JP4810750B2 - 重合性液晶化合物、該化合物を含有する重合性液晶組成物及びその重合体 - Google Patents
重合性液晶化合物、該化合物を含有する重合性液晶組成物及びその重合体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合性液晶化合物、該化合物を含有する重合性液晶組成物及び、該重合性化合物又は該重合性液晶組成物の重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
重合性官能基を有する液晶性化合物(以下、重合性液晶化合物)又はこのような化合物を少なくとも一つ含有する重合性液晶組成物を、液晶状態で配向させた後、その状態で紫外線等の活性エネルギー線を照射すると、液晶分子の配向状態構造を固定化した重合体を作製することができる。このようにして得られた重合体は、屈折率、誘電率、磁化率、弾性率、熱膨張率等の物理的性質の異方性を有していることから、例えば、位相差板、偏光板、偏光プリズム、導波路、圧電素子、非線形光学素子、各種光フィルター、コレステリック液晶相等の選択反射を利用した顔料、光ファイバー等の被覆剤として応用可能である。
特開平8-3111号公報において上記応用に向けた重合性液晶組成物が開示されている。該公報に開示された重合性液晶組成物は室温で液晶性を示すという特徴を有するものの、重合後の透明性や機械的強度が不十分であるという欠点があった。ドイツ国公開特許DE4408171及びDE4226994には重合性官能基を2つ有する多官能の重合性液晶化合物及び重合性液晶組成物が開示されている。これらの化合物は液晶相を示す温度が高いため、転移点を下げるには多くの種類の液晶化合物を用いる必要があるということや室温において結晶が析出してしまいやすいという欠点があった。また、PCT国際公開WO98/23580及び特開平10-310612号公報には1分子中に液晶骨格(メソゲン)を複数有する重合性液晶化合物が開示されている。このような材料は、粘度が非常に大きく、配向工程においてディスクリネーション等の配向欠陥が生じた場合、消失させるのに多大な時間が必要になり、生産性が悪化するという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明における課題は、液晶相を示す温度が低く、結晶が析出しにくく、粘度が非常に大きくなく、かつ重合後の透明性に優れ、また機械的強度が高い重合性液晶化合物、該化合物を含有する重合性組成物、及びこれらの重合体を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために重合性液晶化合物の化学構造に着目し、検討した結果、特定の部分化学構造を有する化合物が有用であることを見出し、以下の発明を提供するに至った。即ち、本発明は、一般式(II)
【化5】
(式中、W 1 、W 2 はそれぞれ独立的に単結合、−O−、−COO−、−OCO−を表し、p、qはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表し、1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い)で表される重合性液晶化合物を提供する。連結基としての−C≡CCOO−は、環の数が2〜3個と少なくても、室温付近の低い温度域において液晶性を発現させることができ、粘度を低くでき、また複屈折率が比較的大きくすることができるという特徴を有している。さらに機械的強度が高い上、比較的大きな複屈折率が得られる。このような特徴を見いだすことによって、本発明を完成するに至った。
【0005】
また、本発明は上記の重合性液晶化合物を含有することを特徴とする重合性液晶組成物を提供する。本発明の重合性液晶化合物を含有させた重合性液晶組成物においても、液晶相を示す温度が低く、結晶が析出しにくく、粘度が非常に大きくない。また、重合後の透明性に優れ、また機械的強度が高くすることが可能である。
【0006】
さらに、本発明は、上記の重合性液晶化合物及び重合性液晶組成物の重合体も提供する。本発明の重合性液晶化合物及び重合性液晶組成物の重合体は、重合後の透明性に優れ、かつ機械的強度が高い。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態の例を説明する。本発明の重合性液晶化合物に使用できる重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、エチニル基、メルカプト基、マレイミド基、ClCH=CHCONH-、CH2=CCl-、CHCl=CH-、RCH=CHCOO-(Rは塩素、フッ素、または炭素原子数1〜10の炭化水素基を表す)が挙げられる。これらの中でもアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、ビニルオキシ基が好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。また本発明の重合性液晶化合物に使用できる芳香環、脂環、複素環及び縮合環としては、ベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、テトラジン、ジヒドロオキサジン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘキサノン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、テトラヒドロチオピラン、ジチアン、オキサチアン、ジオキサボリナン、ナフタレン、ジオキサナフタレン、テトラヒドロナフタレン、キノリン、クマリン、キノキサリン、デカヒドロナフタレン、インダン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、フェナンスレン、ジヒドロフェナンスレン、パーヒドロフェナンスレン、ジオキサパーヒドロフェナンスレン、フルオレン、フルオレノン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンオン、コレステン、ビシクロ[2.2.2]オクタンやビシクロ[2.2.2]オクテン、1,5-ジオキサスピロ(5.5)ウンデカン、1,5-ジチアスピロ(5.5)ウンデカン、トリフェニレン、トルクセン、ポルフィリン、フタロシアニンを使用することができる。これらの中でも、ベンゼン、シクロヘキサン、フェナンスレン、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレンが好ましい。これらの環は、炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。アルキル基としてはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が望ましく、メチル基とエチル基が特に好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましく、アルカノイル基としてはアセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基が好ましく、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子と塩素原子が特に好ましい。環の数は2〜10個が好ましく、2〜3個がさらに好ましい。環は、単結合やエステル結合等の共有結合によって結合されるが、環と環の結合のうち、少なくとも一つは-C≡CCOO-である必要がある。分子全体の形状としては、分子として液晶性を示すか、液晶材料と良好な相溶性を示すよう、液晶の技術分野で知られているように棒状、バナナ状(折れ曲がった分子)、円盤状であるのが好ましい。
