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JP4852683B2 - 大麦を発酵に付したものを有効成分とする血管新生阻害の作用を有する組成物 - Google Patents

大麦を発酵に付したものを有効成分とする血管新生阻害の作用を有する組成物 Download PDF

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Description

本発明は、大麦を発酵に付したもの由来の成分を有効成分とする血管新生阻害の作用を有する組成物に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、大麦を発酵に付したもの、好ましくは大麦焼酎蒸留残液に含まれる物質、より好ましくは大麦焼酎蒸留残液を分画して得られた組成物(発酵大麦エキス)、を有効成分とする血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防するための組成物、好ましくは食品素材、飲食品、飼料などの形態の組成物に関するものである。
ガンは、1981年以来、わが国の死因のトップを占める疾患であり、3大死因の中でも、ガンだけが一貫して増加し、死亡数は増え続けている。厚生労働省の人口動態統計によると、2001年の全死亡者数97万331人のうち、30万658人がガンが原因で死亡しており、実に3人に1人がガンで死亡していることとなる。このような疾患に対して、現在病院で主に施されているのは薬物、化学、物理などの各療法により、ガン細胞を直接攻撃するという対症療法であるが、この方法では、ガン細胞そのものだけでなく、正常な細胞にもダメージがおよび、免疫力や自然治癒力の低下に伴って、結果的として、患者が亡くなってしまうケースが非常に多いという問題があった。このような経緯を経て、副作用の少ない安全な治療法に対する要望は日々高まりを見せており、病気の治療よりも予防に重点がおかれるようになっている。
近年、安全なガンの治療法として血管新生阻害を応用することが注目されている。ガン細胞は、血管新生促進物質を産生することで、自らの細胞に栄養分や酸素を送り込む血液の経路を張りめぐらし、十分な血液を供給し続け、爆発的な増殖を繰り返すという性質を持っているが、血管新生阻害作用を応用したガン治療とは、ガン細胞への血液の経路を遮断してガン細胞の増殖を防ぐものである。すなわち、簡単に言えば、ガン細胞を兵糧攻めにするということである。
血管新生抑制の作用は、ガンのみではなく、リウマチ様関節炎、糖尿病、心臓病、その他様々な疾患に対して予防および安全に治療する効果があることが近年報告されており、(非特許文献1〜3)血管新生抑制作用を有する物質の早期提供が強く求められている。
血管新生阻害作用を有する天然物由来の活性成分について、特許文献1には、ヤシ科植物の果皮や種子から得られるトコトリエノールを有効成分とする血管新生阻害剤、細胞増殖阻害剤、管腔形成阻害剤およびFGF阻害剤並びに食品或いは食品添加物が記載されており、特許文献2には、シイタケ菌糸体抽出物を含む血管新生を阻害するための食品組成物が記載されている。特許文献3および4には、糸状菌を培養し、その培養液から得られた新規な化合物が、血管新生阻害作用を有することが記載されている。
ところで、イネ科植物である大麦は、有史以前から人類に欠かせない穀類で、日本の古い医学書にも記載されているなど、健康に良い食品として親しまれてきた。実際に大麦や大麦を微生物にて発酵させたものの生理活性機能については様々な研究が行われてきた。
特許文献5には、大麦類を爆砕処理したものを水性溶媒で抽出することにより、主としてその穀皮画分からの抽出エキスが有用な生理活性作用、すなわち免疫増強作用、血圧降下作用、血流改善作用、アンジオテンシンI変換酵素阻害作用、抗菌作用などの生理活性作用を有し、それを利用した機能性食品素材が記載されている。しかしながらこの発明は、大麦の穀皮画分からの抽出エキスであり、その有効成分は、水易溶性物質であり、分子量50万以下で、主成分が分子量10万以下、タンパク質含量3〜30%、水溶性のフェルラ酸およびp−クマル酸に富んでいるものである。
大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を利用した発明として、特許文献6には、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分にアルカリを添加してアルカリ可溶性画分を分取し、該アルカリ可溶性画分を酸で中和して中性可溶性画分を得、該中性可溶性画分にエタノールを添加することにより分取した、有機酸、タンパク質、およびヘミセルロースを含有するエタノール不溶性画分が、脂肪肝抑制作用を有することが記載されており、特許文献7には、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分に有機溶媒を添加することにより分取した有機溶媒不溶性画分が、白血病細胞増殖阻害作用を有することが記載されており、特許文献8には、大麦焼酎蒸留残液から、特許文献7と同様にして得られた有機溶媒不溶性画分が、ナチュラルキラー細胞を賦活化することが記載されている。
特許文献9には、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤に付すことにより分取した非吸着画分からなり、該非吸着画分は、平均鎖長が3.0ないし5.0である複数種のペプチドを含有し、それらペプチドは該ペプチドに由来するアミノ酸総含量を100%としたときのアミノ酸組成が、グルタミン酸24ないし38%、グリシン4ないし20%、アスパラギン酸5ないし10%、プロリン4ないし9%、およびセリン4ないし8%であり、アルコール性肝障害に対する発症抑制作用および治癒作用を有し且つ優れた呈味性を有する食品用組成物およびその製造方法が記載されている。特許文献10には、特許文献9と同様にして得られた組成物が、アルコール性肝障害に対する発症抑制作用および治癒作用を有する医薬組成物およびその製造方法が記載されている。
