本発明は、光ファイバ通信用光源および光計測用光源として用いられる半導体導波路素子およびその作製方法ならびに半導体レーザに関し、特に、光通信における光波長(周波数)多重システム用波長可変光源、および広帯域波長帯をカバーする光計測用波長可変光源に好適なものである。
通信情報量の増大に対して、光波長(周波数)多重通信システムの研究が行われているが、送信用光源および同期検波用可同調光源として広範な波長調整機能が要求されており、また、光計測の分野からも広域波長帯をカバーする波長可変光源の実現が望まれている。
これまでに、種々の可変波長光源が研究されてきたが、それらを大別すると、1つの発振モードで連続的に波長が変わるものと、モード跳びを伴って不連続に波長が変わるものとに分けることができる。実際のシステムへの応用を考えた場合、制御性の面から、連続的に波長が変わるものの方が好ましい。また、波長変化を制御するために、温度を変化させて屈折率を制御するものと、電流注入による屈折率変化を用いるものの二つが主に使われているが、波長変化速度を考えると、電流注入による屈折率変化を用いた方が速い波長切り替えが可能である。
電流注入による屈折率変化を用いて連続的に発振波長を変化させることができる半導体レーザとしては、分布反射型レーザ(DBRレーザ)や二重導波路レーザ(TTGレーザ)などが研究されており、連続波長可変幅としてDBRレーザでは、4.4nm、TTGレーザでは7nmという値が報告されている。近年では、DBRレーザのモード跳びを押えるために、活性層領域を短くした、いわゆる短共振器DBRレーザも研究されている。
モード跳びをともなった不連続な波長可変幅としては、DBRレーザでは10nmという値が得られている。また、不連続ではあるが広い波長可変幅が得られる半導体レーザとして、Y分岐レーザ、超周期構造回折格子レーザなどが試作され、50nm〜100nmの波長可変幅が得られている。
しかし、上記従来技術においては、次のような問題があった。
TTGレーザでは、光の増幅作用を行う活性導波路層に電流注入してレーザ発振動作を生じさせ、該活性導波路層のすぐ近くに形成される波長制御用非活性導波路層に独立に電流注入することにより、発振波長を変化させる。ここで、回折格子の周期をΛ、導波路の等価屈折率をnとすれば、ブラッグ波長λbは、以下に示す(1)式で表される。
λb=2nΛ ・・・(1)
レーザは、このブラッグ波長近傍の1つの共振縦モードで発振動作する。非活性導波路層に電流注入を行うと、導波路の等価屈折率が変化し、(1)式より、ブラッグ波長もそれに比例して変化する。ここで、ブラッグ波長の変化の割合Δλb/λbは、以下の(2)式に示すように、等価屈折率の変化の割合Δn/nと等しくなる。
Δλb/λb=Δn/n ・・・(2)
また、電流注入による等価屈折率の変化に伴い、共振縦モード波長も変化する。TTGレーザの場合、共振器全体の等価屈折率が一様に変化するので、共振縦モード波長の変化の割合Δλr/λrは等価屈折率の変化の割合Δn/nと等しくなる。
Δλr/λr=Δn/n ・・・(3)
(2)式、(3)式より、TTGレーザでは、ブラッグ波長の変化と共振縦モードの変化が等しくなるので、最初に共振したモードが保たれたまま連続的に発振波長が変化するという大きな特徴を有する。
しかしながら、単一横モード発振動作をさせるためには二重導波路の幅は1μm〜2μmにする必要があり、さらに活性層と波長制御層との間に形成されるn型スペーサ層の厚さを1μm以下まで薄くする必要があるため、通常の半導体レーザで用いられている埋め込み構造とすることができず、それぞれの導波路層に効率良く電流を注入するための構造にすることが、製作上非常に困難であるという問題があった。また、通常の半導体レーザ構造と異なるため、半導体光増幅器などとの集積化が困難であり、多機能な集積デバイスを構成できないという問題があった。
それに対してDBRレーザでは、光の増幅作用を行う活性導波路層と非活性導波路層とが直列に接続されている構造なので、通常の半導体レーザと同様に電流狭窄を行うための埋め込みストライプ構造を用いることができ、更に各々の導波路層に独立に電流注入を行うことは、各々の導波路層の上方に形成される電極を分離することにより容易に実現される。非活性導波路層への電流注入により、等価屈折率を変えてブラッグ波長を変化させる機構はTTGレーザと同様であるが、等価屈折率の変化する領域が共振器の一部に限られているために、ブラッグ波長の変化量と共振縦モード波長の変化量とは一致しない。共振縦モード波長の変化の割合Δλr/λrは、全共振器長さLに対する分布反射器の実行長Leの割合分だけ等価屈折率の変化の割合Δn/nよりもすくなくなる。
Δλr/λr=(Le/L)・(Δn/n) ・・・(4)
したがって、(2)式、(4)式より、DBRレーザでは波長制御電流を注入するにつれてブラッグ波長と共振縦モード波長とが相対的に離れていくため、モード跳びを生じてしまうという欠点を持っていた。モード跳びを生じさせないためには、回折格子が形成されていない位相調整領域を設けて、そこへの電流注入により共振縦モードの変化量とブラッグ波長の変化量とを一致させる必要がある。
しかし、この方法では2つの電極への波長制御電流を制御するための外部回路が必要になり、装置構造、および制御が複雑になるという問題があった。モード跳びを生じさせないもう一つの方法として、共振器長を短くして縦モード間隔を広げる短共振器DBRレーザが考えられるが、活性層を短くする必要があるため、大きな出力を得るのが困難であるという問題があった。
TTGレーザおよびDBRレーザにおける連続波長可変幅は、波長制御層の屈折率変化量に制限され、その値は4nm〜7nm程度に留まっている。波長可変幅をさらに広くするには、モード跳びを許容し、波長フィルタの波長変化量が屈折率変化量よりも大きくなるような手段を用いる必要がある。Y分岐レーザや、超周期構造回折格子レーザは、いずれも屈折率変化量よりもフィルタ波長変化量が大きくなる手段を用いている。これらのレーザでは、フィルタ波長を大きく変化させ、なおかつ十分な波長選択性を得るために、2つの電極に流す電流を制御する必要があり、さらに共振縦モード波長を制御するための電極も必要となる。その結果、発振波長を調整するのに3つの電極への注入電流を制御しなければならず、制御が非常に複雑になってしまう問題があった。
これらの問題を解決すべく、1つの電極への注入電流制御により連続的に4nm〜7nm程度発振波長を変化させることができ、なおかつ活性導波路層および非活性導波路層への電流注入も効率良く行える半導体レーザを得ることと、モード跳びを伴うけれども、2つの電極への注入電流により、50nm〜100nm程度の範囲に亘って発振波長を変化させることができる半導体レーザが開発されている。非特許文献1および特許文献1には、分布活性DFBレーザ(TDA−DFB−LD)の構造が開示されている。この構造によれば、活性層体積も十分確保できるため、高出力化を図ることが可能である。
図13に非特許文献1において開示された分布活性DFBレーザの構造を示す。図13(a)は分布活性DFBレーザの上面図であり、図13(b)は図13(a)におけるx−x´断面図である。
図13に示すように、分布活性DFBレーザは、下部クラッド601上に、活性導波路層602と非活性導波路層(波長制御領域)603とをそれぞれ一定の長さLa、Ltで、交互に周期的に直列結合した構造となっている。活性導波路層602および非活性導波路層603の上には上部クラッド604が形成され、活性導波路層602および非活性導波路層603と上部クラッド604との間には凹凸、すなわち回折格子605が形成されている。更に、上部クラッド604上には、活性導波路層602、非活性導波路層603に対応して活性層電極607、波長制御電極608がそれぞれ設けられている。また、下部クラッド601の下方には共通の電極610が設けられている。この分布活性DFBレーザにおいては、活性導波路層602への電流Iaの注入により発光とともに利得が生じ、活性導波路層602と上部クラッド604との間に形成された回折格子605の周期に応じた波長のみが選択的に反射されてレーザ発振が起こる。
一方、非活性導波路層603への電流Itの注入により、該非活性導波路層603の屈折率はキャリア密度に応じて生じるプラズマ効果により変化するため、これに伴って、非活性導波路層603と上部クラッド604との間に形成された回折格子605の光学的な周期は変化する。そして、非活性導波路層603の等価屈折率が変化し、一周期の長さに対する波長制御領域の長さの割合分だけ共振縦モード波長が短波長側にシフトする。繰り返し構造の一周期の長さをL、波長制御領域長をLtとすれば、共振縦モード波長の変化の割合は、以下に示す(5)式で表される。
Δλr/λr=(Lt/L)・(Δn/n) ・・・(5)
一方、複数の反射ピークの各波長も、電流注入による等価屈折率の変化の結果、短波長側にシフトする。反射ピーク波長は繰り返し構造1周期内の平均等価屈折率変化に比例するので、反射ピーク波長の変化の割合Δλs/λsは、以下に示す(6)式で表される。
Δλs/λs=(Lt/L)・(Δn/n) ・・・(6)
(5)式、(6)式より、反射ピーク波長と共振縦モード波長とは同じ量だけシフトする。従って、このレーザでは、最初に発振したモードを保ったまま連続的に波長が変化する。
特許文献1に開示されている分布活性DFBレーザの構造を図14に示す。
この分布活性DFBレーザも図13に示す分布活性DFBレーザと同様に、下部クラッド701上に、活性導波路層702と非活性導波路層703とをそれぞれ一定の長さLa、Ltで、交互に周期的に直列結合した構造を有し、活性導波路層702および非活性導波路層703の上に上部クラッド704が形成され、活性導波路層702と上部クラッド704との間には凹凸、すなわち回折格子705が形成されている。更に、上部クラッド704上には、それぞれ活性導波路層702、非活性導波路層703に対応して活性層電極707、波長制御電極708が設けられている。また、下部クラッド701の下部には共通の電極710が形成されている。この分布活性DFBレーザでは、回折格子705を一部のみに形成しているが、図13の分布活性DFBレーザと同じように連続的に波長変化する。
また、特許文献1には、図15に示すように、図14に示す分布活性DFBレーザと同様の構造を有し、活性導波路層702と非活性導波路層703の繰り返し周期がそれぞれL1、L2である、異なる二つのレーザを直列結合した構造も開示されている。なお、図14に示した部材と実質的に同一の部材については同一符号を付し、説明を省略する。
