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JP4626513B2 - ドライバ用半導体素子の過電流保護装置 - Google Patents

ドライバ用半導体素子の過電流保護装置 Download PDF

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Description

本発明は、車両に搭載される電子機器と通信するための信号を通信線に出力するドライバ用半導体素子を保護する過電流保護装置に関する。
一般に、車両に搭載される電子機器等は、温度が極めて変化し易い環境下で動作することになるため、電子機器の機能によっては温度の影響を排除して安定的に動作させることが重要な課題となっている。そして、電子機器に対する通信信号を通信線に出力するドライバ用の半導体素子について過電流に対する保護を行う場合にも、その保護動作が温度による影響を受けることなく安定的に行われることが望ましい。
例えば、特許文献1には、アクチュエータセンサインターフェイス回路用のスレーブにつき過負荷・短絡検知を行なうため回路において、センサの消費電流をシャント抵抗を用いて検出する構成が開示されている。
また、特許文献2には、主に負荷電流を流すためのトランジスタと、シャント抵抗により電流検出を行なうためのトランジスタとを並列に接続して1チップ上に構成し、トランジスタのセル比を適当な比率に設定することで、シャント抵抗側には微小な電流を流して検出を行なう構成が開示されている。
特開2003−218673号公報 米国特許第4553084号明細書
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、シャント抵抗が有している温度特性が考慮されていない。加えて、そのシャント抵抗に生じる電圧降下をトランジスタのベース−エミッタ間電圧を利用して判定する構成であるため、更に温度の影響を受け易くなっている。その結果、保護電流値が動作温度に大きく依存するという問題がある。
また、特許文献2に開示されている技術は、大電流を取り扱うようなパワートランジスタを使用する場合に向いているが、より多くのトランジスタが必要となる。そして、車両に搭載される電子機器に対して通信信号を出力するドライバ用半導体素子の保護に適用することを想定すると、電流調整用のトランジスタを余分に付加することになり、構成が複雑になってしまう。また、電流検出にシャント抵抗を用いる点では特許文献1と同様の問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両に搭載される電子機器に対して通信信号を出力するドライバ用半導体素子を、動作温度に影響を受けることなく簡単な構成で保護することが可能な過電流保護装置を提供することにある。
請求項1記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置によれば、ドライバ用半導体素子を介して流れる電流を検出するシャント抵抗と、過電流に対する保護動作を開始するためのしきい値を設定する基準抵抗とを同一種類の抵抗で構成し、シャント抵抗の端子電圧と、基準抵抗に定電流を供給することで発生する端子電圧とをコンパレータにより比較して過電流検出を行なう。斯様に構成すれば、シャント抵抗と基準抵抗とは同一の温度特性を有することになり、温度変化による端子電圧の変動はキャンセルされる。従って、温度の影響を受けることなく安定した過電流保護動作を簡単な構成で実現することができる。
そして、ドライバ用半導体素子をバイポーラトランジスタで構成する場合、当該トランジスタに駆動回路が出力するベース電位を、リミッタ回路が、駆動回路を構成するトランジスタとドライバ用半導体素子とを合わせた増幅段数に対して、1ベース−エミッタ間電圧分だけ高い電圧でクランプする。即ち、シャント抵抗における電圧降下がリミッタ回路の作用で規定される結果、動作環境温度が高い場合は通電電流が制限されるようになる。従って、例えば電源短絡状態が発生しているか否かをチェックする際に流れる突入電流値を抑えることが可能となる。
