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JP4600291B2 - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents

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JP4600291B2
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Description

本発明は、エンジンとトルクコンバータを備えた自動変速機とを有するパワートレーンが搭載された車両の駆動力制御装置に関し、特に、運転者の加速要求に対応したトルクをエンジンから出力して、良好な加速特性を実現できる駆動力制御装置に関する。
運転者のアクセルペダル操作とは独立にエンジン出力トルクを制御することが可能なエンジンと自動変速機とを備えた車両において、運転者のアクセルペダル操作量や車両の運転条件等に基づいて算出された正負の目標駆動トルクを、エンジントルクと自動変速機の変速ギヤ比で実現する「駆動力制御」という考え方がある。また、「駆動力要求型」や「駆動力ディマンド型」と呼ばれる制御手法もこれに類する。
さらに、自動変速機に備えられるトルクコンバータが、伝達効率を向上させるためにロックアップクラッチを有し、車両の状態に応じて、ロックアップクラッチを係合(ロックアップクラッチ状態)、解放(トルクコンバータ状態)およびスリップ制御する技術がある。
このような自動変速機およびエンジンを搭載した車両についての制御装置が、特開平8−74611号公報(特許文献1)に開示されている。この公報に開示された制御装置は、エンジンと、トルクコンバータの滑りを防止するロックアップ機構を具える自動変速機とを関連させて制御する装置であって、運転状況を検知する運転状況検知手段により減速運転中のロックアップ状態から加速状態への移行が検知された場合にエンジントルクを調整するエンジントルク調整手段と、ロックアップ解除・変速検知手段により実際のロックアップ解除の開始または実際の変速の開始が検知された場合に、即座にエンジントルクの調整を中止するエンジントルク調整中止手段とを備える。
この制御装置によると、運転状況検知手段により減速運転中のロックアップ状態から加速状態への移行が検知された場合、エンジントルク調整手段がエンジントルクを調整するが、ロックアップ解除・変速検知手段により実際のロックアップ解除の開始または実際の変速の開始が検知されたとき、即座に、エンジントルク調整中止手段がエンジントルクの調整を中止する。したがって、エンジントルクの調整は上記中止の時点まで継続されることになるから、出力軸トルクの立ち上がりが緩やかになるとともに、ロックアップ解除またはダウンシフトに起因する引き込みトルクが防止され、運転性が良好になる。
特開平8−74611号公報
特許文献1に開示された制御装置においては、トルクダウン制御中にロックアップの解除の開始やダウンシフトの開始が検知された場合には、トルクダウン制御を中止して出力軸トルクの立ち上がり特性の悪化を抑制している。
ところで、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータを備える自動変速機においては、ロックアップクラッチが解放状態であるとトルクコンバータのトルク増幅機能が発現して(トルクコンバータ状態)、ロックアップクラッチが係合状態であるとトルクコンバータのトルク増幅機能が発現しない(ロックアップ状態)。このため、エンジンから出力されたトルクは、トルクコンバータ状態では増幅されるが、ロックアップ状態では増幅されないという差異がある。また、エンジンから出力されたトルクは自動変速機に伝達され、ダウンシフト変速がなされるとダウンシフト変速完了後は出力軸トルクが大きくなるが、変速中は摩擦係合要素のつかみ替えによりトルク伝達されにくく(トルク伝達されない状態を含む)なっている。
しかしながら、特許文献1に開示された制御装置においては、ロックアップ解除が開始されると(ロックアップ状態からトルクコンバータ状態へ移行が開始されると)、エンジントルクダウン制御を中止するが、この中止に伴い、かつトルクコンバータ状態になってエンジントルクが増大するので、過大な初期加速度が発生する場合がある。さらに、ダウンシフト変速が開始されるとエンジンのトルクダウン制御を中止しているが、その時点でトルクダウン制御を実行しても実際にエンジントルクが上昇するまでに時間がかかり、加速初期において十分なエンジントルクが発生していない場合もあり得る。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、踏み増し加速時において、良好な加速特性を得ることができる駆動力制御装置を提供することである。
第1の発明に係る駆動力制御装置は、エンジンと、ロックアップ機構を備えたトルクコンバータを有する自動変速機とが搭載された車両の駆動力を制御する。自動変速機は予め準備されたダウンシフト変速線にしたがってダウンシフト変速が判断される。この駆動力制御装置は、ロックアップ機構の状態を検知するための手段と、車両の状態とダウンシフト変速線とに基づいて、ダウンシフト変速が近いか否かを判断するための判断手段と、車両の加速時において、エンジンに要求するトルクに向けてエンジントルクを増加させるための制御手段とを含む。制御手段は、ロックアップ機構の状態およびダウンシフト変速についての判断の少なくともいずれかに基づいて、エンジントルクの立ち上がり特性を変化させてエンジントルクを増加させるための手段を含む。
第1の発明によると、ロックアップ機構がオン(ロックアップクラッチが係合)状態であるとトルクコンバータのトルク増幅作用が発現せず、ダウンシフト変速が開始されると変速が終了するまで自動変速機の摩擦係合要素のつかみ替えによりトルクが伝達されにくい。加速要求があってダウンシフト変速が判断されたときに、アクセルペダルが踏み増されるということは、運転者は加速感に満足していないことを示す。この場合において、ロックアップ機構の状態やダウンシフト変速を考慮しないでエンジントルクを増加すると、出力軸トルクが不足してしまい、運転者の要求に応えることができない。そこで、算出手段は、ロックアップ機構の状態およびダウンシフト変速についての判断の少なくともいずれかに基づいて、トルクが増幅されない状態であったり、トルクが伝達されにくい状態であると、エンジントルクの立ち上がり特性を大きくする。これにより、ロックアップ状態であったり、ダウンシフト変速が開始されても、運転者が要求する加速感を実現できる。その結果、たとえば、踏み増し加速時において、良好な加速特性を得ることができる駆動力制御装置を提供することができる。
