JP4919298B2 - 高送り加工用刃先交換式回転工具 - Google Patents
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Description
また、図8は図4に示すインサートにおけるホーニング部のC−C線の断面図を示す。図8に示すように、繋ぎ部近傍におけるU字溝の横幅(mm)をUW、該U字溝どうしの間の該すくい面の幅(mm)をRWとしたとき、0.3≦RW≦0.35、1.5≦RW/UW≦2.0、であることが好ましい。繋ぎ部近傍の工具外周側のすくい面におけるUW値、RW値を上記の範囲に設定することにより、工具外周側のすくい面摩耗の進行に悪影響を及ぼさない範囲で切削抵抗の低抵抗化を図ることができる。RW値が0.3未満、或いはRW/UW値が1.5未満では、切屑との接触面積が減少して切削抵抗の低減化をもたらすが、その反面、すくい面の摩耗の進行が顕著となり、切刃の耐欠損性を劣化させることになる。一方、RW値が0.35を超えて長く、或いはRW/UW値が2.0を超えて大きいときは、すくい面の摩耗の進行が抑制され、切刃の耐欠損性を維持することができるが、切屑との接触面積の低減化が不十分のため切削抵抗の低減化を得ることができない。
U字溝のUH値は、UH≧1であることが好ましい。この理由は、UH値が1未満ではU字溝が短すぎて切屑接触面積の低減が十分でないため、切削抵抗の低抵抗化に有効とはならないからである。ここでUH値の上限値はすくい面の形態によって決定されるため、特に定めない。
UL値は、0.45≦UL≦0.8であることが好ましい。この理由は、切屑がすくい面と接触する領域を配慮し、U字溝がすくい面摩耗の進行に悪影響を及ぼさない範囲で切削抵抗の低抵抗化を図ることができるからである。UL値が0.45未満では、U字溝の開始位置が切刃に近すぎるため、すくい面の摩耗進行が早くなり、耐欠損性を劣化させてしまう。一方、ULが0.8を超えて長いときは、切削抵抗の低抵抗化に有効とはならないのである。
また、U字溝のピッチ(mm)をUPとしたとき、UP値が回転工具最下点から繋ぎ部に向かって漸次増加するように変化させることによって、切削時の低抵抗化と耐欠損性とのバランスが好適となる。しかも、UP値が回転工具最下点から繋ぎ部に向かって漸次増加するように変化すれば、工具外周側のU字溝数を工具最下点と比較して少なくすることになり、工具外周側のすくい面摩耗の進行を遅延させることにも有効であり、切削抵抗の低減化と切刃の耐欠損性のバランスがとれるのである。逆に、繋ぎ部近傍のUP値を比較的幅狭く設定すると、U字溝の存在密度が大きくなってすくい面の面積が減少する。すると切屑との接触面積がより小さくなり切削抵抗の低減化が図れるものの、すくい面の摩耗が進行してしまい、切刃の耐欠損性を損なうことになってしまう。一方、すくい面における回転工具最下点近傍のUP値を小さく設定することは、U字溝の存在密度を大きくして更に切削抵抗の低減化に有効となる。最下点近傍では切屑厚さも薄く、すくい面の摩耗の進行が遅いため、UP値を小さく設定することの方が有効である。
また、U字溝の深さをdとしたとき、d値は1mmより深くなるとインサートの強度が不足し、特に高送り加工に於いては切刃に大きな負荷がかかり破損し易くなる為、d値は1mm以下に設定するのが好ましい。また、刃先強度を維持するため、d値は最下点から繋ぎ部に向かって漸次減少することが好ましい。また、本願発明の第2の形態として、図9に略3角形をした3箇所の主切刃を設けたものを示す。これらについても、本願発明と同様な効果を得ることができる。
本発明例1のインサートを工具径63mmの切削工具本体に1個装着した1枚刃で切削抵抗測定の評価を行った。切削抵抗の評価は、被削材として平坦な加工面のS50C材を使用して10分間の切削を行ない、切削抵抗値が従来例23と比較して10%以上低下したものを、効果ありと判断した。
