以下、図面を参照して本発明の発光素子アレイ、発光装置および画像形成装置について詳細に説明する。ここで、以下の各実施の形態では、発光素子アレイに用いられる発光サイリスタのカソードを共通の電極として接地した場合について例示している。発光サイリスタのアノードを共通の電極として接地する場合にも、発光サイリスタおよびダイオードの極性を反対にし、抵抗体に印加される電圧の正負を反対にし、発光サイリスタのゲート電極の導電型を反対にすれば、同様の論理回路が実現できる。
図1は、本発明の発光素子アレイの第1の実施の形態としての発光素子アレイチップ1を示す概略的な等価回路図である。
発光素子アレイチップ1は、k(記号kは、自然数)個の発光素子と、1個の第1スイッチ部と、n個の第2スイッチ部と、1本のセレクト信号伝送路CSLと、n本のゲート横配線GH1〜GHnとを含んで構成される。k個の発光素子は、それぞれ発光サイリスタから成る。第1スイッチ部は、発光サイリスタから成るクロック用サイリスタCLと、発光サイリスタから成るトリガ用サイリスタTRと第1プルアップ抵抗RQとを含む。n個の第2スイッチ部は、発光サイリスタから成るn個のスイッチ用サイリスタS1〜Snと、発光サイリスタから成るn個の選択用サイリスタU1〜Unと、n個の第2プルアップ抵抗RP1〜RPnとを含む。本実施の形態では、n=4である。以後、k個の発光素子をそれぞれ発光用サイリスタT1〜Tkと記載する場合がある。また複数の発光用サイリスタT1〜Tk、複数のスイッチ用サイリスタS1〜Sn、複数の選択用サイリスタU1〜Un、および複数の第2プルアップ抵抗RP1〜RPnを総称する場合または不特定のものを指す場合、それぞれ単に発光用サイリスタT、スイッチ用サイリスタS、選択用サイリスタUおよび第2プルアップ抵抗RPと記載する場合がある。本実施の形態では、第1プルアップ抵抗RQが前記第1抵抗体に対応し、第2プルアップ抵抗RPが前記第2抵抗体に対応し、セレクト信号伝送路CSLが前記第1選択信号伝送路に対応し、ゲート横配線GHが前記制御信号伝送路に対応する。
第1スイッチ部を構成するクロック用サイリスタCLは、アノードrがクロック信号入力用のクロック信号入力端子CLAに接続され、Nゲート電極vがセレクト信号伝送路CSLに接続され、カソードが共通の電極として接地される。Nゲート電極vを単にゲート電極vと記載する場合がある。また第1スイッチ部を構成するトリガ用サイリスタTRは、アノードqがトリガ信号出力用のトリガ信号出力端子TRAに接続され、Nゲート電極wがセレクト信号伝送路CSLに接続され、カソードが共通の電極として接地される。Nゲート電極wを単にゲート電極wと記載する場合がある。また第1スイッチ部を構成する第1プルアップ抵抗RQは、その一端がセレクト信号伝送路CSLに接続され、他端に正の電圧Vccが印加される。ここで、セレクト信号伝送路CSLは、前述した第1選択信号としてのセレクト信号の伝送路として用いられるものであり、トリガ信号入力端子CSGに接続される。トリガ信号入力端子CSGには、入力トリガ信号の入力用として用いられる。
第2スイッチ部を構成するスイッチ用サイリスタS1〜S4は、その動作を制御するための電極として、アノードc1〜c4およびNゲート電極d1〜d4が用いられる。スイッチ用サイリスタSのカソードは共通の電極として接地されている。アノードc1〜c4およびNゲート電極d1〜d4についても同様に、複数のものを総称する場合または不特定のものを指す場合に、単にアノードc、Nゲート電極dと記載する場合がある。また、Nゲート電極dを単にゲート電極dと記載する場合がある。また、第2スイッチ部を構成する選択用サイリスタU1〜U4は、その動作を制御するための電極として、アノードe1〜e4およびNゲート電極f1〜f4が用いられる。選択用サイリスタUのカソードは共通の電極として接地されている。アノードe1〜e4およびNゲート電極f1〜f4についても同様に、複数のものを総称する場合または不特定のものを指す場合に、単にアノードe、Nゲート電極fと記載する場合がある。また、Nゲート電極fを単にゲート電極fと記載する場合がある。
スイッチ用サイリスタS1〜S4のNゲート電極d1〜d4は、選択用サイリスタU1〜U4のアノードe1〜e4、第2プルアップ抵抗RP1〜RP4の一端およびゲート横配線GH1〜GH4とそれぞれ個別に接続される。相互に接続される素子の参照符号には互いに同じ番号を付して記載する。たとえば第1番目のスイッチ用サイリスタS1のNゲート電極d1は、第1番目の選択用サイリスタU1のアノードe1、第1番目の第2プルアップ抵抗RP1および第1番目のゲート横配線GH1と接続される。第i4(1≦i4≦n、ただしn=4)番目のスイッチ用サイリスタSi4のNゲート電極di4は、第i4番目の選択用サイリスタUi4のアノードei4、第2プルアップ抵抗RPi4およびゲート横配線GHi4と接続される。さらに、選択用サイリスタUのNゲート電極f1〜f4はセレクト信号伝送路CSLに接続されることで相互に電気的に接続されている。第2プルアップ抵抗RPの他端は、共通のセット信号が入力されるセット信号入力端子CSAに接続される。ゲート横配線GHは、スイッチ用サイリスタSのNゲート電極dから出力された制御信号が伝送される。
各スイッチ用サイリスタSのアノードc1〜c4は、各ゲート信号入力端子G1〜G4にそれぞれ個別に接続される。好ましい構成として、スイッチ用サイリスタSのアノードc1〜c4とゲート信号入力端子G1〜G4との間には電流制限抵抗RI1〜RI4がそれぞれ接続される。複数のゲート信号入力端子G1〜G4および電流制限抵抗RI1〜RI4を総称する場合または不特定のものを指す場合に、単にゲート信号入力端子Gおよび電流制限抵抗RIとそれぞれ記載する場合がある。本実施の形態では、ゲート信号が前記第2選択信号に対応し、電流制限抵抗RIが前記第3抵抗体に対応する。
発光素子を構成する発光用サイリスタT1〜Tkは、その動作を制御するための電極として、アノードa1〜akおよびNゲート電極b1〜bkが用いられる。各発光用サイリスタTのカソードは共通の電極として接地されている。アノードa1〜akおよびNゲート電極b1〜bkについても同様に、複数のものを総称する場合または不特定のものを指す場合に、単にアノードa、Nゲート電極bと記載する場合がある。また、Nゲート電極bを単にゲート電極bと記載する場合がある。
発光素子として用いられる発光用サイリスタTは、m個の発光素子ブロックB1〜Bmから構成され、1つの発光素子ブロックは、n個以下の発光用サイリスタTの群からなる。ここで、複数の発光素子ブロックB1〜Bmを総称する場合または不特定のものを指す場合に、単に発光素子ブロックBと記載する場合がある。1つの発光素子ブロックBを構成する発光用サイリスタTの数は、n以下である必要がある。本実施の形態ではn=4であり、すべての発光素子ブロックを構成する発光用サイリスタTの数をn(=4)に設定している。したがって、発光用サイリスタTの個数kと発光素子ブロックBの個数mとの関係は、k=4mとなる。また、発光用サイリスタTの配列方向に沿う一方から他方へ向かって、発光用サイリスタTに番号を第1番から第k番まで付し、各発光素子ブロックにも前記配列方向の前記一方から前記他方へ向かって第1番から第m番まで番号を付すと、第i5(1≦i5≦m)番目の発光素子ブロックBi5には、第4i5−3番目から第4i5番目の発光用サイリスタTが属する。
各発光素子ブロックB1〜Bmには、発光信号の入力用の発光信号入力端子A1〜Amが個別に設けられる。発光信号入力端子A1〜Amについて、複数のものを総称する場合または不特定のものをさす場合、単に発光信号入力端子Aと記載する場合がある。各発光素子ブロックBを構成する発光用サイリスタTは、アノードaが発光素子ブロックBごとに共通の発光信号入力端子Aに接続されることで相互に電気的に接続される。また、各発光素子ブロックBを構成する発光用サイリスタTのNゲート電極bはそれぞれ、異なるゲート横配線GHに接続される。本実施の形態では、発光用サイリスタTの配列方向に沿う一方から他方へ向かって、発光用サイリスタTに番号を第1番から第k番まで付し、前記配列方向に沿う前記一方から前記他方へ向かって、発光素子ブロックBに番号を第1番から第m番まで付し、ゲート横配線の配線順に第1番から第4番まで番号を付すと、第i6(1≦i6≦m)番目の発光素子ブロックBi6では、第4i6−3番目の発光用サイリス
タT4i6−3のゲート電極が1番目のゲート横配線GH1に接続され、第4i6−2番目の発光用サイリスタT4i6−2のゲート電極が2番目のゲート横配線GH2に接続され
、第4i6−1番目の発光用サイリスタT4i6−1のゲート電極が3番目のゲート横配線GH3に接続され、第4i6番目の発光用サイリスタT4i6のゲート電極が4番目のゲート横配線GH4にそれぞれ接続される。また、第i6(1≦i6≦m)番目の発光素子ブロックBi6に属する全ての発光用サイリスタTのアノードaが共通の発光信号入力端子Ai6に接続される。
次に、発光素子アレイチップ1に用いられる発光用サイリスタTの構成と動作について説明する。
一般に、発光サイリスタは、直接遷移形のP型半導体とN型半導体とを交互に積層したPNPN構造を有する半導体素子であり、逆阻止3端子サイリスタと同様な負性抵抗特性を有する。各半導体層をカソード側からアノード側へ順に第1半導体層(N型)、第2半導体層(P型)、第3半導体層(N型)、第4半導体層(P型)とすれば、Nゲート電極とは第3半導体層(N型)に設けられる制御用の電極のことであり、Pゲート電極とは第2半導体層(P型)に設けられる制御用の電極のことである。カソードを共通の電極として接地する場合はNゲート電極を用い、アノードを接地する場合はPゲート電極を用いる。いずれの導電型のゲート電極を用いるかは、アノードまたはカソードのどちらを共通の電極とするかによって決まるので、共通の電極が決まっている場合には、単にゲート電極と記載する場合がある。
図2は、発光用サイリスタTのアノード電圧とアノード電流との関係である順方向電圧−電流特性を示すグラフである。アノード電圧は、カソードの電位を0(零)ボルト(V)としたときのアノードの電位を表し、アノード電流は、アノードに流入する電流を表す。図2は、横軸をアノード電圧とし、縦軸をアノード電流としている。また、図2には負荷線70も示されている。発光用サイリスタTは、ゲート電極bに制御信号を与えることによってしきい電圧が低下するので、動作点が、順方向電圧−電流特性を表す特性曲線71と、負荷線70とが交わるオフ状態のq2点から、特性曲線71と負荷線70とが交わるオン状態のq1点へと遷移することで発光する。オン状態のq1点では、アノードとカソードとの間に主電流が流れる。
具体的に数値を使って、発光用サイリスタTの動作を説明する。ここでは、カソードの電位を0ボルト(V)として、アノード電圧がハイ(H)レベルのとき、アノードaに5Vの電位を与え、アノード電圧がロー(L)レベルのとき、アノードaに0Vの電位を与えるものとする。またゲート電極bの電圧がハイ(H)レベルのとき、ゲート電極bに5Vの電位を与え、ゲート電極bの電圧がロー(L)レベルのとき、ゲート電極bに0Vの電位を与えるものとする。発光用サイリスタTでは、アノード電圧がハイ(H)レベルのとき、発光用サイリスタTに発光信号が入力されるといい、ゲート電極bの電圧がロー(L)レベルとのき、発光用サイリスタTに制御信号が入力されるという。
まず、ゲート電極bの電圧がハイ(H)レベルのとき、ゲート電極bの電位は5Vとなるので、アノード電流を流すためには、ゲート電極bの電位の5Vよりも、第3半導体層(N型)および第4半導体層(P型)によって形成されるダイオードの順方向降下電圧(拡散電位)分だけ高い電位をアノードaに与える必要がある。順方向降下電圧は、発光サイリスタがGaAsまたはAlGaAsで作製される場合には約1.5Vである。したがって、アノード電圧をハイ(H)レベルにしても、発光用サイリスタTは、q2点のオフ状態となり発光しない。すなわち、発光信号が入力されても制御信号が入力されなければ、発光用サイリスタTは発光しない。次に、ゲート電極bの電圧がロー(L)レベルのとき、ゲート電極bの電位は0Vとなるので、アノード電流を流すためには、ゲート電極bの電位の0Vよりも、第3半導体層(N型)および第4半導体層(P型)によって形成されるダイオードの順方向降下電圧分だけ高い電位をアノードaに与える必要がある。したがって、アノード電圧をハイ(H)レベルにすれば、発光用サイリスタTは、q1点のオン状態となりアノード電流が流れ発光する。すなわち、発光信号とゲート信号が共に入力されているときに、発光用サイリスタTは発光する。
なお、スイッチ用サイリスタS、選択用サイリスタU、クロック用サイリスタCLおよびトリガ用サイリスタTRの構成およびその動作も、発光用サイリスタTの場合と同様に説明することができる。
次に、図1に示した発光素子アレイチップ1の概略的な等価回路図の動作を説明する。発光素子アレイチップ1の機能は、トリガ信号を転送する機能に関係する第1スイッチ部と、各発光素子アレイ内での時分割駆動と発光に関係する第2スイッチ部および発光用サイリスタTとに分けることができる。以下では、先ず第2スイッチ部と発光用サイリスタTの動作について、図3〜図5を参照して説明し、その次に第1スイッチ部の動作について、図6,図7を参照して説明する。
図3は、発光素子チップアレイL1を構成する各第2スイッチ部および発光用サイリスタTの動作を説明するために、図1に示した等価回路図のうちの一部である、発光用サイリスタT1、スイッチ用サイリスタS1、および選択用サイリスタU1と配線との接続を示したものである。図3と図1とで対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。ここで、図3では、発光信号入力端子A1と発光信号出力端子λ1との間、およびゲート信号入力端子G1とゲート信号出力端子μ1との間に、100Ωの大きさの負荷抵抗RL1,RL2を設けている。また、第2プルアップ抵抗RP1の大きさを2kΩに設定し、第2プルアップ抵抗RPの他端には、セット信号として5Vが入力される。なお、図1に示した電流制限抵抗RIはより好ましい構成として例示したものであるので、図3および後述する図5においては用いていない。電流制限抵抗RIの有無によらず、発光素子アレイチップ1の基本的動作は同じである。
図5は、本実施の形態の発光素子アレイチップ1における動作特性の測定結果の一例を示すグラフである。横軸は時間(単位;マイクロ秒(μs)/div)、縦軸は各端子の電位(単位;ボルト(V)/div)を示している。図3と図5との対応を示すと、図5で、太い実線はスイッチ用サイリスタS1のゲート電極d1の電位、細い実線はセレクト信号伝送路CSLの電位、太い破線はスイッチ用サイリスタS1のアノードc1の電位、細い破線は発光用サイリスタT1のアノードa1の電位をそれぞれ示す。ここで、測定は図3に示した第1番目の発光用サイリスタT1,スイッチ用サイリスタS1および選択用サイリスタU1について行っているが、他の第2番目以降の素子についても同様の結果が得られる。なお、端子および接地間の電圧を単に端子の電圧と記載する場合がある。この場合、端子の電位と端子の電圧とは同じ意味である。
図5に示した動作特性の測定では、発光信号出力端子λ1の電圧がハイ(H)レベルのとき、発光信号出力端子λ1は2.5Vの電圧を出力し、ロー(L)レベルのとき0Vの電圧を出力する。前述のように、発光信号出力端子λ1の電圧がハイ(H)レベルの場合に、発光用サイリスタTのアノードaに発光信号が与えられるという。また、ゲート信号出力端子μ1の電圧がハイ(H)レベルのとき、ゲート信号出力端子μ1は3.5Vの電位を出力し、ロー(L)レベルのとき0Vの電圧を出力する。ゲート信号出力端子μ1の電圧がハイ(H)レベルの場合に、スイッチ用サイリスタSのアノードcにゲート信号が与えられるという。セレクト信号伝送路CSLの電圧はハイ(H)レベルのとき、セレクト信号伝送路CSLに5Vの電位が与えられ、ロー(L)レベルのとき0Vの電位が与えられる。セレクト信号伝送路CSLの電圧がロー(L)レベルの場合に、セレクト信号がセレクト信号伝送路CSLを伝送して選択用サイリスタUのゲート電極fに与えられるという。また測定中においてセット信号として5Vの電圧を第2プルアップ抵抗RP1の他端と接地との間に印加している。他のパラメータである負荷抵抗RL1,RL2、および第2プルアップ抵抗RP1の大きさは、図3に示したものと同じに設定している。電流制限抵抗RIは用いていない。
