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JP4803963B2 - 半導電性ポリイミド系前駆体組成物及びそれを用いた半導電性ポリイミド系管状物の製造方法 - Google Patents

半導電性ポリイミド系前駆体組成物及びそれを用いた半導電性ポリイミド系管状物の製造方法 Download PDF

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JP4803963B2 JP2004059590A JP2004059590A JP4803963B2 JP 4803963 B2 JP4803963 B2 JP 4803963B2 JP 2004059590 A JP2004059590 A JP 2004059590A JP 2004059590 A JP2004059590 A JP 2004059590A JP 4803963 B2 JP4803963 B2 JP 4803963B2
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Description

本発明は、半導電性ポリイミド系前駆体組成物及びそれを用いた半導電性のポリイミド系管状物の製造方法に関する。また、該製造方法により得られる半導電性ポリイミド系管状物は、例えば電子写真方式の中間転写ベルトとして使用される。
一般にカーボンブラック分散ポリイミド前駆体組成物は、テトラカルボン酸とジアミンを重合してなるポリアミック酸溶液に、カーボンブラックを添加して、分散・混合されて作製されている。
しかし、この溶液にカーボンブラックを添加すると、粘度の増加率が高く、ボールミルなどの分散機中で行われるボール間の衝撃力によってもカーボンブラックの粉砕が困難である。カーボンブラックを添加してポリアミック酸溶液に均一に分散するには、分散機で行われるカーボンブラックの粉砕と、ほぐされていくカーボンブラックの溶媒液による「ぬれ」という界面現象が伴わなければならない。そのため、カーボンブラックと共に有機極性溶媒を多量に添加することで、カーボンブラックを均一分散する方法が取られている。その結果、カーボンブラックを高濃度に含むマスターバッチ溶液の不揮発分濃度は、16重量%以下と低濃度のものしか得ることができなかった。
この問題を解消するために、テトラカルボン酸ジエステルとジアミン成分からなる、いわゆるナイロン塩型モノマー溶液に、カーボンブラックを添加して分散・混合する方法が、特許文献1に記載されている。
しかし、このナイロン塩型モノマーにカーボンブラックを添加して分散機で均一分散しようとすると、分散機中で行われる衝撃力による発熱によってナイロン塩型モノマーが変化し、結果としてカーボンブラックの分散状態に好ましくない影響を与える。分散機中での発熱を抑えた分散方法を採用して作製したマスターバッチ溶液でも、低粘度で分子同士の絡まりがないモノマー溶液であるため、カーボンブラックの分散安定性が悪い結果となる。
また、モノマー溶液であるがゆえに、回転成形においてカーボンブラック粒子が遠心力、溶媒揮発などの影響を受けやすい。
さらに、モノマー溶液からポリイミド転化が急激に行われるため、カーボンブラック粒子へ影響を与えることとなり、その結果ポリイミドフイルムの厚み方向のカーボンブラック粒子の分散状態が不均一になり、ポリイミドの電気的特性も不安定になってしまうという問題もある。
特開平10-182820号公報
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、カーボンブラックの分散安定性に優れた半導電性ポリイミド系前駆体組成物を提供することにあり、さらに該半導電性ポリイミド系前駆体組成物を用いて製造される、優れた電気的特性を有する高品位の半導電性ポリイミド系管状物及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、有機極性溶媒に2種以上の芳香族テトラカルボン酸ジエステルと芳香族ジアミンとの略等モル量を溶解したナイロン塩型モノマー溶液に、所定の高分子量のポリイミド前駆体溶液又は高分子量のポリアミドイミド溶液を混合して得られる混合溶液が、カーボンブラックの分散安定性に優れていることを見出した。また、上記の混合液とカーボンブラックとを均一混合してなる半導電性ポリイミド系前駆体組成物を用いて回転成形し続いてイミド化処理することにより、均質な電気抵抗率を有する半導電性ポリイミド系管状物が得られることを見出した。さらにこれを発展させて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の半導電性ポリイミド系前駆体組成物、それを用いた半導電性ポリイミド系管状物及びその製造方法を提供する。
項1. 有機極性溶媒に2種以上の芳香族テトラカルボン酸ジエステルと芳香族ジアミンとの略等モル量を溶解したナイロン塩型モノマー溶液に、高分子量のポリイミド前駆体溶液又は高分子量のポリアミドイミド溶液を混合して混合溶液を調製し、該混合溶液にカーボンブラックを均一分散させてなる半導電性ポリイミド系前駆体組成物。
項2 2種以上の芳香族テトラカルボン酸ジエステルが、非対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステル10〜50モル%と対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステル90〜50モル%とからなる混合物である項1に記載の半導電性ポリイミド系前駆体組成物。
項3 2種以上の芳香族テトラカルボン酸ジエステルが、非対称性の2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジエステル10〜50モル%と対称性の3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジエステル90〜50モル%とからなる混合物である項1又は2に記載の半導電性ポリイミド系前駆体組成物。
