実施の形態1.
本実施の形態は、軟磁性体もしくはフェライトを含有する熱可塑性樹脂(後述する)を成形して得られるヨークの外周に、樹脂マグネット部を一体に成形して形成される電動機の回転子に関するものである。
図1乃至図47は実施の形態1を示す図で、図1は電動機の回転子100の断面図(図2のA−A断面図)、図2は図1の位置検出用マグネット11の反対側の側面図、図3は図1の位置検出用マグネット11側の側面図、図4は電動機の回転子100を位置検出用マグネット11側から見た斜視図、図5はゲート凸部32の位置検出用マグネット11側端面付近の拡大図、図6は図1のゲート凸部32付近の拡大図、図7は変形例の電動機の回転子200を位置検出用マグネット11側から見た斜視図、図8はゲート凸部40の位置検出用マグネット11側端面付近の拡大図、図9はヨーク4を示す図((a)は凹部6側から見た側面図、(b)は(a)のB−B断面図、(c)は位置検出用マグネット11側から見た側面図)、図10はヨーク4が外側の配向磁場により極方向に対し異方性に配向される状態を示す図、図11図9(a)の拡大図、図12は図9(c)の拡大図、図13はヨーク4を台座34から見た斜視図、図14はヨーク4を凹部6から見た斜視図、図15は図14の部分拡大図、図16は図9(b)の部分拡大図、図17は図9(b)の拡大図、図18はランナーを切除する前の回転子マグネット3を示す図((a)は凹部6側から見た側面図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は位置検出用マグネット11側から見た側面図)、図19は回転子マグネット3が外側の配向磁場により極方向に対し異方性に配向される状態を示す図、図20は図18(b)の拡大図、図21は図18(c)の拡大図、図22はランナーを切除する前の回転子マグネット3をランナー側から見た斜視図、図23は図22のリブ状ランナー35付近の拡大斜視図、図24は回転子マグネット3の成形時の樹脂マグネットの流れを示す部分平面図、図25はランナーを切除した回転子マグネット3を台座部50側から見た斜視図、図26は回転子マグネット3を凹部6側から見た斜視図、図27は変形例のヨーク104を示す図((a)は凹部6側から見た側面図、(b)は(a)のD−D断面図、(c)は凹部6の反対側から見た側面図)、図28は図27(c)の拡大図、図29はヨーク104を凹部6の反対側から見た斜視図、図30はランナーを切除する前の変形例の回転子マグネット103を示す図((a)は凹部6側から見た側面図、(b)は(a)のE−E断面図、(c)は凹部6の反対側から見た側面図)、図31は図30(b)の拡大図、図32は図30(c)の拡大図、図33は変形例の回転子マグネット103の成形時の樹脂マグネットの流れを示す部分平面図、図34はランナーを切除する前の変形例の回転子マグネット103をランナー側から見た部分斜視図、図35はランナーを切除した変形例の回転子マグネット103を凹部6の反対側から見た斜視図、図36は位置検出用マグネット11の斜視図、図37は位置検出用マグネット11を示す図((a)は平面図、(b)は(a)のE−E断面図)、図38は位置検出用マグネット11の部分拡大図、図39は電動機の固定子300の斜視図、図40は電動機の固定子300を逆曲げして巻線した状態を示す斜視図、図41は固定子鉄心301(帯状)の斜視図、図42は固定子鉄心301(帯状)に絶縁部303を施し端子を取り付けた状態を示す斜視図、図43は電動機の固定子300を用いる12スロット/10極の同期電動機の断面図、図44は電動機の固定子300の固定子巻線の結線図、図45は電動機の固定子300の固定子巻線の結線方法を示す展開図、図46は電動機400を示す図、図47は電動機400の製造工程を示す図である。
図1〜図3に示す電動機の回転子100は、軸1と、回転子マグネット3と、位置検出用マグネット11とを樹脂成形用金型にセットし、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂17を樹脂成形用金型に注入して成形される。
その後、軸受410(図46参照、例えば、ボールベアリング)を回転子マグネット3の両側に組付ける。
電動機の回転子100は、磁極数が10極のものを例に説明する。磁極数は10極に限定されるものではなく、任意の偶数でよい。
電動機の回転子100は、後述する固定子と組み合わされて、例えば、ブラシレスDCモータを構成する。
軸受410(図46参照)は、熱可塑性樹脂17で軸1の外周に形成される、円筒状の軸外周円筒樹脂部31の軸受を当て止めする面19に当接する。
軸1の熱可塑性樹脂17の軸外周円筒樹脂部31の内接する部分には、ローレットアヤ目2が施される。日本で一般的にはローレットと呼ばれ、主に丸物(ここでは、軸1)の外周に施されるギザギザの溝形状で、すべり止めとして機能する。例えば、目に見えない部分で、主に圧入部品(インサート)の接続部に摩擦係数を上げたり、内径にそのギザギザを食付かせたりして抜け止め、回り止めとして使用される。
回転子マグネット3、位置検出用マグネット11の詳細については、後述する。ここでは、先ず電動機の回転子100の、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂17による成形について説明する。
縦型成形機に設置された金型の下型(図示せず)に、回転子マグネット3をヨーク4の凹部6を備える側の軸方向端面(位置検出用マグネット11が取り付けられる軸方向端面の反対側の軸方向端面、図1では左側)から挿入し、回転子マグネット3が金型の下型に組み込まれる。
金型の下型は、ヨーク4の凹部6側の軸方向端面に設けられるテーパ状の切欠き7(図1、図2、図9(a)参照)に嵌め合わされる軸1の金型挿入部と同軸が確保された凸部を備える。金型が締められた際に金型の下型(芯部)の凸部が、テーパ状の切欠き7に押し付けられることで樹脂マグネット部5の外周と軸1との同軸が確保される。
ヨーク4の凹部6側の軸方向端面に設けられるテーパ状の切欠き7は、磁極に対応(対向)して設けられる。従って、切欠き7は周方向に略等間隔に、10個形成される(図9(a)参照)。切欠き7を磁極に対応(対向)して設けるのは、ヨーク4の各磁極に対する磁路を略同一にするためである。
ヨーク4の凹部6側の軸方向端面に設けられるテーパ状の切欠き7(図1、図2、図9(a)参照)に嵌め合わされる金型の下型の凸部は、このケースでは5個ある。そして、ヨーク4の凹部6側の軸方向端面に設けられるテーパ状の切欠き7の10個のうちの5個(周方向に略等間隔)に嵌め合わされる。
金型の下型に、回転子マグネット3をヨーク4の凹部6を備える側の軸方向端面から挿入し、回転子マグネット3を金型の下型に組み込む際に、下型の5個の凸部に、ヨーク4の10個の切欠き7のいずれかの5個を嵌めればよいので、切欠き7が5個の場合よりも作業性がよくなるという効果もある。
さらに、熱可塑性樹脂17が充填される成形時に、軸外周円筒樹脂部31の回り止めとなるローレットアヤ目2が施された軸1が、下型の回転子マグネット3の中央にセットされる。
さらに、回転子マグネット3の台座部50(図25参照)の内側に、位置検出用マグネット11(図36〜図38参照)を設置した後に、金型が閉じられてPBT等の熱可塑性樹脂17を射出して成形する。
尚、位置検出用マグネット11については詳細は後述するが、位置検出用マグネット11は、内径側の軸方向両端部に段差12(図36〜図38参照)を備え、厚み方向(図38参照)に対称となっている。
位置検出用マグネット11を回転子マグネット3に装着した場合に、回転子マグネット3の軸方向端部側(外側)となる段差12(図36〜図38参照)に、PBT等の熱可塑性樹脂17が充填されて、位置検出用マグネットの軸方向の抜け止めとなる。