まず、図5に示すtm1の時間帯では、スイッチ用サイリスタS1に接続されるゲート信号出力端子μ1の電圧をハイレベル(3.5V)に設定し、セレクト信号伝送路CSLの電圧をローレベル(0V)に設定し、発光用サイリスタT1に接続される発光信号出力端子λ1の電圧をハイレベル(2.5V)に設定する。
この場合、細い実線で示すようにセレクト信号伝送路CSLの電位は、ほぼ0Vであり、かつセット信号入力端子CSAは、5Vなので、選択用サイリスタU1は、オン状態である。もしスイッチ用サイリスタS1および発光用サイリスタT1がオフ状態であるとすると、ゲート電極d1の電位は選択用サイリスタUの拡散電位である約1.6Vを示すことになるが、t1の時間帯では、ハイレベル(3.5V)のゲート信号がスイッチ用サイリスタS1のアノードc1に与えられているため、スイッチ用サイリスタS1はオン状態に遷移する。この結果、太い実線で示されるゲート電極d1の電位はほぼ0Vを示す。このとき、スイッチ用サイリスタS1のゲート電極d1と、発光用サイリスタT1のゲート電極b1とは、ゲート横配線GH1で接続されているので、発光用サイリスタT1のゲート電極b1の電位もほぼ0Vを示すことになる。このことは、ローレベル(0V)の制御信号がスイッチ用サイリスタS1のゲート電極d1から発光用サイリスタT1のゲート電極b1へゲート横配線GH1を伝送して入力されたことを意味する。さらに、発光用サイリスタT1のアノードa1にもハイレベル(2.5V)の発光信号が与えられていて、この値はこの場合のしきい電圧である約1.5V(ゲート電極b1の電位である0Vに前述した順方向降下電圧の約1.5Vを加えた値)を超えているので、発光用サイリスタT1もオン状態に遷移して発光する。このように発光用サイリスタT1がオン状態の場合、細い破線で示される発光用サイリスタT1のアノードa1の電位は、発光用サイリスタTの駆動電圧レベルである約1.8Vを示している。ハイレベル(2.5V)の発光信号出力端子λ1の電圧との差は、発光用サイリスタTのアノードc1からカソードへ流れる主電流のために生じる負荷抵抗RL1における電圧降下の大きさに対応する。また、太い破線で示されるスイッチ用サイリスタS1のアノードc1の電位は、スイッチ用サイリスタS1がオン状態となったときの、スイッチ用サイリスタSの駆動電圧レベルである約2Vを示している。ハイレベル(3.5V)のゲート信号出力端子μ1の電圧との差は、負荷抵抗RL2における電圧降下分である。
次に、図5に示すtm2の時間帯では、スイッチ用サイリスタS1に接続されるゲート信号出力端子μ1の電圧をローレベル(0V)に設定し、セレクト信号伝送路CSLの電位をローレベル(0V)に設定し、発光用サイリスタT1に接続される発光信号出力端子λ1の電圧をハイレベル(2.5V)に設定する。
この場合も、細い実線で示すようにセレクト信号伝送路CSLの電位は、ほぼ0Vであるので、選択用サイリスタU1は順方向にバイアスされる。しかし、t1の時間帯と異なり、スイッチ用サイリスタS1のアノードc1に接続されるゲート信号出力端子μ1の電圧がローレベル(0V)であるので、太い破線で示されるスイッチ用サイリスタS1のアノードc1の電位は0Vであり、スイッチ用サイリスタS1はオフ状態である。したがって、太い破線で示されるスイッチ用サイリスタS1のゲート電極d1の電位は、選択用サイリスタUのオン状態の拡散電位である約1.6Vを示し、ゲート電極d1と接続された
発光用サイリスタT1のゲート電極b1の電位も約1.6Vになる。発光用サイリスタT1のアノードa1には、ハイレベル(2.5V)の発光信号が与えられているが、この場合の発光用サイリスタT1のしきい電圧である約3V(ゲート電極b1の電位である1.6Vに前述した順方向降下電圧の約1.5Vを加えた値)より低いためオフ状態となる。したがって、細い破線で示される発光用サイリスタT1のアノードa1の電位は、発光信号出力端子λ1の電圧である2.5Vを示している。
次に、図5に示すtm3の時間帯では、スイッチ用サイリスタS1に接続されるゲート信号出力端子μ1の電圧をハイレベル(3.5V)に設定し、セレクト信号伝送路CSLの電位をハイレベル(5V)に設定し、発光用サイリスタT1に接続される発光信号出力端子λ1の電圧をハイレベル(2.5V)に設定する。
この場合、細い実線で示すようにセレクト信号伝送路CSLの電位はほぼ5Vである。太い実線で示されるスイッチ用サイリスタS1のゲート電極d1の電位もほぼ5Vになるが、図5に示す実験結果ではCR時定数のために、tm3の時間帯において3〜5Vの電位を示している。スイッチ用サイリスタS1のアノードc1にはハイレベル(3.5V)のゲート信号が与えられているが、ゲート電極d1の電位が高いためにしきい電圧がゲート信号の電圧レベルより高くなり、スイッチ用サイリスタS1はオフ状態になる。したがって、太い破線で示されるスイッチ用サイリスタS1のアノードc1の電位は、ゲート信号出力端子μ1の電圧である3.5Vを示している。同様に、発光用サイリスタT1にはハイレベル(2.5V)の発光信号が与えられているが、スイッチ用サイリスタS1のゲート電極d1と接続されたゲート電極b1の電位が高いために、発光用サイリスタT1はオフ状態になる。したがって、細い破線で示される発光用サイリスタT1のアノードa1の電位は、発光信号出力端子λ1の電圧である2.5Vを示している。
最後に、図5に示すtm4の時間帯では、スイッチ用サイリスタS1に接続されるゲート信号出力端子μ1の電圧をローレベル(0V)に設定し、セレクト信号伝送路CSLの電位をハイレベル(5V)に設定し、発光用サイリスタT1に接続される発光信号出力端子λ1の電圧をハイレベル(2.5V)に設定する。
この場合、細い実線で示すようにセレクト信号伝送路CSLはほぼ5Vであり、太い実線で示されるスイッチ用サイリスタS1のゲート電極d1の電位もほぼ5Vを示す。また、スイッチ用サイリスタS1のアノードc1に接続されるゲート信号出力端子μ1の電圧がローレベル(0V)であるので、太い破線で示されるスイッチ用サイリスタS1のアノードc1の電位は0Vを示し、スイッチ用サイリスタS1はオフ状態である。一方、発光用サイリスタT1にはハイレベル(2.5V)の発光信号が与えられているが、スイッチ用サイリスタS1のゲート電極d1と接続されたゲート電極b1の電位が5Vと高いために、発光用サイリスタT1はオフ状態になる。したがって、細い破線で示される発光用サイリスタT1のアノードa1の電位は、発光信号出力端子λ1の電圧である2.5Vを示している。
以上のように、tm1の時間帯においては、セレクト信号伝送路CSLの電位がローレベル(0V)のときに、ゲート信号がスイッチ用サイリスタS1のアノードc1に与えられることで、スイッチ用サイリスタS1のゲート電極d1の電位がローレベル(0V)になる。発光用サイリスタT1のゲート電極b1はゲート横配線GH1によってスイッチ用サイリスタS1のゲート電極d1と接続されているので、発光用サイリスタT1のゲート電極b1の電位も0Vになる。そして、発光用サイリスタT1のアノードa1に発光信号が与えられると、発光用サイリスタT1を発光させることができる。
図4は、図3に示される等価回路図を論理回路図記号で表す論理回路図である。図3および図4に示す回路の真理値表を表1にまとめる。表1において出力がハイ(H)レベルのときに、発光用サイリスタT1が発光し、出力がロー(L)レベルのときには、発光用サイリスタT1は、消灯している。表1からわかるように、セレクト信号伝送路CSLの電位がロー(L)レベル、かつゲート信号入力端子G1がハイ(H)レベル、かつ発光信号入力端子A1がハイ(H)レベルのときにのみ発光用サイリスタT1を選択的に発光させることができる。
図1に示す発光素子アレイチップ1においても、同様のことが成立する。後述するように発光素子アレイチップ1の第1スイッチ部にクロック信号と入力トリガ信号が与えられると、セレクト信号伝送路CSLの電位がほぼ0Vになる。この状態がセレクト状態である。発光素子アレイチップ1の各スイッチ用サイリスタSのゲート電極dは、対応する個別の選択用サイリスタUを介して共通のセレクト信号伝送路CSLに接続されているので、共通のセレクト信号伝送路CSLからローレベルのセレクト信号が選択用サイリスタUのゲート電極fに入力されると、全てのスイッチ用サイリスタS1〜S4のゲート電極d1〜d4の電位が選択用サイリスタU1〜U4の拡散電位レベル(約1.6V)になる。このとき、第i7(1≦i7≦4)番目のゲート信号入力端子Gi7から第i7番目のスイッチ用サイリスタSi7のアノードci7にゲート信号が入力されると、その入力された第i7番目のスイッチ用サイリスタSi7がオン状態に遷移する。すると、第i7番目のスイッチ用サイリスタSi7のゲート電極di7の電圧がほぼ0Vになり、この結果、そのゲート電極di7に接続された第i7番目のゲート横配線GHi7、およびその第i7番目のゲート横配線に接続された発光用サイリスタTのゲート電極bの電圧がほぼ0Vになる。このことは、ローレベル(0V)の制御信号がスイッチ用サイリスタSi7のゲート電極di7から発光用サイリスタTのゲート電極bへゲート横配線GHi7を伝送して入力されたことを意味する。さらに第i7番目のゲート横配線GHi7に接続された発光用サイリスタTのアノードaに発光信号を与えることで、その発光用サイリスタTを選択的に発光させることができる。
以上のように、セレクト状態にある発光素子アレイチップ1でローレベル(ほぼ0V)のセレクト信号が選択用サイリスタUのゲート電極fに入力されると、スイッチ用サイリスタSのうち、ゲート信号がアノードcに入力されたスイッチ用サイリスタSはオン状態に遷移する。スイッチ用サイリスタSがオン状態に遷移するとそのゲート電極dの電位は0Vになり、スイッチ用サイリスタSとゲート横配線GHで接続された発光用サイリスタTのゲート電極bの電位も0になる。この状態で発光用サイリスタTのアノードaに発光信号が入力されると、その発光用サイリスタTはオン状態に遷移し発光する。発光素子アレイチップ1がセレクト状態にないときには、ゲート信号が発光素子アレイチップ1のスイッチ用サイリスタSのアノードcに入力されても、スイッチ用サイリスタSはオン状態に遷移することはない。したがって、そのスイッチ用サイリスタSにゲート横配線GHで接続された発光用サイリスタTのアノードaに発光信号を与えても、その発光用サイリスタTを発光させることはできない。このように、発光素子アレイチップ1の第1スイッチ部にクロック信号と入力トリガ信号を与えて、発光素子アレイチップ1をセレクト状態にすることによって、ゲート信号をスイッチ用サイリスタSから発光用サイリスタTに受け渡すか否かを制御することができることから、複数の発光素子アレイチップを用いた発光装置では、発光素子アレイチップ間で発光信号およびゲート信号を共用して時分割駆動を行うことができる。
また、図1に示した発光素子アレイチップ1においては、発光素子ブロックB内においてアノードaが共通の発光信号入力端子Aに接続されるため、発光素子アレイチップ1内においてもダイナミック駆動を実現できる。図1では、発光信号は発光素子ブロックBごとに設置された発光信号入力端子Aに入力される。発光信号は、選択された発光素子ブロックBのすべての発光用サイリスタTのアノードaに与えられるが、同じブロックに属する発光用サイリスタTは異なるゲート横配線GHに接続されているため、ゲート信号によって発光させる発光用サイリスタTを選択的に発光させることができる。
このようにすれば、複数の発光素子ブロックBにおいてゲート横配線GHを共用することができるため、複数の発光素子ブロック間で時分割駆動をすることができ、発光用サイリスタTの数が多くてもゲート横配線GHの数を減らすことができてチップ幅を縮小することができる。また、ゲート横配線GHの数が減るから、スイッチ用サイリスタSの数も少なくて済み構成を簡単にすることができる。
また、図1に示した発光素子アレイチップ1においては、好ましい構成として、スイッチ用サイリスタSのアノードc1,c2,c3,c4とゲート信号入力端子G1、G2、G3、G4との間には電流制限抵抗RI1〜RI4が接続される。発光素子アレイを用いて発光装置を構成する場合には、高速化の目的で、複数の発光素子アレイチップ1にクロック信号および入力トリガ信号を同時に与えて、複数の発光素子アレイチップ1を同時にセレクト状態にすることができる。このとき、セレクト状態にある複数の発光素子アレイチップ1間では、ゲート信号が共用されているので、複数のスイッチ用サイリスタSが同時期にスイッチングする。一般に発光サイリスタがスイッチングしてオン状態に遷移すると、アノードとカソードとの間に主電流が流れるので、ゲート信号供給用の駆動回路の出力電圧が低下する。したがって、複数のスイッチ用サイリスタSのアノードcに入力されるゲート信号のタイミングがずれる場合には、最初にゲート信号が入力されるスイッチ用サイリスタSがスイッチングして主電流が流れると、遅れてゲート信号が入力されるスイッチ用サイリスタSは、ゲート信号の電圧の不足のためにスイッチングしないことが起こりえる。そこで、各スイッチ用サイリスタSのアノードcに接続された電流制限抵抗RIを介してゲート信号を与えることで、駆動回路の出力電圧の低下を抑制し、複数のスイッチ用サイリスタを確実にスイッチングさせることができる。
また、図3および図5に示す前述の測定では、セット信号を5Vの定電圧としたが、実際に発光素子アレイチップ1を動作させるときには、セット信号を途切れさせてセット信号入力端子CSAに0Vを印加し、選択用サイリスタU1を確実にオフ状態にリセットしている。
次に、図1に示す発光素子アレイチップL1において、トリガ信号の転送に関連する第1スイッチ部の具体的構成および動作について説明する。
図6は、4個以上の発光素子アレイチップ1を一列に並べて発光装置を構成する場合に、各発光素子アレイチップ1の第1スイッチ部の接続関係を示す等価回路図である。図6は図1に示す等価回路図の一部を示すものであるので、対応する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。図6では、発光素子アレイの配列方向に第1番から順番に番号を付し、特定の順番の発光素子アレイについて示す場合には、参照符号の末尾に番号を付して区別するものとする。たとえば、配列方向順に第i17(i17は自然数)番目の発光素子アレイチップ1については、第i17番目のクロック用サイリスタCLi17と記載する。
図6に示すように、4個以上の発光素子アレイチップ1を用いて発光装置を構成する場合には、複数のクロック信号伝送路を設けることによって、互いに隣接する発光素子アレイチップ1に、異なったタイミングのクロック信号が入力されるように構成する。図6には、2本のクロック信号伝送路CLL1,CLL2(参照符号について、総称する場合、または不特定のものを示す場合には単にCLLと記載する)が設けられている場合を例示する。2本のクロック信号伝送路CLL1,CLL2にクロック信号を供給する駆動用ICの出力端子φ1,φ2からは、ハイ(H)レベルとロー(L)レベルが互いに反転した電圧が出力される。クロック信号出力端子φ1,φ2の電圧がハイ(H)レベルのとき、クロック信号が供給されるということにする。クロック信号出力端子φ1,φ2には、負荷抵抗RC1,RC2がそれぞれ接続され、この負荷抵抗RC1,RC2を介してクロック信号が各発光素子アレイチップ1のクロック用サイリスタCLに供給される。ここで、第1番目のクロック用サイリスタCL1のアノードr1は第1番目のクロック信号伝送路CLL1に接続され、第2番目のクロック用サイリスタCL2のアノードr2は第2番目のクロック信号伝送路CLL2に接続される。同様に発光素子アレイの配列方向に沿って、奇数番目のクロック用サイリスタCLは第1番目のクロック信号伝送路CLL1に接続され、偶数番目のクロック用サイリスタCLは第2番目のクロック信号伝送路CLL2に接続される。こうして、互いに隣接する発光素子アレイチップ1のクロック用サイリスタCLのアノードrは、それぞれ、異なるクロック信号伝送路CLLに接続されて、異なるタイミングのクロック信号が与えられることになる。
