JP4726811B2 - 有害微量元素溶出抑制方法及び石炭火力発電システム - Google Patents
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また、本発明によれば、石炭の燃焼残渣の分析結果に応じて溶出抑制剤の添加量を増減させることにより、該燃焼残渣からの有害微量元素の溶出濃度を平均して所定の範囲内に保つことができる。この所定の範囲の上限値は、例えば法律で規定されている溶出濃度の規制値とすることができ、下限値は、溶出抑制効果が頭打ちとなったとき(例えば石炭100重量部に対して溶出抑制剤を10重量部添加したとき)の溶出濃度よりも若干大きな値とすることができる。
また、本発明においては、溶出抑制剤として、石灰石、消灰石、及び生石灰からなる群より選択される1種以上を添加することにより、石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を効果的に抑制することができる。この石灰石、消灰石、生石灰は、比較的安価であると共に容易に入手可能である。
さらに、本発明においては、石炭の燃焼残渣を分析して該燃焼残渣からの有害微量元素の溶出濃度を測定し、その分析結果をフィードバックすることにより溶出抑制剤の添加量を決定するため、常に適切な量の溶出抑制剤を添加することができる。
(6)の発明によれば、石炭100重量部に対して、溶出抑制剤を0.3重量部以上10重量部以下の範囲で添加することにより、石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出をより効果的に抑制することができる。溶出抑制剤の添加量が石炭100重量部に対して0.3重量部未満であると、有害微量元素の溶出抑制効果が不十分となるので好ましくなく、10重量部を超えても、有害微量元素の溶出抑制効果に大きな向上が認められず、また、石炭の燃焼残渣である石炭灰表面の融点降下によって火炉内壁への石炭灰の多量の付着(スラッギング)を起こす恐れがあるため好ましくない。
図1は、石炭火力発電システムにおける微粉炭燃焼施設1を示す概略構成図である。図1に示すように、微粉炭燃焼施設1は、石炭を供給する石炭供給部12と、供給された石炭を微粉炭にする微粉炭生成部14と、微粉炭を燃焼する微粉炭燃焼部(燃焼ボイラ)16と、微粉炭の燃焼により生成された石炭灰を処理する石炭灰処理部18と、石炭灰からの有害微量元素の溶出濃度を分析する石炭灰分析部20と、有害微量元素の溶出抑制剤を添加する溶出抑制剤添加部22と、を備える。また、図2は、微粉炭燃焼部16における火炉161付近の拡大図である。
石炭供給部12は、石炭を貯蔵する石炭バンカ121と、この石炭バンカ121に貯蔵された石炭を供給する給炭機122と、を備える。石炭バンカ121は、給炭機122へ供給する石炭を貯蔵する。給炭機122は、石炭バンカ121から供給された石炭を連続して石炭微粉炭機141へ供給するものである。また、この給炭機122は、石炭の供給量を調整する装置を備えており、これにより、石炭微粉炭機141に供給される石炭量が調整される。また、これら石炭バンカ121と給炭機122との境界には石炭ゲートが設けられており、これにより、給炭機122からの空気が石炭バンカ121へ流入するのを防いでいる。
微粉炭生成部14は、石炭を微粉炭燃焼が可能な微粉炭にする石炭微粉炭機(ミル)141と、この石炭微粉炭機141に空気を供給する通風機142と、を備える。
微粉炭燃焼部16は、微粉炭生成部14で生成された微粉炭を燃焼する火炉161と、この火炉161を加熱する空気予熱器162(熱交換ユニット)と、火炉161に空気を供給する通風機163と、を備える。
石炭灰処理部18は、微粉炭燃焼部16から排出された排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置181と、微粉炭燃焼部16から排出された排ガス中の煤塵を除去する集塵装置182と、この集塵装置182により捕集された石炭灰を一時貯蔵する石炭灰回収サイロ183と、を備える。
石炭灰分析部20は、集塵装置182から供給された石炭灰からの有害微量元素の溶出濃度を分析する石炭灰分析装置201を備える。
溶出抑制剤添加部22は、有害微量元素の溶出抑制剤を添加する溶出抑制剤添加装置221を備える。
本発明の有害微量元素溶出抑制方法は、石炭を燃焼させる燃焼ボイラと、前記石炭を前記燃焼ボイラに供給する石炭供給部と、を備えた石炭火力発電システムにおいて、前記石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、前記石炭供給部から前記燃焼ボイラまでの間の系内に、石灰石、消灰石、及び生石灰からなる群より選択される1種以上を含む溶出抑制剤を添加する溶出抑制剤添加ステップと、前記石炭の燃焼残渣を分析し、該燃焼残渣からの有害微量元素の溶出濃度を測定する燃焼残渣分析ステップと、を有し、前記溶出抑制剤添加ステップでは、前記燃焼残渣分析ステップにおける分析結果に応じて、前記溶出抑制剤の添加量を決定するものであるが、これを、上述の微粉炭燃焼施設1を用いて説明する。