【0008】
棒状もしくはバナナ状の分子としては、一般式(I)
【化7】
で表される分子が好ましい。ここで、P1及びP2は、本発明の重合性液晶化合物に使用できる重合性官能基して上に述べた例から独立的に選ばれるのが好ましい。A1及びA2は、本発明の重合性液晶化合物に使用できる芳香環、脂環、複素環及び縮合環からなる群として上に述べた例から独立的に選ばれるのが好ましい。X1及びX2は、それぞれ独立的に単結合、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-から選択するのが好ましい。L1のうち少なくとも一つは-C≡CCOO-または-OOCC≡C-から選ばれる連結基であるが、それ以外の連結基としては独立的に単結合、-CH2-、-O-、-S-、-CO-、-OCOO-、-CH2CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH2)4-、-CH2CH2CH2O-、-OCH2CH2CH2-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-から選択するのが好ましく、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH2)4-、-CH2CH2CH2O-、-OCH2CH2CH2-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-から選択するのがより好ましい。S1及びS2は2価のスペーサー基を示し、柔軟性を有するものが好ましく、隣接しない炭素原子が酸素原子で置換されていても良く、また水素原子が酸素原子、ハロゲン原子、シアノ基で置換されていても良い炭素原子数2〜18のアルキレン基、もしくはシリコン原子数が2〜18のシロキサン基から選択するのが好ましい。これらの2価のスペーサー基は直線状であっても分岐状であっても良く、不斉原子を持っていても良い。nは1〜9の整数であり、1〜2の整数であるのが好ましい。nが1〜2の整数であるときには、L1のうち、1個が-C≡CCOO-または-OOCC≡C-から選ばれる連結基であるのが好ましく、nが3〜5の整数であるときにはL1のうち、1〜2個が-C≡CCOO-または-OOCC≡C-から選ばれる連結基であるのが好ましく、nが6〜9のときにはL1のうち1〜3個が-C≡CCOO-または-OOCC≡C-から選ばれる連結基であるのが好ましい。
【0009】
一般式(I)で表される棒状もしくはバナナ状の分子において-(A1−L1)n-A2−の骨格としては以下のものが挙げられるが、本発明の重合性液晶化合物において使用できる骨格はこれらに制限されるものではない。
【0010】
【化8】
(式中、L2、L3は、-C≡CCOO-、-OOCC≡C-、単結合、-CH2-、-O-、-S-、-CO-、-OCOO-、-CH2CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH2)4-、-CH2CH2CH2O-、-OCH2CH2CH2-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-を表し、1,4-フェニレン基は、炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。また、1,4-フェニレン基中の炭素原子は窒素原子で1つ以上置換されていても良い。また、1,4-フェニレン基全体を1,4-シクロヘキシル基、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルで置換しても良く、これらの環は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、また環中の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子で置換されていても良い)
【0011】
S1及びS2の2価のスペーサー基としては、以下のものが挙げられるが、本発明の重合性液晶化合物において使用できるスペーサー基はこれらに制限されるものではない。
【化9】
(式中、m1は2〜18の整数を表し、m2は1〜6の整数を表し、m3は1〜3の整数を表し、m4は1〜9の整数を表す)
【0012】
以上のような一般式(I)で表されるような棒状もしくはバナナ状の分子のうち、棒状分子がさらに好ましい。このような棒状分子としては、一般式(II)で表される化合物が特に好ましい。
【化10】
(式中、W1、W2はそれぞれ独立的に単結合、-O-、-COO-、-OCO-を表し、p、qはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表し、1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い)
【0013】
一般式(II)で表される化合物は、特に液晶下限温度が低い傾向にあるため、好ましい。p、qはそれぞれ独立的に3〜8の整数が好ましく、3〜6の整数が特に好ましい。一般式(II)で表される化合物の具体的な例を以下に挙げるが、本発明の重合性液晶化合物はこれらに限定されるものではない。
【化11】
(式中、p、qはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表す)
以上のような化合物の中でも、式(11)、(15)、(19)に示すような化合物は、良好な液晶性を発現する傾向にあるため、好ましい。
【0014】
このような化合物は、例えば、以下の経路に示す方法で合成することが可能である。
【化12】
【0015】
(式中、ベンゼン環はハロゲン原子で置換されていても良い)