また図6に示すように、第1番目のトリガ用サイリスタTR1のアノードq1は、第2番目のトリガ信号入力端子CSG2に接続され、第2番目のトリガ用サイリスタTR2のアノードq2は第3番目のトリガ信号入力端子CSG3に接続される。以下同様に、互いに隣接する2個の発光素子アレイチップ1では、第1番目の発光素子アレイチップ1に近接する側のトリガ用サイリスタTRのアノードqが、離反する側のトリガ信号入力端子CSGに接続される。このように接続することによって、各発光素子アレイチップ1のトリガ用サイリスタTRのアノードqには、正の電圧Vccが印加される。さらに、第1番目のトリガ信号入力端子CSG1が第1番目のトリガ用サイリスタTR1のNゲート電極w1に接続され、第2番目のトリガ信号入力端子CSG2が第1番目のトリガ用サイリスタTR1のアノードq1に接続されているので、第1番目のトリガ信号入力端子CSG1と第2番目のトリガ信号入力端子CSG2とは、第1番目のトリガ用サイリスタTR1のアノードq1とNゲート電極w1とによって構成されるPN接合ダイオードを介して接続されることになる。同様に、第2番目のトリガ信号入力端子CSG2と第3番目のトリガ信号入力端子CSG3とは、第2番目のトリガ用サイリスタTR2のアノードq2とNゲート電極w2とによって構成されるPN接合ダイオードによって接続される。このように、発光素子アレイチップ1の配列方向順に第i17(i17は自然数)番目のトリガ信号入力端子CSGi17は、第i17番目のトリガ用サイリスタTRi17のアノードqi17とNゲート電極wi17とによって構成されるPN接合ダイオードを介して、第i17+1番目のトリガ号入力端子CSGi17+1と接続されることになる。
次に、図6に示す等価回路図において、第1番目の発光素子アレイチップ1のトリガ信号入力端子に入力された入力トリガ信号が、発光素子アレイチップ1の配列順に順次転送される原理について説明する。
図7は、図6に示す等価回路図の動作を示すタイミングチャートであり、横軸は基準時刻からの経過時間を表し、縦軸は各端子の電圧または電流の大きさを表す。図7では、各クロック信号伝送路CLL1,CLL2を伝送するクロック信号を供給するための駆動用ICの出力端子φ1,φ2の電圧波形、第1番目のトリガ信号入力端子CSG1に入力ト
リガ信号を供給するための駆動用ICの出力端子φSの電圧波形、および第1〜第4番目の発光素子アレイチップ1のトリガ信号入力端子CSG1〜CSG4における電圧波形を示す。クロック信号出力端子φ1,φ2および入力トリガ信号出力端子φSは、ハイ(H)レベルのとき5Vの定電圧を出力し、ロー(L)レベルのとき0Vの定電圧を出力する。
図7を用いて、図6に示す等価回路図の動作を時間の経過の順に説明する。時刻t0では、クロック信号出力端子φ1,φ2はロー(L)レベルであり、入力トリガ信号出力端
子φSはハイ(H)レベルであるので、いずれの発光素子アレイチップ1のクロック用サイリスタCLもオフ状態である。このとき、トリガ信号入力端子CSG1〜CSG4の電圧は、第1プルアップ抵抗RQの前記他端に印加される正の電圧Vccに等しい。
次の時刻t1では、第1番目のクロック信号伝送路CLL1にクロック信号を供給する出力端子φ1の電圧がハイ(H)レベルになるとともに、入力トリガ信号出力端子φSの電圧がロー(L)レベルになる。このとき、第1番目のクロック用サイリスタCL1のアノードr1にハイ(H)レベルの電圧が印加され、ゲート電極v1にロー(レベル)の電圧が印加される。この状態は、クロック用サイリスタCL1のアノードr1にクロック信号が入力され、ゲート電極v1に入力トリガ信号が入力されていることに相当する。そうすると、第1番目のクロック用サイリスタCL1はオン状態に遷移するので、第1番目のトリガ信号入力端子CSG1の電位はほぼ0Vになる。このとき、第1番目の発光素子アレイチップ1はセレクト状態にあるという。なお、第1番目のトリガ用サイリスタTR1のゲート電極w1の電位もほぼ0Vになるので、第1番目のトリガ用サイリスタTR1もオン状態に遷移する。また、第1番目のクロック用サイリスタCL1がオン状態になってアノードr1およびカソード間に主電流が流れるので、第1番目のクロック信号出力端子φ1に接続された負荷抵抗RC1に電圧降下が生じる。この結果、第1番目のクロック信号伝送路CLL1の電位は、第1番目のクロック用サイリスタの駆動電圧のほぼVdに等しくなっている。
前述したように、第2番目のトリガ信号入力端子CSG2は、順方向にバイアスされたPN接合ダイオードを介して、第1番目のトリガ信号入力端子CSG2と接続されているので、その電位はPN接合の拡散電位Vd(ほぼ1.5V)に等しくなる。さらに第3番目のトリガ信号入力端子CSG3の電位は、第2番目のトリガ信号入力端子CSG2の電位よりもPN接合の拡散電位Vdだけ高くなるので、ほぼ2×Vdに等しい電位になり、同様に第4番目のトリガ信号入力端子CSG4の電位はほぼ3×Vdに等しくなる。無論、トリガ信号入力端子CSGの電位は、前記正の電圧Vccを超えることはない。本実施の形態では、PN接合の拡散電位にほぼ等しい電位が入力トリガ信号および出力トリガ信号の電圧レベルに相当する。したがって、時刻t1では、第1番目のトリガ用サイリスタTR1のアノードq1から出力トリガ信号が出力され、第2番目のクロック用サイリスタCL2のゲート電極v2に入力トリガ信号として入力された結果、トリガ信号が転送されたことになる。
次の時刻t2では、第2番目のクロック信号出力端子φ2の電圧がハイ(H)レベルになるとともに、入力トリガ信号出力端子φSがハイ(H)レベルになる。このとき、第1番目のクロック信号出力端子φ1の電圧はハイ(H)レベルのままであるので、第1番目のクロック用サイリスタCL1はオン状態を維持する。したがって、第1番目のトリガ信号入力端子CSG1の電位はほぼ0Vのままである。一方、第2番目のクロック用サイリスタCL2は、アノードr2にハイ(H)レベルの電圧が印加され、ゲート電極v2にPN接合の拡散電位Vdにほぼ等しい電位が与えられているので、オン状態に遷移する。そうすると、第2番目のトリガ信号入力端子CSG2は、オン状態である第2番目のクロック用サイリスタCL2のゲート電極v2と接続されているので、その電位はほぼ0Vになる。また、第3番目のトリガ信号入力端子CSG3は、順方向にバイアスされたPN接合を介して第2番目のトリガ信号入力端子CSG2と接続されているので、その電位はほぼVdに等しい。また、第4番目のトリガ信号入力端子CSG4の電位は、ほぼ2×Vdに等しい。時刻t2では、第2番目のクロック用サイリスタCL2のアノードr2にクロック信号が入力され、ゲート電極v2に入力トリガ信号が入力されて、クロック用サイリスタCL2がオン状態に遷移したことに相当する。
ここで、時刻t2では、第3番目のクロック用サイリスタCL3のゲート電極v3にはほぼVdに等しい電位が与えられていることになるけれども、第3番目のクロック用サイリスタCL3はオン状態には遷移しない。なぜなら、前述したように負荷抵抗RC1での電圧降下によって、第1番目のクロック信号伝送路CLL1の電位がほぼVdに等しくなるまで低下しているので、第3番目のクロック用サイリスタCL3のアノードr3の電位もほぼVdに等しくなっているからである。なお、第1番目のトリガ用サイリスタTR1のアノードq1の電位は第2番目のトリガ信号入力端子CSG2の電位に等しくほぼ0Vであるので、第1番目のトリガ用サイリスタTR1はオフ状態に遷移する。一方、第2番目のトリガ用サイリスタTR2のゲート電極w2の電位は第2番目のトリガ信号入力端子CSG2に等しく0Vであるので、第2番目のトリガ用サイリスタTR2はオン状態に遷移する。
次の時刻t3では、第1番目のクロック信号出力端子φ1の電圧がロー(L)レベルになる。このとき、第1番目のクロック用サイリスタCL1のアノードr1にはロー(L)レベルの電圧が印加されることになるので、第1番目のクロック用サイリスタCL1はオフ状態に遷移する。そうすると、第1番目のトリガ信号入力端子CSG1は、第1番目の第1プルアップ抵抗RQ1を介して与えられている正の電圧Vccと等しくなる。ここで、第2番目のクロック信号出力端子φ2に遅れて、第1番目のクロック信号出力端子φ2の電圧を変えたのは、前述したトリガ信号の転送を確実に行うためである。
次の時刻t4では、第1番目のクロック信号出力端子φ1の電圧がハイ(H)レベルになる。このとき、第3番目のクロック用サイリスタCL3のアノードr3にハイ(H)レベルの電圧が印加され、さらに第3番目のクロック用サイリスタCL3のゲート電極v3の電位は時刻t2からほぼVdに等しい状態が維持されているので、第3番目のクロック用サイリスタCL3はオン状態に遷移する。そうすると、第3番目のクロック用サイリスタCL3のゲート電極v3と接続されている第3番目のトリガ信号入力端子CSG3の電位はほぼ0ボルトになる。前述したように、順方向にバイアスされたPN接合を介して、第3番目のトリガ信号入力端子CSG3に接続されている第4番目のトリガ信号入力端子CSG4の電位はほぼVdに等しくなる。また、第2番目のトリガ用サイリスタTR2のアノードq2の電位は第3番目のトリガ信号入力端子CSG3の電位に等しくほぼ0Vであるので、第2番目のトリガ用サイリスタTR2はオフ状態に遷移する。一方、第3番目のトリガ用サイリスタTR3のゲート電極w3の電位は第3番目のトリガ信号入力端子CSG3に等しく0Vであるので、第3番目のトリガ用サイリスタTR3はオン状態に遷移する。
次の時刻t5では、第2番目のクロック信号出力端子φ2の電圧がロー(L)レベルになる。このとき、第2番目のクロック用サイリスタCL2のアノードr2にはロー(L)レベルの電圧が印加されることになるので、第2番目のクロック用サイリスタCL2はオフ状態に遷移する。そうすると、第2番目のトリガ信号入力端子CSG2は、第2番目の第1プルアップ抵抗RQ2を介して与えられる正の電圧Vccと等しくなる。
以下同様に、時刻t6では、第4番目のクロック用サイリスタCL4はオン状態に遷移して、セレクト状態になり、時刻t7では、第3番目のクロック用サイリスタCL3はオフ状態に遷移することによりセレクト状態ではなくなる。
このように、発光素子アレイチップ1の配列方向の順番に、トリガ信号が順次転送され、そのタイミングにあわせてクロック信号が与えられることによって、配列方向の順番に発光素子アレイチップ1が選択状態になっていく論理回路が実現されている。本実施の形態では、入力トリガ信号出力端子φSおよびクロック信号出力端子φ1,φ2の合計3個の信号出力端子を用いて、複数の発光素子アレイチップ1を配列方向に沿って順次選択状態にすることができ、複数の発光素子アレイチップ間での時分割駆動を可能にする。したがって、少ない駆動用IC数および配線数で構成された発光装置が実現できる。
次に、本実施の形態の発光素子アレイチップ1の構成について具体的に説明する。
図8は、第1の実施の形態の発光素子アレイチップ1の基本構成を示す一部の平面図である。なお同図は、各発光用サイリスタTの光の出射方向を紙面に垂直手前側として配置された発光素子アレイチップ1の平面を示し、ゲート横配線GH1〜GH4、セレクト信号伝送路CSL、セット信号伝送路11、セット信号用ボンディングパッドCSA、入力トリガ信号用ボンディングパッドCSG、発光用サイリスタT、スイッチ用サイリスタS、第1プルアップ抵抗RQ、第2プルアップ抵抗RP、選択用サイリスタU、クロック用サイリスタCLおよびトリガ用サイリスタTRは、図解を容易にするため斜線を付して示されている。
発光素子アレイチップ1に含まれる複数の発光用サイリスタTは、相互に間隔W1をあけて配列されている。発光用サイリスタTは、露光用の発光素子である。本実施の形態では、各発光用サイリスタTは、等間隔に配列され、かつ直線状に配列される。以後、各発光用サイリスタTの配列方向Xを、単に配列方向Xと記載する場合がある。各発光用サイリスタTの光の出射方向に沿う方向を厚み方向Zとし、前記配列方向Xおよび厚み方向Zに垂直な方向を幅方向Yとする。発光用サイリスタTは、600nm〜800nmの波長の光を発光可能に形成される。
発光用サイリスタTは、PNPN構造を有する発光サイリスタによって形成されるので、P型半導体と、N型半導体とを交互に積層した単純な構成で実現することができ、装置の作成が容易となる。前述したように、発光用サイリスタTはゲート電極b1〜bkに、制御信号を与えることによって発光信号の電圧よりも、しきい電圧が低下した状態で、前記発光信号がアノードa1〜akに与えられたとき発光する。
発光用サイリスタT1〜Tkは、発光素子ブロックB1〜Bmに分けられ、同一の発光素子ブロックBに属する発光用サイリスタTのアノードaは共通の発光信号入力端子Aとしてのボンディングパッドに接続される。なお、発光信号入力端子Aとしてのボンディングパッドを単に発光信号用ボンディングパッドAと記載する場合がある。また、本実施の形態では、ゲート横配線GHの本数に等しい4個の発光用サイリスタTが1つの発光素子ブロックBを構成する。たとえば、発光用サイリスタTの配列方向に沿う一方から他方へ向かって、発光用サイリスタTに番号を第1番から第k番まで付し、前記配列方向に沿う前記一方から前記他方へ向かって、発光素子ブロックBに番号を第1番から第m番まで付すと、第i6(1≦i6≦m)番目の発光素子ブロックBi6に属する第4i6−3番目から第4i6番目の全ての発光用サイリスタT4i6−3〜T4i6のアノードaと、発光信号
用ボンディングパッドAi6との間に接続部60が設けられて、電気的に接続される。発
光用サイリスタTのアノードaと発光信号用ボンディングパッドAと接続部60とは同時に一体で形成される。また、本実施の形態では、好ましい構成として、発光信号用ボンディングパッドAは発光用サイリスタTの配列方向Xに沿って、ゲート横配線GHを挟んで発光用サイリスタTと反対側に設置される。
配列方向Xの各発光用サイリスタTの間隔W1および発光用サイリスタTの配列方向Xの長さW2は、発光素子アレイチップ1が搭載される後述する画像形成装置87において形成すべき画像の解像度によって決定され、たとえば画像の解像度が600ドットパーインチ(dpi)の場合、前記間隔W1は、約24μm(マイクロメートル)に選ばれ、前記長さW2は、約18μmに選ばれる。
各ゲート横配線GHは、発光素子アレイチップ1に沿って配列方向Xに、発光素子アレイチップ1の配列方向Xの一端部から他端部間にわたって延びる。各ゲート横配線GHは、幅方向Yに間隔をあけて配列される。本実施の形態では、発光用サイリスタTに近接する側から順番に、ゲート横配線GH4、ゲート横配線GH3、ゲート横配線GH2およびゲート横配線GH1の順番に配列される。さらに、本実施の形態では、セレクト信号を選択用サイリスタUのゲート電極fに供給するためのセレクト信号伝送路CSLがゲート横配線GH1と平行に、発光用サイリスタTと離反する側に配置される。セレクト信号伝送路CSLは、接続部75を介してトリガ信号入力端子CSGとしてのボンディングパッドに接続される。トリガ信号入力端子CSGとしてのボンディングパッドを単に入力トリガ信号用ボンディングパッドCSGと記載する場合がある。入力トリガ信号用ボンディングパッドCSGは、好ましい構成として、基板上で配列方向Xの一方の端部に、発光信号用ボンディングパッドAの配列に続けて設けられる。このように配置すると、複数の発光素子アレイチップ1を駆動する発光装置を構成するときに、隣接する発光素子アレイチップ1から出力された出力トリガ信号を、入力トリガ信号として入力するための接続が容易になる。また、各ゲート横配線GH間およびゲート横配線GH1とセレクト信号伝送路CSLとの間の間隔W3は、相互に隣接するゲート横配線GH間およびゲート横配線GH1とセレクト信号伝送路CSLとの間で短絡が生じない距離に選ばれ、たとえば5μmに選ばれる。
発光用サイリスタTのゲート電極b1〜bkは、本実施の形態では、第3半導体層24によって構成され、ゲート横配線GH1〜GH4のいずれかとの間に接続部GV1,GV2,GV3,GV4が形成される。ここで、発光用サイリスタTの配列方向に沿う一方から他方へ向かって、発光用サイリスタTに番号を第1番から第k番まで付し、前記配列方向の前記一方から他方へ向かって発光素子ブロックBに第1番から第m番まで番号を付すことにすれば、前記配列方向に沿う第i6(1≦i6≦m)番目の発光素子ブロックBi6
に属する第4i6−3番目から第4i6番目の発光用サイリスタTについては、第4i6−