また、特許文献11には、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分をイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより分取した有機溶媒不溶性画分が、抗酸化作用を有することが記載されている。
Eur.J.Cancer.、32A、2534-2539(1996) Nature Med.、1、27-33(1995) Immunity.、12、121(2000) 特開2002−308768号公報 特開2004-196791号公報 特開2003-183249号公報 特開2004-262881号公報 特開2002-371002号公報 特開2001-145472号公報 特開2003-73294号公報 特開2003-73295号公報 特開2004-112号公報 特開2004-2266号公報 特開2004-238452号公報
大麦および大麦の発酵物には、前記したように、様々な生理活性があることが確かめられてきたが、その生理活性の中に血管新生阻害作用は含まれておらず、大麦が血管新生阻害作用を呈するということ、さらに大麦を発酵に付すことによってより強い作用を呈することはこれまで知られていなかった。
本発明は、安全性に問題がなく、安価で比較的容易に入手可能な大麦を発酵に付したもの、好ましくは大麦焼酎蒸留残液から、煩雑な精製工程を経ず、工場規模での実生産に適した簡便な処理方法により、優れた血管新生阻害作用を有する組成物を提供すること、好ましくは血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防するための組成物、より具体的には食品添加物、食品素材、飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料からなる群から選ばれる形態のものを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究した結果、穀類由来の成分、特に大麦由来の成分に優れた血管新生阻害作用が存在すること、発酵させたことによって、より強い効果があることを見いだし、発明をなした。本発明において、大麦焼酎蒸留残液から分画して得られた組成物が、有意な血管新生の阻害作用を有すること、これにより、副作用が少ない、血管新生阻害活性を有する組成物を新たに提供することができる。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜()の血管新生を阻害するための組成物を要旨とする。
(1)大麦焼酎蒸留残液を分画して得られた組成物、大麦焼酎蒸留残液を培地とした乳酸菌培養液および発酵大麦ファイバーアルカリ抽出物からなる群より選ばれる、大麦を発酵に付したもの由来の成分を血管新生阻害作用の有効成分とすることを特徴とする血管新生を阻害するための組成物。
(2)上記大麦焼酎蒸留残液を分画して得られた組成物が、大麦焼酎蒸留残液合成吸着材処理非吸着画分、大麦焼酎蒸留残液合成吸着材処理吸着画分、および大麦焼酎蒸留残液エタノール沈殿画分からなる群より選ばれる1以上の組成物である上記()の血管新生を阻害するための組成物。
(3)上記血管新生を阻害するための組成物が、腫瘍もしくは癌、慢性炎症または網膜症における異常な血管新生が原因となる疾患を治療または予防するための組成物である上記(または2)の血管新生を阻害するための組成物。
本発明は、安全性に問題がなく、安価で比較的容易に入手可能な材料である大麦を発酵に付したもの、好ましくは大麦焼酎蒸留残液から、煩雑な精製工程を経ず、工場規模での実生産に適した簡便な処理方法により、副作用が少ない、血管新生阻害活性を有する組成物、好ましくは血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防するための組成物、より具体的には食品添加物、食品素材、飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料からなる群から選ばれる形態のものを提供することができる。
本発明の発酵の対象となる大麦は、皮麦、裸麦のどちらでも良く、また二条大麦、六条大麦のどちらでも良い。また穀表部に色素が沈着した有色大麦でも良い。大麦の形態としては特に制限されないが、玄麦などの穀粒全体を用いることが好ましい。また、焙煎処理や製粉処理、圧偏処理などの加工処理を加えても良い。
なお、大麦を発酵に付す際に,使用する微生物は特に限定されないが,酵母,乳酸菌,納豆菌,あるいは麹菌等を用いることができる。特に,発酵大麦エキスを調製する際の発酵工程に用いる酵母としては、ビール酵母、清酒酵母、焼酎酵母、ワイン酵母、パン酵母などがあげられるが、焼酎酵母を用いることが望ましい。
本発明の上記組成物は、安全性に問題がなく、安価で比較的容易に入手可能な材料である大麦を発酵に付したもの、好ましくは大麦焼酎蒸留残液から、煩雑な精製工程を経ず、工場規模での実生産に適した簡便な処理方法により得られ、その生体への適用は飲食物、医薬品、肥料、飼料や皮膚外用剤に使用することで、優れた血管新生阻害効果を得ることが期待できる。本発明の上記組成物は、血管新生阻害作用を有する天然物由来の活性成分を有するものであり、該活性成分に基づく血管新生阻害を応用することにより、たとえば安全なガンの治療法へと導くのであり、血管新生抑制の作用は、ガンのみではなく、リウマチ様関節炎、糖尿病、心臓病、その他様々な疾患に対して予防および安全に治療する効果を有する機能性組成物である。
すなわち、本発明の血管新生を阻害するための組成物は、血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防するための組成物である。血管新生を阻害すべき疾患とは、血管新生が病態の発生に重要な働きをしている疾患であれば、どのようなものでも対象となる。したがって、血管新生を阻害すべき疾患は、腫瘍もしくは癌、慢性炎症または網膜症における異常な血管新生が原因となる疾患である。より具体的には、血管新生を阻害すべき疾患は例えば、種々の組織に発生する固型腫瘍、骨髄腫、血管腫などの腫瘍もしくは癌;慢性関節性リウマチ、乾癬、変形性関節症などの慢性炎症;または加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、新生血管緑内障などの網膜症;などの疾患をあげることができるが、これらのものには限定されない。本発明においては、血管新生を阻害すべき疾患として、種々の腫瘍または癌を標的とすることが好ましい。
