JP4825622B2 - 多層構造薄刃ブレード及びその製造方法 - Google Patents
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Description
このダイヤモンドまたはcBNブレードは、金属、樹脂、あるいは金属と樹脂の複合材料、ガラス等の結合材とダイヤモンドまたはcBN砥粒を混合して、成形・焼成し、あるいは、Ni及びNi合金メッキにより形成される結合材によりダイヤモンドまたはcBN砥粒を固定し、1層構造のブレードとしたものが主流である。そのブレードは、通常、厚さが100μm〜500μmに形成される。
しかし、一般的なレジン、メタルブレードなどは、薄刃化のためにラッピング工程を行わなければならず、ブレード厚が50μm以下のものの製作は困難である。また、メッキを施す電鋳ブレード(一例として特許文献1参照)では、薄刃化は可能であるが、剛性に乏しく、切れ曲がりが発生したり、切れ味が悪くなって研削抵抗が上昇し、ブレードが破損することがある。
本発明の他の技術的課題は、刃厚が極めて薄いにもかかわらず切れ曲がりが少なく、精度の良い加工が可能で、研削性に優れ、高剛性で、低コストの多層構造薄刃ブレード及びその製造方法を提供することにある。
更に、本発明に係る多層構造薄刃ブレードの他の好ましい実施形態においては、上記多層構造の焼結体における中心層の硬度が側面層の硬度よりも大きく形成され、また、上記側面層は、砥粒を含まない結合材だけのグリーンシートの焼結体、または、中心層の砥粒よりも細粒の砥粒を結合材中に分散させたグリーンシートの焼結体で構成される。
ことを特徴とするものである。
図1は、本発明に係る多層構造薄刃ブレードの一実施例を要部縦断面によって示すもので、この多層構造薄刃ブレード1は、結合材中に砥粒を分散させた第1のグリーンシートと、該砥粒よりも細粒の砥粒を結合材中に分散させた第2のグリーンシートとを用い、上記第1のグリーンシートにより形成される中心層11に、第2のグリーンシートからなる必要数の側面層12,13を積層して焼結することにより、多層構造のブレードとして構成されたものである。上記第2のグリーンシートは、砥粒を混入しない結合材だけで構成することもできる。
上記中心層11における結合材と、その両側の側面層12,13における結合材とは、それらの間で剥離が生じるのを避けるために同一のものであるのが望ましいが、異なる材料を用いることもできる。この場合、必要に応じて、多層構造のブレードに層間剥離が生じないように適宜接合材が選択使用される。
一方、上記多層構造の焼結体の周縁部3の中心層部分11cの突き出し長さdは、一般的には数mm程度であるが、切断するワークの厚さ等を考慮して、その厚さよりも若干(1〜2mm)長く設定される。
また、上記多層構造薄刃ブレードにおける周縁部3における突き出た中心層部分11cの厚さt2を5〜200μmとするのは、5μm未満では剛性不足により曲がり、折れが発生するためであり、200μmを超えると、本発明による薄刃化の意味が無くなるからである。
このようにして製造された多層構造薄刃ブレード1は、上記加工機の回転軸23に上記多層構造薄刃ブレード1を装着したままの状態でワークの加工に供することができる。
同図に示すように、被加工物5の先にドレッサー4を配置しておき、被加工物5を切断した後の上記多層構造薄刃ブレード1を更に同方向に進行させることにより、そこに配置したドレッサー4に必要な切込み深さで切込ませ、該ブレード1の切断に寄与する周縁部3の切れ味を持続させるためのドレッシングを行うことができる。この場合、必要があれば、ブレードの回転数や送り速度をドレッシングに適した条件に変更すればよい。
平均粒径1μmのWC粉末90wt%とCo粉末10wt%とをボールミルで混合した後、それに対して、粒径が5〜10μmのダイヤモンド10vol%とPVAバインダー10vol%とを添加し、それらを乳鉢で混合した。混合粉をφ100×35Hの型に入れ、1ton/cm2での加圧により、0.2mmの厚さの中心層成型体(第1のグリーンシート)を作製した。
次に、上記と同様であるが、10vol%のダイヤモンドに代えて、カーボン粉末30vol%を添加した混合粉を用い、上記と同様の工程を経て、0.3mmの厚さの2枚の側面層成型体(第2のグリーンシート)を作製した。
そして、前者の中心層成型体を中心部に配し、後者の側面層成型体をその両側にそれぞれ積層して多層構造のブレード成型体を作製した。
これらの工程により、ブレード総厚みが0.3mmで、中心層の厚みが0.1mmの多層構造焼結ブレードを得た。さらに、この焼結体の外径及び内径をφ90×40Hに加工し、ステンレススペーサを用いて該スペーサからの突き出し量が3mmになるようにしてフランジに組み込み、スライシングマシンに装着した。
切断条件としては、スライシングマシンを使用し、回転数10,000rpm、送り速度100mm/min、切り込み1.5mmで切断加工を行った。
切断結果の評価は、50mmの長さの上記被加工物を1.1mmのピッチで10ラインの被切断片を得る切断加工を行い、被切断物についての加工入口側、加工中央側、加工出口側の厚みを測定し、ブレードの直進性の評価を行った。その結果を表1に示す。
実施例1と同じサイズの砥粒を用い、電鋳法により0.1mm刃厚のブレードを作製した。外径、内径を実施例1と同様にφ90×40Hに加工して、比較用のブレードとし、実施例1と同様の条件にて切断試験を行った。この場合に図5のドレッサーを用いていないのは勿論である。結果を表2に示す。