(s-1)の4-ヨードフェノールと(s-2)のアルコール誘導体を反応させて、(s-3)のヨードベンゼン誘導体を得る。次にPPTS(パラトルエンスルホン酸ピリジニウム塩の如き触媒を用いてジヒドロピランと反応させて、水酸基を保護して、(s-4)の化合物を得る。さらに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ヨウ化銅(I)を触媒として用いてトリメチルシリルアセチレンと反応させた後、テトラブチルアンモニウムフロリドによってシリル基を脱離させ、(s-6)のアセチレン誘導体を得る。この化合物を、メチルマグネシウムブロミドやブチルリチウムの如き塩基で処理し、二酸化炭素と反応させることにより(s-7)の化合物を得て、さらに酸性条件で加水分解することにより(s-8)の化合物を得る。(s-8)の化合物をパラトルエンスルホン酸の如き触媒を用いてアクリル酸と反応させて、(s-9)の化合物を得る。(s-10)のベンジルオキシフェノールと(s-11)のアルコール誘導体を反応させた後、還元的にベンジル基を脱保護して(s-13)の化合物を得る。この化合物をパラトルエンスルホン酸の如き触媒を用いてアクリル酸と反応させて、(s-14)の化合物を得る。最後に、(s-9)の化合物と(s-14)の化合物をDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)の如き縮合剤とDMAP(ジメチルアミノピリジン)の如き触媒を用いて縮合することにより、目的の化合物を合成することができる。
【0016】
次に本発明の重合性液晶組成物について説明する。本発明の重合性液晶組成物には、本発明の重合性液晶化合物を少なくとも30質量%以上含有させるのが好ましく、50質量%以上含有させるのがさらに好ましく、70質量%以上含有させるのが特に好ましい。また、本発明の重合性液晶組成物には、本発明の重合性液晶化合物を2種以上含有させるのが特に好ましい。
本発明の重合性液晶組成物には、本発明の重合性液晶化合物の他にも、公知の重合性液晶化合物を含有することができる。この場合、分子内に通常この技術分野で液晶骨格と認められる骨格と重合性官能基を同時に有する化合物であれば、特に制限なく使用することができる。しかしながら、当該液晶骨格は、少なくとも2つ又は3つの6員環を有するものが特に好ましい。重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、エチニル基、メルカプト基、マレイミド基、、ClCH=CHCONH-、CH2=CCl-、CHCl=CH-、RCH=CHCOO-(Rは塩素、フッ素、または炭素原子数1〜10の炭化水素基を表す)が挙げられるが、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、メルカプト基がさらに好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。一分子中に複数の重合性官能基を有する化合物の場合には、重合性官能基の種類が異なっていてもよい。例えば、重合性官能基を2つ有する化合物の場合、一方がアクリロイルオキシ基、他方がビニルオキシ基であってもよい。
一分子中に2つの重合性官能基を有する化合物としては、一般式(III)
【0017】
【化13】
(式中、mは0または1の整数を表し、W3、W4はそれぞれ独立的に単結合、-O-、-COO-、-OCO-を表し、Y1、Y2はそれぞれ独立的に-COO-、-OCO-を表し、r、sはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表し、1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い)で表される重合性液晶化合物を含有するのが好ましい。一般式(III)のような重合性液晶化合物は、液晶を発現する温度が比較的低いため、本発明の化合物と組み合わせて組成物を調製するのに適している。一般式(III)で表される化合物の添加量は、0〜95質量%が好ましく、0〜80質量%がさらに好ましく、0〜70質量%が特に好ましい。一般式(III)で表される化合物の具体的な例としては、式(d-1)〜(d-6)のような化合物を挙げることができるが、本発明の液晶組成物において使用することのできる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0018】
【化14】
一般式(III)で表される化合物以外にも、一分子中に2つの重合性官能基を有する2官能重合性液晶化合物としては、式(d-7)〜式(d-16)の化合物を挙げることができる。しかしながら、本発明の液晶組成物において使用することができる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0019】
【化15】
(式中、j、kはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表す)。
また、特開平10-310612に開示されている式(d-17)のような分子内に2つ以上の液晶骨格を有する2官能重合性液晶化合物を含有しても良い。
【0020】
【化16】
(式中、jは2〜18の整数を表す)
また、USP5593617に開示されている式(d-18)のような3官能重合性液晶化合物を含有しても良い。
【0021】
【化17】
(式中、jは4〜11の整数を表す)
また、USP5567349に開示されている式(d-19)のような4官能重合性液晶化合物を含有しても良い。
【0022】
【化18】
(式中、jは4〜12の整数を、kは2〜12の整数を表す)
また、一分子中に一つの重合性官能基を有する単官能重合性液晶化合物としては、一般式(IV)
【0023】
【化19】
(式中、Z1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子1〜20の炭化水素基を表し、Z2は水素原子又はメチル基を表し、tは0又は1の整数を表し、6員環A、B、Cそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基を表し、これらの6員環A、B、Cは、さらに炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、Y3、Y4はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH2)4-、-CH2CH2CH2O-、-OCH2CH2CH2-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-を表し、Y5は単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-CH=CHCOO-を表す。)で表される重合性液晶化合物を含有することが好ましい。一般式(IV)で表される化合物も、液晶を発現する温度が比較的低く、また、粘度が低いため、本発明の化合物と組み合わせて組成物を調製するのに適している。一般式(IV)で表される化合物の添加量は、0〜50質量%が好ましく、0〜30質量%がさらに好ましく、0〜20質量%が特に好ましい。一般式(IV)で表される化合物の具体的な例として、式(a-1)〜(a-25)の化合物の構造と相転移温度を以下に示す。しかしながら、本発明の液晶組成物において使用することができる化合物はこれらに限定されるものではない。(式中、シクロヘキサン環はトランスシクロヘキサン環を表し、数字は相転移温度を表し、Cは結晶相、Nはネマチック相、Sはスメクチック相、Iは等方性液体相をそれぞれ表す。)
【0024】
【化20】
【0025】
【化21】
【0026】
【化22】
【0027】
【化23】
また、一般式(V)
【0028】
【化24】
