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JP4965000B2 - 肝臓関連疾患治療薬 - Google Patents

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Description

本発明は、脂肪組織由来多系統前駆細胞(以下、「ADMPC」ともいう)を含む肝臓関連疾患治療薬などに関する。
なお、本願は、2009年8月28日出願の日本国特許出願第2009−198166号に対して優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2009−198166号の全内容を本願に組み込むものである。
血友病、家族性高コレステロール血症などの遺伝性疾患は、代表的な難治疾患であり、その治療法の多くは、対症療法によって患者の状態の悪化を抑制しているにすぎない。
例えば、血友病は、肝臓にて発現する第VIII因子または第IX因子といった血液凝固因子をコードする遺伝子の変異に起因する遺伝疾患であり、その治療は欠損したこれらの因子を体外から補充することによって行われる。しかし、患者自身の免疫応答が循環抗凝固因子を誘発する場合があり、治療の妨げとなることがある。
また、家族性高コレステロール血症(FH)は、肝臓にて発現するLDL(low-density lipoprotein)受容体の欠損による遺伝性疾患であり、そのホモ接合体ではスタチンなどのコレステロール降下剤は全く効果を示さない。FH患者は定期的な透析により血中のコレステロール値を低下させる必要があるが、その身体的・経済的負担は大きく、しかも動脈硬化の進行を妨げることはできない。
肝細胞の機能の低下または消失に起因するこれらの疾患の治療法として、肝移植や健常者から単離した肝細胞の移植が行われているが、ドナー不足の問題や患者への身体的負担の大きさもあって、未だ広く行われていない。一方で、再生医学や細胞組織工学・遺伝子工学などを駆使した再生医療のめざましい発展によって、難治疾患克服への道筋が示されている。これら再生医療に用いられる細胞素材の供給源として、間葉系組織由来成体幹細胞、特に安全かつ簡便に採取され、かつ培養にて増殖可能な脂肪組織由来体性幹細胞が注目されている。しかし、このような幹細胞を体外で特定の組織または細胞に分化誘導・培養するためには膨大な費用と労力が必要であり、未だ課題が残されている。
Seoらのグループによって、脂肪由来の間葉系幹細胞を肝臓に移植し、肝細胞に分化したことが報告されている(非特許文献1)。これまでの同様の報告では、非ヒト脂肪組織由来幹細胞が肝臓に生着し得ること、および免疫組織学的な検討でアルブミン陽性であることから、局所にて肝細胞に分化誘導されたと推定している。しかし、分化生着したとされる肝細胞が機能しているかどうかは明確でなく、またその生着数が著しく低いといった課題が生じていた。
M. J. Seo et al., Biochemical and Biophysical Research Communications, 328, (2005), 258-264
本発明者は、上記事情に鑑みて、体外から導入した間葉系幹細胞を肝臓にてより効率的に生着させる方法を開発するべく、鋭意研究を行ってきた。そして、本願の発明者らが開発した脂肪組織由来多系統前駆細胞(国際公開第2008/153179号パンフレットを参照のこと)を経門脈的に投与したところ、肝臓への高い生着率と肝細胞への効率的な分化が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記に関するものである:
(1)脂肪組織由来多系統前駆細胞を含む肝臓関連疾患治療薬;
(2)脂肪組織由来多系統前駆細胞が、
(a)脂肪組織由来細胞集団から赤血球を除去し、前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団を形成し、
(b)得られた前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団を培養し、
(c)培養した前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団から脂肪組織由来多系統前駆細胞以外の細胞を除去する
ことで得られる細胞集団である、(1)記載の治療薬;
(3)経門脈的に投与される、(1)または(2)記載の治療薬;
(4)肝臓関連疾患が非炎症性である、(1)〜(3)のいずれか記載の治療薬;
(5)肝臓関連疾患が血液凝固障害、代謝性疾患および肝疾患から選択される、(1)〜(3)のいずれか記載の治療薬;
(6)肝臓関連疾患が血友病または家族性高コレステロール血症である、(4)または(5)記載の治療薬;
(7)脂肪組織由来多系統前駆細胞を対象に投与することを特徴とする肝臓関連疾患を治療する方法;および
