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JP4999084B2 - インスタント粉末茶 - Google Patents

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Description

本発明は、茶ポリフェノールを高濃度に含有し、茶本来の香味、滋味および口当たりに優れたインスタント粉末茶に関する。
茶は、爽やかな香味と適度な刺激からなる清涼感、うまみやコク・奥深い苦渋味からなる滋味、トロリとしたのど越し、まろやかな口当たり、甘さ・青さ・香ばしさのバランスの取れた風味などの特長を有する嗜好飲料である。茶の香味や滋味を最大限に楽しむ為には、茶葉からその都度適切な条件で抽出を行うのが一番であるが、茶殻の始末が必要ない点や携帯性に優れている点から、近年では市販容器詰め品やインスタント粉末茶などの形態を利用して茶飲料を手軽に楽しめる機会が増えている。しかしながら、容器詰め茶飲料は食品衛生上の理由から製造する際の加熱滅菌工程が不可欠であり、そのような過剰な加熱処理を行った際には、変色や香味・口当たりの変化など茶の風味に好ましくない影響を与え、本来の茶の味からは程遠くなる上に、保存時における経時的な劣化も大きくなる。一方、水分をほとんど含有しないインスタント粉末茶は保存における安定性に優れており、また製造時の過剰な滅菌工程の必要も無いために、茶葉からその都度抽出された本来の茶飲料とほとんど変わらぬ風味を有し、より嗜好性に優れた茶飲料を楽しむ事が可能である。
また、茶の苦渋味の主成分である茶ポリフェノールには強い抗酸化作用、血中脂質上昇抑制、血糖上昇抑制や発ガン抑制等の効果が知られている。これらの生理機能をより良く発現させるためには、体内吸収や作用濃度域の点から、より多くの量または高濃度での摂取が重要であるが、茶ポリフェノール濃度が高くなると苦渋味が強くなりすぎてしまい、滋味に及ぼす影響の大きさが問題となってくる。これまでにも茶ポリフェノールを高濃度に含有するインスタント粉末茶として、非重合体カテキン類とサイクロデキストリンを含有し、シュウ酸を非重合体カテキン類1重量部に対して0.02〜0.06重量部含有することを特徴としたインスタント粉末茶(特許文献1)や非重合体カテキン類1質量部に対して0.5〜1.1質量部のサイクロデキストリンと0.0003〜0.003質量部のソーマチンを含有することを特徴としたインスタント粉末茶(特許文献2)などが知られている。しかしながら、エグ味を有するシュウ酸含量の調整のみでは茶ポリフェノール高含有時における滋味のコントロールは難しく、また、ソーマチンはたんぱく質系の甘味料であるために、その調整や添加は本来有する茶の滋味を損ない、異質な風味を呈してしまうという問題点があげられる。
また、風味の良好なインスタント粉末茶の製造法としては、茶類エキス重量に対するサイクロデキストリン重量割合を0.05から5に調整し、乾燥粉末化する方法(特許文献3)や茶類エキスとDE10以下の分岐デキストリンからなる水溶液を、その固形分濃度かつ固形分中の分岐デキストリンの割合を調整し、噴霧乾燥してなる方法(特許文献4)などが開示されている。しかしながら、上記のいずれの方法においても、高濃度の茶ポリフェノールを含有するインスタント粉末茶に対してはデキストリンの添加量も多くなってしまうために、好ましい香味までもがマスキングされてしまったり、糊っぽい口当たりとなってしまう。
特開2004−159505号公報 特開2006−136244号公報 特開2000−253820号公報 特開平05−304890号公報
以上のように、これまでに開示されている技術では、茶が本来有する香味・滋味および口当たりを損なわずに、高濃度の茶ポリフェノールを含有したインスタント粉末茶を提供することは困難であった。