特許第3237733号公報
石井他著、「分布活性DFBレーザ(A Tunable Distributed Amplification DFB Laser Diode(TDA-DFB-LD))」、IEEE Photonics Letters、vol.10、no.1、1998年1月、p.30―32
しかしながら、上述の分布活性DFBレーザの構造では、活性領域と非活性領域を短い領域長で交互に繰り返しているため、活性領域の電極から非活性流域へ流れる漏れ電流、または、その逆の非活性領域の電極から活性領域へ流れる漏れ電流が無視できない。相互に流れる漏れ電流があることにより、波長制御が正確に行えないことや、波長制御範囲が狭くなるという問題が生じる。
一般的に電極分離抵抗を増大する方法として、図16に示すように活性領域と非活性領域の電極間隔Weを広げる方法があるが、上述の分布活性DFBレーザでは各領域長が短いため、各領域を有効に使うためには、できるだけ電極間隔を近接させた方が望ましい。一方で、図17(a)のように電極間に分離溝914を設ける方法や、図17(b)に示すように、不純物イオンの注入により高抵抗化する方法がある。分離溝914の深さdは深い方が電極分離抵抗を大きくすることができるが、深くしすぎると導波路を伝搬する光が半導体と分離溝914の屈折率差により反射波が増大することになる。また、不純物イオンの注入による方法であっても、屈折率変化の影響により、分離溝914と同じく反射の問題が生じる。このため想定外の共振モードが生じるなど、漏れ電流とは別の問題が生じることとなる。
そこで、本発明の目的は、前述した問題に鑑み提案されたもので、電極間隔を狭く保ちつつ、イオン注入や分離溝による反射波の影響を抑え、電極分離抵抗を増大する半導体導波路素子およびその作製方法ならびに半導体レーザを提供することである。
上述した課題を解決する第1の発明に係る半導体導波路素子は、第1の半導体クラッド層と、前記第1の半導体クラッド層より屈折率が大きい光導波路層と、前記光導波路層より屈折率が小さい第2の半導体クラッド層とをそれぞれ1層以上含む光導波路が、二つ以上導波路方向に直列に結合されてなる半導体導波路素子であって、前記光導波路にそれぞれ独立して電流を供給する電極と、前記第2の半導体クラッド層における隣接する電極間に設けられ、当該第2の半導体クラッド層と異なる導電型の分離層または絶縁性の分離層とを有し、前記分離層の導波路方向に交差する面の法線が、導波路方向に対して傾斜角θだけ傾斜し、隣接する分離層の傾斜角θが互いに異なるか、隣接する分離層の傾斜角θが等しいときは隣接する分離層の間隔xがx>2d/sin(2θ)を満たすことを特徴とする。
上述した課題を解決する第2の発明に係る半導体導波路素子は、第1の発明に係る半導体導波路素子であって、前記分離層が、前記第2の半導体クラッド層に不純物をイオン注入または拡散することにより形成されることを特徴とする。
上述した課題を解決する第3の発明に係る半導体導波路素子は、第1の発明または第2の発明に係る半導体導波路素子であって、前記第2の半導体クラッド層における隣接する電極間に分離溝が設けられることを特徴とする。
上述した課題を解決する第4の発明に係る半導体導波路素子は、第1の発明乃至第3の発明の何れか一つに係る半導体導波路素子であって、前記分離層の導波路方向に交差する面の法線が、導波路方向に対して5度以上傾斜することを特徴とする。
上述した課題を解決する第5の発明に係る半導体導波路素子は、第1の発明乃至第3の発明の何れか一つに係る半導体導波路素子であって、前記分離層の導波路方向に交差する面の法線が、導波路方向に対して20度以上55度以下の角度で傾斜することを特徴とする。
上述した課題を解決する第6の発明に係る半導体導波路素子は、第1の発明乃至第5の発明の何れか一つに係る半導体導波路素子であって、前記分離層の導波路方向に交差する面の全てが、導波路方向に対して等しい傾斜角を有することを特徴とする。
上述した課題を解決する第7の発明に係る半導体導波路素子は、第1の発明乃至第5の発明の何れか一つに係る半導体導波路素子であって、前記分離層の導波路方向に交差する面に対し一つおきに等しい傾斜角を有し、導波路方向に沿って隣接する前記分離層が導波路方向に直交する面に対して相互に対称であることを特徴とする。
上述した課題を解決する第8の発明に係る半導体導波路素子は、第1の発明乃至第7の発明の何れか一つに係る半導体導波路素子であって、前記第2の半導体クラッド層の上面に設けた絶縁膜に形成された孔の導波路方向に交差する端部、または、前記電極の導波路方向に対して交差する端部、またはその両方が、各々が対応する前記分離層に対して平行に形成されることを特徴とする。
上述した課題を解決する第9の発明に係る半導体導波路素子は、第1の発明乃至第8の発明の何れか一つに係る半導体導波路素子であって、前記光導波路層の結合面が、前記分離層と等しい傾斜を有することを特徴とする。
上述した課題を解決する第10の発明に係る半導体導波路素子は、第1の発明乃至第9の発明の何れか一つに係る半導体導波路素子であって、ルテニウムをドーピングした半絶縁性の電流ブロック層を備えることを特徴とする。
上述した課題を解決する第11の発明に係る半導体レーザは、第1の発明乃至第10の発明の何れか一つに係る半導体導波路素子を用いたことを特徴とする。
上述した課題を解決する第12の発明に係る半導体導波路素子の作製方法は、第1の半導体クラッド層と、前記第1の半導体クラッド層より光学的屈折率が大きい光導波路層と、前記光導波路層より屈折率が小さい第2の半導体クラッド層とをそれぞれ1層以上含む光導波路が、二つ以上光導波路方向に直列に結合され、前記光導波路にそれぞれ独立して電流を供給する電極が設けられてなる半導体導波路素子を作製する方法であって、前記第2の半導体クラッド層における隣接する電極間に不純物をイオン注入または拡散して、当該第2の半導体クラッド層と異なる導電型、または絶縁性であり、導波路方向に交差する方向に延びると共に、導波路方向に直交する方向に対して傾斜を有する分離層を形成する工程を備え、前記分離層の導波路方向に交差する面の法線が、導波路方向に対して傾斜角θだけ傾斜させ、隣接する分離層の傾斜角θが互いに異なるか、隣接する分離層の傾斜角θが等しいときは隣接する分離層の間隔xがx>2d/sin(2θ)を満たすことを特徴とする。
本発明に係る半導体レーザによれば、電極間隔を狭く保ちつつ、イオン注入や分離溝による反射波の影響を抑え、電極分離抵抗を増大することができるため、活性領域と非活性領域が交互に繰り返される構造を有する分布活性DFBレーザなどの構造においても相互の領域間で流れる漏れ電流を低減し、波長制御範囲を拡大するとともに、波長制御を正確に行うことができる。
本発明の最良の実施形態を、以下に示す実施例において詳細に説明する。
本発明の第1の実施例について、図1乃至図4に基づき詳細に説明する。
図1(a)は本実施例に係る半導体レーザの上面図であり、図1(b)は図1(a)に示すx−x´断面図であり、図1(c)は本実施例に係る半導体レーザの電極を除いた状態の上面図であり、図1(d)は本実施例に係る半導体レーザの電極および絶縁膜を除いた状態の上面図であり、図1(e)は図1のy−y´断面図であり、図2は本実施例に係る半導体レーザの他の例を示す上面図であり、図3は、屈折率が互いに異なる物質の境界面における光の屈折率を示す説明図であり、図4はバンドギャップ波長と屈折率差との関係を示すグラフであり、図5は屈折率境界への入射角に対する反射波の結合率を示すグラフである。
図1に示すように、本実施例に係る半導体レーザは、n型InPよりなる第1の半導体クラッド層である下部クラッド(半導体基板)1上に、下部クラッド1より光学的屈折率が大きい光導波路層15と、この光導波路層15より屈折率が小さい第2の半導体クラッド層である上部クラッド4とをそれぞれ1層以上含むものである。
光導波路層15は、活性導波路層2と非活性導波路層3とを光の伝播方向に沿って交互に周期的に直列結合して構成されている。活性導波路層2は、発振波長帯の光に対して光学的利得を有し、GaInAsPからなる長さLaの活性領域である。非活性導波路層3は、光学的利得を持たず、活性導波路層2とは組成の異なるGaInAsPからなる長さLtの非活性領域であって、波長制御領域である。本実施例では、領域長La,Ltをそれぞれ29.5μmとし、活性導波路層2と非活性導波路層3の繰り返し周期L(=La+Lt)を59μmとした。
活性導波路層2および非活性導波路層3の上にはp型InPからなる上部クラッド4が形成され、光導波路層15と上部クラッド4との間には、光の伝搬方向(以下、導波路方向という)に対し、全長に亘って同一周期で凹凸を形成して光導波路層15の等価屈折率を周期変調させた回折格子5が形成されている。本実施例では、発振波長1.55μmを得るために回折格子周期は243nmとした。
上部クラッド4上には、活性導波路層2と非活性導波路層3とのオーミックコンタクトのために高ドープのp型InGaAsPまたはInGaAsまたはその両方の多層構造からなるコンタクト層6を設け、更に、その上に活性導波路層2、非活性導波路層3にそれぞれ対応するように活性層電極7、波長制御電極8が設けられている。
活性領域と非活性領域の間には、n型半導体になるようにSi(シリコン)のイオン注入を行っている(イオン注入領域(導電型の分離層)16)。
イオン注入により半導体の導電型を反転させる位置(導電型反転領域)は、活性領域と非活性領域との境界を中心として設けることにより、効率よく相互領域間の漏れ電流を防ぐことができるが、必ずしも活性領域と非活性領域との境界を中心に設ける必要は無く、どちらかの領域に片寄った位置に配設したとしてもイオン注入の効果は得られる。本実施例の分布活性DFBレーザの場合、活性領域には所望の発振出力を得るための十分な利得を発生させるために、比較的大きな電流を注入し、波長制御領域(非活性領域)においては、波長を制御するために比較的小さな電流から電流を制御する。
したがって、活性領域よりも非活性領域のバイアス電圧が低くなることにより、多くの場合、漏れ電流は活性領域から非活性領域へ流れることになる。この場合、イオン注入の中心を活性領域と非活性領域の接続部に配置するのではなく、活性領域側にずらすことにより、漏れ電流の抑止効果を高めることが可能である。