(8)肝臓関連疾患治療に用いられる脂肪組織由来多系統前駆細胞。
本発明により、体内に導入した場合、肝臓への高い生着・分化を示す脂肪組織由来多系統前駆細胞を含む肝臓関連疾患治療薬などを提供することができる。また、本発明によれば、従前の方法と比べて、高い割合で脂肪組織由来多系統前駆細胞由来の肝細胞で患者の肝細胞を置換でき、しかも置換した肝細胞は細胞コンタクトを介してレシピエントの肝実質と一体的に機能するという優れた効果を得ることができる。
図1は、hADMPCを移植した群(hADMPC)、hADSC(Zuk et al.の方法による)を移植した群および移植していない群(生理食塩水対照)の血清総コレステロールの変化を示す。グラフ中、横軸は経過日数、縦軸は血清総コレステロールの値をそれぞれ示す。 図2は、hADMPC移植前および移植4週間後の血清コレステロールをFPLC分析した結果を示す。(B)は(A)のピークを拡大したものである。グラフ中、縦軸は血清コレステロールの相対値を示す。 図3は、hADMPC細胞、hADMPC移植群およびヒト肝細胞における各マーカーのmRNA発現レベルを示す。縦軸はmRNA発現レベルの相対値を示す。 図4は、hADMPC移植群の肝臓におけるヒトアルブミンの発現を示す。図中、バーは100μmを示す。 図5は、hADMPC移植群の肝臓におけるLDL受容体の発現を示す。図中、バーは100μmを示す。 図6は、hADMPC移植群の肝臓におけるLDLの取込みを示す。図中、バーは100μmを示す。 図7は、hADSC移植群、hADMPC移植群、生理食塩水対照群、および正常ウサギの血中LDL値の変化を示す。横軸は経過時間を示し、縦軸は血中LDLの相対値を示す。
本発明は、1つの態様において、脂肪組織由来多系統前駆細胞を含む肝臓関連疾患治療薬に関するものである。脂肪組織由来多系統前駆細胞は、内胚葉、中胚葉、外胚葉などの種々の細胞系列に分化することができる細胞であって、未分化マーカーであるIslet−1および/またはGATA−4を発現する細胞をいう。脂肪組織由来多系統前駆細胞は、脂肪組織以外に、胚性幹細胞などから分化させて得ることができる。脂肪組織由来多系統前駆細胞が由来する動物種は特に限定されず、好ましくは、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、サルなどを含む哺乳類、より好ましくは、ヒトである。また、脂肪組織由来多系統前駆細胞が由来する動物種は、本発明によって治療されるべき対象と同種または同一のものが好ましい。
本発明において用いる脂肪組織由来多系統前駆細胞は、望ましくない夾雑物、例えば、赤血球、血管内皮細胞などの脂肪組織由来多系統前駆細胞以外の細胞の割合が低い細胞集団のことをいい、培養の容易さ、高い分化効率などの利点を有する。このような夾雑物を除去する手段としては、脂肪組織由来多系統前駆細胞の比重との差を利用した手段または方法、例えば、比重法、脂肪組織由来多系統前駆細胞の付着性との差を利用した手段や方法、例えば、EDTAのようなキレート剤、トリプシンのような酵素を用いた方法、ソーティング、MACSなどの抗原抗体法、形態的に選別する方法、単一細胞クローン化、溶血法などが挙げられる。この細胞集団における夾雑物の低減は、例えば、夾雑物が有するマーカーをRT−PCR、ELISAなどの方法を用いて定量することにより、顕微鏡下で視覚的に、あるいはフローサイトメトリー、免疫組織染色などにより確認してもよい。
本発明において用いる細胞集団は、少なくとも20%以上、好ましくは、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、96%、97%、98%または99%の脂肪組織由来多系統前駆細胞を含む。脂肪組織由来多系統前駆細胞が上記の割合含まれることにより、本発明において用いる細胞集団は、脂肪組織由来多系統前駆細胞の維持が容易であること、分化させたときの効率が高いことなどの利点を有する。本発明において用いる細胞集団は、脂肪組織由来多系統前駆細胞以外のほか、フィーダー細胞のような脂肪組織由来多系統前駆細胞の維持または分化に有効な細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞などを含んでいてもよい。このような細胞を含むことにより、上記利点が増強され得る。