(式中、Z3は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子1〜20の炭化水素基を表し、Z4は水素原子又はメチル基を表し、W5は単結合、-O-、-COO-、-OCO-を表し、vは2〜18の整数を表し、uは0又は1の整数を表し、6員環D、E、Fはそれぞれ独立的に、1,4-フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH2基が酸素又は硫黄原子で置換された1、4−シクロヘキシレン基、1、4−シクロヘキセニル基を表し、これらの6員環環D、E、Fは、さらに炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、Y6、Y7はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH2)4-、-CH2CH2CH2O-、-OCH2CH2CH2-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-を表し、Y8は単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-CH=CHCOO-を表す。)で表される重合性液晶化合物を含有することも好ましい。このような化合物においては、vは2〜12の整数が好ましく、2〜8の整数がさらに好ましく、2〜6の整数が特に好ましい。一般式(V)で表される化合物の具体的な例として、式(a-26)〜(a-50)の化合物の構造を以下に示す。しかしながら、本発明の液晶組成物において使用することができる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0029】
【化25】
【0030】
【化26】
(式中、vは一般式(V)におけるものと同じ意味を表し、R1は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す)。
【0031】
本発明の重合性液晶組成物には、重合性を有していない液晶性化合物を含有していても良い。重合性を有さない液晶化合物としては、一般式(VI)、(VII)
【化27】
【0032】
(式中、R2、R3、R4はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、環G、環H、環I、環J及び環Kはそれぞれ独立的にフッ素原子により置換されていてもよい1,4-フェニレン基、2-メチル-1,4-フェニレン基、3-メチル-1.4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、フェナンスレン-2,7-ジイル基、フルオレン-2,7-ジイル基、トランス-1,4-シクロへキシレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、トランス-1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基またはピリダジン-2,5-ジイル基を表し、a、bはそれぞれ独立的に0、1もしくは2を表し、Y9、Y10、Y11、Y12はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-C≡C-を表し、Z6はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、水素原子、3,3,3-トリフルオロエトキシ基、R5またはR5O-を表し、R5は炭素原子数1〜12のアルキル基または、2〜12のアルケニル基を表し、Z5、Z7は水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す)を挙げることができる。このような非重合性の液晶化合物を含有させる場合には、一般式(VI)及び一般式(VII)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上含有させるのが好ましい。R2、R3、R4はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数2〜8のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基で置換された炭素原子数2〜8のアルキル基が好ましく、環G、環H、環I、環J及び環Kはそれぞれ独立的にフッ素原子により置換されていてもよいフェニレン基、トランス-1,4-シクロへキシレン基、ピリミジン-2,5-ジイル基が好ましく、Y9、Y10、Y11、Y12はそれぞれ独立的に単結合、-COO-、-OCO-、-CH=CH-または-C≡C-が好ましく、単結合、-COO-、-OCO-がさらに好ましい。
【0033】
また、Z5、Z6、Z7のうち2つがフッ素原子であり、他の一つが水素原子であることや、Z6がシアノ基であることが好ましい。本発明の重合性液晶組成物において、非重合性液晶化合物から構成される成分は、成分それ自体でネマチック液晶性もしくはキラルスメクチックC相を呈するように設計するのが好ましい。キラルスメクチックC相を呈するよう設計する場合には、環構造としてピリミジンを、連結基としてエステル構造を有する化合物を含有するよう設計するのが好ましい。
【0034】
本発明の重合性液晶組成物を受動的な素子、つまり電界や磁界の印加によっても特性が変化しない素子、例えば、位相差フィルムや光学的ローパスフィルターの材料として用いる場合には、重合性を有していない液晶性化合物の含有量は、0〜30質量%が好ましく、0〜20質量%がさらに好ましく、0〜10質量%が特に好ましい。本発明の重合性液晶組成物を能動的な素子、つまり電界や磁界の印加によって特性が変化し、光学的なスイッチとして機能するような素子、例えば、高分子安定化素子の材料として用いる場合には、重合性を有していない液晶性化合物の含有量は、5〜99質量%が好ましく、40〜98質量%がさらに好ましく、80〜98質量%が特に好ましい。添加することができる重合性を有していない液晶性化合物は特に制限がなく、この技術分野において液晶性化合物と認識されるものであれば使用することができるが、極性基としてシアノ基やフッ素原子等のハロゲン原子を有する液晶性化合物は、電界の印加によって配向を制御しやすいので、このような化合物を用いることは好ましい。特に極性基としてフッ素原子等のハロゲン原子のみを有するように重合性液晶組成物を設計すると、TFT(薄膜トランジスタ)やTFD(薄膜ダイオード)等の能動素子による駆動に適した高い保持率を示す液晶組成物を得られるので特に好ましい。
【0035】
さらに本発明の重合性液晶組成物には、重合性官能基を有する化合物であって、液晶性を示さない化合物を添加することもできる。このような化合物としては、通常、この技術分野で高分子形成性モノマーあるいは高分子形成性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができるが、その添加量は組成物として液晶性を呈するように調整する必要がある。
【0036】
本発明の液晶組成物は、光学素子の作製に応用する場合には、室温で、典型的には25℃において液晶相を呈することが好ましい。