全ての活性層電極7同士、波長制御電極8同士は各々一体化され、互いに素子上で短絡された構成となっている。また、基板下部、つまり、下部クラッド1の下部には、共通の電極10が形成されている。
活性導波路層2にバンドギャップ波長1.55μmのGaInAsPを用いた場合、非活性導波路層3にそれより短波のバンドギャップ波長、例えば、1.4μmのバンドギャップ波長のGaInAsPを用いると、レーザ発振の利得に寄与しなくなるために、キャリア密度が一定にならない。これにより、電流注入により大きく屈折率を変化させることができる。
活性導波路層2および非活性導波路層3はバルク材料でなくともよく、例えば、量子井戸構造、もしくは、量子井戸をバリア層に挟んで重ねた多層量子井戸構造や、量子細線や量子ドットなど、さらに低次元の量子井戸構造を備えたものであっても良い。また、活性層への光閉じ込めやキャリア閉じ込めを高めるために、活性層とクラッド層の中間に屈折率を持つ層を導入する分離閉じ込めヘテロ構造(SCH)などを導入しても良い。
本素子を用いる半導体は、InPとGaInAsPの組み合わせに限定することなく、GaAs,GaInNAs、AlGaInAs,InAs,GaInNAsなどの別の半導体であっても良く、活性導波路層2と非活性導波路層3のバンドギャップ波長の組み合わせも上記に限定するものではない。
図1(a)に示すように、活性電極7同士、波長制御電極8同士は各々一体化され、櫛形状を構成している。図1(b)に示すように、活性層電極7、波長制御電極8の下には絶縁膜9が形成されている。絶縁膜9には導波路の直上であって、活性領域、非活性領域にそれぞれ対応する部分に、図1(c)に示すような電極窓としての孔9aが開けられ、コンタクト層6が露出するようになっている。換言すると、孔9aの下に、導波路方向に沿って形成された光導波路層15が位置している。また、絶縁膜9の下方にあっては、各領域の導波路上のみにコンタクト層6を残すよう、図1(d),図1(e)に示すように、導波路方向に沿ってコンタクト層6を残すように深さdでエッチングされている。
そして、図1(d)に示すように、コンタクト層6が平行四辺形の島状に形成されている。これにより、各領域間には導波路方向に対して角度を持ったコンタクト層6を分離する分離溝14が形成される。コンタクト層6以外の部分にイオン注入を行うことによって、イオン注入した場所は導電型が変わるため、例えば、あるコンタクト層6から隣のコンタクト層6までの間は、p型、n型、p型というようになるので、電流が流れない。また、イオン注入する領域も導波路に対して角度を持っていることになる。本実施例では、イオン注入する領域は、島状のコンタクト層6以外の全てとしているが、少なくともコンタクト層6の周囲の導電型が反転すれば良い。コンタクト層6の幅Waは5μmとし、導波路に沿った隣り合うコンタクト層6の間隔は5μmとした。島状のコンタクト層6から1μm離してイオン注入を行った。
さらに、図1(e)に示すように、幅Wsの光導波路層15の両側に電流ブロック層13としてそれぞれInPからなるp型半導体11およびn型半導体12が交互に形成され、埋め込みヘテロ構造(BH)となっている。これにより、活性導波路層2または非活性導波路層3に効率良く電流が注入される。本実施例では、p型InP,n型InPを組み合わせて電流ブロック層13を実現しているが、Fe(鉄)やRu(ルテニウム)などをドーピングした半絶縁性InPを用いても良い。本実施例では、導波路の幅Wsを1.5μmとした。
図1(c)に示すように、コンタクト層6および上部クラッド4を絶縁膜9で覆った後に、電流IaまたはIt注入部に対応する絶縁膜9の部分にのみ孔9aを形成する(図1では8箇所)。この孔9aの形状は、通常長方形で形成される。長方形であっても本発明の効果を得られるが、コンタクト層6の形状と同じ平行四辺形とすることにより作製工程が容易となる。つまり、基板表面上には図1(e)に示すように、コンタクト層6部分が凸状となった段差が生じており、ここにフォトレジストにより絶縁膜9に穴あけを行うパターンを形成することとなる。段差部分のレジスト厚は必ずしも均一ではなく、段差からの距離に応じて滑らかに厚さが変化している場合が多い。コンタクト層6形状と穴あけ形状を一致させることで、穴あけパターンは段差からの距離が一定となるため、パターンを均一に作製できる。
図1(a)に示すように、活性層電極7、波長制御電極8の電極パターンもコンタクト層6や絶縁膜9の形状を反映して、導波路方向に交差する面が、導波路方向に直交する方向に対して傾斜するように配線されている。活性層電極7、波長制御電極8は、孔9a同様に、導波路方向に直交する方向に電極を引き出しても良いが、電極パターンもフォトレジストを用いてリフトオンするかウエットエッチングにより形成するため、できるだけ段差の影響が少なくなるように配線することが望ましい。そのため、図1(a)に示す形状に代えて図2に示すような形状としても良い。
なお、本実施例のようにコンタクト層6の形状を上面視平行四辺形とする場合には、活性層電極7、波長制御電極8をどちら側に引き出すかにより、素子面積に影響が生じる。例えば、本実施例において、波長制御電極8を図1(a)中のy側で一体化し、活性層電極7を図1(a)中のy´側で一体化する構成とした場合、導波路方向、すなわち、光の伝搬方向前後に基板面積を更に大きくする必要があるため、余分な導波路を結合する必要が生じる。したがって、電極の引き出し方向を図1(a)に示すように、導波路方向に対して端部に位置する電極を素子の中心側へ傾斜させつつ引き出すことで、基板面積を小さくすることができる。
次に本実施例に係る分布活性DFBレーザの作製方法の一例を説明する。
最初に有機金属気相エピタキシャル成長法によりn型InPからなる下部クラッド1上に、活性導波路層2を作製する。次に、SiO2またはSiNをマスクとして活性導波路層2の一部をエッチングする。エッチングマスクをそのまま用い、選択成長法により非活性導波路層3を作製する。その後、塗布したレジストに電子ビーム露光法を用いて回折格子パターンを作製し、これをマスクとして半導体をエッチングし回折格子5を形成する。
p型InPからなる上部クラッド4の一部を有機金属気相エピキタシャル成長により再成長した後、横モードを抑制するために、SiO2またはSiNをマスクとして幅1.5μmのストライプ状に導波路を加工する。エッチングマスクをそのまま用い、選択成長法により、ストライプ状導波路の両側にp型半導体11/n型半導体12よりなるInP電流ブロック層13を成長する。
その後、選択成長マスクを除去し、残りのInP上部クラッド層4とGaInAsコンタクト層6を成長する。次に、SiNのマスクを用いて平行四辺形の島形状にコンタクト層6をエッチングし、更にそのSiNマスクを用いてコンタクト層6以外の部分にSiイオンを注入する。イオン注入は、2段階に分けて行った。一回目のイオン注入は、加速電圧70keVでドーズ量5×1013cm-2の条件で行い、二回目のイオン注入は、加速電圧200keVでドーズ量1.0×1014cm-2の条件で行った。注入したイオンを700度1分の熱処理により活性化させた後、SiO2絶縁膜9を製膜し、活性導波路層2上と非活性導波路層3上の絶縁膜9の電流IaまたはIt注入部に対応する部分に孔9aを開ける。活性層電極7同士、非活性層電極8同士を素子上で短絡するように電極パターンをリフトオフにより形成する。
半導体の成長法としては、有機金属気相エピタキシャル成長法に限らず、分子線エピタキシャル成長法やその他の手段を用いても良い。回折格子の形成方法も電子線露光法に限らず、二束干渉露光法やその他の手段を用いても良い。
また、コンタクト層6と上部クラッド4の一部をエッチングする方法としては、活性導波路層2と非活性導波路層3の長さが短く、繰返し周期も短いため、プラズマやイオンビームなどによるドライエッチングなどのサイドエッチング量の少ないエッチング方法が望ましいが、ウエットエッチングなどによる方法でも問題はない。
イオン注入により、p型をn型に反転させる際に用いるイオン種は、Si(シリコン)でなくともC(炭素)やS(硫黄)などの他のイオンでも良い。また、本実施例では、n型半導体基板を用いているため、クラッドにp型InPを用いており、p型をn型に反転させる必要があったが、n型InPクラッドの場合には、逆に、n型をp型に反転させる必要があり、Be(ベリリウム)やMg(マグネシウム)などを注入すれば良い。また、Fe(鉄)やRu(ルテニウム)などをイオン注入して半絶縁体としても良い。
本実施例においては、活性導波路層2と非活性導波路層3が交互に周期的に配置された構造を例として説明したが、領域間の相互に流れる漏れ電流を抑制すると共に、導波する光の反射を抑制するものであるので、活性導波路層2と非活性導波路層3の組み合わせに限らず、活性導波路層を複数の領域に分割したり、非活性導波路を複数の領域に分割したりして電極を各々設けた場合などであっても本発明を適用できる。
上述したように、領域が複数ある場合に漏れ電流の影響は顕著に現れるが、領域が二つしかない場合であっても、本発明によって相互に流れる漏れ電流を抑制し、且つ、導波する光の反射を抑制するために有用である。
本実施例では、分布活性DFBレーザへの適用例を示したため、活性導波路層2上の電極と、非活性導波路層3上の電極とが、それぞれ素子上で短絡された構造について説明したが、本発明は、それぞれの電極が独立していても適用できる。また、分布活性DFBレーザでなくとも、例えば、レーザと変調器を集積したデバイスにおけるレーザ部の電極と変調器の電極部などにも適用可能である。すなわち、直列接続された異なる導波路素子間の分離に適用可能である。
続いて、本実施例の作用について説明する。
イオン注入により不純物を注入すると、その領域はこれまでの材料とは異なる材料であるため屈折率が変化する。屈折率が互いに異なる物質の境界面において光の反射が生じる。例えば、図3に示すように、屈折率N1の物質20と屈折率N2の物質21との接合境界面19に、物質20側から光が入射したとすると、接合境界面における光の反射率Rは、以下の(7)式で表される。
R=((N1−N2)/(N1+N2))2 ・・・(7)
つまり、光の反射率Rは物質20,21の屈折率差によって決まる。そのため、導波路を伝搬する光は、イオン注入により屈折率が変化した領域にかかると反射が生じる。イオン注入の深さが深くなるほど、光フィールドに係る割合が大きくなり、等価屈折率の差は大きくなる。なお、イオン注入領域を導波路に垂直な形状とした場合には、反射により戻り光が発生するため、デバイス特性にモード不安定などの影響が生じてしまう。
