固体撮像装置の1つとして、画素セル(単位セル)に増幅用MOSトランジスタを有する増幅型固体撮像装置が提案されている。増幅型固体撮像装置は、各画素セルにフォトダイオードと転送トランジスタと増幅用MOSトランジスタとを備える。フォトダイオードで生成された信号電荷は、転送トランジスタによって増幅用トランジスタに転送され、増幅トランジスタにおいて、信号電荷の電荷量に応じて増幅された所定の電位の画像信号を生成する。これにより、撮像を高感度で行える。
ここで、増幅型固体撮像装置を一例として、従来の固体撮像装置について、図面を参照しながら説明する。図7は、従来の固体撮像装置の等価回路を表す概念的な回路図である。図7に示された固体撮像装置は、画像信号を生成するM×N個の画素セル10をM行N列のマトリックス状に配列させた画素部1と、画素部1からの画像信号の読み出しを行単位で制御する垂直選択回路部2と、垂直選択回路部2で選択された同一行内の各画素セル10からの画像信号を保持する行信号保持回路部3と、行信号保持回路部3に保持された複数の画像信号の読み出しを制御する水平選択回路部4と、負荷トランジスタ群5を備える。
画素セル10は、光電変換によって信号電荷を生成し、かつ生成された信号電荷を蓄積するフォトダイオード11と、フォトダイオード11に蓄積された信号電荷の転送を制御する転送トランジスタ12と、転送トランジスタ12によって転送された信号電荷を増幅して画像信号を生成する増幅トランジスタ13と、画素セル10の外部への画像信号の読み出しを制御する選択トランジスタ14と、転送トランジスタ12のドレイン及び増幅トランジスタ13のゲートの電位をリセットするリセットトランジスタ15とを備える。
転送トランジスタ12のゲートは、転送信号線21を介して垂直選択回路部2に接続されている。転送トランジスタ12は、垂直選択回路部2からの転送制御信号に応じて、フォトダイオード11で生成された信号電荷を増幅トランジスタ13のゲートに転送する。
増幅トランジスタ13のゲートは、転送トランジスタ12のドレインに接続されている。増幅トランジスタ13のソースは、選択トランジスタ14のドレインに接続されている。また、増幅トランジスタ13のドレインは、ドレイン線22を介して画素電源(図示せず)に接続されている。増幅トランジスタ13は、増幅トランジスタ13のゲートに入力される転送トランジスタ12からの信号電荷に応じて、所定の電位の画像信号を生成し、生成された画像信号を選択トランジスタ14に送出する。なお、増幅トランジスタ13がソースフォロア回路として用いられているために、選択トランジスタ14のドレインに送出される画像信号は、増幅トランジスタ13のゲートの電位(信号電荷の電荷量)に応じて異なる増幅率で増幅されている。
選択トランジスタ14のゲートは、行選択信号線24を介して、垂直選択回路部2に接続されている。選択トランジスタ14のソースは、垂直信号線23を介して、負荷トランジスタ群5と行信号保持回路部3とに接続されている。また、選択トランジスタ14のドレインは、増幅トランジスタ13のソースに接続されている。選択トランジスタ14は、垂直選択回路部2からの行選択信号に応じて、画像信号を垂直信号線23に送出する。
リセットトランジスタ15のゲートは、リセット信号線25を介して垂直選択回路部2に接続されている。リセットトランジスタ15のソースは、転送トランジスタ12のドレイン及び増幅トランジスタ13のゲートの双方に接続されている。また、リセットトランジスタ15のドレインは、ドレイン線22を介して画素電源に接続されている。リセットトランジスタ15は、垂直選択回路部2からのリセット信号に応じて、転送トランジスタ12のドレイン及び増幅トランジスタ13のゲートの電位を所定の初期値にリセットする。
ここで、図7に示された従来の固体撮像装置の駆動方法について説明する。図8は、従来の固体撮像装置の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。なお、図7及び図8を同時に参照しながら説明する。以下においては、第i行目の第j列目に位置する画素セルを「(i,j)画素セル」と略記する。
固体撮像装置の駆動に際して、画素電源はLレベル(OFF状態)から高電位のHレベル(ON状態)にされ、駆動中においては、図8に示されたように常にHレベルを維持する。
全画素セル10において、転送トランジスタ12、増幅トランジスタ13、選択トランジスタ14及びリセットトランジスタ15が全てOFF状態である状況下で、垂直選択回路部2が、第1行目の行選択信号線24のみに、図8に示されたように第1行選択信号S1を送出する。これにより、第1行目の各画素セル10((1,1)画素セル〜(1,n)画素セル)において、第1行選択信号S1がHレベルである期間中は選択トランジスタ14がON状態となり、増幅トランジスタ13と負荷トランジスタ群5とでソースフォロワ回路が構成される。
垂直選択回路部2は、第1行選択信号S1がHレベルである期間内に、第1行目のリセット信号線25のみに、図8に示されたように第1リセット信号S2を送出する。これにより、第1行目の各画素セル10において、第1リセット信号S2がHレベルである期間中はリセットトランジスタ15がON状態となり、転送トランジスタ12のドレイン及び増幅トランジスタ13のゲートの電位が所定の初期値にリセットされる。
第1リセット信号によって初期化を行った後に、垂直選択回路部2は、第1行選択信号S1がHレベルである期間内に、第1行目の転送信号線21に、図8に示されたように第1転送信号S3を送出する。これにより、第1行目の各画素セル10において、第1転送信号S3がHレベルである期間中は転送トランジスタ12がON状態となり、信号電荷が増幅トランジスタ13のゲートに転送される。増幅トランジスタ13のゲートの電位は信号電荷の電荷量に応じた電位となる。このとき、第1行目の各画素セル10において、選択トランジスタ14がON状態であるために、選択トランジスタ14及び垂直信号線23を介して、増幅トランジスタ13のゲートの電位に応じて増幅された画像信号が、行信号保持部3に送出される。第1行目の各画素セルの画像信号は行信号保持部3に保持される。なお、第1行目の各画素セル10において、画像信号が送出された後に、第1行選択信号S1はLレベルにされ、垂直選択トランジスタ14がOFF状態になる。
第1行選択信号S1がLレベルになった後に、水平選択回路部4は、列選択信号線26を介して、図8に示されたように第1列選択信号S10を行信号保持部3に送出する。これにより、行信号保持部3に保持されている第1列目の画素セル((1,1)画素セル)の画像信号が出力信号S13の一部として取り出される。引き続き、第1列目の画素セル10の場合と同様に、水平選択回路部4が、列選択信号(第2列選択信号S11〜第N列選択信号S12)を行信号保持部3に順次に送出することによって、第2列目〜第N列目までの各画素セル((1,2)画素セル〜(1,N)画素セル)の画像信号が出力信号S13の一部として取り出される。以上の過程を経て、出力信号S13において第1行目の各画素セル10に対応する出力(1行目出力)が、固体撮像装置の外部に送出される。
上記の第1行目の場合と同様にして、図8に示されたように、第2行選択信号S4、第2リセット信号S5、第2転送信号S6、第1列選択信号S10〜第N列選択信号S12に応じて、第2行目の全ての画素セル10に対応する画像信号を出力信号S13の一部(2行目出力)として取り出す。以降、同様にして、第3行目から第M−1行目までに含まれる全ての画素セルに対応する画像信号を出力する。最後に、図8に示されたように、第M行選択信号S4、第Mリセット信号S5、第M転送信号S6、第1列選択信号S10〜第N列選択信号S12に応じて、第M行目の全ての画素セル10に対応する画像信号を出力信号S13の一部(M行目出力)として取り出す。これにより、1枚の画像(静止画像)の撮像が完了する。なお、動画の場合には、複数の画像の撮像を連続的に行う。
