JP4251837B2 - 大麦焼酎蒸留残液から得られる食品用組成物及び該食品用組成物の製造方法 - Google Patents
大麦焼酎蒸留残液から得られる食品用組成物及び該食品用組成物の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる非吸着画分からなり、アルコール性肝障害に対する発症抑制作用及び治癒作用を有し且つ優れた呈味性を有する食品用組成物及びその製造方法に関する。
より詳細には、本発明は大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより分取した非吸着画分からなり、該非吸着画分は、平均鎖長が3.0乃至5.0である複数種のペプチドを含有し、それらペプチドは該ペプチドに由来するアミノ酸総含量を100%としたときのアミノ酸組成割合が、グルタミン酸24乃至38%、グリシン4乃至20%、アスパラギン酸5乃至10%、プロリン4乃至9%、及びセリン4乃至8%であり、アルコール性肝障害に対する発症抑制作用及び治癒作用を有し且つ優れた呈味性を有する食品用組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開平6-98750号公報(以下、文献1と言う)には、穀類及び/又はいも類の発酵生産物を蒸留して焼酎を分離した残渣を80〜95℃に加熱した後に固形物を除去し、得られた液を活性炭等の吸着剤からなる吸着処理に付した後ブリックス度が25〜50となるように濃縮することにより得られる焼酎残渣の精製濃縮物からなる調味料が記載されている。
【0003】
また、大麦焼酎を製造する際に副成する大麦焼酎蒸留残液が薬理作用を有することが知られている。即ち、該大麦焼酎蒸留残液がオロチン酸投与によるラットの肝臓への脂質の蓄積を抑制することが報告されている[日本栄養・食糧学会総会講演要旨集、Vol.53, 53(1999)参照](以下、文献2と言う)。さらに該大麦焼酎蒸留残液が有する上記の脂肪肝抑制作用は、ワイン粕やビール粕に比べて強く、該作用はいも焼酎蒸留残液には全く認められず、米焼酎蒸留残液では極めて小さいことから、大麦焼酎蒸留残液のみに特有のものであることが報告されている[日本醸造協会誌、Vol.94, No.9, 768(1999)参照](以下、文献3と言う)。また、前記大麦焼酎蒸留残液が、ウイルス性肝障害と同様の症状を呈することが知られているD-ガラクトサミン誘発性肝障害の発症を抑制する作用を有し、該発症抑制作用は該大麦焼酎蒸留残液を遠心分離に付すことにより得られる液体分に認められることが報告されている[日本醸造協会誌、Vol.95, No.9, 706(2000)参照](以下、文献4と言う)。この他、特開2001-145472号公報(以下、文献5と言う)には、大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分にアルカリを添加してアルカリ可溶性画分を分取し、該アルカリ可溶性画分を酸で中和して中性可溶性画分を得、該中性可溶性画分にエタノールを添加することにより分取した、有機酸、タンパク質、及びヘミセルロースを含有するエタノール不溶性画分からなる組成物が、ラットを使用した実験において、オロチン酸誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有することが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、文献1には、「穀類及び/又はいも類の発酵生産物を蒸留して焼酎を分離した残渣を80〜95℃に加熱」する加熱処理工程によって、長期間保存しても何ら腐敗及び悪臭を生じず食品に旨味を付与するための調味料として使用できる精製濃縮物が得られる旨記載されている。しかしながら、文献1においては、80〜95℃の高温で行う前記加熱処理工程によって前記焼酎残渣中に含まれる呈味性を有するアミノ酸等が変性することから、呈味性が著しく低下して調味料としての価値が低くなってしまうという問題がある他、こうした加熱処理工程によって前記精製濃縮物の着色度合が更に高まる。こうしたことから文献1に記載の精製濃縮物は、調味料としての用途が限られたものになってしまうという問題がある。なお、文献1には該精製濃縮物が何らかの薬理作用を有するか否かについて言及するところは全くない。
【0005】
大麦焼酎蒸留残液が有する薬理作用については、上述したように、文献2乃至文献4には、大麦焼酎蒸留残液又は大麦焼酎蒸留残液を固液分離することにより得られる液体分(以下、これらを大麦焼酎蒸留残液の液体分と呼称することとする。)がオロチン酸誘発性肝障害及びD-ガラクトサミン誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有することが記載されているが、前記大麦焼酎蒸留残液及びその液体分がアルコール摂取によって誘発されるアルコール性肝障害に対する発症抑制作用或いは治癒作用を有するか否かについては示唆するところすらない。また、文献5には、上述したようにエタノール不溶性画分がオロチン酸誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有することが記載されているが、該エタノール不溶性画分が前記アルコール性肝障害に対する発症抑制作用或いは治癒作用を有するか否かについては示唆するところすらない。即ち、大麦焼酎蒸留残液からアルコール性肝障害に対する発症抑制作用或いは治癒作用を有する画分を分取した例はこれまでに全く知られていない。
【0006】
なお、文献5に記載の前記エタノール不溶性画分は、本発明の大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付して非吸着画分を分取する手法とは全く異なる手法により取得したものである。即ち、文献5に記載の前記エタノール不溶性画分は、上述したように、大麦焼酎蒸留残液の液体分にアルカリを添加してアルカリ可溶性画分を分取し、該アルカリ可溶性画分を酸で中和して中性可溶性画分を得、該中性可溶性画分にエタノールを添加して沈澱処理することにより得られるものである。そして、該エタノール不溶性画分は、主たる構成成分の一つとしてヘミセルロースを28±3重量%含有し、該ヘミセルロースはキシロース60乃至70重量%の糖組成を有するものである。一方、本発明の非吸着画分は、文献5に全く記載のない、平均鎖長が3.0乃至5.0である複数種のペプチドを含有するものである。また、本発明の非吸着画分は、多糖類を15乃至25重量%含有するものの、該多糖類の糖組成は前記ヘミセルロースとは明らかに異なる。従って、文献5に記載のエタノール不溶性画分は、本発明の非吸着画分とは明白に異なるものである。
【0007】
ところで、オロチン酸誘発性肝障害は、オロチン酸により肝臓での脂肪合成が促進され、さらに肝臓から血中への脂肪の移行が抑制され、それにより脂肪肝を誘発する肝障害であることが知られている。また,D-ガラクトサミン誘発性肝障害は、D-ガラクトサミンにより肝細胞の壊死が促進され、それにより肝炎を誘発する肝障害であることが知られている。
【0008】
一方、本発明においていうアルコール性肝障害は、アルコールの過剰摂取によって誘発されるアルコール性肝炎、アルコール性脂肪肝、及びアルコール性高脂血症を包含して意味する。前記アルコール性脂肪肝は、エタノールにより脂肪組織から肝臓への脂肪酸の移行が促進され、肝臓における脂肪酸や中性脂肪の合成が促進され、更に、肝臓における脂肪酸の分解が抑制されること等によって、肝臓内に中性脂肪が蓄積されることにより誘発される脂肪肝であることが知られている。前記アルコール性肝炎は、エタノールの代謝産物であるアセトアルデヒドや酢酸或いはこれらが産生される際に発生する活性酸素が、肝細胞に対して障害性を示すことにより誘発される肝炎であることが知られている。また、前記アルコール性高脂血症は、上述したように肝臓内に蓄積した過剰の中性脂肪が分泌型の超低比重リポタンパク(VLDL)として大量に血中に放出されることにより発症するものであることが知られている。そして、こうしたアルコール性肝障害においては、風船様腫大や肝細胞壊死等の肝炎の病変、或いは大滴性脂肪滴を含有する肝細胞からなる脂肪肝の所見が肝小葉の終末肝静脈周辺領域を中心として進展していくことが知られている。なお、肝臓は主に肝細胞からなり、小葉間結合組織で区切られた肝小葉を一単位として機能しており、この直径1mmほどの肝小葉が多数集合して肝臓ができている。従って、こうしたそれぞれの肝障害の因果関係からすると、アルコール性肝障害は、オロチン酸誘発性肝障害及びD-ガラクトサミン誘発性肝障害とは客観的に区別されるものであり、ある種の成分がオロチン酸誘発性肝障害又はD-ガラクトサミン誘発性肝障害に対して発症抑制作用或いは治癒作用を有することが判っていても、該成分がアルコール性肝障害に対しても同様の発症抑制作用或いは治癒作用を有するか否かは、容易に予測できるものでは到底ない。
【0009】
このような従来技術に鑑みて、本発明は大麦焼酎蒸留残液から合成吸着剤を用いて分取した、アルコール性肝障害に対する強力な発症抑制作用及び治癒作用を有し且つ優れた呈味性を有する食品用組成物を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、文献2乃至文献4には大麦焼酎蒸留残液の液体分がD-ガラクトサミン誘発性肝障害及びオロチン酸誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有することが記載されていることに鑑み、該大麦焼酎蒸留残液の液体分が、アルコール性肝障害に対して発症抑制作用を示すか否かを明らかにすることを目的として、実験を介して鋭意検討を行った。その結果、前記大麦焼酎蒸留残液の液体分は、前記アルコール性肝障害に対する発症抑制作用を僅かに有するものの、アルコール性肝障害の発症を積極的に抑制する目的での薬剤としての実使用を示唆する程のものではないことが判明した。
【0011】