本実施例に係る分布活性DFBレーザにおいては、イオン注入により生じる屈折率変化がそれほど大きくないため、屈折率差が小さく反射率の絶対値はとても小さくなる。しかしその一方で、図1に示したように、一つの素子(本実施例では分布活性DFBレーザ)に、分離領域が複数存在する。このため、一つ素子全体では光の反射を無視できない程度に大きくなる虞がある。したがって、分離領域を複数有する素子にあっては、反射率Rをできるだけ低く抑える、または、反射が起きたとしても反射波が導波路に結合しないようにすることが重要である。
屈折率が互いに異なる物質の境界面に対して光が斜めに入射した場合、入射角をθ1とし、屈折角をθ2とすると、スネルの法則に従い、以下の(8)式で表されるように、その境界面で屈折が生じる。
sinθ1/sinθ2=N2/N1 ・・・(8)
ここで、入射角θ1がブリュースター角θBに一致する場合、入射面に平行な成分の反射をなくすことができる。ブリュースター角θBは、以下の(9)式で表すことができる。
θB=tan-1(N2/N1) ・・・(9)
図4に、図3に示した境界面19に入射する光の入射角θ1と反射率Rとの関係を示す。なお、本実施例において入射角θ1は、境界面19の法線に対する光の伝播方向の傾斜角とする。図4に示すグラフは、入射側の物質20の屈折率をN1=3.20とし、物質20と屈折率N2の物質21の屈折率差ΔnをそれぞれΔn=N1−N2=0.005、0.01、0.015、0.02とした場合の例を示している。
本実施例においては、導波路部とイオン注入領域16との屈折率差が小さいため、(9)式から、ブリュースター角θBはほぼ45度となる。即ち、イオン注入領域16の導波路方向に交差する面の傾斜角θがほぼ45度の場合に反射率Rが0となり、また、傾斜角θ=45度近傍で反射率Rが非常に小さくなる。
屈折率差Δn=0.01の場合を例にとってみると、図4から、入射角θ1が20度以上55度以下で反射率Rを低減できる。特に反射率Rを、光が境界面に対して垂直に入射したとき、即ち、入射角θ1=0の場合の半分以下に抑えるためには、入射角θ1を28度から52度程度の間の値とすれば良い。また、反射率Rを、入射角θ1=0における反射率Rの3分の1以下に抑えるためには、入射角θ1を33度から51度程度の間の値とすれば良い。なお、図4から分かるように、入射角θ1がブリュースター角θBより小さい範囲であるほうが、入射角θ1がブリュースター角θBより大きい場合と比較して、入射角θ1に対する反射率Rの変化が緩やかになっている。
なお、必ずしも境界面における反射を全て抑える必要がなく、反射が起きても反射波が導波路に結合しなければよいような場合、以下のように入射角θ1の選択範囲を広げることができる。
図5に、光モードフィールド幅を1.5μmとした場合の境界面への入射角と、導波路への反射波の結合率との関係を示す。なお、反射波結合率は、境界面での屈折率差を考慮しなくても良いように、入射角θ1=0のとき、すなわち、境界面が導波路方向に対して直交する場合における反射波の導波路への結合率を1として表示した。
図5から、入射角θ1がおよそ5度以上あれば導波路への反射波結合率を半分に低減でき、反射波結合率を30%程度以下にするためには入射角θ1がおよそ7度以上あれば良く、反射波結合率を一桁低減するには、入射角θ1をおよそ9度以上とすれば良いことが分かる。
従って、本実施例の場合、導波路方向に直交する方向に対して、屈折率境界面を上記角度を持つようにイオン注入領域16を形成すれば、不純物による屈折率差により生じた反射率を低減し、反射波の導波路への結合を低減することができる。従って、分離抵抗を大きくするためにイオン注入の深さを深くして、等価屈折率の差が大きくなっても反射率を抑えることが可能となる。
本実施例では、半導体の導電型を変えるためにイオン注入を用いているが、領域が広がってしまう問題はあるものの、不純物の熱拡散を用いた方法によっても実現できる。その場合であっても、導波路から角度を用いた領域に拡散させることで、本実施例と同様の効果を得ることができる。
また、本実施例は、活性導波路層2と非活性導波路層3の接続時におけるバットジョイントの形状によらず独立して効果を得ることができる。バットジョイントは、形状によって反射を防止することも可能であるが、結晶の再成長が必要であり、成長条件によって最適な接続面角度があるため、必ずしも反射対策に最適な角度がよいとは限らないが、イオン注入の角度は領域分離と反射対策を考慮して独立に決定すればよい。
しかしながら、作製について考えると、バットジョイントの接続面では結晶成長面が平坦ではなく、また結晶も必ずしも高品質ではないため、接続面と交差するようにイオン注入を行うと、イオン注入が不均一になったり、バットジョイント面上のみに電流が流れる経路が生じたりする可能性がある。従って、バットジョイントの接続面に沿ってイオン注入領域を形成することによって、分離領域を確実に形成できる。
本発明の第2の実施例について、図6に基づき詳細に説明する。
図6(a)は本実施例に係る半導体レーザの上面図であり、図6(b)は図6(a)に示すx−x´断面図であり、図6(c)は本実施例に係る半導体レーザの電極を除いた状態の上面図であり、図6(d)は本実施例に係る半導体レーザの電極及び絶縁膜を除いた状態の上面図であり、図6(e)は図6(a)のy−y´断面図である。
図6に示すように、本実施例に係る半導体レーザは、n型InPよりなる第1のクラッド層である下部クラッド(半導体基板)101上に、下部クラッド101より光学的屈折率が大きい光導波路層115と、この光導波路層115より屈折率が小さい第2のクラッド層である上部クラッド104とをそれぞれ1層以上含むものである。
光導波路層115は、活性導波路層102と非活性導波路層103とを光の伝播方向に沿って交互に周期的に直列結合して構成されている。活性導波路層102は、発振波長帯の光に対して光学的利得を有し、GaInAsPからなる長さLaの活性領域である。また、非活性導波路層103は、光学的利得を持たず、活性導波路層102とは組成が異なるGaInAsPからなる長さLtの非活性領域であって、波長制御領域である。本実施例では、領域長La,Ltをそれぞれ48.7μmとし、24.3μmとし、活性導波路層102と非活性導波路層103の繰返し周期L(=La+Lt)を73μmとした。
活性導波路層102および非活性導波路層103の上にはp型InPからなる上部クラッド104が形成され、光導波路層115と上部クラッド104との間には、光の伝播方向(以下、導波路方向という)に対し、全長に亘って同一周期で凹凸を形成して光導波路層115の等価屈折率を周期変調させた回折格子105が形成されている。本実施例では、発振波長1.55μmを得るために回折格子周期は242nmとした。
上部クラッド104上には、活性導波路層102と非活性導波路層103とのオーミックコンタクトのために高ドープのp型InGaAsPまたはInGaAsまたはその両方の多層構造からなるコンタクト層106を設け、更に、その上に活性導波路層102、非活性導波路層103にそれぞれ対応するように活性層電極107、波長制御電極108が設けられている。また、下部クラッド101の下方には共通の電極110が設けられている。活性領域と非活性領域との間にあっては、コンタクト層106、及び上部クラッド104の一部にイオン注入を行っている。
活性導波路層102にバンドギャップ波長1.55μmのGaInAsPを用いた場合、非活性導波路層103にそれより短波のバンドギャップ波長、例えば、1.4μmのバンドギャップ波長のGaInAsPを用いると、レーザ発振の利得に寄与しなくなるために、キャリア密度が一定にならない。これにより、電流注入により大きく屈折率を変化させることができる。
活性導波路層102および非活性導波路層103はバルク材料でなくともよく、例えば、量子井戸構造、もしくは、量子井戸をバリア層に挟んで重ねた多層量子井戸構造や、量子細線や量子ドットなど、更に低次元の量子井戸構造を備えたものであっても良い。また、活性層への光閉じ込めやキャリア閉じ込めを高めるために、活性層とクラッド層の間に中間の屈折率を持つ層を導入する分離閉じ込めヘテロ構造(SCH)などを導入しても良い。
本素子に用いる半導体は、InPとGaInAsPの組み合わせに限定することなく、GaAs、GaInNAs、AlGaInAs、InAs、GaInNAsなどの別の半導体であってもよく、活性導波路層と非活性導波路層のバンドギャップ波長の組み合わせも上記に限定するものではない。
図6(a)に示すように、活性層電極107同士、波長制御電極108同士は各々独立に配置されている。例えば、活性層電極107同士、波長制御電極108同士をそれぞれ素子外でワイヤーなどにより短絡すれば、実施例1と同様の動作が得られる。図6(b)に示すように、活性層電極107、波長制御電極108の下には絶縁膜109が形成されている。絶縁膜109には導波路の直上であって、活性領域、非活性領域にそれぞれ対応する部分に、図6(c)に示すような電極窓としての孔109aが開けられ(図6では8箇所)、コンタクト層106が露出するようになっている。換言すると、孔109aの下に、導波路方向に沿って形成された光導波路層115が位置している。また、絶縁膜109の下方にあっては、各領域の導波路上のみにコンタクト層106があって、半絶縁体122で挟まれている。そして、各領域はイオン注入により半導体の導電型を反転させた領域で電気的に分離されている。
全ての活性層電極107および波長制御電極108は独立して配置される。活性層電極107同士、および波長制御電極108同士を素子外にて、例えばワイヤーなどにより短絡した構成とすることで、上述した本発明の第1の実施例と同様な動作が得られる。また、基板下部、つまり、下部クラッド101の下部には、共通の電極110が形成されている。
そして、図6(d)に示すように、導波路上のコンタクト層106を分離するように、各領域間に導波路に対して角度を持ったイオン注入領域116が形成されている。これにより、イオン注入した領域116のみ半導体の導電型が変わるため、例えば、ある電極から隣の電極までの間が、p型,n型,p型となり、電流が流れにくくなる。イオン注入を行う領域116は、コンタクト層106を残したままイオン注入しても良いが、ドーピング濃度の高いコンタクト層106を除去してからイオン注入を行うことにより効果が顕著に現れる。