フォトダイオード11に蓄積された信号電荷の読み出しにおいては、信号電荷の完全転送が行われることが好ましい。「完全転送」とは、フォトダイオード11から全ての信号電荷が転送され、転送後においてフォトダイオード11に残留する信号電荷が0個となることを意味する。画素電源の駆動電圧が10V(ボルト)を越えて大きな場合には、実質的に完全転送を実現できる。しかし、近年、転送トランジスタ12等のMOSトランジスタの微細化が進み、その微細化に伴って駆動電圧が減少してきた。実際、駆動電圧は2.5V程度まで減少しており、このように駆動電圧が小さい場合には完全転送が困難となる。
以下に、駆動電圧が減少するにつれて、完全転送が困難になる理由について説明する。図9は、従来の固体撮像装置の転送トランジスタ近傍の構造例を表す模式的な断面図である。
図9に示されたように、p型半導体基板100上には、ゲート絶縁膜105を介して転送トランジスタ12(図7参照)のゲート(以下、「転送ゲート電極」と称する)106が形成されており、また、ゲート絶縁膜107を介してリセットトランジスタ15(図7参照)のゲート(以下、「リセットゲート電極」と称する)108が形成されている。
p型半導体基板100には、n型不純物を含有する深いフォトダイオード拡散層102と、深いフォトダイオード拡散層102よりも浅く、p型不純物を含有する浅いフォトダイオード拡散層103とが形成されている。深いフォトダイオード拡散層103の導電型はn型であり、浅いフォトダイオード拡散層103の導電型はp型である。ここで、拡散層とは、p型不純物又はn型不純物を含有する領域を意味する。また、拡散層の導電型とは、特定の機能を発現させるための主要部の導電型を意味することとする。なお、厳密には、拡散層において、導電型の異なる他の拡散層とオーバーラップしている部分やそのオーバーラップしている部分の境界近傍では、導電型が異なる場合がある。
p型半導体基板100と深いフォトダイオード拡散層102と浅いフォトダイオード拡散層103とによって、埋め込み型のpnp−フォトダイオード11(図7参照)が構成されている。具体的には、p型半導体基板100と深いフォトダイオード拡散層102との境界近傍においてpn接合界面が形成されている。また、深いフォトダイオード拡散層102と浅いフォトダイオード拡散層103との境界近傍にpn接合界面が形成されている。
浅いフォトダイオード拡散層103の転送ゲート電極106側の端(図9における浅いフォトダイオード拡散層103の右端)は、転送ゲート電極106から離れるように、深いフォトダイオード拡散層102の右端よりも左側に位置している。なお、深いフォトダイオード拡散層102は、pnp−フォトダイオードの一部だけでなく、転送トランジスタのドレインでもある。
p型半導体基板100において転送ゲート電極106下の領域には、転送トランジスタの閾値電圧(チャネル電位)を制御する閾値拡散層404が形成されている。閾値拡散層404の導電型はp型である。なお、図9に示された閾値拡散層404は、閾値電圧と共にパンチスルーを抑制するために、深い領域にまで形成されている。
固体撮像装置の製造工程には、深いフォトダイオード拡散層102や閾値拡散層404等の各拡散層に注入された不純物を活性化させるための熱処理等、半導体基板を加熱する工程が含まれている。これらの加熱工程を経ることによって不純物が拡散し、各拡散層の形成領域は拡大する。
p型半導体基板100において転送ゲート電極106とリセットゲート電極108との間の領域には、浮遊拡散層109が形成されている。浮遊拡散層109の導電型はp型である。浮遊拡散層109は、転送トランジスタのドレイン、リセットトランジスタのソース及びそれらと増幅トランジスタ13(図7参照)のゲートとを接続する配線を構成する。
また、p型半導体基板100においてリセットゲート電極108が形成された領域に隣接する領域には、画素電源(図示せず)の駆動電圧が印加される電源拡散層110が形成されている。電源拡散層110の導電型はp型である。電源拡散層110は、リセットトランジスタのドレイン、増幅トランジスタのドレイン及びそれらと画素電源とを接続する配線を構成する。
電源拡散層110に駆動電圧が印加されており、転送トランジスタがOFF状態である状況下で、リセットゲート電極108に所定の電圧を印加してリセットトランジスタをON状態にすると、浮遊拡散層109が、駆動電圧と実質的に同一の電圧にリセットされる。その後、リセットトランジスタをOFF状態にして浮遊拡散層109を電気的に浮遊した状態にする。その後、転送ゲート電極106に所定の電圧を印加して転送トランジスタをON状態にすると、深いフォトダイオード拡散層102に蓄積されている信号電荷が浮遊拡散層109に転送され、浮遊拡散層109の電位が信号電荷に応じた信号電位となる。その後、転送トランジスタをOFF状態にすることによって、深いフォトダイオード拡散層102から浮遊拡散層109への信号電荷の転送が完了する。
図9における破線矢印は、信号電荷の主転送経路及び信号電荷の転送方向を表している。「主転送経路」とは、信号電荷の転送経路のうち信号電荷が主に経由する経路を意味し、転送の際に信号電荷が通過する範囲内において、半導体基板の垂直方向の電位分布における最も電位の高い部位を、水平方向に沿って連ねた経路を意味する。また、「転送方向」とは、転送ゲート電極106下の近傍において、信号電荷が移動する方向を意味する。
ここで、信号電荷の転送開始直後における信号電荷の主転送経路に沿った電位分布について説明する。図10(A)及び(B)は、従来の固体撮像装置の信号電荷の転送における主転送経路に沿った電位分布の一例を説明するための説明図である。図10(A)は、駆動電圧が高電圧(例えば、10V)である場合を表し、図10(B)は、駆動電圧が低電圧(例えば、2.8V〜3.3V)である場合を表している。なお、以下においては、主転送経路に沿った電位分布を、単に、電位分布と略記する。
図10(A)に示されたように、電位分布は、画素電源の駆動電圧(電源拡散層への印加電圧)を10V以上とした場合には、深いフォトダイオード拡散層102側から閾値拡散層404側に向かって単調に減少する分布を示す。なお、単調に減少するとは、増加する部分がないことを意味し、変化しない部分があってもよいことを意味することとする。
しかし、駆動電圧を5V程度まで減少させた場合には、深いフォトダイオード拡散層102側から閾値拡散層404側に向かって単調に減少する分布を示さなくなる。さらに、駆動電圧を2.8V〜3.3V程度まで減少させた場合には、図10(B)に示されたように、3つの凹凸を有する分布を示すことが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、駆動電圧が2.8V未満であれば、3つの凹凸間の落差が更に大きくなる。電位分布が凹凸を有する分布であれば、信号電荷の転送中においてトラップされ易くなる。なお、図10(B)においては、電位分布の特徴を明確にするために、凹部を角張った井戸状に表し、凸部を角張った壁状に表したが、実際には電位分布は滑らかな曲面で表される。
以上、説明したように、電源電圧が減少するに伴って、トラップされる信号電荷が増加するために、完全転送が困難となる。以下において、電位分布における深部側の凹部を「深部側の電位ポケット」と称し、表面側の凹部を「表面側の電位ポケット」と称し、深部側の電位ポケットと表面側の電位ポケットとの間の凸部を「電位バリア」と称する。
一般的な構造の固体撮像装置では、図9に示されたように、深部側の電位ポケットが形成される部位Aは、深いフォトダイオード拡散層102の内部における閾値拡散層404の境界近傍であって、p型半導体基板100の表面から約0.7μmの深さに位置する。また、表面側の電位ポケットが形成される部位Cは、深いフォトダイオード拡散層102とp型の閾値拡散層404とによって形成されるpn接合界面の近傍であって、p型半導体基板100の表面から約0.2μmの深さに位置する。また、電位バリアが形成される部位Bは、部位Aと部位Cとの間の領域であって、p型半導体基板100の表面から約0.4μmの深さに位置する。
そこで、近年、主転送経路に沿った電位分布を制御することによって、駆動電圧が低くても完全転送を行える固体撮像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、主転送経路に沿った電位分布を制御する方法について説明する。図11は、従来の固体撮像装置における転送トランジスタ近傍の構造の他の一例を表す模式的な断面図である。また、図12は、従来の固体撮像装置の信号電荷の転送における主転送経路に沿った電位分布の他の一例を説明するための説明図である。