3番目の発光用サイリスタT4i6−3のゲート電極と第1番目のゲート横配線GH1と
の間に接続部GV1が形成され、第4i6−2番目の発光用サイリスタT4i6−2のゲート電極と第2番目のゲート横配線GH2との間に接続部GV2が形成され、第4i6−1
番目の発光用サイリスタT4i6−1のゲート電極と第3番目のゲート横配線GH3との
間に接続部GV3が形成され、第4i6番目の発光用サイリスタT4i6のゲート電極と第4番目のゲート横配線GH4との間に接続部GV4が形成される。また、第i6(1≦i6≦m)番目の発光素子ブロックBi6に属する全ての発光用サイリスタTのアノードaと
前記配列方向に沿うi6番目の発光信号入力端子Ai6との間に接続部60が形成される。このように、同じ発光素子ブロックBに属する発光用サイリスタTが異なるゲート横配線GHに接続されることで、前述したように発光用サイリスタTのダイナミック駆動が可能となる。
スイッチ用サイリスタSは、好ましい構成として、前記発光信号用ボンディングパッドA間に生じたスペースに配置される。複数の発光用サイリスタTからなる1つの発光素子ブロックBに対して、発光信号を供給するためのボンディングパッドを1つ備えることとなるので、発光信号用ボンディングパッドA間にスペースを生じ、そのスペースを有効に活用してスイッチ素子などを配置することができる。各スイッチ用サイリスタSのアノードcにゲート信号を供給するためのゲート信号入力端子Gとしてのボンディングパッドも、前記ボンディングパッド間に生じたスペースを活用して配置される。なお、ゲート信号入力端子Gとしてのボンディングパッドを単にゲート信号用ボンディングパッドGと記載する場合がある。本実施の形態では、ゲート信号用ボンディングパッドGは前記第2選択信号用ボンディングパッドに対応する。アノードcとゲート信号用ボンディングパッドGとは一体に形成される。このように配置することで、スイッチ用サイリスタSなどを設けても、発光素子アレイチップ全体の大きさがそれによって増大することを避けることができ、小形な発光素子アレイチップを構成することができる。なお、スイッチ用サイリスタSの個数nはゲート横配線GHの本数に等しく、本実施の形態ではn=4である。また、選択用サイリスタUも、前記発光信号入力端子Aとしてのボンディングパッド間に生じたスペースを利用して、スイッチ用サイリスタSに近接して配置される。
スイッチ用サイリスタSのゲート電極dは本実施の形態では、第3半導体層34で構成される。スイッチ用サイリスタSのゲート電極dと選択用サイリスタUのアノードeとの間には接続部65が形成され、さらにゲート電極dと対応するゲート横配線GHとの間にも接続部66が形成されることで電気的に接続される。ゲート電極dと選択用サイリスタUとを接続する接続部65とゲート電極dとゲート横配線GHとを接続する接続部66は一体に形成される。また、選択用サイリスタUのNゲート電極f1は第3半導体層44で構成され、選択用サイリスタUのNゲート電極f1とセレクト信号伝送路CSLとの間に接続部67が形成される。
第2プルアップ抵抗RPは、本実施の形態では、スイッチ用サイリスタSを構成する半導体層の一部を用いて、スイッチ用サイリスタSと一体で形成される。第2プルアップ抵抗RPは半導体膜のシート抵抗を利用したものである。第2プルアップ抵抗RPの一部とセット信号伝送路11との間に接続部68が形成され、第2プルアップ抵抗の接続部68の側にセット信号が与えられる。
セット信号伝送路11は、ゲート横配線GHと平行に配線され、本実施の形態では、発光信号用ボンディングパッドAを挟んでゲート横配線GHと離反する側に配置される。セット信号伝送路11は、接続部69によって、セット信号入力端子CSAとしてのボンディングパッドに電気的に接続される。セット信号入力端子CSAとしてのボンディングパッドを単にセット信号用ボンディングパッドCSAと記載する場合がある。
トリガ用サイリスタTRから出力トリガ信号を出力するためのトリガ信号出力端子TRAとしてボンディングパッドは、隣接する発光素子アレイチップ1間でトリガ信号の転送のための接続を容易にするために、配列方向Xに沿って入力トリガ信号用ボンディングパッドCSGと反対側の他端部に設けられるのが好ましい。なお、トリガ信号出力端子TRAとしてボンディングパッドを単に出力トリガ信号用ボンディングパッドTRAと記載する場合がある。トリガ用サイリスタTRは、出力トリガ信号用ボンディングパッドTRAに近接して設けられる。トリガ用サイリスタTRのアノードqは、出力トリガ信号用ボンディングパッドTRAと一体で形成される。トリガ用サイリスタTRのゲート電極wは、第3半導体層154によって構成され、接続部144を介してセレクト信号伝送路CSLと接続される。
クロック用サイリスタCLおよびクロック信号入力端子CLAとしてのボンディングパッド(クロック信号用ボンディングパッドCLA)は、複数の発光信号用ボンディングパッドAの間に配置され、これらの構成はトリガ用サイリスタTRおよび出力トリガ信号用ボンディングパッドTRAの構成と同様である。具体的には、クロック用サイリスタCLのアノードrとクロック信号用ボンディングパッドCLAとは一体で形成され、ゲート電極vとして用いられる第3半導体層は、セレクト信号伝送路CLSと接続部143を介して接続される。
第1プルアップ抵抗RQは、半導体膜のシート抵抗を利用したものであり、複数の発光信号用ボンディングパッドAの間に、各サイリスタを構成する半導体層の一部を用いて形成される。第1プルアップ抵抗RQの一端部は、接続部142を介してセレクト信号伝送路CSLと接続され、第1プルアップ抵抗RQの他端部は、正の電圧Vccを印加するための電源用ボンディングパッドVsに接続される。
発光用サイリスタTのアノードa、スイッチ用サイリスタSのアノードc、選択用サイリスタUのアノードe、クロック用サイリスタのアノードr、トリガ用サイリスタのアノードq、ゲート横配線GH、セレクト信号伝送路CSL、セット信号伝送路11、接続部60,65〜69,75,142〜144、GV1〜GV4、発光信号用ボンディングパッドA、ゲート信号用ボンディングパッドG、入力トリガ信号用ボンディングパッドCSG、出力トリガ信号用ボンディングパッドTRA、セット信号用ボンディングパッドCSA、電源用ボンディングパッドVsおよびクロック信号用ボンディングパッドは、金属材料および合金材料などの導電性を有する材料によって形成される。具体的には、金(Au)、金とゲルマニウムとの合金(AuGe)、金と亜鉛との合金(AuZn)、ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)などによって形成される。
また、図8に示す発光素子アレイチップ1は、好ましい構成として、スイッチ用サイリスタS、選択用サイリスタU、クロック用サイリスタCLおよびトリガ用サイリスタTRの表面(基板と離反する側)に遮光手段として遮光膜12を設けている。スイッチ用サイリスタSおよび選択用サイリスタUは、発光用サイリスタTと同様にスイッチングの際に発光するものであるが、その発光は不要であり、その発光による光が発光用サイリスタTに入射して発光用サイリスタTのしきい値を変動させてしまうことを避けるために必要だからである。遮光膜12としては、その発光に対して不透明な材質から成る部材で表面を覆ったものとすればよい。適当な層間絶縁膜を施した場合には、ゲート横配線GHに用いる金(Au)薄膜などが好適である。また、スイッチ用サイリスタSと発光用サイリスタTとをできるだけ遠ざけて配置することも有効であり、図8の平面図で示すように、ゲート横配線GHを跨いで一方側に発光用サイリスタT、他方側にその他のサイリスタS,U,CL,TRを配置するようにしてもよい。
なお、前述した電流制限抵抗RIはより好ましい構成として付加する場合があるが、図8に示した発光素子アレイチップ1の平面図においては用いていない。
以下、発光素子アレイチップ1の構成について、さらに詳細に説明する。
図9は、図8の切断面線IX−IXから見た発光素子アレイチップ1の基本的構成を示す一部の断面図である。
発光用サイリスタTには、基板21の厚み方向Zの一表面上に第1半導体層22、第2半導体層23、第3半導体層24、第4半導体層25およびオーミックコンタクト層27がこの順に積層される構造が含まれる。ここで、第1半導体層22と第3半導体層24とには、N型またはP型のいずれか一方の導電型が用いられ、第2半導体層23と第4半導体層25には他方の導電型が用いられることによって、NPNPまたはPNPNのサイリスタ構造が形成される。また、オーミックコンタクト層27には、第4半導体層25と同じ導電型の半導体が用いられる。
スイッチ用サイリスタSは、本実施の形態では発光用サイリスタTと同時に形成されるので各層の構成は同一となる。具体的には、スイッチ用サイリスタSは、基板21の表面のうち、発光用サイリスタTが形成された面と同一表面上に、第1半導体層32、第2半導体層33、第3半導体層34、第4半導体層35、およびオーミックコンタクト層37がこの順に積層されて形成される。以下の説明において、発光用サイリスタTに関する説明はスイッチ用サイリスタSについても同様である。
基板21には、本実施の形態では、第1半導体層22と同じ導電型の半導体基板が用いられる。基板21の厚み方向Zで、各半導体層22〜25が積層されている表面と反対側の表面上には、全面にわたって裏面電極26が形成される。裏面電極26は、金属材料および合金材料などの導電性を有する材料によって形成される。具体的には裏面電極26は、金(Au)、金とゲルマニウムとの合金(AuGe)および金と亜鉛との合金(AuZn)などによって形成される。裏面電極26は、各発光用サイリスタTの共通の電極として用いられる。
本実施の形態では、第1半導体層22と第3半導体層24の導電型はN型であり、第2半導体層23と第4半導体層25の導電型はP型である。したがって、発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSのカソードが共通の電極としての裏面電極26に接続され、ゲート電極にはNゲート電極が用いられる。裏面電極26を接地して、カソード電位を零(0)ボルト(V)にすると、各発光用サイリスタTのアノードaに電圧または電流を印加する電源に、正電源を用いることができるので好ましい。
絶縁層28は、発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSの表面に沿って形成されており、発光用サイリスタTとスイッチ用サイリスタSとの間にも形成され、各発光用サイリスタTおよび各スイッチ用サイリスタSが相互に絶縁層28によって電気的に絶縁される。絶縁層28は、電気絶縁性および透光性ならびに平坦性を有する樹脂材料によって形成される。たとえば、ポリイミドおよびベンゾシクロブテン(BCB)など、発光用サイリスタTが発する波長の光の95%以上を透過する樹脂材料が用いられる。
絶縁層28のうち、オーミックコンタクト層27の表面(基板と離反する側)を覆う部分の一部に貫通孔29が形成される。この貫通孔29にアノードaの一部が形成されて、オーミックコンタクト層27に接触している。前記貫通孔29は、発光用サイリスタTの配列方向Xの中央で、かつ発光用サイリスタTの幅方向Yの中央が絶縁層28から露出するように形成されており、アノードaからの電流を、発光用サイリスタTの中央部に効率的に供給して、発光用サイリスタTを発光させることができる。発光用サイリスタTでは、主に第3半導体層24と、第4半導体層25との界面付近で、第3半導体層24寄りの領域において光が発生する。
発光用サイリスタTのアノードaの配列方向Xの長さW3は、発光用サイリスタTの配列方向Xの長さW2の1/3以下に形成される。アノードaは、発光用サイリスタTの光の出射方向の一部を覆うが、長さW3を前述したように選ぶことによって、発光用サイリスタTから発せられ光を、なるべく遮らないようにする。
基板21、各半導体層22〜25およびオーミックコンタクト層27の材料などについてさらに具体的に説明する。
基板21は、III−V族化合物半導体およびII−VI族化合物半導体などの結晶成長が可能な半導体基板であり、たとえば、ガリウム砒素(GaAs)、インジウムリン(InP)、ガリウムリン(GaP)、シリコン(Si)およびゲルマニウム(Ge)などの半導体材料によって形成される。
第1半導体層22は、ガリウム砒素(GaAs)、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびインジウムガリウムリン(InGaP)などの半導体材料によって形成される。第1半導体層22のキャリア密度は、1×1018cm-3程度のものが望ましい。
第2半導体層23は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成される。第2半導体層23を形成する半導体材料には、第1半導体層22を形成する半導体材料のエネルギーギャップと同じ、もしくは第1半導体層22を形成する半導体材料のエネルギーギャップよりもエネルギーギャップが小さいものが選ばれる。第2半導体層23のキャリア密度は1×1017cm-3程度のものが望ましい。
第3半導体層24は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成される。第3半導体層24を形成する半導体材料には、第2半導体層23を形成する半導体材料のエネルギーギャップと同じ、もしくは第2半導体層23を形成する半導体材料のエネルギーギャップよりもエネルギーギャップが小さいものが選ばれる。第3半導体層24のキャリア密度は、1×1018cm-3程度のものであることが望ましい。第3半導体層24は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成することによって、発光素子として高い内部量子効率を得ることができる。
第4半導体層25は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成される。第4半導体層25を形成する半導体材料には、第2半導体層23および第3半導体層24を形成する半導体材料のエネルギーギャップと同じ、もしくは第2半導体層23および第3半導体層24を形成する半導体材料のエネルギーギャップよりもエネルギーギャップが大きいものが選ばれる。第4半導体層25のキャリア密度は、1×1018cm-3程度のものであることが望ましい。
オーミックコンタクト層27は、ガリウム砒素(GaAs)およびインジウムガリウムリン(InGaP)などの半導体材料によって形成される第4半導体層25と同じ導電型の半導体層であり、アノードeとのオーミック接合を行うためのものである。オーミックコンタクト層27のキャリア密度は1×1019cm-3以上のものが望ましい。
第1半導体層22、第2半導体層23、第3半導体層24、第4半導体層25およびオーミックコンタクト層27は、基板21の一表面に分子線エピタキシャル成長および化学気相成長(CVD)法などのエピタキシャル成長法用いて順次積層して形成することができる。その後、フォトリソグラフィを用いたパターニングとエッチングとを用いて、各発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSが形成される。したがって、一連の製造プロセスにおいて、発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSを同時に形成することになるので、スイッチ用サイリスタSおよび発光用サイリスタTを構成する各半導体層の層構成が同一になる。結果として、スイッチ用サイリスタSおよび発光用サイリスタTはいずれも発光機能およびスイッチ機能の両方を兼ね備えたものになるが、スイッチ用サイリスタSはそのうちスイッチ機能のみを用いる。このようにすれば同じ構造で特性が安定したものを一度に簡単に作製することができ、製造コストを低減することができる。
なお、絶縁層28は、各半導体層を形成した後、前述したポリイミドなどの樹脂材料をスピンコーティングしてから硬化させ、さらに電極と発光用サイリスタTとの接続に必要な各貫通孔29,30を形成するためにフォトリソグラフィによるパターニングおよびエッチングを施すことで作製される。
図10は、図8の切断面線X−Xから見た発光素子アレイチップ1の基本的構成を示す一部の断面図である。
