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JP4922739B2 - 酸素濃縮装置 - Google Patents

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Description

本発明は空気中の酸素を分離濃縮し使用者に供給する酸素濃縮装置に関する。さらに詳細には真空圧力変動吸着型酸素濃縮装置の吸着床圧力に基づいて運転条件を最適化し、長期耐久性を有する装置を提供するものである。
近年、肺気腫、肺結核後遺症や慢性気管支炎などの慢性呼吸器疾患に苦しむ患者が増加する傾向にあるが、かかる患者に対する治療方法として、高濃度酸素を吸入させる酸素吸入療法が行われている。酸素吸入療法とは前記疾病患者に対して酸素ガス若しくは酸素濃縮気体を吸入させる治療法である。治療用の酸素ガス或いは濃縮酸素気体の供給源としては、高圧酸素ボンベ、液体酸素ボンベ、酸素濃縮装置等の使用が挙げられるが、長時間の連続使用に耐えることができ、また使い勝手がよいなどの理由により、酸素濃縮装置を使用するケースが増加している。
酸素濃縮装置は空気中の酸素を分離し、濃縮することを可能にした装置である。かかる酸素を分離濃縮する装置としては、90%以上の高濃度の酸素が得られるという観点で、空気中の窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を1個或いは、複数の吸着床に充填した吸着型酸素濃縮装置が広く知られ使用されている。その中でも圧力変動装置としてコンプレッサを用いた圧力変動吸着型酸素濃縮装置が広く世の中に広まっている。かかる装置は通常窒素を選択的に吸着する吸着剤を充填させた1個或いは複数の吸着床に対して、少なくとも、コンプレッサから圧縮空気を供給し、吸着床内を加圧状態にして窒素を吸着させ、未吸着の高濃度の酸素を得る吸着工程と、吸着床内を減圧して窒素を脱着させる脱着工程を有し、これを一定サイクルで繰り返すことで、高濃度の酸素を得る装置である。圧力変動吸着法には、吸着した窒素成分を取り除き吸着剤を再生させる脱着工程を大気圧まで行うPSA:Pressure Swing Adsorption法や、真空ポンプで吸着床を真空まで減圧させるVPSA:Vacuum Pressure Swing Adsorption法がある。また、吸着床を加圧するために必要な動力の削減や、得られる酸素の純度の向上を図るため、吸着工程と脱着工程の間に、2個の吸着床を配管で接続することにより、両吸着床の圧力を均等化する均圧工程を行う場合もある。
酸素濃縮装置の使用温度や気圧変動など使用する環境条件変化に伴う酸素濃度低下や、機器の経時劣化の伴う酸素濃度の低下に対応するため、コンプレッサの供給空気量の設定範囲を微調整し、また周囲環境変化を許容して濃度が維持できる均圧時間を含む吸脱着シーケンスを補正する方策が採られる。このような生成酸素濃度の経時的変化や、装置の経時劣化に伴う酸素濃度低下を補償し、酸素濃度を一定値に保持するため、酸素濃縮気体の酸素濃度を酸素センサで、吸着床圧を圧力センサで検知し、コンプレッサ風量や吸脱着のサイクルタイムなどをフィードバック制御することで製品酸素濃度を維持する装置が知られている。
特開2005-110994号公報 特開2000-210525号公報 特開平11-239709号公報 特開2004-358324号公報 特許第2777025号公報 特開2006-8464号公報
これまでの圧力変動吸着方式による酸素生成技術では、想定される使用環境が様々であること、酸素生成に関連する因子が多いことから、以下のような運転制御因子により吸着プロセスの制御が行われてきた。
均圧弁を操作因子とした技術として、特開2005-110994号公報、特開2000-210525号公報に記載された技術が挙げられる。特開2005-110994号公報には、均圧弁開時間の数式が記載されている。この技術は、一意に決めることが難しいとされる均圧弁開時間を簡易化し、運転の効率化を達成するとしている。一方、運転パターンとして、特開2005-110994号公報には吸着時間の直後に、特開2000-210525号公報には吸着時間の直前に均圧弁を開くとされており、どちらに均圧時間を取ることによっても効率化を図ることができる旨が両文献に記載されている。
また均圧弁による別の制御方法として、最大圧力PMと最小圧力Pmの制御を挙げている技術が特開平11-239709号公報に記載されている。運転においては、比PM/Pmが小さくなると必要なエネルギーが下がるという記載がある。つまり運転の目的としては、PMは小さく、Pmは大きくなるようにするということになる。この目的の達成を均圧弁開時間制御により実施するとしている。
