JP4792704B2 - イオン伝導体の製造方法 - Google Patents
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Description
前記複合体に電解液を含浸させて、複合体に電解液を保持させる含浸工程とを有することを特徴とする。
<イオン伝導体>
本発明の製造方法で得られるイオン伝導体は、有機ポリマーと無機化合物との複合体に、電解液が保持されイオン伝導度が10-3S/cm以上であるものである。
本発明における有機ポリマーと無機化合物との複合体とは、有機ポリマー中にサブミクロンメートルからナノメートルオーダー(すなわち平均粒径が1μm以下)の無機化合物が微粒子状ないし3次元ネットワークないしは2次元ネットワーク状に微分散した有機/無機ナノコンポジット構造を有するものである。従来技術の中にはイオン伝導体の膜強度や耐圧特性等を改良することを目的として、真性ポリマー電解質やポリマーゲル電解質にシリカやアルミナの無機微粒子を添加することを記載した従来技術(例えば特許文献2や特許文献3)も見られるが、本発明で用いる複合体は、単に有機ポリマーと無機化合物とを混ぜ合わせた混合物とは本質的に異なるものである。また、いわゆるゾル−ゲル法によって得られる、有機材料と無機化合物ゲルとの複合体とも本質的に異なるものである。
ポリアミドは、例えば、後述のジカルボン酸ハロゲン化物とジアミンとの重縮合によって得られるものであり、その構造は、重縮合に用いるこれらモノマーの種類によって決まる。
ポリウレタンは、例えば、後述のジクロロホーメート化合物とジアミンとの重縮合によって得られるものであり、その構造は、重縮合に用いるこれらモノマーの種類によって決まる。
ポリ尿素は、例えば、後述のホスゲン系化合物とジアミンとの重縮合によって得られるものであり、その構造は、重縮合に用いるこれらモノマーの種類によって決まる。
金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化テルルなどが挙げられる。保持することができる電解液の量およびイオン伝導度の大きさの観点から、無機化合物としては、シリカまたは酸化アルミニウムが好ましい。
無機化合物は、後述の複合体の合成方法によれば、その平均粒径が1μm以下の微粒子状にすることが可能である。また、複合体中の電解質保持特性および粒子が脱落しにくいという観点から、無機化合物の平均粒径は、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。無機化合物の含有率は、後述の複合体の合成方法によれば、無機化合物の含有率を、20〜80質量%の高含有率とすることが可能である。また、複合体のイオン伝導体の機能としての電解質保持特性と、セパレーターとしての加工性や、耐屈曲性、耐熱性等の膜特性とのバランスの観点から、無機化合物の含有率は、複合体中30〜70質量%であることが好ましい。通常、エクストリューダー等の混合装置を用いて有機ポリマーに無機化合物を複合化させようとした場合、無機化合物を1μm以下の微分散状態で、かつ20質量%以上の高含有質で均一に分散させることは、無機化合物特有の自己凝集性に起因して極めて困難である。
また、前記複合体の形状は、繊維径が20μm以下でアスペクト比が10以上のパルプ(屈曲微小繊維)形状であることが好ましい。
本発明における電解液は、支持電解質とこれを溶解させる溶媒とから構成される。
溶媒としては水系、非水系のどちらでもよく、水のほかに、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、2−エトキシエタノール、2−メトキシメタノール、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ブチロニトリル、グルタロニトリル、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の極性有機溶媒を例示することができる。なお、水系の場合には、0℃以下での凝固を防止し、低温条件下であってもイオン伝導体を用いることができるようにするために、上記非水系溶媒のうち、水と相溶する溶媒を相溶させて用いることができる。
支持電解質の濃度は、本発明の製造方法で得られるイオン伝導体の用途、要求性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定はされない。