【0037】
本発明の液晶組成物は、通常この技術分野で液晶相と認識される相を示す組成物であればよい。そのような組成物の中でも、液晶相として、ネマチック相、スメクチックA相、(キラル)スメクチックC相、コレステリック相、ディスコティック相を発現するものが好ましい。この中でも、ネマチック相は良好な配向性を有するため、特に好ましい。また、(キラル)スメクチックC相を示す場合には、該(キラル)スメクチックC相の温度領域より高い温度領域でスメクチックA相を、該スメクチックA相の温度領域より高い温度領域でネマチック相を、それぞれ発現する液晶組成物は、良好な配向性を得られる傾向にあるので好ましい。
本発明の重合性液晶組成物の液晶下限温度は40℃以下であることが望ましい。液晶下限温度が低いほど、低い温度において配向させることや、低い温度において紫外線等の活性エネルギー線の照射により配向固定を行うことができ、良好な均一性の確保が容易になる。このことから、液晶下限温度は30℃以下がさらに好ましく、25℃以下が特に好ましい。
本発明の重合性液晶組成物の透明点は、90℃以下に調整するのが好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましく、55℃以下が特に好ましく、50℃以下が非常に好ましい。このようにすると、注入工程等において本発明の液晶組成物を等方性液体相にする必要がある場合でも、90℃を越えるような高い温度にする必要が無く、結果として望ましくない熱重合の誘起を避けることができる。
本発明の重合性液晶組成物には、その重合反応性を向上させることを目的として、光重合開始剤を添加することができる。光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。その添加量は、液晶組成物に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.02〜1質量%がさらに好ましく、0.03〜1質量%の範囲が特に好ましい。
【0038】
また、本発明の重合性液晶組成物には、その保存安定性を向上させるために、安定剤を添加することもできる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β−ナフチルアミン類、β−ナフトール類、ニトロソ化合物等が挙げられる。安定剤を使用する場合の添加量は、液晶組成物に対して0.005〜1質量%の範囲が好ましく、0.02〜0.5質量%がさらに好ましく、0.03〜0.1質量%が特に好ましい。
本発明の重合性液晶組成物には、液晶骨格の螺旋構造を内部に有する重合体を得ることを目的として、キラル化合物を添加することもできる。そのような目的で使用するキラル化合物は、それ自体が液晶性を示す必要は無く、また重合性官能基を有していても、有していなくても良い。また、その螺旋の向きは、重合体の使用用途によって適宜選択することができる。そのようなキラル化合物としては、例えば、キラル基としてコレステリル基を有するペラルゴン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、キラル基として2−メチルブチル基を有するビーディーエイチ社(BDH社;イギリス国)製の「CB-15」、「C-15」、メルク社(ドイツ国)製の「S-1082」、チッソ社製の「CM-19」、「CM-20」、「CM」;キラル基として1-メチルヘプチル基を有するメルク社製の「S-811」、チッソ社製の「CM-21」、「CM-22」等を挙げることができる。キラル化合物を添加する場合の好ましい添加量は、液晶組成物の用途によるが、重合して得られる重合体の厚み(d)を重合体中での螺旋ピッチ(P)で除した値(d/P)が0.1〜100の範囲となる量が好ましく、0.1〜20の範囲となる量がさらに好ましい。
【0039】
また、本発明の重合性液晶組成物を偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、その目的に応じて金属、金属錯体、染料、顔料、色素、蛍光材料、燐光材料、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等を添加することもできる。
【0040】
次に本発明の重合体について説明する。本発明の重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を重合させることによって製造される重合体は種々の用途に利用できる。例えば、本発明の重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を、配向させない状態で重合させた場合、光散乱板、偏光解消板、モアレ縞防止板として利用可能である。また、本発明の重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を配向させた状態において、重合させることにより製造された重合体は、物理的性質に異方性を有しており、有用である。このような重合体は、例えば、本発明の重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物表面を、布等でラビング処理した基板、もしくは有機薄膜を形成した基板表面を布等でラビング処理した基板、あるいはSiO2 を斜方蒸着した配向膜を有する基板上に担持させるか、基板間に挟持させた後、本発明の液晶を重合させることによって製造することができる。
重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を基板上に担持させる際の方法としては、スピンコーティング、ダイコーティング、エクストルージョンコーティング、ロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ディッピング、プリント法等を挙げることができる。またコーティングの際、重合性液晶組成物に有機溶媒を添加しても良い。有機溶媒としては、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、セロソルブ類を挙げることができる。これらは単独でも、組み合わせて用いても良く、その蒸気圧と重合性液晶組成物の溶解性を考慮し、適宜選択すれば良い。また、その添加量は90重量%以下が好ましい。添加した有機溶媒を揮発させる方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥を用いることができる。重合性液晶材料の塗布性をさらに向上させるためには、基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けることや、重合性液晶材料にレベリング剤を添加するのも有効である。基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けるのは、重合性液晶材料を重合させて得られる重合体と基板の密着性が良くない場合に、密着性を向上させる手段としても有効である。
【0041】