ところで、本発明者らの内の三者は他の二者と共同で、大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる吸着画分は、オロチン酸誘発性脂肪肝及びD-ガラクトサミン誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有するが、大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより副成する非吸着画分は、オロチン酸誘発性脂肪肝及びD-ガラクトサミン誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有しないことを見出した(特願2002-56929として出願済)。こうしたことから、前記非吸着画分は薬理作用を有しないことから無用なものとみなして廃棄していた。ところが、本発明者らは、このように無用なものとして廃棄していた前記非吸着画分を用いて、そのアルコール性肝障害に対する発症抑制作用及び治癒作用の有無を実験を介して検討したところ、驚くべきことに、該非吸着画分が極めて強力なアルコール性肝障害の発症抑制作用を有し且つ強力なアルコール性肝障害の治癒作用を有することを見出した。
【0012】
また、本発明者らは、前記非吸着画分について、呈味性の観点で鋭意検討を行った。その結果、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる非吸着画分が、文献1の精製濃縮物(大麦焼酎蒸留残液を原料に使用して文献1の製造方法を介して得られる精製濃縮物)と比較して、雑味が極めて少ない卓越した呈味性を有し且つ着色度合も極めて少ない調味料たり得ることを見出した。さらに本発明者らは、文献1に記載の前記精製濃縮物について、そのアルコール性肝障害に対する発症抑制作用の有無を実験を介して検討したところ、該精製濃縮物は、前記発症抑制作用を僅かに有しはするものの、その程度は極めて小さく、アルコール性肝障害の発症を積極的に抑制する目的での薬剤としての実使用を示唆する程のものではないことが判明した。ところで、当該精製濃縮物のようにアルコール性肝障害に対する発症抑制作用が極めて小さい場合には、アルコール性肝障害に対する治癒作用も当然のことながら極めて小さくなる。従って、該治癒作用のみが大きくなるとは考えられない。このようなことから、上記非吸着画分が有するアルコール性肝障害に対する発症抑制作用及び治癒作用は、文献1に記載の精製濃縮物では達成できない極めて絶大なものであることが判明した。
本発明は、このような発見に基づいて完成に至ったものである。本発明の目的は、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる非吸着画分からなる、アルコール性肝障害に対する発症抑制作用及び治癒作用を有し且つ優れた呈味性を有する食品用組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、該食品用組成物の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明者らは、上述したように、文献2乃至文献4には大麦焼酎蒸留残液の液体分がD-ガラクトサミン誘発性肝障害及びオロチン酸誘発性脂肪肝に対する発症抑制作用を有することが記載されていることに鑑みて、該大麦焼酎蒸留残液の液体分がアルコール性肝障害に対しても発症抑制作用を示すか否かを明らかにするために、該大麦焼酎蒸留残液の液体分(A)を用いて以下の実験を行い、鋭意検討した。
即ち、3週齢Wistar系雄性ラット(日本SLC)24匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えた後、1群12匹として、対照群及び試験群からなる2群に分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように前記24匹のラットを振り分けた。対照群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料、試験群のラットに対しては該5%エタノール含有液体飼料に大麦焼酎蒸留残液の液体分(A)の凍結乾燥物粉末(A’)1%を添加した液体飼料をそれぞれ4週間与えて飼育した。対照群及び試験群とは別に前記3週齢Wistar系雄性ラット12匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては他の2群と摂取カロリーを同一にするために5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を4週間与えて飼育した。但し、上記3群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。実験最終日(試験開始後4週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清HDL-コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清遊離脂肪酸、及び血清ALT(GPT)を測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群と試験群の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0014】
その結果、対照群は、無処置群と比較して、血清総コレステロール濃度、血清HDL-コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度及び血清リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性高脂血症が誘発されていることが判明した。また、対照群は、無処置群と比較して、肝臓トリグリセリド濃度及び肝臓リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性脂肪肝が誘発されていることが判明した。更に、対照群は、無処置群と比較して、血中ALT(GPT)濃度が有意に増加し、肝細胞の生物顕微鏡観察においては肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められ、アルコール性肝炎が誘発されていることが判明した。一方、試験群は、対照群と比較して、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度及び肝臓トリグリセリド濃度の上昇が抑制される傾向を示し、肝細胞の生物顕微鏡観察においても肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が僅かに減少する傾向を示した。
以上の結果から、前記大麦焼酎蒸留残液の液体分(A)の凍結乾燥物粉末(A’)は、アルコール性肝障害の発症を積極的に抑制する目的での薬剤としての実使用を示唆する程のものではないことが判明した。
【0015】
次に、本発明者らは、次に述べる実験を介して、大麦焼酎蒸留残液の液体分から得られるどのような画分がアルコール性肝障害に対する発症抑制作用に寄与しているかを明らかにするために、大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる吸着画分をアルカリを用いて溶出することにより得られる脱着画分(B)を用いて以下の実験を行い、鋭意検討した。即ち、3週齢Wistar系雄性ラット(日本SLC)24匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えた後、1群12匹として、対照群及び試験群からなる2群に分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように前記24匹のラットを振り分けた。対照群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料、試験群のラットに対しては該5%エタノール含有液体飼料に上記脱着画分(B)の凍結乾燥物粉末(B’)1%を添加した液体飼料をそれぞれ4週間与えて飼育した。対照群及び試験群とは別に前記3週齢Wistar系雄性ラット12匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては他の2群と摂取カロリーを同一にするために5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を4週間与えて飼育した。但し、上記3群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。実験最終日(試験開始後4週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清HDL-コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清遊離脂肪酸、及び血清ALT(GPT)を測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群と試験群の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0016】
その結果、対照群は、無処置群と比較して、血清総コレステロール濃度、血清HDL-コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度及び血清リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性高脂血症が誘発されていることが判明した。また、対照群は、無処置群と比較して、肝臓トリグリセリド濃度及び肝臓リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性脂肪肝が誘発されていることが判明した。更に、対照群は、無処置群と比較して、血中ALT(GPT)濃度が有意に増加し、肝細胞の生物顕微鏡観察においては肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められ、アルコール性肝炎が誘発されていることが判明した。一方、試験群は、対照群と比較して、該ラットの血清トリグリセリド濃度の上昇が抑制される傾向を示したが、肝臓トリグリセリド濃度の上昇を全く抑制せず、肝細胞の生物顕微鏡観察においても肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められた。即ち、上記脱着画分(B)の凍結乾燥物粉末(B’)は、アルコール性高脂血症の誘発を抑制する傾向を僅かに示したが、アルコール性脂肪肝及びアルコール性肝炎の誘発を抑制する傾向は全く示さなかった。
以上の結果から、上記脱着画分(B)の凍結乾燥物粉末(B’)は、アルコール性肝障害に対する発症抑制作用を実質的に有さないことが判明した。
【0017】
そこで、本発明者らは、大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる非吸着画分が、アルコール性肝障害に対して効果的な発症抑制作用を示すのではないかと推測して、大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる非吸着画分(C)を用いて以下の実験を行い、鋭意検討した。