温度や吸気経路の目詰まりを制御因子とした先行技術は、特開2004-358324号公報に記載がある。本発明では、装置本体内の温度を計測することにより、また吸気径路の目詰まりの場合には同部位に設けた圧力センサによって計測することにより異常を検知する。この装置ではいずれの異常に対しても冷却用送風手段・酸素富化手段のどちらかまたは両方の消費電力を上げることで、酸素供給量を確保するとしている。
一方、情報の取得という点では、特許第2777025号公報において、PSA操作において高圧側圧力センサと低圧側圧力センサを具備させることにより、操作状態を判定する技術が開示されている。同文献では圧力センサは常時監視するわけではないが、脱着への切り替え直前(最も吸着床内圧が高まっているとき)に高圧側圧力センサが作動し、吸着への切り替え直前(最も吸着床内圧が低下しているとき)に低圧側圧力センサが作動するとしている。同文献ではかかる技術を採用することで異常検知が可能だとしており、また異常の予報にもつながるとされている。ところが、センサによる情報を活用した異常への動作は示されておらず、また同センサによるセンシング値の記憶及びその使用についてはなんら明記されていない。
ところで特開2006-8464号公報には、吸着床の劣化状況がその運転状態、特に運転開始時における水分により吸着床毎に変わると示唆されている。このことは、吸着床毎に最適な運転状況が時々刻々と変わっていくことを示唆している。
これら従来の技術から、運転中の各パラメータは最初に決めた運転で動かすだけでは必ずしも最適な状態ではなく、むしろ運転は次第に最適な状態からずれていってしまうことが示唆される。また、こうした運転状態の変化を確認する因子の1つに圧力の状態があるが、この圧力の状態を利用して運転状態を常に最適に実施する例は従来の技術では開示されていない。
本発明は上記の課題を解決するものであり、各吸着床の吸着ピーク圧及びボトム圧を検知することで吸脱着シーケンスを制御し、最適の運転状態に制御する酸素濃縮装置を提供する。
すなわち本発明は、酸素よりも窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を充填した複数の吸着床と、該吸着床へ空気を供給する空気供給手段、該空気供給手段からの空気を該吸着床へ供給し濃縮酸素を取出す吸着工程、該吸着床を減圧し吸着剤を再生する脱着工程を一定タイミングで繰り返すための流路切替手段を具備した圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、該流路切替手段の切替えに伴う各吸着床のピーク圧及び/又はボトム圧を測定する圧力センサを備えることを特徴とする圧力変動吸着型酸素濃縮装置を提供する。
また本発明は、該空気供給手段と該吸着床を繋ぐ導管または該吸着床からの脱着排気を放出する導管途中に該圧力センサを備え、該流路切替手段の切替えに伴う各吸着床のピーク圧及び/又はボトム圧を測定することを特徴とするものであり、特に該空気供給手段が、加圧・真空の2つの機能を備えたコンプレッサであり、該コンプレッサの加圧供給出口と該吸着床を繋ぐ導管および該吸着床と該コンプレッサの真空側入口を繋ぐ導管途中に圧力センサを備え、該流路切替手段の切替えに伴う各吸着床のピーク圧及び/又はボトム圧を測定することを特徴とする圧力変動吸着型酸素濃縮装置を提供する。
また本発明は、かかる各吸着床のピーク圧またはボトム圧を比較する比較手段を備え、比較結果に基づいて該流路切替手段の切替時間を制御する制御手段を備えることにより、各吸着床の吸脱着時間を独立または相対的に調整し、または運転パターンの調整を行なうことを特徴とする圧力変動吸着型酸素濃縮装置を提供する。
本発明の圧力変動吸着型酸素濃縮装置は、吸着時の圧力スイングの状態を、吸着圧ピーク値・ボトム値を記録することにより吸着剤及びその他の装置の状態を把握することができる。また、圧力ピーク値・ボトム値を元に運転条件(吸着シーケンス)を調整し、可能な範囲での生成酸素濃度の低下を抑制し、メンテナンス間隔の長期化を測ることができる。
吸着圧に基づいて運転条件を調整することにより、性能が低下した吸着床の劣化進行を抑制することが期待でき、さらに吸着床ごとに吸着圧を把握することができるため、多筒式の吸着方式であっても、それぞれの吸着床のピーク圧・ボトム圧を把握することが可能であり、運転条件の調整をすることができる。