さらに、図6(e)に示すように、幅Wsの光導波路層115の両側に電流ブロック層として半絶縁体122が形成され、埋め込みヘテロ構造(BH)となっている。これにより、活性導波路層102または非活性導波路層103に効率良く電流が注入される。本実施例では、導波路の幅Wsを1.8μmとした。
イオン注入領域116における、導波路と垂直な方向の長さWaは、少なくとも導波路の幅Ws=1.8μmよりも長く設定する必要がある。イオン注入領域116の長さWaが導波路の幅Wsより長いことによって生じる大きな問題は無いが、本実施例では、導波路層115に電流IaまたはItを注入するためのコンタクト抵抗や電極の引き回し時に問題にならないサイズを考えて、イオン注入領域116の幅Waを10μmとした。
図6(c)に示すように、コンタクト層106、半絶縁体113およびイオン注入領域116を絶縁膜109で覆った後に、電流IaまたはIt注入部に対応する絶縁膜109の部分にのみ孔109aを形成する(図6では8箇所)。この孔109aの形状は、通常長方形で形成される。長方形であっても本発明の効果を得られるが、コンタクト層106の形状と同じ平行四辺形とすることにより作製工程が容易となる。つまり、基板表面上には図6(e)に示すように、コンタクト層106部分が凸状となった段差が生じており、ここにフォトレジストにより絶縁膜109に穴あけを行うパターンを形成することとなる。段差部分のレジスト厚は必ずしも均一ではなく、段差からの距離に応じて滑らかに厚さが変化している場合が多い。コンタクト層106形状と穴あけ形状を一致させることで、穴あけパターンは段差からの距離が一定となるため、パターンを均一に作製できる。
図6(a)に示すように、活性層電極107、波長制御電極108の電極パターンもコンタクト層106や絶縁膜109の形状を反映して、導波路方向に交差する面が、導波路方向に直交する方向に対して傾斜するように配線されている。活性層電極107、波長制御電極108は、孔109a同様に、導波路方向に直交する方向に電極を引き出しても良いが、電極パターンもフォトレジストを用いてリフトオンするかウエットエッチングにより形成するため、できるだけ段差の影響が少なくなるように配線することが望ましい。
次に本実施例に係る分布活性DFBレーザの作製方法の一例を説明する。
最初に有機金属気相エピタキシャル成長法によりn型InPからなる下部クラッド101上に、活性導波路層102を作製する。次に、SiO2またはSiNをマスクとして活性導波路層102の一部をエッチングする。エッチングマスクをそのまま用い、選択成長法により非活性導波路層103を作製する。その後、塗布したレジストに電子ビーム露光法を用いて回折格子パターンを作製し、これをマスクとして半導体をエッチングし回折格子105を形成する。
p型InPからなる上部クラッド104とGaInAsからなるコンタクト層106を有機金属気相エピキタシャル成長により再成長した後、横モードを抑制するために、SiO2またはSiNをマスクとして幅1.8μmのストライプ状に導波路を加工する。エッチングマスクをそのまま用い、選択成長法により、ストライプ状導波路の両側にRu(ルテニウム)(またはFe(鉄))をドーピングした半導体よりなる半絶縁体(半絶縁体電流ブロック層)122を成長する。
その後、選択成長マスクを除去し、次に、各領域間の分離のためにコンタクト層106を導波路に対して斜めにエッチングする。コンタクト層106を除去し、p型InP上部クラッド層104が露出している部分にSiイオンを注入し650度で5分間アニール処理してn型InPにする。続いて、SiO2絶縁膜109を製膜し、活性導波路層102上と非活性導波路層103上の絶縁膜109の電流IaまたはIt注入部に対応する部分に孔109aを開ける。そして、電極をリフトオフにより形成する。
半導体の成長法としては、有機金属気相エピタキシャル成長法に限らず、分子線エピタキシャル成長法やその他の手段を用いても良い。回折格子の形成方法も電子線露光法に限らず、二束干渉露光法やその他の手段を用いても良い。
また、コンタクト層106と上部クラッド層104の一部をエッチングする方法としては、活性導波路層102と非活性導波路層103の長さが短く、繰返し周期も短いため、プラズマやイオンビームなどによるドライエッチングなどのサイドエッチング量の少ないエッチング方法が望ましいが、ウエットエッチングなどによる方法でも問題はない。
イオン注入により、p型をn型に反転させる際に用いるイオン種は、Si(シリコン)でなくともC(炭素)やS(硫黄)などの他のイオンでも良い。また、本実施例では、n型半導体基板を用いているため、クラッドにp型InPを用いており、p型をn型に反転させる必要があったが、n型InPクラッドの場合には、逆に、n型をp型に反転させる必要があり、Be(ベリリウム)やMg(マグネシウム)などを注入すれば良い。
半絶縁体122のためにドーピングする材料としては、一般的にFe(鉄)が良く使われているが、Ru(ルテニウム)を用いることで、p型InPのドーパントであるZn(亜鉛)との相互拡散を抑制することができる。また、Ruを用いることにより、p型,n型半導体よりなる電流ブロック層よりも容量が減るため、変調特性を向上することができる。これにより、変調特性を10GHz以上に向上できた。
本実施例においては、活性導波路層102と非活性導波路層103が交互に周期的に配置された構造を例として説明したが、領域間の相互に流れる漏れ電流を抑制すると共に、導波する光の反射を抑制するものであるので、図6に示した活性導波路層102と非活性導波路層103の組み合わせに限らず、活性導波路層を複数の領域に分割したり、非活性導波路を複数の領域に分割したりして電極を各々設けた場合などであっても本発明を適用できる。
本実施例において説明したように、一つの素子が複数の領域を有する場合に漏れ電流の影響は顕著に現れるが、領域が二つしかない場合であっても、相互に流れる漏れ電流を抑制し、且つ、導波する光の反射を抑制することができる本実施例は有用である。
また、本実施例では分布活性DFBレーザを例として説明したが、本発明はこれらに限らず、例えば、レーザと変調器を集積したデバイスにおけるレーザ部の電極と変調器の電極部などにも適用可能である。すなわち、直列接続された異なる導波路素子間の分離に適用可能である。
なお、本実施例による作用・効果は、上述した第1の実施例と概ね同様であり、重複する説明は省略する。
本発明の第3の実施例について、図7に基づき詳細に説明する。
図7(a)は本実施例に係る半導体レーザの上面図であり、図7(b)は図7(a)に示すx−x´断面図であり、図7(c)は本実施例に係る半導体レーザの電極を除いた状態の上面図であり、図7(d)は本実施例に係る半導体レーザの電極及び絶縁膜を除いた状態の上面図であり、図7(e)は図7(a)のy−y´断面図である。
図7に示すように、本実施例に係る半導体レーザは、n型InPよりなる第1のクラッド層である下部クラッド(半導体基板)201上に、下部クラッド201より光学的屈折率が大きい光導波路層215と、この光導波路層215より屈折率が小さい第2のクラッド層である上部クラッド204とをそれぞれ1層以上含むものである。
光導波路層215は、活性導波路層202と非活性導波路層203とを光の伝播方向に沿って交互に周期的に直列結合して構成されている。活性導波路層202は、発振波長帯の光に対して光学的利得を有し、GaInAsPからなる長さLaの活性領域である。また、非活性導波路層203は、光学的利得を持たず、活性導波路層202とは組成が異なるGaInAsPからなる長さLtの非活性領域であって、波長制御領域である。本実施例では、領域長La,Ltをそれぞれ22.3μmとし、44.7μmとし、活性導波路層202と非活性導波路層203の繰返し周期L(=La+Lt)を67μmとした。
活性導波路層202および非活性導波路層203の上にはp型InPからなる上部クラッド204が形成され、光導波路層215と上部クラッド204との間には、光の伝播方向(以下、導波路方向という)に対し、全長に亘って同一周期で凹凸を形成して光導波路層215の等価屈折率を周期変調させた回折格子205が形成されている。本実施例では、発振波長1.55μmを得るために回折格子周期は241nmとした。
上部クラッド204上には、活性導波路層202と非活性導波路層203とのオーミックコンタクトのために高ドープのp型InGaAsPまたはInGaAsまたはその両方の多層構造からなるコンタクト層206を設け、更に、その上に活性導波路層202、非活性導波路層203にそれぞれ対応するように活性層電極207、波長制御電極208が設けられている。また、下部クラッド201の下方には共通の電極210が設けられている。活性領域と非活性領域との間にあっては、コンタクト層206、及び上部クラッド204の一部にイオン注入を行っている。
活性導波路層202にバンドギャップ波長1.55μmのGaInAsPを用いた場合、非活性導波路層203にそれより短波のバンドギャップ波長、例えば、1.4μmのバンドギャップ波長のGaInAsPを用いると、レーザ発振の利得に寄与しなくなるために、キャリア密度が一定にならない。これにより、電流注入により大きく屈折率を変化させることができる。
活性導波路層202および非活性導波路層203はバルク材料でなくともよく、例えば、量子井戸構造、もしくは、量子井戸をバリア層に挟んで重ねた多層量子井戸構造や、量子細線や量子ドットなど、更に低次元の量子井戸構造を備えたものであっても良い。また、活性層への光閉じ込めやキャリア閉じ込めを高めるために、活性層とクラッド層の間に中間の屈折率を持つ層を導入する分離閉じ込めヘテロ構造(SCH)などを導入しても良い。
本素子に用いる半導体は、InPとGaInAsPの組み合わせに限定することなく、GaAs、GaInNAs、AlGaInAs、InAs、GaInNAsなどの別の半導体であってもよく、活性導波路層と非活性導波路層のバンドギャップ波長の組み合わせも上記に限定するものではない。