即ち、3週齢Wistar系雄性ラット(日本SLC)24匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えた後、1群12匹として、対照群及び試験群からなる2群に分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように前記24匹のラットを振り分けた。対照群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料、試験群のラットに対しては該5%エタノール含有液体飼料に上記非吸着画分(C)の凍結乾燥物粉末(C’)1%を添加した液体飼料をそれぞれ4週間与えて飼育した。対照群及び試験群とは別に前記3週齢Wistar系雄性ラット12匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては他の2群と摂取カロリーを同一にするために5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を4週間与えて飼育した。但し、上記3群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。実験最終日(試験開始後4週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清HDL-コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清遊離脂肪酸、及び血清ALT(GPT)を測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群と試験群の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0018】
その結果、対照群は、無処置群と比較して、血清総コレステロール濃度、血清HDL-コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度及び血清リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性高脂血症が誘発されていることが判明した。また、対照群は、無処置群と比較して、肝臓トリグリセリド濃度及び肝臓リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性脂肪肝が誘発されていることが判明した。更に、対照群は、無処置群と比較して、血中ALT(GPT)濃度が有意に増加し、肝細胞の生物顕微鏡観察においては肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められ、アルコール性肝炎が誘発されていることが判明した。一方、試験群は、該ラットの血清LDL-コレステロール濃度と血清トリグリセリド濃度、及び肝臓トリグリセリド濃度の上昇を有意に抑制し、肝細胞の生物顕微鏡観察においても肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大がほとんど認められなかった。
以上の実験結果から、上記非吸着画分(C)の凍結乾燥物粉末(C’)は、アルコール性肝障害に対する顕著な発症抑制作用を有することが判った。
【0019】
また、本発明者らは、前記非吸着画分について、呈味性の観点で鋭意検討を行った。その結果、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる非吸着画分が、大麦焼酎蒸留残液をなんら処理することなくそのまま原料に使用して得られる文献1に記載の精製濃縮物からなる調味料と比較して、雑味が極めて少ない卓越した呈味性を有し且つ着色度合も極めて少ない調味料たり得ることを見出した。なお、上述したように、文献1には前記精製濃縮物の薬理作用について記載するところは全くないが、該精製濃縮物は、穀類及び/又はいも類の発酵生産物を蒸留して焼酎を分離した残渣から分取されるものであることが記載されていることに鑑み、大麦焼酎蒸留残液を原料に使用して文献1と同様の製造法に付して精製濃縮物(D)を得、該精製濃縮物(D)がアルコール性肝障害に対する発症抑制作用を有するか否かを明らかにすることを目的として実験を介して検討した。
即ち、3週齢Wistar系雄性ラット(日本SLC)24匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えた後、1群12匹として、対照群及び試験群からなる2群に分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように前記24匹のラットを振り分けた。対照群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料、試験群のラットに対しては該5%エタノール含有液体飼料に上記精製濃縮物(D)の凍結乾燥物粉末(D’)1%を添加した液体飼料をそれぞれ4週間与えて飼育した。対照群及び試験群とは別に前記3週齢Wistar系雄性ラット12匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては他の2群と摂取カロリーを同一にするために5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を4週間与えて飼育した。但し、上記3群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。実験最終日(試験開始後4週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清HDL-コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清遊離脂肪酸、及び血清ALTを測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群と試験群の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0020】
その結果、対照群は、無処置群と比較して、血清総コレステロール濃度、血清HDL-コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度及び血清リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性高脂血症が誘発されていることが判明した。また、対照群は、無処置群と比較して、肝臓トリグリセリド濃度及び肝臓リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性脂肪肝が誘発されていることが判明した。更に、対照群は、無処置群と比較して、血中ALT(GPT)濃度が有意に増加し、肝細胞の生物顕微鏡観察においては肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められ、アルコール性肝炎が誘発されていることが判明した。一方、試験群は、対照群と比較して、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度及び肝臓トリグリセリド濃度の上昇が抑制される傾向を示し、肝細胞の生物顕微鏡観察においても肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が僅かに減少する傾向を示し、アルコール性肝障害に対する僅かな発症抑制作用を有していることが判明した。しかしながら、上記精製濃縮物(D)の凍結乾燥物粉末(D’)が有するアルコール性肝障害に対する発症抑制作用は、【0014】に述べた文献2乃至文献4に記載の、大麦焼酎蒸留残液の液体分が有する発症抑制作用と実質的に同程度、即ち、アルコール性肝障害の発症を積極的に抑制する目的での薬剤としての実使用を示唆する程のものではないことが判明した。従って、上記精製濃縮物(D)が有する該発症抑制作用は、【0018】に記載した、前記非吸着画分が有する該発症抑制作用よりも極めて小さく、アルコール性肝障害の発症を積極的に抑制する目的での薬剤としての実使用を示唆する程のものではないことが判明した。
こうしたことから、大麦焼酎蒸留残液が有するアルコール性肝障害の発症抑制作用に寄与する成分は、大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる非吸着画分に極めて分画された状態で存在することが判明した。また、斯かるアルコール性肝障害の発症抑制作用に寄与する成分は、文献1に記載の製造法によっては得ることができないことが判明した。
【0021】
そこで、本発明者らは、アルコール性肝障害の発症を積極的に抑制する目的での薬剤としての実使用を示唆する程のものではないことが判明した前記液体分(A)の凍結乾燥物粉末(A’)、及びアルコール性肝障害に対する顕著な発症抑制作用を有することが判明した前記非吸着画分(C)の凍結乾燥物粉末(C’)が、既に発症したアルコール性肝障害に対して治癒作用を有するか否かを明らかにするために、以下の実験を行った。
即ち、7週齢Wistar系雄性ラット(日本チャールスリバー)30匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えて飼育した後、引き続き5%エタノール含有液体飼料で4週間飼育を行い、該4週間目にそれらのラットのそれぞれについて採血を行い、血漿を分離して血清脂質を測定し、1群10匹として、対照群、試験群1、及び試験群2からなる3群に分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように前記30匹のラットを振り分けた。該対照群のラットに対しては前記エタノール含有液体飼料投与群と摂取カロリーを同一にするために前記5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を2週間与えて飼育した。該試験群1に対しては該エタノール非含有液体飼料に前記液体分(A)の凍結乾燥物粉末(A’)1%を添加した液体飼料を2週間与えて飼育した。該試験群2に対しては該エタノール非含有液体飼料に前記非吸着画分(C)の凍結乾燥物粉末(C’)1%を添加した液体飼料を2週間与えて飼育した。更に対照群、試験群1及び試験群2とは別に前記7週齢Wistar系雄性ラット10匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては該エタノール非含有液体飼料を6週間与えて飼育した。但し、上記4群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。上記4群の全てについて、実験最終日(実験開始後6週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清ALT(GPT)、及び血清AST(GOT)を測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群に対するA群及びB群の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0022】