まず、石炭供給工程では、石炭バンカ121に貯蔵された石炭が、給炭機122により、石炭微粉炭機141に供給される。なお、この石炭微粉炭機141に供給される石炭は、具体的には瀝青炭、亜瀝青炭、又は褐炭等であるが、これらの石炭に限定されるものではなく微粉炭燃焼が行える石炭であればよい。
次に、微粉炭生成工程では、給炭機122から供給された石炭が石炭微粉炭機141により粉砕され、これにより、微粉炭が生成される。生成された微粉炭は、火炉161に供給される。このとき、この微粉炭生成工程で粉状に形成された微粉炭の平均の粒度は、微粉炭燃焼で一般的に用いられる粒径範囲であればよく、一般的には、74μmアンダー80wt%以上の粉砕度である。なお、この範囲は溶出抑制剤が添加された場合にも適用できる。
次に、微粉炭燃焼工程では、石炭微粉炭機141で生成された微粉炭が、火炉161により燃焼される。図2に示すように、バーナーゾーン161a’においては微粉炭が燃焼されるが、このときの温度は1300℃から1500℃に達し、燃焼によって生成される石炭灰は、矢印の方向に沿って上昇して排ガスと共に火炉上部分割壁161b(熱交換ユニット)、横置き1次過熱器161c(熱交換ユニット)を通過し、1次節炭器161d(熱交換ユニット)、2次節炭器161e(熱交換ユニット)を順次通過する。
次に、石炭灰処理工程では、微粉炭の燃焼によって発生した排ガスが脱硝装置181に送られて脱硝され、さらに、集塵装置182によって排ガス中の石炭灰が集塵される。この集塵装置182により捕集された石炭灰のうち、一部は石炭灰分析部20に供給され、残りは石炭灰回収サイロ183に搬送される。また、石炭灰が除去された排ガスは、図示しない脱硫装置を介した後に煙突から排出される。
次に、石炭灰分析工程では、集塵装置182から供給された石炭灰からのホウ素、フッ素、セレン、ヒ素などの有害微量元素の溶出濃度が分析され、分析結果が溶出抑制剤添加部22に対してフィードバックされる。
溶出抑制剤添加工程S60は、図1に示すように、好ましくは上述の石炭供給工程S10、微粉炭生成工程S20、微粉炭燃焼工程S30のいずれかに対して行われる。
<試験例1:小規模試験>
<実施例1>
中国産の瀝青炭(以下、石炭A)100重量部に、石灰石を3重量部混合した。この混合物をインペラーミルにより粉砕し、74μmアンダー80wt%、40μmアンダー50wt%、20μmアンダー25wt%となる粉体を得た。この粉体(石灰石含有微粉炭)を、微粉炭燃焼炉に供給し燃焼させた。微粉炭燃焼炉には、内径30cm、炉長2.5mの自燃式の縦型炉を使用し、粉体の投入量は、5〜6kg/hとした。このときの炉内温度は、1300℃に達した。燃焼後、排出された石炭灰を、燃焼炉後段のバグフィルターにて採取した。
実施例1において、石炭Aに石灰石を添加しなかった他は、実施例1と同様にして石炭灰を採取し、評価した。測定結果を表1に示す。
実施例1において、石炭Aに代えてオーストラリア産の瀝青炭(石炭B)を使用した他は、実施例1と同様にして石炭灰を採取し、評価した。測定結果を表1に示す。
実施例2において、石炭Bに石灰石を添加しなかった他は、実施例2と同様にして石炭灰を採取し、評価した。測定結果を表1に示す。
<実施例3>
図1、図2に示すような装置を用い、図1における石炭供給部12の位置で溶出抑制剤(石灰石)を添加した。なお、石灰石は石炭灰中のCa含有率(質量%)が表2の割合となるようにした。また、その後、石炭灰回収サイロ183で回収された石炭灰について、有害微量元素(セレン、ホウ素、及びヒ素)の溶出濃度を、その減少率と共に表2に示す。ここでは、石炭として豪州炭を用いた。また、表2におけるそれぞれの溶出量の数値は、添加後溶出量/未添加溶出量である。ここで、添加後溶出量は本発明の実施例に相当し、未添加溶出量は、本発明の溶出抑制剤を添加していない系であり、比較例に相当するものである。なお、溶出濃度の単位はいずれも[mg/L]であり、減少率の単位は[%]である。
12 石炭供給部
121 石炭バンカ
122 給炭機
14 微粉炭生成部
141 石炭微粉炭機
142 通風機
16 微粉炭燃焼部
161 火炉
162 空気予熱器
163 通風機
18 石炭灰処理部
181 脱硝装置
182 集塵装置
183 石炭灰回収サイロ
20 石炭灰分析部
201 石炭灰分析装置
22 溶出抑制剤添加部
221 溶出抑制剤添加装置
S10 石炭供給工程
S20 微粉炭生成工程
S30 微粉炭燃焼工程
S40 石炭灰処理工程
S50 石炭灰分析工程
S60 溶出抑制剤添加工程
Claims (8)
