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JP4945146B2 - 光電変換素子及び固体撮像素子 - Google Patents

光電変換素子及び固体撮像素子 Download PDF

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JP4945146B2 JP2006050840A JP2006050840A JP4945146B2 JP 4945146 B2 JP4945146 B2 JP 4945146B2 JP 2006050840 A JP2006050840 A JP 2006050840A JP 2006050840 A JP2006050840 A JP 2006050840A JP 4945146 B2 JP4945146 B2 JP 4945146B2
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Description

本発明は、第一電極膜と、前記第一電極膜に対向する第二電極膜と、前記第一電極膜と前記第二電極膜の間に配置される特定の化合物を含む光電変換膜とを含む光電変換部を有する光電変換素子と、この光電変換素子をアレイ状に多数配置した固体撮像素子に関する。
従来の光センサは、シリコン(Si)などの半導体基板中にフォトダイオード(PD)を形成して作成した素子が一般的であり、固体撮像素子としては、半導体基板中にPDを2次元的に配列し、各PDで光電変換により発生した信号電荷に応じた信号をCCDやCMOS回路で読み出す平面型固体撮像素子が広く用いられている。カラー固体撮像素子を実現する方法としては、平面型固体撮像素子の光入射面側に、色分離用に特定の波長の光のみを透過するカラーフィルタを配した構造が一般的であり、特に、現在デジタルカメラなどに広く用いられている方式として、2次元的に配列した各PD上に、青色(B)光、緑色(G)光、赤色(R)光をそれぞれ透過するカラーフィルタを規則的に配した単板式固体撮像素子がよく知られている。
ただし、単板式固体撮像素子においては、カラーフィルタが限られた波長の光のみしか透過しないため、カラーフィルタを透過しなかった光が利用されず光利用効率が悪い。また、画素の高集積化に伴い、PDのサイズが光の波長と同程度のサイズとなり、光がPDに導波されにくくなる。また、青色光、緑色光、赤色光を、近接するそれぞれ別々のPDで検出した後それらを演算処理することによって色再現するため、偽色が生じることがあり、この偽色を回避するために光学的ローパスフィルタを必要とし、このフィルタによる光損失も生じる。
従来、これらの欠点を解決する素子として、シリコンの吸収係数の波長依存性を利用して、シリコン基板内に3つのPDを積層し、それぞれのPDのpn接合面の深さの差によって色分離を行うカラーセンサが報告されている(特許文献1、2、3参照)。しかしながら、この方式では、積層されたPDでの分光感度の波長依存性がブロードであり、色分離が不十分であるという問題点がある。特に、青色と緑色の色分離が不十分である。
この問題点を解決するために、緑色光を検出してこれに応じた信号電荷を発生する光電変換部をシリコン基板上方に設け、シリコン基板内に積層した2つのPDで青色光と赤色光を検出するというセンサが提案されている(特許文献4参照)。シリコン基板上方に設けられる光電変換部は、シリコン基板上に積層された第一電極膜と、第一電極膜上に積層された有機材料からなる光電変換膜と、光電変換膜上に積層された第二電極膜とを含んで構成されており、第一電極膜と第二電極膜に電圧を印加することで、光電変換膜内で発生した信号電荷が第一電極膜と第二電極膜に移動し、いずれかの電極膜に移動した信号電荷に応じた信号が、シリコン基板内に設けられたCCDやCMOS回路等で読み出される構成となっている。しかし、該特許には、本発明で使用する一般式(I)又は(II)で表される化合物について記載されておらず、また、その示唆もなされていない。
なお、本明細書において、光電変換膜とは、そこに入射した特定の波長の光を吸収し、吸収した光量に応じた電子及び正孔を発生する膜のことを言う。
米国特許第5965875号明細書 米国特許第6632701号明細書 特開平7−38136号公報 特開2003−332551号公報
有機材料からなる光電変換膜では、上述した構成において第二電極膜の上方から光が入射してくるとすると、光吸収によって発生する電子及び正孔が第二電極膜近傍において多く発生し、第一電極膜近傍ではそれほど多く発生しないのが一般的である。これは、この光電変換膜の吸収ピーク波長付近の光の多くが第二電極膜近傍で吸収されてしまい、第二電極膜近傍から離れるにしたがって、光の吸収率が低下していくことに起因している。このため、第二電極膜近傍において発生した電子又は正孔がシリコン基板にまで効率良く移動されないと、光電変換効率が低下してしまい、結果的に素子の感度低下を招くことになる。また、第二電極膜近傍で強く吸収された光波長による信号が減少することになるため、結果として分光感度の幅が広がってしまういわゆるブロード化を招くことにもなる。
また、有機材料からなる光電変換膜では、電子の移動度が正孔の移動度よりも非常に小さいのが一般的である。さらに、有機材料からなる光電変換膜における電子の移動度は酸素の影響を受けやすく、光電変換膜を大気中に晒すと電子の移動度が更に低下しまうことも分かっている。このため、電子をシリコン基板まで移動させようとする場合、第二電極膜近傍において発生した電子の光電変換膜内での移動距離が長いと、電子の移動中にその一部が失活するなどして電極膜にて捕集されず、結果として感度が低下し、分光感度がブロード化してしまう。
上述した感度低下及び分光感度のブロード化を防ぐため、光電変換膜を薄くする、あるいは電子の移動度の高い材料を用いる事が対策として考えられるが、光吸収量を十分得る必要があるため、光電変換膜の膜厚を薄くするには限界があり、また移動度の要件を満たそうとすると材料が大きく制限されるデメリットが生じる。また、電子の遅い移動度を補助するために、光電変換膜に電界を加える事も可能であるが、十分に強い電界を加えた場合、それを挟む2つの電極からの注入性リーク電流が増大するなど、センサのS/Nを低下させる可能性がある。このため、これらの方法を採用せずに感度低下及び分光感度のブロード化を防ぐ手法が望まれる。
感度低下及び分光感度のブロード化を防ぐためには、第二電極膜近傍において発生した電子又は正孔を電荷蓄積/転送/読み出し(シリコン)基板にまで効率良く移動させることが有効であり、これを実現するためには、光電変換膜内で発生した電子又は正孔の取り扱い方が課題となる。
また、有機光電変換膜には、通常、種々の色素及び顔料を使用することが可能であるが、吸収強度が低く膜厚を厚くする必要があったり、吸収波形がブロードなため分光感度がブロードになったり、光電変換効率が悪かったりするものが多く、これらを全て満足するものが望まれている。特に、緑色の光を吸収するものが望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、感度低下及び分光感度のブロード化を防ぐことが可能な光電変換素子を提供することを目的とする。
前記の課題は下記の手段によって、解決された。
〔1〕 第一電極膜と、前記第一電極膜に対向する第二電極膜と、前記第一電極膜と前記第二電極膜の間に配置される光電変換膜とを含む光電変換部を有する光電変換素子をアレイ状に多数配置した固体撮像素子であって、
前記第一電極膜下方に設けられた半導体基板を備え、
前記第二電極膜上方から前記光電変換膜に光が入射されるものであり、
前記光電変換膜は、前記第二電極膜上方からの入射光に応じて電子と正孔を含む電荷を発生するものであり、
かつ、該光電変換膜がキナクリドン誘導体またはキナゾリン誘導体を含有し、
前記第一電極膜と前記第二電極膜は、前記第二電極膜に前記電子が移動し、前記第一電極膜に前記正孔が移動するように電圧が印加されるものであり、
前記半導体基板内には、前記第一電極膜に移動された前記正孔を蓄積するための正孔蓄積部と、前記正孔蓄積部と前記第一電極膜とを電気的に接続する接続部とを備え、
前記多数の光電変換素子の各々の前記半導体基板内に蓄積された前記電荷に応じた信号を読み出す信号読み出し部を備え、
前記光電変換素子に含まれる前記光電変換膜及び前記第二電極膜が、前記多数の光電変換素子全体で共通化されており、
前記光電変換素子に含まれる前記第一電極膜が、前記多数の光電変換素子毎に分離されていることを特徴とする固体撮像素子。
〔2〕 請求項1記載のキナクリドン誘導体またはキナゾリン誘導体が、下記の一般式(I)で表される化合物または一般式(II)で表される化合物から選ばれることを特徴とする上記〔1〕記載の固体撮像素子。
Figure 0004945146

式中、環Aは、
Figure 0004945146

を表し、n1、n2は0または1を表す。但しn1及びn2が各々0の時、環Aが表す部分はビニル基を表す。環Aはさらに置換基を有してもよい。R 、R は各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。R 、R 、R 、R は各々独立に置換基を表し、m1、m2、m3、m4は各々独立に0ないし4の整数を表す。m1、m2、m3、m4が2ないし4の整数の場合、複数のR 、R 、R 、R は連結して環を形成してもよい。
〔3〕 前記光電変換膜が、前記第一電極膜近傍よりも前記第二電極膜近傍の方が前記電子と前記正孔をより多く発生することを特徴とする上記〔1〕または〔2〕記載の固体撮像素子。
〔4〕 前記光電変換膜が、前記一般式(I)または一般式(II)で表される化合物以外の有機材料を合わせて含んで構成されることを特徴とする上記〔2〕記載の固体撮像素子。
〔5〕 前記光電変換膜が有機p型半導体及び有機n型半導体の少なくとも一方を含むことを特徴とする上記〔4〕記載の固体撮像素子。
〔6〕 前記有機p型半導体及び前記有機n型半導体が、それぞれ、前記一般式(I)または一般式(II)で表される化合物、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、及びフルオランテン誘導体のいずれかを含むことを特徴とする上記〔5〕記載の固体撮像素子。
〔7〕 前記第一電極膜が、ITO、IZO、ZnO 、SnO 、TiO 、FTO、Al、Ag、又はAuを含んで構成されるものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項記載の固体撮像素子。
〔8〕 前記第二電極膜が、ITO、IZO、ZnO 、SnO 、TiO 、FTO、Al、Ag、又はAuを含んで構成されるものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項記載の固体撮像素子。
〔9〕 前記第二電極膜が、ITO、IZO、ZnO 、SnO 、TiO 、又はFTOを含んで構成されるものであり、前記光電変換部が、前記光電変換膜と前記第二電極膜との間に、仕事関数4.5eV以下の金属からなる膜を有することを特徴とする上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一項記載の固体撮像素子。
〔10〕 前記第二電極膜の可視光に対する透過率が60%以上であることを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項記載の固体撮像素子。
〔11〕 前記第一電極膜の可視光に対する透過率が60%以上であることを特徴とする上記〔1〕〜〔10〕のいずれか一項記載の固体撮像素子。