その結果、対照群は、エタノール含有液体飼料を与えて飼育することにより上昇した血清総コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、及び肝臓トリグリセリド濃度が僅かに低下するのみで、それぞれの正常値に近似する程度が極めて小なるものであった。また、試験群1においては、血清トリグリセリド濃度、血清総コレステロール濃度、血清リン脂質濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清ALT(GPT)濃度、血清AST(GOT)濃度、及び肝臓総コレステロール濃度が、対照群と比較して低くなる傾向を示したが、それぞれの正常値に近似する程度は小なるものであった。一方、試験群2においては、血清トリグリセリド濃度、血清総コレステロール濃度、血清リン脂質濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清ALT濃度、血清AST濃度、及び肝臓総コレステロール濃度が、対照群と比較して有意に低い値、即ち、それぞれの正常値と実質的に同等の値を示し、肝細胞の生物顕微鏡観察においても肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大がほとんど認められなかった。即ち、前記液体分(A)の凍結乾燥物粉末(A’)が有するアルコール性肝障害に対する治癒作用は、アルコール性肝障害を積極的に治癒する目的での薬剤としての実使用を示唆する程のものではないのに対して、前記非吸着画分(C)の凍結乾燥物粉末(C’)はアルコール性肝障害を顕著に治癒する作用を示すことが判った。
【0023】
以上の実験結果から、大麦を原料とする焼酎の製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して、液体分を得、該液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる非吸着画分が、アルコール性肝障害に対する極めて強力な発症抑制作用及び治癒作用を有し且つ極めて優れた呈味性を有することが判明した。当該事実から、大麦を原料とする焼酎の製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離することにより得られる液体分は、アルコール性肝障害の発症抑制及び治癒に寄与する成分を含有し、該成分は、前記液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる非吸着画分の中に分画されて含有されることが判明した。そして該非吸着画分は極めて優れた呈味性を有することから好適な調味料たり得ることが判明した。
【0024】
上述したように本発明者らは、大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる非吸着画分からなる組成物が、アルコール性肝障害に対する極めて強力な発症抑制作用及び治癒作用を有し且つ極めて優れた呈味性を有することを見出した。大麦焼酎蒸留残液を固液分離することにより得た液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる非吸着画分についてのこの発見は、今までに全く例のない新事実である。このように、本発明は、所定の薬理作用と優れた呈味性を併せ持つ該非吸着画分を食品用としても使用できるという該非吸着画分の有用な用途を創出するものである。
【0025】
本発明者らは、上記課題を達成すべく、実験を介して鋭意研究を重ねた結果、大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより非吸着画分を分取し、該非吸着画分を後述の実施例に記載の分析方法により分析に供した結果、該非吸着画分は、平均鎖長が3.0乃至5.0である複数種のペプチドを含有し、それらペプチドは該ペプチドに由来するアミノ酸総含量を100%としたときのアミノ酸組成割合が、グルタミン酸24乃至38%、グリシン4乃至20%、アスパラギン酸5乃至10%、プロリン4乃至9%、及びセリン4乃至8%であり、該ペプチドに由来するアミノ酸総含量は8乃至14重量%であることが判明した。また、該非吸着画分は、遊離アミノ酸類、遊離糖類、多糖類、及び有機酸類を含有し、詳細には、前記遊離アミノ酸類を4乃至12重量%、前記遊離糖類を5乃至10重量%、前記多糖類を15乃至25重量%、及び前記有機酸類を2乃至8重量%含有することが判明した。そして、前記遊離アミノ酸類は、プロリン20乃至28%、アラニン11乃至18%、ロイシン11乃至17%、アルギニン10乃至17%、及びグルタミン酸13乃至20%からなるアミノ酸で構成され、前記遊離糖類は、グルコース2乃至6重量%、キシロース0.5乃至5重量%、アラビノース0.5乃至3重量%の糖組成を有し、前記多糖類は、グルコース6乃至16重量%、キシロース3乃至12重量%、アラビノース0.5乃至4重量%の糖組成を有することが判明した。前記有機酸類は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、及び乳酸からなることが判明した。更に該非吸着画分を凍結乾燥に付した場合、淡黄色の性状を有することが判明した。なお、該非吸着画分は、上述のように多糖類を15乃至25重量%含有することから、前記ペプチドの中にはこうした多糖類と結合しているものも存在すると推察された。そして、こうした特徴を有する該非吸着画分は、アルコール性肝障害に対して強力な発症抑制作用及び治癒作用を有すると共に、極めて優れた呈味性を有することが判明した。本発明はこれらの判明した事実に基づくものである。
【0026】
【実施態様例】
本発明は上記目的を達成するものであり、アルコール性肝障害に対して強力な発症抑制作用及び治癒作用を有し且つ極めて優れた呈味性を有する食品用組成物及びその製造方法を提供する。即ち、大麦を原料とする焼酎の製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる非吸着画分からなる、アルコール性肝障害に対して強力な発症抑制作用及び治癒作用を有し且つ極めて優れた呈味性を有する食品用組成物及びその製造方法を提供する。また、本発明は、該食品用組成物からなる調味料を提供する。
【0027】
以下に、本発明の好ましい態様について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の、アルコール性肝障害に対して強力な発症抑制作用及び治癒作用を有し且つ極めて優れた呈味性を有する食品用組成物は以下のようにして製造される。即ち該食品用組成物の製造方法は、大麦を使用する蒸留酒の製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得る第1の工程、該液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより非吸着画分を得る第2の工程からなる。
以下に、本発明の該製造方法を実施する際に使用する、大麦を原料とする焼酎の製造において副成する大麦焼酎蒸留残液、及び各工程について詳述する。
【0028】
本発明において使用する大麦焼酎蒸留残液は、大麦又は精白大麦を原料として大麦麹及び蒸麦を製造し、得られた大麦麹、及び蒸麦中に含まれるでんぷんを麹、及び/又は酵素剤を使用して糖化し、さらに酵母によるアルコール発酵に付して熟成もろみを得、該熟成もろみを減圧蒸留または常圧蒸留等の蒸留装置を用いて蒸留する際に蒸留残渣として副成するもの、即ち、大麦焼酎の蒸留残液を意味する。また、米焼酎、甘藷焼酎、そば焼酎の製造においても、これらの焼酎製造において原料の一部として大麦を使用する場合に副成する焼酎蒸留残液も本発明において使用する大麦焼酎蒸留残液に包含される。
【0029】
本発明において、大麦焼酎蒸留残液を得るに際して、大麦焼酎の製造に用いる大麦麹は、通常の大麦焼酎製造において行われている製麹条件で製造すればよく用いる麹菌株としては、一般的に大麦焼酎製造で使用する白麹菌(Aspergillus kawachii)が好ましい。或いは泡盛製造で使用する黒麹菌(Aspergillus awamori)及び清酒製造等で使用する黄麹(Aspergillus oryzae)などのAspergillus属の菌株を用いることもできる。また大麦焼酎の製造に用いる酵母は、一般的に焼酎製造の際に使用する各種の焼酎醸造用酵母を使用することができる。
【0030】
本発明において、大麦焼酎の製造における蒸留工程で得られた大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得る第1の工程は、大麦焼酎蒸留残液から原料大麦、あるいは大麦麹由来の水不溶性の発酵残渣を除去し、液体分を得ることを目的として行うものである。この第1の工程における当該固液分離は、スクリュープレス方式やローラープレス方式の固液分離方法を介するか、或いはろ過圧搾式の固液分離機を用いて予備分離を行い、次いで遠心分離機、ケイソウ土ろ過装置、セラミックろ過装置、或いはろ過圧搾機等を用いて本発明により実施できる本固液分離処理を行う。第1の工程で得られた前記液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより、アルコール性肝障害に対する発症抑制作用及び治癒作用を有する非吸着画分を得る第2の工程は、該液体分に含まれるアルコール性肝障害に対する発症抑制作用及び治癒作用に関与する成分を、該合成吸着剤を用いて分画することを目的として行うものである。第2の工程で使用する合成吸着剤の好適な具体例としては、オルガノ(株)製のアンバーライトXAD-4、アンバーライトXAD-16、アンバーライトXAD-1180及びアンバーライトXAD-2000、三菱化学(株)製のセパビーズSP850及びダイヤイオンHP20等の芳香族系(又はスチレン系とも言う)合成吸着剤、オルガノ(株)製のアンバーライトXAD-7及び三菱化学(株)製のダイヤイオンHP2MG等のメタクリル系(又はアクリル系とも言う)合成吸着剤を挙げることができる。これらの他、場合によっては三菱化学(株)製のセパピーズSP207等の芳香族系修飾型合成吸着剤を用いることができる。