本発明の組成物が有する血管新生阻害活性をin vitroにおいて調べるためには、培養条件下で血管内皮細胞と線維芽細胞とを、必要に応じて血管新生誘導性因子であるVEGFの存在下にて、共培養させることにより管腔形成初期段階の増殖状態が作り出された培養中に、本発明の組成物を添加して、血管新生の抑制が生じるかどうかを確認することができる。血管新生の抑制は、例えば管腔を染色して管腔形成が抑制されているかどうかを調べることにより行うことができる。このようなin vitroにおける血管新生の阻害効果を調べるためのキットとしては、血管新生キット(KURABO社製)を、管腔を染色するためには抗CD31抗体や抗フォン-ウィルブランド因子抗体などの抗体を使用する管腔染色キット(KURABO、 社製)を、それぞれ使用することができる。
本発明の血管新生を阻害するための組成物は、大麦を発酵に付したもの由来の成分を血管新生阻害作用の有効成分とすることを特徴とする。前記大麦を発酵に付したもの由来の成分に含まれる血管新生阻害作用を呈する物質は、好ましくは大麦焼酎蒸留残液に含まれる物質である。大麦焼酎蒸留残液に含まれる物質は、大麦焼酎蒸留残液を分画して得られた組成物(発酵大麦エキス)、大麦焼酎蒸留残液を培地とした乳酸菌培養液、大麦焼酎蒸留残液を培地とした納豆菌培養液、および発酵大麦ファイバーアルカリ抽出物からなる群より選ばれる組成物に含まれる物質である。
大麦焼酎蒸留残液を分画して得られた組成物を得る方法としては、スクリュープレスを用いた固液分離で固体を得る方法、固液分離で得られた液体分を、合成吸着剤のカラムやイオン交換樹脂のカラムを用い精製した後、凍結乾燥をするか或いは有機溶媒で不溶化する方法がある。さらに、固液分離で得られた液体分を乳酸菌や納豆菌などの培養用培地に使用して、その培養液を凍結乾燥して得る方法もある。したがって、大麦焼酎蒸留残液を分画して得られた組成物は、大麦焼酎蒸留残液合成吸着材処理非吸着画分、大麦焼酎蒸留残液合成吸着材処理吸着画分、大麦焼酎蒸留残液イオン交換樹脂処理非吸着画分および大麦焼酎蒸留残液エタノール沈殿画分からなる群より選ばれる1以上の組成物が例示される。
大麦焼酎蒸留残液から分画して得られた組成物は、下記工程により得られる。
まず、大麦麹を製造する。大麦を40%(w/w)吸水させ、40分間蒸した後、40℃まで放冷し、大麦トンあたり1kgの種麹(白麹菌)を接種し、38℃、RH95%で24時間、32℃、RH92%で20時間保持することにより、大麦麹は製造することができる。前記方法で製造した大麦麹に、水および焼酎酵母の培養菌体を加えて1次もろみを得、得られた1次もろみを5日間の発酵(1段目の発酵)に付す。次いで、2次仕込みでは、上記1段目の発酵を終えた1次もろみに、水と前記方法で製造した大麦麹とを加えて11日間の発酵(2段目の発酵)に付す。発酵温度は1次仕込み、2次仕込みとも25℃とする。上記2段目の発酵を終えた2次もろみを常法により単式蒸留に付し、麹歩合100%の大麦焼酎と大麦焼酎蒸留残液を得る。
上記で得られた大麦焼酎蒸留残液は、固液分離して得られた固体分(発酵大麦ファイバーアルカリ抽出液粉末)をそのまま用いても良く、また、液体分をデキストリンと混合して凍結乾燥したもの(発酵大麦エキス粉末)を使用することもできる。あるいは、液体分を合成吸着剤のカラムを通過させて非吸着分(発酵大麦エキスS粉末)、吸着分を溶出させた画分(発酵大麦エキスP粉末)を使用することもでき、有機溶媒で処理して不溶性としてその不溶性画分(エタノール沈殿画分粉末)を使用することもできる。さらに、有機溶媒で処理する前に、イオン交換樹脂のカラムを通過させて使用するか、イオン交換樹脂のカラムを通過させた後、限外ろ過膜を通過させて使用することもできる。
上記で使用する合成吸着剤としては、芳香族系、芳香族系修飾型、或いはメタクリル系の合成吸着剤を用いることができる。そうした合成吸着剤の好適な具体例としては、オルガノ(株)製のアンバーライトXAD−4、アンバーライトXAD−16、アンバーライトXAD−1180およびアンバーライトXAD−2000、三菱化学(株)製のセパビーズSP850およびダイヤイオンHP20などの芳香族系(またはスチレン系とも言う)合成吸着剤、オルガノ(株)製のアンバーライトXAD−7、および三菱化学(株)製のダイヤイオンHP2MGなどのメタクリル系(またはアクリル系とも言う)合成吸着剤、三菱化学(株)製のセパピーズSP207などの芳香族系修飾型合成吸着剤を揚げることができる。また、上記で使用するイオン交換樹脂として好適な具体例としては、オルガノ社製の強酸性陽イオン交換樹脂IR−120、IR−120B、アンバーライト200CTや弱酸性陽イオン交換樹脂IRC50およびIRC76、さらに三菱化学社製の強酸性陽イオン交換樹脂ダイヤイオンSK1B、SK104、PK208や弱酸性陽イオン交換樹脂WK10、WK40などを挙げることができる。
上記で使用する有機溶媒としては、エタノールが望ましいが、終濃度が75容量%になるようにエタノールを加えることが最も望ましい。
また、別の形態として、大麦焼酎蒸留残液を乳酸菌や納豆菌などの培養用培地に使用して、その培養液を凍結乾燥して(乳酸菌培養液粉末、納豆菌培養液粉末)用いることもできる。すなわち、発酵大麦エキスは、大麦焼酎蒸留残液、大麦焼酎蒸留残液を分画して得られた組成物のほかに、大麦焼酎蒸留残液を培地とした乳酸菌培養液、大麦焼酎蒸留残液を培地とした納豆菌培養液、および発酵大麦ファイバーアルカリ抽出物からなる群より選ばれる。