請求項2記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置によれば、シャント抵抗並びに基準抵抗を、ドライバ用半導体素子が発生する熱の伝導状態が夫々等しくなるように配置する。即ち、ドライバ用半導体素子は動作することに伴い通電による発熱を生じるため、上記のように構成すれば、両抵抗はドライバ用半導体素子の熱的影響を等しく受けるようになり、保護動作をより安定させることができる。
請求項3記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置によれば、ドライバ用半導体素子,シャント抵抗並びに基準抵抗をSOI基板上に形成すると共に、互いの素子を絶縁膜材料によって分離する。即ち、半導体基板を構成する材料の熱伝導率に対して、絶縁膜材料の熱伝導率は極めて小さい。従って、上記のように構成すれば、各素子間における熱的影響が互いにより受け難くなるため、熱伝導状態が等しくなる。
請求項4記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置によれば、シャント抵抗並びに基準抵抗をドライバ用半導体素子の配置領域に隣接するように配置するので、当該素子と両抵抗との間における熱伝導状態が、その他の要因による影響を受け難くすることができる。
請求項5記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置によれば、シャント抵抗並びに基準抵抗を、ドライバ用半導体素子の配置領域に対し等間隔をおいて配置するので、物理的な距離を等しくすることにより、当該素子と両抵抗との間の熱伝導状態が等しくなるように設定できる。
請求項6記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置によれば、保持回路によりコンパレータの出力状態変化を保持し、その保持状態をリセット回路により周期的にリセットする。即ち、車載される電子機器については、車両が走行することに伴う振動の影響も常に受けているため、過電流が検出される状態が発生したとしても、その状態発生は偶発的であることも十分に想定される。故に、再び振動の影響を受けることにより過電流の検出状態が解消することも考えられるので、コンパレータの出力状態変化の保持を周期的にリセットし続ける間に、正常状態に復帰して通信を再開させることを期待できる。
請求項7記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置によれば、コンパレータと保持回路との間に挿入されるフィルタの信号遅延時間と、リセット回路におけるリセット周期との時間比率を、ドライバ用半導体素子の入力抵抗と通信先となる電子機器側の負荷抵抗との比率以下となるように設定する。
例えば、電源VBとドライバ用半導体素子との間に、負荷抵抗Rl,通信線,入力抵抗Rin(シャント抵抗を含む)が挿入されている通信系統を想定する。この場合、電源が負荷抵抗Rlを短絡した状態(電源短絡)になることで過電流が検出されたとすると、その検出時点からフィルタの信号遅延時間Tdを経過した後に、保持回路に対してコンパレータの出力状態変化が伝達される。従って、リセット周期Trに対して遅延時間Tdの間だけ、ドライバ用半導体素子及びその入力抵抗Rinを介して過電流(VB/Rin)が流れる状態が繰り返されることになる。
一方、正常状態においてドライバ用半導体素子を介して流れる電流は(VB/(Rl+Rin))となる。ここで、過電流が検出された場合に、その検出に伴いドライバ用半導体素子の保護動作が実行されて過電流が遮断されるまでに発生する熱量をリセット周期Trで平均したものが、通常電流がリセット周期Trの間に流れた場合より小さくなる条件を想定すると、
(VB/(Rl+Rin))・Tr>(VB/Rin)・Td
となり、
Rin/(Rl+Rin)>Td/Tr
であるから、条件(Rl≫Rin)を満たせば、
Rin/Rl>Td/Tr
が得られる。即ち、請求項7のように条件設定を行えば、過電流が時間Tdだけ流れることで発生する熱量の時間平均が、通常電流がリセット周期Trの間に流れた場合よりも小さくなり、温度上昇を抑制することができる。