重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を基板間に挟持させる方法としては、毛細管現象を利用した注入法が挙げられる。基板間に形成された空間を減圧し、その後、重合性液晶材料を注入する手段も有効である。
【0042】
ラビング処理、あるいはSiO2 の斜方蒸着以外の配向処理としては、液晶材料の流動配向の利用や、電場又は磁場の利用を挙げることができる。これらの配向手段は単独で用いても、また組み合わせて用いても良い。さらに、ラビングに代わる配向処理方法として、光配向法を用いることもできる。この方法は、例えば、ポリビニルシンナメート等の分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜、光で異性化する官能基を有する有機薄膜又はポリイミド等の有機薄膜に、偏光した光、好ましくは偏光した紫外線を照射することによって、配向膜を形成するものである。この光配向法に光マスクを適用することにより配向のパターン化が容易に達成できるので、重合体内部の分子配向も精密に制御することが可能となる。
【0043】
基板の形状としては、平板の他に、曲面を構成部分として有していても良い。基板を構成する材料は、有機材料、無機材料を問わずに用いることができる。基板の材料となる有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアリレート、ポリスルホン、トリアセチルセルロース、セルロース、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、また、無機材料としては、例えば、シリコン、ガラス、方解石等が挙げられる。
【0044】
これらの基板を布等でラビングすることによって適当な配向性を得られない場合、公知の方法に従ってポリイミド薄膜又はポリビニルアルコール薄膜等の有機薄膜を基板表面に形成し、これを布等でラビングしても良い。また、通常のツイステッド・ネマチック(TN)素子又はスーパー・ツイステッド・ネマチック(STN)素子で使用されているプレチルト角を与えるポリイミド薄膜は、重合体内部の分子配向構造を更に精密に制御することができることから、特に好ましい。
【0045】
また、電場によって配向状態を制御する場合には、電極層を有する基板を使用する。この場合、電極上に前述のポリイミド薄膜等の有機薄膜を形成するのが好ましい。
【0046】
重合性液晶化合物または重合性液晶組成物の配向状態としては、液晶の技術分野で一般的に知られている種々の配向状態をとらせることができる。配向状態の一例としては、ホモジニアス(水平)配向、傾いたホモジニアス配向、ホメオトロピック(垂直)配向、傾いたホメオトロピック配向、ハイブリッド配向、ツイステッドネマチック配向、スーパーツイステッドネマチック配向状態を挙げることができる。また、これらの配向の組み合わせや、場所ごとに配向状態を変えてパターン化しても良い。傾いたホモジニアス配向、及び傾いたホメオトロピック配向の場合、双方の場合とも基板面と液晶分子長軸のなす角度が0度または90度以外になっている状態を意味する。基板面と液晶分子長軸のなす角度は、作製する重合体の用途・機能によって選択すれば良い。基板面と液晶分子長軸のなす角度を10〜80度、さらに好ましくは、20〜70度の範囲に設定した場合、製造される重合体は、液晶ディスプレイの視野角を広く改善するための光学部材として使用可能である。また、液晶組成物の配向状態をハイブリッド配向にした場合も、製造される重合体は液晶ディスプレイの視野角を広く改善するための光学部材として使用可能である。また、基板面と液晶分子長軸のなす角度を30〜60度、さらに好ましくは、40〜50度、特に好ましくは45度に設定した場合、製造される重合体には、偏光分離能を効率良く付与することができる。このような重合体は、偏光分離素子や光学的ローパスフィルターとして有用である。また、液晶組成物の配向状態をハイブリッド配向にした場合も、製造される重合体は偏光光学素子や光学的ローパスフィルターとして有用である。一方、ツイステッドネマチック配向、スーパーツイステッドネマチック配向、コレステリック配向に代表されるような螺旋構造を有する配向構造も有用である。ねじり角度を60〜270度に設定した場合、液晶表示素子の光学補償用途に有用である。また、螺旋ピッチを調節し、特定の波長領域を選択的に反射するように設定した場合、製造される重合体はノッチフィルターや反射型カラーフィルターとして利用可能であり、有用である。また、選択的に反射する波長領域を赤外線の領域に設定すれば、熱線カットフィルターとしても有用である。また、ホモジニアス配向、ホメオトロピック配向状態にした場合、プラスチックを延伸処理したものと比較して、屈折率の異方性が大きいため、重合体としての厚みが薄くてすむという利点があり、有用である。また、液晶セル内部に、光学補償板を作り込める可能性もある。反射型液晶表示素子の光学補償に用いる場合、この特性は重要であり、特に1/4波長板としての利用は極めて重要である。
【0047】
本発明の重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を重合させる方法としては、迅速な重合の進行が望ましいので、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することによって重合させる方法が好ましい。紫外線を使用する場合、偏光光源を用いても良いし、非偏光光源を用いても良い。また、液晶組成物を2枚の基板間に挟持させて状態で重合を行う場合には、少なくとも照射面側の基板は活性エネルギー線に対して適当な透明性が与えられていなければならない。また、光照射時にマスクを用いて特定の部分のみを重合させた後、電場や磁場または温度等の条件を変化させることにより、未重合部分の配向状態を変化させて、さらに活性エネルギー線を照射して重合させるという手段を用いても良い。また、照射時の温度は、本発明の液晶組成物の液晶状態が保持される温度範囲内であることが好ましい。特に、光重合によって重合体を製造しようとする場合には、意図しない熱重合の誘起を避ける意味からも可能な限り室温に近い温度、即ち、典型的には25℃での温度で重合させることが好ましい。活性エネルギー線の強度は、0.1mW/cm2〜2W/cm2が好ましい。強度が0.1mW/cm2より弱いと、光重合を完了させるのに多大な時間が必要になり生産性が悪化してしまい、2W/cm2より強いとの場合、重合性液晶化合物または重合性液晶組成物が劣化してしまう危険がある。
【0048】
重合によって得られた本発明の重合体は、初期の特性変化を軽減し、安定的な特性発現を図ることを目的として熱処理を施すこともできる。熱処理の温度は50〜250℃の範囲で、また熱処理時間は30秒〜12時間の範囲が好ましい。
【0049】
このような方法によって製造される本発明の重合体は、基板から剥離して単体で用いても、剥離せずに用いても良い。また、得られた重合体を積層しても、他の基板に貼り合わせて用いてもよい。
【0050】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1) 重合性液晶化合物の合成
