JP4875809B2 - 汚泥発酵肥料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、肥料の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
除草剤、殺菌剤等の農薬の使用や、化学肥料の連用によって地力が低下することは良く知られたことである。このような地力の低下の主要因は、土壌有機物および土壌有効微生物の減少によるものであり、その対策として、堆肥等の有機質肥料の施用、有効微生物活性剤の施用などが行われている。しかし、従来提案されている有機質肥料等は、その植物育成効果が十分でなかったり、コスト・パフォーマンスが十分でなかったりして、まだ十分満足できるものではない。
【0003】
一方、近年、一般廃棄物あるいは産業廃棄物は、その量、種類ともにますます増大し、その処理が重大な問題となっている。かかる廃棄物の有効利用の一環として、土地開発のため伐採した木材、抜根した根、森林育成のため間伐した間伐木材、剪定枝、あるいは木造家屋等の解体木材等の木質廃棄物をチップ加工し、それを微生物を利用して発酵、熟成させてバーク堆肥となし、あるいは、いわゆる生ゴミを微生物を利用して発酵、熟成させて堆肥となし、それらを有機質肥料等として有効利用することは良く知られている。しかし、その利用量は少なく、廃棄物を十分に有効利用する方法は未だ見出されてないのが現状であった。
【0004】
このような状況の中、本発明者は、優れた植物育成効果を有し、かつ廃棄物が有効利用され安価に製造できる肥料(土壌基盤材)を発明し、既に特許出願を行っている(特開2001−48687号)。この発明は、バーク堆肥、汚泥、黒土、畜産下肥および貝殻焼却灰を必須成分とする原材料混合物に微生物を加え、該原材料混合物を発酵、熟成させて得られる土壌基盤材である。これにより、例えば、排水処理施設等から排出される汚泥や、建設残土の黒土などの有効利用を図ることができる。しかしながら、上記土壌基盤材は、黒土を相当量含むことから、全体に占める微生物の相対量が小さくなり、すなわち微生物の密度が低下してしまい、そのために高い発酵温度を得ることができなかった。したがって、例えば、下水処理場の汚泥にトマトの種が含まれている場合に、発酵によってその種が完全には死滅せず、肥料化した段階で発芽してしまうという問題が生じ、さらなる改良が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、優れた植物育成効果を有し、かつ廃棄物を有効利用して安価に製造できる肥料であって、不要な雑菌や種などが死滅するように発酵を十分に進行させた、新規な汚泥発酵肥料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の汚泥発酵肥料は、バーク堆肥、汚泥、畜産下肥、及び土壌改良材を必須成分とする原材料混合物に対し、必要に応じて、腐敗性の有機物質や貝殻焼却灰を配合し、さらに微生物を加え、発酵、熟成させたことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、従来廃棄物とされてきたバーク堆肥や、施設等から排出される各種汚泥、及び貝殻焼却灰などの有効利用が図られるとともに、70〜80℃程度の高い発酵温度が得られ、雑菌等が死滅する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の汚泥発酵肥料は、バーク堆肥、汚泥、畜産下肥、及び土壌改良材を必須成分とする原材料混合物に対し、微生物を加え、発酵、熟成させて概略構成される。
【0009】
バーク堆肥としては、従来知られたバーク堆肥を適宜選択して用いることができる。バーク堆肥は、一般に、土地開発のため伐採した木材、抜根した根、森林育成のため間伐した間伐木材、剪定枝、あるいは木造家屋等の解体木材等の木質廃棄物をチップ加工し、その一部を微生物を利用して発酵、熟成させて製造される。バーク堆肥を用いることは、木質廃棄物の有効利用をなしたこととなる。このバーク堆肥は、市販品を適宜選択して用いても良いし、本発明の原材料用に木質廃棄物から常法により製造しても良い。なお、チップ化した一部を木炭、粉炭に加工したものは、後述の土壌改良材として本発明の原材料に利用することができる。