次に、被削材として、図10に示す径6mmの孔が多数形成されたS50C材を使用し、強断続切削による高送りの平面削り加工を60分間行ない、耐欠損性の評価を行なった。この耐欠損性の評価試験では、インサートを5個用い、切削工具本体に1個装着した1枚刃で60分間の切削を5回行なって評価した。評価は、60分間の切削において切刃の欠損の有無を評価した。本発明例2から17、比較例18から22、従来例23のインサートについても本発明例1と同様に評価した。結果は、60分間の切削で5個中全てが欠損すること無く加工が可能であったものは○印、5個中1個でも欠損が発生したものは×印で示した。本発明例1から17、比較例18から22、従来例23のH1値、H1/H2値、F1値、F1/F2値、すくい面のU字溝の条件、評価結果を表1に示す。
(試験条件)
加工方法:平面削り、乾式切削加工
切削速度Vc:120m/分
回転数n:606min−1
1刃当りの送り量fz:1.5mm/刃
軸方向切込み量ap:1.5mm
径方向切込み量ae:40mm
工具突出し長さ:250mm
また、本発明例1から17の中で比較すると、本発明例1、2、4から17はすくい面に複数のU字溝を設けたため、16.6%以上の切削抵抗低減を達成できた。しかし本発明例3は、U字溝を設けなかったため、切削抵抗低減率は14%に留まった。U字溝を設けることは、切削抵抗低減にとって有効であった。本発明例1、4から6の4種を用いて、RW値の比較をした。本発明例4はRW値が0.25のため切削抵抗低減率は20.6%と最も良好であったが、すくい面の観察において4種の中でも、摩耗進行が最も進んでいた。本発明例6はRW値が0.4のため摩耗進行は少なかったが、切削抵抗低減率は17.9%に留まった。本発明例1、5はRW値が0.3から0.35のため、摩耗進行が抑えられつつ高い切削抵抗低減率が得られ、両者のバランスが良好であった。本発明例1、7から9の4種を用いて、RW/UW値の比較をした。本発明例7はRW/UW値が1.0のため切削抵抗低減率は20.3%となったが、すくい面の摩耗進行が観察された。本発明例9はRW/UW値が2.5のため摩耗進行は少なかったが、切削抵抗低減率は16.6%に留まった。本発明例1、8はRW/UW値が1.5から2のため、摩耗進行が抑えられつつ高い切削抵抗低減率が得られ、両者のバランスが良好であった。本発明例1、10から12の4種を用いて、UH値の比較をした。本発明例10はUH値が0.5のため切削抵抗低減率は18.3%に留まったが、本発明例1、11、12はUH値が1.0以上であったため切削抵抗低減率は19.1%以上となり、優れていた。本発明例1、13から15の4種を用いて、UL値の比較をした。4種とも、同一の切削抵抗の低減率を示したが、本発明例13から本発明例1、14、15へとUL値の小さい順により大きなすくい面の摩耗進行が観察された。本発明例1、16、17の3種を用いて、H1値、H1/H2値を同じ条件のとして、F1値、F1/F2値を変化させたときの切削抵抗を比較した。フラットランド幅が広くなるに従って切削抵抗は増大した。特に、本発明例1、16との差は25Nであった。また、本発明例2、16を用いて、F1値、F1/F2値を同じ条件のとして、H1値、H1/H2値を変化させたときの切削抵抗を比較すると、両者の差は30Nであった。従って、切削抵抗の低減化には、ネガホーニング幅の影響の方が大きいと考えられる。
一方、比較例21、22は、夫々H1/H2値が0.6、0.75、F1/F2値が0.6、0.75と大きく、工具の最下点近傍ではネガホーニング幅の中で切削している範囲が長い為、目標とした切削抵抗10%低減は達成出来なかった。更に、比較例21、22は切削中にビビリ振動が発生した。特に、工具突出し長さが250mmと長い条件の場合にはビビリ振動の発生が顕著となり、主切刃に欠損を誘発した。更に機械の主軸を傷めてしまう為、試験に使用した主軸出力が15kWのBT50主軸の工作機械では、高能率な高送り加工が出来なかった。