4-ヨードフェノール70.0g、6-クロロ-1-ヘキサノール47.8g、炭酸カリウム48.4g、DMF(ジメチルホルムアミド)250mlからなる混合物を80℃で、12時間撹拌した。反応液を希塩酸で中和後、酢酸エチルを用いて抽出した。有機溶媒を減圧留去して粗生成物108gを得た。次にトルエン100mlとヘキサン200mlからなる混合溶媒を用いて再結晶を行い、式(r-1)の化合物88gを得た。
【0052】
【化28】
式(r-1)の化合物88g、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム塩6.8g、ジクロロメタン440mlからなる混合物を室温で撹拌しながら、これに3,4-ジヒドロ-2H-ピラン46.1gを、反応液の温度が30℃を超えないような速度で滴下した。滴下終了後、1時間撹拌した。反応液を飽和食塩水で洗浄後、有機溶媒を減圧留去して式(r-2)の化合物110gを得た。
【0053】
【化29】
式(r-2)の化合物100g、トリメチルシリルアセチレン29.1g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を3.4g、ヨウ化銅を1.0g、DMFを300ml、トリエチルアミン80mlからなる混合物を室温で8時間撹拌した。酢酸エチルを用いて抽出した。有機溶媒を減圧留去して式(r-3)の粗生成物100gを得た。
【0054】
【化30】
テトラブチルアンモニウムフロリド87g、ジクロロメタン120mlからなる混合物を10℃以下に冷却しながら撹拌した。これに、200mlのジクロロメタンに溶解させた式(r-3)の粗生成物100gを、反応液の温度が10℃を超えない速度で滴下した。滴下終了後5時間室温で撹拌した。反応液を飽和食塩水で洗浄後、有機溶媒を減圧留去して粗生成物90g得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(流出溶媒:ジクロロメタン)により精製し、式(r-4)の化合物を60g得た。
【0055】
【化31】
式(r-3)の化合物60g、THF(テトラヒドロフラン)300mlからなる混合物を室温で撹拌した。これにブチルリチウムヘキサン溶液(0.238mol相当)を、1時間かけて滴下した。さらに、反応液の撹拌を続けながら、反応液に約40リットルの二酸化炭素を1時間かけて吹き込んだ。反応液に水200mlを加えた後、酢酸エチルを用いて抽出、有機溶媒を減圧留去して式(r-5)の粗精製物55gを得た。
【0056】
【化32】
式(r-5)の粗生成物55g、THFが550ml、10%希塩酸550mlからなる混合物を室温で2時間撹拌した。酢酸エチルを用いて抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、有機溶媒を減圧留去することにより粗生成物70gを得た。次にトルエン300mlを用いて再結晶を行い、式(r-6)の化合物を26g得た。
【0057】
【化33】
式(r-6)の化合物26g、アクリル酸50g、p-トルエンスルホン酸10g、ヒドロキノン5g、トルエン250ml、ヘキサン300mlからなる混合物を、生成する水を留去しながら4時間環流させた。反応液を室温まで冷却後、有機層を10%飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、有機溶媒を減圧留去して40gの粗生成物を得た。トルエン200mlを用いて再結晶を行い、式(r-7)の化合物を25g得た。
【0058】
【化34】
4-ベンジルオキシフェノール125g、6-クロロ-1-ヘキサノール93g、炭酸カリウム95g、ヨウ化カリウム10g、DMFが500mlからなる混合物を80℃で、8時間撹拌した。反応液を希塩酸で中和後、酢酸エチルを用いて抽出した。有機溶媒を減圧留去して粗生成物230gを得た。次にトルエン500mlとTHF100mlからなる混合溶媒を用いて再結晶を2回行い、式(r-8)の化合物87gを得た。
【0059】
【化35】
式(r-8)の化合物87g、パラジウムカーボン触媒18g、エタノール400ml、酢酸エチル400mlからなる混合物をオートクレーブ中に加え、0.5MPaの水素雰囲気下で8時間撹拌した。反応終了後、パラジウムカーボンを濾取した後、有機溶媒を減圧留去し、さらに真空乾燥することにより、粗生成物を60g得た。次に、THF60mlとトルエン300mlからなる混合溶媒を用いて再結晶し、式(r-9)の化合物を58g得た。
【0060】
【化36】
式(r-9)の化合物58g、アクリル酸99g、p-トルエンスルホン酸20g、トルエン250ml、ヘキサン250mlからなる混合物を、生成する水を留去しながら4時間環流させた。反応液を室温まで冷却後、有機層を10%飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、有機溶媒を減圧留去して87gの粗生成物を得た。次にトルエン100mlとヘキサン300mlからなる混合溶媒を用いて再結晶を行い、式(r-10)の化合物を65g得た。
【0061】
【化37】
式(r-7)の化合物10.0g、式(r-10)の化合物8.4g、4-ジメチルアミノピリジン0.4、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩7.3g、ジクロロメタン100mlからなる混合物を室温で10時間撹拌した。反応液を飽和食塩水で洗浄した後、有機溶媒を減圧留去して25gの粗生成物を得た。次にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(流出溶媒:ジクロロメタン)、メタノールを用いた再結晶により精製し、式(r-11)の重合性液晶化合物を10.1g得た。
【化38】
この化合物を加熱すると、60℃で等方性液体相に相転移した。等方性液体相から冷却すると、54℃でネマチック相に相転移した。
【0062】
(実施例2) 重合性液晶化合物の合成
実施例1と同様の方法を用いて、式(r-12)〜式(r-13)の化合物を合成した。
【化39】
【0063】
(実施例3)重合性液晶組成物の調製(1)
化合物(a-1)の重合性液晶化合物50質量部
【化40】
及び化合物(a-4)の重合性液晶化合物50質量部
【化41】
から成る組成物(A)を調製した。組成物(A)は、室温(25℃)でネマチック液晶相を呈した。ネマチック相−等方性液体相転移温度は46℃であった。また、589nmで測定した複屈折率は0.152であり、20℃における粘度は27mPa・sであった。実施例1で合成した重合性液晶化合物化合物(r-11)70質量部、組成物(A)30質量部から成る組成物(B)を調製した。この組成物(B)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は50℃であった。また、589nmで測定した複屈折率は0.22であり、20℃における粘度は120mPa・sであった。
【0064】
(実施例4)重合性液晶組成物の調製(2)