位置検出用マグネット11は、厚み方向の両端に段差12を備えると、位置検出用マグネット11を回転子マグネット3に装着する場合に表裏を気にせずに装着することができる。しかし、位置検出用マグネット11の厚み方向の片側に段差12があり、段差12側が回転子マグネット3の軸方向端部側(外側)になるようにしてもよい。
また、位置検出用マグネット11は、図36〜図38に示すように、段差12が熱可塑性樹脂17で埋設されると、回り止めとなるリブ13を備える。
また、回転子マグネット3の台座部50(図25参照)に位置検出用マグネット11をセットした状態を想定する。金型の下型に、回転子マグネット3をヨーク4の凹部6を備える側の軸方向端面から挿入し、回転子マグネット3を金型の下型に組み込むので、回転子マグネット3をヨーク4の凹部6を備える側の軸方向端面が下面で、その反対側の位置検出用マグネット11をセットする側の軸方向端面が上面になる。
位置検出用マグネット11は、回転子マグネット3の台座部50(図25参照)の位置検出用マグネット保持突起35bの内側で台座34及びリブ状ランナー35(製品として残る部分)の上面に配置される(略水平の状態)。
このとき、位置検出用マグネット11の外周面と、位置検出用マグネット保持突起35bの内周面との間には、所定の隙間が存在する。
詳細は省くが、ターンテーブルに設置された下型は、成形時には、例えば、180°所定の回転速度で回転する。
位置検出用マグネット11が、樹脂成形の前で回転子マグネット3の台座部50(図25参照)に載置された状態で、例えば、180°所定の回転速度で回転すると位置検出用マグネット11に遠心力が作用する。
しかし、位置検出用マグネット11は、周囲に位置検出用マグネット保持突起35bが存在するため、位置検出用マグネット保持突起35bが径方向の位置ずれを防止し、回転子マグネット3から脱落する恐れが少ない。それにより、生産性が向上する。
樹脂成形により、熱可塑性樹脂17が軸1の外周に円筒状に肉付けされる軸外周円筒樹脂部31(図1、図3〜図5参照)の外周に、軸外周円筒樹脂部31の外周から放射状に、熱可塑性樹脂17を注入するゲート凸部32が形成される。
熱可塑性樹脂17は、ゲート凸部32の位置検出用マグネット11側の軸方向端面から注入される。そのため、図5に示すように、ゲート凸部32の位置検出用マグネット11側の軸方向端面には、ゲート処理跡32aが残る。
ゲート凸部32は、例えば、磁極の数の半分の数(ここでは、10極の半分の5個)形成される(図4参照)。
ゲート凸部32は、軸外周円筒樹脂部31から径方向に所定の長さr(図5参照)で伸びている。そして、ヨーク内周円筒樹脂部37(図4、図5参照)の内周面と、ゲート凸部32の径方向先端とは、所定の距離だけ離間している。
ゲート凸部32の径方向に伸びる方向は、樹脂マグネット部5の略磁極中心方向である。
ゲート凸部32の一方の軸方向端面(位置検出用マグネット11側)は、回転子マグネット3の位置検出用マグネット11が設けられる軸方向端面より、所定の寸法d1(図6参照、例えば1mm程度)だけ内側に位置する。
ゲート凸部32の他方の軸方向端面は、図1に示すように、樹脂成形金型の上型と下型との型合わせ面跡38に位置する。
従って、ゲート凸部32の軸方向の長さは、回転子マグネット3の軸方向長さの略半分の長さである。
ゲート凸部32の一方の軸方向端面(位置検出用マグネット11側)が、回転子マグネット3の位置検出用マグネット11が設けられる軸方向端面より、所定の寸法d1だけ内側に位置する理由について説明する。
既に述べたように、熱可塑性樹脂17は、ゲート凸部32の位置検出用マグネット11側の軸方向端面から注入され、図5に示すように、ゲート凸部32の位置検出用マグネット11側の軸方向端面には、ゲート処理跡32aが残る。
ゲート処理跡32aは、ゲート凸部32の位置検出用マグネット11側の軸方向端面から外側に任意の長さ出っ張ることがある。ゲート処理跡32aの出っ張りと干渉するものがある場合、ゲート処理跡32aの出っ張りは、回転子マグネット3の位置検出用マグネット11側の軸方向端面よりも内側に収まるのが好ましい。
例えば、軸受410(図46参照、例えば、ボールベアリング)の外径が、ヨーク内周円筒樹脂部37(図1、図3〜図5参照)の内径より小さい場合は、モールド固定子350(図46参照)のモールドにゲート処理跡32aの出っ張りが干渉する恐れがある。
そのため、ゲート凸部32の一方の軸方向端面(位置検出用マグネット11側)が、回転子マグネット3の位置検出用マグネット11が設けられる軸方向端面より、所定の寸法d1だけ内側に位置して、ゲート処理跡がd1より小さくするようにしている。ゲート処理跡の範囲をd1だけ取ることが可能なことから、生産性の向上が図れる。
図1〜図5に示すように、軸外周円筒樹脂部31とヨーク内周円筒樹脂部37との間には、複数のリブ18が放射状に形成されている。
図1〜図5に示すケースでは、10個のリブ18が軸外周円筒樹脂部31とヨーク内周円筒樹脂部37との間に放射状に、周方向に略等間隔に形成されている。
リブ18は、樹脂マグネット部5の極間方向に延びている。
熱可塑性樹脂17が注入される一つのゲート凸部32の両側に二つのリブ18が形成される。リブ18の径方向の厚みは、ゲート凸部32の径方向の厚みよりも小さい。
リブ18を介して熱可塑性樹脂17が樹脂マグネット部5と、位置検出用マグネット11まで達して、一体化されて回転子マグネット3となる。
PBT等の熱可塑性樹脂17が、ゲート凸部32から軸1外周の軸外周円筒樹脂部31に直接射出されて、最も早く充填させることが出来る。そのため、円筒樹脂部の軸外周円筒樹脂部31のウェルド強度の向上が図れる。
従来は、ヨーク内周円筒樹脂部37に樹脂が注入され、リブ18を介して軸外周円筒樹脂部31に樹脂が充填されていた。
軸外周円筒樹脂部31から放射状に伸びるリブ18の本数、厚み(周方向)、長さ(軸方向、径方向)については、電動機の発生トルクや、断続運転による繰り返し応力に耐える強度を有する範囲で、可能な限り少なく、薄く、短くしてコスト低減を図るようにしてもよい。
また、リブ18の本数、厚み(周方向)、長さ(軸方向、径方向)を変化させて円周方向の剛性の調整することにより、樹脂マグネット部5から軸1への伝達加振力の調整が可能なことから、電動機の低騒音化が図れるため製品の品質が向上する。
図7、図8により変形例の電動機の回転子200について説明する。
変形例の電動機の回転子200は、図1〜図7の電動機の回転子100と比べると、ゲート凸部とリブの構成が相違する。
変形例の電動機の回転子200は、ゲート凸部40の径方向の先端から、リブ41がヨーク内周円筒樹脂部37に向かって形成されている。
即ち、周方向に略等間隔に形成される、5個のゲート凸部40にリブ41が形成される。
熱可塑性樹脂17は、ゲート凸部40の位置検出用マグネット11側の軸方向端面から注入される。そのため、図8に示すように、ゲート凸部40の位置検出用マグネット11側の軸方向端面には、ゲート処理跡40aが残る。5個あるゲート凸部40の全てにゲート処理跡40aが残る。
このように、ゲート凸部40の径方向の先端からリブ41をヨーク内周円筒樹脂部37に向かって形成することにより、樹脂マグネット部5と、位置検出用マグネット11側にも、熱可塑性樹脂17が速やかに充填されるので、製造上の品質の向上が図れる。
熱可塑性樹脂17を用いて電動機の回転子100,200を成形する際、樹脂マグネット部5の外周付近の両軸方向端面を金型で押えて熱可塑性樹脂17を充填することにより、樹脂マグネット部5外周へのバリ発生を防止し、バリ取り作業を発生させないことで生産性、品質の向上が図れる。