項4 高分子量のポリイミド前駆体溶液が数平均分子量10000以上のポリアミック酸溶液であり、高分子量のポリアミドイミド溶液が数平均分子量10000以上のポリアミドイミド溶液である項1に記載の半導電性ポリイミド系前駆体組成物。
項5. 前記数平均分子量10000以上のポリアミック酸溶液が、非対称性の2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を15〜50モル%程度含有するビフェニルテトラカルボン酸二無水物とジアミノジフェニルエーテルとの略等モル量を有機極性溶媒中で反応して製造される項4に記載の半導電性ポリイミド系前駆体組成物。
項6. 前記数平均分子量10000 以上のポリアミドイミド溶液が、トリメリット酸無水物及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物からなる酸無水物と芳香族イソシアネートとの略等モル量を有機極性溶媒中で反応して製造される項4に記載の半導電性ポリイミド系前駆体組成物。
項7. 項1〜6のいずれかに記載の半導電性ポリイミド系前駆体組成物を回転成形法にて管状物に成形し、加熱処理してイミド化することを特徴とする半導電性ポリイミド系管状物の製造方法。
項8. 項7に記載の製造方法により製造される、表面抵抗率107〜1014Ω/□であり電子写真方式の中間転写ベルトに用いられる半導電性ポリイミド系管状物。
項9. 有機極性溶媒に2種以上の芳香族テトラカルボン酸ジエステルと芳香族ジアミンとの略等モル量を溶解したナイロン塩型モノマー溶液に、高分子量のポリイミド前駆体溶液又は高分子量のポリアミドイミド溶液を混合して混合溶液を調製し、該混合溶液にカーボンブラックを均一分散させることを特徴する半導電性ポリイミド系前駆体組成物の製造方法。
以下、本発明を詳述する。
本発明の半導電性ポリイミド系管状物(以下、「半導電性PI管状物」とも呼ぶ)は、半導電性ポリイミド系前駆体組成物(以下、「半導電性PI前駆体組成物」とも呼ぶ)を用いて回転成形し加熱処理(イミド化)することにより製造される。
I.半導電性ポリイミド系前駆体組成物
本発明の半導電性ポリイミド系前駆体組成物は、有機極性溶媒に2種以上の芳香族テトラカルボン酸ジエステルと芳香族ジアミンとの略等モル量を溶解したナイロン塩型モノマー溶液に、高分子量のポリイミド前駆体溶液又は高分子量のポリアミドイミド溶液を混合して混合溶液を調製し、該混合溶液にカーボンブラック(以下、「CB」とも呼ぶ)を均一分散させて製造される。
(1)芳香族テトラカルボン酸ジエステル(ハーフエステル)
成形原料である2種以上の芳香族テトラカルボン酸ジエステルとしては、非対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステルの少なくとも1種と対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステルの少なくとも1種との混合物が用いられる。
本発明で用いられる非対称性芳香族テトラカルボン酸のジエステルについて、以下説明する。
ここで、非対称性芳香族テトラカルボン酸とは、単環若しくは多環の芳香環(ベンゼン核、ナフタレン核、ビフェニル核、アントラセン核等)に4個のカルボキシル基が点対象でない位置に結合した化合物、或いは2個の単環芳香環(ベンゼン核等)が−CO−、−CH2−、−SO2−等の基又は単結合で架橋された化合物に4個のカルボキシル基が点対象でない位置に結合した化合物が挙げられる。
非対称性芳香族テトラカルボン酸の具体例としては、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸等が挙げられる。
本発明で用いられる非対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステル(ハーフエステル)としては、上記の非対称性芳香族テトラカルボン酸のジエステルを挙げることができ、具体的には、上記非対称性芳香族テトラカルボン酸の4個のカルボキシル基のうち2個のカルボキシル基がエステル化されており、かつ芳香環上の隣接する2個のカルボキシル基の一方がエステル化された化合物が挙げられる。
上記非対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステルにおける2個のエステルとしては、ジ低級アルキルエステル、好ましくはジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル等のC1-3アルキルエステル(特に、ジメチルエステル)が挙げられる。
上記非対称性芳香族テトラカルボン酸のジエステルのうち、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジメチルエステル、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジエチルエステルが好ましく、特に、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジメチルエステルが好ましく使用される。
なお、上記非対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステルは、市販又は公知の方法により製造される。例えば、対応する非対称性芳香族テトラカルボン酸二無水物1に対し、対応するアルコール(低級アルコール、好ましくはC1-3アルコール等)2(モル比)を反応させて容易に製造することができる。これにより、原料の酸無水物がアルコールと反応して開環して、芳香環上の隣接する炭素上にそれぞれエステル基とカルボキシル基を有するジエステル(ハーフエステル)が製造される。
次に、本発明で用いられる対称性芳香族テトラカルボン酸のジエステルについて、以下説明する。