図11に示されたように、図9に示された閾値拡散層404に相当する拡散層を、互いに深さが異なる3層の拡散層(深い拡散層414、中間拡散層424及び浅い拡散層434)からなる3層構造としている。深い拡散層414、中間拡散層424及び浅い拡散層434は、それぞれ、深部側の電位ポケットの形成される可能性がある部位A、電位バリアの形成される可能性がある部位B及び表面側の電位ポケットの形成される可能性がある部位Cの深さに合わせて形成されている。
深い拡散層414を形成するためのp型不純物(深い拡散層用のp型不純物)の濃度は、深部側の電位ポケットを発生させないように調整されている。部位Aの近傍において、深い拡散層用のp型不純物の濃度を、従来の閾値拡散層404(図9参照)を形成するためのp型不純物(閾値拡散層用のp型不純物)の濃度よりも増加させれば、深部側の電位ポケットの底の電位が高くなる。したがって、深い拡散層用のp型不純物の濃度分布を適正に制御することによって、図12に示されたように、部位Aの近傍における深部側の電位ポケットの発生を抑制できる。
中間拡散層424を形成するためのp型不純物(中間拡散層用のp型不純物)又はn型不純物(中間拡散層用のn型不純物)の濃度は、電位バリアを発生させないように調整されている。部位Bの近傍において、中間拡散層用のp型不純物の濃度を従来の閾値拡散層用のp型不純物の濃度よりも実質的に減少させれば、電位バリアの頂上の電位が低くなる。したがって、中間拡散層の不純物の濃度分布を適正に制御することによって、図12に示されたように、部位Bの近傍における電位バリアの発生を抑制できる。ここで、部位Bの近傍において、p型不純物の濃度を実質的に減少させるとは、正孔キャリアの濃度が減少すればよいことを意味し、p型不純物の濃度を減少させてもよいし、n型不純物の濃度を増加させてもよい。
また、浅い拡散層434を形成するためのp型不純物(浅い拡散層用の不純物)の濃度は、表面側の電位ポケットを発生させないように調整されている。深い拡散層414の場合と同様に、浅い拡散層用のp型不純物の濃度分布を適正に制御することによって、図12に示されたように、部位Cの近傍における表面側の電位ポケットの発生を抑制できる。
上記のように、深部側の電位ポケット、電位バリア及び表面側の電位ポケットの発生を抑制することによって、深いフォトダイオード拡散層102側から浅い拡散層434側に向かって、電位分布を単調に減少させることができる。これにより、信号電荷の完全転送を実現できる。
ところで、固体撮像装置の撮像性能を向上させるため、暗電流を低減する技術が一般的に知られている。以下に、暗電流が低減された固体撮像装置について説明する。図13は、従来の固体撮像装置における転送トランジスタ近傍の他の構造例を部分的に表す模式的な断面図である。図13に示された固体撮像装置は、n型の深いフォトダイオード拡散層102を覆うようにp型半導体基板100の表面側に形成されたp型の表面ボロン層413を更に備えている。このような構成とすることで、暗電流が低減する。また、通常、n型の深いフォトダイオード拡散層102を形成するためのマスクは、p型の表面ボロン層413を形成するためのマスクとしても用いられる。そのため、図13に示されたように、n型の深いフォトダイオード拡散層102とp型の表面ボロン層413とは、実質的に同一の領域に深さを異ならせて形成される。
また、フォトダイオードの感度を向上させ、低電圧での完全転送を実現する固体撮像装置は、例えば、特許文献2にも開示されている。この従来の固体撮像装置では、半導体基板において浮遊拡散層の下からn型の深いフォトダイオード拡散層下までの範囲内の領域に形成されたp型の拡散層を更に備えている。この従来の固体撮像装置では、n型の深いフォトダイオード拡散層の深い部分で発生した信号電荷の転送効率を向上させることによって、フォトダイオードの感度を向上させ、かつ低電圧での転送効率を向上させる。
特開2004−253737号公報
特開2001−53260号公報
本発明に係る固体撮像装置の第1の製造方法によって得られる第1の固体撮像装置は、前記深いフォトダイオード拡散層の表面側の少なくとも一部を含むように、前記画素セル形成領域に形成され、前記浅いフォトダイオード拡散層より浅い第2導電型の付加拡散層と、前記画素セル形成領域の全体に形成され、前記浅いフォトダイオード拡散層より浅い第2導電型の浅い拡散層とを備えている。それにより、付加拡散層と浅い拡散層との境界付近において、これらよりも不純物濃度の高い領域が形成されることがない。つまり、付加拡散層と浅い拡散層とは隣接していて、それらの不純物の濃度は、場所によらず一定である。したがって、電位バリアが生じることがなく、付加拡散層が形成されていることから、暗電流が生じることもない。なお、この場合は、付加拡散層の方が、浅い拡散層に比べて不純物濃度が高くなる。
また、本発明に係る固体撮像装置の第2の製造方法によって得られる第2の固体撮像装置は、前記画素セル形成領域における前記深いフォトダイオード拡散層に隣接する領域に形成され、前記浅いフォトダイオード拡散層より浅い第2導電型の浅い拡散層と、半導体基板の上部における画素セル形成領域の全体に形成され、前記浅いフォトダイオード拡散層より浅い第2導電型の付加拡散層とを備えている。それにより、付加拡散層と浅い拡散層との境界付近において、これらよりも不純物濃度の高い領域が形成されることがない。つまり、付加拡散層と浅い拡散層とは隣接していて、それらの不純物の濃度は、場所によらず一定である。したがって、電位バリアが生じることがなく、付加拡散層が形成されていることから、暗電流が生じることもない。なお、この場合は、浅い拡散層の方が、付加拡散層に比べて不純物濃度が高くなる。
また、本発明の第1および第2の固体撮像装置は、MOS型固体撮像装置であってもよいし、CCD型固体撮像装置であってもよい。なお、本発明に係る固体撮像装置は、浅い拡散層及び付加拡散層以外については公知のいかなる固体撮像装置の構成と同一であってもよい。
なお、半導体基板に形成される各拡散層は、マスクの開口を通して半導体基板の表面から所定の深さまでの範囲に所定の不純物を注入することによって形成される。なお、拡散層において、不純物は、深さ方向(垂直方向)に対して、半導体基板の種類や不純物の種類及び注入エネルギーや注入量(ドーズ量)等に応じた所定の濃度分布で分布する。本明細書において、半導体基板に形成される各拡散層は、各拡散層を形成するために注入される不純物の濃度が1015cm-3以上である部分を意味する。各拡散層の境界は、SIMS等による濃度プロファイルの測定に基づいて決定することができる。
また、後述する「第1導電型不純物」とは、半導体基板の内部においてn型不純物(ドナーとして機能する元素)又はp型不純物(アクセプタとして機能する元素)を意味する。また、後述する「第2導電型不純物」とは、第1導電型不純物がn型不純物である場合にはp型不純物を意味し、第1導電型不純物がp型不純物である場合にはn型不純物を意味する。後述する第1の第2導電型不純物、第2の第2導電型不純物及び第3の第2導電型不純物は、全て同一種類の元素であってもよいし、少なくとも1つが他と異なる種類の元素であってもよい。
半導体基板の内部の任意の部位における導電型は、その部位に含まれるp型不純物の濃度とn型不純物の濃度とによって決まる。以下においては、p型不純物による空孔キャリア濃度がn型不純物による電子キャリアの濃度よりも高い領域の導電型をp型と称し、逆の場合をn型と称する。
p型拡散領域にn型不純物を注入して深いフォトダイオード拡散層を形成する場合には、半導体基板として、p型半導体基板、p型ウェルの形成されたn型半導体基板又はp型ウェルの形成された真性半導体基板を用いることができる。逆の場合には、半導体基板として、n型半導体基板、n型ウェルの形成されたp型半導体基板又はn型ウェルの形成された真性半導体基板を用いることができる。