〔12〕 前記光電変換部が、前記第一電極膜と前記光電変換膜との間に、有機高分子材料からなる膜を有することを特徴とする上記〔1〕〜〔11〕のいずれか一項記載の固体撮像素子。
〔13〕 前記光電変換膜下方の前記半導体基板内に、前記光電変換膜を透過した光を吸収し、該光に応じた電荷を発生してこれを蓄積する基板内光電変換部を備えることを特徴とする上記〔1〕〜〔12〕のいずれか一項記載の固体撮像素子。
〔14〕 前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内に積層されたそれぞれ異なる色の光を吸収する複数のフォトダイオードであることを特徴とする上記〔13〕記載の固体撮像素子。
〔15〕 前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内の前記入射光の入射方向に対して垂直な方向に配列されたそれぞれ異なる色の光を吸収する複数のフォトダイオードであることを特徴とする上記〔13〕または〔14〕記載の固体撮像素子。
〔16〕 前記複数のフォトダイオードが、青色の光を吸収可能な位置にpn接合面が形成された青色用フォトダイオードと、赤色の光を吸収可能な位置にpn接合面が形成された赤色用フォトダイオードであり、前記光電変換膜が緑色の光を吸収するものであることを特徴とする上記〔14〕または〔15〕記載の固体撮像素子。
〔17〕 前記複数のフォトダイオードが、青色の光を吸収する青色用フォトダイオードと、赤色の光を吸収する赤色用フォトダイオードであり、前記光電変換膜が緑色の光を吸収するものであることを特徴とする上記〔15〕記載の固体撮像素子。
〔18〕 前記半導体基板上方に、前記光電変換部が複数積層されており、前記複数の光電変換部毎に前記正孔蓄積部と前記接続部が設けられることを特徴とする上記〔1〕〜〔17〕のいずれか一項記載の固体撮像素子。
〔19〕 前記信号読み出し部がMOSトランジスタで構成される上記〔1〕〜〔18〕のいずれか一項記載の固体撮像素子。
本発明は、上記〔1〕〜〔19〕項に関するものであるが、その他の事項についても参考のために記載した。
(1) 第一電極膜と、前記第一電極膜に対向する第二電極膜と、前記第一電極膜と前記第二電極膜の間に配置される光電変換膜とを含む光電変換部を有する光電変換素子であって、
前記第二電極膜上方から前記光電変換膜に光が入射されるものであり、
前記光電変換膜は、前記第二電極膜上方からの入射光に応じて電子と正孔を含む電荷を発生するものであり、
かつ、該光電変換膜がキナクリドン誘導体またはキナゾリン誘導体を含有し、
前記第一電極膜を前記正孔の取り出し用の電極としたことを特徴とする光電変換素子。
(2) (1)記載のキナクリドン誘導体またはキナゾリン誘導体が、下記の一般式(I)で表される化合物または一般式(II)で表される化合物から選ばれることを特徴とする(1)記載の光電変換素子。
Figure 0004945146
式中、環Aは、
Figure 0004945146
を表し、n1、n2は0または1を表す。但しn1及びn2が各々0の時、環Aが表す部分はビニル基を表す。環Aはさらに置換基を有してもよい。R、Rは各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。R、R、R、Rは各々独立に置換基を表し、m1、m2、m3、m4は各々独立に0ないし4の整数を表す。m1、m2、m3、m4が2ないし4の整数の場合、複数のR、R、R、Rは連結して環を形成してもよい。
(3) 前記光電変換膜が、前記第一電極膜近傍よりも前記第二電極膜近傍の方が前記電子と前記正孔をより多く発生することを特徴とする(1)または(2)記載の光電変換素子。
(4) 前記光電変換膜が、前記一般式(I)または一般式(II)で表される化合物以外の有機材料を合わせて含んで構成されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか記載の光電変換素子。
(5) 前記光電変換膜が有機p型半導体及び有機n型半導体の少なくとも一方を含むことを特徴とする(4)記載の光電変換素子。
(6) 前記有機p型半導体及び前記有機n型半導体が、それぞれ、前記一般式(I)または一般式(II)で表される化合物、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、及びフルオランテン誘導体のいずれかを含むことを特徴とする(5)記載の光電変換素子。
(7) 前記第一電極膜が、ITO、IZO、ZnO、SnO、TiO、FTO、Al、Ag、
又はAuを含んで構成されるものであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか記載の光電変換素子。
(8) 前記第二電極膜が、ITO、IZO、ZnO、SnO、TiO、FTO、Al、
Ag、又はAuを含んで構成されるものであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか記載の光電変換素子。
(9) 前記第二電極膜が、ITO、IZO、ZnO、SnO、TiO、又はFTOを含んで構成されるものであり、前記光電変換部が、前記光電変換膜と前記第二電極膜との間に、仕事関数4.5eV以下の金属からなる膜を有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれか記載の光電変換素子。
(10) 前記第二電極膜の可視光に対する透過率が60%以上であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか記載の光電変換素子。
(11) 前記第一電極膜の可視光に対する透過率が60%以上であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか記載の光電変換素子。
(12) 前記第一電極膜と前記第二電極膜は、前記第二電極膜に前記電子が移動し、前記第一電極膜に前記正孔が移動するように電圧が印加されるものであり、前記第一電極膜下方に設けられた半導体基板と、前記半導体基板内に形成され、前記第一電極膜に移動された前記正孔を蓄積するための正孔蓄積部と、前記正孔蓄積部と前記第一電極膜とを電気的に接続する接続部とを備えることを特徴とする(1)〜(11)のいずれか記載の光電変換素子。
(13) 前記光電変換部が、前記第一電極膜と前記光電変換膜との間に、有機高分子材料からなる膜を有することを特徴とする(1)〜(12)のいずれか記載の光電変換素子。
(14) 前記光電変換膜下方の前記半導体基板内に、前記光電変換膜を透過した光を吸収し、該光に応じた電荷を発生してこれを蓄積する基板内光電変換部を備えることを特徴とする(12)又は(13)記載の光電変換素子。
(15) 前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内に積層されたそれぞれ異なる色の光を吸収する複数のフォトダイオードであることを特徴とする(14)記載の光電変換素子。
(16) 前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内の前記入射光の入射方向に対して垂直な方向に配列されたそれぞれ異なる色の光を吸収する複数のフォトダイオードであることを特徴とする(14)または(15)記載の光電変換素子。
(17) 前記複数のフォトダイオードが、青色の光を吸収可能な位置にpn接合面が形成された青色用フォトダイオードと、赤色の光を吸収可能な位置にpn接合面が形成された赤色用フォトダイオードであり、前記光電変換膜が緑色の光を吸収するものであることを特徴とする(15)または(16)記載の光電変換素子。
(18) 前記複数のフォトダイオードが、青色の光を吸収する青色用フォトダイオードと、赤色の光を吸収する赤色用フォトダイオードであり、前記光電変換膜が緑色の光を吸収するものであることを特徴とする(16)記載の光電変換素子。
(19) 前記半導体基板上方に、前記光電変換部が複数積層されており、前記複数の光電変換部毎に前記正孔蓄積部と前記接続部が設けられることを特徴とする(12)〜(18)のいずれか記載の光電変換素子。
(20) 前記半導体基板と該半導体基板の直近にある前記第一電極膜との間に、該第一電極膜を透過した光を吸収して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を備えることを特徴とする(12)〜(19)のいずれか記載の光電変換素子。
(21) (12)〜(19)のいずれか記載の光電変換素子をアレイ状に多数配置した固体撮像素子であって、前記多数の光電変換素子の各々の前記半導体基板内に蓄積された前記電荷に応じた信号を読み出す信号読み出し部を備えることを特徴とする固体撮像素子。
(22) (20)記載の光電変換素子をアレイ状に多数配置した固体撮像素子であって、前記多数の光電変換素子の各々の前記半導体基板内に蓄積された前記電荷に応じた信号と、前記無機光電変換部に蓄積された電荷に応じた信号とを読み出す信号読み出し部を備えることを特徴とする固体撮像素子。
(23) 前記信号読み出し部がMOSトランジスタで構成される(21)または(22)記載の固体撮像素子。
(24) 前記光電変換素子に含まれる前記光電変換膜及び前記第二電極膜が、前記多数の光電変換素子全体で共通化されており、前記光電変換素子に含まれる前記第一電極膜が、前記多数の光電変換素子毎に分離されていることを特徴とする(21)〜(23)のいずれか記載の固体撮像素子。
本発明によれば、感度低下及び分光感度のブロード化を防ぐことが可能な光電変換素子を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について図面も参照して説明する。
本出願人は、第一電極膜と、前記第一電極膜に対向する第二電極膜と、前記第一電極膜と前記第二電極膜の間に配置される本発明のキナクリドン誘導体またはキナゾリン誘導体を含む光電変換膜とを含む光電変換部を有する光電変換素子において、第二電極膜上方から光が入射されるものとした場合、光電変換膜内で発生する正孔を第一電極膜に移動させ、第一電極膜に移動した正孔を、半導体基板内に形成された電荷蓄積部に蓄積し、この電荷蓄積部に蓄積された正孔に応じた信号を、半導体基板に形成したCCDやCMOS回路等の信号読み出し部によって外部に読み出すようにすることで、光電変換効率が向上し、感度低下及び分光感度のブロード化が防げることを見出した。
この根拠は、電子はその移動距離が長いと、移動中にその一部が失活するなどして電極膜にて捕集されるため、光電変換効率が低下するのに対し、正孔は、その移動距離が長くても、移動度が電子より非常に大きいため、移動中に失活するといったことがほとんどないこと、及び、本発明の化合物が特に吸収波形、正孔の移動度等に優れていることが挙げられる。また、上述したように、電子の移動度は正孔の移動度よりも非常に小さい上に、大気の影響によって更に小さくなってしまうが、正孔の移動度は、大気の影響を受けたとしても、もともと移動度が大きいため、その影響が限定的であることが挙げられる。
本発明で用いられるキナクリドン誘導体またはキナゾリン誘導体(以降、これらの誘導体を「本発明の化合物」と称することあり、)について説明する。該誘導体はいかなるものを用いても良い。該誘導体については、エス・エス・ラバナ(S.S.Labana)、エル・エル・ラバナ(L.L.Labana)著、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)67,1(1967),伊藤征司郎編、顔料の辞典(朝倉書店、2000)等に記載されている。