本発明のイオン伝導体の製造方法は、例えば、ジカルボン酸ハロゲン化物、ジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物からなる群から選ばれる1種の化合物(以下、モノマーとも記す)を有機溶媒に溶解した有機溶液(A)と、珪酸アルカリ、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、アルカリ金属含有無機化合物とも記す)およびジアミンを水に溶解した水溶液(B)とを接触させて、有機ポリマーと無機化合物との複合体を得る複合体合成工程と、前記複合体に電解液を含浸させて、複合体に電解液を保持させる含浸工程とを有する方法である。
複合体合成工程においては、例えば、常温、常圧下で10秒〜数分程度の攪拌操作により、有機溶液(A)中のモノマーと水溶液(B)中のジアミンとが迅速に重縮合し、有機ポリマーが収率よく得られる。この際、珪酸アルカリなどのアルカリ金属含有無機化合物中のアルカリ金属が、モノマーとジアミンとの重縮合の際に発生するハロゲン化水素の除去剤として作用することで有機ポリマーの生成を促進する。本反応と同時に、アルカリ金属含有無機化合物は、そのアルカリ金属成分が除去され、珪酸アルカリを用いた場合はシリカ(ガラス)へ、他の金属化合物を用いた場合はアルカリ金属以外の金属元素を有する無機化合物へと転化することで有機溶液や水に不溶化し、固体として析出する。さらにこの際、モノマーとジアミンとの重縮合による有機ポリマーの生成と、無機化合物の析出とは、どちらか一方のみが生じることはなく平行して起こるため、サブミクロンメートルからナノメートルオーダーの微粒子状ないし3次元ネットワークないしは2次元ネットワーク状の無機化合物が有機ポリマーに微分散した複合体が得られる。
本発明においては、有機溶液(A)中のモノマーを選択することにより、複合体のマトリクスである有機ポリマーの種類を変えることができる。モノマーとしてジカルボン酸ハロゲン化物を用いた場合はポリアミドを、ジクロロホーメート化合物を用いた場合はポリウレタンを、ホスゲン系化合物を用いた場合にはポリ尿素を、水溶液(B)中のジアミンとの反応によって得ることができる。
いずれの有機溶媒を用いた場合でも、得られる複合体は、粉体またはパルプ状であり、バルク形状に比べて外表面積が大きいため、粉砕等の処理を行うことなしに電解液を容易、速やかに、かつ大量に保持させることができる。
これらのアルカリ金属含有金属化合物は、水等の極性溶媒に溶解させて用いるため、水和物であってもよい。また、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、前述の珪酸アルカリと同時に用いてもよい。
本発明の製造方法で得られるイオン伝導体を電池の電解質や電気二重層キャパシタのセパレーターに用いる場合、イオン伝導体は電子絶縁性を有する必要があることから、複合体の有機ポリマーおよび無機化合物に電子伝導性を有する材料を用いないことが好ましい。
無機化合物の原料として、電子伝導性を有する酸化スズを与えうるスズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム等のスズ酸アルカリや炭酸スズカリウムを用い、かつ無機化合物を60質量%の高い割合にする場合には使用に注意を要するが、これ以外の無機化合物の原料は問題なく用いることができる。また、有機ポリマーがポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素のいずれの場合でも電子伝導性を有しないため、特に問題なく用いることができる。
こうして得られた複合体に電解液を含浸、保持させることで本発明におけるイオン伝導体を得ることができる。上記複合体合成工程で得られる複合体は、およそ4〜7倍質量の水を主体とする極性溶媒を保持したウエットケーキの状態で得られるが、ウエットケーキ状態の複合体に電解液を含浸させ、極性溶媒を電解液に置換してもよいし、ウエットケーキ状態の複合体を一旦乾燥させ、乾燥状態の複合体に電解液を含浸させてもよい。ただし、ウエットケーキ状態の複合体を乾燥させると、有機ポリマーの極性基に由来する水素結合により、複合体が強固に固化し、複合体が電解液を吸収しにくくなって、電解液の保持量をあまり多くすることができなくなるので、ウエットケーキ状態の複合体に電解液を含浸させ、極性溶媒を電解液に置換する方法が好ましい。
複合体が繊維形状の場合は抄紙性を、粉体の場合は塗工性を有しており、複合体自身が加工性を有し、ハンドリングしやすい特徴を持っている。特に複合体が繊維形状の場合は、複合体に電解液を分散させた液を濾過することにより、引っ張り強度や、可とう性や、屈曲に対する追随性が高いウエットケーキシートを得ることができる。そのため、他の材料との複合化や混合の必要がなく、本複合体のみからなるイオン伝導体を用いてもセパレーターとしての役割を兼備させることができる。