請求項記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置によれば、定電流回路を、バンドギャップ基準電圧回路と金属薄膜抵抗とを用いて構成する。即ち、バンドギャップ基準電圧は温度係数が小さく、金属薄膜抵抗もまた温度係数が小さい。従って、これらにより定電流回路を構成すれば、基準抵抗によって比較用の基準電位を与えるための定電流を、温度の影響を受けることなく安定して出力することができる。
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。図1は、車載用の電子機器であるECU(Electronic Control Unit)間で通信を行う場合のシステム構成を概略的に示すものである。この例ではECU1が送信側、ECU2が受信側であり、両者間は通信線3を介して接続されている。
受信側のECU2において、通信線3は、負荷抵抗4(Rl)を介して車載バッテリ5(+B)に接続されていると共に、受信用のコンパレータ6の非反転入力端子に接続されている。コンパレータ6の反転入力端子には、受信信号レベル比較用の基準電圧Vrが与えられている。
一方、送信側のECU1において、通信線3は、入力抵抗7(Rin),通信用ドライバであるNPNトランジスタ(ドライバ用半導体素子)8及び電流検出用のシャント抵抗9(Rs2)を介してグランドに接続されていると共に、コンパレータ10の非反転入力端子に接続されている。電源11とグランドとの間には、定電流回路12及び基準抵抗13の直列回路が接続されており、両者の共通接続点はコンパレータ10の反転入力端子に接続されている。定電流回路12は、基準抵抗13に対して定電流Irefを供給することで、その端子電圧によってコンパレータ10に過電流を検出するためのしきい値電圧を付与するものである。
コンパレータ10の出力端子は、ノイズ除去用のローパスフィルタ(遅延回路)14を介してフリップフロップ(保持回路)15のリセット端子に接続されており、フリップフロップ15のセット端子には、セット信号出力回路(リセット回路)16によりセット信号が周期的に与えられるようになっている。ドライバ制御信号は、ANDゲート17及び駆動回路18を介してトランジスタ8(Tr1)のベースに接続されており、ANDゲート17の他方の入力端子には、フリップフロップ15のQ出力端子が接続されている。尚、ECU1の構成において、抵抗7,トランジスタ8,駆動回路18を除いたものが過電流保護装置19を構成している。
図3は、トランジスタ8,シャント抵抗9及び基準抵抗13を半導体基板上に形成した場合の素子配置例を概念的に示すものである。(a),(b)は夫々異なる配置であるが、何れの場合も、動作時に発熱するトランジスタ8に対して抵抗9及び13を近接させて配置することで、各抵抗9,13のトランジスタ9に対する熱的な結合度合いが夫々等しくなるようにしている。(a)は抵抗9及び13をトランジスタ8が形成されている領域の左右両側に対称に配置した場合、(b)は抵抗9及び13を上記領域の一辺に並べて等距離となるように配置した場合である。斯様に配置を行うことで、抵抗9及び13はトランジスタ8が発生する熱の影響を等しく受けることになる。
また、図4は、トランジスタ8,シャント抵抗9及び基準抵抗13の素子形成状態を示す模式的断面図である。ECU1を構成する各回路素子は、埋め込み酸化膜(SiO)21を有するSOI(Silicon On Insulator)基板22上に形成されている。そして、トランジスタ8,シャント抵抗9及び基準抵抗13は、何れも埋め込み酸化膜21に達するトレンチ23の内部に酸化膜材料(絶縁膜材料)24を埋設することでトレンチ分離された領域に形成されている。尚、抵抗9及び13は、同一種類のP型拡散抵抗として形成されている。また、図4は、トランジスタ8が抵抗9及び13の図中右方に形成されていることを示しているわけではなく、例えば図3(b)に示すような形成状態を、途中を破断することで並べて示したものである。