また、ヨーク4の切欠き7の一部(ここでは5個、金型の下型の凸部が嵌め合わされない切欠き7)と、ヨーク4のゲートとなる凹部6(10個、例えば、図9)と、台座部50(図25参照)とには、熱可塑性樹脂17が埋設されるように充填され、トルク伝達と回転方向の周り止めとなる。
ヨーク4の凹部6と、台座部50とを熱可塑性樹脂17で完全に埋めることで、熱可塑性樹脂17が内径方向に成形収縮する際に、ヨーク4の凹部6と、台座部50との外周面に熱可塑性樹脂17が引っ掛かり、熱可塑性樹脂と回転子マグネットとの隙間の発生を防止し、結合力の低下を防ぐことができる。
つまり、ゲート処理跡6a(図15参照)の出っ張りをヨーク4の軸方向端面から突出しないようにするための凹部6、及び位置検出用マグネット11を位置決めするための台座部50を利用することで、結合力の低下を防ぐ構造を付加する必要がないので、低コスト化と低騒音化が図れる。
次に、回転子マグネット3を構成するヨーク4について、図9〜図16を参照しながら詳細に説明する。
回転子マグネット3の内側に設けられるヨーク4は、軟磁性体又はフェライトを含有する熱可塑性樹脂を射出成形して得られる。
ヨーク4を成形する際に、金型のヨーク4の外周を形成する部分の外側に、強力な磁石を配置して配向磁場を設けることで、ヨーク4に含有される軟磁性体、又はフェライトは極方向に対し異方性に配向される。
図10に示すように、ヨーク4が金型のヨーク4の外周を形成する部分の外側の配向磁場により、極方向に対し異方性に配向される。
尚、図10では、見やすくするために台座34(又は、凹部6及び切欠き7)は省いている。
図9に示すように、ヨーク4は概略円筒状に形成される。ヨーク4の外周は、図11に示すように、凹部47と凸部48とが交互に配置される。凹部47、凸部48の数は、ここではそれぞれ10個である。
ヨーク4の外周の凹部47は、樹脂マグネット部5の磁極に対応(対向)している。
また、ヨーク4の外周の凸部48は、樹脂マグネット部5の極間に対応(対向)している。
ヨーク4の一方の軸方向端面には、軸方向深さd2(図16参照)の凹部6(例えば、円形)が、周方向に略等間隔に複数個(磁極数)形成されている。凹部6は、ヨーク4の外周の凸部48(樹脂マグネット部5の極間)に対応(対向)している。
ここでは、電動機の回転子100が10極であるから、凹部6も10個形成されている。
軟磁性体、又はフェライトを含有する熱可塑性樹脂は、それぞれの凹部6からヨーク4に注入される。そのため、成形後のヨーク4には、熱可塑性樹脂を注入するゲート口のゲート処理跡6a(図15参照)が残る。
凹部6を設けるのは、ゲート処理跡6a(図15参照)の出っ張りがヨーク4の軸方向端面から突出しないようにすることが一つの理由である。従って、凹部6の軸方向深さd2(図16参照)は、ゲート処理跡6aの出っ張りがヨーク4の軸方向端面から突出しないような寸法とする。
磁極の数(ここでは、10極)だけ熱可塑性樹脂を注入するゲート口(ゲート処理跡6aとして残る)を設けることで、磁極に対し軟磁性体、又はフェライトを含有する熱可塑性樹脂の射出時の注入状態が均一化されるとともに、配向の状態も均一化が可能となり、ヨーク4の品質の向上が図れる。
さらに、図11に示すように、極間の肉厚となる部分にゲート口(ゲート処理跡6aとして残る)を設けることで、軟磁性体、又はフェライトを含有する熱可塑性樹脂の流れに最適の位置となり、品質の向上が図れる。
また、ゲート口(ゲート処理跡6aとして残る)を、ヨーク4の一方の軸方向端面より丸形状(円形状)で、かつ、軸方向に内側に所定の長さ(軸方向深さd2(図16参照))を切り欠いた凹部6の中心とすることで、ゲート処理跡6aに残るバリが端面より表出することを防止することができる。そのため、製造工程中の位置決めの支障となること、もしくは、ゴミの発生を抑制するため、製造上の品質の向上が図れる。
ヨーク4の中空部(図17参照)は、凹部6を備える側の軸方向端面より軸方向の略中心位置(ヨーク4の成形時の型合わせ面跡46(図17参照))まではテーパ部45(図17参照)になっている。テーパ部45は、凹部6を備える側の軸方向端面より内側に徐々に狭くなるテーパ形状である。
さらに、テーパ部45の型合わせ面跡46から、台座34側の軸方向端面までは、径が一定のストレート部44(図17参照)になっている。
ヨーク4の中空部のテーパ部45(図17参照)は、固定側の金型で形成する。また、ヨーク4の中空部のストレート部44(図17参照)は、可動側の金型で形成する。
ヨーク4の中空部のテーパ部45(図17参照)を固定側の金型で形成することにより、型開き時に固定側金型に製品(ヨーク4)が張り付く力を低減する。
また、ヨーク4の中空部のストレート部44(図17参照)は可動側の金型で形成することにより、型開き時の固定側金型に製品(ヨーク4)が張り付く抵抗となることで、固定側金型が製品(ヨーク4)からスムーズに離れ、製造上の品質向上が図れる。
図9(a)、図11に示すように、ヨーク4の凹部6を備える側の軸方向端面には、凹部6の間の磁極位置に所定の巾で中空部のテーパ部45に達するテーパ状の切欠き7が形成されている。テーパ状の切欠き7の数は、10個である。
それぞれのテーパ状の切欠き7は、中空部(図17参照)のストレート部44と、ヨーク4の外周に対して同軸が確保されるように形成される。
このテーパ状の切欠き7は、樹脂マグネットで樹脂マグネット部5をヨーク4と一体に成形する際、また、回転子マグネット3を熱可塑性樹脂17で軸1と一体に成形する際に、金型が切欠き7を同軸が保たれる形で保持することで、同軸度と位相を確保することが可能となり、製造上の品質の向上が図れる。
ヨーク4の凹部6を備える軸方向端面の反対側の軸方向端面に、位置検出用マグネット11(図36〜図38参照)をヨーク4の端面から所定の距離だけ離間させる台座34を備えている(図9(b)、図9(c)、図12参照)。
図12、図13に示すように、台座34の周方向の位置は、磁極に対応(対向)している。即ち、台座34は、10個周方向に略等間隔で形成されている。
それぞれの台座34は、二つの軸方向外側に突出する突出部34aと、二つの突出部34aの間に形成される開口部34bとで構成される。
台座34が備える二つの突出部34aの間に形成される開口部34bは、樹脂マグネット部5をヨーク4と一体に成形する際の、樹脂マグネットを供給する経路となる。開口部34bの巾は、樹脂マグネットを供給するランナー巾(後述するリブ状ランナー35、図22参照)と概略同一となっている。
次に、回転子マグネット3について、図18〜図26を参照しながら説明する。
本実施の形態の回転子マグネット3は、ヨーク4を縦型成形機に設置された金型の下型(図示せず)に収め、ヨーク4の外周に、例えば希土類であるサマ鉄(サマリウム鉄)を含有する熱可塑性樹脂の樹脂マグネットを射出成形して樹脂マグネット部5を一体化することで得られる。
樹脂マグネット部5を成形する際に、金型の樹脂マグネット部5の外周を形成する部分の外側に、強力な磁石を配置して配向磁場を設けることで、樹脂マグネット部5に含有される磁粉は極方向に対し異方性に配向される(図19参照)。
樹脂マグネット部5を成形する金型のヨーク4の中空部が挿入される芯部を下側金型(図示せず)に形成する。ヨーク4が凹部6を備える軸方向端面から、該芯部に挿入し、金型に組み込まれる。
ヨーク4が金型に組み込まれた状態で、樹脂マグネット部5を成形する下型の芯部の端面は、ヨーク4の台座34を備える端面位置となっている(図20参照)。
また、ヨーク4の凹部6側軸方向端面に備える切欠き7に嵌め合わされる凸部(図示せず)を、樹脂マグネット部5を成形する金型の芯部(下型)に設けることで、配向磁場を作る磁石の位置に対する円周方向の位置決めがなされる。