平均粒径1μmのWC粉末90wt%とCo粉末10wt%とをボールミルで混合した後、粒径が5〜10μmのダイヤモンド10vol%とPVAバインダー10vol%とを添加し、それらを乳鉢で混合した。混合粉をφ100×35Hの型に入れ、1ton/cm2の加圧により、0.1mm厚さの成型体を3枚作製した。この3枚の成型体を積層し、φ100×35Hのカーボン型に挿入して、0.5ton/cm2で加圧しながら、1200℃で10分間の加熱・加圧焼結を行った。この焼結によって、ブレード総厚みが0.15mmの単層構造焼結ブレードを得た。
表1に示す実施例1の結果と比較すると、実施例1のブレードは、この比較例2の従来法であるラッピング工法で作製されたブレードに比べ、低コストで簡単に製造できるにもかかわらず、切断加工における直進性の点で遜色が無いことがわかる。
実施例1と同じ素材を用い、かつ、同じ方法で、1枚の中心層成型体(第1のグリーンシート)を作製した。但しその厚さを0.1mmとした。
また、実施例1と同じ素材を用い、かつ、同じ方法で、厚さ0.3mmの2枚の側面層成型体(第2のグリーンシート)を作製した。
そして、前者の中心層成型体を中心部に配し、後者の側面層成型体をその両側にそれぞれ積層して、多層構造のブレード成型体を作製した。
更に、これらの工程を繰り返し、多層構造のブレード成型体を10枚作製した。
実施例2の中心層積層体と同じ素材を用い、かつ、同じ方法で、0.1mm厚さの成型体を3枚作製した。そして、この成型体を3枚積層して、積層成型体を得た。
更に、この工程を繰り返して、10枚の積層成型体を作製し、そのそれぞれをφ100×35Hのカーボン型に挿入し、0.5ton/cm2で加圧しながら、1200℃で10分間の加熱・加圧焼結を行った。
この焼結により、ブレード総厚みが0.15mmの10枚の単層構造焼結ブレードを得た。この10枚のブレードの外径及び内径をφ90×40Hに加工し、さらに、0.05mmの厚さまでラッピング加工を施した。このラップ時に、ブレードの割れ、欠け、キャリアの破損などが生じ、10枚の全てが不良品であった。
2 多層構造の焼結体(側面層部分の除去前)
4 ドレッサー
11 中心層
11a 砥粒
11b 結合材
11c 中心層部分
12,13 側面層
Claims (9)
- 円盤状をした複数のグリーンシートを中心層及び側面層をなすように積層して焼結した多層構造薄刃ブレードにおいて、
上記中心層及び側面層のうち少なくとも中心層が、結合材中に砥粒を分散させた上記グリーンシートの焼結体で構成され、
薄刃ブレードの周縁部に、ワークの切断に寄与する周縁切断刃部が、中心層部分だけを残して側面層を除去することにより形成され、該中心層部分の表面は砥粒が露出した状態になっており、且つ該中心層部分の突き出し長さは切断するワークの厚さより長く設定されている、
ことを特徴とする多層構造薄刃ブレード。 - 上記砥粒がダイヤモンド及びcBNのうちの1種あるいは2種の砥粒であり、
上記結合材が、周期律のIVa、Va、VIa族遷移金属の炭化物、窒化物、ホウ化物及びこれらの複合化合物の1種も若くは2種以上の混合物よりなる硬質層、または、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Crの1種もしくは2種以上の金属結合層より成る硬質合金である、
ことを特徴とする請求項1に記載の多層構造薄刃ブレード。 - 上記多層構造の焼結体の中心層の厚さが5〜200μmである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の多層構造薄刃ブレード。 - 上記多層構造の焼結体の中心層及び側面層を含む全体の厚さが50μm〜1.0mmである、
ことを特徴とする請求項3に記載の多層構造薄刃ブレード。 - 上記多層構造の焼結体における中心層の硬度が側面層の硬度よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層構造薄刃ブレード。 - 上記多層構造の焼結体の側面層が、砥粒を含まない結合材だけのグリーンシートの焼結体、または、中心層の砥粒よりも細粒の砥粒を結合材中に分散させたグリーンシートの焼結体で構成されている、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多層構造薄刃ブレード。 - 砥粒と結合材とを含む第1のグリーンシートと、該砥粒よりも細粒の砥粒を含みまたは含まない結合材からなる第2のグリーンシートとを作製し、
上記第1のグリーンシートを中心層にし、上記第2のグリーンシートを側面層にして積層することにより、多層構造の成形体を作製し、
上記成形体を加熱・加圧焼結して多層構造の焼結体を作製し、
上記焼結体の周縁部に、中心層部分だけを残して側面層を機械的方法で除去することによりワークの切断に寄与する周縁切断刃部を形成し、該周縁切断刃部を形成する中心層部分は、表面を砥粒が露出した状態にすると共に、突き出し長さを切断するワークの厚さよりも長くする、
ことを特徴とする多層構造薄刃ブレードの製造方法。 - 上記側面層を除去する機械的方法がドレッシングである、
ことを特徴とする請求項7に記載の多層構造薄刃ブレードの製造方法。 - 上記ドレッシングを、上記加熱・加圧焼結した後の多層構造の焼結体を回転軸に装着して回転させ、該焼結体の切断に寄与する周縁部をドレッサーに切込ませることによって行う、
ことを特徴とする請求項8に記載の多層構造薄刃ブレードの製造方法。
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