斯様に形成することで各素子間の電気的絶縁が良好に確保される。また、酸化膜材料24であるSiOの熱伝導率は、基板22の主材料であるSiを「1」とするとその1/10程度であり極めて低い。従って、抵抗9及び13を基本的には周囲の熱的影響を受け難くなる状態にした上で、相対的に近接するトランジスタ8の熱的影響だけを受け易くなるようにしている。
図5は、定電流回路12の詳細構成を示す図である。電源11には、抵抗31〜33を介して、ベースが共通に接続されてミラー回路の一部をなすPNPトランジスタ34〜36のエミッタが夫々接続されている。トランジスタ34のコレクタは、抵抗37及びNPNトランジスタ38のコレクタ−エミッタを介してグランドに接続されており、トランジスタ35のコレクタは、トランジスタ38とミラー対をなすNPNトランジスタ39のコレクタ−エミッタを介してグランドに接続されている。即ち、トランジスタ38,39のベースは、トランジスタ38のコレクタに共通に接続されている。また、抵抗37は、定電流回路12の起動用として配置されており、例えばCrSiなどの金属薄膜抵抗素子で構成されている。
トランジスタ36のベースは、抵抗40及びPNPトランジスタ41のエミッタ−コレクタを介してグランドに接続されており、トランジスタ41のベースは、トランジスタ35のコレクタに接続されている。また、トランジスタ34のコレクタには、ダイオード接続されたNPNトランジスタ42及び43の直列回路が並列に接続されており、当該直列回路の共通接続点には、バンドギャップ基準電圧回路44の出力端子が接続されている。
バンドギャップ基準電圧回路44は、バンドギャップリファレンス電圧VBGを出力する。この場合、抵抗37の上端電圧は(VBG+VBE(トランジスタ42))であり、抵抗37の下端電圧はVBE(トランジスタ38)である。従って、トランジスタ36のコレクタより供給される定電流Irefは、
Iref=(VBG+VBE−VBE)/Rs3(抵抗37)
=VBG/Rs3
となり、バンドギャップリファレンス電圧VBGと抵抗37の抵抗値Rs3によって決定される。
図6は、駆動回路18の詳細構成を示すものである。ANDゲート17の出力端子は、インバータゲート51を介してNPNトランジスタ52のベースに接続されている。トランジスタ52のエミッタはグランドに接続され、コレクタは定電流回路53を介して電源11に接続されていると共に、ダイオード接続されたNPNトランジスタ54及び55の直列回路を介してグランドに接続されている。更に、トランジスタ52のコレクタは、抵抗56を介してPNPトランジスタ57のベースに接続されており、トランジスタ57のコレクタはグランドに、エミッタは抵抗58を介して電源11に接続されている。
出力段のNPNトランジスタ59のコレクタは抵抗60を介して電源11に接続され、エミッタは抵抗61を介してグランドに接続され、ベースはトランジスタ57のエミッタに接続されている。そして、トランジスタ59のエミッタがトランジスタ8のベースに接続されている。
駆動回路18において、出力段のトランジスタ59をオンさせてドライバ用トランジスタ8を駆動する条件は、以下のようになる。尚、カッコ内の数字は、トランジスタの符号である。トランジスタ8がONした場合に流れる電流をIinとすると、
VBE(55)+VBE(54)+VBE(57)
>VBE(59)+VBE(8)+Rs2・Iin
各VBEが等しければ、
VBE(57)>Rs2・Iin
となる。
即ち、駆動回路18−トランジスタ8における信号の増幅段数は、トランジスタ8を含め、駆動回路18の出力段のトランジスタ59を加えて2段であるが、左辺においてベース−エミッタ間電圧VBEを加える数が、その段数よりも1段多い「3」となるように構成している。尚、駆動回路18において、トランジスタ52,54,55,57,定電流回路53及び抵抗56は、リミッタ回路62を構成している。
図7は、トランジスタ57のベース−エミッタ間電圧VBE(57)と、シャント抵抗9の端子電圧(Rs2・Iin)との温度特性を示すものである。端子電圧(Rs2・Iin)が正の温度特性2000ppm/℃を有するのに対し、ベース−エミッタ間電圧VBE(57)は、負の温度特性−2mV/℃を有している。従って、両者が交差する点よりも温度が高い領域で使用すれば、VBE(57)によりトランジスタ8を流れる電流Iinに対して制限をかけることができる。