そこで本発明では、茶ポリフェノールを高濃度に含有しているにも関わらず、茶本来の香味・滋味および口当たりに優れた、嗜好性と機能性を兼ね備えたインスタント粉末茶の提供を課題とする。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、高濃度の茶ポリフェノール、およびストリクチニンを含有するインスタント粉末茶中のエピ体カテキン類比率を調整すること、さらには茶ポリフェノールに対するストリクチニンの含有重量比を調整することで、茶本来の香味や滋味および口当たりに優れたインスタント粉末茶が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のインスタント粉末茶は請求項1記載のとおり、
(A)茶ポリフェノール、
(B)カテキン類、
(C)ストリクチニン
を含有し、カテキン類のうち70重量%以上がエピ体カテキン類であることを特徴とする。
また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載のインスタント粉末茶において、(A)茶ポリフェノールの含有量が10〜80重量%であることを特徴とする。
また、請求項3記載の本発明は、請求項1又は2記載のインスタント粉末茶において、
(A)茶ポリフェノールと(C)ストリクチニンの含有重量比〔(C)/(A)〕が0.010〜0.060であることを特徴とする。
また、請求項4記載の本発明は、請求項1乃至3記載のインスタント粉末茶を、水100mLに対して0.2〜10g溶解したインスタント粉末茶飲料であって、酒石酸鉄試薬法における茶ポリフェノール検出濃度が50〜1000mg/100mLであることを特徴とする。
本発明によれば、インスタント粉末茶中のエピ体カテキン類比率を調整すること、さらには茶ポリフェノールに対するストリクチニンの含有重量比を調整することで茶ポリフェノールを高濃度に含有し、かつ茶本来の香味・滋味および口当たりに優れたインスタント粉末茶の提供が可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるインスタント粉末茶とは、水、湯、牛乳、茶類、果汁入りエキスおよび水溶性エキスなどの水性媒体を用いて液体状に溶解して飲用等する茶における、液体状に溶解する前の粉末状態を意味する。また、上記インスタント粉末茶を液状に溶解せしめたインスタント粉末茶飲料中の溶解量は、デジタル屈折計などで測定された可溶性固形分濃度(Brix)から求められる。
本発明のインスタント粉末茶は、(A)茶ポリフェノールを含有する。
茶ポリフェノールは、茶における主要成分であり、茶樹(Camellia sinensis)の主に葉、茎、およびこれらを緑茶、紅茶、ウーロン茶、プアール茶等に加工してなる茶類を水、熱水、有機溶媒、含水有機溶媒等により抽出して得られる。茶ポリフェノールの具体的な化合物としては、(±)−カテキン、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(±)−ガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート等のカテキン類およびこれらの加水分解生成物である没食子酸の他、これらの重合体であるテアシネンシン、テアフラビン、テアルビジン、または加水分解型タンニンであるストリクチニン、テオガリン、グルコガリン等が挙げられる。本発明において茶ポリフェノールは、公定定量法である酒石酸鉄試薬法(日本食品分析センター編、「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」、中央法規、2001年7月、p.252に記載)によって定量される成分である。
また、上記8種類の(B)カテキン類のうち、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレートの4種類はエピ体カテキン類と称されている。本発明では、カテキン類中のエピ体カテキン類の割合(エピ体カテキン類比率)を70重量%以上に調整することで、香味・滋味のバランスに優れたインスタント粉末茶が得られる。エピ体カテキン類比率は好ましくは80重量%以上であり、更に好ましくは85重量%であり、90重量%以上であると最も好ましい。