【0031】
このようにして得られる本発明の食品用組成物である上記非吸着画分はそのままの液体の状態で、或いはこれを凍結乾燥等に付すことにより乾燥物粉末にして、アルコール性肝障害に対する強力な発症抑制作用及び治癒作用を有し且つ極めて優れた呈味性を有する食品用組成物、特に好ましくは調味料として使用することが出来る。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0033】
以下の実施例に供する目的で大麦焼酎の製造を行った。原料としては、大麦(70%精白)を用いた。
【麹の製造】
大麦を40%(w/w)吸水させ、40分間蒸した後、40℃まで放冷し、大麦トンあたり1kgの種麹(白麹菌)を接種し、38℃、RH95%で24時間、32℃、RH92%で20時間保持することにより、大麦麹を製造した。
【蒸麦の製造】
大麦を40%(w/w)吸水させ、40分間蒸した後、40℃まで放冷することにより、蒸麦を製造した。
【大麦焼酎及び大麦焼酎蒸留残液の製造】
1次仕込みでは前述の方法で製造した大麦麹(大麦として3トン)に、水3.6キロリットル及び酵母として焼酎酵母の培養菌体1kg(湿重量)を加えて1次もろみを得、得られた1次もろみを5日間の発酵(1段目の発酵)に付した。次いで、2次仕込みでは、上記1段目の発酵を終えた1次もろみに、水11.4キロリットル、前述の方法で製造した蒸麦(大麦として7トン)を加えて11日間の発酵(2段目の発酵)に付した。発酵温度は1次仕込み、2次仕込みとも25℃とした。上記2段目の発酵を終えた2次もろみを常法により単式蒸留に付し、大麦焼酎10キロリットルと大麦焼酎蒸留残液15キロリットルを得た。得られた大麦焼酎蒸留残液を以下の実施例1、比較例1、比較例2、及び参考例1に用いた。
【0034】
【実施例1】
前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm,10minの条件で遠心分離して該大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、該液体分25Lと脱イオン水10Lをこの順番にオルガノ(株)製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラム(樹脂容量10L)に通して吸着分離処理することにより、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す素通り液からなる非吸着画分を分取した。得られた該非吸着画分を真空凍結乾燥機を用いて凍結乾燥に付し、凍結乾燥物1200gを得た。得られた凍結乾燥物を粉砕処理に付して、淡黄色を呈する粉末を得た。
【0035】
【比較例1】
D-ガラクトサミン誘発性肝障害及びオロチン酸誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有することが知られている文献2乃至文献4に記載の大麦焼酎蒸留残液の液体分の粉末を以下の方法により得た。即ち、上記【大麦焼酎及び大麦焼酎蒸留残液の製造】で得られた大麦焼酎蒸留残液を8000rpm,10minの条件で遠心分離して液体分を得た。得られた液体分25Lを真空凍結乾燥機を用いて凍結乾燥に付し、凍結乾燥物1500gを得た。得られた凍結乾燥物を粉砕処理に付して、淡褐色を呈する粉末を得た。
【0036】
【比較例2】
文献1の精製濃縮物からなる粉末を以下の方法により得た。即ち、上記【大麦焼酎及び大麦焼酎蒸留残液の製造】で得られた大麦焼酎蒸留残液10Lを90℃に加熱して攪拌しながら30分保持後、50℃になるまで冷却し、フィルタープレス方式の固液分離機を用いて固液分離に付すことにより液体分を得、該液体分にカーボン粒子1重量%及びパーライト0.3重量%を添加し、50℃に保持して攪拌後、更にスーパーカーボンフィルターにて濾過することにより濾液9Lを得、該濾液9Lを真空凍結乾燥機を用いて凍結乾燥に付し、凍結乾燥物576gを得た。得られた凍結乾燥物を粉砕処理に付して、褐色を呈する粉末を得た。
【0037】
【参考例1】
大麦焼酎蒸留残液を固液分離することにより得られる液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる吸着画分の粉末を以下の方法により得た。即ち、上記【大麦焼酎及び大麦焼酎蒸留残液の製造】で得られた大麦焼酎蒸留残液を8000rpm,10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、得られた大麦焼酎蒸留残液の液体分25Lと脱イオン水10Lをこの順番にオルガノ社製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラム(樹脂容量10L)に通して吸着分離処理に付して、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す非吸着画分からなる素通り液を除去した後、該カラムに1(wt/vol)%の 水酸化ナトリウム溶液10Lと脱イオン水10Lをこの順番に通すことにより該カラムの合成吸着剤に吸着した吸着画分を含有する溶出液20Lを得、該溶出液20Lをオルガノ社製強酸性陽イオン交換樹脂IR-120Bを充填したカラム(樹脂容量10L)に通して脱塩処理に付し、得られた液体を真空凍結乾燥機を用いて凍結乾燥に付し、ナトリウムイオンを除去した凍結乾燥物270gを得た。得られた凍結乾燥物を粉砕処理に付して、褐色を呈する粉末を得た。
【0038】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末(食品用組成物)、比較例1、比較例2、及び参考例1で得た凍結乾燥物粉末のそれぞれを以下の試験例1に供し、アルコール性肝障害に対する発症抑制作用を評価した。
【試験例1】
本発明の食品用組成物が有するアルコール性肝障害の発症に対する顕著な抑制作用を明らかにするために以下の試験を行った。
即ち、3週齢Wistar系雄性ラット(日本SLC)60匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えた後、1群12匹として、対照群、A群、B群、C群、及びD群からなる5群に分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように前記60匹のラットを振り分けた。対照群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料を4週間与えて飼育した。A群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料に実施例1で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を4週間与えて飼育した。B群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料に比較例1で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を4週間与えて飼育した。C群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料に比較例2で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を4週間与えて飼育した。D群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料に参考例1で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を4週間与えて飼育した。対照群、A群、B群、C群、及びD群とは別に前記3週齢Wistar系雄性ラット12匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては他の5群と摂取カロリーを同一にするために5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を4週間与えて飼育した。但し、上記6群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。実験最終日(試験開始後4週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清HDL-コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清遊離脂肪酸、及び血清ALTを測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群に対するA群乃至D群の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0039】
【評価1】
上記で得られた血清総コレステロール、血清HDL-コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清遊離脂肪酸、及び血清ALTの測定結果を表1に示し、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質の測定結果を表2に示す。表1及び表2に示す結果から以下の事実が判明した。