図10に示すように、発光用サイリスタTの幅方向Yの形状については、発光用サイリスタTの第1半導体層22と、第2半導体層23と、第3半導体層24とのゲート横配線GH寄りの端部は、第4半導体層25と、オーミックコンタクト層27とのゲート横配線GH寄りの端部よりも、ゲート横配線GHに向かって突出し、ゲート横配線GHとの被接続部101を構成する。被接続部101の配列方向Xの長さは、前述した長さW2と等しい。なお、第3半導体層24のうち、被接続部101を構成する部分は、第4半導体層25が積層される部分よりも厚みが小さい。この理由は、エッチング工程によって、第3半導体層24の表面を露出させて被接続部を101形成するときに、第4半導体層25が残存しないようにオーバーエッチングするためである。
スイッチ用サイリスタSの幅方向Yの形状についても同様に、スイッチ用サイリスタSの第1半導体層32と、第2半導体層33と、第3半導体層34とのゲート横配線GH寄りの端部は、第4半導体層35と、オーミックコンタクト層37とのゲート横配線GH寄りの端部よりも、ゲート横配線GHに向かって突出し、ゲート横配線GHとの被接続部102を構成する。また、オーバーエッチングを施すために、第3半導体層34のうち、被接続部102を構成する部分の厚みは、第4半導体層35が積層される部分の厚みよりも小さく形成される。
絶縁層28は、発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSの表面に沿って形成されるとともに、発光用サイリスタTとスイッチ用サイリスタSとの間にも形成され、発光用サイリスタTとスイッチ用サイリスタSとが絶縁層28によって電気的に絶縁される。発光用サイリスタTとスイッチ用サイリスタSとの間に形成された絶縁層28の表面には、ゲート横配線GHおよびセレクト信号伝送路CSLが形成され、さらにそれらの表面に沿って絶縁層103が形成される。また、スイッチ用サイリスタSを挟んでゲート横配線と離反する側の絶縁層28の表面には、セット信号伝送路11が形成され、さらにその表面に沿って絶縁層103が形成される。
形成された絶縁層28,103のうち、発光用サイリスタTの前記被接続部101およびゲート横配線GHの表面(基板と離反する側)に積層される部分には、貫通孔104,105が形成される。発光用サイリスタTの第3半導体層24(ゲート電極bに対応する)とゲート横配線GHとを電気的に接続する接続部GV1は、これらの貫通孔104,105の部分および貫通孔104,105に挟まれた絶縁層28,103の部分に積層して設けられる。また、絶縁層28,103のうち、スイッチ用サイリスタSの前記被接続部102およびゲート横配線GHの表面(基板と離反する側)に積層される部分にも、貫通孔105,106が形成される。スイッチ用サイリスタSの第3半導体層34(ゲート電極dに対応する)とゲート横配線GHを電気的に接続する接続部66は、これらの貫通孔105,106の部分および貫通孔105,106に挟まれた絶縁層28,103とに積層して設けられる。図10に示すように、ゲート横配線GHに積層する部分の絶縁層103に設けられた貫通孔105が共通する場合には、前記接続部GV1,66は一体で形成される。
また、前述したように、発光用サイリスタTに積層される絶縁層28のうち、オーミックコンタクト層27の表面(基板と離反する側)に積層される部分の一部には貫通孔29が形成される。この貫通孔29にアノードaの一部が形成されて、オーミックコンタクト層27に接触している。アノードaは、発光信号入力端子Aとの接続部60とともに一体形成される。接続部60は発光用サイリスタTの第4半導体層25とオーミックコンタクト層27のゲート横配線GH寄りの端部の一部を覆い、第3半導体層24に設けられた被接続部101に積層された絶縁層28の表面(基板と離反する側)の一部も積層して形成される。同様に、スイッチ用サイリスタSに積層される絶縁層28のうち、オーミックコンタクト層37の表面(基板と離反する側)に積層される部分の一部には貫通孔107形成される。この貫通孔107にアノードcの一部が形成されて、オーミックコンタクト層37に接触している。
またスイッチ用サイリスタSは遮光膜12で覆われる。遮光膜12の幅方向Yの一方の端は、スイッチ用サイリスタSの第4半導体層35およびオーミックコンタクト層37の、発光用サイリスタTと反対側の端部を覆い、遮光膜12の幅方向Yの他方の端は、スイッチ用サイリスタSの第3半導体層34の前記被接続部102を覆い、セレクト信号伝送路CSLとスイッチ用サイリスタSとの中央付近まで延びる。
図11は、図8の切断面線XI−XIから見た発光素子アレイチップ1の基本的構成を示す一部の断面図である。
選択用サイリスタUおよび第2プルアップ抵抗RPは、本実施の形態では、発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSを構成する各半導体層22〜25,32〜35およびオーミックコンタクト層27,37を形成するときに同時に形成されるので、新たな製造工程を必要としない。第2プルアップ抵抗RPは、本実施の形態では、第1半導体層52、第2半導体層53、および第3半導体層54によって構成される半導体薄膜のうち、第3半導体層54を利用している。
本実施の形態のように、発光素子アレイに用いられる各発光サイリスタのカソードが共通に接地される場合には、N型半導体である第3半導体層54を薄膜抵抗として利用するのが好ましい。なぜなら、プルアップ抵抗RPの一端にセット信号として正の電圧が印加されたとき、P型半導体である第2半導体層53とN型半導体である第3半導体層54とで構成されるPN接合には、逆バイアスの電圧が印加されることになって、空乏層が拡がるので、第2半導体層53と第3半導体層54との間の絶縁性が確保されるためである。
ここで、薄膜抵抗として、第1半導体層52から順に第4半導体層まで積層した第4半導体層を利用することも可能である。各発光サイリスタのカソードが共通に接地される場合には、第4半導体層は、P型半導体であるために、N型半導体である第3半導体層54よりも移動度が小さく、高抵抗になるという利点がある。しかしながら、第4半導体層と第3半導体層54との間に意図せずに順方向のバイアスがかかった場合には、第1半導体層52、第2半導体層53、第3半導体層54、および第4半導体層によって構成されるサイリスタがオン状態に遷移して、ラッチアップ現象が生じる場合があり得る。ラッチアップが発生すると、第2半導体層53と第3半導体層54との間が導通するので、薄膜抵抗と裏面電極26との間の絶縁が保てなくなる。なお、各発光サイリスタのアノードが共通に接地される場合には、第3半導体層54はP型半導体であるので、薄膜抵抗は第3半導体層54を利用するのが好ましい。
また、図8の発光素子アレイチップ1の平面図には図示していない電流制限抵抗RIについても、プルアップ抵抗RQと同様に、第3半導体層を利用するのが好ましい。
選択用サイリスタUの第1半導体層42と、第2半導体層43と、第3半導体層44とのゲート横配線GH寄りの端部は、第4半導体層45と、オーミックコンタクト層47とのゲート横配線GH寄りの端部よりも、ゲート横配線GHに向かって突出し、ゲート横配線GHとの被接続部108を構成する。本実施の形態では、被接続部108が選択用サイリスタUのNゲート電極fに対応する。また、オーミックコンタクト層47の表面(基板と離反する側)に積層して設けられる、スイッチ用サイリスタSのゲート電極dとの接続部65の一部が選択用サイリスタUのアノードに対応する。なお、第3半導体層44のうち、被接続部108を構成する部分は、第4半導体層45が積層される部分よりも厚みが小さい。この理由は、エッチング工程によって、第3半導体層44の表面を露出させて被接続部を108形成するときに、第4半導体層45が残存しないようにオーバーエッチングするためである。なお、選択用サイリスタUの被接続部108の形成は、発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSの被接続部101,102の形成と同時に行われるので、新たな製造工程を必要としない。
第2プルアップ抵抗RPを構成する第1半導体層52、第2半導体層53、および第3半導体層54の全体の厚みを決定するためのエッチング工程も、前記被接続部101,102,108の形成と同時に行われる。したがって、第2プルアップ抵抗RPの厚みと前記被接続部101,102,108の厚みは等しい。
図11において、絶縁層28は、選択用サイリスタUおよび第2プルアップ抵抗RPの表面に沿って形成されるとともに、選択用サイリスタUおよび第2プルアップ抵抗RPとの間にも形成され、選択用サイリスタUおよび第2プルアップ抵抗RPとが絶縁層28によって電気的に絶縁される。前述したように絶縁層28の表面には、ゲート横配線GH、セレクト信号伝送路CSLおよびセット信号伝送路11が形成され、さらにそれらの表面に沿って絶縁層103が形成される。
形成された絶縁層28,103のうち、セレクト信号伝送路CSLおよび選択用サイリスタUの前記被接続部108の表面(基板と離反する側)に積層される部分には、貫通孔109,110が形成されて、それらを電気的に接続するための接続部67が設けられる。また、絶縁層28のうち、選択用サイリスタUのオーミックコンタクト層47の表面(基板と離反する側)に積層される部分にも貫通孔111が形成され、スイッチ用サイリスタSのゲート電極dとの接続部65が設けられる。さらに、形成された絶縁層28,103のうち、第2プルアップ抵抗RPとセット信号伝送路11に積層される部分にも貫通孔112,113が形成され、それらを電気的に接続する接続部68が形成される。
選択用サイリスタUを構成する第3半導体層44および第4半導体層45は、本実施の形態では、発光用サイリスタTと同時に形成されるので、選択用サイリスタUはオン状態で発光する。したがって、選択用サイリスタUが発する光を遮光または減光するために、選択用サイリスタUを覆う遮光膜12が形成される。
また、第2プルアップ抵抗RPを覆う遮光膜12も形成される。第2プルアップ抵抗RPの界面に外部から光が入射すると、プルアップ抵抗RPが設けられる第1半導体層52、第2半導体層53、および第3半導体層54の各半導体層の界面に電子・正孔対が生成される。すると、フォトトランジスタと同様に第2半導体層53にキャリアが蓄積されて、第2半導体層53と第3半導体層54との間の絶縁性が不良になるので、本来ならば第3半導体層54内を伝導すべきキャリアが基板21側に流れて、抵抗体としての動作が不安定になる。そこで、第2プルアップ抵抗RPの動作を安定化させるために、第2プルアップ抵抗RPも遮光膜12で覆われる。なお、電流制限抵抗RIを基板21上に形成する場合も、遮光膜12で覆うのが好ましい。
図11に示すように、遮光膜12の幅方向Yの一方は、第2プルアップ抵抗RPの表面に積層された絶縁層28の表面を覆って、セット信号伝送路11付近まで延び、遮光膜12の幅方向Yの他方は、選択用サイリスタUの被接続部108の表面に積層された絶縁層28を覆って、選択用サイリスタUとセレクト信号伝送路CSLとの接続部67の一部の表面まで覆う。
図12は、図8の切断面線XII−XIIから見た発光素子アレイチップ1の基本的構成を示す一部の断面図である。
トリガ用サイリスタTRは、本実施の形態では、発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSを構成する各半導体層22〜25,32〜35およびオーミックコンタクト層27,37を形成するときに同時に形成されるので、新たな製造工程を必要としない。トリガ用サイリスタTRの第1半導体層152と、第2半導体層153と、第3半導体層154とのゲート横配線GH寄りの端部は、第4半導体層155と、オーミックコンタクト層157とのゲート横配線GH寄りの端部よりも、ゲート横配線GHに向かって突出し、ゲート横配線GHとの被接続部158が形成される。本実施の形態では、被接続部158がトリガ用サイリスタTRのゲート電極wに対応する。なお、トリガ用サイリスタTRの被接続部158の形成は、発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSの被接続部101,102の形成と同時に行われるので、新たな製造工程を必要としない。
図12において、絶縁層28は、基板21およびトリガ用サイリスタTRの表面を覆うように形成される。前述したように絶縁層28の表面には、ゲート横配線GH、セレクト信号伝送路CSLおよびセット信号伝送路11が形成され、さらにそれらの表面に沿って絶縁層103が形成される。形成された絶縁層28,103のうち、セレクト信号伝送路CSLおよびトリガ用サイリスタTRの前記被接続部158の表面(基板と離反する側)に積層される部分には、貫通孔161,162が形成されて、それらを電気的に接続するための接続部144が設けられる。また、絶縁層28のうち、トリガ用サイリスタTRのオーミックコンタクト層47の表面(基板と離反する側)に積層される部分にも貫通孔160が形成され、アノードqが設けられる。さらに、トリガ用サイリスタTRがオン状態で発する光を遮光または減光するために、トリガ用サイリスタTRを覆う遮光膜12が形成される。遮光膜12の幅方向Yの一方は、トリガ用サイリスタTRのセット信号伝送路11寄りの端部を覆い、遮光膜12の幅方向Yの他方は、選択用サイリスタUの被接続部108の表面に積層された絶縁層28を覆って、選択用サイリスタUとセレクト信号伝送路CSLとの接続部67の一部の表面まで覆う。
クロック用サイリスタCLの構成は、図12に示すトリガ用サイリスタTRと同様であるので、説明を省略する。
図13は、図8の切断面線XIII−XIIIから見た発光素子アレイチップ1の基本的構成を示す一部の断面図である。
第1プルアップ抵抗RQは、前述した第2プルアップ抵抗RPと同様に、本実施の形態では、第1半導体層172、第2半導体層173、および第3半導体層174によって構成される半導体薄膜のうち、第3半導体層174を利用している。第1プルアップ抵抗RQを構成する第1半導体層172、第2半導体層173、および第3半導体層174の全体の厚みを決定するためのエッチング工程も、前記被接続部101,102,108,158の形成と同時に行われる。したがって、第1プルアップ抵抗RQの厚みと前記被接続部101,102,108,158の厚みは等しい。
図13において、絶縁層28は、基板21および第1プルアップ抵抗RQの表面を覆うように形成される。前述したように絶縁層28の表面には、ゲート横配線GH、セレクト信号伝送路CSLおよびセット信号伝送路11が形成され、さらにそれらの表面に沿って絶縁層103が形成される。形成された絶縁層28,103のうち、セレクト信号伝送路CSLの表面(基板と離反する側)に積層される部分、および第1プルアップ抵抗RQのセレクト信号伝送路CSL寄りの端部の表面(基板と離反する側)に積層される部分には、貫通孔165,166が形成されて、それらを電気的に接続するための接続部142が設けられる。また、第1プルアップ抵抗RQに積層される絶縁層28のうち、セレクト信号伝送路CSLと離反する側にも貫通孔164が設けられ、電源用ボンディングパッドVsの一部が貫通孔164を覆うように形成される。
また、第2プルアップ抵抗RPと同様に、第1プルアップ抵抗RQを覆う遮光膜12も形成される。図13に示すように、遮光膜12は、第1プルアップ抵抗RQの表面に積層された絶縁層28、セレクト信号伝送路CSLとの接続部142の一部、および電源用ボンディングパッドの一部の表面にさらに積層され、第1プルアップ抵抗RQの幅方向Yの一方端側から他方端側までを覆う。
図14は、本発明の実施の一形態の発光装置10を模式的に示すブロック回路図である。発光装置10は、複数の発光素子アレイチップL1,L2,…,Lp−1,Lp(記号pは、2以上の正の整数)と、前記発光素子アレイチップ1〜Lpの駆動回路として、発光信号を供給する発光信号駆動IC(Integrated Circuit)130と、ゲート信号を供給するゲート信号駆動IC131と、クロック信号、入力トリガ信号およびセット信号を供給して各発光素子アレイチップL1〜Lpをセレクト状態にするためのセレクト信号駆動IC132と、正の電圧源Vccとを含んで構成される。各駆動ICは後述する制御手段96に基づいて、画像情報を出力する。各発光素子アレイチップ1〜Lpについて、それぞれを総称して指す場合および不特定のものを指す場合に、単に発光素子アレイチップLと記載する。また、発光素子アレイチップLを単にアレイチップLと記載する場合がある。本実施の形態では各アレイチップLには、図1に示す第1の実施の形態の発光素子アレイチップ1を用いる。なお、セレクト信号駆動IC132が前記入力トリガ信号用駆動回路、前記クロック信号用駆動回路および前記セット信号用駆動回路に対応し、ゲート信号駆動IC131が前記第2選択信号用駆動回路に対応し、発光信号駆動IC130が前記発光信号用駆動回路に対応する。