次に、本実施例の作用について図2も参照して説明する。図2は、過電流保護装置19の動作に伴う各部の信号波形を示すタイミングチャートである。過電流保護装置19は、通信線3が車載バッテリ5に短絡した状態となった場合に通信線3に流れる過電流を検出し、ドライバ制御信号の出力を停止させるように動作する。即ち、トランジスタ8がONした場合に通信線3に流れる電流が正常な範囲内であれば、フリップフロップ15には、セット信号出力回路16によりセット信号が周期的に与えられているため(図2(c)参照)Q端子の出力レベルはハイとなっており、ドライバ制御信号はANDゲート17を介して駆動回路18に出力される。
そして、上記の短絡状態が発生すると通信線3に流れる電流が増大し、シャント抵抗9の端子電圧が上昇して基準抵抗13の端子電圧を超えると(Rs2・Iin>Rs1・Iref)、コンパレータ10の出力レベルがロウからハイに変化してフリップフロップ15はリセットされる。従って、ドライバ制御信号の出力はANDゲート17によって阻止される。この時、コンパレータ10の出力変化に対してフィルタ14の出力信号は、フィルタ時定数に基づく遅延時間Tdだけ遅れて出力される(図2(d),(e)参照)。その結果、過電流は遅延時間Tdの間だけトランジスタ8を介して流れる(図2(b)参照)。
また、フリップフロップ15はセット信号出力回路16により周期的(Ts)にセットされるため、電源短絡が発生している間は、フリップフロップ15のセット,リセットを繰り返すことになり、過電流は遅延時間Tdの間だけ流れる状態を繰り返す。このようにしてフリップフロップ15を周期的にセットするのは、通信線3の電源短絡は、車両に印加される振動によって偶発的に発生する場合も想定されることから、周期的にセットし続ける間に短絡状態が解消されることを期待するためである。
尚、上記の「セット」とは、フリップフロップ15は、過電流を検出した場合のコンパレータ10の出力状態変化によって「リセット」されることでその状態変化を保持するので、その保持状態をクリアするという意味では請求項6に記載した「リセット」に相当している。
ここで、電源短絡時において、過電流が遅延時間Tdの間だけ流れる状態を周期Tsで繰り返す場合に発生する熱量の時間Tsによる平均が、通常電流がセット周期Tsの間に流れた場合より小さくなる条件を想定する。正常状態でトランジスタ8を介して流れる電流は、コレクタ−エミッタ間飽和電圧を無視すると、
VB/(Rl+Rin+Rs2)
電源短絡時に流れる電流は、負荷抵抗4が短絡されるため、
VB/(Rin+Rs2)
となる。
従って、各電流が通電される期間に発生する電力は、
(VB/(Rl+Rin+Rs2))・Ts>(VB/(Rin+Rs2))・Td
となり、
(Rin+Rs2)/(Rl+Rin+Rs2)>Td/Ts
であるから、条件(Rl≫(Rin+Rs2))を満たせば、
(Rin+Rs2)/Rl>Td/Tr
が得られる。従って、上記のように各抵抗値の比を設定すれば、過電流検出時に過電流が時間Tdだけ流れて発生する熱量の時間平均が、通常電流がセット周期Tsの間に流れた場合に発生する熱量よりも小さくなる。
以上のように本実施例によれば、通信線3上に通信信号を出力するトランジスタ8の保護を行う過電流保護装置19を、トランジスタ8を介して流れる電流を検出するシャント抵抗9と、過電流に対する保護動作を開始するためのしきい値を設定する基準抵抗13とを同一種類のP型拡散抵抗により形成し、シャント抵抗9の端子電圧と、基準抵抗13に定電流を供給して発生する端子電圧とをコンパレータ10で比較して過電流検出を行なうように構成した。従って、シャント抵抗9と基準抵抗13とは同一の温度特性を有するため温度変化による双方の端子電圧の変動はキャンセルされるので、温度の影響を受けることなく安定した過電流保護動作を、簡単な構成で実現することができる。
また、シャント抵抗9並びに基準抵抗13を、トランジスタ8に対して、トランジスタ8が発生する熱の伝導状態が等しくなるように配置した。具体的には、シャント抵抗9並びに基準抵抗13をトランジスタ8の配置領域に隣接するように、トランジスタ8の配置領域に対し等間隔をおいて配置した。従って、トランジスタ8が動作することで生じる熱の影響を抵抗9及び13が等しく受けるようになり、保護動作をより安定させることができる。