図7(a)に示すように、活性層電極207同士、波長制御電極208同士は各々独立に配置されている。例えば、活性層電極207同士、波長制御電極208同士をそれぞれ素子外でワイヤーなどにより短絡すれば、実施例1と同様の動作が得られる。図7(b)に示すように、活性層電極207、波長制御電極208の下には絶縁膜209が形成されている。絶縁膜209には導波路の直上であって、活性領域、非活性領域にそれぞれ対応する部分に、図7(c)に示すような電極窓としての孔209aが開けられ(図7では8箇所)、コンタクト層206が露出するようになっている。換言すると、孔209aの下に、導波路方向に沿って形成された光導波路層215が位置している。また、絶縁膜209の下方にあっては、各領域の導波路上のみにコンタクト層206があって、ポリイミドなどの誘電体223で挟まれている。そして、各領域はイオン注入により半導体の導電型を反転させた領域で電気的に分離されている。
全ての活性層電極207および波長制御電極208は独立して配置される。活性層電極207同士、および波長制御電極208同士を素子外にて、例えばワイヤーなどにより短絡した構成とすることで、上述した本発明の第1の実施例と同様な動作が得られる。また、基板下部、つまり、下部クラッド201の下部には、共通の電極210が形成されている。
そして、図7(d)に示すように、導波路上のコンタクト層206を分離するように、各領域間に導波路に対して角度を持ったイオン注入領域216が形成されている。これにより、イオン注入した領域216のみ半導体の導電型が変わるため、例えば、ある電極から隣の電極までの間が、p型,n型,p型となり、電流が流れにくくなる。イオン注入を行う領域216は、コンタクト層206を残したままイオン注入しても良いが、ドーピング濃度の高いコンタクト層206を除去してからイオン注入を行うことにより効果が顕著に現れる。
さらに、図7(e)に示すように、上部クラッド204の両側に誘電体223としてポリイミドを埋め込んだリッジ構造となっている。これにより、電流は、活性導波路層202または非活性導波路層203に効率良く注入される。本実施例では、導波路の幅すなわちリッジ幅Wsを2.5μmとした。
図7(c)に示すように、コンタクト層206、誘電体223およびイオン注入領域216を絶縁膜209で覆った後に、電流IaまたはIt注入部に対応する絶縁膜209の部分にのみ孔209aを形成する(図7では8箇所)。この孔209aの形状は、通常長方形で形成される。長方形であっても本発明の効果を得られるが、コンタクト層206の形状と同じ平行四辺形とすることにより作製工程が容易となる。つまり、基板表面上には図7(e)に示すように、コンタクト層206部分が凸状となった段差が生じており、ここにフォトレジストにより絶縁膜209に穴あけを行うパターンを形成することとなる。段差部分のレジスト厚は必ずしも均一ではなく、段差からの距離に応じて滑らかに厚さが変化している場合が多い。コンタクト層206形状と穴あけ形状を一致させることで、穴あけパターンは段差からの距離が一定となるため、パターンを均一に作製できる。
図7(a)に示すように、活性層電極207、波長制御電極208の電極パターンもコンタクト層206や絶縁膜209の形状を反映して、導波路方向に交差する面が、導波路方向に直交する方向に対して傾斜するように配線されている。活性層電極207、波長制御電極208は、孔209a同様に、導波路方向に直交する方向に電極を引き出しても良いが、電極パターンもフォトレジストを用いてリフトオンするかウエットエッチングにより形成するため、できるだけ段差の影響が少なくなるように配線することが望ましい。
次に本実施例に係る分布活性DFBレーザの作製方法の一例を説明する。
最初に有機金属気相エピタキシャル成長法によりn型InPからなる下部クラッド201上に、活性導波路層202を作製する。次に、SiO2またはSiNをマスクとして活性導波路層202の一部をエッチングする。エッチングマスクをそのまま用い、選択成長法により非活性導波路層203を作製する。その後、塗布したレジストに電子ビーム露光法を用いて回折格子パターンを作製し、これをマスクとして半導体をエッチングし回折格子205を形成する。
p型InPからなる上部クラッド204とGaInAsからなるコンタクト層206を有機金属気相エピキタシャル成長により再成長した後、横モードを抑制するために、SiO2またはSiNをマスクとして幅2.5μmのストライプ状に導波路を加工する。本実施例では、レジストをマスクとしてウエットエッチングによりリッジを形成したが、SiO2やSiNをマスクとしてドライエッチングによりリッジを形成しても良い。
その後、SiO2またはSiN膜を製膜し、厚いレジストを用いてリッジ上部にのみ分離溝214のパターンを形成する。次に、各領域間の分離のためにコンタクト層206を斜めにエッチングし、Siイオンを注入し700度で10分間アニール処理してn型InPにする。
続いて、ポリイミドをリッジの脇と分離溝214に埋め込み、350度のオーブンで凝固させた後、SiO2絶縁膜209を製膜し、活性導波路層202上と非活性導波路層203上の絶縁膜209に穴を開ける。活性層電極202同士、非活性層電極203同士を素子上で短絡するように電極パターンをリフトオフにより形成する。
半導体の成長法としては、有機金属気相エピタキシャル成長法に限らず、分子線エピタキシャル成長法やその他の手段を用いても良い。回折格子の形成方法も電子線露光法に限らず、二束干渉露光法やその他の手段を用いても良い。
また、コンタクト層206と上部クラッド層204の一部をエッチングする方法としては、活性導波路層202と非活性導波路層203の長さが短く、繰返し周期も短いため、プラズマやイオンビームなどによるドライエッチングなどのサイドエッチング量の少ないエッチング方法が望ましいが、ウエットエッチングなどによる方法でも問題はない。
イオン注入により、p型をn型に反転させる際に用いるイオン種は、Si(シリコン)でなくともC(炭素)やS(硫黄)などの他のイオンでも良い。また、本実施例では、n型半導体基板を用いているため、クラッドにp型InPを用いており、p型をn型に反転させる必要があったが、n型InPクラッドの場合には、逆に、n型をp型に反転させる必要があり、Be(ベリリウム)やMg(マグネシウム)などを注入すれば良い。
本実施例では、容量の低減と、リッジ構造の保護のために誘電体223を用いたが、両脇は空気としてもよい。また、誘電体223として有機材料であるポリイミドを用いたが、ベンゾシクロブテン(BCB)など他の材料であってもよい。誘電体223を用いることにより、電流ブロック層よりも容量が減るため、変調特性を向上することができる。これに加えて、分離溝214による活性領域、非活性領域間の漏れ電流抑制により、変調特性を10GHz以上に向上できた。
本実施例においては、活性導波路層202と非活性導波路層203が交互に周期的に配置された構造を例として説明したが、領域間の相互に流れる漏れ電流を抑制すると共に、導波する光の反射を抑制するものであるので、図7に示した活性導波路層202と非活性導波路層203の組み合わせに限らず、活性導波路層を複数の領域に分割したり、非活性導波路を複数の領域に分割したりして電極を各々設けた場合などであっても本発明を適用できる。
本実施例において説明したように、一つの素子が複数の領域を有する場合に漏れ電流の影響は顕著に現れるが、領域が二つしかない場合であっても、相互に流れる漏れ電流を抑制し、且つ、導波する光の反射を抑制することができる本実施例は有用である。
また、本実施例では分布活性DFBレーザを例として説明したが、本発明はこれらに限らず、例えば、レーザと変調器を集積したデバイスにおけるレーザ部の電極と変調器の電極部などにも適用可能である。すなわち、直列接続された異なる導波路素子間の分離に適用可能である。
なお、本実施例による作用・効果は、上述した第1の実施例と概ね同様であり、重複する説明は省略する。
本発明の第4の実施例について、図8に基づき詳細に説明する。
図8(a)は本実施例に係る半導体レーザの上面図であり、図8(b)は図8(a)に示すx−x´断面図であり、図8(c)は本実施例に係る半導体レーザの電極を除いた状態の上面図であり、図8(d)は本実施例に係る半導体レーザの電極および絶縁膜を除いた状態の上面図であり、図8(e)は図8のy−y´断面図であり、図9は本実施例に係る半導体レーザの他の例を示す上面図であり、図10は上部クラッド厚と等価屈折率との関係を示すグラフである。
図8に示すように、本実施例に係る半導体レーザは、n型InPより下部クラッド(半導体基板)301上に、下部クラッド301より光学的屈折率が大きい光導波路層315と、この光導波路層315より屈折率が小さい上部クラッド304とをそれぞれ1層以上含むものである。
光導波路層315は、活性導波路層302と非活性導波路層303とを光の伝播方向に沿って交互に周期的に直列結合して構成されている。活性導波路層302は、発振波長帯の光に対して光学的利得を有し、GaInAsPからなる長さLaの活性領域である。非活性導波路層303は、光学的利得を持たず、活性導波路層302とは組成の異なるGaInAsPからなる長さLtの非活性領域であって、波長制御領域である。本実施例では、領域長La,Ltをそれぞれ29.5μmとし、活性導波路層302と非活性導波路層303の繰り返し周期L(=La+Lt)を59μmとした。
活性導波路層302および非活性導波路層303の上にはp型InPからなる上部クラッド304が形成され、光導波路層315と上部クラッド304との間には、光の伝搬方向(以下、導波路方向という)に対し、全長に亘って同一周期で凹凸を形成して光導波路層315の等価屈折率を周期変調させた回折格子305が形成されている。本実施例では、発振波長1.55μmを得るために回折格子周期は243nmとした。
上部クラッド304上には、活性導波路層302と非活性導波路層303とのオーミックコンタクトのために高ドープのp型InGaAsPまたはInGaAsまたはその両方の多層構造からなるコンタクト層306を設け、更に、その上に活性導波路層302、非活性導波路層303にそれぞれ対応するように活性層電極307、波長制御電極308が設けられている。
活性領域と非活性領域との間にあっては、コンタクト層306、及び上部クラッド304の一部に深さd=2μm、幅We=5μmの電極分離溝(以下、単に「分離溝」という)314が形成されている(図8では7箇所)。分離溝314の深さdは、該分離溝314を形成した後に、光導波路層315上に上部クラッド304が0.5μm残る深さである。