これらの化合物はp型半導体、又はn型半導体として用いることができるが、好ましくはp型半導体として用いる場合である。別の表現をすると、正孔輸送材料又は電子輸送材料として用いることができるが、好ましくは正孔輸送材料として用いる場合である。この場合、本発明の化合物は光を吸収すると共に輸送材料として機能する。
該誘導体として好ましく用いられる、前記一般式(I)または(II)で表される化合物について詳細に説明する。
本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、当該部分はそれ自体が置換されていなくても、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、どのような置換基でも良い。
このような置換基をWとすると、Wで示される置換基としては、いかなるものでも良く、特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言っても良い)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基、が例として挙げられる。
更に詳しくは、Wは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基を表すが、さらにアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル、フェロセニル)、複素環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でも良い。)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アンモニオ基(好ましくはアンモニオ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル、アリール、ヘテロ環が置換したアンモニオ基、例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、ホスフォ基、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)、ヒドラジノ基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のヒドラジノ基、例えば、トリメチルヒドラジノ)、またはウレイド基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のウレイド基、例えばN,N−ジメチルウレイド)、を表わす。
また、2つのWが共同して環(芳香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環。これらは、さらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、またはフェナジン環が挙げられる。)を形成することもできる。
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、−CONHSO−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SONHSO−基(スルフォニルスルファモイル基)、が挙げられる。
より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、またはアリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
一般式(I)、一般式(II)のR、R、R、Rで表される置換基としては、いかなるものでも良いが、例えば、前述のWが挙げられる。
、Rが表す置換基はアルキル基、アリール基、または複素環基であり、より好ましくは、前述のWの例で説明したアルキル基、アリール基、または複素環基である。R、Rは好ましくは水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、より好ましくは水素原子、またはアルキル基であり、特に好ましくは水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基である。
環Aは好ましくはベンゼン環であり、n1、n2は好ましくは1である。R、R、R、Rが表す置換基は好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはヘテロ環基であり、より好ましくは前述のR、R、R、Rが表す置換基(置換基W)の例で説明したハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または複素環基であり、R、R、R、Rは好ましくはハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基であり、より好ましくはハロゲン原子、またはアルキル基であり、特に好ましくはアルキル基である。m1、m2、m3、m4は好ましくは、0または1である。
一般式(I)ないし一般式(II)で表される化合物のうち本発明でより好ましく用いられるものは一般式(I)で表される化合物である。
以下に、本発明で好ましく用いられる一般式(I)ないし一般式(II)で表される化合物を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
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以上の具体例で示した化合物は、エス・エス・ラバナ(S.S.Labana)、エル・エル・ラバナ(L.L.Labana)著、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)67,1(1967),伊藤征司郎編、顔料の辞典(朝倉書店、2000)等を参考にして合成することができる。
また、これらの文献に記載の本発明に属する化合物を本発明で使用することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、上述したような光電変換部を半導体基板上方に積層した構成のセンサとしてあげられる構成例を説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。図2は、図1に示す光電変換層の断面模式図である。この固体撮像素子は、図1に示す1画素が同一平面上でアレイ状に多数配置されたものであり、この1画素から得られる信号によって画像データの1つの画素データを生成することができる。
図1に示す固体撮像素子の1画素は、n型シリコン基板1と、n型シリコン基板1上に形成された透明な絶縁膜7と、絶縁膜7上に形成された第一電極膜11、第一電極膜11上に形成された光電変換層12、及び光電変換層12上に形成された第二電極膜13からなる光電変換部とを含んで構成され、光電変換部上には開口の設けられた遮光膜14が形成されており、この遮光膜14によって光電変換層12の受光領域が制限されている。また、遮光膜14及び第二電極膜13上には透明な絶縁膜15が形成されている。
光電変換層12は、図2に示すように、第一電極膜11上に、下引き膜121と、電子ブロッキング膜122と、光電変換膜123と、正孔ブロッキング膜124と、正孔ブロッキング兼バッファ膜125と、仕事関数調整膜126とがこの順に積層されて構成される。光電変換層12は、これらのうち光電変換膜123を少なくとも含んでいれば良い。
光電変換膜123は、第二電極膜13上方からの入射光に応じて電子と正孔を含む電荷を発生し、且つ、正孔の移動度よりも電子の移動度が小さく、且つ、第一電極膜11近傍よりも第二電極膜13近傍の方が電子と正孔をより多く発生するような特性を持つ材料を含んで構成される。このような光電変換膜用の材料としては本発明の化合物を含む有機材料が代表として挙げられる。図1の構成では、光電変換膜123は、緑色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する材料を用いる。光電変換膜123は、全画素で共通して用いることができるため、1枚構成の膜であれば良く、画素毎に分離しておく必要はない。
光電変換膜123を構成する有機材料は、有機p型半導体及び有機n型半導体の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。本発明の化合物がこれらの半導体であってもよく、また、これらの半導体に加えて、さらに本発明の化合物を含む場合であっても良い。
有機p型半導体及び有機n型半導体として、それぞれ前記一般式(I)または一般式(II)で表される化合物(いわゆるキナクリドン誘導体またはキナゾリン誘導体)、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、及びフルオランテン誘導体のいずれかを特に好ましく用いることができる。
有機p型半導体(化合物)は、ドナー性有機半導体(化合物)であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上記したように、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いてよい。
有機n型半導体(化合物)は、アクセプター性有機半導体(化合物)であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いてよい。
p型有機色素、又はn型有機色素としては、いかなるものを用いても良いが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)が挙げられる。
次に金属錯体色素(化合物)について説明する。金属錯体色素(化合物)は金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体であり、金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、または錫イオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、または亜鉛イオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、または亜鉛イオンである。前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−V
erlag社 H.Yersin著1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社 山本明夫著1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
前記配位子として、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。好ましくは2座配位子である。例えばピリジン配位子、ビピリジル配位子、キノリノール配位子、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子)などが挙げられる)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環置換チオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、またはシロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる)であり、より好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、またはシロキシ配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、またはシロキシ配位子が挙げられる。