また、固体撮像装置の第1および第2の製造方法は、好ましくは、前記転送ゲート電極下の領域の少なくとも一部を含むように、前記画素セル形成領域に前記浅い拡散層より深い第2導電型の深い拡散層を形成する工程(h)を更に備えている。それにより、転送トランジスタにおけるパンチスルーを低減できる。
また、固体撮像装置の第1および第2の製造方法は、好ましくは、前記転送ゲート電極下の領域の少なくとも一部を含むように、前記画素セル形成領域に、前記浅い拡散層より深く前記深い拡散層より浅い、第1導電型もしくは第2導電型の中間拡散層を形成する工程(i)を更に備えている。それにより、深い拡散層を形成したことで、発生し易くなった電位バリアを抑制又はその高さを低くすることができる。
また、本発明の固体撮像装置の第1の製造方法において、好ましくは、前記半導体基板に対して斜めの方向からのイオン注入により、前記画素セル形成領域に、前記付加拡散層を形成する。それにより、前記付加拡散層を形成する際の前記第2導電型の不純物の入り込み量が一定になるため、前記付加拡散層を所定の深さとなるよう高精度で作製することができる。
また、本発明の固体撮像装置の第1の製造方法において、好ましくは、前記半導体基板の垂直方向に対して10°〜45°の角度を有する方向からのイオン注入により、前記画素セル形成領域に、前記付加拡散層を形成する。それにより、前記付加拡散層を形成する際の第2導電型の不純物の入り込み量が一定になるため、前記付加拡散層を所定の深さとなるよう高精度で作製することができる。
以下、本発明に係る固体撮像装置及びその製造方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明に係る第1の固体撮像装置について説明する。第1の固体撮像装置において、各画素セルにおける浅い拡散層及び付加拡散層以外については公知のいかなる固体撮像装置の構成と同一であってもよい。第1の固体撮像装置の等価回路は、図7に示された回路と同一である。図1は、本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置の1つの画素セルにおける転送トランジスタ近傍の構造例を部分的に表す模式的な断面図である。なお、従来と実質的に同一の機能を有する部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図1に示されたように、実施の形態1の固体撮像装置は、p型半導体基板(半導体基板)100と、n型不純物(第1の第1導電型不純物)を有する深いフォトダイオード拡散層102と、p型不純物(第1の第2導電型不純物)を有する浅いフォトダイオード拡散層103と、n型不純物を有する浮遊拡散層109と、ゲート絶縁膜(絶縁膜)105と、転送ゲート電極106とを有する。
p型半導体基板100と深いフォトダイオード拡散層102と浅いフォトダイオード拡散層103とによって、埋め込み型のpnp−フォトダイオード11(図7参照)が構成されている。
p型半導体基板100には、深いフォトダイオード拡散層102の表面側の少なくとも一部を含むように、p型不純物(第2の第2導電型不純物)を有する付加拡散層113が更に形成されている。また、p型半導体基板100には、その表面において転送ゲート電極106下の領域及び付加拡散層113を含むように、p型不純物(第3の第2導電型不純物)を有する浅い拡散層134が更に形成されている。浅い拡散層134及び付加拡散層113の双方は、浅いフォトダイオード拡散層103よりも浅い。図1には、付加拡散層113が浅い拡散層134よりも浅い場合が例示されているが、浅い拡散層134が付加拡散層113よりも浅くてもよい。また、浅い拡散層134のp型不純物の濃度分布及び付加拡散層113のp型不純物の濃度分布は、表面側の電位ポケットを発生させないように制御されていることが好ましい。これにより、信号電荷の転送効率が向上する。
浅い拡散層134と付加拡散層113とは、どちらもp型不純物を含んでいるため、これらが重なっている領域の不純物濃度は、浅い拡散層134の不純物含有量及び付加拡散層113の不純物含有量により決まる。したがって、浅い拡散層134において、付加拡散層113が形成された領域と、付加拡散層113が形成されていない領域とでは、不純物濃度が異なる。そのため、浅い拡散層134の表面側における水平方向の不純物濃度は、転送ゲート電極106下の領域周辺において、付加拡散層113が形成された領域の端を境界として、異なる値となる。したがって、従来の固体撮像装置のように、付加拡散層と浅い拡散層との間にこれらよりも不純物の濃度が高い領域が生じることがなく、電位バリアが生じることがない。また、図1に示されたように、浅い拡散層134は、素子分離膜101で囲まれた領域の全面に形成されていることが好ましい。
図1には、付加拡散層113の右端の位置と深いフォトダイオード拡散層102の右端の位置とが実質的に同一の場合が例示されている。ここで、それらの位置が実質的に同一とは、意図的にはそれらの位置を異ならせないことを意味し、それらの位置が作製誤差や拡散誤差等によって厳密には同一でない場合を含むことを意味する。なお、作製誤差とは、付加拡散層用のp型不純物を注入する際のレジストマスクと深いフォトダイオード拡散層用のn型不純物を注入する際のレジストマスクとの位置合わせの誤差を意味し、拡散誤差とは、注入された不純物の種類によって熱処理における拡散速度が異なることに起因する拡散幅の誤差を意味する。
実施の形態1の固体撮像装置は、付加拡散層113が形成されていることで、暗電流が低減される。良好に暗電流を低減させるためには、付加拡散層113は、図1に示されたように、実質的に、深いフォトダイオード拡散層102の表面側の全領域のみに形成されていることが好ましい。また、後述の製造工程において、深いフォトダイオード拡散層102及び付加拡散層113を形成するためのレジストマスクを兼用することができ、製造工程を簡素化できるという効果も奏する。また、良好に暗電流を低減させるためには、付加拡散層用のp型不純物はホウ素であることが好ましい。
また、図1に示されたように、深い拡散層114が、転送ゲート電極106下の領域の少なくとも一部を含むようにp型半導体基板100に形成されていることが好ましい。深い拡散層114は、深い拡散層用のp型不純物(第4の第2導電型不純物)を含有し、浅い拡散層134よりも深く形成されている。深い拡散層114の導電型はp型である。深い拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布を制御することによって、転送トランジスタにおけるパンチスルーを低減できる。
深い拡散層114を形成した場合には電位バリアが発生し易くなるが、中間拡散層124を設けることで、電位バリアの発生を抑制する又はその高さを低くすることができる。中間拡散層124は、具体的には、図1に示されたように、転送ゲート電極106下の領域の少なくとも一部を含むようにp型半導体基板110に形成されていることが好ましい。中間拡散層124は、浅い拡散層134よりも深く、深い拡散層114よりも浅く形成されていて、中間拡散層用のp型不純物(第5の第2導電型不純物)又は中間拡散層用のn型不純物(第2の第1導電型不純物)を含有している。深いフォトダイオード拡散層用のn型不純物の垂直濃度分布と深い拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布とを考慮して、中間拡散層用の不純物を適正に選択すればよい。中間拡散層124の不純物の濃度分布を適正に制御することによって、電位バリアの発生を抑制できる。なお、中間拡散層124は、中間拡散層用のp型不純物又は中間拡散層用のn型不純物を含有していて、いずれの場合も、アクセプタ濃度からドナー濃度を引き算した結果としての導電型はp型である。
また、中間拡散層124における不純物の垂直濃度分布を制御することによって、電位バリアの発生を抑制する又はその高さを低くすることができる。
なお、深い拡散層114及び中間拡散層124は本発明の必須構成要素ではない。しかし、信号電荷の完全転送を実現するためには、深い拡散層114及び中間拡散層124の双方、又は、深い拡散層114のみを形成することが好ましい。また、それでも電位ポケットの発生を抑制することができない場合は、深い拡散層114よりも更に深い拡散層を形成してもよい。