また、芯部の切欠き7に嵌め合わされる凸部を、樹脂マグネット部の外周との同軸を確保し、金型が締められた際にテーパ状の切欠き7に押し付けることで、樹脂マグネット部5の外周とヨーク4との同軸が確保される。
樹脂マグネット部5を成形する際の樹脂注入部は、樹脂マグネット部5を成形する金型の芯部(下型)の端面に形成されるドーナツ状ランナー36(図21、図22参照)に磁極の半分の数量(ここでは、10極の半分の5個)が周方向に略等ピッチに設けられる。
樹脂マグネット部5を成形する際の樹脂注入部は、ドーナツ状ランナー36に樹脂注入部跡36aとして残る(図21参照)。
樹脂注入部跡36aは、10個形成されるリブ状ランナー35のいずれかの二つの略中間に形成される。
図20に示すように、ドーナツ状ランナー36は、概略ヨーク4の台座34の高さ(軸方向)で樹脂マグネット部5又はヨーク4の端面から台座側に突出している。
また、ドーナツ状ランナー36の外周から、リブ状ランナー35が放射状に磁極の数と同数(ここでは、10個)で伸びている。リブ状ランナー35は、ドーナツ状ランナー36と略同じ高さ(軸方向)で形成されている。
既に述べたように、樹脂マグネット部5を成形する際の樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)は、2つのリブ状ランナー35の略中間位置に設けられる。
ドーナツ状ランナー36及びリブ状ランナー35は、上型で形成するため、芯部(下型)の端面から軸方向外側に小さくなるテーパ形状とすることで、型開き時の上型へのドーナツ状ランナー36及びリブ状ランナー35の張り付きを低減する。
ドーナツ状ランナー36の芯部(上型)の端面から軸方向外側に小さくなるテーパ形状については、図20を参照。
また、リブ状ランナー35の芯部(下型)の端面から軸方向外側に小さくなるテーパ形状については、図23を参照。
さらに、図20に示すように、ドーナツ状ランナー36について、芯部(下型)の端面より所定の深さ(軸方向)をストレートに凹状に掘り込むことで、離形の際のドーナツ状ランナー36の上型への張り付きの抵抗となることで、ドーナツ状ランナー36から上型がスムーズに離れる。
ドーナツ状ランナー36から放射状に伸びるリブ状ランナー35は、樹脂マグネット部5を成形する金型の芯部(下型)の軸方向端面、次に、ヨーク4の台座34側の軸方向端面を渡り、台座34の内周側の開口部34bまで達する。さらに、台座34の外周側の開口部34bより外側に、樹脂マグネット部5の軸方向端面上で、ヨーク4の外周から所定の位置まで伸びる。
図24に示すように、樹脂マグネットはドーナツ状ランナー36の樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)に注入される。この樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)までは、樹脂マグネットは、図示しないランナーを軸方向に流れてくる。そして、樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)で流れの方向を90°変える。即ち、軸直交方向に二手に分かれる。その後、二手に分かれたそれぞれの樹脂マグネットは、樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)に最も近いリブ状ランナー35に入り、さらに流れの方向を90°変えて樹脂マグネット部5に流れ込む。
このとき、樹脂マグネットの流れ方向を変える部分(樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)、軸方向ランナーを軸方向に流れてきて軸直交方向に二手に分かれる部分)を、金型内とすることができる。樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)を有するドーナツ状ランナー36が、ヨーク4の内周よりも内側にあるからである。
例えば、ヨーク4の軸方向端面で流れ方向を変えた場合は、軸方向ランナーを軸方向に流れてきた樹脂マグネットの射出圧力でヨーク4の端面に穴が開く等のダメージを与える恐れがある。
金型内に、樹脂マグネットの流れ方向を変える部分(樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)、軸方向ランナーを軸方向に流れてきて軸直交方向に二手に分かれる部分)があるため、軸方向ランナーを軸方向に流れてきた樹脂マグネットが、ヨーク4等にダメージを与える恐れが少ない。それにより製造上の品質の向上が図れる。
また、ヨーク4の中空部を台座34側端面より型合わせ面跡46までを横断面の円の径が略一定のストレート部44(図17参照)にすること、及び、ヨーク4の中空部を台座34側端面よりストレート部44と嵌め合わされる樹脂マグネット部5を成形する金型の芯部(下型)の隙間を極力小さくすることで、ヨーク4の中空部の台座34側端面より型合わせ面跡46までのストレート部44と、樹脂マグネット部5を成形する金型の芯部(下型)との隙間への樹脂マグネット漏れを抑えることが可能となり、製造上の品質の向上が図れる。
希土類の樹脂マグネット部5をヨーク4の外周に形成する場合は、材料(希土類の樹脂マグネット)が高価なため、樹脂マグネット部5の肉厚を極力薄くする。その場合、樹脂マグネット部5に直接樹脂マグネットを注入する樹脂注入部は、樹脂マグネット部5の肉厚に合せて小さくする必要がある。樹脂注入部が小さくなると、成形圧が増大する。
それに対して、本実施の形態のように、ドーナツ状ランナー36と、ドーナツ状ランナー36の外周から、放射状に磁極の数と同数で伸びているリブ状ランナー35とでランナーを形成し、ドーナツ状ランナー36に樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)を設けるようにすれば、樹脂注入部のゲート径を任意に設定することができ、製造上の品質の向上が図れる。
また、樹脂マグネットの樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)の数を、磁極の数(10極)の半分(5個)に減らすことで、製品(樹脂マグネット部5)に対するランナー量の比率を、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数だけ設ける場合に比べて低減することができる。
ランナー量は、ドーナツ状ランナー36と、リブ状ランナー35と、図示しないその他ランナーとの合計の量である。
「ランナー」は、樹脂マグネット部5と金型の樹脂マグネット注入部との間の製品(樹脂マグネット部5)にならない部分と定義したが、具体的にはドーナツ状ランナー36、リブ状ランナー35、及び、図示しないその他のランナーを指す。
但し、図18に示す回転子マグネット3の場合は、図25に示すように、リブ状ランナー35の一部(ヨーク4の台座34の内周面から先端(径方向)までの部分)が、製品となる。
即ち、図示しないその他のランナー、ドーナツ状ランナー36、及びリブ状ランナー35(一部を除く、ヨーク4の台座34の内周面から先端(径方向)までの部分を除く)は、回転子マグネット3の成形完了後、切除される(図25参照)。
本実施の形態のランナー(その他のランナー、ドーナツ状ランナー36、及びリブ状ランナー35(一部を除く))は、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数(ここでは、10個)だけ設ける場合に比べて、概略30%程度ランナー量を低減することができる。