更に、トランジスタ8,シャント抵抗9並びに基準抵抗13をSOI基板22上に形成し、互いの素子形成領域を酸化膜材料24によって分離するので、その他の要因による熱的影響を互いにより受け難くした上で、抵抗9並びに13がトランジスタ8の影響だけを受け易くして、検出精度を向上させることができる。
また、過電流保護装置19は、フリップフロップ15によりコンパレータ10の出力状態変化を保持し、その保持状態をセット信号出力回路16により周期的にリセット(図1上では「セット」)するようにしたので、電源短絡が一時的に発生したような場合は、フリップフロップ15を周期的にリセットし続ける間に、正常状態に復帰して通信を再開させることを期待できる。
そして、コンパレータ10とフリップフロップ15との間に挿入されるフィルタ14の信号遅延時間Tdと、セット信号出力回路16におけるセット周期Tsとの時間比率を、トランジスタ8の入力抵抗7の抵抗値にシャント抵抗9の抵抗値を加えたものと、通信先となるECU2側の負荷抵抗4との比率以下となるように設定したので、過電流がセット周期Tsの間だけ流れることで発生する熱量の時間平均を、通常電流がセット周期Tsの間に流れた場合よりも小さくすることができる。従って、フリップフロップ15の検出結果保持状態が周期的にリセットされる場合でも、温度上昇を抑制することができる。
また、ドライバ用のトランジスタ8に駆動回路18が出力するベース電位を、リミッタ回路62が、駆動回路18を構成するトランジスタ59とトランジスタ8とを合わせた増幅段数に対して、1ベース−エミッタ間電圧VBE分だけ高い電圧でクランプするようにした。即ち、シャント抵抗9における電圧降下がリミッタ回路62の作用で規定される結果、動作環境温度が高い場合は通電電流Iinがベース−エミッタ間電圧VBEで制限される。従って、例えば電源短絡状態が発生しているか否かをチェックする際に流れる突入電流値を抑えることが可能となる。
加えて、定電流回路12を、バンドギャップ基準電圧回路44と金属薄膜抵抗37とを用いて構成した。即ち、バンドギャップ基準電圧は温度係数が小さく、金属薄膜抵抗37もまた温度係数が小さい。従って、基準抵抗13により比較用の基準電位を与えるための定電流Irefを、温度の影響を受けることなく安定して出力することができる。
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形が可能である。
シャント抵抗9,基準抵抗13は、P型拡散抵抗として構成するものに限らず、双方が同一であれば種類の抵抗は問わない。
ランジスタ8,抵抗9及び13を、SOI基板22にトレンチ分離で形成する構成は、必要に応じて行えば良い。
トランジスタ8,抵抗9及び13の配置形態は、図3に示すものに限ることなく、要は、トランジスタ8が発生する熱の影響が,抵抗9及び13に対して等しく及ぶような配置形態であれば良い。
フィルタ14の信号遅延時間Tdとセット信号出力回路16のセット周期Tsとの関係についても、上記実施例に提示した関係に限らず適宜設定すれば良い。
また、フィルタによる濾波機能が不要である場合は、フィルタ14に替えて遅延回路を配置しても良い。
フリップフロップ15は周期的にセットする必要はなく、例えばECU1の図示しないCPUが必要と判断したときにセットするようにしても良い。
定電流回路12は、必ずしも金属薄膜抵抗37とバンドギャップ基準電圧回路44とで構成するものに限らない。
信はECU1,2間で行うものに限らず、通信対象が車載用の電子機器であれば広く適用することができる。
本発明の一実施例であり、車載用のECU間で通信を行う場合のシステム構成を概略的に示す図 過電流保護装置の動作に伴う各部の信号波形を示すタイミングチャート ドライバ用トランジスタ,シャント抵抗及び基準抵抗を、半導体基板上に形成した場合の素子配置例を概念的に示す図 上記各素子の半導体基板上の形成状態を模式的に示す断面図 定電流回路の詳細構成を示す図 駆動回路の詳細構成を示す図 トランジスタのベース−エミッタ間電圧VBEと、シャント抵抗の端子電圧(Rs2・Iin)との温度特性を示す図