ここで、対称性芳香族テトラカルボン酸とは、単環若しくは多環の芳香環(ベンゼン核、ナフタレン核、ビフェニル核、アントラセン核等)に4個のカルボキシル基が点対称な位置に結合した化合物、或いは2個の単環芳香環(ベンゼン核等)が−CO−、−O−、−CH2−、−SO2−等の基又は単結合で架橋された化合物に4個のカルボキシル基が点対称な位置に結合した化合物が挙げられる。
対称性芳香族テトラカルボン酸の具体例としては、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸等が挙げられる。
本発明で用いられる対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステル(ハーフエステル)としては、上記の対称性芳香族テトラカルボン酸のジエステル(ハーフエステル)を挙げることができ、具体的には、上記対称性芳香族テトラカルボン酸の4個のカルボキシル基のうち2個のカルボキシル基がエステル化されており、かつ芳香環上の隣接する2個のカルボキシル基の一方がエステル化された化合物が挙げられる。
上記対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステルにおける2個のエステルとしては、ジ低級アルキルエステル、好ましくはジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル等のC1-3アルキルエステル(特に、ジメチルエステル)が挙げられる。
上記対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステルのうち、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジメチルエステル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジエチルエステル、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジメチルエステル、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジエチルエステルが好ましく、特に、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジメチルエステルが好ましく使用される。
なお、上記対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステルは、市販又は公知の方法により製造することができる。例えば、対応する対称性芳香族テトラカルボン酸二無水物1に対し、対応するアルコール(低級アルコール、好ましくはC1-3アルコール等)2(モル比)を反応させる等の公知の方法により容易に製造することができる。これにより、原料の酸無水物がアルコールと反応して開環して、芳香環上の隣接する炭素上にそれぞれエステル基とカルボキシル基を有するジエステル(ハーフエステル)が製造される。
非対称性及び対称性の芳香族テトラカルボン酸ジエステルの混合比は、非対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステルが10〜50モル%(好ましくは20〜40モル%)程度であり、対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステルが90〜50モル%(好ましくは80〜60モル%)程度で特定される。特に、非対称性及テトラカルボン酸ジエステルを20〜30モル%程度、対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステルを70〜80モル%程度用いるのが好適である。
なお、前記の対称性及び非対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステルを配合することを必須とするのは、次の理由による。対称性の芳香族テトラカルボン酸ジエステルのみでは、ポリイミドフイルムが結晶性を発現するため加熱処理中に被膜が粉化してしまいフイルム化することが出来ない。一方、非対称性の芳香族テトラカルボン酸誘導体のみでは、無端管状PIフイルムとして成形はされるが、得られた該フイルムの降伏強度と弾性率が弱く、回転ベルトとして使用した場合、駆動での応答性が悪いだけでなく、初期の段階でベルト伸びが発生してしまうなどの問題がある。
これに対し、混合芳香族テトラカルボン酸ジエステルを使用すると、極めて高い製膜性(成形性)が可能であり、しかも高い降伏強度と弾性率を有する半導電性の無端管状PIフイルムが得られる。
また、非対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステルを添加することによりポリアミド酸分子が曲がって、フレキシブル性が生まれると考えられる。
そして、前記の対称性と非対称性の芳香族テトラカルボン酸誘導体の共存効果は、両者が前記に示した混合比の場合に最も有効に発揮される。
(2)芳香族ジアミン
芳香族ジアミンとしては、1つの芳香環上に2個のアミノ基を有する化合物、又は2つ以上の芳香環(ベンゼン核等)が−O−、−S−、−CO−、−CH2−、−SO−、−SO2−等の基若しくは単結合で架橋された2個のアミノ基を有する化合物が挙げられる。具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’―ジアミノジフェニルエーテル、4,4’―ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’―ジアミノジフェニルカルボニル、4,4’―ジアミノジフェニルメタン、1,4―ビス(4―アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。中でも、4,4’―ジアミノジフェニルエーテルが特に好ましい。これらの芳香族ジアミンを用いることにより、反応がより円滑に進行すると共に、より強靭かつ高い耐熱性のフイルムを製造することができるからである。
(3)ナイロン塩型モノマー溶液