詳細は省くが、全ランナー量に対する軸方向ランナー量の比率が、他のドーナツ状ランナー36、及びリブ状ランナー35に比べると大きい。従って、樹脂注入部を減らすと、全ランナー量も減る。
本実施の形態は、樹脂マグネットの樹脂注入部が5個であり、樹脂注入部を磁極の数(ここでは、10個)だけ設ける場合に比べて全ランナー量が減ることになる。
また、製品にならないランナーを再利用する場合、本実施の形態は、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数(ここでは、10個)だけ設ける場合に比べて、ランナー量が減ることにより再利用比率が減少し、樹脂マグネットの物性(主に、機械的強度)の低下を抑制できることで、製品の品質の向上が図れる。
さらに、樹脂注入部は磁極の数の半分であるが、リブ状ランナー35は磁極の数と同一であることで、それぞれの磁極に対して樹脂マグネットの注入具合が同様となり、配向の状態も均一化が可能となり、製造上の品質の向上が図れる。
図25に示すように、図示しないその他のランナー、ドーナツ状ランナー36、及びリブ状ランナー35(一部を除く)は、回転子マグネット3の成形完了後、切除される。リブ状ランナー35は、ドーナツ状ランナー36から放射状に伸びるヨーク4の台座34の内周面までの部分が切除される。
従って、図25に示すように、台座部50は、ヨーク4の台座34の突出部34aと、突出部34aの間から径方向外側に伸びるリブ状ランナー35の非切除部分とで構成される。尚、リブ状ランナー35の非切除部分は、径方向先端に軸方向外側に突出する位置検出用マグネット保持突起35bを備える。
既に述べたように、位置検出用マグネット11は、回転子マグネット3の台座部50の位置検出用マグネット保持突起35b(図25参照)の内側で台座34及びリブ状ランナー35(製品として残る部分)の上面に配置される(略水平の状態)。そして、位置検出用マグネット11が、樹脂成形の前で回転子マグネット3の台座部50(図25参照)に載置された状態で、例えば、180°所定の回転速度で回転すると位置検出用マグネット11に遠心力が作用する。しかし、位置検出用マグネット11は、周囲に位置検出用マグネット保持突起35bが存在するため、位置検出用マグネット保持突起35bが径方向の位置ずれを防止し、回転子マグネット3から脱落する恐れが少ない。それにより、生産性が向上する。
また、樹脂マグネット部5に形成されたリブ状ランナー35のヨーク4より外側の部分を、回転子マグネット3を熱可塑性樹脂17で軸1と一体に成形される際の周方向の位置決めとなる位置決め突起として利用される。
例えば、樹脂マグネットのみで、軸1と一体に成形される際の周方向の位置決めとなる位置決め突起(リブ状ランナー35のヨーク4より外側の部分)と、位置検出用マグネット保持突起35bと、台座34とを形成した場合、ドーナツ状ランナー36と、リブ状ランナー35とを切除した際には、ヨーク4の外周に形成した樹脂マグネット部5とは、樹脂マグネット部5への樹脂注入部のみで連結されることとなるため、強度が弱いという弱点がある。
しかし、ヨーク4に台座34を形成し、さらに、台座34の中央部を開口して開口部34bを設け、リブ状ランナー35を台座34と一体化させて強度が向上することで、製造上の品質の向上が図れる。
以上のように、ドーナツ状ランナー36からリブ状ランナー35を通り、樹脂マグネットがヨーク4の外周に充填されて、ヨーク4と樹脂マグネット部5が一体化された後、台座34の内周側側面より内側の、リブ状ランナー35と、ドーナツ状ランナー36を切除することにより、本実施の形態の回転子マグネット3が得られる。
樹脂マグネットのみで、軸1と一体に成形される際の周方向の位置決めとなる位置決め突起(リブ状ランナー35のヨーク4より外側の部分)と、位置検出用マグネット保持突起35bと、台座34とを形成した場合、ドーナツ状ランナー36と、リブ状ランナー35とを切除した際には、ヨーク4の外周に形成した樹脂マグネット部5とは、樹脂マグネット部5への樹脂注入部のみで連結されることとなるため、強度が弱いという弱点があるが、位置検出用マグネット11(図36〜図38参照)を使用しない場合は、位置検出用マグネット11用の台座部50が不要となるので、ドーナツ状ランナー36及びリブ状ランナー35を完全に切除してよい。
次に、この位置検出用マグネット11を使用しない場合の、回転子マグネット103について、図27〜図35を参照しながら説明する。
回転子マグネット103は、ヨーク104と、ヨーク104の外周に形成される樹脂マグネット部5とを備える。
回転子マグネット103も、回転子マグネット3と同様、10極である。
先ず、ヨーク104について説明する。図27(a)、図27(b)に示すように、ヨーク104の凹部6側の構成は、図9のヨーク4と同じである。
位置検出用マグネット11(図36〜図38参照)を使用しないので、ヨーク104の凹部6の反対側の軸方向端面に、図9のヨーク4ではあった台座34がないことを特徴とする(図27〜図29)。
回転子マグネット103の内側に設けられるヨーク104は、軟磁性体、又はフェライトを含有する熱可塑性樹脂を射出成形して得られる。
ヨーク4と同様に、ヨーク104を成形する際に、金型のヨーク104の外周を形成する部分の外側に、強力な磁石を配置して配向磁場を設けることで、ヨーク104に含有される軟磁性体、又はフェライトは極方向に対し異方性に配向される。
図27(a)、図27(c)に示すように、ヨーク104は横断面が概略円筒状に形成される。ヨーク104の外周は、図28に示すように、凹部47と凸部48とが交互に配置される。凹部47、凸部48の数は、ここではそれぞれ10個である。
ヨーク104の外周の凹部47は、樹脂マグネット部5の磁極に対応(対向)している。
また、ヨーク104の外周の凸部48は、樹脂マグネット部5の極間に対応(対向)している。
次に、回転子マグネット103について説明する。図30(a)、図30(b)に示すように、回転子マグネット103の凹部6側の構成は、図18に示す回転子マグネット3と同じである。
位置検出用マグネット11(図36〜図38参照)を使用しないので、回転子マグネット103の凹部6の反対側の軸方向端面に台座を形成する必要がない。そのため、ランナーを切除する前の回転子マグネット103は、図30(c)、図31に示すように、凹部6の反対側の軸方向端面には、ドーナツ状ランナー36及びリブ状ランナー135が形成されているだけである。
回転子マグネット103も、回転子マグネット3と同様に、樹脂マグネット部5を成形する金型のヨーク104の中空部が挿入される芯部を下型(図示せず)に形成する。ヨーク104が凹部6を備える軸方向端面から、該芯部に挿入し、金型に組み込まれる。
ヨーク104が金型に組み込まれた状態で、樹脂マグネット部5を成形する下型の芯部の端面は、ヨーク104の凹部6と反対側の軸方向端面位置となっている(図31参照)。
また、ヨーク104の凹部6側軸方向端面に備える切欠き7に嵌め合わされる凸部(図示せず)を、樹脂マグネット部5を成形する金型の芯部(下型)に設けることで、配向磁場を作る磁石の位置に対する円周方向の位置決めがなされる。
また、芯部の切欠き7に嵌め合わされる凸部を、樹脂マグネット部の外周との同軸を確保し、金型が締められた際にテーパ状の切欠き7に押し付けることで、樹脂マグネット部5の外周とヨーク104との同軸が確保される。
樹脂マグネット部5を成形する際の樹脂注入部は、樹脂マグネット部5を成形する金型の芯部(下型)の端面に形成されるドーナツ状ランナー36(図32参照)に磁極の半分の数量(ここでは、10極の半分の5個)が周方向に略等ピッチに設けられる。
樹脂マグネット部5を成形する際の樹脂注入部は、ドーナツ状ランナー36に樹脂注入部跡36aとして残る(図32参照)。