光電変換層12は、p型半導体層とn型半導体層とを有し、該p型半導体とn型半導体の少なくともいずれかが有機半導体であり、かつ、それらの半導体層の間に、該p型半導体およびn型半導体を含むバルクヘテロ接合構造層を中間層として有する光電変換膜を含有する場合が好ましい。このような場合、光電変換層12にバルクへテロ接合構造を含有させることにより、光電変換層12のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換膜の光電変換効率を向上させることができる。なお、バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266号において詳細に説明されている。
また、光電変換層12は、p型半導体の層とn型半導体の層で形成されるpn接合層の繰り返し構造(タンデム構造)の数を2以上有する構造を持つ光電変換膜を含有する場合が好ましく、さらに好ましくは、前記繰り返し構造の間に、導電材料の薄層を挿入する場合である。pn接合層の繰り返し構造(タンデム構造)の数はいかなる数でもよいが、光電変換効率を高くするために好ましくは2〜50であり、さらに好ましくは2〜30であり、特に好ましくは2または10である。導電材料としては銀または金が好ましく、銀が最も好ましい。なお、タンデム構造については、特開2005−303266号において詳細に説明されている。
また、光電変換層12に含まれる光電変換膜は、p型半導体の層、n型半導体の層、(好ましくは混合・分散(バルクヘテロ接合構造)層)を持ち、p型半導体及びn型半導体のうちの少なくとも1方に配向制御された有機化合物を含む場合が好ましく、さらに好ましくは、p型半導体及びn型半導体の両方に配向制御された(可能な)有機化合物を含む場合である。この有機化合物としては、π共役電子を持つものが好ましく用いられるが、このπ電子平面が、基板(電極基板)に対して垂直ではなく、平行に近い角度で配向しているほど好ましい。上記のように、配向の制御された有機化合物の層は、光電変換層12全体に対して一部でも含めば良い。このような状態は、光電変換層12に含まれる有機化合物の配向を制御することにより、光電変換層12のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換膜の光電変換効率を向上させるものである。
有機化合物の配向が制御されている場合において、さらに好ましくはヘテロ接合面(例えばpn接合面)が基板に対して平行ではない場合である。ヘテロ接合面が、基板(電極基板)に対して平行ではなく、垂直に近い角度で配向しているほど好ましい。上記のような、ヘテロ接合面の制御された有機化合物の層は、光電変換層12全体に対して一部でも含めば良い。このような場合、光電変換層12におけるヘテロ接合面の面積が増大し、界面で生成する電子、正孔、電子正孔ペア等のキャリア量が増大し、光電変換効率の向上が可能となる。以上の、有機化合物のヘテロ接合面とπ電子平面の両方の配向が制御された光電変換膜において、特に光電変換効率の向上が可能である。これらの状態については、特願2005−042357号において詳細に説明されている。光吸収の点では有機色素層の膜厚は大きいほど好ましいが、電荷分離に寄与しない割合を考慮すると、有機色素層の膜厚として好ましくは、30nm以上300nm以下、さらに好ましくは50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。
これらの有機化合物を含む光電変換層12は、乾式成膜法あるいは湿式成膜法により成膜される。乾式成膜法の具体的な例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法等の物理気相成長法あるいはプラズマ重合等のCVD法が挙げられる。湿式成膜法としては、キャスト法、スピンコート法、ディッピング法、LB法等が用いられる。
p型半導体(化合物)及びn型半導体(化合物)の少なくとも一つとして高分子化合物を用いる場合は、作成の容易な湿式成膜法により成膜することが好ましい。蒸着等の乾式成膜法を用いた場合、高分子を用いることは分解のおそれがあるため難しく、代わりとしてそのオリゴマーを好ましく用いることができる。一方、低分子を用いる場合は、乾式成膜法が好ましく用いられ、特に真空蒸着法が好ましく用いられる。真空蒸着法は抵抗加熱蒸着法、電子線加熱蒸着法等の化合物の加熱の方法、るつぼ、ボ−ト等の蒸着源の形状、真空度、蒸着温度、基盤温度、蒸着速度等が基本的なパラメ−タ−である。均一な蒸着を可能とするために基盤を回転させて蒸着することは好ましい。真空度は高い方が好ましく10-4Torr以下、好ましくは10-6Torr以下、特に好ましくは10-8Torr以下で真空蒸着が行われる。蒸着時のすべての工程は真空中で行われることが好ましく、基本的には化合物が直接、外気の酸素、水分と接触しないようにする。真空蒸着の上述した条件は有機膜の結晶性、アモルファス性、密度、緻密度等に影響するので厳密に制御する必要がある。水晶振動子、干渉計等の膜厚モニタ−を用いて蒸着速度をPIもしくはPID制御することは好ましく用いられる。2種以上の化合物を同時に蒸着する場合には共蒸着法、フラッシュ蒸着法等を好ましく用いることができる。
固体撮像素子100は、上述した特性を持つ光電変換膜123を有しているため、上述したように、光入射側の電極と反対の電極である第一電極膜11にて正孔を捕集してこれを利用することで、外部量子効率を上げることができ、感度向上及び分光感度のシャープ化が可能となる。そこで、固体撮像素子100では、光電変換膜123で発生した電子が第二電極膜13に移動し、光電変換膜123で発生した正孔が第一電極膜11に移動するように、第一電極膜11と第二電極膜13に電圧が印加される。
下引き膜121は、第一電極膜11上の凹凸を緩和するためのものである。第一電極膜11に凹凸がある場合、あるいは第一電極膜11上にゴミが付着していた場合、その上に低分子有機材料を蒸着して光電変換膜123を形成すると、この凹凸部分で光電変換素子123に細かいクラック、つまり光電変換膜123が薄くしか形成されない部分ができやすい。この時、さらにその上から第二電極膜13を形成すると、上記クラック部が第二電極膜13にカバレッジされて第一電極膜11と近接するため、DCショートやリーク電流の増大が生じやすい。特に、第二電極膜13としてTCOを用いる場合、その傾向が顕著である。このため、あらかじめ第一電極膜11上に下引き膜121を設けることで凹凸を緩和して、これらを抑制することができる。
下引き膜121としては、ポリアニリン、ボリチオフェン、ポリピロール、ポリカルバゾール、PTPDES、PTPDEKなどの有機の高分子系材料があげられ、スピンコート法で形成することが好ましい。
電子ブロッキング膜122は、第一電極膜11から電子が注入されることによる暗電流を低減するために設けられており、第一電極膜11からの電子が光電変換膜123に注入されるのを阻止する。
正孔ブロッキング膜124は、第二電極膜13から正孔が注入されることによる暗電流を低減するために設けられており、第二電極膜13からの正孔が光電変換膜123に注入されるのを阻止する。
正孔ブロッキング兼バッファ膜125は、正孔ブロッキング膜124の持つ機能と共に、第二電極膜13成膜時に光電変換膜123に与えられるダメージを軽減する機能を果たす。
第二電極膜13を光電変換膜123の上層に成膜する場合、第二電極膜13の成膜に用いる装置中に存在する高エネルギー粒子、例えばスパッタ法ならば、スパッタ粒子や2次電子、Ar粒子、酸素負イオンなどが光電変換膜123に衝突す
る事で、光電変換膜123が変質し、リーク電流の増大や感度の低下など性能劣化が生じる場合がある。これを防止する一つの方法として、光電変換膜123の上層にバッファ膜125を設ける事が好ましい。
正孔ブロッキング兼バッファ膜125の材料は、銅フタロシアニン、PTCDA、アセチルアセトネート錯体、BCPなどの有機物、有機−金属化合物や、MgAg、MgOなどの無機物が好ましく用いられる。また、正孔ブロッキング兼バッファ膜125は、光電変換膜123の光吸収を妨げないために、可視光の透過率が高い事が好ましく、可視域に吸収をもたない材料を選択する事、あるいは極薄い膜厚で用いる事が好ましい。正孔ブロッキング兼バッファ膜125の膜厚は、光電変換膜123の構成、第二電極膜13の膜厚などにより適当な厚みが異なるが、特に、2〜50nmの膜厚で用いる事が好ましい。
仕事関数調整膜126は、第二電極膜13の仕事関数を調整して、暗電流を抑制するためのものである。第二電極膜13が、仕事関数が比較的大きい(例えば4.5eV以上)もの(例えば、ITO、IZO、ZnO、SnO、TiO、及びFTOのいずれか)で構成される場合、仕事関数調整膜126の材料としては、仕事関数が4.5eV以下の金属を含むもの(例えばIn)を用いることで、暗電流を効果的に抑制することができる。このような仕事関数調整膜126を設けたことによる利点等の説明は後述する。
図1に戻り、n型シリコン基板1内には、その浅い方からp型半導体領域(以下、p領域と略す)4と、n型半導体領域(以下、n領域と略す)3と、p領域2がこの順に形成されている。p領域4の遮光膜14によって遮光されている部分の表面部には、高濃度のp領域(p+領域という)6が形成され、p+領域6の周りはn領域5によって囲まれている。
p領域4とn領域3とのpn接合面のn型シリコン基板1表面からの深さは、青色光を吸収する深さ(約0.2μm)となっている。したがって、p領域4とn領域3は、青色光を吸収してそれに応じた正孔を発生し、これを蓄積するフォトダイオード(Bフォトダイオード)を形成する。Bフォトダイオードで発生した正孔は、p領域4に蓄積される。
p領域2とn型シリコン基板1とのpn接合面のn型シリコン基板1表面からの深さは、赤色光を吸収する深さ(約2μm)となっている。したがって、p領域2とn型シリコン基板1は、赤色光を吸収してそれに応じた正孔を発生し、これを蓄積するフォトダイオード(Rフォトダイオード)を形成する。Rフォトダイオードで発生した正孔は、p領域2に蓄積される。
p+領域6は、絶縁膜7に開けられた開口に形成された接続部9を介して第一電極膜11と電気的に接続されており、接続部9を介して、第一電極膜11で捕集された正孔を蓄積する。接続部9は、第一電極膜11とp+領域6以外とは絶縁膜8によって電気的に絶縁される。
p領域2に蓄積された正孔は、n型シリコン基板1内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域4に蓄積された正孔は、n領域3内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p+領域6に蓄積された電子は、n領域5内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子100外部へと出力される。これらのMOS回路が特許請求の範囲の信号読み出し部を構成する。各MOS回路は配線10によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。尚、p領域2、p領域4に引き出し電極を設け、所定のリセット電位をかけると、各領域が空乏化し、各pn接合部の容量は限りなく小さい値になる。これにより、接合面に生じる容量を極めて小さくすることができる。
このような構成により、光電変換膜123でG光を光電変換し、n型シリコン基板1中のBフォトダイオードとRフォトダイオードでB光およびR光を光電変換することができる。また上部でG光がまず吸収されるため、B−G間およびG−R間の色分離は優れている。これが、シリコン基板内に3つのPDを積層し、シリコン基板内でBGR光を全て分離する形式の固体撮像素子に比べ、大きく優れた点である。以下の説明では、固体撮像素子100のn型シリコン基板1内に形成される無機材料からなる光電変換を行う部分(Bフォトダイオード及びRフォトダイオード)のことを無機層とも言う。