また、p型半導体基板100の表面において、深い拡散層114の右端及び左端の位置は、図1に示されたように、それぞれ、中間拡散層124の右端及び左端の位置と実質的に同一であることが好ましい。この場合、後述の製造工程において、深い拡散層114及び中間拡散層124を形成するためのレジストマスクを兼用することができ、製造工程を簡素化できるという効果も奏する。
なお、p型半導体基板100において、深い電位ポケットの発生する可能性がある部位(以下においては、「深い電位ポケット部位」と略記する)の位置と電位バリアが発生する可能性がある部位(以下においては、「電位バリア部位」と略記する)の位置は、垂直方向ばかりでなく、水平方向にもずれている。したがって、深い電位ポケット部位の位置と電位バリア部位の位置との水平方向の位置ずれが大きい場合には、深い拡散層114の左端の位置と中間拡散層124の左端の位置とを同一にしない方が好ましい場合もある。
なお、p型半導体基板100の表面において、深い拡散層114の右端の位置は、図1に示されたように、浮遊拡散層109の左端の位置よりも右側であることが好ましい。これにより、転送トランジスタのパンチスルーが良好に低減する。また、上記の特許文献2に記載されているように、深いフォトダイオード拡散層102の深い部分で発生した信号電荷の転送効率が向上し、深いフォトダイオード拡散層102の感度が向上する。
このように、実施の形態1の固体撮像装置は、暗電流が生じにくく、かつ主転送経路に沿った信号電荷の転送効率が高い。したがって、撮像画像の品位が高い。また、作製誤差等による転送効率のばらつきが生じにくいため、量産性に適している。
なお、実施の形態1の固体撮像装置は、暗電流の低減に寄与する深いフォトダイオード拡散層102の表面近傍に位置する付加拡散層113のp型不純物の濃度を、閾値電圧の調整に寄与するゲート電極106下の表面近傍に位置する浅い拡散層134のp型不純物の濃度よりも高濃度にしたい場合に好ましい構造である。
ここで、図1に示された実施の形態1の固体撮像装置の製造方法について説明する。図2(A)〜(D)は、本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置の製造方法の一例を説明するための模式的な工程別断面図である。図2(A)〜(D)には、1つの画素セルにおける転送トランジスタ近傍の構造例が部分的に表されている。
まず、図2(A)に示されたように、p型半導体基板100に素子分離膜101を形成する。素子分離膜101を形成した後に、レジストマスク141を形成する。レジストマスク141の開口を通して、p型半導体基板100に深いフォトダイオード拡散層用のn型不純物をイオン注入する。これにより、深いフォトダイオード拡散層用のn型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入される。このようにして、深いフォトダイオード拡散層102が形成される。引き続き、p型半導体基板100に、レジストマスク141の開口を通して、付加拡散層用のp型不純物をイオン注入する。これにより、付加拡散層用のp型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入される。このようにして、付加拡散層113が形成される。深いフォトダイオード拡散層102及び付加拡散層113を形成した後に、レジストマスク141を除去する。
次に、図2(B)に示されたように、レジストマスク142を形成する。レジストマスク142を形成した後に、レジストマスク142の開口を通して、p型半導体基板100に深い拡散層用のp型不純物をイオン注入する。これにより、深い拡散層用のp型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入される。このようにして、深い拡散層114が形成される。引き続き、p型半導体基板100に、レジストマスク142の開口を通して、中間拡散層用のp型不純物又はn型不純物をイオン注入する。これにより、中間拡散層用のp型不純物又はn型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入される。このようにして、中間拡散層124が形成される。深い拡散層114及び中間拡散層124を形成した後に、レジストマスク142を除去する。
次に、画素セルの形成領域の全体を開口とするレジストマスク(図示せず)を形成する。レジストマスクを形成した後に、p型半導体基板100に、レジストマスクの開口を通して、浅い拡散層用のp型不純物をイオン注入する。これにより、浅い拡散層用のp型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入されて、図2(C)に示されたように、浅い拡散層134が形成される。浅い拡散層134を形成した後に、レジストマスクを除去する。浅い拡散層134を形成するためのイオン注入時に、付加拡散層113にも、浅い拡散層用のp型不純物がイオン注入される。それにより、付加拡散層113の濃度分布が変化する。すなわち、付加拡散層113の最終的な濃度分布は浅い拡散層134形成時に決定される。したがって、図2(B)に示された製造工程においては、図2(C)の製造工程におけるイオン注入を考慮して、付加拡散層113の不純物濃度分布を調整する。実施の形態1の固体撮像装置では、付加拡散層113の濃度が、浅い拡散層134の濃度よりも高い。
前述のように、作製誤差等により付加拡散層113の形成位置がずれれば、付加拡散層113と浅い拡散層134との境界位置にずれが生じる。しかし、作製誤差等により、付加拡散層113と浅い拡散層134との境界付近における濃度分布がばらつくことはない。つまり、付加拡散層113の不純物濃度は、いずれの個所においても浅い拡散層134の不純物濃度よりも高くなる。そのため、電位バリアが生じることはなく、実施の形態1の固体撮像装置の動作に問題が生じることがない。なお、作製誤差等により生じる、付加拡散層113と浅い拡散層134との境界位置のずれは、実施の形態1の固体撮像装置の動作において問題にはならない程度のものである。
なお、浅い拡散層用及び付加拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布は、それぞれ暗電流が低減しかつ転送トランジスタの閾値電圧が所望の範囲内の値となるよるにする。また、これらの濃度分布は、主転送経路に沿った電位分布における表面側の電位バリアが発生しない又は表面側の電位バリアの高さが低くなるように最適化すればよい。
暗電流は、浅い拡散層用のp型不純物の濃度分布を考慮して主に付加拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布を制御することによって調整される。なお、付加拡散層113には、付加拡散層用のp型不純物や浅い拡散層用のp型不純物ばかりではなく、付加拡散層113と重なる他の拡散層用の不純物も含まれる。そこで、他の拡散層用の不純物の垂直濃度分布をも考慮して、付加拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布を制御すればよい。具体的には、図1に示された構成の場合、浅い拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布のみを考慮して、付加拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布を制御するのではない。他に、深いフォトダイオード拡散層用のn型不純物の垂直濃度分布や浅いフォトダイオード拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布をも考慮して、付加拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布を制御する。