各アレイチップLは、配列方向Xに沿って発光素子Tが一列に配列されて、各発光素子Tからの光の出射方向を揃えて回路基板に実装される。ただし、図14には回路基板は図示していない。また、発光信号駆動IC130とゲート信号駆動IC131とセレクト信号駆動ICと正の電源Vccとは、前記回路基板に実装される。回路基板にはさらに、各駆動IC130〜132および正の電源の出力端子と各アレイチップLのボンディングパッドとを接続するためのパターン配線が形成され、パターン配線とボンディングパッドとがボンディングワイヤで接続される。
前述したように、図1および図8に示す第1の実施の形態の発光素子アレイチップ1には、m個の発光信号用ボンディングパッドA、1個の入力トリガ信号用ボンディングパッドCSG、1個のクロック信号用ボンディングパッドCLA、1個のセット信号用ボンディングパッドCSA、1個の電源用ボンディングパッドVs、1個の出力トリガ信号用ボンディングパッドTRAおよび4個のゲート信号用ボンディングパッドGが含まれる。図14では、各アレイチップLを構成する発光素子Tの配列方向Xに沿う一方から他方に向かって、各アレイチップに第1番から第p番まで番号を付し、特定の順番の発光素子アレイについて示す場合には、参照符号の末尾に番号を付して区別するものとする。たとえば、第i10(1≦i10≦p)番目のアレイチップLi10の入力トリガ信号用ボンディングパッドCSGを第i10番目の入力トリガ信号用ボンディングパッドCSGi10と記載する。不特定のアレイチップLの入力トリガ信号用ボンディングパッドCSG1〜CSGpを指すとき、または入力トリガ信号用ボンディングパッドCSG1〜CSGpを総称するときには、単に入力トリガ信号用ボンディングパッドCSGと記載する場合がある。
発光信号駆動IC130は、各アレイチップLの発光信号用ボンディングパッドA1〜Amと同数(m個)の発光信号出力端子λ1〜λmを有する。発光信号出力端子λ1〜λmについて、複数のものを総称する場合または不特定のものを指す場合に、単に発光信号出力端子λと記載する場合がある。各発光信号用ボンディングパッドAと発光信号出力端子λとの接続は、異なるアレイチップ間で配線を共用して接続される。p個のアレイチップが実装されている本実施の形態の場合には、各アレイチップLを構成する発光素子Tの配列方向Xに沿う一方から他方に向かって、発光信号用ボンディングパッドA1〜Amに第1番から第m番まで番号を付し、また発光信号出力端子λ1〜λmにも第1番から第m番まで番号を付すと、p個のアレイチップのそれぞれの第i8(1≦i8≦m)番目の発光信号用ボンディングパッドAi8同士が電気的に接続され、さらに第i8番目の発光信号出力端子λi8に電気的に接続される。
ゲート信号駆動IC131は各アレイチップLのゲート信号用ボンディングパッドG1〜G4と同数(4個)のゲート信号出力端子μ1〜μ4を有する。ゲート信号出力端子μ1〜μ4について、複数のものを総称する場合または不特定のものを指す場合に、単にゲート信号出力端子μと記載する場合がある。各ゲート信号用ボンディングパッドGとゲート信号出力端子μとの接続は、異なるアレイチップ間で配線を共用して接続される。p個のアレイチップが実装されている本実施の形態の場合には、各アレイチップLを構成する発光素子Tの配列方向Xに沿う一方から他方に向かって、ゲート信号用ボンディングパッドG1〜G4に第1番から第4番まで番号を付し、またゲート信号出力端子μ1〜μ4にも第1番から第4番まで番号を付すと、p個のアレイチップそれぞれの第i9(1≦i9≦4)番目のゲート信号用ボンディングパッドGi9同士が電気的に接続され、さらに第i9番目のゲート信号出力端子μi9に電気的に接続される。
セレクト信号駆動IC132は、1個のセット信号出力端子η、1個の入力トリガ信号出力端子φS、および2個のクロック信号出力端子φ1,φ2を有する。セット信号出力端子ηは、各発光素子アレイチップL1〜Lpのセット信号用ボンディングパッドCSA1〜CSAp間で共通に接続される。入力トリガ信号出力端子φSは、第1番目の発光素子アレイチップL1の入力トリガ信号用ボンディングパッドCSG1と接続される。2個のクロック信号出力端子φ1,φ2は、それぞれ個別に2本のクロック信号伝送路CLL1,CLL2と接続される。そして、互いに隣接する発光素子アレイチップL同士のクロック信号用ボンディングパッドCLAは、それぞれ異なるクロック信号伝送路CLL1,CLL2に接続される。具体的にp個(ここでは、pは4以上の偶数とする)のアレイチップが実装されている本実施の形態の場合には、各アレイチップLを構成する発光素子Tの配列方向Xに沿う一方から他方に向かって、各アレイチップに第1番から第p番まで番号を付すと、奇数番目である第2i18−1番目(1≦i18≦p/2)のアレイチップLのクロック信号用ボンディングパッドCLA2i18−1と第1番目のクロック信号伝送路CLL1とが電気的に接続され、偶数番目である第2i18番目(1≦i18≦p/2)のアレイチップLのクロック信号用ボンディングパッドCLA2i18と第2番目のクロック信号伝送路CLL2とが電気的に接続される。
また前述したように、第i19(1≦i19≦p−1)番目の発光素子アレイチップLi19の出力トリガ信号用ボンディングパッドTRAi19は、発光素子アレイチップLの配列方向に隣接する第i19+1番目の入力トリガ信号用ボンディングパッドCSGi19+1と電気的に接続される。このような接続によって、クロック信号に同期して出力トリガ信号を配列方向に隣接する入力トリガ信号として順次転送することができる。したがって、第1番目の発光素子アレイチップL1から発光素子アレイチップLの配列の順番にクロック信号に同期して順次セレクト状態にすることができる。
このように、セレクト状態にあるアレイチップLを順番に切り替えることで、複数の発光素子アレイ間でゲート信号駆動IC131および発光信号駆動IC130を共用にする時分割駆動を安定に動作させることができる。したがって、駆動用ICの数、および駆動用ICを実装する基板の層数を少なくすることができ、発光素子アレイおよび駆動用IC実装基板の面積を小さくすることができ、結果として小形でかつ安定に動作する発光装置が実現できる。
図15は、発光装置10の動作を示すタイミングチャートであり、横軸は基準時刻からの経過時間を表し、縦軸は各駆動用IC130〜132の出力端子の電圧または電流の大きさを表す。図15では、発光信号駆動IC130、ゲート信号駆動IC131、およびセレクト信号駆動IC132のそれぞれの信号出力端子(発光信号出力端子λ、ゲート信号出力端子μ、入力トリガ信号出力端子φS、クロック信号出力端子φ1,φ2およびセット信号出力端子η)から出力される電圧または電流の波形が示されている。なお、図15では、出力波形の参照符号として、各信号出力端子と接続されるボンディングパッド(信号入力端子)の参照符号を用いる場合がある。
本実施の形態では、発光信号駆動IC130は、ハイ(H)レベルのとき5mA、ロー(L)レベルのとき0mAの定電流を出力する。ゲート信号駆動IC131は、ハイ(H)レベルのとき5V、ロー(L)レベルのとき0Vの定電圧を出力する。セレクト信号駆動IC132は、ハイ(H)レベルのとき5V、ロー(L)レベルのとき0Vの定電圧を出力する。
図15を用いて、発光装置10の動作を時間の経過の順に説明する。時刻t0では、入力トリガ信号出力端子φSの電圧はハイ(H)レベルであり、第1番目のクロック信号出力端子φ1の電圧はロー(L)レベルであるので、第1番目のアレイチップL1は選択状態にない。時刻t1で、第1番目のアレイチップL1に入力される入力トリガ信号出力端子φSの電圧をロー(L)レベルにし、第1番目のクロック信号出力端子φ1の電圧をハイ(H)レベルにすることで、第1番目のアレイチップL1がセレクト状態になるともに、第1番目のアレイチップL1から出力された出力トリガ信号が第2番目のアレイチップL2の入力トリガ信号として入力される。時刻t2で、各アレイチップLの第1番目のゲート信号入力端子G1にハイ(H)レベルの電圧が印加される。すると、選択状態にある第1番目のアレイチップL1のみ、第1番目のスイッチ用サイリスタS1がスイッチングしてオン状態に遷移し、スイッチ用サイリスタS1のゲート電極d1に接続されたゲート横配線GH1の電位がほぼローレベル(0V)になる。次に、時刻t3で、各アレイチップの発光信号入力端子A1〜Amに発光信号が入力される。すると、選択状態にある第1番目のアレイチップL1のうちで、第1番目のゲート横配線GH1に接続された発光用サイリスタTが発光する。時刻t4で発光信号がロー(L)レベルに戻るので消灯する。次に、時刻t5で、第1番目のゲート信号入力端子G1に接続されるゲート信号出力端子μ1の電圧がロー(L)レベルに戻り、第2番目のゲート信号入力端子G2に接続されるゲート信号出力端子μ2の電圧がハイ(H)レベルになる。すると、選択状態にある第1番目のアレイチップL1のみ、第2番目のスイッチ用サイリスタS2がスイッチングしてオン状態に遷移する。時刻t6〜t7では、再び各アレイチップの発光信号入力端子A1〜Amに発光信号が入力される。すると、選択状態にある第1番目のアレイチップL1のうちで、第2番目のゲート横配線GH2に接続された発光用サイリスタTが発光する。以下同様に、時刻t8〜t11では、第3番目のゲート信号入力端子G3に接続されるゲート信号出力端子μ3の電圧がハイ(H)レベルになるので、選択状態にある第1番目のアレイチップL1のうち、第3番目のスイッチ用サイリスタS3がスイッチングしてオン状態に遷移する。この状態で、時刻t9〜t10で、再び各アレイチップの発光信号入力端子A1〜Amに発光信号が入力されるので、選択状態にある第1番目のアレイチップL1のうちで、第3番目のゲート横配線GH3に接続された発光用サイリスタTが発光する。また、時刻t11〜t14では、第4番目のゲート信号入力端子G4に接続されるゲート信号出力端子μ4の電圧がハイ(H)レベルになるので、選択状態にある第1番目のアレイチップL1のうち、第4番目のスイッチ用サイリスタS4がスイッチングしてオン状態に遷移する。この状態で、時刻t12〜t13で、再び各アレイチップの発光信号入力端子A1〜Amに発光信号が入力されるので、選択状態にある第1番目のアレイチップL1のうちで、第4番目のゲート横配線GH4に接続された発光用サイリスタTが発光する。時刻t15で、各アレイチップLのセット信号入力端子CSAに接続されるセット信号出力端子ηの電圧が、ハイ(H)レベルからロー(L)レベルに戻るので、第1番目のアレイチップL1の選択用サイリスタUがオフ状態に遷移する。時刻t16で、第1番目のアレイチップL1のトリガ信号入力端子CSG1に接続される入力トリガ信号出力端子φSの電圧がハイ(H)レベルに戻り、第1番目のアレイチップL1のクロック信号入力端子CLA1に接続される第1番目のクロック信号出力端子φ1の電圧がロー(L)レベルになり、第2番目のアレイチップL2のクロック信号入力端子CLA2に接続される第2番目のクロック信号出力端子φ2の電圧がハイ(H)レベルになる。すると、第1番目のアレイチップL1は選択状態でなくなるとともに、時刻t1から入力トリガ信号が入力されている第2番目のアレイチップL2が選択状態になる。なお、図7において前述したように、第1番目のアレイチップL1から第2番目のアレイチップL2への選択状態の切り替わりを確実に行うために、次に選択状態となる方の第2番目のアレイチップL2と接続される第2番目のクロック信号出力端子φ2の電圧の立ち上がりを、第1番目のクロック信号出力端子φ2の電圧の立ち下がりよりも先行させるとよい。
第2番目のアレイチップL2についても同様の手順で順次、発光用サイリスタTを発光させることができる。すなわち、セット信号入力端子CSAに接続されるセット信号出力端子ηの電圧が、ハイ(H)レベルからロー(L)レベルに戻った後の、時刻t18で、各アレイチップLの第1番目のゲート信号入力端子G1に接続されるゲート信号出力端子μ1の電圧がハイ(H)レベルになる。続く時刻t19で、各アレイチップLの全ての発光信号入力端子A1〜Amに発光信号が入力されることによって、選択状態にある第2番目のアレイチップL2の第1番目のゲート横配線GH1に接続された発光用サイリスタTが発光する。なお、セット信号入力端子CSAに接続されるセット信号出力端子ηの電圧がロー(L)レベルのままで、ゲート信号および発光信号を入力しないようにする必要がある。セット信号出力端子ηの電圧がロー(L)レベルのときは、各発光素子アレイチップLのゲート横配線GHの電圧はロー(L)レベルであるので、選択状態でなくても発光用サイリスタTが発光することになるからである。
このように、アレイチップLの配列方向の順番にアレイチップを選択状態にすることで、アレイチップLごとの時分割駆動が可能となる。さらに、ゲート信号が、第1番目のスイッチ用サイリスタから順番に与えられることで、アレイチップLの中での時分割駆動が可能になる。
図16は、本実施の形態の発光素子アレイチップ1を含んだ前記発光装置10を使用した画像形成装置の基本的構成を示す側面図である。
画像形成装置87は、電子写真方式の画像形成装置であり、前記発光装置10Y,10M,10C,10Kを、感光体ドラム90への露光装置に使用している。発光装置10Y,10M,10C,10Kは、各駆動IC(発光信号駆動IC130、ゲート信号駆動IC131、およびセレクト信号駆動IC132)が設けられる回路基板に実装される。
画像形成装置87は、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色のカラー画像を形成するタンデム方式を採用した装置であり、大略的に、4つの発光装置10Y,10M,10C,10K、集光手段であるレンズアレイ88C,88M,88Y,88K、発光装置10Y,10M,10C,10Kおよび各駆動IC130,131,132が実装された回路基板およびレンズアレイ88を保持する第1ホルダ89C,89M,89Y,89K、4つの感光体ドラム90C,90M,90Y,90K、4つの現像剤供給手段91C,91M,91Y,91K、転写手段である転写ベルト92、4つのクリーナ93C,93M,93Y,93K、4つの帯電器94C,94M,94Y,94K、定着手段95および制御手段96を含んで構成される。
各発光装置10Y,10M,10C,10Kは、各駆動ICによって各色のカラー画像情報に基づいて駆動される。たとえば、4つ発光装置10Y,10M,10C,10Kの配列方向Xの長さは、たとえば200mm〜400mmに選ばれる。
各発光装置10Y,10M,10C,10Kの発光用サイリスタTからの光は、レンズアレイ88を介して各感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kに集光して照射される。レンズアレイ88は、たとえば発光素子の光軸上にそれぞれ配置される複数のレンズを含み、これらのレンズを一体的に形成して構成される。
発光装置10Y,10M,10C,10Kが実装される回路基板およびレンズアレイ88は、第1ホルダ89によって保持される。第1ホルダ89によって、発光用サイリスタTの光照射方向と、レンズアレイ88のレンズの光軸方向とがほぼ一致するようにして位置合わせされる。
各感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kは、たとえば円筒状の基体表面に感光体層を被着して成り、その外周面には各発光装置10Y,10M,10C,10Kからの光を受けて静電潜像が形成される静電潜像形成位置が設定される。