尚、n型シリコン基板1と第一電極膜11との間(例えば絶縁膜7とn型シリコン基板1との間)に、光電変換膜123を透過した光を吸収して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を形成することも可能である。この場合、n型シリコン基板1内に、この無機光電変換部の電荷蓄積領域に蓄積された電荷に応じた信号を読み出すためのMOS回路を設け、このMOS回路にも配線10を接続しておけば良い。
第一電極膜11は、光電変換膜123で発生して移動してきた正孔を捕集する役割を果たす。第一電極膜11は、画素毎に分離されており、これによって画像データを生成することができる。図1に示す構成では、n型シリコン基板1でも光電変換を行っているため、第一電極膜11は、可視光に対する透過率が60%以上であることが好ましく、90%であることがより好ましい。第一電極膜11下方に光電変換領域が存在しない構成の場合には、第一電極膜11は透明性の低いものであっても構わない。材料としては、ITO、IZO、ZnO、SnO、TiO、FTO、Al、Ag、及びAuのいずれかを最も好ましく用いることができる。第一電極膜11の詳細については後述する。
第二電極膜13は、光電変換膜123で発生して移動してきた電子を吐き出す機能を有する。第二電極膜13は、全画素で共通して用いることができる。このため、固体撮像素子100では、第二電極膜13が全画素で共通の一枚構成の膜となっている。第二電極膜13は、光電変換膜123に光を入射させる必要があるため、可視光に対する透過性が高い材料を用いる必要がある。第二電極膜13は、その可視光に対する透過率が60%以上であることが好ましく、90%であることがより好ましい。材料としては、ITO、IZO、ZnO、SnO、TiO、FTO、Al、Ag、及びAuのいずれかを最も好ましく用いることができる。
第二電極膜13の詳細については後述する。
無機層は、結晶シリコン、アモルファスシリコン、GaAsなどの化合物半導体のpn接合またはpin接合が一般的に用いられる。この場合、シリコンの光進入深さで色分離を行っているため積層された各受光部で検知するスペクトル範囲はブロードとなる。しかしながら、図1に示すように光電変換層12を上層に用いることにより、すなわち光電変換層12を透過した光をシリコンの深さ方向で検出することにより色分離が顕著に改良される。特に図1に示すように、光電変換層12でG光を検出すると、光電変換層12を透過する光はB光とR光になるため、シリコンでの深さ方向での光の分別はBR光のみとなり色分離が改良される。光電変換層12がB光またはR光を検出する場合でも、シリコンのpn接合面の深さを適宜選択することにより顕著に色分離が改良される。
無機層の構成は、光入射側から、npn又はpnpnとなっていることが好ましい。特に、表面にp層を設け表面の電位を高くしておくことで、表面付近で発生した正孔、及び暗電流をトラップすることができ暗電流を低減できるため、pnpn接合とすることがより好ましい。
尚、図1では、光電変換部がn型シリコン基板1上方に1つ積層される構成を示したが、n型シリコン基板1上方に、光電変換部を複数積層した構成にすることも可能である。光電変換部を複数積層した構成については後の第三実施形態で説明する。このようにした場合は、無機層で検出する光は一色で良く、好ましい色分離が達成できる。また、固体撮像素子100の1画素にて4色の光を検出しようとする場合には、例えば、1つの光電変換部にて1色を検出して無機層にて3色を検出する構成、光電変換部を2つ積層して2色を検出し、無機層にて2色を検出する構成、光電変換部を3つ積層して3色を検出し、無機層にて1色を検出する構成等が考えられる。また、固体撮像素子100が、1画素で1色のみを検出する構成であっても良い。この場合は、図1においてp領域2、n領域3、p領域4を無くした構成となる。
無機層についてさらに詳細に説明する。無機層の好ましい構成としては、光伝導型、p−n接合型、ショットキー接合型、PIN接合型、MSM(金属−半導体−金属)型の受光素子やフォトトランジスタ型の受光素子が挙げられる。特に、図1に示したように、単一の半導体基板内に、第1導電型の領域と、第1導電型と逆の導電型である第2導電型の領域とを交互に複数積層し、第1導電型及び第2導電型の領域の各接合面を、それぞれ異なる複数の波長帯域の光を主に光電変換するために適した深さに形成してなる無機層を用いることが好ましい。単一の半導体基板としては、単結晶シリコンが好ましく、シリコン基板の深さ方向に依存する吸収波長特性を利用して色分離を行うことができる。
無機半導体として、InGaN系、InAlN系、InAlP系、又はInGaAlP系の無機半導体を用いることもできる。nGaN系の無機半導体は、Inの含有組成を適宜変更し、青色の波長範囲内に極大吸収値を有するよう調整されたものである。すなわち、InGa1-xN(0≦X<1)の組成となる。このような化合物半導体は、有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いて製造される。Gaと同じ13族原料のAlを用いる窒化物半導体のInAlN系についても、InGaN系と同様に短波長受光部として利用することができる。また、GaAs基板に格子整合するInAlP、InGaAlPを用いることもできる
無機半導体は、埋め込み構造となっていてもよい。埋め込み構造とは、短波長受光部部分の両端を短波長受光部とは異なる半導体で覆われる構成のものをいう。両端を覆う半導体としては、短波長受光部のバンドギャップ波長より短い又は同等のバンドギャップ波長を有する半導体であることが好ましい。
第一電極膜11と第二電極膜13の材料は、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などを用いることができる。金属材料としては、Li、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Cs、Ba、Fr、Ra、Sc、Ti、Y、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、Se、Te、Po、Br、I、At、B、C、N、F、O、S、Nの中から選ばれる任意の組み合わせを挙げることができるが、特に好ましいのはAl、Pt、W、Au、Ag、Ta、Cu、Cr、Mo、Ti、Ni、Pd、Znである。
第一電極膜11は、光電変換層12に含まれる正孔輸送性の光電変換膜または正孔輸送膜から正孔を取り出してこれを捕集するため、正孔輸送性光電変換膜、正孔輸送膜などの隣接する膜との密着性や電子親和力、イオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選ばれる。第二電極膜13は、光電変換層12に含まれる電子輸送性の光電変換膜または電子輸送膜から電子を取り出してこれを吐き出すため、電子輸送性光電変換膜、電子輸送膜などの隣接する膜との密着性や電子親和力、イオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選ばれる。これらの具体例としては酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、シリコン化合物およびこれらとITOとの積層物などが挙げられ、好ましくは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からITO、IZOが好ましい。
電極の作製には材料によって種々の方法が用いられるが、例えばITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で膜形成される。ITOの場合、UV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。
透明な電極膜(透明電極膜)成膜時の条件について触れる。透明電極膜成膜時のシリコン基板温度は500℃以下が好ましく、より好ましくは、300℃以下で、さらに好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。また、透明電極膜成膜中にガスを導入しても良く、基本的にそのガス種は制限されないが、Ar、He、酸素、窒素などを用いることができる。また、これらのガスの混合ガスを用いても良い。特に酸化物の材料の場合は、酸素欠陥が入ることが多いので、酸素を用いることが好ましい。
また、透明電極膜の表面抵抗は、第一電極膜11であるか第二電極膜13であるか等により好ましい範囲は異なる。信号読出し部がCMOS構造である場合、透明導電膜の表面抵抗は、10000Ω/□以下が好ましく、より好ましくは、1000Ω/□以下である。信号読出し部が仮にCCD構造の場合、表面抵抗は1000Ω/□以下が好ましく、より好ましくは、100Ω/□以下である。第二電極膜13に使用する場合には1000000Ω/□以下が好ましく、より好ましくは、100000Ω/□以下である。
透明電極膜の材料として特に好ましいのは、ITO、IZO、SnO、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(Alドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)のいずれかの材料である。
透明電極膜の光透過率は、その透明電極膜を含む光電変換部に含まれる光電変換膜の吸収ピーク波長において、60%以上が好ましく、より好ましくは80%以上で、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
また、光電変換層12を複数積層する場合、第一電極膜11と第二電極膜13は、光入射側に最も近い位置にある光電変換膜から最も遠い位置にある光電変換膜まで、それぞれの光電変換膜が検出する光以外の波長の光を透過させる必要があり、可視光に対し、好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の光を透過する材料を用いる事が好ましい。
第二電極膜13はプラズマフリーで作製することが好ましい。プラズマフリーで第二電極膜13を作成することで、プラズマが基板に与える影響を少なくすることができ、光電変換特性を良好にすることができる。ここで、プラズマフリーとは、第二電極膜13の成膜中にプラズマが発生しないか、またはプラズマ発生源から基体までの距離が2cm以上、好ましくは10cm以上、更に好ましくは20cm以上であり、基体に到達するプラズマが減ずるような状態を意味する。
第二電極膜13の成膜中にプラズマが発生しない装置としては、例えば、電子線蒸着装置(EB蒸着装置)やパルスレーザー蒸着装置がある。EB蒸着装置またはパルスレーザー蒸着装置については、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)、及びそれらに付記されている参考文献等に記載されているような装置を用いることができる。以下では、EB蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をEB蒸着法と言い、パルスレーザー蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をパルスレーザー蒸着法と言う。