また、本発明にて用いる脂肪組織由来多系統前駆細胞は、例えば、(a)脂肪組織由来細胞集団から赤血球を除去し、前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団を得て;次に、(b)得られた前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団を培養し;(c)該前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団から脂肪組織由来多系統前駆細胞以外の細胞を除去することによって得られる細胞集団であってもよい。本発明において、これらの工程は、連続して行われてもよいし、あるいは並行して行われてもよい。本発明のこの態様に用いられる脂肪組織は、生体内の皮下脂肪組織および内臓脂肪組織のいずれであってもよい。また、脂肪組織が由来する動物種は特に限定されず、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、サルなどを含む哺乳類、好ましくは、ヒトである。あるいは、本発明により治療されるべき対象と同種または同一のものが好ましい。
本明細書において用いる脂肪組織由来細胞集団は、少なくとも脂肪組織由来多系統前駆細胞を含む細胞集団をいう。脂肪組織由来細胞集団は、脂肪組織由来多系統前駆細胞のほかに、赤血球、血管内皮細胞、線維芽細胞などを含んでいてもよい。脂肪組織由来細胞集団は、例えば、脂肪組織をコラゲナーゼなどの酵素により、あるいは物理的手段もしくは方法により処理し、および/または脂質などを例えば、遠心分離、フィルター処理などにより除去して得られる。
赤血球は脂肪組織由来多系統前駆細胞を吸着する性質を有しており、この性質が原因となって、脂肪組織由来多系統前駆細胞の収率を低下させ得る。したがって、脂肪組織由来細胞集団から赤血球を除去することが必要になる。脂肪組織由来細胞集団からの赤血球の除去は、いずれの手段または方法により行われてもよく、例えば、赤血球とそれ以外の細胞の付着性の差に基づくもの以外の手段または方法で行われるものであってもよい。好ましくは、かかる除去は、比重法、溶血法、フィルター法により、より好ましくは、比重法により行われ得る。比重法は、適当な比重の比重液、例えば、Lymphoprep(Nycomed社製)などの市販の比重液を用いて行われ得る。用いられる比重液の比重は、赤血球とそれ以外の細胞の比重の間のものであればよく、好ましくは1.063〜1.119、より好ましくは1.070〜1.110、最も好ましくは1.077である。
本明細書において用いる前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団は、少なくとも脂肪組織由来多系統前駆細胞を含む細胞集団をいう。前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団は、脂肪組織由来多系統前駆細胞のほかに、血管内皮細胞、線維芽細胞などを含んでいてもよい。上述のとおり、前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団は、実質上、赤血球を含まない。赤血球を除去して、前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団を形成させることで、後ほど行う脂肪組織由来多系統前駆細胞以外の細胞の除去が容易かつ効率よく行われ得る。
本発明において、前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団の培養は、細胞の未分化状態を維持し、また、後述する脂肪組織由来多系統前駆細胞以外の細胞を効率的に除去する観点から、付着培養することが好ましい。付着培養は、例えば、デッシュ、フラスコ、ローラーボトルまたはスピンナーフラスコなどの公知の手段を用いて行えばよい。また、脂肪組織由来多系統前駆細胞以外の細胞を効率的に除去する観点から、前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団は、この細胞集団に含まれる血管内皮細胞、線維芽細胞などの細胞が培養容器との接触面に十分に接着する時間培養されることが好ましく、例えば、12〜48時間、好ましくは12〜36時間培養され得る。
本明細書において、脂肪組織由来多系統前駆細胞以外の細胞は、血管内皮細胞、線維芽細胞などの付着細胞などをいう。前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団からの脂肪組織由来多系統前駆細胞以外の細胞の除去は、いずれの手段または方法により行われてもよいが、好ましくは、トリプシン以外の物質、より好ましくは、EDTA、EGTAなどのキレート剤、最も好ましくは、EDTAを用いて行われる。好ましくは、このような除去は、脂肪組織由来多系統前駆細胞とそれ以外の細胞との付着性の差に基づき、行われるものである。上記のほか、例えば、フィルター濾過などにより、脂肪組織由来多系統前駆細胞以外の細胞を除去することができる。これらの細胞を除去することで、得られる脂肪組織由来多系統前駆細胞の純度および収率が上昇する。