上記の2種以上の芳香族テトラカルボン酸ジエステルと芳香族ジアミンの略等モル量を有機極性溶媒中に均一に溶解して、ナイロン塩型モノマー溶液が調製される。なお、両成分を有機極性溶媒に均一に溶解させる場合に、必要に応じ加熱(例えば、40〜70℃程度)してもよい。両性分は、撹拌等の公知の混合方法を用いて有機極性溶媒に溶解させればよい。
用いる有機極性溶媒としては、非プロトン系有機極性溶媒が好ましく、例えばN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と呼ぶ。)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用される。これらのうちの1種又は2種以上の混合溶媒であってもよい。特に、NMPが好ましい。有機極性溶媒の使用量は、原料の2種以上の芳香族テトラカルボン酸ジエステルと芳香族ジアミンの合計量100重量部に対し、100〜300重量部程度(好ましくは、120〜200重量部程度)になるように決めればよい。
上記のナイロン塩型モノマー溶液は、例えば、有機極性溶媒中で芳香族テトラカルボン酸ジエステルのカルボン酸イオンと芳香族ジアミンのアンモニウムイオンのイオン対が、実質的モノマー状態をとっていると考えられる(例えば下記式を参照)。また、実質的モノマー状態であるため上記の有機極性溶媒に極めて溶解しやすく、使用する溶媒の量を極力低減できるというメリットがある。
Figure 0004803963
(式中、Arは芳香族テトラカルボン酸から2つのカルボキシル基と2つのエステル基を除いた4価の基、Ar’は芳香族ジアミンから2つのアミノ基を除いた2価の基、Rはアルキル基を表す。)
(4)高分子量ポリイミド前駆体溶液又は高分子量ポリアミドイミド溶液
高分子量ポリイミド前駆体溶液としては、数平均分子量10000 以上のポリアミック酸溶液が用いられ、高分子量ポリアミドイミド溶液としては、数平均分子量10000 以上のポリアミドイミド溶液が用いられる。なお、本明細書における数平均分子量は、GPC法(溶媒:NMP、ポリエチレンオキサイド換算)により測定した値である。
ポリアミック酸溶液
数平均分子量が10000 以上のポリアミック酸溶液は、例えば、有機極性溶媒中、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とジアミノジフェニルエーテル成分とを出発原料に用いて公知の方法により製造される。有機極性溶媒は、上記ナイロン塩型モノマー溶液で用いられる有機極性溶媒を用いることができる。
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
特に、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物中に、非対称の2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が15〜50モル%程度(好ましくは、20〜30モル%程度)含まれていることが好ましい。非対称のビフェニルテトラカルボン酸二無水物を一定量含有させることにより、得られるポリイミドの引張伸度(靭性)が向上するからである。
ジアミノジフェニルエーテル成分としては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とジアミノジフェニルエーテル成分の配合量は、略等モル量であればよい。両者の重縮合反応は、公知の方法を採用することができ、例えば、ジアミノジフェニルエーテル成分を含む溶液に、室温(15〜30℃程度)でビフェニルテトラカルボン酸成分を添加しアミド化させてポリアミック酸溶液を調製する方法が挙げられる。得られるポリアミック酸の数平均分子量は、10000以上であり、好ましくは12000〜20000である。
ポリアミドイミド溶液
また、数平均分子量10000 以上のポリアミドイミド溶液は、例えば、有機極性溶媒中、トリメリット酸無水物とベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物からなる酸無水物と芳香族イソシアネートとの縮重合等の公知の反応によって製造される。有機極性溶媒は、上記ナイロン塩型モノマー溶液で用いられる有機極性溶媒を用いることができる。
酸無水物中、トリメリット酸無水物が70〜95モル%程度、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物が5〜30モル%程度であればよい。
芳香族イソシアネートとしては、例えば、ビトリレンジイソシアネート、3,3'-ジフェニルスルホンジイソシアネート、イソホロンジシソシアネート、1,4−ジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m-キシレンジシソシアネート、p-キシレンジシソシアネート、1,4−シクロへキシレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
酸成分中のカルボキシル基及び酸無水物基の総数と、芳香族イソシアネート基の総数が略等量となるように用いれば良い。
ポリアミドイミドの数平均分子量は、10000以上であり、好ましくは 15000〜20000程度である。
(5)混合溶液
上記のナイロン塩型モノマー溶液と、高分子量ポリイミド前駆体溶液又は高分子量ポリアミドイミド溶液とを混合することにより、混合溶液が調製される。この混合は、プロペラ式攪拌機、マグネチックスターラー、ポットミル等の公知の方法を採用することができる。
両者の混合量(比)は、ナイロン塩型モノマー溶液中の不揮発分重量100重量部に対して、高分子量ポリイミド前駆体溶液(特に、数平均分子量が10000以上のポリアミック酸溶液)、又は高分子量ポリアミドイミド溶液(数平均分子量が10000以上のポリアミドイミド溶液)の不揮発分重量が10〜50重量部程度(好ましくは、20〜30重量部程度)となる範囲が好ましい。なお、本明細書で用いる「不揮発分重量」とは、実施例1に記載の方法により測定された量を意味する。