一方、転送トランジスタの閾値電圧は、主に浅い拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布を制御することによって調整される。なお、転送ゲート電極106下において浅い拡散層134と重なる他の拡散層が形成される場合、浅い拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布は、他の拡散層用の不純物の垂直濃度分布をも考慮して制御される。例えば、図1に示された構成の場合、浅い拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布は、付加拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布、深い拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布及び中間拡散層用のp型不純物又はn型不純物の垂直濃度分布等を考慮して制御される。
次に、p型半導体基板100にレジストマスク(図示せず)を形成して、浅いフォトダイオード拡散層用のp型不純物をイオン注入する。図2(D)に示されたように、浅いフォトダイオード拡散層103を形成し、レジストマスクは除去する。浅いフォトダイオード拡散層103を形成した後に、ゲート絶縁膜105、転送ゲート電極106、ゲート絶縁膜107及びリセットゲート電極108を形成する。なお、転送ゲート電極106及びリセットゲート電極108と同時に、増幅トランジスタのゲート電極(図示せず)や選択トランジスタのゲート電極(図示せず)等も形成すればよい。転送ゲート電極106及びリセットゲート電極108を形成した後に、レジストマスク(図示せず)を形成する。形成されたレジストマスクの開口を通して、n型不純物をイオン注入し、浮遊拡散層109及び電源拡散層110を一括して形成する。なお、浮遊拡散層109及び電源拡散層110の形成において、転送ゲート電極106又はリセットゲート電極108をマスクの一部として用いる。それにより、浮遊拡散層109における転送ゲート電極106側及びリセットゲート電極108側の端、並びに、電源拡散層110のリセットゲート電極108側の端を、転送ゲート電極106又はリセットゲート電極108に対して自己整合的に位置決めできる。
以上の過程を経ることによって、実施の形態1の固体撮像装置の画素セルの主要部を作製できる。なお、実施の形態1の固体撮像装置の製造においては、公知のいかなる技術を用いてもよい。また、深いフォトダイオード拡散層102、浅いフォトダイオード拡散層103、付加拡散層113、深い拡散層114、中間拡散層124及び浅い拡散層134の形成順序は、適宜変更することができる。
例えば、転送ゲート電極106を形成した後に、付加拡散層113を形成してもよい。それにより、転送ゲート電極106がレジストマスクの代わりをするため、転送ゲート電極106の設置位置に対して自己整合的に、付加拡散層113の位置決めができる。この製造方法について、以下に説明する。
図3(A)〜(D)は、本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置の製造方法の別の一例を説明するための模式的な工程別断面図である。図3(A)〜(D)には、1つの画素セルにおける転送トランジスタ近傍の構造例が部分的に表されている。
まず、図3(A)に示されたように、p型半導体基板100に素子分離膜101を形成する。素子分離膜101を形成した後に、レジストマスク141を形成する。p型半導体基板100に、レジストマスク141の開口を通して、深いフォトダイオード拡散層用のn型不純物をイオン注入する。これにより、深いフォトダイオード拡散層用のn型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入される。このようにして、深いフォトダイオード拡散層102が形成される。深いフォトダイオード拡散層102を形成した後に、レジストマスク141を除去する。
次に、図3(B)に示されたように、レジストマスク142を形成する。レジストマスク142を形成した後に、p型半導体基板100に、レジストマスク142の開口を通して、深い拡散層用のp型不純物をイオン注入する。これにより、深い拡散層用のp型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入される。このようにして、深い拡散層114が形成される。引き続き、p型半導体基板100に、レジストマスク142の開口を通して、中間拡散層用のp型不純物又はn型不純物をイオン注入する。これにより、中間拡散層用のp型不純物又はn型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入される。このようにして、中間拡散層124が形成される。深い拡散層114及び中間拡散層124を形成した後に、レジストマスク142を除去する。
次に、画素セルの形成領域の全体を開口とするレジストマスク(図示せず)を形成する。レジストマスクを形成した後に、p型半導体基板100に、レジストマスクの開口を通して、浅い拡散層用のp型不純物をイオン注入する。これにより、浅い拡散層用のp型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入されて、図3(C)に示されたように、浅い拡散層134が形成される。浅い拡散層134を形成した後に、レジストマスクを除去する。
次に、図3(D)に示されたように、ゲート絶縁膜105、転送ゲート電極106、ゲート絶縁膜107及びリセットゲート電極108を形成し、付加拡散層113も形成する。なお、転送ゲート電極106及びリセットゲート電極108と同時に、増幅トランジスタのゲート電極(図示せず)や選択トランジスタのゲート電極(図示せず)等も形成すればよい。転送ゲート電極106及びリセットゲート電極108を形成した後に、レジストマスク(図示せず)を形成する。形成されたレジストマスクの開口を通して、p型半導体基板100に、付加拡散層用のp型不純物をイオン注入する。これにより、付加拡散層用のp型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入される。このようにして、付加拡散層113が形成される。なお、付加拡散層113の形成において、転送ゲート電極106をマスクの一部として用いればよい。それにより、付加拡散層113における転送ゲート電極106側の端を、転送ゲート電極106に対して自己整合的に位置決めすることができる。また、浅い拡散層134がすでに形成されている個所にさらにイオン注入されて付加拡散層113が形成されるので、付加拡散層113と浅い拡散層134との境界において、それらの濃度分布が所定の値から異なることはない。なお、付加拡散層113を形成するためのイオン注入は、浅い拡散層134の濃度を考慮して、その濃度を決める。このように、転送ゲート電極106の位置に対して、自己整合的に付加拡散層113と浅い拡散層134との境界位置が決定される。また、付加拡散層113と浅い拡散層134との境界の濃度分布が所定の値となる。これらのことから、電位ポケットが生じることがなく、実施の形態1の固体撮像装置の動作に問題が生じることはない。
なお、付加拡散層113を形成するためのイオン注入を、p型半導体基板100に対して、角度をつけて注入いわゆる斜め注入すればよい。これにより、不純物の入り込み量が一定になるため、付加拡散層113を所定の深さとなるよう高精度で作製することができる。具体的には、例えば、p型半導体基板100の垂線に対して、45°の角度でイオンビームを入射させることで、斜め注入がなされる。なお、イオン注入の加速エネルギーは15eV程度とすればよい。このとき、付加拡散層113の端部は、転送ゲート電極106側に転送ゲート電極106の端部に対して約0.1μm程度入り込む。イオン注入の角度は、p型半導体基板100の垂線に対して7°以上とすればよい。好ましくは、イオン注入の角度は、p型半導体基板100の垂線に対して10°〜45°とすればよい。例えば、イオン注入の角度は、p型半導体基板100の垂線に対して25°及び45°で行われている。