また、本発明において、脂肪組織由来多系統前駆細胞は、前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団から脂肪組織由来多系統前駆細胞以外の細胞を除去して得られる細胞集団をそのまま、あるいは、得られた細胞集団を拡大培養した後で、後述する治療薬などに使用してもよい。また、このような拡大培養は、前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団から脂肪組織由来多系統前駆細胞以外の細胞を除去した後に行う以外に、脂肪組織から脂肪組織由来多系統前駆細胞を調製する過程で適宜行ってもよい。拡大培養は、好ましくは付着培養によって行われる。さらに、得られた細胞集団は、例えば、適当な凍結保護物質などの存在下での凍結・解凍を経た後で、治療薬などに使用してもよい。
本発明において、上記治療薬の剤型は特に限定されないが、好ましくは、細胞懸濁液の形態である。脂肪組織由来多系統前駆細胞をリンゲル液のような適当な溶液中に懸濁し、治療薬としてもよい。あるいは、凍結保護物質などの存在下で凍結しておいた細胞懸濁液を解凍して、治療薬として使用してもよい。なお、これらの治療薬において、細胞は1×10細胞/mL以上の濃度であることが好ましい。さらに、本発明の治療薬は、脂肪組織由来多系統前駆細胞のほか、ヘパリンまたはヒアルロン酸といった脂肪組織由来多系統前駆細胞の肝臓への生着を促進する物質、HMG−CoA還元酵素阻害剤(例えば、メバロチンなど)、フィブラート系薬剤(例えば、ベザトールなど)、胆汁酸吸着剤(例えば、コレスチラミンなど)または胆汁酸吸収阻害剤(例えば、ゼチアなど)といった肝機能改善薬、適当な添加剤、賦形剤などを含んでいてもよい。
本発明の治療薬は、非経口的に適用されることが好ましく、例えば、経門脈的、経静脈的、経動脈的または経胆管的に投与してもよい。肝臓への高効率の分化、生着を達成する観点から、本発明の治療薬は経門脈的に投与されることが好ましい。本発明の治療薬を経門脈的に投与することによって、従前の方法と比べて、高い割合で脂肪組織由来多系統前駆細胞由来の肝細胞で患者の肝細胞を置換でき、しかも置換した肝細胞は細胞コンタクトを介してレシピエントの肝実質と一体的に機能するという優れた効果を得ることができる。また、本発明の治療薬の投与量、投与頻度、投与回数などは、対象の状態、疾患の重症度など種々の因子に応じて適宜選択される。例えば、本発明の治療薬の投与量は、約2.5×10細胞/kg体重以上であってもよく、好ましくは約1.0×10細胞/kg体重以上、より好ましくは約1.5×10細胞/kg体重以上であってもよい。また、対象は、いずれのものであってもよく、ヒト対象であってもよいし、ヒト以外の対象、例えば、マウス、サルなどの哺乳類であってもよい。
また、本発明において、脂肪組織由来多系統前駆細胞を支持体に付着、接着または含有させて使用してもよい。例えば、脂肪組織由来多系統前駆細胞をシート状支持体に付着、接着または含有して構成される細胞シートを肝臓に移植してもよい。適宜本発明の治療薬を細胞シートにした場合、シートの大きさおよび厚さ、ならびにシートに含まれる細胞数は、対象の状態、疾患の重症度など種々の因子に応じて適宜選択されればよい。また、細胞は、単層または重層のいずれの形態で含まれていてもよい。さらに、本発明の細胞シートに使用され得る支持体の形状や材料は、当該分野の技術常識に従い適宜決定され得る。本発明の細胞シートに使用され得る支持体の材料としては、例えば、ヒアルロン酸スポンジ、メチルセルローススポンジなどが挙げられる。このような細胞シートは、脂肪組織由来多系統前駆細胞以外に、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)、培地、ヘパリンまたはヒアルロン酸といった脂肪組織由来多系統前駆細胞の肝臓への生着を促進する物質、HMG−CoA還元酵素阻害剤(例えば、メバロチンなど)、フィブラート系薬剤(例えば、ベザトールなど)、胆汁酸吸着剤(例えば、コレスチラミンなど)または胆汁酸吸収阻害剤(例えば、ゼチアなど)といった肝機能改善薬などを含んでいてもよい。シート形態を有することにより、移植などに用いる際の取扱が容易になる。このような細胞シートは、移植対象の状態、疾患の重症度などに応じて、適宜移植してもよい。また、その対象は、いずれのものであってもよく、ヒト対象であってもよいし、ヒト以外の対象、例えば、マウス、サルなどの哺乳類であってもよい。
本発明が対象とする肝臓関連疾患は、肝機能の低下によって生じる疾患のことをいう。肝機能の低下によって生じる疾患とは、肝臓または肝細胞の機能の低下のみならず機能不全により生じる疾患を含み、例えば、肝炎、肝硬変、肝癌、肝不全などの肝疾患、薬剤性肝障害、アルコール性肝障害、胆汁うっ滞性肝障害、血液凝固障害、代謝性疾患などが挙げられる。また、本発明において、肝臓関連疾患は炎症性および非炎症性のいずれでもよい。本発明の治療薬に含まれる脂肪組織由来多系統前駆細胞は、経門脈的に投与されることによって、炎症を起こしていない肝臓においても高い効率で分化・生着する特徴を有するので、非炎症の肝臓関連疾患に特に有効である利点を有する。非炎症性の肝臓関連疾患としては、血友病などの血液凝固障害、家族性高コレステロール血症などの脂質代謝障害、ムコ多糖症などの糖質代謝障害が挙げられる。