本発明のインスタント粉末茶は(A)茶ポリフェノールを10重量%〜80重量%含有することが好ましい。茶ポリフェノール量が下限を下回ると、望ましい生理効果が期待できず、上限を上回ると溶解性と風味の悪化を招く。インスタント粉末茶における風味のバランスから、茶ポリフェノールの含有量は好ましくは12重量%〜50重量%であり、より好ましくは18重量%〜45重量%であり、更に好ましくは25重量%〜40重量%であり、特に好ましくは30重量%〜35重量%である。
さらに本発明のインスタント粉末茶では、(A)茶ポリフェノールと(C)ストリクチニンの含有重量比〔(C)/(A)〕が0.010以上であることが好ましい。茶ポリフェノールに対するストリクチニン含有量が多いと、滋味にすぐれた粉末茶が得られ、その含有重量比は好ましくは0.012以上であり、より好ましくは0.015以上であり、更に好ましくは0.020以上であり、特に好ましくは0.025以上であり、最も好ましくは0.030以上である。なお、通常上限は0.060であり、これを上回ると茶本来の有する成分のバランスを損なうこととなり、好ましくない。ストリクチニンは中国茶などに多く含まれている事、また茶葉の発酵に従ってその含有量は減少していく事などが知られており、インスタント粉末茶の原料とする茶葉を適宜選択および組み合わせて、目標とする値に調整することが可能である。なお、ストリクチニンは抗アレルギー作用を有するとされているが、その含量の調整が茶本来の香味・滋味および口当たりの改善に効果があるという知見はこれまでになされておらず、全く新規なものである。
一般的にインスタント粉末茶の製造方法としては、原料茶葉の抽出または圧搾・濃縮・乾燥・粒型化などの工程からなる。また予め、市販されている粉末状あるいは液体状の茶抽出物を用いて、上記工程を簡略化することも可能である。茶抽出物を用いると、作業が簡易化するのみならず、安定した成分値を得る事ができるため好ましい。
抽出工程においては、原料となる茶葉類は、たとえば、紅茶、ウーロン茶、緑茶、ほうじ茶などいかなるものでも使用することができるが、茶葉類の他に麦、はと麦、玄米、大豆、そばなどの穀物茶類、どくだみ、霊芝、ギムネマ、バナバ、イチョウ葉、モロヘイヤ、羅漢果、アルファルファ、よもぎ、マテ、ギャバロン、朝鮮人参、杜仲、ルイボス、アロエなどの健康茶類、ラベンダー、ペパーミント、レモングラス、カモミールなどのハーブや、シソ、ウメなどを組み合わせて抽出を行っても構わない。本発明においては、ストリクチニンを多く含有することから不発酵茶の緑茶葉を原料の一部に用いるのが好ましい。
抽出に使用する水性溶媒は、単なる水道水、イオン交換水、蒸留水などから選択され、これらにデキストリン、環状オリゴ糖、増粘多糖類、安定剤、乳化剤、アルコール類、抗酸化剤、pH調整剤などを適宜添加したものでもよい。例えばショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤を加えると茶葉からの抽出効率が向上し、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加するとカテキン類の減少が抑制され、環状オリゴ糖やデキストリンなどの添加は渋味のマスキングと香味の保持に効果的である。
抽出温度は、特に限定するものではないが、通常10〜100℃、好ましくは40〜80℃であり、原料茶葉に応じて好ましい風味を得るために適宜調整すれば良い。高すぎる抽出温度では、エピ体カテキン類比率が減少してしまい、また低すぎる抽出温度では抽出効率が著しく低下してしまう。抽出時間は通常1〜60分である。成分の溶出率の関係から、抽出温度が低いほど長時間の抽出が望まれ、例えば抽出温度が60℃の場合は溶出率及び溶出成分の割合から20分程度の抽出時間が適している。