プラズマ発生源から基体への距離が2cm以上であって基体へのプラズマの到達が減ずるような状態を実現できる装置(以下、プラズマフリーである成膜装置という)については、例えば、対向ターゲット式スパッタ装置やアークプラズマ蒸着法などが考えられ、それらについては沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)、及びそれらに付記されている参考文献等に記載されているような装置を用いることができる。
TCOなどの透明導電膜を第二電極膜13とした場合、DCショート、あるいはリーク電流増大が生じる場合がある。この原因の一つは、光電変換膜123に導入される微細なクラックがTCOなどの緻密な膜によってカバレッジされ、反対側の第一電極膜11との間の導通が増すためと考えられる。そのため、Alなど膜質が比較して劣る電極の場合、リーク電流の増大は生じにくい。第二電極膜13の膜厚を、光電変換膜123の膜厚(すなわち、クラックの深さ)に対して制御する事により、リーク電流の増大を大きく抑制できる。第二電極膜13の厚みは、光電変換膜123厚みの1/5以下、好ましくは1/10以下であるようにする事が望ましい。
通常、導電性膜をある範囲より薄くすると、急激な抵抗値の増加をもたらすが、本実施形態の固体撮像素子100では、シート抵抗は、好ましくは100〜10000Ω/□でよく、薄膜化できる膜厚の範囲の自由度は大きい。また、透明導電性薄膜は厚みが薄いほど吸収する光の量は少なくなり、一般に光透過率が増す。光透過率の増加は、光電変換膜123での光吸収を増大させ、光電変換能を増大させるため、非常に好ましい。薄膜化に伴う、リーク電流の抑制、薄膜の抵抗値の増大、透過率の増加を考慮すると、透明導電性薄膜の膜厚は、5〜100nmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜20nmである事が望ましい。
透明電極膜の材料は、プラズマフリーである成膜装置、EB蒸着装置、及びパルスレーザー蒸着装置により成膜できるものが好ましい。例えば、金属、合金、金属酸化物、金属窒化物、金属ホウ化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が好適に挙げられ、具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウムタングステン(IWO)等の導電性金属酸化物、窒化チタン等の金属窒化物、金、白金、銀、クロム、ニッケル、アルミニウム等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ル等の有機導電性材料、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。また、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)等に詳細に記載されているものを用いても良い。
仕事関数調整膜126を設けることによる利点と技術の内容については、特願2005−251745号に詳細に記載している。
(第二実施形態)
本実施形態では、第一実施形態で説明した図1に示す構成の無機層を、n型シリコン基板内で2つのフォトダイオードを積層するのではなく、入射光の入射方向に対して垂直な方向に2つのフォトダイオードを配列して、n型シリコン基板内で2色の光を検出するようにしたものである。
図3は、本発明の第二実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。
図3に示す固体撮像素子200の1画素は、n型シリコン基板17と、n型シリコン基板17上方に形成された第一電極膜30、第一電極膜30上に形成された光電変換層31、及び光電変換層31上に形成された第二電極膜32からなる光電変換部とを含んで構成され、光電変換部上には開口の設けられた遮光膜34が形成されており、この遮光膜34によって光電変換層31の受光領域が制限されている。また、遮光膜34上には透明な絶縁膜33が形成されている。
第一電極膜30、光電変換層31、及び第二電極膜32は、第一電極膜11、光電変換層12、及び第二電極膜13と同じ構成である。
遮光膜34の開口下方のn型シリコン基板17表面には、n領域19とp領域18からなるフォトダイオードと、n領域21とp領域20からなるフォトダイオードとが、n型シリコン基板17表面に並んで形成されている。n型シリコン基板17表面上の任意の方向が、入射光の入射方向に対して垂直な方向となる。
n領域19とp領域18からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してB光を透過するカラーフィルタ28が形成され、その上に第一電極膜30が形成されている。n領域21とp領域20からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してR光を透過するカラーフィルタ29が形成され、その上に第一電極膜30が形成されている。カラーフィルタ28、29の周囲は、透明な絶縁膜25で覆われている。
n領域19とp領域18からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ28を透過したB光を吸収してそれに応じた正孔を発生し、発生した正孔をp領域18に蓄積する。n領域21とp領域20からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ29を透過したR光を吸収してそれに応じた正孔を発生し、発生した正孔をp領域20に蓄積する。
p型シリコン基板17表面の遮光膜34によって遮光されている部分には、p+領域23が形成され、p+領域23の周りはn領域22によって囲まれている。
p+領域23は、絶縁膜24、25に開けられた開口に形成された接続部27を介して第一電極膜30と電気的に接続されており、接続部27を介して、第一電極膜30で捕集された正孔を蓄積する。接続部27は、第一電極膜30とp+領域23以外とは絶縁膜26によって電気的に絶縁される。
p領域18に蓄積された正孔は、n型シリコン基板17内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域20に蓄積された正孔は、n型シリコン基板17内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p+領域23に蓄積された正孔は、n領域22内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子200外部へと出力される。これらのMOS回路が特許請求の範囲の信号読み出し部を構成する。各MOS回路は配線35によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。
尚、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成しても良い。つまり、p領域18、p領域20、及びp+領域23に蓄積された正孔をn型シリコン基板17内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその正孔に応じた信号を出力させるような信号読出し部であっても良い。
このように、信号読み出し部は、CCDおよびCMOS構造が挙げられるが、消費電
力、高速読出し、画素加算、部分読出し等の点から、CMOSの方が好ましい。
尚、図3では、カラーフィルタ28、29によってR光とB光の色分離を行っているが、カラーフィルタ28、29を設けず、p領域20とn領域21のpn接合面の深さと、p領域18とn領域19のpn接合面の深さを各々調整して、それぞれのフォトダイオードでR光とB光を吸収するようにしても良い。この場合、n型シリコン基板17と第一電極膜30との間(例えば絶縁膜24とn型シリコン基板17との間)に、光電変換層31を透過した光を吸収して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を形成することも可能である。この場合、n型シリコン基板17内に、この無機光電変換部の電荷蓄積領域に蓄積された電荷に応じた信号を読み出すためのMOS回路を設け、このMOS回路にも配線35を接続しておけば良い。
また、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、n型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としても良い。更に、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを複数とし、n型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としても良い。また、カラー画像を作る必要がないのであれば、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、光電変換部を1つだけ積層した構成としても良い。
(第三実施形態)
本実施形態の固体撮像素子は、第一実施形態で説明した図1に示す構成の無機層を設けず、シリコン基板上方に複数(ここでは3つ)の光電変換層を積層した構成である。
図4は、本発明の第三実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。
図4に示す固体撮像素子300は、シリコン基板41上方に、第一電極膜56、第一電極膜56上に積層された光電変換層57、及び光電変換層57上に積層された第二電極膜58を含むR光電変換部と、第一電極膜60、第一電極膜60上に積層された光電変換層61、及び光電変換層61上に積層された第二電極膜62を含むB光電変換部と、第一電極膜64、第一電極膜64上に積層された光電変換層65、及び光電変換層65上に積層された第二電極膜66を含むG光電変換部とが、それぞれに含まれる第一電極膜をシリコン基板41側に向けた状態で、この順に積層された構成となっている。
シリコン基板41上には透明な絶縁膜48が形成され、その上にR光電変換部が形成され、その上に透明な絶縁膜59が形成され、その上にB光電変換部が形成され、その上に透明な絶縁膜63が形成され、その上にG光電変換部が形成され、その上に開口の設けられた遮光膜68が形成され、その上に透明な絶縁膜67が形成されている。
G光電変換部に含まれる第一電極膜64、光電変換層65、及び第二電極膜66は、図1に示す第一電極膜11、光電変換層12、及び第二電極膜13と同じ構成である。
B光電変換部に含まれる第一電極膜60、光電変換層61、及び第二電極膜62は、図1に示す第一電極膜11、光電変換層12、及び第二電極膜13と同じ構成である。ただし、光電変換膜61に含まれる光電変換膜は、青色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する材料を用いる。
R光電変換部に含まれる第一電極膜56、光電変換層57、及び第二電極膜58は、図1に示す第一電極膜11、光電変換層12、及び第二電極膜13と同じ構成である。ただし、光電変換膜57に含まれる光電変換膜は、赤色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する材料を用いる。
シリコン基板41表面の遮光膜68によって遮光されている部分には、p+領域43、45、47が形成され、それぞれの周りはn領域42、44、46によって囲まれている。
p+領域43は、絶縁膜48に開けられた開口に形成された接続部54を介して第一電極膜56と電気的に接続されており、接続部54を介して、第一電極膜56で捕集された正孔を蓄積する。接続部54は、第一電極膜56とp+領域43以外とは絶縁膜51によって電気的に絶縁される。