複合体に電解液を含浸、保持させたウエットケーキを、さらに所望の形状に成形することを目的に、ウエットケーキに結合材や各種樹脂等の結着材を、必要とされる電解液保持性、電子絶縁性等を損なわない範囲で含有させてもよい。
本発明の製造方法で得られるイオン伝導体は、5〜20倍質量の多量の電解液を保持できるので、支持電解質を溶解させた電解液とほとんど同等なイオン伝導性を有することが可能である一方、電子的には絶縁性を保っている。
本発明の製造方法で得られるイオン伝導体における電解液保持特性は、複合体の有機ポリマーおよび無機化合物の各成分が持つ化学的特性及び形状的な因子により発現している。
複合体の無機化合物は、シリカ、金属酸化物であり、これらは極性溶媒との親和性が極めて高い。また、無機化合物の含有率は20〜80質量%と高く、さらに無機化合物の大きさはサブミクロンメートルからナノメートルオーダー(すなわち平均粒径が1μm以下)と極めて小さい。
複合体の有機成分であるポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素はそれらが高い頻度で有するアミド結合、ウレタン結合、尿素結合の高極性に由来して、ポリオレフィン等にくらべ、高い極性溶媒への親和性を持つ。そのため、有機ポリマー成分も電解液保持性に寄与している(有機ポリマーによる、化学吸着的電解液の保持機構)。ただし、本機構のみでは自重100質量部に対して500質量部以上の電解液保持能力がないため、無機化合物を有しない有機ポリマー成分のみの材料を用いては、十分なイオン伝導度を持ちかつ電解液が漏洩しないイオン伝導体を作製することはできない。また、有機ポリマーがマトリクス(基材)となっていることにより、本来高極性に起因して自己凝集性が高い無機化合物を微分散状態にし、かつハンドリング可能な形状を与えている。
また、有機ポリマーと無機化合物との複合体は、無機化合物が有する、有機ポリマーへの補強効果に起因して耐熱性が高く(例えば、有機ポリマーとしてポリアミドを、無機化合物としてシリカとから構成されシリカの含有率が60質量%である複合体は300℃以上まで物性変化を生じない)、これに極性溶媒を保持させた本発明の製造方法で得られるイオン伝導体もまた耐熱性に優れる。一方、ゾルゲル法により作製した有機無機複合体ゲルは、一般に100℃以上の高温下ではゲルの脱水反応に伴う硬化等の物性変化が生じることによりゲル状態を安定的に維持できない。
本発明の製造方法で得られるイオン伝導体を使用した電気化学デバイスの一例として、各種電池を例示することができる。電池は、正極、負極、および本発明の製造方法で得られるイオン伝導体からなる電解質を備えたものである。
以下、リチウムイオン二次電池を例に、本発明の電池を説明する。
図1は、本発明の電池の一例を示す断面図である。この電池1は、負極端子(図示略)が接続された正極集電体2と、これに接触する正極3と、負極端子(図示略)が接続された負極集電体4と、これに接触する負極5と、正極3と負極5との間に挟まれた電解質6と、これらを収納する外装材7とから概略構成されるものである。
負極5の負極活物質としては、従来公知のものが用いられ、例えば、リチウムイオンを貯蔵できる炭素材料、リチウム金属、リチウム合金、導電性高分子等が用いられる。
電解質6は、本発明の製造方法で得られるイオン伝導体からなるものである。リチウムイオン二次電池の場合、イオン伝導体に保持させる電解液の支持電解質としては、過塩素酸リチウム等のリチウムイオンを含むものが用いられ、溶媒としては、プロピレンカーボネート等の非水系溶剤が用いられる。
外装材7としては、従来公知のものが用いられ、例えば、金属ケース、樹脂ケース、樹脂フィルムなどが用いられる。
本発明の製造方法で得られるイオン伝導体を使用した電気化学デバイスの他の例として、電気二重層キャパシタを例示することができる。電気二重層キャパシタは、本発明の製造方法で得られるイオン伝導体からなるセパレーターと、セパレーターを介して対向配置された分極性電極とを備えたものである。
図2は、前記電気二重層キャパシタの一例を示す断面図である。この電気二重層キャパシタ10は、セパレーター11と、このセパレーター11を介して対向配置された一対の分極性電極12と、セパレーター11と分極性電極12を側面から保持するガスケット13と、分極性電極12に接する一対の集電体14とから概略構成されるものである。
集電体14としては、従来公知のものが用いられ、例えば、カーボン粉末等により導電性を付与された導電性樹脂などが用いられる。