なお、高分子量ポリイミド前駆体溶液又は高分子量ポリアミドイミド溶液の不揮発分重量が、ナイロン塩型モノマーの不揮発分重量に対して10重量部未満では本発明の効果が達成されにくく、また50重量部を超えた溶液にカーボンブラックを添加すると、粘度の増加率が顕著に高くなり、カーボンブラックの粉砕が困難となり、結果的に有機極性溶媒を多量に添加することが必要となり、生産効率が悪くなる。
(6)半導電性PI前駆体組成物
続いて、該混合溶液に導電性CB粉体を均一に分散させて、半導電性PI前駆体組成物が調製される。
電気抵抗特性付与のためにCB粉体が使用される理由は、(他の一般に知られている金属や金属酸化物の導電材と比較して)調製されたモノマー混合溶液との混合分散性と安定性(混合分散後の経時変化)に優れ、且つ重縮合反応への悪影響がないことによる。
このCB粉体は、その製造原料(天然ガス、アセチレンガス、コ−ルタ−ル等)と製造条件(燃焼条件)とによって種々の物性(電気抵抗、揮発分、比表面積、粒径、PH値、DBP吸油量等)を有したものがある。可能なかぎり少量の混合分散でもって、所望する電気抵抗がバラツクこともなく、安定して得られ易いものを選ぶのが良い。
この導電性CB粉体は、通常平均粒子径が15 〜65nm程度であり、特にトナー複写機、カラー複写機、電子写真方式等の中間転写ベルト用フイルム用途に用いる場合、平均粒子径20〜40nm程度のものが好適である。
ケッチェンブラックやアセチレンブラックなどの導電指標の高いものは、2次凝集(ストラクチャー)が発生し易く、導電性の連鎖が起こりやすく半導電領域でのコントロールが困難である。そこで、ストラクチャー形成しにくい酸性カーボンブラックを用いることが有効である。
例えば、チャンネルブラック、酸化処理したファーネスブラック等が挙げられる。具体的には、デグサ社製のスペシャルブラック4(PH3、揮発分14%、粒子径25nm)やスペシャルブラック5(PH3、揮発分15%、粒子径20nm)などが例示される。
CB粉体の混合方法は、CB粉体が混合溶液C中に均一に混合、分散される方法であれば特に制限はない。例えば、ボールミル、サンドミル、超音波ミル等が用いられる。
添加されるCB粉体の量は、1)ナイロン塩型モノマーの原料である芳香族テトラカルボン酸成分及び有機ジアミン、と2)高分子量ポリイミド前駆体の原料である酸無水物及びジアミンとの合計量100重量部に対し、5〜40重量部程度(好ましくは10〜30重量部程度)を配合するのが好ましい。ここでCB粉体を上記の範囲で用いるのは、フイルムに半導電領域にある体積抵抗率(VR)及び表面抵抗率(SR)を付与するためである。なお、下限が5重量部以上であるのは十分な導電性を得るためにはこの程度の量が必要であるためであり、上限が40重量部以下であるのは、より低い抵抗を発現するとともに、成形性を維持しフイルム自身の物性の低下を防ぐためである。
半導電性PI前駆体組成物における不揮発分の濃度は、20〜60重量%程度であり、該不揮発分中のCB粉体の濃度は5〜30重量%程度(好ましくは9〜23重量%程度)含有する。なお、本明細書で用いる「不揮発分濃度」とは、実施例1に記載の方法により測定された濃度を意味する。
なお、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、上記組成物中にイミダゾール系化合物(2-メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2-メチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール)、界面活性剤(フッ素系界面活性剤等)等の添加剤を加えてもよい。
かくしてCB粉体が均一に分散された成形用の半導電性PI前駆体組成物が製造される。
本発明の半導電性PI前駆体組成物では、高分子量ポリイミド前駆体溶液又は高分子量ポリアミドイミド溶液を、ナイロン塩型モノマーに混合することで、カーボンブラックが均一分散した状態の貯蔵安定性が格段に向上する。しかも、これを用いた半導電性PI前駆体組成物を回転成形して得られる導電性ポリイミド系管状物は、その厚み方向に極めて安定かつ均質な電気抵抗率を有する導電性が付与される。この原因は定かでないが、ポリイミド系前駆体組成物に比較的に高い数平均分子量を持ったポリマーが存在することにより、このポリマー成分とカーボンブラックの物理的な絡まりや粘性によってカーボンブラックの凝集を抑えたためと思われる。また、回転成形でのカーボンブラック粒子が受ける遠心力の影響をポリマーの粘性によって緩和されるだけでなく、溶媒揮発における温度対流や蒸発対流の影響も緩和できると思われる。さらに、加熱によるポリイミド化反応速度を緩やかにする効果もあると考えられる。
II.半導電性ポリイミド系管状物
次に、前記調製された半導電性PI前駆体組成物を使った半導電性PI管状物の成形手段について説明する。
この成形手段は、回転ドラムを使う回転成形方法が採用される。まず半導電性PI前駆体組成物を回転ドラムの内面に注入し、内面全体に均一に流延する。
注入・流延の方法は、例えば停止している回転ドラムに、最終フイルム厚さを得るに相当する量の半導電性PI前駆体組成物を注入した後、遠心力が働く速度にまで徐々に回転速度を上げる。遠心力でもって内面全体に均一に流延する。或いは注入・流延は遠心力を使わなくてもできる。例えば、横長のスリット状のノズルを回転ドラム内面に配置し、該ドラムをゆっくりと回転しつつ、(その回転速度よりも速い速度で)該ノズルも回転する。そして成形用の半導電性PI前駆体組成物を該ノズルから該ドラム内面に向って全体に均一に噴射する方法である。
尚、いずれの方法も回転ドラムは、内面が鏡面仕上げされ、両端縁には、液モレ防止のためのバリヤーが周設される。該ドラムは、回転ローラ上に載置し、該ローラの回転により間接的に回転が行われる。
また加熱は、該ドラムの周囲に例えば遠赤外線ヒータ等の熱源が配置され外側からの間接加熱が行われる。また該ドラムの大きさは、所望する半導電管状PIフイルムの大きさにより決まる。