各感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kの周辺部には、各静電潜像形成位置を基準として回転方向下流側に向かって順番に、露光された感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kに現像剤を供給する現像剤供給手段91C,91M,91Y,91K、転写ベルト92、クリーナ93C,93M,93Y,93K、および帯電器94C,94M,94Y,94Kがそれぞれ配置される。感光体ドラム90に現像剤によって形成された画像を記録シートに転写する転写ベルト92は、4つの感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kに対して共通に設けられる。
前記感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kは、第2ホルダ(図示省略)によって保持され、この第2ホルダと第1ホルダ89とは、相対的に固定される。各感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kの回転軸方向と、各発光装置10Y,10M,10C,10Kの前記配列方向Xとがほぼ一致するようにして位置合わせされる。
転写ベルト92によって、記録シートを搬送し、現像剤によって画像が形成された記録シートは、定着手段95に搬送される。定着手段95は、記録シートに転写された現像剤を定着させる。感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kは、回転駆動手段によって回転される。
制御手段96は、前述した各駆動IC130,131,132にクロック信号および画像情報を与えるとともに、感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kを回転駆動する回転駆動手段、現像剤供給手段91C,91M,91Y,91K、転写手段92、帯電手段94C,94M,94Y,94Kおよび定着手段95の各部を制御する。
このような構成の画像形成装置87では、各発光素子を発光状態とするか、または非発光状態とするかを、主電流が流れないゲート電極bに接続されているゲート横配線GHを伝送するゲート信号によって切り換えるため、発光装置10Y,10M,10C,10Kを実装するための回路基板側に形成されるゲート信号の伝送路も細くすることが可能で、回路基板を小形化することができ、さらにこのゲート信号駆動IC(Integrated Circuit)についても主電流を切り換える事が無いため、ICの容量が小さくできるので、小形化および低コスト化を実現することができる。
以上のように、本実施の形態の発光素子アレイチップ1によれば、クロック信号および入力トリガ信号が入力されてセレクト状態にある発光素子アレイチップ1のみゲート信号を発光用サイリスタT側に受け渡すように動作するため、このような発光素子アレイチップ1を複数配列して駆動する場合において、複数の発光素子アレイチップ1ごとに駆動用ICを接続せずとも、発光信号およびゲート信号を与える駆動用ICおよび配線を共用して時分割駆動することができるので、少ない駆動用ICと配線数で時分割駆動することができるという基本的な作用効果を有する。また、複数の発光素子アレイチップ1を駆動する場合に、入力トリガ信号がセレクト状態にある隣接する発光素子アレイチップ1から入力されるようにすれば、少なくとも2つのクロック信号と1つの入力トリガ信号を与える駆動用ICと配線を追加するだけで、発光素子アレイチップ1の配列順にクロック信号に同期して順次セレクト状態にすることができる。
また、アノードaが複数の発光用サイリスタTで共通化された発光素子ブロックBを複数設け、複数の発光素子ブロックBでゲート横配線GHを共有した場合には、1つの発光素子アレイチップ1内においても複数の発光素子ブロックB間で時分割駆動をすることができる。この結果、駆動用ICに接続すべきゲート横配線GHの数を減らすことできるので、ゲート信号の出力ポート数の少ない駆動用ICを用いて、少ない駆動用ICで時分割駆動することができる発光装置を提供できる。
また、発光信号、ゲート信号、入力トリガ信号、クロック信号および正の電圧を供給するためのボンディングパッドA,G,CSG,CLA,Vsならびに出力トリガ信号を出力するためのボンディングパッドTRAを発光素子の配列方向Xに配置する場合には、1つの発光素子ブロックBに対して発光信号用ボンディングパッドAを1つ備えることとなり、隣り合う発光素子ブロックBに対しそれぞれ1つ配置される発光信号用のボンディングパッドA同士の間にスペースが生じる。したがって、そのスペースを有効に活用してスイッチ用サイリスタSなどを配置することができるので、スイッチ用サイリスタSなどを設けても発光素子アレイチップのサイズが増大することを避けることができ、発光素子の高密度化が容易で小形な発光素子アレイチップを提供することができるという点で有利である。
また、第1スイッチ部、第2スイッチ部および発光素子は発光サイリスタを含んで構成されるから、たとえばNANDゲートやインバータなどといった複雑な半導体装置を用いることなく、簡単な構成で、ゲート信号を入力すべき発光素子アレイチップ1を選択する論理回路を構成することができるので、設計が容易となり、また製造工程を簡略化することができる点で有利である。
また選択用サイリスタUのNゲート電極fに流れ込む電流は小さいので、セレクト信号伝送路CSLの線幅を小さくすることができる。これによって発光素子アレイチップ1の小形化を実現することができる。
また、第2プルアップ抵抗RPや選択用サイリスタUなどを用いる前記構成とする場合には、第2プルアップ抵抗RPによって、選択用サイリスタUが接続されたゲート電極の電圧が所定値に安定に設定されるため、スイッチ用サイリスタSのスイッチング動作を安定にし、AND回路としての動作を確実することができるという点で有利である。
また、ゲート信号用ボンディングパッドGとスイッチ用サイリスタSのアノードcの間に電流制限抵抗RIを接続する場合には、高速化の目的で複数のスイッチ用サイリスタSを同時にオン状態に遷移させるとき、複数間でスイッチングのタイミングが少しずれても、最初のスイッチングによってゲート信号の信号電圧が低下することがなく、複数のスイッチ用サイリスタSのアノードcの電位が安定に確保される。したがって、複数のスイッチ用サイリスタを確実にスイッチングさせることができるため、複数の発光素子アレイチップ1で同じ時分割のタイミングにすることができ、高速化に有利である。
また、スイッチ用サイリスタSを構成する半導体層と発光用サイリスタTを構成する半導体層とを同じ層構成となるように形成するときには、発光用サイリスタTとスイッチ用サイリスタSとを同時に同じ工程で製造することができる。よって、発光素子としての発光用サイリスタTの他にスイッチ用サイリスタSを設ける本発明の構成であっても、製造工程が複雑化することがなく、製造においても有利な発光素子アレイを提供することができる。
また、スイッチ用サイリスタSの表面に遮光手段として金属薄膜などを設ける場合には、そのスイッチ用サイリスタSの発光による光が発光用サイリスタTに入射して発光用サイリスタTのしきい値を変動させてしまうことを避けることができるという点で有利である。
また、第1プルアップ抵抗RQとして第3半導体層174を用い、第2プルアップ抵抗RPとして第3半導体層54を用い、これらの第1プルアップ抵抗RQおよび第2プルアップ抵抗RPを覆うように遮光膜12を設けることによって、裏面電極26に対するプルアップ抵抗RPの絶縁性を高め、動作を安定化させることができる。
また前記構成の発光素子アレイチップ1を用いることにより、発光装置が、小形であって、安定に動作する信頼性の高いものとなるので、良好な画像を安定に形成することができる画像形成装置を提供できる。
このように、本発明によれば、少ない駆動用ICで時分割駆動することができ、ボンディングパッド数の低減によって発光素子の高密度化が可能な発光素子アレイおよびそれを用いた小形な発光装置ならびにその発光装置を備える画像形成装置を提供することができる。
図17は、本発明の発光素子アレイの第2の実施の形態としての発光素子アレイチップ2を示す概略的な等価回路図である。図1に示す第1の実施の形態としての発光素子アレイチップ1との構成上の違いは、発光素子ブロックBを設けていない点にあり、他の構成は共通である。したがって、共通する部分については同じ参照符号を付して、説明を省略する。
第2の実施の形態としての発光素子アレイチップ2は、第1の実施の形態と同様に、k個の発光素子としての発光用サイリスタT1〜Tkと、1個の第1スイッチ部としてのクロック用サイリスタCLおよびトリガ用サイリスタTRと、n個の第2スイッチ部としてのスイッチ用サイリスタS1〜Snおよび選択用サイリスタU1〜Unと、n本のゲート横配線GH1〜GHnと、1本のセレクト信号伝送路CSLとを含んで構成される。第1スイッチ部は他に、1個の第1プルアップ抵抗RQを含み、第2スイッチ部は他に、n個の第2プルアップ抵抗RP1〜RPnとを含む。本実施の形態においても、各サイリスタCL,TR,S,U,Tのカソードを共通の電極として設置している。また、第1の実施の形態と同様に、第1選択信号がセレクト信号に対応し、第2選択信号がゲート信号に対応し、第1選択信号伝送路がセレクト信号伝送路CSLに対応し、制御信号伝送路がゲート横配線GHに対応する。前記抵抗体としての電流制限抵抗RIはより好ましい構成として付加する場合があるが、本実施の形態においては用いていない。
前述した通り、発光素子アレイチップ2の発光用サイリスタTは、発光素子ブロックBごとに分けられていないので、発光用サイリスタTのアノードaは、発光信号入力端子Aと1つずつ接続される。たとえば、図17において、発光用サイリスタTの配列方向の一方から他方へ第i15(1≦i15≦k)番目の発光用サイリスタTi15のアノードai15は第i15番目の発光信号入力端子Ai15と接続される。発光用サイリスタTのゲート電極bはゲート横配線GHのいずれか1本と接続される。ゲート横配線GHの本数のnと発光用サイリスタTの個数kは必ずしも等しくする必要はないので、同じゲート横配線GHに複数の発光用サイリスタTのゲート電極bを接続してもよい。この場合に同じゲート横配線GHに接続される発光用サイリスタTの発光を選択的に発光させるためには、異なる発光信号を与える必要がある。
第2の実施の形態の発光素子アレイチップ2の作用効果は、第1の実施の形態の発光素子アレイチップ1と基本的に同様である。発光素子アレイチップ2においては、スイッチ素子として設けたスイッチ用サイリスタSが、クロック信号および入力トリガ信号により選択された時間にのみゲート信号を発光用サイリスタT側に受け渡すように動作する。したがって、このような発光素子アレイチップ1を複数配列して駆動する場合において、複数の発光素子アレイチップ1ごとに駆動用ICを接続せずとも、発光信号およびゲート信号を与える駆動用ICおよび配線を共用して時分割駆動することができるので、少ない駆動用ICと配線数で時分割駆動することができる。しかも、複数の発光素子アレイチップ2を駆動する場合に、入力トリガ信号がセレクト状態にある隣接する発光素子アレイチップ2から入力されるように構成すれば、少なくとも2つのクロック信号と1つの入力トリガ信号を与える駆動用ICと配線を付加するだけで、上述のようなアレイチップ間の時分割駆動が可能になる。他の作用効果も同様であるが、第1の実施の形態の発光素子アレイチップ1と異なり発光素子ブロックBを設けていないので、1つの発光素子アレイチップ1内において時分割駆動をすることはできない。その代わり、セレクト信号によって選択した発光素子アレイチップ2内の全ての発光サイリスタを選択的に発光させることができる。
図18は、本発明の発光素子アレイの第3の実施の形態としての発光素子アレイチップ3を示す概略的な等価回路図である。
図18に示した第3の実施の形態の発光素子アレイチップ3は、図1に示した第1の実施の形態の発光素子アレイチップ1および図17に示した第2の実施の形態の発光素子アレイチップ2と異なり、発光サイリスタを用いずにスイッチ素子および発光素子を構成したものである。スイッチ素子および発光素子の構成以外の部分については、図17と同様であるので、同じ参照符号を付して説明を省略する。
図18に示した第3の実施の形態の発光素子アレイチップは、n個のスイッチ素子とk個の発光素子を含んで構成される。図17では、n=k=4の場合を例示している。以下、図17で示したn=k=4の場合について記載するが、一般的な場合と回路動作は同様である。
発光素子は電界効果トランジスタFET1〜FET4と発光ダイオードLED1〜LED4を含んで構成される。電界効果トランジスタはソース電極、ドレイン電極、ゲート電極を有し、ダイオードのアノードと電界効果トランジスタのソース電極とが接続される。ダイオードのカソードは共通の電極として接地される。電界効果トランジスタの各ドレイン電極α1〜α4は、各発光信号入力端子A1〜A4と個別に接続される。電界効果トランジスタの各ゲート電極β1〜β4は、各ゲート横配線GH1〜GH4のいずれかに接続される。なお、電界効果トランジスタのドレイン電極とダイオードのカソードを接続してもよい。この場合はダイオードのアノードが共通の電極として接地され、電界効果トランジスタの各ソース電極が各発光信号入力端子A1〜A4と個別に接続される。
第1スイッチ部は、2入力の論理積を出力するAND回路素子AND0であり、たとえばNAND回路素子とNOT回路素子とを組み合わせた回路により構成することができる。AND回路素子AND0の一方の入力端子γ0はクロック信号入力端子CLAと接続され、他方の入力端子δ0はトリガ信号入力端子CSGと接続される。AND回路素子AND0の出力端子ε0はセレクト信号伝送路CSLと接続される。さらに、セレクト信号伝送路CSLには、トリガ信号出力端子TRAが接続される。
第2スイッチ部は、2入力の論理積を出力するn個のAND回路素子AND1〜AND4である。本実施の形態ではn=4である。AND回路素子AND1〜AND4の一方の入力端子γ1〜γ4はゲート信号入力端子G1〜G4と個別に接続され、他方の入力端子δ1〜δ4は共通のセレクト信号伝送路CSLと接続される。AND回路素子の出力端子ε1〜ε4はゲート横配線GH1〜GH4と個別に接続される。
AND回路素子AND1〜AND4は砒化ガリウム(GaAs)製MES−FET集積回路,シリコン(Si)製TTL,CMOSなどの一般によく知られた論理回路(ロジック)で構成することができる。発光素子アレイチップ3は、GaAsまたはSi基板上にこのような論理回路、LEDおよび電界効果トランジスタを形成することによって作製することができる。
次に、図18に示す発光素子アレイチップ3の動作について説明する。
図18に示す発光素子アレイチップ3は、トリガ信号入力端子CSGから真値(ハイレベルの電圧)が入力され、クロック信号入力端子CLAから真値が(ハイレベルの電圧)が入力されたとき、第1スイッチ部を構成するAND回路素子AND0の出力端子ε0から真値(ハイレベルの電圧)が出力され、セレクト信号伝送路CSLの電位がハイレベルになる。この状態が前記セレクト状態に相当し、セレクト状態では、セレクト信号伝送路CSLに接続されたトリガ信号出力端子TRAからハイレベルの電圧が出力され、隣接する発光素子アレイチップ3の入力トリガ信号として用いられる。
またセレクト状態では、セレクト信号伝送路CSLに接続された各第2スイッチ部を構成するAND回路素子AND1〜AND4の一方の入力端子δ1〜δ4にハイレベルの電圧が入力される。このとき、ゲート信号入力端子G1〜G4からハイレベルのゲート信号が入力されると、AND回路素子AND1〜AND4は、出力端子(第1制御電極)ε1〜ε4からハイレベルの信号を出力する。ゲート横配線GH1〜GH4は、AND回路素子AND1〜AND4の出力端子(第1制御電極)ε1〜ε4と個別に接続されているので、出力されたハイレベルの信号がゲート横配線GH1〜GH4を伝送し、ゲート横配線GH1〜GH4と接続されている電界効果トランジスタFET1〜FET4のゲート電極β1〜β4に入力される。その状態で発光信号入力端子A1〜A4からハイレベルの発光信号が入力されると、発光ダイオードLED1〜LED4が発光する。