抽出時の加水倍率は、茶葉1に対して水性溶媒1〜100重量倍率、好ましくは5〜30重量倍率で浸漬、あるいは攪拌しながら抽出を行う。水性溶媒の量が上限を上回ると、濃縮や乾燥に労力がかかり、長時間の加熱による品質の劣化や生産効率の低下によるコストアップの問題が生じる。また水性溶媒の量が下限を下回ると抽出効率が低下してしまう。抽出設備としては、ニーダ式(バッチ式)、カラム式などがあげられる。
抽出後に残渣を粗分離し抽出液を得ることができるが、溶媒の種類、温度や倍率を変化させて残渣を再度抽出しても構わない。抽出液は必要に応じて遠心分離やろ過等の清澄化処理を行う。また抽出液に電気分解処理やアミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、タンナーゼなどの酵素処理、活性炭処理などを行うことで、不快臭や雑味を取り除き、好ましい水色を維持することができる。
濃縮工程は、抽出液を予め濃縮することで、乾燥の経費を少なくするために行うものであり、必要に応じて行えばよい。蒸発濃縮法、減圧濃縮法、凍結濃縮法、逆浸透膜濃縮法などの周知の方法により濃縮を行うことができる。特に、香気成分の揮散、変性が少ない逆浸透膜濃縮、凍結濃縮が好ましい。必要に応じて加熱殺菌などの工程を追加しても構わないが、熱負荷が強すぎると品質悪化の恐れがあるので、70〜95℃で5〜60秒程度の条件が好ましい。
乾燥工程では、抽出液(或いは濃縮液)の乾燥粉末化を行うが、通気乾燥、並行流乾燥、ドラム乾燥、ベルト乾燥、回転乾燥、気流乾燥、流動層乾燥、常圧凍結乾燥、泡沫層乾燥、膨化乾燥、熱風乾燥、電磁波乾燥、超音波乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥、凍結真空乾燥、などいかなる乾燥方法を用いてもよい。特に乾燥中の香気成分のロスが少ない凍結真空乾燥や噴霧乾燥が好ましい。また、得られた乾燥物の形状は、微粉末にしてもよいし、周知の方法により、顆粒状、タブレット状、ブロック状などに粒型化して用いることもできる。
またインスタント粉末茶の香味を増強させる方法として、抹茶や粉茶などの不溶性成分を含有する粉末状茶葉と混合したり、茶葉からフレーバー成分を水蒸気蒸留、減圧蒸留、溶剤抽出などの公知の方法により抽出し、適当な媒体に移行させて添加するなどの方法があげられ、香料を用いるよりも自然な香味及び風味が付与され好ましい。
本発明におけるインスタント粉末茶は上記工程から得られる茶抽出物の他にデキストリン、環状オリゴ糖、植物性油脂、動物性油脂、果汁、食品用エキス、酒類、ハーブ・スパイス類、香辛料抽出物、pH調整剤、甘味料、酸味料、調味料、酵素、糊料、ゲル化剤、増粘多糖類、安定剤、乳化剤、着色料、香料、酸化防止剤、日持向上剤、栄養強化剤、保存料等の副成分を含有してもよい。上記工程内のいずれにおいても副成分との混合が可能であり、それぞれ用途に応じた好ましいタイミングでの添加が可能である。特にデキストリンや環状オリゴ糖などは乾燥工程前に混合することで、乾燥・粒径化などの作業性が向上し、好ましくは通常茶固形分に対して0.1〜3倍固形重量を添加する。デキストリンや環状オリゴ糖の添加量が多すぎると味への影響が大きく、少ないと乾燥前の濃縮工程で熱負荷がかかりやすい。また粉末状の副成分は乾燥工程後の添加も可能であり、乾燥工程後に添加を行うと添加量の調整が容易であること、および余分な熱がかからないため副成分の劣化が抑制されることから好ましい。
インスタント粉末茶の水性媒体に対する溶解量は、溶解の均一性および作業性の観点から0.2〜10g/100mLが好ましく、0.5〜8.0g/100mLがさらに好ましく、1.0〜5.0g/100mLが特に好ましく、1.5〜3.0g/100mLが最も好ましく、これらの範囲から選ばれてなる最適量を水性媒体50〜400mL、好ましくは80〜200mL、最も好ましくは100〜160mLに溶解させたものを一杯当たりの容量とすると色調及び風味の面で好適である。インスタント粉末茶を製品化する際には、これら最適溶解量をパッケージに表示するのが好ましい。
上記通常飲用濃度に溶解したインスタント粉末茶飲料中の茶ポリフェノール量は公定定量法である酒石酸鉄試薬法(日本食品分析センター編、「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」、中央法規、2001年7月、p.252に記載)によって検出することができ、本発明では、その検出濃度は50〜1000mg/100mLであるのが好ましく、100〜800mg/100mLであるのがより好ましく、150〜500mg/100mLであるのが更に好ましく、200〜400mg/100mLであるのが特に好ましく、250〜300mg/100mLであるのが最も好ましい。茶ポリフェノール量が下限を下回ると、望ましい量の茶ポリフェノールを摂取することが難しく、また上限を超えると茶の苦味が際立つため飲用に適さない。
本発明のインスタント粉末茶の包装形態は、特に制限はなく、紙、プラスチック、アルミなどからなる袋、瓶、缶、プラスチックボトル等の容器に大容量が詰められ、スプーンで計量するタイプの形態を用いても良いが、分包タイプのものが一杯分を簡便に調整できる上で好ましい。包装品の材質は酸素・湿度透過性の低いものの方がインスタント粉末茶の品質を維持する上で好ましく、窒素ガスを充填するとより好ましい。アルミ袋などの大容量に詰められたインスタント粉末茶をカップ式自動販売機やディスペンサー等で使用することも可能である。
本発明のインスタント粉末茶は、水、湯、牛乳、茶類、果汁入りエキスおよび水溶性エキスなどの水性媒体に溶かして飲むほか、クッキー、クラッカー、ビスケット、ドーナツ、ガム、チョコレート、キャンディー、ラムネ、グミ、キャラメル、饅頭、大福、羊羹、せんべい、ゼリー、プリン、アイス、ソフトクリーム、ケーキ、ヨーグルト等の菓子・デザート類の他、パン、シリアル、ショートブレッド、ジャム、スプレッドクリーム、チョコレートコーティング剤等の飲食品に配合できる。
また、錠剤、顆粒等のサプリメント、老人用流動食、病人用流動食、離乳食、嚥下補助食品等の流動食、各種栄養剤にも配合できる。これら食品中のインスタント粉末茶の含有量は食品の種類によっても異なるが、一般に0.5〜100重量%、特に5〜80重量%が好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
インスタント粉末茶/飲料中の各成分含量は適宜溶解・希釈した後に0.45μmのメンブレンフィルター(DISMIC−13HP;ADVANTEC)でろ過し、それぞれ以下の方法で行った。
((A)茶ポリフェノール含有量の測定法)
茶ポリフェノール含有量は、日本食品分析センター編、「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」、中央法規、2001年7月、p.252に記載の茶ポリフェノール公定法である酒石酸鉄試薬法に従って求めた。
((B)カテキン類含有量の測定法)
カテキン類含有量は以下の条件でHPLC法を用いて行い、(±)−カテキン、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(±)−ガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレートの合計をカテキン類含有量、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレートの合計をエピ体カテキン類含有量とした。
装置 :アライアンスHPLC/PDAシステム(日本ウォーターズ株式会社)
カラム:Mightysil RP−18 GP(5μm)、4.6mmφ×150mm(関東化学株式会社)
移動相:A液 アセトニトリル:0.05%リン酸水=25:1000