ガスケット13としては、従来公知のものが用いられ、例えば、樹脂材料のものが用いられる。
イオン交換水81.1部に1,6−ジアミノヘキサン1.58部、水ガラス3号9.18部を加え、25℃で15分間攪拌し、均質透明な水溶液(B)を得た。室温下でこの水溶液(B)をオスタライザー社製ブレンダー瓶中に仕込み、毎分10000回転で攪拌しながら、アジポイルクロライド2.49部をトルエン44.4部に溶解させた有機溶液(A)を20秒かけて滴下した。生成したゲル状物をスパチュラで砕き、さらに毎分10000回転で40秒間攪拌した。この操作で得られたパルプ状の生成物が分散した液を、直径90mmのヌッチェを用い目開き4μmのろ紙上で減圧濾過した。ヌッチェ上の生成物をメタノール100部に分散させスターラーで30分間攪拌し減圧濾過することで洗浄処理を行った。引き続き同様な洗浄操作を蒸留水100部を用いて行い減圧濾過することで、純白色のシリカ/ポリアミド複合体のウエットケーキ(ウエットケーキ(1))を得た。
水溶液(B)としてイオン交換水81.1部に1,6−ジアミノヘキサン1.58部、アルミン酸ナトリウム(Na2O/Al2O3 モル比=1.13)2.26部を入れ、室温で15分間攪拌して得られた均質透明な水溶液(B)を用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、純白色の酸化アルミニウム/ポリアミド複合体のウエットケーキ(ウエットケーキ(2))を得た。
水溶液(B)としてイオン交換水38.5部に1,6−ジアミノヘキサン1.58部と炭酸ジルコニウムカリウム(K2[Zr(OH)2(CO3)2])3.79部を入れ、攪拌して得られた均質な水溶液(B)を用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、純白色の酸化ジルコニウム/ポリアミド複合体のウエットケーキ(ウエットケーキ(3))を得た。
水溶液(B)として、水ガラス3号の代わりに水酸化ナトリウム1.18部を加えたものを用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、無機化合物を一切含まない淡黄色のポリアミドのウエットケーキ(ウエットケーキ(4))を得た。
有機系極性溶媒を用いた二次電池用電解液として、溶媒であるプロピレンカーボネート11.9部に、支持電解質である過塩素酸リチウム1.06部を溶解して均一透明溶液を得た。
また、有機系極性溶媒を用いた電気二重層キャパシタ用電解液として、溶媒であるプロピレンカーボネート11.9部に、支持電解質であるホウフッ化テトラブチルアンモニウム3.29部を溶解して均一透明溶液を得た。
また、水系の電池用および電気二重層キャパシタ用電解液として、超純水10.0部に、濃硫酸0.98部を添加して均一透明溶液を得た。
以上いずれの電解液とも、各支持電解質の液体中の濃度が1mol/Lに相当する。これらの電解液を用いて電解液のみを用いた際のイオン伝導度を測定した。
上記操作で得られた複合体および無機化合物を含まないポリアミドについて、以下の項目の測定、あるいは試験を行い、得られた結果を表1に示した。
各材料に含まれる無機化合物の含有率の測定法は以下の通りである。
各材料を絶乾後に精秤(複合体質量)し、これを空気中、600℃で3時間焼成し、有機ポリマー成分を完全に焼失させ、焼成後の質量を測定し灰分質量(=無機化合物質量)とした。下式により無機化合物含有率を算出した。
無機化合物含有率(質量%)=(灰分質量/複合体質量)×100
各材料を蒸留水に0.2g/dLの濃度に分散させた分散液200gを、直径55mmのヌッチェを用い目開き4μmのろ紙上で減圧濾過した。得られたケーキを170℃、5MPa/cm2 の条件で2分間熱プレスし、不織布を作製した。得られた不織布は柔軟性に富むものであり、無機化合物を含有するものでも、折り曲げても粒子の脱落は一切なかった。
複合体を170℃、20MPa/cm2 の条件で2時間熱プレスを行い、厚さ約1mmの複合体からなる薄片を得た。これをマイクロトームを用いて厚さ75nmの超薄切片とした。得られた切片を日本電子社製透過型電子顕微鏡「JEM−200CX」にて100000倍の倍率で観察した。無機化合物は暗色の像として、明るい有機ポリマーに微分散しているのが観察された。図3は、シリカ/ポリアミド複合体の透過型電子顕微鏡写真であり、図4は、酸化アルミニウム/ポリアミド複合体の透過型電子顕微鏡写真であり、図5は、酸化ジルコニウム/ポリアミド複合体の透過型電子顕微鏡写真である。
(4−1)有機系極性溶媒を用いた電解液を含浸させたイオン伝導体の作製:
(溶媒:プロピレンカーボネート、支持電解質:過塩素酸リチウム)
得られたウエットケーキ(1)〜(4)約10gをそれぞれ、100gの超純水中で分散し、減圧濾過をする工程を3回繰り返すことにより洗浄処理を行い、超純水を有するウエットケーキを約10g得た。該ウエットケーキにプロピレンカーボネート100gを加え、攪拌しつつ、120℃で減圧処理を2時間行い、ウエットケーキ中の水のみを除去した。得られたパルプが分散したプロピレンカーボネートを、5分間、0.02MPaで減圧濾過することで、プロピレンカーボネートのみを液体成分として有するウエットケーキ(1a)〜(4a)をそれぞれ約10g得た。
該ウエットケーキを質量測定後(湿潤質量)、280℃で2時間減圧乾燥させてプロピレンカーボネートを除き、質量を測定した(乾燥質量)。これらの数値より、ウエットケーキ(1a)〜(4a)のプロピレンカーボネート保有量が得られる。また、固形分率を下式により算出した。
固形分率(質量%)=(乾燥質量/湿潤質量)×100
(溶媒:プロピレンカーボネート、支持電解質:ホウフッ化テトラブチルアンモニウム)
支持電解質がホウフッ化テトラブチルアンモニウムであること以外は(4−1)と同様な方法で、1mol/Lの支持電解質を含有した有機溶媒系電解液を含浸させたウエットケーキシートを得た。この電解液を含有したウエットケーキシートもまた、電解液保持特性に優れ電解液の漏洩が無く、均一で、かつ強度に富むものであった。
(溶媒:超純水、支持電解質:硫酸)
(4−1)と同様な超純水での洗浄処理を行った後、得られたウエットケーキを150℃で2時間乾燥させ、(4−1)と同様の方法で、ウエットケーキの超純水の保持量および固形分率を算出した。
得られた超純粋保有量とさらに加える超純水とを合わせた量を全超純水量として計算して、硫酸の液体中の濃度が1mol/Lになるように加えた。これ以外は(4−1)と同様な方法で、1mol/Lの硫酸を含有した水系電解液を含浸させた、電解液保持特性に優れ電解液の漏洩が無く、均一で、かつ強度に優れたウエットケーキシートを得た。今回用いたいずれの有機無機複合体とも、耐酸性に優れるため本工程中に複合体の劣化等は一切生じなかった。
しかしながら、0.02MPaで減圧濾過を30秒分間のみ行い、固形分100質量部に対する超純水ベースの電解液含有量を1000質量部以上にしたウエットケーキシートでは、ウエットケーキシート(1b)〜(3b)では電解液の漏洩は見られなかったものの、無機成分を含まないウエットケーキシート(4b)では、シートを構成するパルプ間より電解液漏洩が見られた。
(4−1)および(4−2)と同一の操作を行い、それぞれの得られたウエットケーキシート(ウエットケーキシート(1b)および(2b))の質量測定後(ケーキ質量)、ケーキ質量の15倍のプロピレンカーボネートを加え、常温下30分間の分散洗浄、減圧濾過を3回繰り返すことで、支持電解質を除去し、プロピレンカーボネートのみに置換したプロピレンカーボネートのみを有するウエットケーキを得た。このウエットケーキを280℃で2時間減圧乾燥させ、質量を測定した(乾燥質量)。これらの数値より、複合体(またはポリアミド)100質量部に対する電解液の保持量(電解液保持量)を下式により算出した。
電解液保持量(質量部)={(ケーキ質量−乾燥質量)/乾燥質量}×100
各イオン伝導体の25℃におけるイオン伝導度を、東陽テクニカ製インピーダンスアナライザー1260型、液体測定用サンプルホルダー用いて交流インピーダンス法により測定した。また、各種液体電解液のイオン伝導度も同様に測定を行った。
合成例1で得られたシリカ/ポリアミド複合体であるウエットケーキ(1)を用いて、(4−1)、(4−2)および(4−3)に記載の方法で各種電解液を保持させたウエットケーキシートを得た。得られたウエットケーキシートのイオン伝導度を上記の方法で測定した。また、各ウエットケーキシートに保持される電解液含有量を、複合体100質量部に対する電解液含有量として測定した。
合成例2で得られた酸化アルミニウム/ポリアミド複合体であるウエットケーキ(2)を用いて、(4−1)、(4−2)および(4−3)に記載の方法で各種電解液を保持させたウエットケーキシートを得た。得られたウエットケーキシートのイオン伝導度を上記の方法で測定した。また、各ウエットケーキシートに保持される電解液含有量を、複合体100質量部に対する電解液含有量として測定した。
合成例3で得られた酸化ジルコニウム/ポリアミド複合体であるウエットケーキ(3)を用いて、(4−1)、(4−2)および(4−3)に記載の方法で各種電解液を保持させたウエットケーキシートを得た。得られたウエットケーキシートのイオン伝導度を上記の方法で測定した。また、各ウエットケーキシートに保持される電解液含有量を、複合体100質量部に対する電解液含有量として測定した。