このように、スイッチ素子として設けられたAND回路素子AND1〜AND4が、クロック信号および入力トリガ信号により選択された時間にのみゲート信号を発光ダイオードLED1〜LED4側に受け渡すように動作する。したがって、複数の発光素子アレイチップ3を用いて発光装置を構成する場合に、複数の発光素子アレイチップ3ごとに駆動用ICを接続せずとも、駆動用IC、ならびに駆動用ICと発光信号入力端子A1〜A4およびゲート信号入力端子G1〜G4との配線を共用して時分割で駆動することができるので、少ない駆動用IC数および配線数で時分割駆動する発光素子装置が実現できる。
図19は、本発明の発光素子アレイの第4の実施の形態としての発光素子アレイチップ4を示す概略的な等価回路図である。図1に示す第1の実施の形態としての発光素子アレイチップ1との構成上の違いは、図8では、スイッチ用サイリスタSの個数がn=5であり、したがって、ゲート横配線GHの配線数もそれに等しく、n=5であるのに対し、発光素子ブロックBを構成する発光用サイリスタTの個数は、それより1少ない、n−1=4であるという点である。さらに、ゲート横配線GHと発光素子ブロックBを構成する発光用サイリスタTとの接続に特徴がある。なお、その他の構成は共通であるので、共通する部分については同じ参照符号を付して、説明を省略する。
図19において、発光用サイリスタTの配列方向Xに沿って、スイッチ用サイリスタSに近接する側から離反する側に向かう方向をX1方向とし、その反対方向をX2方向とする。X1方向とX2方向を合わせてX方向とする。ここで、X1方向に向かって、発光素子ブロックに第1番から第m番まで番号を付し、さらに、各発光素子ブロックを構成する発光用サイリスタTにX1方向に順に第1番から第n−1番まで番号を付す。また、n本のゲート横配線GHに予め定められた順番で第1番から第n番まで番号を付す。
本実施の形態では、奇数番目の発光素子ブロックでは、その発光素子ブロックにおける第i1(1≦i1≦n−1)番目の発光用サイリスタTと、第j1(1≦j1≦n−1)番目のゲート横配線GHj1とが、i1=j1を満たすように接続され、偶数番目の発光素子ブ
ロックでは、その発光素子ブロックにおける第i2(1≦i2≦n−1)番目の発光用サイリスタTと、第j2(2≦j2≦n)番目のゲート横配線GHj2とが、i2+j2=n+1
を満たすように接続される。
この場合、第1番目のゲート横配線GH1に接続された発光用サイリスタTの、X方向に隣接する発光用サイリスタTは、第2番目のゲート横配線GH2に接続される。また、第j3(2≦j3≦n−1)番目のゲート横配線GHj3に接続された発光用サイリスタT
の、X方向に隣接する発光用サイリスタTは、第j3−1番目または第j3+1番目のいずれかのゲート横配線に接続される。また、第n番目のゲート横配線GHnに接続された発光用サイリスタTの、X方向に隣接する発光用サイリスタTは、第n−1番目のゲート横配線GHn−1に接続される。したがって、選択状態にある発光素子アレイのスイッチ素子にゲート信号(第2選択信号)を入力し、第1番目のゲート横配線GH1から第n番目のゲート横配線GHn−1まで順番に時分割で制御信号を出力するとき、相互に隣接する発光用サイリスタTの発光するタイミングの時間的なずれを小さくすることができ、さらに隣接する発光用サイリスタTが同じ制御信号伝送路に接続されないので、相互に隣接する発光用サイリスタTが同時に発光してしまうことを防止することができる。
これによって本発明の発光素子アレイで構成した発光装置を、感光体ドラムを露光する露光装置として用いるとき、相互に隣接する発光用サイリスタ間における発光するタイミングが大きくずれてしまうことが抑制されることによって、感光体ドラムに露光される露光位置に不連続点が発生しない。さらに、相互に隣接する発光用サイリスタTが同時に発光することが防止されることによって、各発光用サイリスタTの発光した時の発熱のムラを抑制して、各発光用サイリスタTの温度変化による発光特性を揃えることができ、さらに相互に隣接する発光用サイリスタTから発生する光が干渉することを防止することができるので、感光体ドラムを精度よく露光することができる。この結果、本発明の発光素子アレイを用いた画像形成装置において、優れた画像品質の記録画像を得ることができる。
図20は、本発明の第5の実施の形態としての発光素子アレイチップ5を示す概略的な等価回路図である。図21は、図20に示す発光素子アレイチップ5を示す概略的な等価回路図の一部である、発光用サイリスタT1、スイッチ用サイリスタS1、およびダイオードD1と配線との接続を示したものである。本発明の実施の形態の発光素子アレイチップ5は、前述の第1の実施の形態の発光素子アレイチップ1の選択用サイリスタUをダイオードDに置換した構成である。またセット信号入力端子CSAは、正の定電圧源(Vcc)に接続される。すなわちセット信号は、時間に関して一定である。本発明の実施の形態の発光素子アレイチップ5は、前述の第1の実施の形態の発光素子アレイチップ1と同様であるので、対応する部分については同じ参照符号を付して説明を省略する。
本実施の形態では、第2スイッチ部は、n個のスイッチ用サイリスタS1〜Snと、n個のダイオードD1〜Dnと、n個の第2プルアップ抵抗RP1〜RPnとを含む。本実施の形態では、n=4である。以後ダイオードD1〜Dnを総称する場合または不特定のものを指す場合、ダイオードDと記載する場合がある。
本実施の形態のダイオードDのアノードg1〜g4(総称するときまたは不特定のものを指すときは単にgと記載する)は、前述の各実施の形態の選択用サイリスタUのアノードeに対応し、スイッチ用サイリスタSのNゲート電極dと第2プルアップ抵抗RPの一端とに電気的に接続される。本実施の形態のダイオードDのカソードh1〜h4(総称するときまたは不特定のものを指すときは単にhと記載する)は、前述の各実施の形態の選択用サイリスタUのNゲート電極fに対応し、セレクト信号伝送路CSLに接続される。
ダイオードDは、選択用サイリスタUと異なりゲート電極fがなく、アノードgとカソードhとの電位差だけでオン状態とオフ状態とが切換わる。したがってセット信号を定電圧にしても、セレクト信号を与えることによってダイオードDのオン状態とオフ状態とを切換えることができる。
図22は、発光素子アレイチップ5の基本的構成を示す一部の断面図である。本実施の形態の発光素子アレイチップ5の平面図は、図8に示す平面図と同様であり、図22は、図8の切断面線VIII−VIIIから見た発光素子アレイチップ5の断面図に相当する。
ダイオードDは、選択用サイリスタUの第3半導体層44の第2プルアップ抵抗RP寄りの端部に、選択用サイリスタUの第4半導体層45とオーミックコンタクト層47とに変えて、金属層81を積層した構成である。金属層81は、たとえばチタン(Ti)から成る。この金属層81と、第3半導体層44とによって、ショットキーバリアダイオードが構成される。
図22に示すように、第1プルアップ抵抗RQおよび第2プルアップ抵抗RPと同様の理由で、ダイオードDも遮光膜12で覆うことが好ましい。外部からの入射光による電子・正孔対の励起によって、第2半導体層43と第3半導体層44との間の絶縁性が損なわれるのを防止するためである。
図23は、本発明の実施の一形態の発光装置82を模式的に示すブロック回路図である。本実施の形態の発光装置82は、前述の第1の実施の形態の発光装置10と同様の構成であるので、対応する部分については同じ参照符号を付して説明を省略する。
本実施の形態の発光装置82は、前述の第1の実施の形態の発光装置10のセット信号出力端子ηとセット信号用ボンディングパッドCSAとの接続を、正の電圧源(Vcc)とセット信号用ボンディングパッドCSAとの接続に置換し、前述の第1の実施の形態の発光装置10の発光素子アレイチップ1を、第5の実施の形態の発光素子アレイチップ5に置換した構成である。
図24は、発光装置82の動作を示すタイミングチャートであり、横軸は基準時刻からの経過時間を表し、縦軸は信号レベルを電圧または電流の大きさで表す。本実施の形態の発光装置82は、前述の実施の形態の発光装置10の選択用サイリスタUをダイオードDに置換したので、セット信号用ボンディングパッドCSAにはセット信号を与える必要がなく、ハイ(H)レベルで一定の電圧が与えられる。
本実施の形態の発光装置82は、時刻t1〜時刻t14までは、前述の実施の形態の発光装置10と同じ動作をする。時刻t15では、第1番目のアレイチップL1のトリガ信号入力端子CSG1に接続される入力トリガ信号出力端子φSの電圧がハイ(H)レベルに戻り、第1番目のアレイチップL1のクロック信号入力端子CLA1に接続される第1番目のクロック信号出力端子φ1の電圧がロー(L)レベルになり、第2番目のアレイチップL2のクロック信号入力端子CLA2に接続される第2番目のクロック信号出力端子φ2の電圧がハイ(H)レベルになる。すると、第1番目のアレイチップL1は選択状態でなくなるとともに、時刻t1から入力トリガ信号が入力されている第2番目のアレイチップL2が選択状態になる。なお、図7において述べたたように、第1番目のアレイチップL1から第2番目のアレイチップL2への選択状態の切り替わりを確実に行うために、次に選択状態となる方の第2番目のアレイチップL2と接続される第2番目のクロック信号出力端子φ2の電圧の立ち上がりを、第1番目のクロック信号出力端子φ2の立ち下がりよりも先行させるとよい。
このように、アレイチップLの配列方向の順番にアレイチップを選択状態にすることで、アレイチップLごとの時分割駆動が可能となる。さらに、ゲート信号が、第1番目のスイッチ用サイリスタから順番に与えられることで、アレイチップLの中での時分割駆動が可能になる。また本実施の形態の発光素子アレイチップ5では、セット信号を与える必要がなくなるので、装置の構成が簡易になる。
図25は、本発明の発光装置の他の実施の形態を模式的に示すブロック回路図である。図25に示した発光装置83と図14に示した発光装置82とで異なる点は、発光信号駆動ICを2個使用することで、たとえば画像形成装置に用いたときに発光による感光体ドラムへの書き込み速度を向上させる点にある。図23と図25で共通する部分には同じ参照符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態の発光装置83は、複数の発光素子アレイチップL1,L2,…,Lp−1,Lp(記号pは正の偶数)と、前記発光素子アレイチップ1〜Lpの駆動回路として、発光信号を供給する第1発光信号駆動IC(Integrated Circuit)133aおよび第2発光信号駆動IC133bと、ゲート信号を供給するゲート信号駆動IC134と、クロック信号、入力トリガ信号およびセット信号を供給して各発光素子アレイチップL1〜Lpをセレクト状態にするためのセレクト信号駆動IC135と、正の電圧源Vccとを含んで構成される。各アレイチップLは、配列方向Xに沿って発光素子Tが一列に配列されて、各発光素子Tからの光の出射方向を揃えて回路基板に実装される。各駆動ICは前述した制御手段96に基づいて、画像情報を出力する。本実施の形態では各アレイチップLには、図1に示す第1の実施の形態の発光素子アレイチップ1を用いる。
第1発光信号駆動IC133aおよび第2発光信号駆動IC133bは、各アレイチップLの発光信号用ボンディングパッドA1〜Amと同数(m個)の発光信号出力端子λ1〜λmをそれぞれ有する。配列方向Xの一方から他方へ各アレイチップLに番号を付すと、第1番目〜第p/2番目までのアレイチップの発光信号用ボンディングパッドAは第1発光信号駆動IC133aの発光信号出力端子λに接続される。第p/2+1番目から第p番目までのアレイチップLの発光信号用ボンディングパッドAは第2発光信号駆動ICに接続される。具体的には、発光信号出力端子λ1〜λmに第1番から第m番まで順番に番号を付すと、第1番目から第p/2番目までのアレイチップについて、それぞれの第i12(1≦i12≦m)番目の発光信号用ボンディングパッドAi12同士が電気的に接続され、さらに第1発光信号駆動IC133aの第i12番目の発光信号出力端子λi12に電気的に接続される。また、第p/2+1番目から第p番目までのアレイチップについて、それぞれの第i13(1≦i13≦m)番目の発光信号用ボンディングパッドAi13同士が電気的に接続され、さらに第1発光信号駆動IC133aの第i13番目の発光信号出力端子λi13に電気的に接続される。
ゲート信号駆動IC134は各アレイチップLのゲート信号用ボンディングパッドG1〜G4と同数(4個)のゲート信号出力端子μ1〜μ4を有する。各ゲート信号用ボンディングパッドGとゲート信号出力端子μとの接続は、異なるアレイチップ間で配線を共用して接続される。本実施の形態の場合には、各アレイチップLを構成する発光素子Tの配列方向Xに沿う一方から他方に向かって、ゲート信号用ボンディングパッドG1〜G4に第1番から第4番まで番号を付し、またゲート信号出力端子μ1〜μ4に第1番から第4番まで番号を付すと、p個のアレイチップそれぞれの第i13(1≦i13≦4)番目のゲート信号用ボンディングパッドGi13同士が電気的に接続され、さらに第i13番目のゲート信号出力端子μi13に電気的に接続される。
セレクト信号駆動IC135は、1個のセット信号出力端子η、1個の入力トリガ信号出力端子φS、および2個のクロック信号出力端子φ1,φ2を有する。このうち、セット信号出力端子ηは、各発光素子アレイチップL1〜Lpのセット信号用ボンディングパッドCSA1〜CSAp間で共通に接続される。入力トリガ信号出力端子φSは、発光素子アレイチップLの第1番目の発光素子アレイチップL1の入力トリガ信号用ボンディングパッドCSG1、および第p/2+1番目の発光素子アレイチップLp/2+1の入力トリガ信号用ボンディングパッドCSGp/2+1と接続される。2個のクロック信号出力端子φ1,φ2は、それぞれ個別に2本のクロック信号伝送路CLL1,CLL2と接続される。そして、互いに隣接する発光素子アレイチップL同士のクロック信号用ボンディングパッドCLAは、それぞれ異なるクロック信号伝送路CLL1,CLL2に接続される。具体的にp個(ここでは、pは4以上の偶数とする)のアレイチップが実装されている本実施の形態の場合には、各アレイチップLを構成する発光素子Tの配列方向Xに沿う一方から他方に向かって、各アレイチップに第1番から第p番まで番号を付すと、奇数番目である第2i18−1番目(1≦i18≦p/2)のアレイチップLのクロック信号用ボンディングパッドCLA2i18−1と第1番目のクロック信号伝送路CLL1とが電気的に接続され、偶数番目である第2i18番目(1≦i18≦p/2)のアレイチップLのクロック信号用ボンディングパッドCLA2i18と第2番目のクロック信号伝送路CLL2とが電気的に接続される。
このように、1つの入力トリガ信号出力端子φSが第1番目と第p/2+1番目の2つのアレイチップLの入力トリガ信号用ボンディングパッドCSGに接続されるとともに、第1番目と第p/2+1番目のアレイチップLのクロック信号用ボンディングパッドCLAは共に第1番目のクロック信号伝送路CLL1と接続されるので、最初に第1番目と第p/2+1番目の2つのアレイチップLがクロック信号に同期してほぼ同時にセレクト状態になる。このセレクト状態では、第1番目のアレイチップL1から出力された出力トリガ信号は、隣接する第2番目のアレイチップL2の入力トリガ信号として入力され、第p/2+1番目のアレイチップLp/2+1から出力された出力トリガ信号は、隣接する第p/2+2番目のアレイチップLp/2+2の入力トリガ信号として入力されることになる。次のタイミングで、第2番目のクロック信号伝送CLL2にハイレベルのクロック信号が与えられると、これらの第2番目と第p/2+2番目のアレイチップLがセレクト状態になる。以下、順々に第1番目のアレイチップL1から第p/2番目のアレイチップLp/2がセレクト状態になり、並行して第p/2+1番目のアレイチップLp/2+1から第p番目のアレイチップLpがセレクト状態になる。ここで、第1番目から第p/2番目のアレイチップLの群と、第p/2+1番目から第p番目までのアレイチップLの群とは、第1および第2発光信号駆動IC133a,133bを用いて独立して駆動することができるので、図14の場合に比べて2倍の速度で発光による画像情報の書き込みなどを行うことができる。
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。