲病害の省力防除方法は、浸種後の稲種籾に、種子消毒剤を粉衣するか、該消毒剤の薬液を用いて、吹き付け処理するか、または塗抹処理するだけでよい。そのため、従来の薬液に浸漬して風乾する種子消毒法に比べて防除作業が簡単である。また種籾を薬液に浸漬しないし、消毒剤を処理した種籾を水に浸種することもない。そのため、廃液処理を必要とせず、環境汚染の心配がない。
成分により主要な種子伝染病害であるイネばか苗病、イネごま葉枯病、イネいもち病、イネ苗立枯細菌病、イネ褐条病、イネもみ枯細菌病、イネ苗立枯病(リゾプス等)などに対して効果的な防除が可能である。
次に、本発明に係る水稲種子消毒剤とその調製例、並びにこの消毒剤を用いた稲病害の省力防除方法の有用性を示すため好適な試験例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<種子消毒剤の調製例および試験例>
なお、実施例、試験例中で使用されている水稲種子消毒剤中の銀担持ゼオライトの銀イオン含有量は4.45重量%である。
(a)銀担持ゼオライトの調製
種子消毒効果および薬害試験に供した銀担持ゼオライト中の銀イオン含有量は5%であり、以下のようにして調製したものを用いた。
110℃で加熱乾燥したゼオライト粉末1kgに水を加えて、1.3リットルのスラリーとし、その後攪拌して脱気し、さらに適量の0.5N硝酸溶液と水とを加えて、pHを6.1に調整し、全容を1.8リットルのスラリーとした。
(b)水稲種子消毒剤の調製
[実施例1](水和剤)
上記銀担持ゼオライト(a1)50部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル2部、リグニンスルホン酸ナトリウム3部、ホワイトカーボン5部、クレー40部を準備し、これらを均一に混合し、粉砕して本発明の水稲種子消毒剤(水和剤)を得た。
[実施例2](水和剤)
上記銀担持ゼオライト(a1)50部、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル3部、リグニンスルホン酸ナトリウム5部、ホワイトカーボン10部、クレー32部を準備し、これらを配合して均一に混合し、粉砕して本発明の水稲種子消毒剤(水和剤)を得た。
[実施例3](水和剤)
上記銀担持ゼオライト(a1)50部、ポリオキエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー5部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、ホワイトカーボン10部、クレー33部を準備し、これらを均一に混合し、粉砕して本発明の水稲種子消毒剤(水和剤)を得た。
[実施例4](フロアブル剤)
上記銀担持ゼオライト(a1)45部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル1部、リグニンスルホン酸ナトリウム1部、キサンタンガム2%水溶液5部、水48部を準備し、これらをホモミキサーで均一に混合分散させ、フロアブル剤を得た。
[試験例]
<試験例1> (イネばか苗病防除効果試験)
イネばか苗病自然感染罹病籾〔品種「新潟早生」〕を15℃で6日間、水に浸種した。そして次の(a)〜(c)の何れかの方法によって稲種籾を種子消毒した。
(a)粉衣処理法は、浸種後の種籾150gと実施例に準じて調製した水和剤、あるいは市販の薬剤の所定薬量を、三角フラスコに入れて粉衣処理した。
(b)吹き付け処理法は、浸種後の種籾150gに対し、実施例に準じて調製した薬剤、
あるいは市販の薬剤を水で希釈し、所定濃度とした薬液4.5ml(種籾重量の3%相当量)が種籾に均一に付着するように小型エアースプレーヤーを用いて吹き付け処理した。(c)塗抹処理法は、浸種後の種籾150gと実施例に準じて調製した薬剤、あるいは市販の薬剤を水で希釈し、所定濃度とした薬液4.5ml(種籾重量の3%相当量)を、三角フラスコに入れ、種籾を薬液とよく混和させ、塗抹処理した。
従来の種子消毒方法による対照区の浸種前の種子消毒方法は、次の(a1)〜(c1)の何れかのように行った。
(b1)吹き付け処理法は、浸種前の種籾150gに対し、市販の薬剤を水で希釈し、所定濃度とした薬液4.5ml(種籾重量の3%相当量)が種籾に均一に付着するように小型エアースプレーヤーを用いて吹き付け処理した。