上記で用いる乳酸菌は、特に限定するものではないが、Lactococcus lactis subsp. Lactisに属する乳酸菌が好ましい。具体的には、Lactococcus lactis NCDO497、Lactococcus lactis NIZO R5、Lactococcus lactis ATCC 7962およびLactococcus lactis ATCC11454、Lactococcus lactis NIZO 22186、Lactococcus lactis NRRL-B-18583、Lactococcus lactis NCFB2118、Lactococcus lactis NCFB2054、Lactococcus lactis NIZO N9、Lactococcus lactis NIZO 221186、Lactococcus lactis IO-1(JCM7638)、Lactococcus lactis subsp. Lactis A.Ishizaki Chizuka (JCM11180)、Lactococcus lactis subsp. Lactis A.Ishizaki Yasaka 5B(JCM11181)、Lactococcus lactis subsp. Lactis A.Ishizaki Yasaka 7B(JCM11182)、Lactococcus lactis subsp. Lactis A.Ishizaki Yasaka 8B(JCM11183)、およびLactococcus lactis subsp. Lactis A.Ishizaki Yasaka 9B(JCM11184)を好ましいものとして挙げることができる。
上記で用いる納豆菌は、特に限定するものではないが、Bacillus Subtillisに属する市販納豆菌の宮城野菌を挙げることができる。
大麦を発酵に付したものおよび/または大麦焼酎蒸留残液を含む組成物は、血管新生を阻害するための食品添加物、食品素材、飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである。その組成物の機能性を生かして健康飲食品、患者用栄養飲食品を謳った食品、同様に、家畜、家禽、魚などの飼育動物のための飼料の開発が可能となった。
すなわち、上記飲食品が、血管新生を阻害するための、機能性食品、栄養補助食品または健康飲食品である。上記飼料が、血管新生を阻害するための、家畜、家禽、ペット類の飼料である。具体的には、上述した大麦を発酵に付したもの、大麦焼酎蒸留残液を含む食品素材を、食品形態、飲料形態または飼料形態のいずれの形態で使用することができる。
本発明の血管新生を阻害するための組成物が有する上述した機能性を生かして用いる場合は、その含量は、特に制限されないが、目的とする機能の度合い、使用態様、使用量等により適宜調整することができ、例えば0.001〜100質量%である。本血管新生を阻害するための組成物は、人体やその他飲食物、医薬品、飼料や皮膚外用剤に使用することができる。また、経口等により内服することも、皮膚等に塗布することもできる。常法にしたがって経口、非経口の製品に配合することができ、調味料、食品添加物、食品素材、飲食品、健康飲食品、皮膚外用剤、医薬品および飼料等の様々な分野で利用することができる。例えば、飲食物に配合した場合には、血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防するための飲食物を提供することができる。予防等の効果からは、健康食品、栄養食品等として用いられることも期待できる。その他、家畜および/または、魚類の飼料、餌料に利用することができる。人体やその他飲食物、医薬品、肥料、飼料や皮膚外用剤に使用することにより、血管新生を阻害すべき疾患を治療または予防する効果を得ることができる。
さらに、大麦を発酵に付したもの、大麦焼酎蒸留残液から容易に得ることができ、コスト面からみても、資源の有効活用という面からみても好ましい。
本発明の組成物を食品に利用する場合、そのままの形態、オイルなどに希釈した形態、乳液状形態食、または食品業界で一般的に使用される担体を添加した形態などのものを調製してもよい。
乳液状形態のものは、例えば、油相部に組成物を添加し、更にグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセロール、デキストリン、ナタネ油、大豆油、コーン油などの液状の脂肪を加え、水相部にL−アスコルビン酸或いはそのエステルまたは塩、例えばローカストビーンガム、アラビアガムまたはゼラチンなどのガム質、例えばヘスペリジン、ルチン、ケルセチン、カテキン、チアニジンなどのフラボノイド類またはポリフェノール類或いはその混合物などを添加し、乳化することによって調製できる。
飲料の形態は、非アルコール飲料またはアルコール飲料である。非アルコール飲料としては、例えば、炭酸系飲料、果汁飲料、ネクター飲料などの非炭酸系飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、茶、コーヒー、ココアなど、また、アルコール飲料の形態ではスピリッツ、リキュール、チューハイ、果実酒類、麦酒、発泡酒、薬用酒などの一般食品の形態を挙げることができる。
飲食物としては、具体的には以下のものを例示することができる。洋菓子類(プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、チューインガム、チョコレート、ペストリー、バタークリーム、カスタードグリーム、シュークリーム、ホットケーキ、パン、ポテトチップス、フライドポテト、ポップコーン、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ワッフル、ケーキ、ドーナツ、ビスケット、クッキー、せんべい、おかき、おこし、まんじゅう、あめなど)、乾燥麺製品(マカロニ、パスタ)、卵製品(マヨネーズ、生クリーム)、飲料(機能性飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、無果汁飲料、果肉飲料、透明炭酸飲料、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料)、嗜好品(緑茶、紅茶、インスタントコーヒー、ココア、缶入りコーヒードリンク)、乳製品(アイスクリーム、ヨーグルト、コーヒー用ミルク、バター、バターソース、チーズ、発酵乳、加工乳)、ペースト類(マーマレード、ジャム、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、果実のシロップ漬け)、畜肉製品(ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージ、ビーフジャーキー、ラード)、魚介類製品(魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、ちくわ、ハンペン、魚の干物、鰹節、鯖節、煮干し、うに、いかの塩辛、スルメ、魚のみりん干し、貝の干物、鮭などの燻製品)、佃煮類(小魚、貝類、山菜、茸、昆布)、カレー類(即席カレー、レトルトカレー、缶詰カレー)、調味料剤(みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、ソース、ケチャップ、オイスターソース、固形ブイヨン、焼き肉のたれ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、ペースト、インスタントスープ、ふりかけ、ドレッシング、サラダ油)、揚げ製品(油揚げ、油揚げ菓子、即席ラーメン)、豆乳、マーガリン、ショートニングなどを挙げることができる。
上記飲食物は、組成物を常法に従って、一般食品の原料と配合することにより、加工製造することができる。
上記飲食物への組成物の配合量は食品の形態により異なり特に限定されるものではないが、通常は0.001〜20%が好ましい。
上記飲食物は、機能性食品、栄養補助食品或いは健康食品類としても用いることができる。その形態は、特に限定されるものではなく、例えば、食品の製造例としては、アミノ酸バランスのとれた栄養価の高い乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミンなどの蛋白質、これらの分解物、卵白のオリゴペプチド、大豆加水分解物などの他、アミノ酸単体の混合物などを、常法に従って使用することができる。また、ソフトカプセル、タブレットなどの形態で利用することもできる。
栄養補助食品或いは機能性食品の例としては、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料などが配合された流動食、半消化態栄養食、成分栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤などの加工形態を挙げることができる。上記各種食品には、例えば、スポーツドリンク、栄養ドリンクなどの飲食物は、栄養バランス、風味を良くするために、更にアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物や甘味料、香辛料、香料、色素などを配合することもできる。
本発明の組成物を安定化させるために抗酸化剤、例えば、トコフェロール、L−アスコルビン酸、BHA、ローズマリー抽出物などを常法に従って併用することができる。
本発明の組成物は、家畜、家禽、ペット類の飼料用に応用することができる。例えば、ドライドッグフード、ドライキャットフード、ウェットドッグフード、ウェットキャットフード、セミモイストドックフード、養鶏用飼料、牛、豚などの家畜用飼料に配合することができる。飼料自体は、常法に従って調製することができる。
これらの治療剤および予防剤は、ヒト以外の動物、例えば、牛、馬、豚、羊などの家畜用哺乳類、鶏、ウズラ、ダチョウなどの家禽類、は虫類、鳥類或いは小型哺乳類などのペット類、養殖魚類などにも用いることができる。
以下に、大麦焼酎蒸留残液液体分を材料とした各組成物を調整し、血管新生阻害効果について説明するが、本発明の範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[実験1] 血管新生阻害実験とTOF-MS測定
〈サンプル名称〉
No. 1-1 : 発酵大麦エキス粉末(50%デキストリン)
No. 1-2 : 発酵大麦エキス粉末(50%デキストリン)
No. 1-3 : 発酵大麦エキス粉末
No. 1-4 : 発酵大麦エキスEI
No. 1-5 : 発酵大麦エキスEI-C
No. 1-6 : 発酵大麦エキスU
No. 1-7 : 発酵大麦エキスEI-CU
No. 1-8 : 発酵大麦エキスCU
No. 1-9 : 乳酸菌培養液
No. 1-10 : 納豆菌培養液(75%デキストリン)
No. 1-11 : 発酵大麦ファイバーアルカリ抽出
〈実験に用いたサンプルの調製法〉
本実験に用いたサンプルについては、他の実験との兼ね合いがあり、粉末化したサンプルを再溶解して実験に用いているが、液状のまま、実験に用いても何ら問題はない。なお、下記したように粉末化する際に、賦形材としてエキスと等量のデキストリンを添加したものもある。なおデキストリン含量は重量パーセント濃度 (W/W)である。
[大麦焼酎蒸留残液粉末](発酵大麦エキス粉末)
原料としては、大麦(70%精白)を用いた。
麹の製造:大麦を40%(w/w)吸水させ、40分間蒸した後、40℃まで放冷し、大麦トンあたり1kgの種麹(白麹菌)を接種し、38℃、RH95%で24時間、32℃、RH92%で20時間保持することにより、大麦麹を製造した。
大麦焼酎及び大麦焼酎蒸留残液の製造:1次仕込みでは前記方法で製造した大麦麹(大麦として3トン)に、水3.6キロリットル及び酵母として焼酎酵母の培養菌体1kg(湿重量)を加えて1次もろみを得、得られた1次もろみを5日間の発酵(1段目の発酵)に付した。次いで、2次仕込みでは、上記1段目の発酵を終えた1次もろみに、水11.4キロリットル、前記方法で製造した大麦麹(大麦として6トン)とを加えて11日間の発酵(2段目の発酵)に付した。発酵温度は1次仕込み、2次仕込みとも25℃とした。上記2段目の発酵を終えた2次もろみを常法により単式蒸留に付し、麹歩合100%の大麦焼酎10キロリットルと大麦焼酎蒸留残液15キロリットルを得た。得られた大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して、大麦焼酎蒸留残液液体分5Lを得た。該液体の固型含量と等量のデキストリンを混合し、凍結乾燥した。
[大麦焼酎蒸留残液合成吸着材処理非吸着画分粉末](発酵大麦エキスS粉末)