樹脂注入部跡36aは、10個形成されるリブ状ランナー135のいずれかの二つの略中間に形成される。
図31に示すように、ドーナツ状ランナー36は、概略リブ状ランナー135の高さ(軸方向)で樹脂マグネット部5又はヨーク104の端面から外側(軸方向)に突出している。
また、ドーナツ状ランナー36の外周から、リブ状ランナー135が放射状に磁極の数と同数(ここでは、10個)で伸びている。リブ状ランナー135は、ドーナツ状ランナー36と略同じ高さ(軸方向)で形成されている。
既に述べたように、樹脂マグネット部5を成形する際の樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)は、リブ状ランナー135の略中間位置に設けられる。
ドーナツ状ランナー36及びリブ状ランナー135は、上型で形成するため、芯部(下型)の端面から軸方向外側に小さくなるテーパ形状とすることで、型開きの際の上型へのドーナツ状ランナー36及びリブ状ランナー135の張り付きを低減する。
ドーナツ状ランナー36の芯部(下型)の端面から軸方向外側に小さくなるテーパ形状については、図31を参照。
また、リブ状ランナー135の芯部(下型)の端面から軸方向外側に小さくなるテーパ形状については、図34を参照。
さらに、図31に示すように、ドーナツ状ランナー36について、芯部(下型)の端面より所定の深さ(軸方向)をストレートに凹状に掘り込むことで、型開きの際のドーナツ状ランナー36の上型への張り付きの抵抗となることで、ドーナツ状ランナー36から上型がスムーズに離れる。
ドーナツ状ランナー36から放射状に伸びるリブ状ランナー135は、樹脂マグネット部5を成形する金型の芯部(下型)の軸方向端面、次に、ヨーク104の端面を渡り、ヨーク104の外周から所定の位置まで伸びている。
図33に示すように、樹脂マグネットはドーナツ状ランナー36の樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)に注入される。この樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)までは、樹脂マグネットは、図示しないランナーを軸方向に流れてくる。そして、樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)で流れの方向を90°変える。即ち、軸直交方向に二手に分かれる。その後、二手に分かれたそれぞれの樹脂マグネットは、樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)に最も近いリブ状ランナー135に入り、さらに樹脂マグネット部5に流れ込む。
このとき、樹脂マグネットの流れ方向を変える部分(樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)、軸方向ランナーを軸方向に流れてきて軸直交方向に二手に分かれる部分)を、金型内とすることができる。樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)を有するドーナツ状ランナー36が、ヨーク104の内周よりも内側にあるからである。
例えば、ヨーク104の軸方向端面で流れ方向を変えた場合は、軸方向ランナーを軸方向に流れてきた樹脂マグネットの射出圧力でヨーク104の端面に穴が開く等のダメージを与える恐れがある。
金型内に、樹脂マグネットの流れ方向を変える部分(樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)、軸方向ランナーを軸方向に流れてきて軸直交方向に二手に分かれる部分)があるため、軸方向ランナーを軸方向に流れてきた樹脂マグネットが、ヨーク104等にダメージを与える恐れが少ない。それにより製造上の品質の向上が図れる。
また、ヨーク104の中空部を凹部6(切欠き7)の反対側軸方向端面より型合わせ面跡46までを横断面の円の径が略一定のストレート部44(図35参照)にすること、及び、ヨーク104の中空部を凹部6(切欠き7)の反対側軸方向よりストレート部44と嵌め合わされる樹脂マグネット部5を成形する金型の芯部(下型)の隙間を極力小さくすることで、ヨーク104の中空部の凹部6(切欠き7)の反対側軸方向端面より型合わせ面跡46までのストレート部44と、樹脂マグネット部5を成形する金型の芯部(下型)との隙間への樹脂マグネット漏れを抑えることが可能となり、製造上の品質の向上が図れる。
希土類の樹脂マグネット部5をヨーク104の外周に形成する場合は、材料(希土類の樹脂マグネット)が高価なため、樹脂マグネット部5の肉厚を極力薄くする。その場合、樹脂マグネット部5に直接樹脂マグネットを注入する樹脂注入部は、樹脂マグネット部5の肉厚に合せて小さくする必要がある。樹脂注入部が小さくなると、成形圧が増大する。
それに対して、本実施の形態のように、ドーナツ状ランナー36と、ドーナツ状ランナー36の外周から、放射状に磁極の数と同数で伸びているリブ状ランナー135とでランナーを形成し、ドーナツ状ランナー36に樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)を設けるようにすれば、樹脂注入部のゲート径を任意に設定することができ、製造上の品質の向上が図れる。
また、樹脂マグネットの樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)の数を、磁極の数(10極)の半分(5個)に減らすことで、製品(樹脂マグネット部5)に対するランナー量の比率を、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数だけ設ける場合に比べて低減することができる。
ランナー量は、ドーナツ状ランナー36と、リブ状ランナー135と、図示しないその他のランナーとの合計の量である。
「ランナー」は、樹脂マグネット部5と金型の樹脂マグネット注入部との間の製品(樹脂マグネット部5)にならない部分と定義したが、具体的にはドーナツ状ランナー36、リブ状ランナー135、及び、図示しないその他のランナーを指す。
即ち、図示しないその他のランナー、ドーナツ状ランナー36、及び、リブ状ランナー135は、回転子マグネット103の成形完了後、切除される(図35参照)。
本実施の形態のランナー(その他のランナー、ドーナツ状ランナー36、及びリブ状ランナー135)は、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数(ここでは、10個)だけ設ける場合に比べて、概略30%程度ランナー量を低減することができる。
既に述べたように、全ランナー量に対するその他のランナー量の比率が、他のドーナツ状ランナー36、及びリブ状ランナー135に比べると大きい。従って、樹脂注入部を減らすと、全ランナー量も減る。
回転子マグネット103は、樹脂マグネットの樹脂注入部の数が5個であり、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数(ここでは、10個)だけ設ける場合に比べて全ランナー量が減ることになる。
また、製品にならないランナーを再利用する場合、回転子マグネット103は、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数(ここでは、10個)だけ設ける場合に比べて、ランナー量が減ることにより再利用比率が減少し、樹脂マグネットの物性(主に、機械的強度)の低下を抑制できることで、製品の品質の向上が図れる。