B液 アセトニトリル:0.05%リン酸水:メタノール=10:400:200 (体積比)
グラジエント:注入3分後から25分後にA液100%からB液100%に達するリニアグラジエント
流速:1mL/min
検出:UV230nm
カラム温度:40℃
((C)ストリクチニン含有量の測定法)
ストリクチニン含有量は検出波長をUV267nmとする以外はカテキン類の分析方法と同条件で行った。
<試験例1>
[ストリクチニン含有茶抽出物の作製]
60℃のイオン交換水10000mLにアスコルビン酸を500ppmとなるように添加し、中国産の茶葉(S)1000gを加えて攪拌を行いながら抽出する。5分後に100メッシュのステンレスフィルターで茶葉を分離し、続いて生産濾紙(ADVANTEC、No.28)による吸引濾過を行って沈殿物や浮遊物を取り除き、茶抽出液を得た。これを茶固形分濃度が25重量%となるまでエバポレーターで濃縮した後、凍結乾燥させて茶抽出物S((A)茶ポリフェノール:28.6重量%、(C)ストリクチニン:1.5重量%、エピ体カテキン類比率:88.7重量%)220gを得た。
[インスタント粉末茶の製造(1)]
60℃に加温したイオン交換水1000mLにアスコルビン酸Naを2.5g溶解し、日本産の緑茶葉(N)48gを加えて、攪拌を行いながら20分間抽出した。100メッシュのステンレスフィルターで茶葉を分離し、続いてネル濾過により抽出液中の沈殿物や浮遊物を取り除き、茶抽出液を800g得た。半量の茶抽出液400gを20℃まで冷却後、液量が約半分になるまで逆浸透膜にて濃縮し、先述の茶抽出物Sを25g、およびβ−サイクロデキストリン(セルデックスB−100、日本食品加工製)を25g加えて調合を行い、凍結乾燥機で乾燥させて実施例1のインスタント粉末茶54.3gを得た。
比較として、残った茶抽出液400gに茶抽出物Sを25g、およびβ−サイクロデキストリン(セルデックスB−100、日本食品加工製)を25g加えて茶ポリフェノール濃度が300mg/100mLとなるように希釈・調合を行い、200mL容缶に80℃でホットパック充填し、オートクレーブにて121℃10分の殺菌を行って比較例1の容器詰茶飲料を調製した。
[評価試験]
実施例1のインスタント粉末茶を1.8g/100mLの割合で80℃に加温したイオン交換水に溶解してインスタント粉末茶飲料を調製した。このインスタント粉末茶飲料、および比較例1の容器詰茶飲料に関して、パネリスト5名の官能により、香味・滋味および口当たりの評価を行った。評価は(◎:非常に良い、○:良い、△:やや良い、×:良くない)の四段階で行い、それぞれの結果から総合評価を求めた。また、各飲料は適宜希釈した後、0.45μmのディスクフィルター(ADVANTEC)に通液させ、上記に示す方法で(A)茶ポリフェノール、(B)カテキン類含量、(C)ストリクチニン、及び参考値として茶ポリフェノール中に多く含有されている没食子酸、テオガリン、およびカフェイン(方法:いずれもHPLC法、装置:waters)、金属(成分:Mg,Al,P,S,K,Ca,Mn,Fe,Ni,Cu,Zn、方法:ICP−AES法、装置:リガク)、アミノ酸含量(成分:Asp,Glu,Asn,Ser,Gln,Arg,Gly,Ala,テアニン、ギャバ、方法:OPAプレカラム誘導体化HPLC法、装置:waters)を測定した。結果を以下の表1に示す。
実施例1のインスタント粉末茶を溶解した粉末茶飲料では、急須を用いて淹れた本来の茶飲料の味を良く再現していたが、比較例1の容器詰め茶飲料では香味や滋味に劣る異質なものと感じられた。また容器詰め茶飲料では製造直後から二次オリの発生が見られ、外観的にも好ましくないものとなっていた。
<試験例2>
[インスタント粉末茶の製造(2)]