実施例1で合成した重合性液晶化合物(r-11)50質量部、組成物(A)50質量部から成る組成物(C)を調製した。この組成物(C)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は49℃であった。また1時間以上、結晶が析出しなかった。複屈折率は0.20であった。20℃における粘度は94mPa・sであった。
【0065】
(実施例5)重合性液晶組成物の調製(3)
式(d-1)の化合物10質量部(この化合物は、60〜84℃の温度範囲でネマチック相を呈する)、
【化42】
式(d-2)の化合物10質量部(この化合物は、61〜81℃の温度範囲でネマチック相を呈する)、
【化43】
実施例1で合成した重合性液晶化合物(r-11)50質量部、実施例3で調製した組成物(A)30質量部からなる組成物(D)を調製した。この組成物(D)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は55℃であった。また1時間以上、結晶が析出しなかった。複屈折率は0.21であった。20℃における粘度は140mPa・sであった。
【0066】
(比較例1) 重合性液晶組成物の調製
式(r-15)の化合物50質量部(この化合物は、室温で結晶相を示した。相転移温度は、結晶−スメクチック相が87℃、スメクチック相−ネマチック相が91℃、ネマチック相−等方性液体相が110℃である)、
【化44】
組成物(A)50質量部から成る組成物(E)を調製した。組成物(E)は室温で結晶であったので、複屈折率及び粘度を測定できなかった。
実施例3、4、5と比較例1より、本発明の重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物は、低い温度で液晶性を示し、結晶が析出しにくいことがわかる。
【0067】
(実施5)重合体の作製(1)
実施例3で調製した組成物(B)99質量部、光重合開始剤イルガキュアー6516(チバスペシャリティケミカルズ社製)1質量部からなる重合性液晶組成物(B')を調製した。セルギャップ50μmのアンチパラレル配向液晶ガラスセル(液晶を一軸配向するよう配向処理を施したガラスセル)に、組成物(B')を室温にて注入した。注入後、均一な一軸配向が得られているのが確認できた。次に、室温(25℃)にてウルトラバイオレット社のUVGL-25を用いて1mW/cm2の紫外線を10分間照射して、組成物(B')を重合させ、重合体を得た。得られた重合体は、方向によって屈折率が異なっており、光学異方体として機能することが確かめられた。得られたフィルムの複屈折率は、0.19であった。ガラスセルにいれたままの重合体のヘイズは1.6%であった。さらに、ガラス製液晶セルを分解して、得られた重合体単体を取り出し、耐熱性を検討したところ、150℃においても配向は乱れず、問題の無いことを確認できた。また、得られた重合体はゲル状ではなく機械的特性も優れていた。
【0068】
(実施6)重合体の作製(2)
実施例4で調製した組成物(C)99質量部、光重合開始剤イルガキュアー6516が1質量部からなる重合性液晶組成物(C')を調製した。セルギャップ50μmのアンチパラレル配向液晶ガラスセルに、組成物(C')を室温にて注入した。注入後、均一な一軸配向が得られているのが確認できた。次に、室温(25℃)にUVGL-25を用いて1mW/cm2の紫外線を10分間照射して、組成物(C')を重合させ、重合体を得た。得られた重合体は、方向によって屈折率が異なっており、光学異方体として機能することが確かめられた。得られたフィルムの複屈折率は、0.15であった。ガラスセルにいれたままの重合体のヘイズは1.9%であった。さらに、ガラス製液晶セルを分解して、得られた重合体単体を取り出し、耐熱性を検討したところ、150℃においても配向は乱れず、問題の無いことを確認できた。また、得られた重合体はゲル状ではなく機械的特性も優れていた。
【0069】
(実施7)重合体の作製(3)
実施例5で調製した組成物(D)99質量部、光重合開始剤イルガキュアー6516が1質量部からなる重合性液晶組成物(D')を調製した。セルギャップ50μmのアンチパラレル配向液晶ガラスセルに、組成物(D')を室温にて注入した。注入後、均一な一軸配向が得られているのが確認できた。次に、室温(25℃)にてUVGL-25を用いて1mW/cm2の紫外線を10分間照射して、組成物(D')を重合させ、重合体を得た。得られた重合体は、方向によって屈折率が異なっており、光学異方体として機能することが確かめられた。得られたフィルムの複屈折率は、0.18であった。ガラスセルにいれたままの重合体のヘイズは1.8%であった。さらに、ガラス製液晶セルを分解して、得られた重合体単体を取り出し、耐熱性を検討したところ、150℃においても配向は乱れず、問題の無いことを確認できた。また、得られた重合体はゲル状ではなく機械的特性も優れていた。
【0070】
(比較例2)重合体の作製
比較例1で調製した組成物(E)99質量部、光重合開始剤イルガキュアー6516が1質量部からなる重合性液晶組成物E')を調製した。セルギャップ50μmのアンチパラレル配向液晶ガラスセルに、組成物(E')を室温にて注入しようと試みたが、注入できなかった。ガラスセルと組成物(E')を80℃まで加熱することにより、注入することはできたが、粘度が高く、注入するのに非常に時間がかかった。注入後は均一な一軸配向が得られているのが確認できた。次に、60℃でUVGL-25を用いて1mW/cm2の紫外線を10分間照射して、組成物(E')を重合させ、重合体を得た。得られた重合体は、方向によって屈折率が異なっており、光学異方体として機能することが確かめられた。得られたフィルムの複屈折率は、0.10であった。ガラスセルにいれたままの重合体のヘイズは8.5%であった。さらに、ガラス製液晶セルを分解して、得られた重合体単体を取り出し、耐熱性を検討したところ、150℃においても配向は乱れず、問題の無いことを確認できた。また、得られた重合体はゲル状ではなく機械的特性も優れていた。
【0071】
実施例5〜7及び比較例2から、本発明の重合性液晶組成物を用いて重合体を作製すると、粘度が低いため、フィルムの生産性を向上させることができ、かつヘイズが低減された透明性の高いものが得られることがわかる。また、得られたフィルムの屈折率も大きいものが得られた。
【0072】
【発明の効果】
本発明の重合性液晶化合物は、液晶温度が50℃付近と低い。また本発明の重合性液晶組成物は、室温で液晶性を示し、結晶が析出しにくい。また、重合後に得られる重合体フィルムは透明性、機械的特性に優れた重合体を与える。この点から本発明の重合性液晶組成物は、位相差フィルムや光学的ローパスフィルター等の製造を容易にするものであり、きわめて有用である。
Claims (7)
- 請求項1に記載の重合性液晶化合物を含有することを特徴とする重合性液晶組成物。
- 一般式(IV)
- 一般式(V)
- 液晶下限温度が40℃以下であることを特徴とする請求項2から5のいずれか一つの請求項に記載の重合性液晶組成物。
- 請求項1に記載の重合性液晶化合物または請求項2から5のいずれか一つの請求項に記載の重合性液晶組成物の重合体。
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