本発明による肝臓関連疾患の治療効果をより高めることを目的として、本発明の治療薬を種々の薬剤と併用してもよい。例えば、家族性高コレステロール血症を治療する上では、プラバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチンなどのHMG−CoA還元酵素阻害剤(いわゆる、スタチン)、クロフィブラート、クリノフィブラート、ベザフィブラート、フェノフィブラートなどのフィブラート系薬剤、ニコチン酸トコフェロール、ニコモールなどのニコチン酸製剤、コレスチラミン、コレスチミドなどの胆汁酸吸着剤、プロブコールなどの抗酸化剤、エゼチミブなどのコレステロール吸収阻害剤などからなる群より選択される1つまたは複数のコレステロール低下剤と本発明の治療薬を併用してもよいが、特にプラバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチンなどのHMG−CoA還元酵素阻害剤と併用することが好ましい。また、血友病を治療する上では、第VIII因子または第IX因子の投与と本発明の治療薬の投与を組み合わせてもよい。
さらに、上記目的のために、本発明を肝臓関連疾患に対して通常施される公知の治療法と組み合わせて対象に適用してもよい。例えば、家族性高コレステロール血症を治療する上では、LDLアフェレーシスなどと本発明を組み合わせて対象に適用してもよい。また、血友病を治療する上では、第VIII因子または第IX因子といった血液凝固因子の補充療法と本発明を組み合わせて対象に適用してもよい。
本発明による肝臓関連疾患治療の効果は、例えば、生検などの適当な手段で得られたサンプル中のα−フェトプロテイン、アルブミン、CYP1B1、グルタミン合成酵素、ケラチン18、ケラチン19などの遺伝子の発現を定量的PCRにより測定するか、あるいは肝細胞への分化・形成に伴い発現が減少または増加することが分かっているマーカー物質、例えば、トランスサイレチン、α1−抗トリプシン、チロシンアミノトランスフェラーゼ、グルコース−6−ホスファターゼなどを定量的PCRまたはELISAなどにより測定することなどにより、調べることができる。また、本発明の治療薬が血友病患者またはFH患者に投与される場合、例えば、投与後のトロンビン生成の有無または血中コレステロール値の変化によって効果を確認してもよい。
本発明は、別の態様において、脂肪組織由来多系統前駆細胞を用いて肝臓関連疾患を治療する方法に関する。
本発明は、さらなる態様において、肝臓関連疾患治療薬の製造のための脂肪組織由来多系統前駆細胞の使用に関する。
また、本発明は、さらに別の態様において、肝臓関連疾患治療に用いられる脂肪組織由来多系統前駆細胞に関する。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的かつ詳細に説明するが、実施例はあくまで例示説明であって、本発明を限定するものではない。なお、以下の実施例では、hADMPC移植群と対照群との平均の差を、SPSS統計17.0(SPSS)によるStudent t検定を用いて評価している。
ヒト脂肪組織由来多系統前駆細胞(hADMPC)の製造
1−1.脂肪組織の採取
脂肪組織の採取は、インフォームドコンセントを受けた対象5人(20〜60歳の男性4人および女性1人)から、国際公開第2008/153179号パンフレットに記載の方法に従って行った。
1−2.hADMPCの製造
採取した脂肪組織を刻み、0.075%コラゲナーゼ(Sigma Aldrich社製)を含むハンクス緩衝溶液(HBSS;GIBCO Invitrogen社製)中、37℃で1時間消化した。消化産物をCell Strainer(BD Bioscience社製)でろ過し、800×gで10分間遠心分離した。次いで、Lymphoprep(d=1.077;Nycomed社製)を用いて比重法により赤血球を除去した。
得られた細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS; Hyclone社製)を含むDMEM(GIBCO Invitrogen社製)培地に播種した。37℃で24時間培養し、付着細胞をPBSで洗浄後、0.2g/L EDTA溶液(ナカライテスク社製)で処理し、剥離された細胞集団を脂肪組織由来多系統前駆細胞(hADMPC)として得た。
1−3.hADMPCの増殖と特性解析
(1)hADMPCの増殖