加熱は、ドラム内面を徐々に昇温し、まず100〜190℃程度、好ましくは110℃〜130℃程度に到達せしめる(第1加熱段階)。昇温速度は、例えば、1〜2℃/min程度であればよい。上記の温度で1〜3時間維持し、およそ半分以上の溶剤を揮発させて自己支持性のある管状フイルムを成形する。イミド化を行うためには280℃以上の温度まで達する必要があるが、最初からこのような高温で加熱するとポリイミドが高い結晶化を発現し、CBの分散状態に影響を与えるだけでなく、強靭な被膜が形成されないなどの問題がある。そのため、第1加熱段階として、せいぜい上限温度を190℃程度に押え、この温度で重縮合反応を終了させて強靭な管状PIフイルムを得る。
この段階が終了したら次に第2段階加熱としてイミド化を完結するため加熱を行うが、その温度は280〜400℃程度(好ましくは300〜380℃程度)である。この場合も、第1段階加熱温度から一挙にこの温度に到達するのではなく、徐々に昇温して、その温度に達するようにするのが良い。
なお、第2段階加熱は、無端管状フイルムを回転ドラムの内面に付着したまま行っても良いし、第1加熱段階を終わったら、回転ドラムから無端管状フイルムを剥離し、取出して別途イミド化のための加熱手段に供して、280〜400℃に加熱してもよい。このイミド化の所用時間は、通常約2〜3時間程度である。従って、第1及び第2加熱段階の全工程の所要時間は、通常4〜7時間程度となる。
かくして本発明の半導電性PI管状物(フイルム)が製造される。このフイルムの厚みは特に限定はないが、通常30〜200μm程度、好ましくは50〜120μm程度である。特に、電子写真方式の中間転写ベルトとして用いる場合は、70〜100μm程度が好ましい。
このフイルムの半導電性は、体積抵抗率(Ω・cm)(以下、「VR」と呼ぶ。)と表面抵抗率(Ω/□)(以下、「SR」と呼ぶ。)との両立によって決まる電気抵抗特性であり、この特性は、CB粉体の混合分散により付与される。そしてこの抵抗率の範囲は、基本的には該CB粉体の混合量によって自由に変えられる。本発明のフイルムにおける抵抗率の範囲としては、VR:102〜1014、SR:103〜1015であり、好ましい範囲としては、VR:106〜1013、SR:107〜1014が例示できる。これらの抵抗率の範囲は、上述のCB粉体の配合量を採用することにより容易に達成することができる。なお、本発明のフイルム中におけるCBの含有量は、通常5〜30重量%程度、好ましくは9〜23重量%程度となる。
本発明の半導電性PIフイルムは、極めて均質な電気抵抗率を有している。すなわち、本発明の半導電性PIフイルムは、表面抵抗率SR及び体積抵抗率VRの対数換算値のバラツキが小さいという特徴を有し、それぞれフイルム内全測定点の対数換算値の標準偏差が0.2以内、好ましくは0.15以内である。また、フイルム表面と裏面の表面抵抗率(対数換算値)の差が小さいという特徴を有し、その差は0.4以内、好ましくは0.2以内である。さらに、表面抵抗率の対数換算値LogSRから体積抵抗率の対数換算値LogVRを引いた値が、1.0〜3.0、好ましくは1.5〜3.0と高い値に維持できるという特徴を備えている。
本発明のPIフイルムが上記の優れた電気的特性を有するのは、高分子量ポリイミド前駆体又は高分子量ポリアミドイミド溶液を混合することで、その高分子鎖の絡み合い構造にCBが物理的に均一に取り込まれるため、フイルム製造工程における溶媒蒸発やナイロン塩型モノマーの高分子量化などの影響を受けにくく、前駆体組成物溶液で達成された均質なCB分散状態のまま、半導電性ポリイミド系管状物をえることができるからであると考えられる。
本発明のPIフイルムはその優れた電気抵抗特性等の機能によって、その用途は多岐にわたる。例えば、帯電特性を必要とする重要な用途として、カラー複写機、カラープリンター等の電子写真方式の中間転写ベルト等が挙げられる。該ベルトとして必要な半導電性(抵抗率)は、例えばVR109〜1012、SR1010〜1013であり、本発明の半導電性無端管状PIフイルムを好適に用いることができる。
本発明の半導電性ポリイミド系管状物は、ナイロン塩型モノマー溶液と高分子量ポリイミド前駆体溶液又は高分子量ポリアミドイミド溶液からなる混合溶液を採用し、これにカーボンブラックを均一分散させてなる半導電性ポリイミド系前駆体組成物を成形原料として用いているため、均質な電気抵抗率を有している。すなわち、本発明の半導電性ポリイミド系管状物は、表面抵抗率及び体積抵抗率のバラツキが小さく、またフイルム表面と裏面の表面抵抗率(対数換算値)の差が小さいという優れた特性を備えている。すなわち、例えば転写ベルト等として使用した場合、電荷の徐電、帯電を適切に行うことができ、優れた画像処理が可能となる。
このようにして得られる本発明の半導電性ポリイミド系管状物は、カラーの電子写真方式等の中間転写ベルトとしてより好適に用いられる。
次に本発明を、比較例と共に実施例によって更に詳述する。なお、以下、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を「a-BPDA」と、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を「s-BPDA」と表記する。また、数平均分子量はGPC法(溶媒:NMP)により測定した。
実施例1
a-BPDAを14gとs-BPDAを56g(20モル%:80モル%)に、メタノール22.8g、N-メチル-2-ピロリドン160gを投入し、バス温度70℃にて窒素流通下反応させた。次に、バス温度65℃まで冷却後、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を47.6g投入し、ゆっくり撹拌してナイロン塩型モノマー溶液300.4gを得た。この溶液は粘度;1.8ポイズ、不揮発分濃度36.3重量%であった。
次に、窒素流通下のN -メチル-2-ピロリドン488gにODAを 47.6gを加え、50℃に保温、撹拌し完全に溶解させた。この溶液にa-BPDA:35gとs-BPDA:35gをブレンドした粉体を除々に添加し、ポリアミック酸溶液605.6gを得た。このポリアミック酸溶液の数平均分子量;16000、粘度;30ポイズ、不揮発分濃度18.0重量%であった。