分離溝314の位置は、活性領域と非活性領域との境界を中心として設けることにより、効率よく相互領域間の漏れ電流を防ぐことができるが、必ずしも活性領域と非活性領域との境界を中心に設ける必要はなく、どちらかの領域に片寄った位置に配設したとしても分離溝314の効果は得られる。本実施例の分布活性DFBレーザの場合、活性領域には所望の発振出力を得るための十分な利得を発生させるために、比較的大きな電流を注入し、波長制御領域(非活性領域)においては、比較的小さな電流によって波長を制御する。
従って、活性領域に比較して非活性領域のバイアス電圧が低くなり、多くの場合、漏れ電流は活性領域から非活性領域へ流れることになる。この場合、分離溝314の中心を活性領域と非活性領域の接続部に配置するのではなく、活性領域側にずらすことにより、漏れ電流の抑止効果を高めることが可能である。
さらに、分離溝314の下にイオン注入を行っている(イオン注入領域316)。
全ての活性層電極307同士、波長制御電極308同士は各々一体化され、互いに素子上で短絡された構成となっている。また、基板下部、つまり、下部クラッド301の下部には、共通の電極310が形成されている。
活性導波路層302にバンドギャップ波長1.55μmのGaInAsPを用いた場合、非活性導波路層303にそれより短波のバンドギャップ波長、例えば、1.4μmのバンドギャップ波長のGaInAsPを用いると、レーザ発振の利得に寄与しなくなるために、キャリア密度が一定にならない。これにより、電流注入により大きく屈折率を変化させることができる。
活性導波路層302および非活性導波路層303はバルク材料でなくともよく、例えば、量子井戸構造、もしくは、量子井戸をバリア層に挟んで重ねた多層量子井戸構造や、量子細線や量子ドットなど、さらに低次元の量子井戸構造を備えたものであっても良い。また、活性層への光閉じ込めやキャリア閉じ込めを高めるために、活性層とクラッド層の中間に屈折率を持つ層を導入する分離閉じ込めヘテロ構造(SCH)などを導入しても良い。
本素子を用いる半導体は、InPとGaInAsPの組み合わせに限定することなく、GaAs,GaInNAs、AlGaInAs,InAs,GaInNAsなどの別の半導体であっても良く、活性導波路層302と非活性導波路層303のバンドギャップ波長の組み合わせも上記に限定するものではない。
図8(a)に示すように、活性電極307同士、波長制御電極308同士は各々一体化され、櫛形状を構成している。図8(b)に示すように、活性層電極307、波長制御電極308の下には絶縁膜309が形成されている。絶縁膜309には導波路の直上であって、活性領域、非活性領域にそれぞれ対応する部分に、図8(c)に示すような電極窓としての孔309aが開けられ、コンタクト層306が露出するようになっている。換言すると、孔309aの下に、導波路方向に沿って形成された光導波路層315が位置している。また、絶縁膜309の下方にあっては、各領域の導波路上のみにコンタクト層306を残すよう、図8(d),図8(e)に示すように、導波路方向に沿ってコンタクト層306を残すように深さdでエッチングされている。
そして、図8(d)に示すように、コンタクト層306が平行四辺形の島状に形成されている。これにより、各領域間には導波路方向に対して角度を持ったコンタクト層306を分離する分離溝314が形成される。コンタクト層306の下部のInPからなる上部クラッド304の一部もエッチングした上、分離溝314の下部にイオン注入を行って、イオン注入領域316が形成される。これにより、電離分極抵抗が大きくなる。
さらに、図8(e)に示すように、幅Wsの光導波路層315の両側に電流ブロック層313としてそれぞれInPからなるp型半導体311およびn型半導体312が交互に形成され、埋め込みヘテロ構造(BH)となっている。これにより、活性導波路層302または非活性導波路層303に効率良く電流が注入される。本実施例では、p型InP,n型InPを組み合わせて電流ブロック層313を実現しているが、Fe(鉄)やRu(ルテニウム)などをドーピングした半絶縁性InPを用いても良い。本実施例では、導波路の幅Wsを1.3μmとした。
分離溝314における、導波路と垂直な方向の長さは、コンタクト層306の幅Waに相当し、少なくとも導波路の幅Ws=1.3μmよりも長く設定する必要がある。この幅Waが導波路の幅Wsより長いことによって生じる大きな問題は無いが、本実施例では、光導波路層315に電流IaまたはItを注入するためのコンタクト抵抗や電極の引き回し時に問題にならないサイズを考えて、分離溝314の幅Waを4μmとした。
図8(c)に示すように、コンタクト層306および上部クラッド304を絶縁膜309で覆った後に、電流IaまたはIt注入部に対応する絶縁膜309の部分にのみ孔309aを形成する(図8では8箇所)。この孔309aの形状は、通常長方形で形成される。長方形であっても本発明の効果を得られるが、コンタクト層306の形状と同じ平行四辺形とすることにより作製工程が容易となる。つまり、基板表面上には図8(e)に示すように、コンタクト層306部分が凸状となった段差が生じており、ここにフォトレジストにより絶縁膜309に穴あけを行うパターンを形成することとなる。段差部分のレジスト厚は必ずしも均一ではなく、段差からの距離に応じて滑らかに厚さが変化している場合が多い。コンタクト層306形状と穴あけ形状を一致させることで、穴あけパターンは段差からの距離が一定となるため、パターンを均一に作製できる。
図8(a)に示すように、活性層電極307、波長制御電極308の電極パターンもコンタクト層306や絶縁膜309の形状を反映して、導波路方向に交差する面が、導波路方向に直交する方向に対して傾斜するように配線されている。活性層電極307、波長制御電極308は、孔309a同様に、導波路方向に直交する方向に電極を引き出しても良いが、電極パターンもフォトレジストを用いてリフトオンするかウエットエッチングにより形成するため、できるだけ段差の影響が少なくなるように配線することが望ましい。そのため、図8(a)に示す形状に代えて図9に示すような形状としても良い。
次に本実施例に係る分布活性DFBレーザの作製方法の一例を説明する。
最初に有機金属気相エピタキシャル成長法によりn型InPからなる下部クラッド301上に、活性導波路層302を作製する。次に、SiO2またはSiNをマスクとして活性導波路層302の一部をエッチングする。エッチングマスクをそのまま用い、選択成長法により非活性導波路層303を作製する。その後、塗布したレジストに電子ビーム露光法を用いて回折格子パターンを作製し、これをマスクとして半導体をエッチングし回折格子305を形成する。
p型InPからなる上部クラッド304の一部を有機金属気相エピキタシャル成長により再成長した後、横モードを抑制するために、SiO2またはSiNをマスクとして幅1.3μmのストライプ状に導波路を加工する。エッチングマスクをそのまま用い、選択成長法により、ストライプ状導波路の両側にp型半導体311/n型半導体312よりなるInP電流ブロック層313を成長する。
その後、選択成長マスクを除去し、残りのInP上部クラッド層304とGaInAsコンタクト層306を成長する。次に、SiNのマスクを用いて平行四辺形の島形状にコンタクト層306と上部クラッド304の一部をエッチングする。その後、コンタクト層306以外の部分にSiイオンを注入し、750度1分アニールによりn型InPとする。SiO2絶縁膜309を製膜し、活性導波路層302上と非活性導波路層303上の絶縁膜309の電流IaまたはIt注入部に対応する部分に孔309aを開ける。活性層電極307同士、非活性層電極308同士を素子上で短絡するように電極パターンをリフトオフにより形成する。
半導体の成長法としては、有機金属気相エピタキシャル成長法に限らず、分子線エピタキシャル成長法やその他の手段を用いても良い。回折格子の形成方法も電子線露光法に限らず、二束干渉露光法やその他の手段を用いても良い。
また、コンタクト層306と上部クラッド層304の一部をエッチングする方法としては、活性導波路層302と非活性導波路層303の長さが短く、繰返し周期も短いため、プラズマやイオンビームなどによるドライエッチングなどのサイドエッチング量の少ないエッチング方法が望ましいが、ウエットエッチングなどによる方法でも問題はない。
イオン注入により、p型をn型に反転させる際に用いるイオン種は、Si(シリコン)でなくともC(炭素)やS(硫黄)などの他のイオンでも良い。また、本実施例では、n型半導体基板を用いているため、クラッドにp型InPを用いており、p型をn型に反転させる必要があったが、n型InPクラッドの場合には、逆に、n型をp型に反転させる必要があり、Be(ベリリウム)やMg(マグネシウム)などを注入すれば良い。
本実施例では、分離溝314を形成した後にイオン注入を行っている。イオン注入は通常チャネリングを避け基板面から7度程度傾けた角度でイオンを入射する。このため、分離溝314の形状によっては分離溝314の下部にイオンを適切に入射することができない。そこでイオン注入を行ってから分離溝を形成するなどしても良い。
本実施例においては、活性導波路層302と非活性導波路層303が交互に周期的に配置された構造を例として説明したが、領域間の相互に流れる漏れ電流を抑制すると共に、導波する光の反射を抑制するものであるので、活性導波路層302と非活性導波路層303の組み合わせに限らず、活性導波路層を複数の領域に分割したり、非活性導波路を複数の領域に分割したりして電極を各々設けた場合などであっても本発明を適用できる。
本実施例において説明したように、一つの素子が複数の領域を有する場合に漏れ電流の影響は顕著に現れるが、領域が二つしかない場合であっても、相互に流れる漏れ電流を抑制し、且つ、導波する光の反射を抑制することができる本実施例は有用である。
本実施例では、分布活性DFBレーザへの適用例を示したため、活性導波路層302上の電極307と、非活性導波路層303上の電極308とが、それぞれ素子上で短絡された構造について説明したが、本発明は、それぞれの電極が独立していても適用できる。また、分布活性DFBレーザでなくとも、例えば、レーザと変調器を集積したデバイスにおけるレーザ部の電極と変調器の電極部などにも適用可能である。すなわち、直列接続された異なる導波路素子間の分離に適用可能である。
続いて、本実施例の作用について説明する。
電気的に領域を分離するためには、分離溝を形成して、物理的に電流経路を遮断することが確実である。しかしながら、分離溝は空気や誘電体など、半導体以外の材料により構成されるため、屈折率が半導体とは大きく異なる。