本発明の圧力変動吸着型酸素濃縮装置の実施態様例を、以下の図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態である圧力変動吸着型酸素濃縮装置を例示した概略装置構成図である。圧力変動吸着型酸素濃縮装置は、外部空気取り込みフィルタ、コンプレッサ、切替弁(三方電磁弁1及び電磁弁2)、吸着床A,B、逆止弁、製品タンク、調圧弁、流量設定手段(CV)、加湿器およびフィルタを備える。これにより外部から取り込んだ原料空気から酸素ガスを濃縮した酸素富化空気を製造することができる。
先ず、外部から取り込まれる原料空気は、塵埃などの異物を取り除くための外部空気取り込みフィルタなどを備えた空気取り込み口から取り込まれる。このとき、通常の空気中には、約21%の酸素ガス、約77%の窒素ガス、0.8%のアルゴンガス、水蒸気ほかのガスが1.2%含まれている。かかる装置では、呼吸用ガスとして必要な酸素ガスのみを濃縮して取出す。
この酸素ガスの取出しは、原料空気を酸素ガス分子よりも窒素ガス分子を選択的に吸着するゼオライトなどからなる吸着剤が充填された吸着床A,Bに対して、三方弁の電磁弁1、電磁弁2によって、対象とする吸着床A、Bを順次切替えながら、原料空気をコンプレッサにより加圧して供給し、吸着床内で原料空気中に含まれる約77%の窒素ガスを選択的に吸着除去する。
前記の吸着床A,Bとしては、前記吸着剤を充填した円筒状容器で形成され、通常、1筒式、2筒式の他に3筒以上の多筒式が用いられるが、連続的かつ効率的に原料空気から酸素富化空気を製造するためには、2筒以上、多筒式の吸着床を使用することが好ましい。また、前記のコンプレッサとしては、揺動型空気圧縮機が用いられるほか、スクリュー式、ロータリー式、スクロール式などの回転型空気圧縮機が用いられる場合もある。また、このコンプレッサを駆動する電動機の電源は、交流であっても直流であってもよい。
前記吸着床A,Bで吸着されなかった酸素ガスを主成分とする酸素富化空気は、吸着床へ逆流しないように設けられた逆止弁を介して、製品タンクに流入する。
なお、吸着床内に充填された吸着剤に吸着された窒素ガスは、新たに導入される原料空気から再度窒素ガスを吸着するために吸着剤から脱着させる必要がある。このために、コンプレッサによって実現される加圧状態から、電磁弁1,2により減圧状態(例えば大気圧状態又は負圧状態)に切替え、吸着されていた窒素ガスを脱着させて吸着剤を再生させる。この脱着工程においてその脱着効率を高めるため、吸着工程中の吸着床の製品端側から酸素富化空気を、均圧弁を介してパージガスとして逆流させるようにしてもよい。
原料空気から酸素富化空気が製造され、製品タンクへ蓄えられる。この製品タンクに蓄えられた酸素富化空気は、例えば95%といった高濃度の酸素ガスを含んでおり、調圧弁や流量設定手段(コントロールバルブCV)などによってその供給流量と圧力とが制御されながら、加湿器へ供給され、加湿された酸素富化空気が患者に供給される。
かかる加湿器には、水分透過膜を有する水分透過膜モジュールによって、外部空気から水分を取り込んで乾燥状態の酸素富化空気へ供給する無給水式加湿器や、水を用いたバブリング式加湿器、或いは表面蒸発式加湿器を用いることが出来る。
流量設定手段CVの設定値を検知し、制御手段によりコンプレッサの電動機の回転数を制御することで吸着床への供給風量を制御する。設定流量が低流量の場合には回転数を落とすことで生成酸素量を抑え、且つ消費電力の低減を図る。
真空排気ラインである電磁弁2とコンプレッサの真空側の導管途中に圧力センサを備え、脱着時の吸着床A,Bの吸着床内圧を計測する。圧力データとしては、図2に示すように吸着床A,Bの各吸着シーケンス中の圧力ピーク値・ボトム値を記録する。このピーク値・ボトム値は圧力の移動平均データを用いて算出し、記録する。最大値・最小値は、その半シーケンスの最後に確定し、その次のシーケンス中ホールドする。例えば、図2の1Aシーケンス中のピーク値・ボトム値は1Aシーケンスの最後に確定し、1Bシーケンスの間ホールドする。1Bシーケンスの最後では、1Bシーケンスのピーク値・ボトム値で更新する。
通常、吸着床Aの圧力変動と吸着床Bの圧力変動は同じ一定値を示す。しかし、取得した圧力ピーク値・ボトム値が変動し場合、吸着床Aと吸着床Bの間でピーク値とボトム値に差が生じた場合は、表1に示す装置状態・故障となっていることが考えられる。
Figure 0004922739
このうち、圧力ピーク値が上昇した場合には吸着剤の劣化、下降した場合にはコンプレッサ性能の低下が予測され、運転条件の変更により故障モード・装置状態変化による装置性能低下を補う。それぞれの値の変動により、以下のとおり運転条件(吸着シーケンス)の調整を行う。