合成例4で得られた無機化合物を有しないポリアミドであるウエットケーキ(4)を用いて、(4−1)、(4−2)および(4−3)に記載の方法で各種電解液を保持させたウエットケーキシートを得た。得られたウエットケーキシートのイオン伝導度を上記の方法で測定した。また、各ウエットケーキシートに保持される電解液含有量を、複合体100質量部に対する電解液含有量として測定した。
均一系のポリマーゲル電解質に相当する比較例として特開平11−149825号公報中の実施例2の方法に従って、以下の方法でゲル電解質を作製した。ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、4フッ化エチレンが各々60:15:25のモル%よりなるポリマーに、該ポリマーの25質量%のシリカ充填材を混合した材料を2−ブタノンに溶解して、200μm厚のフィルムをアプリケーターによる塗工法によって得た。得られたフィルムを、プロピレンカーボネートに1mol/LのLiPF4 (支持電解質)が溶解した電解液中に室温下で2時間浸漬させることにより、ゴム状共重合体100質量部に対して電解液を80質量部含有するゲル電解質フィルムが得られた。得られたフィルムのイオン伝導度を(6)の方法に従って測定したところ、6.5×10-4S/cmであった。電解液含有量を高めることを目的として浸漬時間を6時間に延長したが、電解液含有量およびイオン伝導度に大きな変化はなかった。
構造系のポリマーゲル電解質に相当する比較例として、特表平8−509100号公報中の実施例1の方法に準じて、以下の方法でゲル電解質を作製した。テトラヒドロフラン(THF)溶液9部にポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体1.5部溶解したポリマー溶液に、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの質量比1:1の混合溶液に1mol/LのLiPF4 (支持電解質)が溶解した電解液1.5gを導入した。これを60℃で加温しつつ30分間攪拌し、ポリマー溶液に電解液を溶解させつつTHFを除去することで、THFが除去されたことによる微小な空隙に電解液を有するゲル電解質を得た。該電解質の100μm厚のフィルムをアプリケーターによる塗工法によって得た。得られたフィルムのイオン伝導度を(6)の方法に従って測定したところ、3.7×10-4S/cmであった。また、本比較例のポリマー100部に対する電解液含有量は100部に相当した。本比較例の電解液の含有量ポリマー溶液に対する、電解液の量を増加させようと試みたところ、電解液の含有量が120部以上では、フィルムより電解液が漏洩して保持することができなかった。
10 電気二重層キャパシタ(電気化学デバイス)
Claims (5)
- ジカルボン酸ハロゲン化物、ジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物からなる群から選ばれる1種の化合物を有機溶媒に溶解した有機溶液(A)と、珪酸アルカリ、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物およびジアミンを水に溶解した水溶液(B)とを接触させて、有機ポリマーと無機化合物との複合体を得る複合体合成工程と、
前記複合体に電解液を含浸させて、複合体に電解液を保持させる含浸工程とを有することを特徴とするイオン伝導体の製造方法。 - 前記無機化合物の平均粒子径が1μm以下であり、前記複合体(100質量%)中の無機化合物の含有率が20〜80質量%である請求項1記載のイオン伝導体の製造方法。
- 前記電解液の保持量が複合体質量に対し5〜20倍質量である請求項1または2に記載のイオン伝導体の製造方法。
- 前記複合体が、繊維径が20μm以下でアスペクト比が10以上のパルプ形状を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオン伝導体の製造方法。
- 前記複合体合成工程で得た複合体が水を保持したウエットケーキ状態であり、前記ウエットケーキ状態の複合体に電解液を含浸させ、水を電解液に置換させる請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオン伝導体の製造方法。
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