さらに、樹脂注入部は磁極の数の半分であるが、リブ状ランナー135は磁極の数と同一であることで、それぞれの磁極に対して樹脂マグネットの注入具合が同様となり、配向の状態も均一化が可能となり、製品の品質の向上が図れる。
図35に示すように、図示しないその他のランナー、ドーナツ状ランナー36、及びリブ状ランナー135は、回転子マグネット103の成形完了後、全て切除される。
樹脂マグネット部5の凹部6(切欠き7)の反対側軸方向端面には、リブ状ランナー135を切除した切除跡51が、リブ状ランナー135の数(ここでは、10個)だけ残る。
以上、一例として、ヨーク4の外周を凹凸形状とし、外周に樹脂マグネット部5を一体に成形した回転子マグネット3を用いたが、外周を円状とし一部に凹形状または凸形状を設けたヨーク4の外周に樹脂マグネット部5を成形して回転子マグネット3としてもよい。
また、樹脂マグネットのみで回転子マグネット3を構成としてもよい。
また、焼結マグネットや成形した樹脂マグネットをヨーク4に接着し回転子マグネット3としてもよい。
ヨーク4の外周形状や外周に配置されるマグネットの材質、固定方法によらず、軟磁性体を含有した熱可塑性樹脂で成形したヨーク4の一方の端面に設けたゲート処理跡6aを端面から出っ張らせないための凹部6を埋設するように汎用の熱可塑性樹脂で成形し、軸1と、回転子マグネット3と、位置検出用マグネット11とを一体にすることで同様の効果が得られることは言うまでもない。
次に、図36〜図38により、位置検出用マグネット11について説明する。図36〜図38に示すように、リング状の位置検出用マグネット11は、内径側の軸方向両端部に段差12を備え、厚み方向に対称となっている(図38参照)。
位置検出用マグネット11は、電動機の回転子100の軸方向一端部に設けられるが(図1参照)、位置検出用マグネット11の内径側の軸方向両端部の段差12にPBT等の熱可塑性樹脂17が充填されて、位置検出用マグネット11の軸方向の抜け止めとなる。
位置検出用マグネット11は、厚み方向には対称形状となっているため、方向を考えずに金型にセットでき、作業時間が短縮され、生産性向上、低コスト化が図れる。
尚、図36〜図38では、両端部に段差12を備えるものを示したが、いずれか一方の端部に段差12があり、それが電動機の回転子100の軸方向端部側に位置すればよい。
また、位置検出用マグネット11は、熱可塑性樹脂17で埋設されると回り止めとなるリブ13を備える。
本実施の形態1の電動機の回転子100は、例えば、電動機の固定子と組み合わされてブラシレスDCモータ(同期電動機)を構成する。
以下、電動機の固定子の一例を、図39〜図44を参照しながら説明する。12スロット/10極の電動機の固定子300について説明する。
この電動機の固定子300は、以下に示す点に特徴がある。
(1)固定子鉄心301のスロット数が12(固定子鉄心301は、12個のティース301aを有する);
(2)コイル302は、三相のシングルY結線で、極数は10極である。コイル302は、12個のティース301aの夫々に形成される集中巻方式である;
(3)固定子鉄心301は、厚さが0.1〜0.7mm程度の電磁鋼板を帯状に打ち抜き、これらをかしめ、溶接、接着等で積層して形成される。帯状の固定子鉄心301は、12個のティース301aを有する;
(4)帯状の固定子鉄心301に、コイル302と固定子鉄心301との間の絶縁となる絶縁部303が施される。絶縁部303は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂を用いて、固定子鉄心301と一体に成形される。但し、絶縁部303を成形後、ティース301aに組付けてもよい。その場合は、絶縁部303は結線側と反結線側とに分割され、それぞれをティース301aの軸方向両端部から挿入して絶縁部303を構成する。絶縁部303は、ティース301a毎に設けられる。従って、ここでは、12個の絶縁部303を備えることになる;
(5)帯状の固定子鉄心301に絶縁部303を施したら、次に絶縁部303の外壁の一方の軸方向端部(結線側)の所定の箇所に、三個の電源端子304と、一個の中性点端子305を挿入する;
(6)電動機の固定子300は、電源端子304と中性点端子305に、平角線を用いることを特徴とする;
(7)帯状の固定子鉄心301を完成後の電動機の固定子300と逆方向に曲げて、ティース301a同士の間の開口部が広くなるようにする。それにより、ティース301aにマグネットワイヤーを巻回しやすくなる;
(8)一相目と二相目を連続して巻線する(渡り線を切断しない)。電動機の固定子300は、この点にも特徴がある;
(9)三相目を巻線する。三相目は、一相目と二相目とは異なる別のマグネットワイヤーにより巻線が施される;
(10)巻線後の固定子鉄心301をティース301aが内側になるように正曲げする(所定の方向に曲げられて略ドーナツ状となる);
(11)固定子鉄心301の固定子鉄心突合せ部363を溶接して、溶接部364で固定する;
(12)電源端子304、中性点端子305のヒュージング;
(13)さらに電動機の固定子300に外部と接続される結線部品341(図46参照)を組付け、機械的に、且つ電気的に接合する。
図40に示す電動機の固定子300は、固定子鉄心301を逆曲げして巻線を完了した状態を示している。そして、電動機の固定子300を結線側の斜め上方から見ている図である。但し、コイル302の巻き始め端末、巻き終わり端末、渡り線等は、図示していない。
固定子鉄心301を逆曲げしているので、ティース301aが外側を向いている。また、隣接するティース301aの間には広い空間があり、ティース301aにマグネットワイヤーを容易に巻くことができる。
固定子鉄心301に一体成形された絶縁部303の結線側(図40の軸方向上側)の所定の箇所に、三個の電源端子304が挿入されている。詳細は後述する。
また、固定子鉄心301に一体成形された絶縁部303の結線側(図40の軸方向上側)の所定の箇所に、一個の中性点端子305が挿入されている。
さらに、絶縁部303は結線側に、各相の渡り線を、固定子鉄心301の軸方向端面からの高さを所定の位置に保持する突起308を備える。
図41を参照しながら帯状の固定子鉄心301の構成を説明する。本実施の形態における電動機の固定子300は、12スロットであるから、ティース301aも12個である。
帯状の固定子鉄心301は、厚さが0.1〜0.7mm程度の電磁鋼板が帯状に打ち抜かれ、かしめ、溶接、接着等で積層される。
各ティース301aの形状は、平面視で略T字である。ティース301aは、コアバック301bから略垂直に延びている。
ティース301aの先端部301a−1(コアバック301bの反対側)は、正面視で略四角形である。ティース301aの先端部301a−1は、固定子鉄心301に絶縁部303を一体成形した後も露出している。回転子と電動機の固定子300との間は、径方向の寸法が1mm以下の空隙とする必要がある。そのため、ティース301aの先端部301a−1には絶縁部303を設けない。
隣接するティース301aは、コアバック301bが薄肉連結部301cで連結されている。そのため、帯状の固定子鉄心301は、逆曲げや正曲げを自在に行うことができる。
帯状の固定子鉄心301における両端のティース301aのコアバック301bの外側の端面であるコア端面301dは、巻線後の固定子鉄心301をティース301aが内側になるように正曲げし、固定子鉄心突合せ部363を溶接して溶接部364で固定する際に互いに当接する。固定子鉄心突合せ部363、溶接部364は、図39参照。
図42に示すように、帯状の固定子鉄心301に一体成形により絶縁部303を形成する。但し、一体成形でなくてもよい。別部品の絶縁部303を各ティース301aに軸方向の両側から挿入する形態も可能である。