付加拡散層113を形成した後、図3(E)に示されているように、浮遊拡散層109及び電源拡散層110を形成する。まず、p型半導体基板100にレジストマスク(図示せず)を形成する。形成されたレジストマスクの開口を通してn型不純物を注入し、浮遊拡散層109及び電源拡散層110を一括して形成する。なお、浮遊拡散層109及び電源拡散層110の形成において、転送ゲート電極106又はリセットゲート電極108をマスクの一部として用いればよい。それにより、浮遊拡散層109における転送ゲート電極106側の端及びリセットゲート電極108側の端、並びに、電源拡散層110のリセットゲート電極108側の端を、転送ゲート電極106又はリセットゲート電極108に対して自己整合的に位置決めすることができる。
ここで、深い拡散層114及び中間拡散層124の変形例について説明する。図4は、本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置における転送トランジスタ近傍の構造の変化例を部分的に表す模式的な断面図である。浅い電位ポケットの発生する可能性がある部位(以下においては、「浅い電位ポケット部位」と略記する)の位置から深い電位ポケット部位の位置又は電位バリア部位の位置までの水平方向の位置ずれが大きい場合に好ましい構成である。
図4に示されたように、p型半導体基板100の表面において、深い拡散層214の左端の位置は、浅いフォトダイオード拡散層103の右端の位置よりも左側であることが好ましい。これにより、深い拡散層214の端部が深部側の電位ポケット部位から水平方向の左側に遠ざかる。したがって、浅い電位ポケット部位と深い電位ポケット部位との水平方向の位置ずれが大きい場合でも、深部側の電位ポケットの発生を良好に抑制できる。また、深部側の電位ポケット部位の近傍において、深い拡散層用のp型不純物の水平濃度分布の均一性が向上する。したがって、浅い電位ポケット部位と深い電位ポケット部位との水平方向の位置ずれが大きくても、信号電荷の転送効率における作製誤差等の依存性を低減できる。このように、深部側の電位ポケットの発生・非発生の個体差を更に良好に抑制することができる。
また、p型半導体基板100の表面において、深い拡散層214の左端の位置が、深いフォトダイオード拡散層102の左端の位置と実質的に同一又はそれよりも左側であることが更に好ましい。これにより、深いフォトダイオード拡散層102において浅いフォトダイオード拡散層103の真下の部分の光電変換効率を概ね場所に依存せずに均一にできる。
なお、深い拡散層214の左端は、浅いフォトダイオード拡散層103の右端の位置から深いフォトダイオード拡散層102の左端の位置までの間に位置しないほうがよい。このような配置とすることで、深い拡散層用のp型不純物を含む部分と深い拡散層用のp型不純物を含まない部分とが形成され、それらの部分で光電変換効率が変化してしまい、撮像画像の画質が劣化するためである。
また、図4に示されたように、p型半導体基板100の表面において、中間拡散層224の左端の位置は、浅いフォトダイオード拡散層103の右端の位置よりも左側であることが好ましい。これにより、電位バリア部位の近傍において、中間拡散層用の不純物の水平濃度分布の均一性が向上する。したがって、浅い電位ポケット部位と電位バリア部位との水平方向の位置ずれが大きい場合でも、信号電荷の転送効率における作製誤差等の依存性を低減できる。更に好ましくは、p型半導体基板100の表面において、中間拡散層224の左端の位置が、深いフォトダイオード拡散層102の左端の位置と実質的に同一又はその位置よりも左側とすればよい。それにより、上記の深い拡散層214の場合と同様に、深いフォトダイオード拡散層102において浅いフォトダイオード拡散層103の真下の部分の光電変換効率を概ね場所に依存せずに均一にできる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明に係る第2の固体撮像装置について説明する。実施の形態2の固体撮像装置において、浅い拡散層及び付加拡散層以外は上記の実施の形態1に係る固体撮像装置と同一の構成である。したがって、上記の実施の形態1と実質的に同一の機能を有する部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。図5は、本発明の実施の形態2に係る固体撮像装置の1つの画素セルにおける転送トランジスタ近傍の構造例を部分的に表す模式的な断面図である。
図5に示されたように、p型半導体基板100には、転送ゲート電極106下の領域の少なくとも一部を含むように、互いに深さの異なる深い拡散層114、中間拡散層124及び浅い拡散層234が形成されている。また、p型半導体基板100には、深いフォトダイオード拡散層102の表面側の少なくとも一部及び転送ゲート電極106下の領域を含むように、付加拡散層213が形成されている。実施の形態2の固体撮像装置では、付加拡散層213を形成したことによって、実施の形態1の固体撮像装置と同様に暗電流を低減できる。良好に暗電流を低減するためには、深いフォトダイオード拡散層102の表面側の全領域が付加拡散層213と重なっていることが好ましい。図5に示されたように、付加拡散層213が画素領域の全体に形成されている場合には、深いフォトダイオード拡散層102と付加拡散層213とは、深いフォトダイオード拡散層102の表面側の全領域で確実に重なる。
また、転送ゲート電極106下の領域には、浅い拡散層234と付加拡散層213とが重なっている領域が形成されていて、この領域の不純物の水平濃度分布は実質的に均一である。これにより、転送トランジスタの閾値電圧を良好に制御できる。また、浅い拡散層用の不純物の濃度分布及び付加拡散層用の不純物の濃度分布は、表面側の電位ポケットが発生しないように制御することが好ましい。それにより、信号電荷の転送効率が向上する。
浅い拡散層234と付加拡散層213とは、どちらもp型不純物を含んでいるため、これらが重なっている個所の不純物濃度は、浅い拡散層234の不純物含有量及び付加拡散層213の不純物含有量により決まる。したがって、付加拡散層213において、浅い拡散層234が形成された領域と、浅い拡散層234が形成されていない領域とでは、不純物濃度が異なる。そのため、付加拡散層213の表面側における水平方向の不純物濃度は、転送ゲート電極106下の領域周辺において、浅い拡散層234が形成された領域の端を境界として、異なる値となる。このように、従来の固体撮像装置のように、付加拡散層と浅い拡散層との間にこれらよりも不純物の濃度が高い個所が生じることがなく、所定の濃度分布を実現できるため、電位ポケットが生じることがない。また、付加拡散層213が形成されていることから、暗電流が生じることもない。
また、実施の形態2の固体撮像装置では、実施の形態1の固体撮像装置の場合と同様に、深い拡散層114と中間拡散層124との双方又は深い拡散層114のみが形成されていることが好ましい。実施の形態1と同様に、p型半導体基板100の表面において、深い拡散層114の右端及び左端の位置は、図5に示されたように、それぞれ、中間拡散層124の右端及び左端の位置と実質的に同一であることが好ましい。また、図5に示されたように、浅い拡散層234の右端及び左端の位置も、深い拡散層114の右端及び左端の位置ならびに中間拡散層124の右端及び左端と実質的に同一であることが好ましい。この場合、後述の製造工程において、深い拡散層114、中間拡散層124及び浅い拡散層234を形成するためのレジストマスクを兼用することができ、製造工程を簡素化できるという効果を奏する。
なお、p型半導体基板100において、深い電位ポケット部位の位置と電位バリア部位の位置と浅い電位ポケット部位の位置は、垂直方向ばかりでなく水平方向にもずれている。したがって、それらの位置ずれが大きい場合には、深い拡散層114の左端の位置、中間拡散層124の左端の位置及び浅い拡散層234の左端の位置の少なくとも1つの位置を異ならせる方が好ましい場合がある。
なお、深い拡散層114及び中間拡散層124は、実施の形態1の固体撮像装置の場合と同様に、実施の形態2の固体撮像装置においても必須構成要素ではない。