1−2で得たhADMPCを、ヒトフィブロネクチンコートディッシュ(BD BioCoat社製)に、10,000細胞/cmの密度で播種し、60% DMEM−低グルコース、40%MCDB−201(Sigma Aldrich社製)、1×ITS(GIBCO Invitrogen社製)、1nM デキサメサゾン(Sigma Aldrich社製)、100μMアスコルビン酸−2−リン酸エステル、10ng/ml EGF(PreproTec社製)、および5%FBSからなる培地を用いて培養した。2〜3回継代したhADMPCは、直径25〜30μm程度の大きい扁平な細胞からなる単層構造を示した。本発明においては、hADMPCを5〜6回継代した細胞を移植に用いた。移植に用いたhADMPCについて、以下の発現特性解析を行った。
(2)細胞表面抗原の発現特性
5〜6回継代したhADMPCについて、FACS解析によりABCG−2、SSEA−4、CD29、CD31、CD34、CD44、CD45、CD73、CD105、CD117、CD133およびCD166の発現を調べた。本発明におけるhADMPCは、間葉系幹細胞または神経幹細胞で発現されるが、ES細胞にて発現されない表面マーカーであるCD29およびCD44(ヒアルロン酸受容体)、ならびにCD73、CD105(エンドグリン)、およびCD166を発現し、さらにSSEA−4を発現していた。一方、Mol Biol Cell 13, 4279-4295. (2002)に報告されている脂肪由来幹細胞(hADSC)は、造血系列のマーカーであるCD45、造血幹細胞マーカーであるABCG−2、CD34、およびCD133について陰性であった。以上の結果から、本発明におけるhADMPCは、hADSCとは異なる細胞集団であることを確認した。
(3)mRNAの発現特性
5〜6回継代したhADMPCについて、RT−PCR解析により、islet−1、Nkx2.5およびGATA−4のmRNAの発現を調べた。hADMPCは、未分化マーカーであるislet−1、および肝前駆細胞マーカーであるGATA−4を発現し、さらにNkx2.5を発現していた。一方、hADSCは、islet−1、GATA−4およびNkx2.5のいずれも発現が見られなかった。
(4)hADMPCの各細胞への分化能
上記方法で得られたhADMPCについて、国際公開第2008/153180号パンフレットに記載の方法に従い、膵臓細胞(インスリン分泌細胞)、肝細胞、心筋芽細胞、脂肪細胞または骨組織へ分化誘導されることを確認し、多系統の組織の細胞に分化する能力を有することが確認された(データ示さず)。
ウサギ家族性高コレステロール血症モデルにおけるhADMPCの移植効果
2−1.hADMPCの移植
家族性高コレステロール血症のモデル動物である渡辺遺伝性高コレステロールウサギ(WHHLウサギ;北山ラベス社より入手)を50mg/kg量のペントバービタルで麻酔をかけ、胸部の端まで切開した。次いで、実施例1−3(1)で得たhADMPC 5×10細胞をHBSS 3mLに懸濁し、24ゲージのシリンジを用いて経門脈的に投与した(hADMPC移植群)。また、対照群として、前記方法においてhADMPC含有懸濁液の代わりにHBSSを投与したモデルを以下の解析に用いた。
2−2.免疫抑制および抗ウィルス剤処置
本発明では、ウサギにヒトの細胞を移植するため、次の方法に従ってウサギに免疫抑制および抗ウィルス剤処置を施した。hADMPCを移植した日(day0)の前日(day−1)から犠牲死させるまでの間、シクロスポリンA(6mg/kg/day)およびラパマイシン(0.05mg/kg/day)を筋肉内投与した。メチルプレドニソロンをそれぞれ、3mg/kg/day(day1〜day7)、2mg/kg/day(day8〜14)、1mg/kg/day(day15〜21)、および0.5mg/kg/day(day22〜犠牲死させる日)の量で段階的に投与した。シクロフォスフォアミド(20mg/kg/day)は、day0、2、5および7に投与した。また、免疫抑制で易感染性となったウサギのウィルス感染を防ぐために、ガンシクロビル(2.5mg/kg/day i.m.)を投与した。対照群についても、上記と同様の免疫抑制処置を施した。
2−3.解析
(1)脂質のプロファイリング
hADMPC移植群における血清中のコレステロールの量的・質的変化を解析した。
hADMPC移植群(n=7)、hADSC(Zuk etal.の方法による)を移植した群(n=3)および対照群(n=5)について、移植前後に非絶食時のウサギ血清を採取した。アッセイキット(和光純薬社製)を用いて、血清総コレステロールを移植後12週目まで測定した。
図1に示されるように、hADMPC移植群では、移植後3週間以内には血清総コレステロールが大幅に低下しており、測定期間全体として減少の傾向が維持されていた。hADMPC移植前のWHHLウサギの血清総コレステロールレベルは500−800mg/dLであるが、移植後3週目では、hADMPC移植群は約400mg/dLであり、約639mg/dLである対照群と比較して血清総コレステロールの有意な減少が見られた。