即ち、対照群は、無処置群と比較して、血清総コレステロール濃度、血清HDL-コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度及び血清リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性高脂血症が誘発されていることが判明した。また、対照群は、無処置群と比較して、肝臓トリグリセリド濃度及び肝臓リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性脂肪肝が誘発されていることが判明した。更に、対照群は、無処置群と比較して、血中ALT(GPT)濃度が有意に増加し、肝細胞の生物顕微鏡観察においては肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められ、アルコール性肝炎が誘発されていることが判明した。一方、A群は、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度、及び肝臓トリグリセリド濃度の上昇が有意に抑制され、肝細胞の生物顕微鏡観察においてもアルコール性肝障害に特異的に認められる肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大がほとんど認められなかった。B群及びC群は、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度、及び肝臓トリグリセリド濃度の上昇を抑制する傾向を示し、肝細胞の生物顕微鏡観察においても肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が僅かに減少する傾向を示した。D群は、血清トリグリセリド濃度の上昇を抑制する傾向を示したが、肝臓トリグリセリド濃度の上昇を全く抑制せず、肝細胞の生物顕微鏡観察においてはアルコール性肝障害に特異的に認められる肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められた。
【0040】
以上の結果から、比較例1及び比較例2で得た凍結乾燥物粉末は、アルコール性肝障害の発症を積極的に抑制する目的での薬剤としての実使用を示唆する程のものではない僅かな発症抑制作用を示し、参考例1で得た凍結乾燥物粉末はアルコール性肝障害の誘発を全く抑制しないことが判明した。これに対して、実施例1で得た本発明の凍結乾燥物粉末は、アルコール性肝障害の誘発を著しく抑制し、アルコール性肝障害に対する強力な発症抑制作用を示すことが判明した。
即ち、本発明の食品用組成物は、アルコール性肝障害に対する著しく強力な発症抑制作用を有することが明らかとなった。
【0041】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末(食品用組成物)、及び比較例1で得た凍結乾燥物粉末のそれぞれを以下の試験例2に供し、アルコール性肝障害に対する治癒作用を評価した。
【試験例2】
本試験例では、エタノール含有液体飼料で4週間飼育することによりアルコール性肝障害を発症したラットについて、実施例1で得た凍結乾燥物粉末(本発明の食品用組成物)、及び比較例1で得た凍結乾燥物粉末のそれぞれを用いて飼育することにより、アルコール性肝障害に対する治癒作用を評価した。
即ち、7週齢Wistar系雄性ラット(日本チャールスリバー)30匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えて飼育した後、引き続き5%エタノール含有液体飼料で4週間飼育を行い、該4週間目にそれらのラットのそれぞれについて採血を行い、血漿を分離して血清脂質を測定した。その後該30匹のラットを1群10匹として、対照群、A群、及びB群の3群に振り分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように該30匹のラットを振り分けた。対照群のラットに対しては前記エタノール含有液体飼料投与群と摂取カロリーを同一にするために5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を2週間与えて飼育した。A群のラットに対してはエタノール非含有液体飼料に実施例1で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を2週間与えて飼育した。B群のラットに対してはエタノール非含有液体飼料に比較例1で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を2週間与えて飼育した。更に対照群、A群、及びB群とは別に前記7週齢Wistar系雄性ラット10匹からなる無処置群を設け、無処置群のラットに対してはエタノール非含有液体飼料を6週間与えて飼育した。但し、上記4群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。上記4群の全てについて、実験最終日(実験開始後6週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清ALT(GPT)、及び血清AST(GOT)を測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群に対するA群及びB群の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0042】
【評価2】
上記で得られた血清総コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清ALT、及び血清ASTの測定結果を表3に示し、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質の測定結果を表4に示す。表3及び表4の結果から以下の事実が判明した。
即ち、対照群は、血清総コレステロール及び血清LDL-コレステロールが無処置群よりも有意に高い値を示し、血清トリグリセリド及び血清リン脂質も無処置群よりも高まる傾向が認められ、肝細胞の生物顕微鏡観察においてはアルコール性肝障害に特異的に認められる肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に観察された。また、B群は、血清総コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度、血清リン脂質濃度、血清ALT濃度、血清AST濃度、及び肝臓総コレステロール濃度が、対照群と比較して低くなる傾向を示したが、それぞれの正常値に近似する程度は小なるものであり、肝細胞の生物顕微鏡観察においてはアルコール性肝障害に特異的に認められる肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が対照群と比較して僅かに減少しているのが観察された。一方、A群は、血清総コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度、血清リン脂質濃度、血清ALT濃度、血清AST濃度、肝臓総コレステロール濃度、及び肝臓トリグリセリド濃度が、対照群と比較して有意に低い値、即ち、無処置群と実質的に同等の値を示し、肝細胞の生物顕微鏡観察においてはアルコール性肝障害に特異的に認められる肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が対照群と比較して著しく減少しているのが観察された。
以上の結果から、比較例1で得た凍結乾燥物粉末は、アルコール性肝障害を積極的に治癒する目的での薬剤としての実使用を示唆する程のものではない僅かな治癒作用を示したのに対して、実施例1で得た凍結乾燥物粉末は、アルコール性肝障害に対して著しく優れた治癒作用を示すことが判明した。
即ち、本発明の食品用組成物は、アルコール性肝障害に対する著しく優れた治癒作用を有していることが判明した。
【0043】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末(食品用組成物)、及び比較例1で得た凍結乾燥物粉末のそれぞれを以下の試験例3に供し、アルコール性肝障害に対する治癒作用を試験例2とは異なる方法で評価した。
【試験例3】
7週齢Wistar系雄性ラット(日本チャールスリバー)30匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えて飼育した後、引き続き5%エタノール含有液体飼料で4週間飼育を行い、該4週間目にそれらのラットのそれぞれについて採血を行い、血漿を分離して血清脂質を測定した。その後、該30匹のラットを1群10匹として、対照群、A群、及びB群の3群に振り分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように該30匹のラットを振り分けた。対照群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料を2週間与えて飼育した。A群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料に実施例1で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を2週間与えて飼育した。B群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料に比較例1で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を2週間与えて飼育した。更に対照群、A群、及びB群とは別に7週齢Wistar系雄性ラット10匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては、前記5%エタノール含有液体飼料と摂取カロリーを同一にするために5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を6週間与えて飼育した。但し、上記4群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。上記4群の全てについて、実験最終日(実験開始後6週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清ALT、及び血清ASTを測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群に対するA群及びB群の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0044】
【評価3】
上記で得られた血清総コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清ALT、及び血清ASTの測定結果を表5に示し、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質の測定結果を表6に示す。表5及び表6に示す結果から以下の事実が判明した。
即ち、対照群は、無処置群と比較して、血清総コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度、血清リン脂質濃度、血清ALT濃度、肝臓重量、肝臓総コレステロール濃度、及び肝臓トリグリセリド濃度が有意に高い値を示し、肝細胞の生物顕微鏡観察においてはアルコール性肝障害に特異的に認められる肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められた。