p+領域45は、絶縁膜48、R光電変換部、及び絶縁膜59に開けられた開口に形成された接続部53を介して第一電極膜60と電気的に接続されており、接続部53を介して、第一電極膜60で捕集された正孔を蓄積する。接続部53は、第一電極膜60とp+領域45以外とは絶縁膜50によって電気的に絶縁される。
p+領域47は、絶縁膜48、R光電変換部、絶縁膜59、B光電変換部、及び絶縁膜63に開けられた開口に形成された接続部52を介して第一電極膜64と電気的に接続されており、接続部52を介して、第一電極膜64で捕集された正孔を蓄積する。接続部52は、第一電極膜64とp+領域47以外とは絶縁膜49によって電気的に絶縁される。
p+領域43に蓄積された正孔は、n領域42内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p+領域45に蓄積された正孔は、n領域44内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p+領域47に蓄積された正孔は、n領域46内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子300外部へと出力される。これらのMOS回路が特許請求の範囲の信号読み出し部を構成する。各MOS回路は配線55によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。尚、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成しても良い。つまり、p+領域43、45、47に蓄積された正孔をシリコン基板41内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその正孔に応じた信号を出力させるような信号読出し部であっても良い。
なお、シリコン基板41と第一電極膜56との間(例えば絶縁膜48とシリコン基板41との間)に、光電変換層57、61、65を透過してきた光を受光して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を形成することも可能である。この場合、シリコン基板41内に、この無機光電変換部の電荷蓄積領域に蓄積された電荷に応じた信号を読み出すためのMOS回路を設け、このMOS回路にも配線55を接続しておけば良い。
このように、第一実施形態及び第二実施形態で述べた、光電変換層をシリコン基板上に複数積層する構成は、図4のような構成によって実現できる。
以上の説明において、B光を吸収する光電変換膜とは、少なくとも400〜500nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であるものを意味する。G光を吸収する光電変換膜とは、少なくとも500〜600nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。R光を吸収する光電変換膜とは、少なくとも600〜700nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。
第一実施形態や第三実施形態のような構成の場合は、上層からBGR、BRG、GBR、GRB、RBG、RGBという順序で色を検出するパターンが考えられる。好ましくは最上層がGである。また、第二実施形態のような構成の場合は、上層がR層の場合は下層が同一平面状にBG層、上層がB層の場合は下層が同一平面状にGR層、上層がG層の場合は下層が同一平面状にBR層といった組み合わせが可能である。好ましくは上層がG層で下層が同一平面状にBR層である図3のような構成である。
(第四実施形態)
図5は、本発明の第四実施形態を説明するための固体撮像素子の断面模式図である。図5では、光を検出して電荷を蓄積する部分である画素部における2画素分の断面と、その画素部にある電極に接続される配線や、その配線に接続されるボンディングPAD等が形成される部分である周辺回路部との断面を併せて示した。
画素部のn型シリコン基板213には、表面部にp領域221が形成され、p領域221の表面部にはn領域222が形成され、n領域222の表面部にはp領域223が形成され、p領域223の表面部にはn領域224が形成されている。
p領域221は、n型シリコン基板213とのpn接合により光電変換された赤色(R)成分の正孔を蓄積する。R成分の正孔が蓄積されたことによるp領域221の電位変化が、n型シリコン基板213に形成されたMOSトランジスタ226から、そこに接続されたメタル配線219を介して信号読み出しPAD227に読み出される。
p領域223は、n領域222とのpn接合により光電変換された青色(B)成分の正孔を蓄積する。B成分の正孔が蓄積されたことによるp領域223の電位変化が、n領域222に形成されたMOSトランジスタ226’から、そこに接続されたメタル配線219を介して信号読み出しPAD227に読み出される。
n領域224内には、n型シリコン基板213上方に積層された光電変換膜123で発生した緑色(G)成分の正孔を蓄積するp領域からなる正孔蓄積領域225が形成されている。G成分の正孔が蓄積されたことによる正孔蓄積領域225の電位変化が、n領域224内に形成されたMOSトランジスタ226''から、そこに接続されたメタル配線219を介して信号読み出しPAD227に読み出される。通常、信号読み出しPAD227は、各色成分が読み出されるトランジスタ毎に別々に設けられる。
ここでp領域、n領域、トランジスタ、メタル配線等は模式的に示したが、それぞれの構造等はこれに限らず、適宜最適なものが選ばれる。B光、R光はシリコン基板の深さにより分別しているのでpn接合等のシリコン基板表面からの深さ、各不純物のドープ濃度の選択などは重要である。信号読み出し部となるCMOS回路には、通常のCMOSイメージセンサーに用いられている技術を適用することができる。低ノイズ読出カラムアンプやCDS回路を初めとして、画素部のトランジスタ数を減らす回路構成を適用することができる。
n型シリコン基板213上には、酸化シリコン、窒化シリコン等を主成分とする透明な絶縁膜212が形成され、絶縁膜212上には酸化シリコン、窒化シリコン等を主成分とする透明な絶縁膜211が形成されている。絶縁膜212の膜厚は薄いほど好ましく5μm以下、好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
絶縁膜211、212内には、第一電極膜214と正孔蓄積領域としてのp領域225とを電気的に接続する例えばタングステンを主成分としたプラグ215が形成されており、プラグ215は絶縁膜211と絶縁膜212との間でパッド216によって中継接続されている。パッド216はアルミニウムを主成分としたものが好ましく用いられる。絶縁膜212内には、前述したメタル配線219やトランジスタ226、226’、226''のゲート電極等も形成されている。メタル配線も含めてバリヤー層が設けられていることが好ましい。プラグ215は、1画素毎に設けられている。
絶縁膜211内には、n領域224とp領域225のpn接合による電荷の発生に起因するノイズを防ぐために、遮光膜217が設けられている。遮光膜217は通常、タングステンやアルミニウム等を主成分としたものが用いられる。絶縁膜211内には、ボンディングPAD220(外部から電源を供給するためのPAD)と、信号読み出しPAD227が形成され、ボンディングPAD220と後述する第一電極膜214とを電気的に接続するためのメタル配線(図示せず)も形成されている。
絶縁膜211内の各画素のプラグ215上には透明な第一電極膜214が形成されている。第一電極膜214は、画素毎に分割されており、この大きさによって受光面積が決定される。第一電極膜214には、ボンディングPAD220からの配線を通じてバイアスがかけられる。後述する第二電極膜205に対して第一電極膜214に負のバイアスをかけることで、正孔蓄積領域225に正孔を蓄積できる構造が好ましい。
第一電極膜214上には図2と同様の構造の光電変換層12が形成され、この上に、第二電極膜205が形成されている。
第二電極膜205上には光電変換層12を保護する機能を持つ窒化シリコン等を主成分とする保護膜204が形成されている。保護膜204には、画素部の第一電極膜214と重ならない位置に開口が形成され、絶縁膜211及び保護膜204には、ボンディングPAD220上の一部に開口が形成されている。そして、この2つの開口によって露出する第二電極膜205とボンディングPAD220とを電気的に接続して、第二電極膜205に電位を与えるためのアルミニウム等からなる配線218が、開口内部及び保護膜204上に形成されている。配線218の材料としては、Al−Si、Al−Cu合金等のアルミニウムを含有する合金を用いることもできる。
配線218上には、配線218を保護するための窒化シリコン等を主成分とする保護膜203が形成され、保護膜203上には赤外カット誘電体多層膜202が形成され、赤外カット誘電体多層膜202上には反射防止膜201が形成されている。
第一電極膜214は、図1に示す第一電極膜11と同じ機能を果たす。第二電極膜205は、図1に示す第二電極膜13と同じ機能を果たす。
以上のような構成により、1画素でBGR3色の光を検出してカラー撮像を行うことが可能となる。図5の構成では、2つの画素においてR、Bを共通の値として用い、Gの値だけを別々に用いるが、画像を生成する際はGの感度が重要となるため、このような構成であっても、良好なカラー画像を生成することが可能である。
以上説明した固体撮像素子は、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ファクシミリ、スキャナー、複写機をはじめとする撮像素子に適用できる。バイオや化学センサーなどの光センサーとしても利用可能である。
また、以上の実施形態で説明した絶縁膜として挙げられる材料は、SiOx、SiNx、BSG、PSG、BPSG、Al、MgO、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物等であるが、最も好ましい材料はSiOx、SiNx、BSG、PSG、BPSGである。
尚、第一実施形態〜第四実施形態において、本発明の光電変換膜以外の光電変換部からの信号の読み出しは、正孔と電子のどちらを用いても構わない。つまり、上述してきたように、半導体基板とその上に積層される光電変換部との間に設けられる無機光電変換部や、半導体基板内に形成されるフォトダイオードにて正孔を蓄積し、この正孔に応じた信号を信号読み出し部によって読み出す構成としても良いし、無機光電変換部や半導体基板内に形成されるフォトダイオードにて電子を蓄積し、この電子に応じた信号を信号読み出し部によって読み出す構成としても良い。
[実施例]
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
光電変換部として、図2に示した構成のものを以下のように作成し試料1とし、第二電極膜13上方から光を入射して、第一電極膜11で正孔を捕集し、捕集した正孔に応じた信号をMOS回路によって読み出した。なお、第1電極と第2電極の間に、第2電極が正(バイアス)となるよう、露光開始時20Vであるように、電圧を印加した。
そして、この信号から、500〜600nmの波長域での最大感度を100とした相対感度と、500〜600nmの波長域での最大感度を100とした規格化相対感度とを求めた。