hADMPC移植によるHDLとLDLとの相対比に対する効果を調べるために、中高圧液体クロマトグラフィー(FPLC)による分画を行った。その結果を図2に示す。図中、左のグラフを拡大表示したのが右のグラフである。
図2に示されるように、hADMPC投与後4週間で、LDLコレステロールのピークが明らかに減少し、HDLコレステロール画分が検出された。HDLレベルの上昇は、従来の治療法でLDLを低下させた後、またはLDL受容体cDNAをアデノウィルスベクターで導入した際に観察される現象であって、冠状動脈性心臓病のリスクを低減することが知られている。
(2)移植後のhADMPCが生体内で肝細胞へ分化し、機能していることの確認1
移植後のhADMPCの生体内での肝細胞への分化を確認するために、hADMPC移植群の肝臓における成熟肝細胞マーカーのmRNAの発現レベルを解析した。
WHHLウサギにhADMPCを移植し、12週間後に犠牲死させ、肝臓を摘出した。肝臓のtotal RNAを単離し、ABI Prism 7900 Sequence Detection System(Applied Biosystems社製)にて定量的RT−PCRを行い、成熟肝細胞マーカーとしてヒトアルファ1アンチトリプシン(hAAT1)、ヒトアルブミン(hAlb)、ヒト第IX因子(hFactor9)、ヒトGATA4(hGATA4)、ヒト肝細胞核因子3β(HNF−3beta)、ヒトLDL受容体(hLDL−R)およびヒトグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)の発現を分析した。定量的RT−PCRにおいて、移植前のhADMPCをコントロールに用い、mRNAレベルをヒトGAPDHの発現で標準化した。各マーカーについて用いたTaqManプローブを以下の表1に示す。
Figure 0004965000
その結果を図3に示す。hADMPC移植群の肝細胞では、hADMPCより高いレベルで各マーカーmRNAの発現が確認された。
(3)移植後のhADMPCが生体内で肝細胞へ分化し、機能していることの確認2
移植後hADMPCの生体内における肝細胞への分化と機能発現を確認するために、hADMPC移植群の血清におけるヒトアルブミンタンパク質の存在を、イムノブロットおよびELISAにより慣用の方法に従って解析した。
ここで用いた抗ヒト特異的アルブミン抗体(goat polyclonal, bovine, mouse and pig ALB-adsorbed, affinity purified、Bethyl Laboratories社製)は、hADMPC移植前の血清のイムノブロットによって、ウサギ血清アルブミンを検出しないことを確認した。
ELISAの結果、移植後3週間でヒト血清アルブミンが検出され、その後の解析期間中発現が見られた。hADMPC移植群でヒトアルブミンの産生が確認されたことは、ADMPCに由来する、生存および機能する肝細胞が存在することを意味している。
(4)hADMPCが肝実質へ移動し、肝細胞へ分化し機能することの確認
hADMPCが適切な場所で肝細胞へ分化していることを確かめるために、hADMPC移植群の肝臓切片を組織化学的に解析した。
トレーサーとしてのDiO(3,3’−ジオクタデシルオキサカルボシアニンペルクロラート;Sigma Aldrich社製)を用いた。DiOで前処理したhADMPC(DiO−hADMPC)を、WHHLウサギに経門脈的に移植した。移植後1週目でウサギを犠牲死させ、作製した組織切片を蛍光顕微鏡下で観察した。DiO−hADMPCは、門脈周辺部位に局在し、移植後一週間で形態的に変化しながら、肝小葉中心部方向の肝実質へ移動した。
WHHLウサギにhADMPCを経門脈的に移植し、12週間後に犠牲死させた。肝臓を10%ホルマリンで固定して凍結切片を作製し、抗ヒトアルブミン抗体および抗LDL受容体抗体により免疫染色した。
結果を図4および5にそれぞれ示す。蛍光顕微鏡下で観察したところ、ヒトアルブミンおよびLDL受容体陽性細胞が、肝実質の静脈周囲でホスト細胞と接触し、一体となって分散して存在していた。ヒトアルブミンが陽性である細胞の存在から、移植後のhADMPCから肝細胞へ分化したこと、およびこの細胞がLDL受容体陽性であることから、分化した肝細胞が機能していることを確認した。
天然の肝細胞は、門脈から肝小葉中心部方向へ移動すると考えられてきたが、WHHLウサギの肝臓におけるhADMPCの移動およびhADMPC由来肝細胞は、このモデルと一致している。また、肝細胞の細胞間またはマトリックスとの相互作用におけるシグナルが、hADMPC由来肝細胞と罹患肝細胞(WHHLウサギ)との間で保存されていることが示された。
(5)生体外におけるhADMPC由来肝細胞によるLDLの取込み