大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、該液体分25Lと脱イオン水10Lをこの順番にオルガノ社製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラム(樹脂容量10L)に通して吸着分離処理することにより、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す素通り液からなる非吸着画分を分取した。得られた該非吸着画分の固型含量と等量のデキストリンを混合し、真空凍結乾燥機を用いて凍結乾燥に付し、凍結乾燥物2400gを得た。
[大麦焼酎蒸留残液合成吸着材処理吸着画分粉末](発酵大麦エキスP粉末)
大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、得られた液体分25Lをオルガノ社製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラム(樹脂容量10L)に接触させ、当該カラムに吸着する吸着画分を得、さらに前記吸着画分を吸着した該カラムに脱イオン水10Lを接触させて得られた溶出液を除去後、該カラムに1(wt/vol)%の水酸化ナトリウム溶液10Lと脱イオン水10Lをこの順番に接触させることにより吸着画分からなる溶出液20Lを分取した。該溶出液20Lをオルガノ社製強酸性陽イオン交換樹脂IR-120Bを充填したカラム(樹脂容量10L)に接触させた後に、該液体を凍結乾燥に付した。
[大麦焼酎蒸留残液エタノール沈殿画分粉末](各EI画分)
〈発酵大麦エキスEI〉
大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液液体分5Lを得、得られた液体分をBrix度が25になるまで真空蒸留機で濃縮後、3倍容量のエタノールを加え、8000rpm、10minの条件で遠心分離してエタノール不溶性画分を分取し、該エタノール不溶性画分を凍結乾燥に付した。
〈発酵大麦エキスEI-C〉
大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液液体分を得、該液体分25Lと脱イオン水10Lをこの順番にオルガノ社製の陽イオン交換樹脂アンバーライト200CT Naを充填したカラム(樹脂容量10L)に通して吸着分離処理することにより、該カラムの陽イオン交換樹脂に対して非吸着性を示す素通り液からなる非吸着画分を分取した。得られた液体分をBrix度が60になるまで真空蒸留機で濃縮し、3倍容量のエタノールを加え、8000rpm、10minの条件で遠心分離してエタノール不溶性画分を分取し、該エタノール不溶性画分を凍結乾燥に付した。
〈発酵大麦エキスEI-CU〉
大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液液体分を得、得られた液体分をBrix度10に調整後、このBrix度10に調整した液体分1Lを500 ml容量のオルガノ社製アンバーライト200CT Na(強酸性陽イオン交換樹脂)を充填したカラムに通して、イオン交換樹脂に非吸着の画分を得、得られたイオン交換樹脂に非吸着の画分を日本ポール(株)製の限外濾過膜セントラメイト オメガ 10K(分画分子量1万)による濃縮処理に付して濃縮液を得、得られた液体分をBrix度が40になるまで真空蒸留機で濃縮し、3倍容量のエタノールを加え、8000rpm、10minの条件で遠心分離してエタノール不溶性画分を分取し、該エタノール不溶性画分を凍結乾燥に付した。
[発酵大麦エキスU]
大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液液体分を得、得られた液体分を日本ポール(株)製の限外濾過膜セントラメイト オメガ 10K(分画分子量1万)による濃縮処理に付して濃縮液を得、得られた液体分を凍結乾燥に付した。
[発酵大麦エキスCU]
大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液液体分をオルガノ社製アンバーライト200CT Na(強酸性陽イオン交換樹脂)を充填したカラムに通して、イオン交換樹脂に非吸着の画分を得、得られたイオン交換樹脂に非吸着の画分を日本ポール(株)製の限外濾過膜セントラメイト オメガ 10K(分画分子量1万)による濃縮処理に付して濃縮液を得、得られた液体分を凍結乾燥に付した。
[大麦焼酎蒸留残液を培地とした乳酸菌培養液]
・大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、該液体分を水で希釈してそのBrix度4に調整し、グルコースを3.6重量%添加し、水酸化ナトリウムを用いてpH5.5に調整後121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い乳酸菌培養用培地を得た。
・ナイシン生産能を有する乳酸菌の前培養
Lactococcus lactis IO-1の保存株50μlを10mlのTGC培地に接種し、37℃で18時間静置培養することにより培養液を得、該培養液10mlをCMG培地100mlに接種し、37℃ で3時間、100rpmで振とう培養することにより乳酸菌前培養液を得た。
・ナイシン生産能を有する乳酸菌の本培養
2L容ジャーファーメンターに、上記乳酸菌培養用培地500mlと上記乳酸菌前培養液25mlを導入し、攪拌速度250rpm、培養温度30℃、培養時間24時間、pH5.5の条件で回分培養を行った。該乳酸菌培養液を凍結乾燥に付した。
[大麦焼酎蒸留残液を培地とした納豆菌培養液]
・大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、該液体分に水酸化ナトリウムを加えてそのpH値を7.0に調整した。得られた調製液を滅菌処理して納豆菌培養用の培地を得た。
・納豆菌の前培養
肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られた溶液に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値を7.0に調整後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エキス培地を得た。該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮城野菌1白金耳を試験管に導入して攪拌し、42℃で15時間振とう培養して納豆菌前培養液を得た。