- 石炭を燃焼させるバーナーゾーン、及び当該バーナーゾーンの下流に設けられ、前記バーナーゾーンで発生した燃焼ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱する熱交換ユニットを有する燃焼ボイラと、前記石炭を前記バーナーゾーンに供給する石炭供給部と、を備えた石炭火力発電システムにおいて、前記石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、
前記石炭供給部から前記熱交換ユニットまでの間の系内に、石灰石、消灰石、及び生石灰からなる群より選択される1種以上を含む溶出抑制剤を添加する溶出抑制剤添加ステップと、
前記石炭の燃焼残渣を分析し、該燃焼残渣からの有害微量元素の溶出濃度を測定する燃焼残渣分析ステップと、を有し、
前記溶出抑制剤添加ステップでは、前記燃焼残渣分析ステップにおける分析の結果、前記石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出濃度が所定の範囲を上回る場合には前記溶出抑制剤の添加量を増加させ、前記石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出濃度が前記所定の範囲を下回る場合には前記溶出抑制剤の添加量を減少させることを特徴とする有害微量元素溶出抑制方法。 - 前記溶出抑制剤添加ステップでは、前記溶出抑制剤を、前記バーナーゾーン内に添加する請求項1記載の有害微量元素溶出抑制方法。
- 前記溶出抑制剤添加ステップでは、前記溶出抑制剤を、前記バーナーゾーンよりも上流で添加する請求項1記載の有害微量元素溶出抑制方法。
- 石炭を燃焼させるバーナーゾーン、及び当該バーナーゾーンの下流に設けられ、前記バーナーゾーンで発生した燃焼ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱する熱交換ユニットを有する燃焼ボイラと、前記石炭を前記バーナーゾーンに供給する石炭供給部と、を備えた石炭火力発電システムにおいて、前記石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を抑制する有害微量元素溶出抑制方法であって、
前記石炭供給部から前記熱交換ユニットまでの間の系内に、石灰石、消灰石、及び生石灰からなる群より選択される1種以上を含む溶出抑制剤を添加する溶出抑制剤添加ステップと、
前記石炭の燃焼残渣を分析し、該燃焼残渣からの有害微量元素の溶出濃度を測定する燃焼残渣分析ステップと、を有し、
前記溶出抑制剤添加ステップでは、前記燃焼残渣分析ステップにおける分析結果に応じて、前記溶出抑制剤の添加量を決定し、前記溶出抑制剤を、前記熱交換ユニット付近で添加する、ことを特徴とする有害微量元素溶出抑制方法。 - 前記溶出抑制剤添加ステップでは、前記燃焼残渣分析ステップにおける分析の結果、前記石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出濃度が所定の範囲を上回る場合には前記溶出抑制剤の添加量を増加させ、前記石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出濃度が前記所定の範囲を下回る場合には前記溶出抑制剤の添加量を減少させる請求項4記載の有害微量元素溶出抑制方法。
- 前記溶出抑制剤添加ステップでは、前記石炭100重量部に対して、前記溶出抑制剤を0.3重量部以上10重量部以下の範囲で添加する請求項1乃至5のいずれか1項記載の有害微量元素溶出抑制方法。
- 石炭を燃焼させるバーナーゾーン、及び当該バーナーゾーンの下流に設けられ、前記バーナーゾーンで発生した燃焼ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱する熱交換ユニットを有する燃焼ボイラと、前記石炭を前記バーナーゾーンに供給する石炭供給部と、を備えた石炭火力発電システムにおいて、
前記石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出を抑制するため、前記石炭供給部から前記熱交換ユニットまでの間の系内に、石灰石、消灰石、及び生石灰からなる群より選択される1種以上を含む溶出抑制剤を添加する溶出抑制剤添加部と、
前記石炭の燃焼残渣を分析し、該燃焼残渣からの有害微量元素の溶出濃度を測定する燃焼残渣分析部と、を備え、
前記溶出抑制剤添加部は、前記燃焼残渣分析部による分析の結果、前記石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出濃度が所定の範囲を上回る場合には前記溶出抑制剤の添加量を増加させ、前記石炭の燃焼残渣からの有害微量元素の溶出濃度が前記所定の範囲を下回る場合には前記溶出抑制剤の添加量を減少させる、
ことを特徴とする石炭火力発電システム。 - 前記溶出抑制剤添加部は、前記石炭100重量部に対して、前記溶出抑制剤を0.3重量部以上10重量部以下の範囲で添加する請求項7記載の石炭火力発電システム。
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