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JP4949565B2 - ポリカーボネート系樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂組成物、それから得られる易破裂性成形体及び自動車のカバーパネルに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
自動車には、衝突時の衝撃から乗員を保護するためのエアバッグ装置が搭載されている。このエアバッグ装置は、運転席用、助手席用、側面衝突用のように乗員が座る位置に応じて設置場所が異なっており、これらの中で助手席用のエアバッグ装置は、所謂ダッシュボードの内部に設置され、エアバッグが飛び出す部分は、破裂し易いように傷が付けられたカバーパネルで塞がれている。そして、エアバッグ装置が作動したとき、エアバッグは膨張しながらカバーパネルを突き破って飛び出し、助手席に座った乗員方向に展開する。
【0003】
このとき、カバーパネルには、エアバッグの膨張展開による圧力を受けて容易に破裂すること共に、きれいに破裂することが求められる。ここでいう容易に破裂するとは、エアバッグが膨張展開することを妨げないことであり、例えば、折り曲げ白化等の延性破壊を生じないことである。また、きれいに破裂するとは、乗員を傷付けるような破裂片を生じさせないことを意味し、例えば、ささくれ立ったり、鋭利な破断面を生じさせないことを意味する。
【0004】
しかし、従来のカバーパネルには、折り曲げ白化が生じたり、破裂片がささくれ立ったり、鋭利な破断面を持つ破裂片が生じたりする恐れがあり、必ずしも満足できるものではなかった。
【0005】
本発明は、圧力を受けて破裂した場合、容易にかつきれいに破裂するような易破裂性を有する成形体が得られるポリカーボネート系樹脂組成物、それから得られる易破裂性成形体及びカバーパネルを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ベース樹脂としてポリカーボネート樹脂とABS樹脂の組合せ、更に改質成分としてゴム状化合物と無機充填剤を配合することによって、自動車用のカバーパネル材料として好適な組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち本発明は、上記課題の解決手段として、(A)ポリカーボネート樹脂と(B)スチレン系樹脂に対し、(C)ゴム状化合物及び(D)充填剤を配合するポリカーボネート系樹脂組成物を提供する。
【0008】
更に本発明は、上記課題の他の解決手段として、上記のポリカーボネート系樹脂組成物から得られる成形体であり、JIS K7211で規定される落錘衝撃強度が800〜1600Nの範囲である易破裂性成形体を提供する。
【0009】
更に本発明は、上記課題の他の解決手段として、上記のポリカーボネート系樹脂組成物から得られる自動車のカバーパネルを提供する。
【0010】
本発明における「易破裂性」とは、上記したとおり、容易にかつきれいに破裂することを意味する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる(A)ポリカーボネート樹脂は、2価フェノールとカーボネート前駆体とを、周知の溶液法又は溶融法により反応させて得られるものが挙げられる。
【0012】
2価フェノールは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等から選ばれる1以上が挙げられる。これらの中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系のものが好ましく、特にビスフェノールAが好ましい。
【0013】
カーボネート前駆体は、ジフェニルカーボネート等のジアリルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ホスゲン等のカルボニルハライド、2価フェノールのジハロホルメート等のハロホルメート等から選ばれる1以上が挙げられる。
【0014】
ポリカーボネート系樹脂の数平均分子量は特に限定されるものではないが、組成物から得られる成形体に実用上要求される機械的強度を付与するためには、約17000〜32000の範囲が好ましい。
【0015】
本発明で用いる(B)スチレン系樹脂は、ゴムを含有するスチレン系樹脂単独又はゴムを含有するスチレン系樹脂とゴムを含有しないスチレン系樹脂との混合物からなるものである。
【0016】
ゴムを含有するスチレン系樹脂は、ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン化合物の単量体と、スチレン及びα置換、核置換スチレン等のスチレン誘導体との共重合体のほか、更にアクリロニトリル、アクリル酸並びにメタクリル酸のようなビニル化合物との共重合体が挙げられ、ABS樹脂が好ましい。ABS樹脂は、塊状重合及び乳化重合のいずれの重合法により製造されたものでもよいが、塊状重合により製造されたものの方が流動性が良いため好ましい。