・納豆菌の本培養
2L容ジャーファーメンターに、上記納豆菌培養用培地1Lと上記納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を行った。該納豆菌培養液の固型含量の3倍量のデキストリンを混合し、凍結乾燥に付した。
[発酵大麦ファイバーアルカリ抽出物]
70%精麦の大麦1トンを使用して大麦焼酎もろみを製造し、常法に従って約2週間発酵/熟成させ、単式蒸留機によりアルコールを分離し、大麦焼酎蒸留残液1.5kLを得た。得られた大麦焼酎蒸留残液1kLをスクリュープレスを用いて固液分離し、得られた固体分から大麦溝条約50kgを得た。得られた大麦溝条をドラムドライヤーで乾燥後、ロールミルにより粉砕し、大麦溝条粉末(組成物)5.5kgを得た。該大麦溝条粉末50gを、2%Ca(OH)水溶液1Lに懸濁し、常温で6時間攪拌後、HCLでpH7.0に調整し、ろ紙ろ過した。ろ液を凍結乾燥に付した。
〈実験試料の調製、実験方法及び結果〉
1.実験試料
1-1 サンプル調製
1-1-1 血管新生阻害実験用
上述したサンプルNo.1-1ないし1-11を1000μgずつ秤量後、それぞれ別に1mlの培地で溶解し、ろ過滅菌(0.22μm)後、10倍希釈(2回)を行い、10μg/mlから100μg/mlの濃度のサンプルを調製した。
1-1-2 TOF-MS測定試験用
上述したサンプルNo.1-1ないし1-4のサンプルを10mg/mlの濃度で水に溶解させた後、1mg/ml、100μg/ml、10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/mlの濃度に希釈。
*1-11は溶解性低い。
2.実験方法及び結果
2-1 血管新生阻害実験
ヒト血管内皮細胞と繊維芽細胞を最適濃度で共培養し、管腔形成初期段階の増殖状態にあるものに各サンプル(1-1-1)を添加し、11日間培養(4、7、9日後にサンプルを含む培地を交換)後、管腔形成をMouse anti-human CD31とGoat anti-mouse IgG AlkP Conjugateを用いて染色後、顕微鏡観察した。血管新生阻害効果について、形成された管腔様網目構造を評価した。得られた結果を図1に示す。図1から明らかな通り,発酵大麦ファイバーアルカリ抽出物ならびに発酵大麦エキスPは有意に管腔形成を阻害した。
2-2 TOF-MS測定試験
2-2-1 測定条件
測定はpositive ion及びnegative ionの両条件で、リフレクターモードにより検出した。測定基準物質としてbeta-cyclodextrin(M. W. 1135.12)を用い、calibrationはDNBAのdimmer (positive ion mode 273、 negative ion mode 307)とbeta-cyclodextrinで行った。
2-2-2 サンプル調製
マトリックスには10 mg/ml 2、5-dihydroxybenzoic acid (DHBA)の水溶液もしくは20%エタノール水溶液を用いた。各濃度のサンプル溶液はマトリックス溶液と1:1もしくは1:2で混合し、1μlの各混合溶液を測定プレート上にapplyし、自然乾燥した後、negative ion modeで測定した。
positive ion modeでの測定において多糖類は一般的に[M+Na]+もしくは[M+K]がメインピークとして観測される。そこでcyckodextrin誘導体のMALDI-TOF MS測定の報告[B. Chankvetadze et al.、 Carbohydrate Research、 287、 139-555(1996)]を参考に、サンプル溶液:マトリックス溶液:30 mM NaCl 水溶液=1:1:1の混合溶液も併せて調製し、positive ion modeでの測定に用いた。
その結果、4つのサンプル共に同様のスペクトルパターンが観測された(図は省略する。)。
positive ion modeでは650Da前後のピークから約210Daの間隔でピークが約3000Da付近まで観測され、ピーク強度は分子量が増加するに連れ減少した。negative ion modeでも約580Daのピークから約210Daの間隔で、同様の挙動が観測された。
positive ion modeでの645Daピークとnegative ion modeでの576Daのピークの様にpositive/negative modeでそれぞれ近い値を示すピーク間隔は約69Daで、69Daはおよそ3Na+に相当し、サンプル調製時のNaCl水溶液の添加によるものと考えられる。
210Daの間隔でピークが観測される可能性としては以下の2点が考えられる。
1) 210Daに相当する糖修飾部分がレーザー照射に伴い切断されている。
2) 210Daに相当する糖で構成されるホモ多糖類の混合物。
上記1)についての可能性を検討したが、210Daに相当する糖修飾は調査した限りで、見つけることはできなかった。一方、2)の可能性についてはカルボキシル基(-COOH)を修飾部に持つ糖の分子量は209Daと非常に近い値を持っていた。
[参考]
-NMR測定
上記2)の可能性を検討するため、サンプル2-1について重水中で7mg/mlでの1H-NMRを測定した(図省略)。測定結果をbeta-cyclodextrinのスペクトルと比較したところ、1-3ppmに糖由来と考えられるシグナルの他に、3-5ppmに非常に複雑なシグナルが観測された。また6.5-7.5ppmにもシグナルが認められアミドプロトンもしくは芳香環をもつ様名化合物が含まれていることが示唆され、多糖類の構造を推定することは困難である。
現時点での結果から分子量、約600から3000Da程度の多糖類と低分子量化合物を含むサンプルと推察される。3000Da以上の化合物についても存在の可能性があるので、測定条件を検討し引き続き測定を行う予定である。
[実験2] 血管新生阻害実験
〈サンプル名称〉
表1に示すとおり。
A1、A2:ネガティブコントロール
A3、A4:ポジティブコントロール
D1〜D3:大麦焼酎蒸留残液合成吸着材処理吸着画分粉末(発酵大麦エキスP粉末)