hADMPC由来肝細胞によるLDLの取込みを生体外で確かめるため、hADMPC移植群の肝臓切片を組織化学的に解析した。
血中脂質が正常なドナーから、逐次超遠心し、生理食塩水−EDTAで透析し、0.2μmフィルターによりろ過滅菌してヒトLDL(密度 1.019〜1.063g/ml)を単離し、DiOでラベルしてDiO−LDLを作製した。WHHLウサギにhADMPCを経門脈的に移植し、12週間後に犠牲死させた。得られた肝臓の組織切片を作製し、組織切片を10μg/mL DiO−LDL含有無血清DMEM培地中で、37℃で24時間インキュベートした。洗浄後、10%ホルマリンで固定し、厚み5μmで切断してPermaFlour(日本ターナー社製)にマウントし、BioZeroレーザースキャニングマイクロスコープ(キーエンス社製)を用いて解析し、生体外におけるDiO−LDLの移植細胞による取り込みを測定した。
その結果を図6に示す。一部の細胞はDiO−LDLを取り込んだが、移植したhADMPC全てではないことが示された。DiO−LDLを取り込んだ細胞は、DiO−LDLを取り込まない肝実質細胞と接触し、一体となって分散して存在していた。つまり、hADMPCは生体内で肝細胞へ分化し、LDLの取込みを介して血清コレステロールを低減することにより、家族性高コレステロール血症患者を治療し得ることが示唆された。
(6)hADMPC移植群における血中LDLクリアランス速度
hADMPC移植群におけるLDLの代謝を確認するために、hADMPC移植群から採取した血清を分析した。
WHHLウサギ(8週齢、北山ラベス社より入手)を、ペントバルビタール(50mg/kg)を用いて麻酔した。腹膜を切開し、HBSS(20℃)に懸濁したhADMPC(高用量;3×10細胞/ウサギ、n=2、低用量;5×10細胞/ウサギ、n=2)または生理食塩水3mlを、18ゲージのシリンジを用いて経門脈的に投与した(それぞれ、hADMPC移植群(n=5)および対照群(n=2))。各ウサギに対して、実施例2−2と同様の免疫抑制を施し、8週間目にLDL代謝アッセイを行った。[I−125]ヒトLDL(Biomedical Technologies Inc.社製)をウシ血清アルブミン2mg/mlを含む生理食塩水に懸濁し、hADMPC移植群および対照群の耳静脈に投与した。投与から一定時間(それぞれ、5分、1時間、2時間、4時間、6時間および28時間)経過した後に、反対側の耳から血液を採取した。20%のトリクロロ酢酸(和光純薬社製)(血清;320μL、100%w/v TCA 80μL)を用いて、125Iラベルしたアポリポタンパク質Bを含むLDLを沈殿させ、得られた沈殿物をシンチレーションカウンター測定に供した。
結果を図7に示す。hADMPCを移植していない対照群(生理食塩水対照群)と比べて、hADMPC移植群のLDLクリアランス速度はそれぞれ2.4倍(高用量)または1.4倍(低用量)であり、hADMPC移植群でのLDLのクリアランス速度の有意な増加が確認された。特に、高用量のhADMPC移植群でのクリアランス速度は、正常なウサギと同レベルのものである。また、hADMPC移植群でのLDLのクリアランス速度の増加は、hADSC移植群と比べても有意なものであった。
本発明により、体内に導入した場合、肝臓への高い生着・分化を示す脂肪組織由来多系統前駆細胞を含む肝臓関連疾患治療薬などを提供することができる。また、本発明によれば、患者の身体的・経済的負担が少ない、血友病、家族性高コレステロール血症などの難治疾患の治療が可能である。

Claims (6)

  1. 脂肪組織由来多系統前駆細胞を含む肝臓関連疾患治療薬。
  2. 脂肪組織由来多系統前駆細胞が、
    (a)脂肪組織由来細胞集団から赤血球を除去し、前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団を形成し、
    (b)得られた前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団を培養し、
    (c)培養した前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団から脂肪組織由来多系統前駆細胞以外の細胞を除去する
    ことで得られる細胞集団である、請求項1記載の治療薬。
  3. 経門脈的に投与される、請求項1または2記載の治療薬。
  4. 肝臓関連疾患が非炎症性である、請求項1〜3のいずれか1項記載の治療薬。
  5. 肝臓関連疾患が血液凝固障害、代謝性疾患および肝疾患から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の治療薬。
  6. 肝臓関連疾患が血友病または家族性高コレステロール血症である、請求項4または5記載の治療薬。
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