【0010】
上記バーク堆肥の製造に際しては、微生物として、従来知られたものを適宜選択して用いることができ、一般に、放線菌、光合成菌、乳酸菌、糸状菌、酵母等から選ばれた少なくとも一種が用いられるが、中でも、抗酸性で乳酸を生産し酪酸を生産せず病原性を有さずかつ拮抗価50以上である有効微生物群(Effective Micro−orgamisms:以下 「EM菌」と略称する)が好ましく用いられる。このEM菌は、自然界に存在する微生物の内の農業生産などに有用な放線菌、光合成菌、乳酸菌、糸状菌、酵母などの5科10属80余種の嫌気性と好気性の微生物を含むものである。このEM菌中の放線菌の例として、Strepto−myces sp.(ATCC 3004)、Streptoverticillium sp.(ATCC 23654)、Nocardia sp.(ATCC 19247)、Micromonospora sp.(ATCC 12452)、Rhodococcussp.等が挙げられ、光合成菌の例として、Rhodopseudomonas sp.(R.sphaeroldes)、Rhodosplrillum sp.(R.fulum)、Chromatium sp.(C.okenii)、Chlorobium sp.(C.limicola)等が挙げられ、乳酸菌(乳酸生成菌)の例として、Lactobacillus sp. (IFO 3070)、Propionibacterium sp.(P.freudenreichii)、Pediococcus sp.(P.halophilus)、Streptococcus sp.(S.lactis、S.faecalis)等が挙げられ、糸状菌の例として、Aspergillus sp.(RIFY 5770、RIFY 5024)、Mucor sp.(IFO 8567)等が挙げられ、酵母の例として、Saccharomyces sp.(NRRL 1346、Y977)、Candida sp.(C.utilis)等が挙げられる。また、このEM菌には、各種市販品があり、各種市販品を適宜選択して用いることもできる。
【0011】
次に、汚泥としては、例えば上下水道に関わる浄水処理施設、下水処理施設、あるいは工場その他の排水に関わる排水処理施設等の諸施設から排出される各種汚泥を適宜用いることができる。一般に、汚泥は、水分が多く、腐敗して異臭を発散し、その有効利用がなかなか難しい廃棄物であるが、本発明によれば、かかる汚泥を、肥料として好適に有効利用することができる。本発明の原材料として用いるに当たり、汚泥の水分含有量は、特に制限する必要なく適宜設定することができ、必要に応じて脱水ないし乾燥して適宜調整することができるが、一般には、75〜90重量%が適当である。
【0012】
また、畜産下肥としては、従来から知られた牛肥、豚肥、鶏糞等の畜産下肥を適宜選択して用いることができ、必要に応じて複数種の畜産下肥を併用することもできる。これら畜産下肥は、市販品を適宜選択して用いても良いし、本発明の原材料用に畜産動物の排泄物から常法により製造しても良い。また、これら畜産下肥は、一般に、その使用量を増減させて、本発明の肥料を所定の有機成分含有量とするための有機成分調節材として機能させることができる。また、その使用量を増減させて、発酵、熟成処理に付す原材料混合物を所定の水分含有量とするための水分含有量調節材として機能させることもできる。
【0013】
さらに、土壌改良材としては、従来知られた土壌改良材を適宜選択して用いることができるが、具体的には、ヤシ殻、杉バーク、ピートモス、バーミキュライト、ヤシ殻炭、木炭、粉炭等が好ましく用いられる。これらの土壌改良材は、一種配合することもできるし、二種以上配合することもできる。特に、杉バーク又はピートモスと、ヤシ殻(ヤシ殻炭を含む)との組み合わせは、発酵が効率よく進み、良質の肥料を得やすいため最も好ましく採用される。
【0014】