〈血管新生阻害実験に用いたサンプルの調製法〉
本実験に用いたサンプルについては、他の実験との兼ね合いがあり、粉末化したサンプルを再溶解して実験に用いているが、液状のまま、実験に用いても何ら問題はない。なお、下記したように粉末化する際に、賦形材としてエキスと等量のデキストリンを添加したものもある。なおデキストリン含量は重量パーセント濃度 (W/W)である。
[大麦焼酎蒸留残液合成吸着材処理吸着画分粉末](発酵大麦エキスP粉末)
前記段落0045に記載のサンプルを使用した。
〈実験試料の調製、実験方法、及び結果〉
1.実験試料
1-1 サンプル調製
1-1-1 血管新生阻害実験用
各試料を1000μgずつ秤量後、それぞれ別々に1mlの培地で溶解し、ろ過滅菌(0.22μm)後、10倍希釈(3回)を行い、表1(血管新生阻害効果評価試験サンプル内訳)に示す10μg/mlから1000μg/mlの濃度のサンプルを調製した。同様に表1に示すネガティブコントロール、ポジティブコントロールのサンプルを調製した。
2.実験方法、及び結果
2-1 血管新生阻害実験
ヒト血管内皮細胞と繊維芽細胞を最適濃度で共培養し、管腔形成初期段階の増殖状態にあるものに各サンプル(1-1-1、ネガティブコントロール、ポジティブコントロール)を添加し、11日間培養(4、7、9日後にサンプルを含む培地を交換)後、管腔形成をMouse anti-human CD31とGoat anti-mouse IgG AlkP Conjugateを用いて染色後、顕微鏡観察した。血管新生阻害効果について、形成された管腔様網目構造を評価した。
得られた結果を表2および図2および図3に示す。血管組織の写真をデジタルデータとして取り込み、ランダムに選択した数箇所の血管部分(黒色部分)の面積を測定することによって血管新生阻害の効果を求めた。即ち表2のAREAの欄の数値が小さいほど血管新生阻害の効果が高いサンプルであることを示している。
発酵大麦エキスP粉末に明らかな血管新生阻害の効果が見られた。
実験3: 血管新生阻害実験
〈サンプル名称〉
表3に示すとおり。
血管新生阻害実験に用いたサンプル(1)〜(9)の調製法
本件に用いたサンプルについては、他の実験との兼ね合いがあり、粉末化したサンプルを再溶解して実験に用いているが、液状のまま、実験に用いても何ら問題はない。なお、下記したように粉末化する際に、賦形材としてエキスと等量のデキストリンを添加したものもある。なおデキストリン含量は重量パーセント濃度 (W/W)である。
[大麦焼酎蒸留残液合成吸着材処理吸着画分粉末](発酵大麦エキスP粉末)
前記段落0044を参照。
[実験試料の調製、実験方法、及び結果]
1.実験試料
1-1 サンプル調製
1-1-1 血管新生阻害実験用
各試料を1000μgずつ秤量後、それぞれ別々に1mlの培地で溶解し、ろ過滅菌(0.22μm)後、10倍希釈(3回)を行い、10μg/mlから1000μg/mlの濃度のサンプルを調製した。
2.実験方法及び結果
2-1 血管新生阻害実験
ヒト血管内皮細胞と繊維芽細胞を最適濃度で共培養し、管腔形成初期段階の増殖状態にあるものに各サンプルを添加し、11日間培養(4、7、9日後にサンプルを含む培地を交換)後、管腔形成をMouse anti-human CD31とGoat anti-mouse IgG AlkP Conjugateを用いて染色後、顕微鏡観察した。評価基準として、管腔形成を促進するVEGF-Aを10ng/ml、管腔形成を阻害するSuraminを50μMを同様に添加し、controlは無添加とした。血管新生阻害効果について、形成された管腔様網目構造を評価した。
方法:クラボウ社製のキットにより測定した。4つのポイントにおける管腔形成状態(面積、長さ、枝分れの数)を観察した。血管新生因子であるVEGFと血管新生抑制剤であるSuraminを共存させた系を対照とし、VEGFと各サンプル共存下の管腔形成状態を比較した。
(Suraminとサンプルの血管新生阻害活性を比較)
・サンプル添加濃度; 10、100、1000μg/mL
(Suraminは全て一定濃度;50μM)
結果:得られた結果を表3(血管新生阻害効果の数値データ)および図4に示した。
上記表3および図4の結果より、発酵大麦エキスPの100μgは完全に管腔形成を阻害した。
本発明の組成物は、有史以前から人類に欠かせない穀類で、日本の古い医学書にも記載されているなど、健康に良い食品として親しまれてきたイネ科植物である大麦を発酵に付したもの由来の活性成分に基づく血管新生阻害を応用するものであり、機能性食品素材としての利用可能性が高い。
実施例1の発酵大麦エキスの血管新生に及ぼす影響を示す図面に代わる写真である。 実施例2のVEGF-A、Suramin50μMを用いての管腔形成の様子を説明する図面に代わる顕微鏡写真である。A1;VEGF-A 、A2;VEGF-A、 A3;Suramin、 A4;Suramin 実施例2の発酵大麦エキスP粉末を用いての管腔形成の様子を説明するおよび無添加で培養したコントロールの管腔形成の様子を説明する図面に代わる顕微鏡写真である。 発酵大麦エキスP粉末添加量 D1;10μg、D4;培地のみ 実施例3の血管新生阻害試験の結果を説明する図面である。

Claims (3)

  1. 大麦焼酎蒸留残液を分画して得られた組成物、大麦焼酎蒸留残液を培地とした乳酸菌培養液および発酵大麦ファイバーアルカリ抽出物からなる群より選ばれる、大麦を発酵に付したもの由来の成分を血管新生阻害作用の有効成分とすることを特徴とする血管新生を阻害するための組成物。
  2. 上記大麦焼酎蒸留残液を分画して得られた組成物が、大麦焼酎蒸留残液合成吸着材処理非吸着画分、大麦焼酎蒸留残液合成吸着材処理吸着画分、および大麦焼酎蒸留残液エタノール沈殿画分からなる群より選ばれる1以上の組成物である請求項の血管新生を阻害するための組成物。
  3. 上記血管新生を阻害するための組成物が、腫瘍もしくは癌、慢性炎症または網膜症における異常な血管新生が原因となる疾患を治療または予防するための組成物である請求項1または2の血管新生を阻害するための組成物。
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