【0017】
ゴムを含有しないスチレン系樹脂は、上記した共役ジエン化合物を含まない重合体又は共重合体であり、AS樹脂が好ましい。
【0018】
(A)ポリカーボネート樹脂と(B)スチレン系樹脂との配合割合は、(A)成分は10〜90重量%が好ましく、40〜80重量%がより好ましく、50〜70重量%が更に好ましく、(B)成分は90〜10重量%が好ましく、60〜20重量%がより好ましく、50〜30重量%が更に好ましい。
【0019】
本発明で用いる(C)ゴム状化合物は、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーが挙げられる。これらの中でも、(A)及び(B)成分との相溶性が良いため、ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーが好ましく、易破裂性が優れているため、ポリスチレン系エラストマーが特に好ましい。なお、(C)成分として用いるポリスチレン系エラストマーは、(B)成分には含まれない。
【0020】
(C)成分として用いるポリスチレン系エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS樹脂)、好ましくは耐熱性を高めるためスチレン含量70重量%以上(原料基準)のSBS樹脂、エポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体(ESBS樹脂)又はSBS樹脂とESBS樹脂の混合物が好ましい。このESBS樹脂は、例えば、前記SBS樹脂を用い、特開平7−25984号公報2頁2欄31〜43行に記載の方法により、製造することができる。
【0021】
(C)ゴム状化合物の配合割合は、(A)及び(B)成分の合計100重量部に対して0.5〜40重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましく、2〜5重量部が更に好ましい。
【0022】
本発明で用いる(D)充填剤は、繊維、フレーク、板、ホイスカー、粒状等の一般に熱可塑性樹脂の強化材として使われる形状のものが用いられるが、これらの中でも繊維が好ましく、ホイスカーがより好ましい。
【0023】
充填剤の材質は、無機物〔ガラス、炭素、珪素含有化合物(炭化珪素等)、金属や金属塩(例えばアルミナ、タングステン、チタン、銅、チタン酸カリ、炭酸亜鉛等)等〕や、有機物〔アラミド繊維等〕が使用できる。なお、充填剤の表面は、樹脂と充填剤との接着性を向上させるため、発明の目的を損なわない範囲で、シラン化合物、エポキシ化合物、アクリル化合物、チタン三塩等のカップリング剤で処理してもよい。
【0024】
ホイスカーは、金属及び非金属のいずれでもよく、硼酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、グラファイト、マグネシア、硫酸カルシウム、リン酸ナトリウムカルシウム、硼酸マグネシウム、2硼化チタン、α−アルミナ、クリソタイル、ワラストナイト等からなるものが挙げられる。
【0025】
ホイスカーは、組成物全体の体積の増加を抑制して流動性を高めるため、比重が高いものがよく、比重が2以上のものが好ましくは2.5以上のものがより好ましく、2.9以上のものが更に好ましい。
【0026】
本発明では、その他の充填剤として、微小中空ガラスビーズ(例えば、商品名スコッテラト,3M社製)を用いることができる。この微小中空ガラスビーズを組成物に添加すると、成形体に対して適度な強度と易破裂性を付与することができるので、カバーパネル用として好適なものとなる。
【0027】
(D)充填剤の配合割合は、(A)及び(B)成分の合計100重量部に対して、0.5〜40重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましく、2〜5重量部が更に好ましい。
【0028】
(C)ゴム状化合物と(D)充填剤との配合比(重量比)(C)/(D)は、0.5〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0029】
本発明の組成物には、必要に応じて、難燃剤〔水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系難燃剤、りん系難燃剤(赤りん、リン酸エステル等)、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤等〕、熱、光又は酸素に対する安定剤(フェノール系化合物、リン系化合物等の酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸フェニル化合物等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系安定剤やスズ化合物、エポキシ化合物等の熱安定剤等)、可塑剤、ポリジメチルシロキサン等の摺動性改良剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤等を添加してもよい。