上記のナイロン塩型モノマー溶液100gとポリアミック酸溶液80gをブレンドしたポリイミド系前駆体溶液180gを作製した。粘度13ポイズ、不揮発分濃度28.2重量%であった。
この前駆体溶液150gに酸性カーボン(pH3.0):7.5gとN-メチル-2-ピロリドン16.7gを加えて、ボールミルにてカーボンブラックの均一分散を行った。このマスターバッチ溶液は不揮発分濃度28.6重量%、該不揮発分中のCB濃度は15.1重量%であり、カーボンブラックの平均粒径は0.28μm、最大粒径は0.58μmであった。また、10日後のカーボンブラックの平均粒径は0.28μm、最大粒径は0.76μmとほとんど変化しなかった。
なお、本明細書における「不揮発分濃度」とは次のように算出された値である。試料(ナイロン塩型モノマー溶液等)を金属カップ等の耐熱性容器で精秤しこの時の試料の重量をAgとする。試料を入れた耐熱性容器を電気オーブンに入れて、120℃×12分、180℃×12分、260℃×30分、及び300℃×30分で順次昇温しながら加熱、乾燥し、得られる固形分の重量(不揮発分重量)をBgとする。同一試料について5個のサンプルのA及びBの値を測定し(n=5)、次式(I)にあてはめて不揮発分濃度を求めた。その5個のサンプルの平均値を、本発明における不揮発分濃度として採用した。
不揮発分濃度=B/A×100(%) (I)
実施例2
a-BPDAを35gとs-BPDAを35g(50モル%:50モル%)に、メタノール22.8g、N-メチル-2-ピロリドン160gを投入し、バス温度80℃にて窒素流通下反応させた。次に、バス温度65℃まで冷却後、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を47.6g投入し、ゆっくり撹拌してナイロン塩型モノマー溶液300.4gを得た。この溶液は粘度;1.8ポイズ、不揮発分濃度36.3重量%であった。
次に、窒素流通下のN -メチル-2-ピロリドン 488gにODAを 47.6gを加え、50℃に保温、撹拌し完全に溶解させた。この溶液にa-BPDA:70gを除々に添加し、ポリアミック酸溶液605.6gを得た。このポリアミック酸溶液の数平均分子量;12000、粘度; 12ポイズ、不揮発分濃度18.0重量%であった。
上記のナイロン塩型モノマー溶液100gとポリアミック酸溶液80gをブレンドしたポリイミド系前駆体溶液180gを作製した。粘度5.2ポイズ、不揮発分濃度 28.2重量%であった。
この前駆体溶液150gに酸性カーボン(pH3.0):7.5gとN-メチル-2-ピロリドン16.7gを加えて、ボールミルにてカーボンブラックの均一分散を行った。このマスターバッチ溶液は不揮発分濃度28.6重量%、該不揮発分中のCB濃度は15.1重量%であり、カーボンブラックの平均粒径は0.31μm、最大粒径は0.77μmであった。また、10日後のカーボンブラックの平均流径は0.31μm、最大粒径は0.88μmとほとんど変化しなかった。
実施例3
a-BPDAを21gとs-BPDAを49g(30モル%:70モル%)に、メタノール22.8g、N-メチル-2-ピロリドン250gを投入し、バス温度80℃にて窒素流通下反応させた。次に、バス温度65℃まで冷却後、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を47.6g投入し、ゆっくり撹拌してナイロン塩型モノマー溶液390.4gを得た。この溶液は粘度;0.7ポイズ、不揮発分濃度27.9重量%であった。
このナイロン塩型モノマー200gにポリアミドイミド溶液(バイロマックスHR-16NN、東洋紡績株式会社製)(数平均分子量21000、固形分14重量%、粘度500ポイズ)110gをブレンドしたポリイミド系前駆体溶液310gを作製した。粘度18ポイズ、不揮発分濃度23.0重量%であった。
この前駆体溶液260gに酸性カーボン(pH3.0):10.9gとN-メチル-2-ピロリドン25.2gを加えて、ボールミルにてカーボンブラックの均一分散を行った。このマスターバッチ溶液は不揮発分濃度 23.9重量%、該不揮発分中のカーボンブラック濃度は15.4重量%であり、カーボンブラックの平均粒径は0.215μm、最大粒径は0.51μmであった。また、10日後のカーボンブラックの平均粒径は0.218μm、最大粒径は0.58μmとほとんど変化しなかった。
比較例1
実施例1で作製したナイロン塩型モノマー200gに酸性カーボン(pH3.0)13.5gと有機溶媒(NMP)120gを添加して、ボールミルにて主分散を行った。この溶液は粘度5ポイズ、不揮発分濃度25.8重量%、該不揮発分中のCB濃度15.7重量%であり、カーボンブラックの平均粒径は0.39μm、最大粒径は2.26μmであった。さらに、10日後のカーボンブラックの平均流径は0.79μm、最大粒径は7.70μmであり、カーボンブラックの凝集が確認された。
比較例2
窒素流通下のN -メチル-2-ピロリドン450gにODAを 47.6gを加え、50℃に保温、撹拌し完全に溶解させた。この溶液にs-BPDA:70gを除々に添加し、ポリアミック酸溶液567.6gを得た。このポリアミック酸溶液の重量平均分子量;5000、粘度;6.6ポイズ、不揮発分濃度19.2重量%であった。この溶液80gと実施例2で作製したナイロン塩型モノマー100gをブレンドしたポリイミド系前駆体溶液180gを作製し、酸性カーボン(pH3.0)9.5gと有機溶媒(NMP)120gを添加して、ボールミルにて主分散を行った。この溶液は粘度6ポイズ、不揮発分濃度19.8重量%、該不揮発分中のCB濃度15.5重量%であり、カーボンブラックの平均粒径は0.26μm、最大粒径は0.87μmであった。さらに、10日後のカーボンブラックの平均流径は0.77μm、最大粒径は5.10μmであり、カーボンブラックの凝集が確認された
実施例4(回転成形法によるポリイミド管状体の作製)