さらに、種子消毒時から播種時までの間に種子消毒に使用され、不要となった種子消毒廃液の量を計測し、また廃液中の有効成分濃度をHPLCにより測定した。
イネいもち病自然感染罹病籾〔品種「コシヒカリ」〕を15℃で6日間、水に浸種した。そして試験例1と同様の方法により稲種籾を種子消毒し、育苗管理した。
イネごま葉枯病開花期接種罹病籾〔品種「日本晴」〕を15℃で6日間、水に浸種した。そして試験例1と同様の方法により稲種籾を種子消毒し、育苗管理した。
除価(%)を算出した。また、薬害については、出芽程度、生育程度などについて観察し、前記の評価基準で薬害程度を示した。
供試籾としては、品種「キヌヒカリ」の開花期に、イネ苗立枯細菌病菌を噴霧接種して得た罹病籾を使用した。
同様の方法により稲種籾を種子消毒し、育苗管理した。
播種21日後に育苗箱の全苗について、著しい生育抑制あるいは枯死苗を発病指数3、第1葉白化苗および生育抑制苗を発病指数2とし、第2葉白化苗を発病指数1とし、下記
式[数5]により発病度を求め、防除価(%)を算出した。
程度を示した。
供試籾としては、品種「キヌヒカリ」の開花期に、イネもみ枯細菌病菌を噴霧接種して得た罹病籾を使用した。
と同様の方法により稲種籾を種子消毒し、育苗管理した。
播種21日後に育苗箱の全苗について、著しい生育抑制あるいは腐敗枯死苗を発病指数3、第1葉白化苗および生育抑制苗を発病指数2とし、第2葉白化苗を発病指数1とし、
式[数5]により発病度を求め、防除価(%)を算出した。
結果は表5に示す。
供試籾は、品種「キヌヒカリ」の開花期に、イネ褐条病菌を噴霧接種して得た罹病籾を使用した。
の方法により稲種籾を種子消毒し、育苗管理した。
播種21日後に育苗箱の全苗について、枯死苗あるいは第2葉での発病を発病指数3、第1葉での発病を発病指数2とし、不完全葉鞘での発病を発病指数1とし、式[数5]に
より発病度を求め、防除価(%)を算出した。
結果は表6に示す。
供試籾は、品種「キヌヒカリ」の開花期に、カスガマイシン耐性イネ褐条病菌、オキソリニック酸耐性イネ褐条病菌、オキソリニック酸耐性イネもみ枯細菌病菌をそれぞれ噴霧接種して得た罹病籾を使用した。
供試籾としては、稲籾(品種:コシヒカリ)でイネシンガレセンチュウ自然感染籾を用いた。
浸漬処理法では、所定濃度の薬液270mlに種籾150gを24時間浸漬したのち、15℃で6時間陰干した。この薬剤処理した籾を、種籾容量の2倍量の水道水に15℃で5日間浸種した。
播種28日後の苗を水田に移植し、常法により約3ヶ月間栽培した。収穫期に慣行の方法により収穫した。
結果を表8に示す。
各銀担持ゼオライトを浸種後(15℃×6日間)の種籾に所定量粉衣処理した。これを32℃×15時間催芽処理を行い育苗箱に播種した。
結果を表9に示す。
次に、各銀担持ゼオライトの希釈液中の銀イオン濃度を表10に示す。
(試験方法)
各銀担持ゼオライトを各希釈倍数の溶液になるように水で希釈した。攪拌後2時間静置し、比色法により溶液中の銀イオン濃度を分析した。
Claims (6)
- ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部又は全部を銀イオンで置換することにより得られ、得られた銀担持ゼオライト中の銀イオンの含有量[測定法:「原子吸光法」又は「蛍光X線法」]が0.1〜15.0重量%である銀イオンを担持した銀担持ゼオライトを有効成分として含有する水稲種子消毒剤。
- 上記消毒剤中の銀担持ゼオライトの含有量が10〜70重量%である請求項1に記載の水稲種子消毒剤。
- 上記消毒剤が稲病害の糸状菌性病害用、細菌性病害用または線虫による病害用である請求項1〜2の何れかに記載の水稲種子消毒剤。
- 上記消毒剤が、水中浸種後であって催芽処理前の水稲種子用である請求項1〜3の何れかに記載の水稲種子消毒剤。
- 水中に浸種し吸水させた後、請求項1〜4の何れかに記載の種子消毒剤にて粉衣処理、該消毒剤の薬液にて吹き付け処理あるいは塗抹処理の何れかの処理を行い、その後、必要により催芽処理し、次いで、処理された稲種籾を育苗箱に播種し、覆土することを特徴とする稲病害の防除方法。
- 上記稲病害が糸状菌性病害、細菌性病害または線虫による病害である請求項5に記載の稲病害の防除方法。
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