中国産の緑茶葉(X、Y)および日本産の緑茶葉(Z)を、下記表2に基づいた処方、及び抽出条件にてアスコルビン酸およびショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステルP−1670、三菱化学フーズ製)を含むイオン交換水に投入し、攪拌しながら抽出を行い、100メッシュのステンレスフィルターで茶葉を分離した。続いてネル濾過により抽出液中の沈殿物や浮遊物を取り除き、茶抽出液を得た。この茶抽出液を20℃まで冷却後、逆浸透膜を用いて茶固形分濃度が約15重量%となるまで濃縮し、デキストリン(NSD700、ニッシ製)およびβ−サイクロデキストリン(セルデックスB−100、日本食品加工製)を加えて80℃20秒(湯浴)の条件で殺菌後、凍結乾燥機で乾燥させ、実施例2〜7のインスタント粉末茶を得た。また、比較として中国産緑茶葉(X)を用い、殺菌条件を121℃10分(オートクレーブ)に変化させた以外は上記実施例2〜7と同様の方法により、比較例2のインスタント粉末茶を得た。
[評価試験]
各粉末茶は前記した方法にて(A)茶ポリフェノール、(B)カテキン類、(C)ストリクチニン含量を測定した。
また各粉末茶10gを80℃に加温したイオン交換水1000mLに溶解し、パネリスト5名の官能により、香味・滋味および口当たりの評価を行った。評価は(◎:非常に良い、○:良い、△:やや良い、×:良くない)の四段階で行い、それぞれの結果から総合評価を求めた。結果を以下の表2に示す。
表2に示したように、同じ茶葉を用いてもその抽出条件を変化させてエピ体カテキン類比率、および(A)茶ポリフェノールに対する(C)ストリクチニンの含有重量比〔(C)/(A)〕を好ましい範囲に調整することで、香味・滋味および口当たりの高い評価が得られた。
また、日本産緑茶葉(Z)を用いて作製された実施例6のインスタント粉末茶は(A)茶ポリフェノールに対する(C)ストリクチニンの含有重量比〔(C)/(A)〕が0.006と低いため、滋味に劣っていたが、中国産緑茶葉(X)とブレンドして同条件で抽出を行う事で、実施例7に示すように(A)茶ポリフェノールに対する(C)ストリクチニンの含有重量比〔(C)/(A)〕が0.015と高くなり、官能評価も好ましい方向に変化した。比較例2に示すように、強すぎる殺菌条件におかれたインスタント粉末茶では、エピ体カテキン類比率、および(A)茶ポリフェノールに対する(C)ストリクチニンの含有重量比〔(C)/(A)〕が好ましい範囲からはずれ、香味・滋味における評価も好ましくないものとなっていた。
<試験例3>
[インスタント粉末茶の製造(3)]
日本産緑茶葉(Z)200gをアスコルビン酸ナトリウム2g、およびショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステルP−1670、三菱化学フーズ製)2gを含む60℃のイオン交換水4000mLに投入し、攪拌しながら20分間抽出を行い、100メッシュのステンレスフィルターで茶葉を分離した。続いてネル濾過により抽出液中の沈殿物や浮遊物を取り除き、20℃まで冷却して茶葉Z抽出液3500mLを得た。この茶葉Z抽出液500gにそれぞれアスコルビン酸、デキストリン(NSD700、ニッシ製)およびβ−サイクロデキストリン(セルデックスB−100、日本食品加工製)、試験例1で作製した茶抽出物S、および市販の茶抽出物ポリフェノンKN((A)茶ポリフェノール:39.6重量%、(C)ストリクチニン:0.26重量%、エピ体カテキン類比率:88.7重量%、三井農林製)、ポリフェノン70S((A)茶ポリフェノール:86.0重量%、(C)ストリクチニン:0.26重量%、エピ体カテキン類比率:83.0重量%、三井農林製)を下記表3に従った処方にて混合溶解し、80℃20秒(湯浴)の条件で殺菌後、凍結乾燥機にかけて、実施例8〜12のインスタント粉末茶を得た。
[粉末茶の成分および評価]
各粉末茶は前記した方法にて(A)茶ポリフェノール、(B)カテキン類、(C)ストリクチニン含量を測定した。
また各粉末茶10gを80℃に加温したイオン交換水1000mLに溶解し、パネリスト5名の官能により、香味・滋味および口当たりの評価を行った。評価は(◎:非常に良い、○:良い、△:やや良い、×:良くない)の四段階で行い、それぞれの結果から総合評価を求めた。結果を以下の表3に示す。