ここで、図10に、1.55μmで発光する8層の活性層とSHC層よりなる半導体基板の場合の上部クラッド厚と等価屈折率との関係を示す。本実施例のように、各領域間に分離溝314を形成することにより、分離溝314の下方に位置する上部クラッド厚(以下、分離溝部の上部クラッド厚と称す)が薄くなり、等価屈折率が低下する。導波路中を伝播する光のフィールド分布にもよるが、図10から、本実施例では、分離溝部の上部クラッド厚がおよそ1000nm程度より薄くなると急激に等価屈折率が低下することがわかる。
例えば、分離溝部の上部クラッド厚を2000nmとすると等価屈折率は3.1978であるが、分離溝部の上部クラッド厚を1500nmとすると等価屈折率は3.1977となり、また、分離溝部の上部クラッド厚を1000nmとすると等価屈折率は3.1974となり、分離溝部の上部クラッド厚を2000nmとした場合に比較して等価屈折率が0.0004低下する。更に、分離溝部の上部クラッド厚を500nmとすると、等価屈折率は更に低下して3.1941となり、分離溝部の上部クラッド厚を2000nmとした場合に比較して等価屈折率は0.0037低下する。したがって、分離溝314が深い場合には、反射が大きくなることになる。
一方、イオン注入により、p−n−p接合とすることにより電気を流れにくくする方法は、屈折率の変化量は分離溝314よりも少ないが、分離溝314よりも電気は流れやすくなる。
そこで、本実施例では、反射がそれほど大きくない領域で分離溝314を用い、分離溝による反射が大きくなる領域では、イオン注入により分離を行うことにより、電極間の分離を向上させつつ、反射を軽減する。
また、第1の実施例から第3の実施例で説明したように、分離溝を導波路に対して斜めに形成すれば、さらに屈折率差による反射の影響を軽減することができる。
なお、本実施例における、分離溝314およびイオン注入領域316を導波路から傾けたことによる作用・効果は、上述した第1の実施例と概ね同様であり、重複する説明は省略する。
本発明の第5の実施例について、図11に基づき詳細に説明する。
図11(a)は本実施例に係る半導体レーザの上面図であり、図11(b)は本実施例に係る半導体レーザの電極を除いた状態の上面図であり、図11(c)は本実施例に係る半導体レーザの電極及び絶縁膜を除いた状態の上面図である。
本実施例は、例えば、実施例4において説明した、活性層電極307、波長制御電極308、絶縁膜309に形成される孔309a、および、分離溝314の形状を、それぞれ変化させたものである。その他の構成は概ね同様であり、重複する説明は省略する。図11中、404は上部クラッド、406はコンタクト層、407は活性層電極、408は波長制御電極、409は絶縁膜、409aは絶縁膜409に形成された孔である。
上述した実施例1乃至実施例4においては、該屈折率境界面における光の反射を抑制するために、屈折率境界面を導波路方向に対して傾斜させる目的で、イオン注入領域を導波路方向に直交する方向に対して傾斜するように設けた。しかし、全てのイオン注入領域を導波路方向に直交する方向に対して同一の角度で傾斜させた場合、共振が生じる可能性がある。
そのため、本実施例では図11(c)に示すように、隣接するコンタクト層406が異なる傾きを有するように構成した。これにより、イオン注入領域において反射が生じた場合であっても、共振を抑制することが可能となる。
なお、図11においては分離溝およびイオン注入した面を、導波路方向に対する傾斜角が導波路方向に直交する面に対して対称になるように形成し、交互に傾斜角が等しくなるようにしたが、共振を抑制するためには分離溝またはイオン注入領域の傾斜角を全て異なる角度とすることが最も好適である。しかしながら、ある程度離れた位置にある分離溝であれば、相互に同一の傾斜角を有していたとしても問題は無い。
最も単純に考えた場合、同じ傾斜角を有する分離溝またはイオン注入領域が間欠的に配置されればよいので、分離溝またはイオン注入領域の導波路方向と直交する方向の幅をd、導波路方向に対する分離溝またはイオン注入領域の角度をθとすると、同じ傾斜角を有する分離溝間またはイオン注入領域間の距離xが、以下の(10)式の関係を満たすようにすることで、共振を抑制することができる。
x>2d/sin(2θ) ・・・(10)
更に、本実施例のように、分離溝もしくはイオン注入領域の境界面の傾斜角を交互に正負を逆にすることにより、活性層電極407同士、波長制御電極408同士を一体化するために各々の電極407,408を引き出す際、図11(a)に示すように、引き出し部407a,408aの幅を実施例1乃至実施例4の場合に比較して広く形成することができ、パターン形成を容易にすることができる。
本発明の第6の実施例について、図12に基づき詳細に説明する。
図12(a)は本実施例に係る半導体レーザの上面図であり、図12(b)は図12(a)に示すx−x´断面図であり、図12(c)は本実施例に係る半導体レーザの電極を除いた状態の上面図であり、図12(d)は本実施例に係る半導体レーザの電極及び絶縁膜を除いた状態の上面図であり、図12(e)は図12(a)のy−y´断面図である。
本実施例は、例えば、実施例3に比較して、活性層電極307、波長制御電極308、絶縁膜309に形成される孔309a、分離溝314、およびイオン注入領域316の形状が異なるものである。さらに、イオン注入後に実施例4の同様に分離溝を形成している。イオン注入を行うとイオン注入エネルギーやイオン注入回数にもよるが、基板表面に近い部分の注入不純物濃度が低くなる。通常、イオン注入エネルギーを変えて多数回注入を行うことによって、表面から所望の深さまでのイオン濃度を均一にする。したがって、イオン注入後に分離溝を形成することで表面の不純物濃度の低い部分を物理的に除去することになり、イオン注入回数を減らすことができるという効果もえることが可能である。
その他の構成は概ね同様であり、重複する説明は省略する。図12中、501は下部クラッド、502は活性導波路層、503は非活性導波路層、504は上部クラッド、505は回折格子、506はコンタクト層、507は活性層電極、508は波長制御電極、509は絶縁膜、509aは絶縁膜509に形成された孔、510は共通電極、514は分離溝、515は光導波路層、516はイオン注入領域、523は誘電体である。
上述した実施例1乃至実施例4においては、該屈折率境界面における光の反射を抑制するために、屈折率境界面を導波路方向に直交する方向に対して傾斜させる目的で、分離溝を導波路方向に直交する方向に対して同一の角度で傾斜するように設けた。しかし、全ての分離溝を導波路方向に対して同一の角度で傾斜させた場合、共振が生じる可能性がある。従って、実施例5では隣接する分離溝414の傾斜角が導波路方向に直交する面に対して対称となるように構成した。これにより、分離溝414において反射が生じた場合であっても、共振を抑制することを可能とした。これに対し、本実施例では、図12においては分離溝514の導波路方向に対する傾斜角が全て異なるように構成している。
なお、ある程度離れた位置にある分離溝514同士においては、相互に同一の傾斜角を有していたとしても問題は無い。最も単純に考えた場合、同じ傾斜角を有する分離溝514が間欠的に配置されればよいので、分離溝514の導波路方向と直交する方向の幅をd、導波路方向に直交する方向に対する分離溝514の角度をθとすると、同じ傾斜角を有する分離溝514間の距離xが、上述した(10)式の関係を満たすようにすることで、共振を抑制することができる。
更に、本実施例においては、図12(a)に示すように、活性層電極507、波長制御電極508を、導波路方向に交差する面が導波路方向に対して直交するように形成している。これにより、電極507,508を引き出す際に、該電極507,508が分離溝514上に重なる状態となるため、作製工程はやや複雑になる可能性がある。しかしながら、分離溝514の傾斜角が全て異なるように構成する場合、全ての電極507,508を分離溝514の傾斜角に一致させると、電極幅が異なるために抵抗がばらつき、電流注入が不均一となる虞がある。従って、図12(a)に示すように、電極507,508の導波路方向に交差する面を、導波路方向に対して直交するように形成し、電極507,508の形状を一定に保てば好適である。
本発明は、光ファイバ通信用光源および光計測用光源として用いられる波長可変半導体レーザに関し、例えば、光通信における光波長(周波数)多重システム用光源、および広帯域波長帯をカバーする光計測用光源に適用可能である。
本発明の第1の実施例に係る半導体レーザの説明図である。
本発明の第1の実施例に係る半導体レーザの他の例を示す上面図である。
屈折率が互いに異なる物質の境界面における光の屈折率を示す説明図である。
バンドギャップ波長と屈折率差との関係を示すグラフである。
屈折率境界への入射角に対する反射波の結合率を示すグラフである。
本発明の第2の実施例に係る半導体レーザの説明図である。
本発明の第3の実施例に係る半導体レーザの説明図である。
本発明の第4の実施例に係る半導体レーザの説明図である。
本発明の第4の実施例に係る半導体レーザの他の例を示す上面図である。
上部クラッド厚と等価屈折率との関係を示すグラフである。
本発明の第5の実施例に係る半導体レーザの説明図である。
本発明の第6の実施例に係る半導体レーザの説明図である。
従来の分布活性DFBレーザの説明図である。
従来の他の分布活性DFBレーザの断面図である。
従来の他の分布活性DFBレーザの断面図である。
従来の他の分布活性DFBレーザの断面図である。
従来の他の分布活性DFBレーザの断面図である。
符号の説明
1,101,201,301,501 下部クラッド
2,102,202,302,502 活性導波路層
3,103,203,303,503 非活性導波路層
4,104,204,304,504 上部クラッド
5,105,205,305,505 回折格子
6,106,206,306,506 コンタクト層
7,107,207,307,507 活性層電極
8,108,208,308,508 非活性層電極
9,109,209,309,509 絶縁膜
9a,109a,209a,309a,509a 孔
10,110,210,310,510 共通電極
16,116,216,316,516 イオン注入領域
122 半絶縁体
223,523 誘電体