実施の形態2の固体撮像装置は、暗電流の低減に寄与する深いフォトダイオード拡散層102の表面近傍に位置する付加拡散層213のp型不純物の濃度を、閾値電圧の調整に寄与するゲート電極106下の表面近傍に位置する浅い拡散層234のp型不純物の濃度よりも低濃度にしたい場合に好ましい構造である。
ここで、図6に示された実施の形態2の固体撮像装置の製造方法について説明する。図6(A)〜(D)は、本発明の実施の形態2に係る固体撮像装置の製造方法の一例を説明するための模式的な工程別断面図である。図6(A)〜(D)には、1つの画素セルにおける転送トランジスタ近傍の構造例が部分的に表されている。
まず、図6(A)に示されたように、p型半導体基板100に素子分離膜101を形成する。素子分離膜101を形成した後に、画素セルの形成領域の全体を開口とするレジストマスク(図示せず)を形成する。p型半導体基板100に、レジストマスクの開口を通して、付加拡散層用のp型不純物をイオン注入する。これにより、付加拡散層用のp型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入される。このようにして、付加拡散層213が形成される。付加拡散層213を形成した後に、レジストマスクを除去する。
次に、図6(B)に示されたように、レジストマスク141を形成する。レジストマスク141を形成した後に、レジストマスク141の開口を通して、p型半導体基板100に深いフォトダイオード拡散層用のn型不純物をイオン注入する。これにより、深いフォトダイオード拡散層用のn型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入される。このようにして、深いフォトダイオード拡散層102が形成される。深いフォトダイオード拡散層102を形成した後に、レジストマスク141を除去する。
次に、図6(C)に示されたように、レジストマスク142を形成する。レジストマスク142を形成した後に、レジストマスク142の開口を通して、p型半導体基板100に深い拡散層用のp型不純物をイオン注入する。これにより、深い拡散層用のp型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入される。このようにして、深い拡散層114が形成される。引き続き、レジストマスク142の開口を通して、p型半導体基板100に中間拡散層用のp型不純物又はn型不純物をイオン注入する。これにより、中間拡散層用のp型不純物又はn型不純物がp型半導体基板の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入されて、中間拡散層124が形成される。引き続き、レジストマスク142の開口を通して、p型半導体基板100に浅い拡散層用のp型不純物をイオン注入する。これにより、浅い拡散層用のp型不純物がp型半導体基板100の表面から所定の深さまでの範囲に所定の濃度分布で注入されて、浅い拡散層234が形成される。深い拡散層114、中間拡散層124及び浅い拡散層234を形成した後に、レジストマスク142を除去する。なお、深い拡散層114、中間拡散層124及び浅い拡散層234は、それぞれ任意の順序で形成されてもよい。
なお、p型半導体基板100の表面において、浅い拡散層234を形成する個所には、付加拡散層213が形成されているため、すでにp型不純物がイオン注入されている。したがって、浅い拡散層234において、付加拡散層213と重なって形成された個所は、付加拡散層213の濃度分布に影響を受けて、高濃度となる。そこで、浅い拡散層234に注入する不純物の量は、このことを考慮して決定する。この場合は、付加拡散層213の濃度が、浅い拡散層234の濃度よりも低くなる。付加拡散層213と浅い拡散層234とはこの濃度の差により決定される。
前述のように、作製誤差等により浅い拡散層234の形成位置がずれれば、付加拡散層213と浅い拡散層234との境界位置にずれが生じる。しかし、作製誤差等により、付加拡散層213と浅い拡散層234との境界における濃度分布がばらつくことはない。つまり、浅い拡散層234の不純物濃度は、水平方向におけるいずれの個所においても付加拡散層213の不純物濃度よりも高くなる。そのため、電位ポケットが生じることはなく、実施の形態2の固体撮像装置の動作に問題が生じることがない。なお、作製誤差等により生じる、付加拡散層213と浅い拡散層234との境界位置のずれは、実施の形態2の固体撮像装置の動作において問題にはならない程度のものである。
なお、浅い拡散層用のp型不純物の濃度分布及び付加拡散層用のp型不純物の濃度分布は、それぞれ暗電流が低減しかつ転送トランジスタの閾値電圧が所望の範囲の値となるようにする。また、これらの濃度分布は、主転送経路に沿った電位分布における表面側の電位ポケットが発生しない又は表面側の電位ポケットの深さが浅くなるように最適化すればよい。
暗電流は、主に付加拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布を制御することによって調整される。なお、付加拡散層213と重なる他の拡散層が形成される場合、付加拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布は、他の拡散層用の不純物の垂直濃度分布をも考慮して制御される。例えば、図5に示された構成であれば、付加拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布は、深いフォトダイオード拡散層用のn型不純物の垂直濃度分布や浅いフォトダイオード拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布をも考慮して制御される。
一方、転送トランジスタの閾値電圧は、付加拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布を考慮して浅い拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布を制御することによって調整される。なお、転送ゲート電極106下において、付加拡散層213以外に、浅い拡散層234と重なる他の拡散層が形成される場合、それら他の拡散層用の不純物の垂直濃度分布をも考慮して浅い拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布は制御される。例えば、図5に示された固体撮像装置には、深い拡散層114や中間拡散層124が形成されている。この場合、浅い拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布は、付加拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布、深い拡散層用のp型不純物の垂直濃度分布及び中間拡散層用のp型不純物又はn型不純物の垂直濃度分布等を考慮して制御される。
次に、図6(D)に示されたように、上記の実施の形態1の場合と同様にして、ゲート絶縁膜105、転送ゲート電極106、ゲート絶縁膜107、リセットゲート電極108、浅いフォトダイオード拡散層103、浮遊拡散層109及び電源拡散層110を形成する。
以上の過程を経ることによって、実施の形態2の固体撮像装置の画素セルの主要部を作製できる。なお、深いフォトダイオード拡散層102、浅いフォトダイオード拡散層103、付加拡散層213、深い拡散層114、中間拡散層124及び浅い拡散層234の形成順序は、適宜変更することができる。また、実施の形態2の固体撮像装置の製造においては、公知のいかなる技術を用いてもよい。
上記の実施の形態1及び2においては、第1導電型不純物がn型であり第2導電型不純物がp型である場合について説明したが、それらは逆の導電型であってもよい。
また、上記の実施の形態1及び2においては、増幅型固体撮像装置を一例として説明したが、他の構造の固体撮像装置であってもよい。また、上記においてはMOS型固体撮像装置について説明したが、フォトダイオードから転送トランジスタにかけての部分の構造はCCD型固体撮像装置でも概ね同一であるために、本発明は、CCD型固体撮像装置に適用することもできる。