第一電極膜11として、スパッタ法により厚み100nmのITOをガラス基板上に成膜する。その上に、導電性を有する高分子の下引き膜121としてPSSがドープされたPEDOTをスピンコート後、真空加熱することで40nm成膜する。その上に、電子ブロッキング膜122としてm−MTDATAを真空蒸着法により50nm成膜する。その上に緑色の光を吸収する光電変換膜123として本発明の(S−8)を真空蒸着法により100nm成膜し、正孔ブロッキング膜124としてAlqを真空蒸着法により50nm成膜、続いて同じく正孔ブロッキング兼バッファ膜125としてBCPを真空蒸着法により20nm成膜する。その上に、第二電極膜13の仕事関数を電子捕集電極として好適に調整するため、Inを真空蒸着法により5nm成膜する。さらに第二電極膜13として、ITOをプラズマフリー条件下でスパッタ法により10nm成膜する。
上記m−MTDATAの成膜から第二電極膜13であるITOのスパッタ成膜までは、大気に晒すことなく真空一貫で行う。ここで用いた材料の化学式を以下に列挙する。
Figure 0004945146
Figure 0004945146
(比較例)
光電変換部として、図6に示した構成のものを以下のように作成し比較試料2とし、第二電極膜13上方から光を入射して、第一電極膜11で電子を捕集し、捕集した電子に応じた信号をMOS回路によって読み出した。なお、第1電極と第2電極の間に、第2電極が負(バイアス)となるよう、露光開始時20Vであるように、電圧を印加した。
そして、この信号から、試料1の500〜600nmの波長域での最大感度を100とした相対感度と、500〜600nmの波長域での最大感度を100とした規格化相対感度とを求めた。
第一電極膜11として、スパッタ法により厚み100nmのITOをガラス基板上に成膜する。その上に、導電性を有する高分子の下引き膜321としてPSSがドープされたPEDOTをスピンコート後、真空加熱することで40nm成膜する。その上に、第一電極膜11の仕事関数を電子捕集電極として好適に調整するための仕事関数調整膜322としてInを真空蒸着法により2nm成膜する。その上に、正孔ブロッキング膜333としてBCPを真空蒸着法により20nm成膜する。その上に、緑色の光を吸収する電子輸送性の光電変換膜334としてAlqを真空蒸着法により50nm成膜する。その上に、緑色の光を吸収する正孔輸送性の光電変換膜335として(S−8)を真空蒸着法により100nm成膜する。その上に、電子ブロッキング膜336としてm−MTDATAを真空蒸着法により50nm成膜する。その上に、第二電極膜13として、ITOをプラズマフリー条件下でスパッタ法により10nm成膜する。上記Inの成膜から第二電極膜13であるITOのスパッタ成膜までは、大気に晒すことなく真空一貫で行う。
本発明の試料1と比較試料2の相対感度を図7に示し、規格化相対感度を図8に示した。
図7に示したように、本発明の試料1は比較試料2よりも絶対感度が約2倍になった。また、図8に示したように、分光特性も実施例の方がよりシャープになった。以上の結果により、光入射側の電極とは反対の電極で正孔を捕集し、この正孔に応じた信号を読み出すことで、高感度化と分光感度のシャープ化が実現されることがわかった。
上記で述べた試料1及び比較試料2で用いた、光電変換膜を以下のように変更した以外は同様の本発明の試料3、及び比較試料4を作成した。同様に評価したところ、図9、10の結果を得た。以上の結果により、実施例1と同様に、光入射側の電極とは反対の電極で正孔を捕集し、この正孔に応じた信号を読み出すことで、高感度化と分光感度のシャープ化が実現されることがわかった。
本発明の試料3の光電変換膜:
ITO(100nm:第1電極)/(S−9)(100nm)/Alq3(50nm)/ITO(10nm:第2電極)
比較試料4の光電変換膜:
ITO(100nm:第1電極)/ Alq3(50nm)/(S−9)(100nm)/ITO(10nm:第2電極)
上記の(S−9)のかわりに、本発明の(S−13)、(S−15)、(S−28)、(S−29)、(S−30)、(S−31)、(S−32)、(S−33)、(S−34)、(S−35)、(S−36)、(S−37)、(S−38)を用いた以外は、全く同様の光電変換部を作成しても、同様な結果が得られる。
本発明の第一実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図 図1に示す光電変換層の断面模式図 本発明の第二実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図 本発明の第三実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図 本発明の第四実施形態を説明するための固体撮像素子の断面模式図 本発明の実施例で作成する光電変換部の断面模式図 本発明の実施例の結果を示す図 本発明の実施例の結果を示す図 本発明の実施例の結果を示す図 本発明の実施例の結果を示す図
符号の説明
1 p型シリコン基板(半導体基板)
2、4 n型半導体領域
6 高濃度n型半導体領域(電子蓄積部)
3、5 p型半導体領域
7、8、15 絶縁膜
9 接続部
10 配線
11 第一電極膜
12 光電変換層
13 第二電極膜
14 遮光膜

Claims (19)

  1. 第一電極膜と、前記第一電極膜に対向する第二電極膜と、前記第一電極膜と前記第二電極膜の間に配置される光電変換膜とを含む光電変換部を有する光電変換素子をアレイ状に多数配置した固体撮像素子であって、
    前記第一電極膜下方に設けられた半導体基板を備え、
    前記第二電極膜上方から前記光電変換膜に光が入射されるものであり、
    前記光電変換膜は、前記第二電極膜上方からの入射光に応じて電子と正孔を含む電荷を発生するものであり、
    かつ、該光電変換膜がキナクリドン誘導体またはキナゾリン誘導体を含有し、
    前記第一電極膜と前記第二電極膜は、前記第二電極膜に前記電子が移動し、前記第一電極膜に前記正孔が移動するように電圧が印加されるものであり、
    前記半導体基板内には、前記第一電極膜に移動された前記正孔を蓄積するための正孔蓄積部と、前記正孔蓄積部と前記第一電極膜とを電気的に接続する接続部とを備え、
    前記多数の光電変換素子の各々の前記半導体基板内に蓄積された前記電荷に応じた信号を読み出す信号読み出し部を備え、
    前記光電変換素子に含まれる前記光電変換膜及び前記第二電極膜が、前記多数の光電変換素子全体で共通化されており、
    前記光電変換素子に含まれる前記第一電極膜が、前記多数の光電変換素子毎に分離されていることを特徴とする固体撮像素子。
  2. 請求項1記載のキナクリドン誘導体またはキナゾリン誘導体が、下記の一般式(I)で表される化合物または一般式(II)で表される化合物から選ばれることを特徴とする請求項1記載の固体撮像素子
    Figure 0004945146

    式中、環Aは、
    Figure 0004945146

    を表し、n1、n2は0または1を表す。但しn1及びn2が各々0の時、環Aが表す部分はビニル基を表す。環Aはさらに置換基を有してもよい。R、Rは各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。R、R、R、Rは各々独立に置換基を表し、m1、m2、m3、m4は各々独立に0ないし4の整数を表す。m1、m2、m3、m4が2ないし4の整数の場合、複数のR、R、R、Rは連結して環を形成してもよい。
  3. 前記光電変換膜が、前記第一電極膜近傍よりも前記第二電極膜近傍の方が前記電子と前記正孔をより多く発生することを特徴とする請求項1または2記載の固体撮像素子
  4. 前記光電変換膜が、前記一般式(I)または一般式(II)で表される化合物以外の有機材料を合わせて含んで構成されることを特徴とする請求項記載の固体撮像素子
  5. 前記光電変換膜が有機p型半導体及び有機n型半導体の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項4記載の固体撮像素子
  6. 前記有機p型半導体及び前記有機n型半導体が、それぞれ、前記一般式(I)または一般式(II)で表される化合物、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、及びフルオランテン誘導体のいずれかを含むことを特徴とする請求項5記載の固体撮像素子
  7. 前記第一電極膜が、ITO、IZO、ZnO、SnO、TiO、FTO、Al、Ag、又はAuを含んで構成されるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の固体撮像素子
  8. 前記第二電極膜が、ITO、IZO、ZnO、SnO、TiO、FTO、Al、Ag、又はAuを含んで構成されるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の固体撮像素子
  9. 前記第二電極膜が、ITO、IZO、ZnO、SnO、TiO、又はFTOを含んで構成されるものであり、前記光電変換部が、前記光電変換膜と前記第二電極膜との間に、仕事関数4.5eV以下の金属からなる膜を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の固体撮像素子
  10. 前記第二電極膜の可視光に対する透過率が60%以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項記載の固体撮像素子
  11. 前記第一電極膜の可視光に対する透過率が60%以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項記載の固体撮像素子
  12. 前記光電変換部が、前記第一電極膜と前記光電変換膜との間に、有機高分子材料からなる膜を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項記載の固体撮像素子
  13. 前記光電変換膜下方の前記半導体基板内に、前記光電変換膜を透過した光を吸収し、該光に応じた電荷を発生してこれを蓄積する基板内光電変換部を備えることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項記載の固体撮像素子
  14. 前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内に積層されたそれぞれ異なる色の光を吸収する複数のフォトダイオードであることを特徴とする請求項13記載の固体撮像素子
  15. 前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内の前記入射光の入射方向に対して垂直な方向に配列されたそれぞれ異なる色の光を吸収する複数のフォトダイオードであることを特徴とする請求項13または14記載の固体撮像素子
  16. 前記複数のフォトダイオードが、青色の光を吸収可能な位置にpn接合面が形成された青色用フォトダイオードと、赤色の光を吸収可能な位置にpn接合面が形成された赤色用フォトダイオードであり、前記光電変換膜が緑色の光を吸収するものであることを特徴とする請求項14または15記載の固体撮像素子
  17. 前記複数のフォトダイオードが、青色の光を吸収する青色用フォトダイオードと、赤色の光を吸収する赤色用フォトダイオードであり、前記光電変換膜が緑色の光を吸収するものであることを特徴とする請求項15記載の固体撮像素子
  18. 前記半導体基板上方に、前記光電変換部が複数積層されており、前記複数の光電変換部毎に前記正孔蓄積部と前記接続部が設けられることを特徴とする請求項17のいずれか一項記載の固体撮像素子
  19. 前記信号読み出し部がMOSトランジスタで構成される請求項1〜18のいずれか一項記載の固体撮像素子。
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