本発明の汚泥発酵肥料は、上記のようなバーク堆肥、汚泥、畜産下肥、及び土壌改良材を必須成分として用い、これら各原材料を混合した原材料混合物に微生物を加え、それを発酵、熟成させることにより製造される。その際、各原材料の配合割合は、各原材料の性状、特性等によって一概にはいえないが、一般に、バーク堆肥を25〜35重量部、汚泥を20〜30重量部、畜産下肥を25〜35重量部、土壌改良材を8〜15重量部程度とすることが適当である。特に、土壌改良材として、上述したような、杉バーク又はピートモスとヤシ殻とを併用する場合は、杉バーク又はピートモスを4〜6重量部、ヤシ殻を4〜9重量部とすることが好ましい。
【0015】
また、原材料混合物には、必要に応じて、上記必須成分に加え、さらに腐敗性の有機物質を配合することができる。この腐敗性有機物質の例として、米糠、油粕、魚粉、糖蜜、生ゴミ等が挙げられる。これらの腐敗性有機物質は一種配合することもできるし、二種以上配合することもできる。また、腐敗性有機物質の配合量は、それらの種類、性状等によって一概にはいえないが、一般に、必須成分の各原材料の合計を100重量部としたとき、1〜13重量部が適当である。
【0016】
さらに、原材料混合物には、必要に応じて、上記必須成分に加え、貝殻焼却灰を配合することができる。貝殻焼却灰としては、貝殻を焼却し粉砕してあるいは粉砕し焼却して得られた貝殻焼却灰が用いられる。原料の貝殻はその由来は問うことなく任意であるが、この原料貝殻として、例えば発電所、工場等における海水と接触する諸設備、例えば冷却用海水の配管等に付着していた貝であって、その諸設備の機能保全メンテナンスにおいて廃棄物として取り出された貝を用いれば、この貝殻焼却灰の使用も廃棄物の有効利用に他ならない。この貝殻焼却灰は、発酵、熟成処理に付す原材料混合物の酸性度を調整する機能を有する。すなわち、上記汚泥は酸性であることが多いので、貝殻焼却灰がその中和剤として機能する。本発明において、発酵、熟成処理に付す原材料混合物のpHは、一般に6.5〜7.3が適当である。また、貝殻焼却灰は、汚泥発酵肥料を土壌に施用したときに、その土壌を中和し、かつカルシウム源としても機能するものである。なお、上記貝殻焼却灰は、予め原材料混合物に配合する代わりに、本発明の汚泥発酵肥料を土壌に施用する際に一緒に施用しても良い。
【0017】
次に、原材料混合物に加える微生物としては、上述の、木質廃棄物からのバーク堆肥の製造の際と同様の微生物を用いることができる。すなわち、従来知られた微生物を適宜選択して用いることができ、一般に、放線菌、光合成菌、乳酸菌、糸状菌、酵母等から選ばれた少なくとも一種が用いられ、中でも、EM菌が好ましく用いられる。微生物の添加量は、添加される微生物の形態、原材料混合物の組成等によって異なり一概にはいえないが、微生物が、いわゆるボカシ(有機物質をEM菌などの微生物で予め発酵させたもの)の形態であるとすれば、一般に、原材料混合物を100重量部としたとき、1.0〜3.0重量部が適当である。
【0018】
なお、上述のように、微生物をボカシの形態で加える場合、そのボカシは、例えば米糠、油粕、魚粉、糖蜜などの有機物質と微生物とを混合し発酵させたものであるが、特に、糖蜜を、ボカシ全体に対して0.15〜0.25重量%程度含むことが好ましい。これにより、微生物が速やかに繁殖し、活動が活発になる。そのため、例えば、仮に原材料の一つであるバーク堆肥の熟成が不十分(いわゆる半生状態)であったとしても本発明に使用することができ、原材料の選択の幅、利用範囲が広がる。また、高い発酵温度を得やすくなるという顕著な効果を奏する。
【0019】
原材料混合物に微生物を加えて発酵、熟成させるには、従来知られた堆肥等の有機質肥料を製造する際の方法に準じて行うことができる。例えば、原材料混合物に微生物の固形培養物を添加混合し、それを密封容器に入れて所定温度に、所定時間保持して行うことができ、また微生物の固形培養物に代えて微生物の培養液を用いることもできる。また、発酵、熟成の処理条件は、原材料混合物の組成、用いた微生物の種類等必要に応じて適宜設定することができるが、一般に、原材料混合物の水分含有量は10〜40重量%が好ましく、そのpHは6.5〜7.3程度であることが好ましい。また、本発明においては、発酵温度が80℃程度にまで上昇するため、雑菌、不要な種などが死滅し、より上質な肥料が得られる。なお、発酵、熟成期間は、処理温度にもよるが、一般に2〜8ヶ月で完熟して、目的の汚泥発酵肥料が得られる。