また、B群は、血清トリグリセリド濃度、血清総コレステロール濃度、血清リン脂質濃度、肝臓総コレステロール濃度、及び肝臓トリグリセリド濃度が、対照群と比較して低くなる傾向を示したが、それぞれの正常値に近似する程度は小なるものであり、肝細胞の生物顕微鏡観察においてはアルコール性肝障害に特異的に認められる肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が対照群と比較して僅かに減少しているのが観察された。
一方、A群は、血清トリグリセリド濃度、血清総コレステロール濃度、血清リン脂質濃度、血清LDL-コレステロール濃度、及び肝臓総コレステロール濃度及び肝臓トリグリセリド濃度が、対照群と比較して有意に低い値を示し、肝細胞の生物顕微鏡観察においてはアルコール性肝障害に特異的に認められる肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が対照群と比較して明らかに減少しているのが観察された。
以上の結果から、比較例1で得た凍結乾燥物粉末は、アルコール性肝障害を積極的に治癒する目的での薬剤としての実使用を示唆する程のものではない僅かな治癒作用を示したのに対して、実施例1で得た凍結乾燥物粉末は、アルコール性肝障害に対して著しく優れた治癒作用を示すことが判明した。
即ち、本発明の食品用組成物は、アルコール性肝障害に対する著しく優れた治癒作用を有していることが判明した。
【0045】
以上、試験例1に述べた結果から明らかなように、本発明の食品用組成物は大麦焼酎蒸留残液の液体分を卓越した強力なアルコール性肝障害の発症抑制作用を有し、エタノール投与によるアルコール性肝障害の発症を強力に抑制することが判明した。さらに試験例2及び試験例3に述べた結果から明らかなように、本発明の食品用組成物は、既に発症したアルコール性肝障害を顕著に治癒することが判明した。
【0046】
【非吸着画分の成分組成の分析】
以下に述べるように、実施例1と同様にして芳香族系合成吸着剤アンバーライトXAD-16を使用してロットを異にする複数の大麦焼酎蒸留残液のそれぞれを吸着分離処理することにより得られたそれぞれの非吸着画分からなる複数の分析用試料のそれぞれについて成分組成の分析を行った。
【分析用試料の作製】
上記【大麦焼酎及び大麦焼酎蒸留残液の製造】の方法を複数回行って、ロットを異にする複数の大麦焼酎蒸留残液を用意した。それぞれの大麦焼酎蒸留残液を、実施例1におけると同様の方法で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、該液体分25Lと脱イオン水10Lをこの順番にオルガノ社製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラム(樹脂容量10L)に通して吸着分離処理し、該カラムからの流出液、即ち、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す非吸着画分を分取し、該非吸着画分からなる分析用試料を得た。この様にして、複数種の分析用試料を作製した。
【分析用試料の分析】
上記で得られた複数の分析用試料のそれぞれについて、ペプチドを構成するアミノ酸組成、遊離アミノ酸組成、遊離糖類組成、多糖類組成、有機酸類組成、及びペプチドの平均鎖長を測定した。ペプチドを構成するアミノ酸組成は塩酸を用いた酸分解法に付した後にアミノ酸自動分析装置((株)日立製作所製高速アミノ酸分析計L-8500A)により、遊離アミノ酸組成は該アミノ酸自動分析装置により、遊離糖類組成はHPLC(High performance liquid chromatography) 法により、多糖類組成は塩酸加水分解によるHPLC法により、有機酸類組成はHPLC法により、及びペプチドの平均鎖長はTNBS(2,4,6-trinitrobenzene-sulfonic acid)法によりそれぞれ測定した。
【0047】
【分析結果】
上記分析用試料の成分組成(乾燥重量に基づく)の分析結果を表7に示す。表7に示した結果から明らかなように、上記非吸着画分は、平均鎖長が3.0乃至5.0である複数種のペプチドを含有し、それらペプチドは該ペプチドに由来するアミノ酸総含量を100%としたときのアミノ酸組成割合が、グルタミン酸26乃至38%、グリシン8乃至20%、アスパラギン酸6乃至10%、プロリン6乃至9%、及びセリン5乃至8%であり、該ペプチドに由来するアミノ酸総含量は9乃至14重量%であることが判明した。また、該非吸着画分は、遊離アミノ酸類、遊離糖類、多糖類、及び有機酸類を含有し、詳細には、前記遊離アミノ酸類を6乃至12重量%、前記遊離糖類を6乃至10重量%、前記多糖類を18乃至25重量%、及び前記有機酸類を4乃至8重量%含有することが判明した。なお、前記遊離アミノ酸類は、プロリン22乃至28%、アラニン11乃至17%、ロイシン13乃至16%、アルギニン12乃至16%、及びグルタミン酸15乃至20%からなるアミノ酸で構成され、前記遊離糖類は、グルコース2乃至6重量%、キシロース0.5乃至5重量%、アラビノース0.5乃至3重量%の糖組成を有し、前記多糖類は、グルコース6乃至16重量%、キシロース3乃至12重量%、アラビノース0.5乃至4重量%の糖組成を有することが判明した。前記有機酸類は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、及び乳酸からなることが判明した。そして、こうした組成を有する非吸着画分を凍結乾燥に付した場合、淡黄色の性状を有することが判明した。なお、該非吸着画分は、上述のように多糖類を18乃至25重量%含有することから、前記ペプチドの中にはこうした多糖類と結合しているものも存在すると推察された。
【0048】
更に、上記分析用試料の作製の手法を上記合成吸着剤アンバーライトXAD-16以外の上述した芳香族系合成吸着剤、即ち、オルガノ(株)製のアンバーライトXAD-4、アンバーライトXAD-1180及びアンバーライトXAD-2000、三菱化学(株)製のセパビーズSP850及びダイヤイオンHP20のそれぞれを用いて行い、それぞれの合成吸着剤について複数の非吸着画分からなる分析用試料を得、得られた分析用試料について上述したのと同様にして分析を行ったところ、表7に示すのと実質的に同等の結果が得られた。
【0049】
【実施例2】
上記【大麦焼酎及び大麦焼酎蒸留残液の製造】において得られた大麦焼酎蒸留残液を8000rpm,10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、該液体分25Lと脱イオン水10Lをこの順番にオルガノ(株)製のメタクリル系の合成吸着剤アンバーライトXAD-7を充填したカラム(樹脂容量10L)に通して吸着分離処理し、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す素通り液からなる非吸着画分を分取し、該非吸着画分を真空凍結乾燥機を用いて凍結乾燥に付し、凍結乾燥物1060gを得た。得られた凍結乾燥物を粉砕処理に付して、淡黄色を呈する粉末を得た。
【0050】
【試験例4】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末の代りに、実施例2で得た凍結乾燥物粉末を使用した以外は、試験例1と同様の方法によりアルコール性肝障害の発症抑制作用を評価した。その結果、実施例2で得た凍結乾燥物粉末は、試験例1において実施例1で得た凍結乾燥物粉末が示したのと実質的に同等の結果を示した。
【0051】
【試験例5】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末の代りに、実施例2で得た凍結乾燥物粉末を使用した以外は、試験例2と同様の方法によりアルコール性肝障害の治癒作用を評価した。その結果、実施例2で得た凍結乾燥物粉末は、試験例2において実施例1で得た凍結乾燥物粉末が示したのと実質的に同等の結果を示した。
【0052】
【試験例6】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末の代りに、実施例2で得た凍結乾燥物粉末を使用した以外は、試験例3と同様の方法によりアルコール性肝障害の治癒作用を評価した。その結果、実施例2で得た凍結乾燥物粉末は、試験例3において実施例1で得た凍結乾燥物粉末が示したのと実質的に同等の結果を示した。
【0053】
以上、試験例4乃至試験例6に述べた結果から明らかなように、本発明においては、芳香族系或いはメタクリル系の合成吸着剤のいずれを使用しても、得られる非吸着画分はアルコール性肝障害に対する強力な発症抑制作用及び治癒作用を有することが理解される。
【0054】
【非吸着画分の成分組成の分析】
以下に述べるように、実施例2と同様にしてメタクリル系合成吸着剤アンバーライトXAD-7を使用してロットを異にする複数の大麦焼酎蒸留残液のそれぞれを吸着分離処理することにより得られたそれぞれの非吸着画分からなる複数の分析用試料のそれぞれについて成分組成の分析を行った。
【分析用試料の作製】
上記【大麦焼酎及び大麦焼酎蒸留残液の製造】の方法を複数回行って、ロットを異にする複数の大麦焼酎蒸留残液を用意した。それぞれの大麦焼酎蒸留残液を、実施例1におけると同様の方法で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、該液体分25Lと脱イオン水10Lをこの順番にオルガノ社製の合成吸着剤アンバーライトXAD-7を充填したカラム(樹脂容量10L)に通して吸着分離処理し、該カラムからの流出液、即ち、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す非吸着画分を分取し、該非吸着画分からなる分析用試料を得た。この様にして、複数種の分析用試料を作製した。
【分析用試料の分析】
上記で得られた複数の分析用試料のそれぞれについて、ペプチドを構成するアミノ酸組成、遊離アミノ酸組成、遊離糖類組成、多糖類組成、有機酸類組成、及びペプチドの平均鎖長を測定した。ペプチドを構成するアミノ酸組成は塩酸を用いた酸分解法に付した後にアミノ酸自動分析装置((株)日立製作所製高速アミノ酸分析計L-8500A)により、遊離アミノ酸組成は該アミノ酸自動分析装置により、遊離糖類組成はHPLC(High performance liquid chromatography) 法により、多糖類組成は塩酸加水分解によるHPLC法により、有機酸類組成はHPLC法により、及びペプチドの平均鎖長はTNBS(2,4,6-trinitrobenzene-sulfonic acid)法によりそれぞれ測定した。