(1) 記録していた装置の圧力ピーク値が高い吸着床の吸着時間を短くする。
(2) 記録していた装置の圧力ピーク値が高い吸着床の脱着時間を長くする。
(3) 記録していた装置の圧力ピーク値が高い吸着床のパージ時間を長くする。
(4) 記録していた装置の圧力ピーク値が低い吸着床のパージ時間を短くする。
また、吸着床Aと吸着床Bの間でピーク値に差が生じた場合には、起動・終了シーケンスにおいて、以下のとおり運転条件(吸着シーケンス)の調整を行う。
(5) 記録していた装置の圧力ピーク値が高い吸着床のパージを先に行う。
(6) 記録していた装置の圧力ピーク値が高い吸着床のパージ時間を長くする。
吸着ピーク圧、吸着ボトム圧を記録するタイミングとしては、運転中1時間毎や、通算運転の中での吸着ピーク圧の最高値、警報発生時に記録する。
酸素濃縮器に用いられている圧力変動吸着方式において、吸着材が封入されている吸着床の一次圧(吸着圧)の情報は、吸着プロセスの状態を把握する上で重要なものである。特に、吸着工程1サイクルにおける吸着圧のピーク値・ボトム値は、吸着プロセスにおいては吸着剤の状態を知ることができ、また吸着系システムの故障を把握するために特に重要な情報である。装置の長期的運転状況を把握するために、通算運転で最も高い吸着圧を記録したときの運転状態、また、3日間運転の1時間毎のピーク・ボトム圧と運転状態を記録することにより、各吸着床毎の劣化状況が把握でき、点検の必要性有無の判断が容易になる。
さらに、各吸着床の吸着ピーク・ボトム圧により、吸着プロセスを変更することにより、吸着剤の劣化の進行抑制、またコンプレッサの運転条件変更と組み合わせることにより、製品酸素濃度の低下と、それに伴う警報発生を防止することができる。それにより、メンテナンス周期の長期化を図ることができる。
本発明の圧力変動吸着型酸素濃縮装置の実施態様例を示す概略フロー図。 本発明の圧力変動吸着型酸素濃縮装置の吸脱着シーケンスと圧力変化図。

Claims (7)

  1. 酸素よりも窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を充填した複数の吸着床と、該吸着床へ空気を供給する空気供給手段、少なくとも該空気供給手段からの空気を該吸着床へ供給し濃縮酸素を取出す吸着工程および該吸着床を減圧し吸着剤を再生する脱着工程を含む圧力変動吸着プロセスを一定タイミングで繰り返すための流路切替手段を具備した圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、該流路切替手段の切替えに伴う各吸着床のピーク圧及び/又はボトム圧を測定する圧力センサを備えることを特徴とする圧力変動吸着型酸素濃縮装置。
  2. 該空気供給手段と該吸着床を繋ぐ導管または該吸着床からの脱着排気を放出する導管途中に該圧力センサを備え、該流路切替手段の切替えに伴う各吸着床のピーク圧及び/又はボトム圧を測定することを特徴とする請求項1記載の圧力変動吸着型酸素濃縮装置。
  3. 該空気供給手段が、加圧・真空減圧の2つの機能を備えたコンプレッサであり、該コンプレッサの加圧供給出口と該吸着床を繋ぐ導管および該吸着床と該コンプレッサの真空側入口を繋ぐ導管途中に圧力センサを備え、該流路切替手段の切替えに伴う各吸着床のピーク圧及び/又はボトム圧を測定することを特徴とする請求項1または2に記載の圧力変動吸着型酸素濃縮装置。
  4. 各吸着床のピーク圧またはボトム圧を比較する比較手段を備え、比較結果に基づいて該流路切替手段の切替時間を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧力変動吸着型酸素濃縮装置。
  5. 該流路切替手段の切替時間が、ピーク圧が高い吸着床ほど吸着工程の時間が短くなるように制御されることを特徴とする請求項4記載の圧力変動型酸素濃縮装置。
  6. 該吸着工程及び該脱着工程の間に、吸着工程後の吸着床と脱着工程終了後の吸着床を接続する均圧工程を備え、該流路切替手段の切替時間が、ピーク圧が高い吸着床ほど吸着工程後の均圧工程の時間がくなるように制御されることを特徴とする、請求項4〜5いずれか記載の圧力変動吸着型酸素濃縮装置。
  7. 該流路切替手段が、運転開始時にピーク圧が高い吸着床の吸着工程から均圧を行なうことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の圧力変動型酸素濃縮装置。
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