【0020】
本発明の汚泥発酵肥料は、優れた植物育成効果を有し、かつ安価に製造できる等の優れた特性を有していて、種々の用途に幅広く用いることができる。その例として、樹木の植栽用土ないしその有機質肥料、家庭園芸用土ないしその有機質肥料、鉢植用土、稲作あるいは畑作の有機質肥料等が挙げられる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
(実施例1)
バーク堆肥(間伐材木から微生物として市販のEM菌を用いて製造したもの)30重量部、下水処理施設から排出された汚泥(脱水ケーキ)25重量部、牛肥30重量部、ヤシ殻8重量部、及び杉バーク5重量部から原材料混合物を構成した。原材料混合物は、水分含有量が75重量%で、pHは6.8であった。この原材料混合物に、ボカシ2重量部を加えて撹拌混合した。なお、ボカシとしては、米糠20kg、油粕7.0kg、魚粉7.0kg、糖蜜0.05kgにEM菌を加えて発酵させたものを用いた。続いて、攪拌混合したものをビニール袋に充填して密閉し、2.5ヶ月間保持して発酵、熟成を行い、目的の汚泥発酵肥料を製造した。
【0022】
次に、得られた汚泥発酵肥料の施用による、こまつな(ツケナ類)の発芽、及び発芽後の生育への支障の有無・程度を調べるため、幼植物試験を実施した。また、対照肥料として、市販のバーク堆肥を用い、同様の試験を行った。
(表1)に供試肥料(汚泥発酵肥料)及び対照肥料の分析成績、(表2)に供試土壌の土性及び沖積土又は洪積土の別、(表3)に試験区及び施肥の設計内容、(表4)に栽培方法及び管理の状況、そして試験結果として、(表5)に発芽及び生育調査成績並びに異常症状の有無を示す。
【0023】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0024】
なお、供試肥料に含まれるNは、乾物換算値で2%以下であるため、通達の試験方法に基づき、供試及び対照の両肥料の試験区の施肥量は、それぞれの肥料の乾物重量を基準として設定した。
また、上記(表3)に記載した供試及び対照肥料のすべての試験区並びに供試及び対照の両肥料の無施肥として設けた無機基礎量区に、N、P2O5、及びK2Oとしてそれぞれ25mgに相当する量の硫酸アンモニア、過リン酸石灰、及び塩化カリを施肥した。なお、上記(表3)の施用量欄中の括弧内数値は、有姿(現物)の量を示す。
【0025】
上記の試験の結果、(表5)に示すように、供試肥料区は、無機基礎量区に比べて、発芽については、発芽開始日及び発芽率とも同等程度の成績を示し、また発芽後の生育においては、同等以上の成績を示して、有害物によると考えられる植物の生育上の異常症状は認められなかった。
【0026】
【発明の効果】
以上、本発明の汚泥発酵肥料は、優れた植物育成効果を有し、かつ廃棄物の有効利用に資するものであり、また製造コストも安価に抑えることができる。さらに高い発酵温度が得られるので、雑菌等が死滅して良質の肥料が得られる。本発明の汚泥発酵肥料は、上記の優れた特性から、幅広い用途において有用である。
Claims (4)
- バーク堆肥25〜35重量部、汚泥20〜30重量部、畜産下肥25〜35重量部並びに土壌改良材として杉バーク4〜6重量部及びヤシ殻4〜9重量部を必須成分とし、黒土を含まない原材料混合物に対し、糖蜜がボカシ全体に対して0.15〜0.25重量%含まれたボカシの形態の微生物を1〜3重量部加え、発酵、熟成させてなる汚泥発酵肥料。
- 請求項1に記載の汚泥発酵肥料において、原材料混合物に、さらに腐敗性の有機物質を配合することを特徴とする汚泥発酵肥料。
- 請求項2に記載の汚泥発酵肥料において、腐敗性の有機物質が、米糠、油粕、魚粉、糖蜜、及び生ゴミから選ばれる一種以上であることを特徴とする汚泥発酵肥料。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の汚泥発酵肥料において、原材料混合物に、さらに貝殻焼却灰を配合することを特徴とする汚泥発酵肥料。
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