【0030】
本発明の易破裂性成形体は、上記したポリカーボネート系樹脂組成物から得られるものであり、JIS K7211で規定される落錘衝撃強度が800〜1600N、好ましくは1100〜1400Nの範囲のものである。
【0031】
本発明の自動車のカバーパネルは、ダッシュボード内に収容された助手席用エアバッグが飛び出す部分を塞ぐためのもので、上記したポリカーボネート系樹脂組成物から得られるものである。
【0032】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下で用いた各成分及び試験方法の詳細は下記のとおりである。
【0033】
(A)成分
PC:ポリカーボネート樹脂(住友ダウコーニング社製,カリバー200−5)
(B)成分
ABS−1:ABS樹脂(塊状重合品)(日本A&L社製,サンタックAT08)
ABS−2:ABS樹脂(乳化重合品)(日本A&L社製,サンタック290FF)
(C)成分
ESBS:水素添加エポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体(ダイセル化学工業(株)製,エポフレンドAT202)
PS/PI:スチレン−イソプレンブロック共重合体(クラレ(株)製,ハイブラー7125)
(D)成分
ホイスカー:硼酸アルミニウムホイスカー(アルボレックスY)
酸化ビスマス(Bi23)。
【0034】
(1)流動性
流動性はメルトインデックスで評価し、ASTM D1238に準拠した。測定条件は250℃で行い、おもりとピストンの重量の合計を5kgとして行った。
【0035】
(2)熱変形温度(HDT)
1/4''インチの厚みを持つ射出成形片に対して、ASTM D648−82に基づく荷重たわみ温度(HDT)(1.82MPa)を測定した。
【0036】
(3)シャルピー衝撃強さ
ISO 179/1eAに準拠して測定した。
【0037】
(4)落錘衝撃強さ
▲1▼最大荷重(N),最大荷重変位(mm)
ASTM D3763に準拠して測定した。なお、試験片として、10cm×10cm×2mmの平板の中央に深さ1mmの溝を入れたものを用いた。
【0038】
▲2▼破断状態
落錘試験後の試験片の状態を目視により観察した。良好は、試験片の破裂が容易にかつきれいに破裂していることを示し、やや良好は、破裂片の一部にややささくれ立ちがあってことを示す。
【0039】
実施例1、2、比較例1〜4
表1に示す各成分[(A)、(B)成分は重量%、その他は(A)、(B)成分100重量部に対する重量部表示]をブレンドし、2軸押出機にて溶融混錬し、ペレット状の樹脂組成物を得た。押出成形温度は250℃で行い、ホイスカーはサイドフィーダーから投入した。これらの組成物について、上記した各試験を行った。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0004949565
【0041】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物によれば、衝撃を受けたときに易破裂性、即ち容易にかつきれいに破裂する性質を示す成形体を得ることができるため、各種成形体、特に自動車のダッシュボード内に収容されたエアバッグの飛び出し口を塞ぐカバーパネル用材料として好適である。

Claims (5)

  1. (A)ポリカーボネート樹脂50〜70重量%と(B)塊状重合により製造されたABS樹脂50〜30重量%の合計100重量部に対し、(C)ゴム状化合物1〜10重量部及び(D)充填剤1〜10重量部を配合するポリカーボネート系樹脂組成物から得られる成形体からなる、自動車のダッシュボード内に収容されたエアバッグ出口を塞ぐためのカバーパネル
  2. 前記ポリカーボネート系樹脂組成物に含有される(C)ゴム状化合物が、スチレン−ブタジエン共重合体及び/又はエポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体である請求項1記載の成形体からなる、自動車のダッシュボード内に収容されたエアバッグ出口を塞ぐためのカバーパネル
  3. 前記ポリカーボネート系樹脂組成物に含有される(D)充填剤が繊維状である請求項1又は2記載の成形体からなる、自動車のダッシュボード内に収容されたエアバッグ出口を塞ぐためのカバーパネル
  4. 前記ポリカーボネート系樹脂組成物に含有される(D)充填剤がホイスカーである請求項1〜3のいずれか1記載の成形体からなる、自動車のダッシュボード内に収容されたエアバッグ出口を塞ぐためのカバーパネル
  5. 前記ポリカーボネート系樹脂組成物に含有される(C)ゴム状化合物と(D)充填剤との配合比〔(C)/(D)〕が、重量比で0.5〜3である請求項1〜4のいずれか1記載の成形体からなる、自動車のダッシュボード内に収容されたエアバッグ出口を塞ぐためのカバーパネル
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