【0055】
【分析結果】
上記分析用試料の成分組成(乾燥重量に基づく)の分析結果を表8に示す。表8に示した結果から明らかなように、上記非吸着画分は、平均鎖長が3.0乃至5.0である複数種のペプチドを含有し、それらペプチドは該ペプチドに由来するアミノ酸総含量を100%としたときのアミノ酸組成割合が、グルタミン酸24乃至33%、グリシン4乃至14%、アスパラギン酸5乃至8%、プロリン4乃至8%、及びセリン4乃至7%であり、該ペプチドに由来するアミノ酸総含量は8乃至12重量%であることが判明した。また、該非吸着画分は、遊離アミノ酸類、遊離糖類、多糖類、及び有機酸類を含有し、詳細には、前記遊離アミノ酸類を4乃至10重量%、前記遊離糖類を5乃至8重量%、前記多糖類を15乃至23重量%、及び前記有機酸類を2乃至6重量%含有することが判明した。なお、前記遊離アミノ酸類は、プロリン20乃至25%、アラニン12乃至18%、ロイシン11乃至17%、アルギニン10乃至17%、及びグルタミン酸13乃至18%からなるアミノ酸で構成され、前記遊離糖類は、グルコース2乃至5重量%、キシロース0.5乃至3重量%、アラビノース0.5乃至3重量%の糖組成を有し、前記多糖類は、グルコース8乃至13重量%、キシロース5乃至9重量%、アラビノース0.5乃至3重量%の糖組成を有することが判明した。前記有機酸類は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、及び乳酸からなることが判明した。そして、こうした組成を有する非吸着画分を凍結乾燥に付した場合、淡黄色の性状を有することが判明した。なお、該非吸着画分は、上述のように多糖類を15乃至23重量%含有することから、前記ペプチドの中にはこうした多糖類と結合しているものも存在すると推察された。
【0056】
更に、上記分析用試料の作製の手法を上記合成吸着剤アンバーライトXAD-7以外の上述したメタクリル系合成吸着剤、即ち、三菱化学(株)製のダイヤイオンHP2MGを用いて、この合成吸着剤について複数の非吸着画分からなる分析用試料を得、得られた分析用試料について上述したのと同様にして分析を行ったところ、表8に示すのと実質的に同等の結果が得られた。
【0057】
【実施例3】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末に加水してブリックス度を30に調製した調味液を得た。
【0058】
【比較例3】
比較例2で得た凍結乾燥物粉末に加水してブリックス度を30に調製した調味液を得た。
【0059】
【評価4】
実施例3及び比較例3で得たそれぞれの調味液についてパネラー12名による官能検査を実施した。得られた官能検査結果を表9に示す。表9に示す結果から明らかなように、実施例3で得た調味液は、比較例3で得た調味液と比べて、大麦焼酎蒸留残液焼に由来する苦み及びエグ味が極めて少ない良好な呈味性を有し、着色度合も少ないことが判った。
【0060】
【実施例4】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末に、他の食品材料を以下に記す配合割合で混合し、ドレッシングを作製した。
配合割合:植物油脂25重量%、実施例1で得た凍結乾燥物粉末10重量%、醸造酢10重量%、醤油22重量%、タマネギ20重量%、砂糖10重量%、レモン果汁3重量%
【0061】
【比較例4】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末の代わりに比較例2において得た凍結乾燥物粉末を使用した他は、すべて前記実施例4と同様にしてドレッシングを作製した。
【0062】
【評価5】
実施例4及び比較例4で得たそれぞれのドレッシングについてパネラー12名による官能検査を実施した。得られた官能検査結果を表10に示す。表10に示す結果から明らかなように、実施例4で得たドレッシングは、比較例4で得たドレッシングと比べて、明らかに豊かな風味を有し、色調の点においても優れていることが判った。
【0063】
【実施例5】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末を他の食品材料と以下に記す配合割合で混合し健康飲料を作製した。
配合割合:レモン果汁10重量%、実施例1で得た凍結乾燥物粉末10重量%、蜂蜜10重量%、果糖ブドウ糖溶液5重量%、水65重量%
【0064】
【比較例5】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末の代わりに比較例2で得た凍結乾燥物粉末を使用した以外は、実施例5と同様にして健康飲料を作製した。
【0065】
【評価6】
実施例5及び比較例5で得たそれぞれの健康飲料についてパネラー12名による官能検査を実施した。その結果、実施例5で得た健康飲料は、比較例5で得た健康飲料と比べて、豊かな風味を有し、クセがなく飲みやすく、また、色調の点においても優れていることが判った。
【0066】
【実施例6】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末を他の食品材料と以下に記す配合割合で混合しパンを作製した。
配合割合:強力粉47重量%、実施例1で得た凍結乾燥物粉末2重量%、バター2重量%、砂糖4重量%、スキムミルク1.5重量%、食塩1重量%、水42重量%、イースト0.5重量%
【0067】
【比較例6】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末の代わりに比較例2で得た凍結乾燥物粉末を使用した以外は、実施例6と同様にしてパンを作製した。
【0068】
【評価7】
実施例6及び比較例6で得たそれぞれのパンについてパネラー12名による官能検査を実施した。その結果、実施例6で得たパンは、比較例6で得たパンと比べて、豊かな風味を有するだけでなく、弾力性のある食感を有し、色調の点でも何ら問題ないことが明らかになった。
【0069】
以上、実施例3乃至実施例6の結果から、本発明の凍結乾燥物粉末(食品用組成物)は極めて優れた呈味性を有し、該呈味性は比較例2の凍結乾燥粉末が有する呈味性を卓越する優れたものであることが判明した。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
【表7】
【0077】
【表8】
【0078】
【表9】
【0079】
【表10】
【0080】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明の大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる非吸着画分からなる食品用組成物は、アルコール性肝障害の発症に対しての著しい抑制作用及び治癒作用を有し且つ極めて優れた呈味性を有す。
Claims (10)
- 大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を芳香族系又はメタクリル系合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより分取した非吸着画分からなり、該非吸着画分は、平均鎖長が3.0乃至5.0である複数種のペプチドを含有し、それらペプチドは該ペプチドに由来するアミノ酸総含量を100%としたときのアミノ酸組成割合が、グルタミン酸24乃至38%、グリシン4乃至20%、アスパラギン酸5乃至10%、プロリン4乃至9%、及びセリン4乃至8%である食品用組成物。
- 前記ペプチドに由来するアミノ酸総含量が、8乃至14重量%である請求項1に記載の食品用組成物。
- 前記非吸着画分は、遊離アミノ酸類、遊離糖類、多糖類、及び有機酸類を更に含有する請求項1又は2に記載の食品用組成物。
- 前記非吸着画分は、前記遊離アミノ酸類を4乃至12重量%、前記遊離糖類を5乃至10重量%、前記多糖類を15乃至25重量%、及び前記有機酸類を2乃至8重量%含有する請求項3に記載の食品用組成物。
- 前記非吸着画分は、凍結乾燥粉末形態のものである請求項1乃至4のいずれかに記載の食品用組成物。
- 調味料として使用する請求項1乃至5のいずれかに記載の食品用組成物。
- 大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得る工程、該液体分を芳香族系又はメタクリル系合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより非吸着画分を分取する工程からなり、該非吸着画分は、平均鎖長が3.0乃至5.0である複数種のペプチドを含有し、それらペプチドは該ペプチドに由来するアミノ酸総含量を100%としたときのアミノ酸組成割合が、グルタミン酸24乃至38%、グリシン4乃至20%、アスパラギン酸5乃至10%、プロリン4乃至9%、及びセリン4乃至8%である、前記非吸着画分からなる食品用組成物の製造方法。
- 前記非吸着画分を凍結乾燥する工程を更に有するものである請求項7に記載の製造方法。
- 玄麦大麦又は精白大麦を原料にして製造した大麦麹と焼酎用酵母とを発酵に付して熟成もろみを作製し、該熟成もろみを蒸留に付して大麦焼酎を製造する工程(A)、及び前記工程(A)において前記大麦焼酎を製造する際に蒸留残渣として副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を芳香族系又はメタクリル系合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより非吸着画分を分取する工程(B)からなり、該非吸着画分は、平均鎖長が3.0乃至5.0である複数種のペプチドを含有し、それらペプチドは該ペプチドに由来するアミノ酸総含量を100%としたときのアミノ酸組成割合が、グルタミン酸24乃至38%、グリシン4乃至20%、アスパラギン酸5乃至10%、プロリン4乃至9%、及びセリン4乃至8%であり、前記工程(A)及び前記工程(B)を連続して行うことを特徴とする前記大麦焼酎及び前記非吸着画分からなる食品用組成物を連続して製造する方法。
- 前記工程(A)において、前記熟成もろみを得る際に、別に用意した玄麦大麦又は精白大麦を前記大麦麹及び前記焼酎用酵母と共に発酵に付すことを特徴とする請求項9に記載の方法。
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