ティース301a(三箇所)の絶縁部303の外壁には、中央に基板(図示せず)を組付けるピン370を備える。
絶縁部303が一体成形により形成された帯状の固定子鉄心301に、三個の電源端子304と、一個の中性点端子305とを絶縁部303の結線側(図41では上側)に取り付ける。
図43に示すように、12スロット/10極の同期電動機(電動機400)は、ティース301aの数と回転子の磁極の数の比が6:5となる同期電動機(電動機400)である。
U相は、コイルU1+、コイルU2−、コイルU3−、コイルU4+で構成される。コイルU1+の巻き始めは、電源端子304の一つであるU端子に接続される。コイルU4+の巻き終わりは、中性点端子305(中性点)に接続される。
コイルU2−、コイルU3−は、コイルU1+、コイルU4+とティース301aへの巻線方向が異なることを示す。詳細は後述する。以下、V相、W相についても同様である。
V相は、コイルV1−、コイルV2+、コイルV3+、コイルV4−で構成される。コイルV1−の巻き始めは、電源端子304の一つであるV端子に接続される。コイルV4−の巻き終わりは、中性点端子305(中性点)に接続される。V端子は、U端子が設けられるティース301aから反時計方向にティース301aを一つ飛ばしたティース301aの絶縁部303の外壁に設けられる。
W相は、コイルW1+、コイルW2−、コイルW3−、コイルW4+で構成される。コイルW1+の巻き始めは、電源端子304の一つであるW端子に接続される。コイルW4+の巻き終わりは、中性点端子305(中性点)に接続される。W端子は、V端子が設けられるティース301aから反時計方向にティース301aを一つ飛ばしたティース301aの絶縁部303の外壁に設けられる。
図44の電動機の固定子300の固定子巻線の結線図に示すように、電動機の固定子300の固定子巻線は、シングルYに結線される。即ち、U相のコイルU1+、コイルU2−、コイルU3−、コイルU4+が直列に接続される。また、V相のコイルV1−、コイルV2+、コイルV3+、コイルV4−が直列に接続される。さらに、W相のコイルW1+、コイルW2−、コイルW3−、コイルW4+が直列に接続される。そして、コイルU4+、コイルV4−、コイルW4+の巻き終わりが中性点Nに接続される。
図45の電動機の固定子300の固定子巻線の結線方法を示す展開図により、さらに固定子巻線の結線方法を説明する。
ここでは、一相目をU相、二相目をV相、三相目をW相と呼ぶことにする。一相目のU相は、左から5番目のティース301aに最初のコイルU1+が形成される。コイルU2−は、隣の左から6番目のティース301aに形成される。コイルU3−は、左から11番目のティース301aに形成される。コイルU4+は、左から12番目のティース301a(右側から1番目のティース301a)に形成される。コイルU1+、コイルU4+はともにティース301aに時計方向に巻かれる。コイルU2−、コイルU3−はともにティース301aに反時計方向に巻かれる。
二相目のV相は、左から3番目のティース301aに最初のコイルV1−が形成される。コイルV2+は、隣の左から4番目のティース301aに形成される。コイルV3+は、左から9番目のティース301aに形成される。コイルV4−は、隣の左から10番目のティース1a(右側から2番目のティース301a)に形成される。コイルV1−、コイルV4−はともにティース301aに反時計方向に巻かれる。コイルV2+、コイルV3+はともにティース1aに時計方向に巻かれる。
三相目のW相は、左から1番目のティース301aに最初のコイルW1+が形成される。コイルW2−は、隣の左から2番目のティース301aに形成される。コイルW3−は、左から7番目のティース301aに形成される。コイルW4+は、隣の左から8番目のティース301aに形成される。コイルW1+、コイルW4+はともにティース301aに時計方向に巻かれる。コイルW2−、コイルW3−はともにティース301aに反時計方向に巻かれる。
既に述べたように、コイルU1+、コイルV1−、コイルW1+の巻き始めは、夫々電源端子304に接続される。また、コイルU4+、コイルV4−、コイルW4+の巻き終わりは、夫々中性点端子305に接続される。
電動機の固定子300は、電源端子304及び中性点端子305に平角線を用いる点に特徴がある。
図46に示すように、電動機400は、電動機の回転子100、ブラケット439、電動機の固定子300をモールド成形したモールド固定子350、結線部品341(基板)等を備える。
図46に示すように、電動機の固定子300に外部と接続される結線部品341を組付け、機械的に、かつ、電気的にも接合した後にモールドを施して、モールド固定子350となる。
その後、電動機の回転子100(軸受410が装着される)、ブラケット439等の部品を組付けて電動機400となる。
前述の品質の良い、かつ、コスト低減された電動機の回転子100、電動機の固定子300を使用することで、品質の良い、低コストの電動機400を得ることができる。
最後に、電動機400の製造工程について、図47を参照しながら説明する。電動機400は、同期電動機(例えば、ブラシレスDCモータ)である。
(1)ステップ1:ヨーク4を成形する。ヨーク4は、軟磁性体、又はフェライトを含有する熱可塑性樹脂を射出成形して得られる。ヨーク4を成形する際に、金型のヨーク4の外周を形成する部分の外側に、強力な磁石を配置して配向磁場を設けることで、ヨーク4に含有される軟磁性体、又はフェライトは極方向に対し異方性に配向される。
(2)ステップ2:ヨーク4の外周に樹脂マグネット部5を一体成形することにより、回転子マグネット3を製造する。回転子マグネット3は、ヨーク4を金型に収め、ヨーク4の外周に、例えば希土類であるサマ鉄(サマリウム鉄)を含有する熱可塑性樹脂の樹脂マグネットを射出成形して樹脂マグネット部5を一体化することで得られる。樹脂マグネット部5を成形する際に、金型の樹脂マグネット部5の外周を形成する部分の外側に、強力な磁石を配置して配向磁場を設けることで、樹脂マグネット部5に含有される磁粉は極方向に対し異方性に配向される。
(3)ステップ3:回転子マグネット3を脱磁する。ステップ2で、樹脂マグネット部5は極方向に対し異方性に配向されるので、磁力を有するため以降の作業性を良くするために脱磁する。
(4)ステップ4:回転子マグネット3のランナーを切除する。併せて、位置検出用マグネット11を成形する。さらに、軸1の加工を行う。回転子マグネット3の脱磁後、図示しない軸方向ランナー、ドーナツ状ランナー36、及びリブ状ランナー35(ヨーク4の台座34の内周面から先端(径方向)までの部分を除く)は、切除される。
(5)ステップ5:回転子マグネット3と、位置検出用マグネット11と、軸1とを熱可塑性樹脂17で一体に成形する。
(6)ステップ6:回転子マグネット3を着磁する。併せて、軸受410(二個)を製造する。
(7)ステップ7:軸1に軸受410を組付けて電動機の回転子100を製造する。併せて、電動機の固定子300、ブラケット439を製造する。
(8)ステップ8:モールド固定子350を製造する。
(9)ステップ9:電動機400の組立を行う。
実施の形態2.
図48は実施の形態2を示す図で、空気調和機500の構成を示す図である。図48に示すように、空気調和機500は、室内機542と、室内機542に接続される室外機543とを備える。室外機543は送風機544を備える。室内機542も送風機(図示せず)を備える。
室内機542及び室外機543に、実施の形態1の品質のよい電動機400を、空気調和機500の主要部品である送風機用電動機として用いることで、空気調和機500の品質の向上が図れる。