表3に示したように、エピ体カテキン類比率がほぼ同じインスタント粉末茶においても、処方を変化させてインスタント粉末茶中の(A)茶ポリフェノール濃度、および(A)茶ポリフェノールに対する(C)ストリクチニンの含有重量比〔(C)/(A)〕を好ましい範囲に調整することで、香味・滋味および口当たりの高い評価が得られた。特に、ポリフェノンKNを用いて作製された実施例8のインスタント粉末茶は(A)茶ポリフェノールに対する(C)ストリクチニンの含有重量比〔(C)/(A)〕が0.007と少なく、滋味に劣っていたが、(C)ストリクチニンを多く含有する茶抽出物Sと混合して処方を調整する事で、実施例10に示すように評価は好ましい方向に変化した。
また実施例11、12に示すように、(A)茶ポリフェノールを高濃度に含むポリフェノン70Sを原料として用いたインスタント粉末茶では、インスタント粉末茶中の(A)茶ポリフェノール濃度、および(A)茶ポリフェノールに対する(C)ストリクチニンの含有重量比〔(C)/(A)〕が好ましい範囲からはずれ、滋味・香味における官能の評価もあまり高くないものとなっていた。
<試験例4>
[粉末茶飲料の評価]
試験例2にて調製した実施例2の粉末茶において、80℃に加温したイオン交換水1000mLあたりの溶解量を、下記表4のように変化させて調合した実施例13〜19の粉末茶飲料に関してパネリスト5名の官能により、香味・滋味および口当たりの評価を行った。評価は(◎:非常に良い、○:良い、△:やや良い、×:良くない)の四段階で行い、それぞれの結果から総合評価を求めた。インスタント粉末茶飲料中の可溶性固形分重量はデジタル屈折計 (型番:RX−5000α (株)アタゴ)にて測定した。さらに、茶飲料を0.45μmのメンブレンフィルターに通液後、(A)茶ポリフェノール、(B)カテキン類、(C)ストリクチニン含量を上記方法にて測定した。結果を表4に示す。
表4に示したように、粉末茶の溶解量によって、粉末茶飲料の嗜好性も変化した。特に実施例13に示すように、粉末茶の溶解量が0.2g/100mLを下回ると味が薄くて好ましくなく、実施例19に示すように粉末茶の溶解量を8.0g/100mLとした場合は、味が濃すぎて苦渋味が強く、それぞれあまり高い評価は得られなかった。しかしながら、粉末茶を0.8g〜4.0g/100mLの割合で溶解し、粉末茶飲料中の(A)茶ポリフェノール濃度を149.0mg〜745.2mg/100mLの間に調整したもの(実施例14〜18)は取り扱いも容易であり、香味・滋味および口当たりにもすぐれていた。
本発明によれば、茶ポリフェノールを高濃度に含有しているにも関わらず、茶本来の香味・滋味および口当たりに優れたインスタント粉末茶およびインスタント粉末茶飲料が得られる点において産業上の利用可能性を有する。

Claims (4)

  1. (A)茶ポリフェノール、
    (B)カテキン類、
    (C)ストリクチニン
    を含有し、カテキン類のうち70重量%以上がエピ体カテキン類であり、ストリクチニン含有量が0.1重量%以上であるインスタント粉末茶(但し、粉末茶葉を除く)
  2. (A)茶ポリフェノールの含有量が10〜80重量%であることを特徴とする請求項1記載のインスタント粉末茶。
  3. (A)茶ポリフェノールと(C)ストリクチニンの含有重量比〔(C)/(A)〕が0.010〜0.060であることを特徴とする請求項1又は2記載のインスタント粉末茶。
  4. 請求項1乃至3記載のインスタント粉末茶を、水100mLに対して0.2〜10g溶解したものであって、酒石酸鉄試薬法における茶ポリフェノール検出濃度が50〜1000mg/100mLであるインスタント粉末茶飲料。
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