外径300mm、内径270mm、長さ500mmの円筒状金型を、回転速度100rpm(10.5rad/s)で回転させながら、その円筒状金型の内面に実施例1、2、3叉は比較例1、2の溶液を均一に幅480mmで塗布した。塗布厚さは不揮発分濃度から算出し、ポリイミドベルト厚さが100μmになるよう決定した。溶剤の揮発は60分間で110℃に昇温し、その後110℃で120分間保持して溶媒揮発を行い自己支持性のある管状物を作製した。
次に、この管状物を円筒状金型の内面に付着したまま高温加熱炉に投入し、120分間で320℃に昇温し、320℃で60分間高温加熱することでポリイミド転化した。その後、常温まで冷却して金型よりポリイミド系管状物を取り出した。管状物の表面状態は、目視にて判定した。
また、表面抵抗率(SR)及び体積抵抗率(VR)の測定は、得られたポリイミド系管状物を長さ400mmにカットしたものをサンプルとして、三菱化学株式会社製の抵抗測定器“ハイレスタIP・URプロ−ブ”を使って、幅方向に等ピッチで3カ所と縦(周)方向に4カ所の合計12ヶ所について各々測定し、全体の平均値で示した。
体積抵抗率(VR)は電圧100V印加の下10秒経過後に、表面抵抗率(SR)は電圧500V印加の下10秒経過後に測定した。
測定した結果を表1にまとめた。表1中の表面抵抗率、体積抵抗率の平均、標準偏差は、いずれも対数換算値で示される。なお、管状物中のCB含有量及び該管状物の厚さもあわせて表1に示す。
Figure 0004803963
表1によれば、実施例の管状物では、比較例に対し、表面抵抗率及び体積抵抗率の標準偏差が非常に小さい、すなわちバラツキが小さいことが分かった。
また、実施例の管状物では、比較例に対し、管状物表面側及び裏面側の表面抵抗率(対数換算値)の差が極めて小さく、電子写真方式の転写ベルトとして好ましい特性を有している。
さらに、一般に成形中の加熱昇温速度を早くすると、表面抵抗率の対数換算値LogSRから体積抵抗率の対数換算値LogVRを引いた値(Log(SR/VR))が低くなるため、転写ベルトとして使用した場合、電荷の除電、帯電が適切に行えず、画像不良の原因となる問題があった。しかし、本発明の半導電性PI前駆体組成物を用いることによりこの値を高い値(1.0〜2.0)に維持できることが分かった。
これに対し、比較例1、2は管状物の表面抵抗率が裏面抵抗率より小さい値であり、管状物の厚み方向にカーボンブラックの濃度勾配が発生していると考えられる。その結果、体積抵抗率の値が高く、バラツキも大きくなっていることがわかる。

Claims (9)

  1. 有機極性溶媒に2種以上の芳香族テトラカルボン酸ジエステルと芳香族ジアミンとの略等モル量を溶解したナイロン塩型モノマー溶液に、数平均分子量10000〜20000のポリアミック酸溶液又は数平均分子量10000〜21000のポリアミドイミド溶液を混合して混合溶液を調製し、該混合溶液にカーボンブラックを均一分散させてなる半導電性ポリイミド系前駆体組成物。
  2. 2種以上の芳香族テトラカルボン酸ジエステルが、非対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステル10〜50モル%と対称性芳香族テトラカルボン酸ジエステル90〜50モル%とからなる混合物である請求項1に記載の半導電性ポリイミド系前駆体組成物。
  3. 2種以上の芳香族テトラカルボン酸ジエステルが、非対称性の2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジエステル10〜50モル%と対称性の3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジエステル90〜50モル%とからなる混合物である請求項1又は2に記載の半導電性ポリイミド系前駆体組成物。
  4. 前記ナイロン塩型モノマー溶液中の不揮発分重量100重量部に対して、前記数平均分子量10000〜20000のポリアミック酸溶液又は数平均分子量10000〜21000のポリアミドイミド溶液の不揮発分重量が10〜50重量部である請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性ポリイミド系前駆体組成物。
  5. 前記数平均分子量10000〜20000のポリアミック酸溶液が、非対称性の2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を15〜50モル%含有するビフェニルテトラカルボン酸二無水物とジアミノジフェニルエーテルとの略等モル量を有機極性溶媒中で反応して製造される請求項1〜4のいずれかに記載の半導電性ポリイミド系前駆体組成物。
  6. 前記数平均分子量10000〜21000のポリアミドイミド溶液が、トリメリット酸無水物及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物からなる酸無水物と芳香族イソシアネートとの略等モル量を有機極性溶媒中で反応して製造される請求項1〜4のいずれかに記載の半導電性ポリイミド系前駆体組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の半導電性ポリイミド系前駆体組成物を回転成形法にて管状物に成形し、加熱処理してイミド化することを特徴とする半導電性ポリイミド系管状物の製造方法。
  8. 請求項7に記載の製造方法により製造される、表面抵抗率107〜1014Ω/□であり電子写真方式の中間転写ベルトに用いられる半導電性ポリイミド系管状物。
  9. 有機極性溶媒に2種以上の芳香族テトラカルボン酸ジエステルと芳香族ジアミンとの略等モル量を溶解したナイロン塩型モノマー溶液に、数平均分子量10000〜20000のポリアミック酸溶液又は数平均分子量10000〜21000のポリアミドイミド溶液を混合して混合溶液を調製し、該混合溶液にカーボンブラックを均一分散させることを特徴する半導電性ポリイミド系前駆体組成物の製造方法。
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