符号の説明
図面中、1,2はECU(電子機器)、3は通信線、4は負荷抵抗、5は車載バッテリ、7は入力抵抗、8はNPNトランジスタ(ドライバ用半導体素子)、9はシャント抵抗、10はコンパレータ、12は定電流回路、13は基準抵抗、14はローパスフィルタ、15はフリップフロップ(保持回路)、16はセット信号出力回路(リセット回路)、18は駆動回路、19は過電流保護装置、22はSOI基板、24は酸化膜材料(絶縁膜材料)、37は抵抗(金属薄膜抵抗)、44はバンドギャップ基準電圧回路、62はリミッタ回路を示す。

Claims (8)

  1. 車両に搭載される電子機器と通信するための信号を通信線に出力するドライバ用半導体素子と、このドライバ用半導体素子を介して流れる電流を検出するシャント抵抗とを備え、前記電流量が過大となったことを検出すると、前記ドライバ用半導体素子を保護するように動作する過電流保護装置において、
    前記過電流に対する保護動作を開始するためのしきい値を設定する基準抵抗と、
    この基準抵抗に定電流を供給する定電流回路と、
    前記シャント抵抗の端子電圧と前記基準抵抗の端子電圧とを比較するコンパレータとを備え、
    前記シャント抵抗と前記基準抵抗とを、同一種類の抵抗とし、
    前記ドライバ用半導体素子はバイポーラトランジスタで構成され、
    前記トランジスタにベース電位を与えて駆動する駆動回路は、前記ベース電位を、自身を構成するトランジスタと前記ドライバ用半導体素子とを合わせた増幅段数に対して、1ベース−エミッタ間電圧分だけ高い電圧でクランプするリミッタ回路を備えることを特徴とするドライバ用半導体素子の過電流保護装置。
  2. 前記シャント抵抗並びに前記基準抵抗は、前記ドライバ用半導体素子に対して、当該素子が発生する熱の伝導状態が夫々等しくなるように配置されていることを特徴とする請求項1記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置。
  3. 前記ドライバ用半導体素子,前記シャント抵抗並びに前記基準抵抗は、SOI(Silicon On Insulator)基板上に形成されていると共に、互いの素子が絶縁膜材料によって分離されていることを特徴とする請求項2記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置。
  4. 前記シャント抵抗並びに前記基準抵抗は、前記ドライバ用半導体素子の配置領域に隣接するように配置されていることを特徴とする請求項2又は3記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置。
  5. 前記シャント抵抗並びに前記基準抵抗は、前記ドライバ用半導体素子の配置領域に対し等間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置。
  6. 前記コンパレータの出力状態の変化を保持するための保持回路と、
    前記保持回路の保持状態を周期的にリセットするリセット回路とを備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置。
  7. 前記コンパレータと前記保持回路との間にフィルタを備え、
    前記フィルタの信号遅延時間と前記リセット回路におけるリセット周期との時間比率は、前記ドライバ用半導体素子の入力抵抗と前記電子機器側の負荷抵抗との比率以下となるように設定されていることを特徴とする請求項6記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置。
  8. 前記定電流回路は、バンドギャップ基準電圧回路と、金属薄膜抵抗とを使用して構成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のドライバ用半導体素子の過電流保護装置。
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