次に、主切刃の耐欠損性の評価では、切削時間60分まで加工するまでの間、夫々の欠損の有無を確認した。試験の結果を表1に併記した。表1より、本発明例1から17と比較例21、22は、60分間の切削で5個中全てが欠損すること無く加工することが可能であったたため○印で示した。しかし、比較例18は5個中5個全てが60分間加工出来ずに折損が発生した。各インサートの切削時間は、37分、40分、50分、43分、49分であった。同様に、比較例19は5個中4個が、また比較例20は5個中2個が60分間加工出来ずに欠損が発生した。5個中1個でも欠損が発生したものは、×印で示した。試験後に切刃の観察を行なった所、欠損が発生した場所は、主切刃の最下点付近であったことから、欠損の原因は、最下点のネガホーニング幅、フラットランド幅が共に小さいことにより、刃先強度が不足している為であると考えた。このことより、耐欠損性を維持するためには、H1値、F1値は0.03mm以上が必要である。特に、最下点付近の切屑厚みは約0.06mmとなることから、H1値は切屑厚みの約半分以上あれば耐欠損性が確保出来る。以上の試験結果により、切削抵抗と耐欠損性との2項目の総合評価において本発明例1から17は良好な結果を示し、耐欠損性を損なうこと無く切削抵抗の低減化を可能した。
2:インサート
3:インサート取付け孔
4:クランプねじ
5:コーナー刃
6:主切刃
7:外周刃
8:主切刃の最下点
9:主切刃とコーナー刃との繋ぎ部
10:最下点8と繋ぎ部9とを結んだ線分の垂直2等分線と主切刃との交点
11:インサート底面
12:すくい面
13:逃げ面
14:切込み深さapにおける主切刃上の点
15:ネガホーニング
16:U字溝
17:フラットランド
18:U字溝どうしの間のすくい面
H1:ネガホーニング幅
H2:ネガホーニング幅
F1:フラットランド幅
F2:フラットランド幅
UP:U字溝のピッチ
UW:U字溝の横幅
UH:U字溝の縦方向長さ
UL:主切刃の稜線部からU字溝端までの長さ
RW:U字溝どうしの間のすくい面の幅
R:主切刃の半径
T1:切屑厚み
T2:切屑厚み
Claims (3)
- 着脱可能なインサートを用いた高送り用刃先交換式回転工具において、該インサートはすくい面と逃げ面との稜線部を切刃とし、該切刃は、コーナー刃と該コーナー刃を挟んで主切刃と外周刃とを備え、該主切刃における回転工具最下点と該主切刃と該コーナー刃との繋ぎ部を結んだ線分が工具回転軸の垂線となす角度(度)をθとしたとき、5≦θ≦30であり、該主切刃は該線分に対して工具回転軸と垂直な方向に凸形状であり、該すくい面には該主切刃に対して略垂直な方向で内向きに該主切刃の稜線部からネガホーニング、フラットランド、ブレーカ溝を有し、該最下点における該ネガホーニングの幅(mm)をH1、該フラットランドの幅(mm)をF1、該繋ぎ部における該ネガホーニングの幅(mm)をH2、該フラットランドの幅(mm)をF2、としたとき、ネガホーニング幅とフラットランド幅とが該最下点から該繋ぎ部に向かって漸次増加し、0.03≦H1≦0.1、0.15≦H1/H2≦0.5、0.03≦F1≦0.1、0.15≦F1/F2≦0.5、であることを特徴とする高送り加工用刃先交換式回転工具。
- 請求項1に記載の高送り用刃先交換式回転工具において、該ブレーカ溝には、該主切刃に対して略垂直な方向で内向き方向に縦長に形成された複数のU字溝を有し、該U字溝どうしの間にはすくい面を有することを特徴とする高送り加工用刃先交換式回転工具。
- 請求項2に記載の高送り用刃先交換式回転工具において、該繋ぎ部における該U字溝どうしの間の該すくい面の幅(mm)をRW、該U字溝の横幅(mm)をUW、縦方向長さ(mm)をUH、該主切刃の稜線部から該U字溝端までの長さ(mm)をUL、としたとき、0.3≦RW≦0.35、1.5≦RW/UW≦2.0、UH≧1、0.45≦UL≦0.80、であることを特徴とする高送り加工用刃先交換式回転工具。
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