第2の発明に係る駆動力制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、制御手段は、ロックアップ機構がオフ状態であることが検知されると、ロックアップ機構がオン状態であるときに比べて、エンジントルクの立ち上がり特性を小さくするための手段を含む。
第2の発明によると、ロックアップ機構がオフ状態であるとトルクコンバータによるトルク増幅作用が発現されるので、トルク増幅作用が発現しないロックアップ機構がオン状態であるときに比べて、エンジントルクの立ち上がり特性を小さくすることで、所望の加速度を実現できる。
第3の発明に係る駆動力制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、制御手段は、ロックアップ機構がオン状態であることが検知されると、ロックアップ機構がオフ状態であるときに比べて、エンジントルクの立ち上がり特性を大きくするための手段を含む。
第3の発明によると、ロックアップ機構がオン状態であるとトルクコンバータによるトルク増幅作用が発現されないので、トルク増幅作用が発現するロックアップ機構がオフ状態であるときに比べて、エンジントルクの立ち上がり特性を大きくしないと、所望の加速度を実現できない。制御手段は、エンジントルクの立ち上がり特性を大きくするので、所望の加速度を実現できる。
第4の発明に係る駆動力制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、制御手段は、ロックアップ機構がオン状態であって、かつダウンシフト変速が近いと判断されると、ロックアップ機構がオフ状態であるときに比べて、またはダウンシフト変速が近くないときに比べて、エンジントルクの立ち上がり特性を大きくするための手段を含む。
第4の発明によると、ロックアップ機構がオン状態であるとトルクコンバータによるトルク増幅作用が発現されないので、トルク増幅作用が発現するロックアップ機構がオフ状態であるときに比べて、エンジントルクの立ち上がり特性を大きくする。ダウンシフト変速が開始されると自動変速機で摩擦係合要素のつかみ替えが発生してトルク伝達されにくくなるので、変速が開始されない状態に比べて、エンジントルクの立ち上がり特性を大きくする。このように、ロックアップ機構がオン状態であって、かつダウンシフト変速が近いときには、加速トルクが発生されにくい状態であるので、エンジントルクの立ち上がり特性を大きくすることにより、所望の加速度を実現することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
本実施の形態に係る駆動力制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る駆動力制御装置は、図1に示すECU(Electronic Control Unit)1000により実行されるプログラムにより実現される。本実施の形態では、自動変速機を、流体継手としてトルクコンバータを備えた、歯車式変速機構を有する5速の自動変速機として説明する。さらに、トルクコンバータは、ロックアップクラッチを備える。
図1を参照して、本実施の形態に係る駆動力制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る駆動力制御装置は、詳しくは、図1に示すECT(Electronic Controlled Automatic Transmission)_ECU1020により実現される。
図1に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン100と、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ200と、歯車式変速機構300と、ECU1000とから構成される。なお、図1には代表的な信号しか記載していない。
エンジン100の出力軸は、トルクコンバータ200の入力軸に接続される。エンジン100とトルクコンバータ200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転数センサにより検知されるエンジン100の出力軸回転数NE(エンジン回転数NE)とトルクコンバータ200の入力軸回転数(ポンプ回転数)とは同じである。
トルクコンバータ200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチと、入力軸側のポンプ羽根車と、出力軸側のタービン羽根車と、ワンウェイクラッチを有しトルク増幅機能を発現するステータとから構成される。トルクコンバータ200と歯車式変速機構300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ200の出力軸回転数NT(タービン回転数NT)は、タービン回転数センサにより検知される。自動変速機の出力軸回転数NOUTは、出力軸回転数センサにより検知される。
このような自動変速機は、その内部に複数の摩擦要素であるクラッチやブレーキを備える。予め定められた作動表に基づいて、摩擦要素であるクラッチ要素や、ブレーキ要素、ワンウェイクラッチ要素が、要求された各ギヤ段に対応して、係合および解放されるように油圧回路が制御される。自動変速機の変速ポジション(シフトポジション)には、パーキング(P)ポジション、後進走行(R)ポジション、ニュートラル(N)、前進走行(D)ポジションがある。
これらのパワートレーンを制御するECU1000は、エンジン100を制御するエンジンECU1010と、自動変速機を制御するECT_ECU1020とを含む。本実施の形態に係る駆動力制御装置は、ECT_ECU1020により実現され、エンジンECU1010に要求するトルクを算出する。エンジンECU1010は、要求トルクを満足するように、電子スロットルバルブの開度等を制御する。
ECT_ECU1020には、出力軸回転数センサにて検知された出力軸回転数NOUTを表わす信号が入力される。また、ECT_ECU1020には、エンジンECU1010から、エンジン回転数センサにて検知されたエンジン回転数NEを表わすエンジン回転数信号が入力される。
これら回転数センサは、トルクコンバータ200の入力軸、トルクコンバータ200の出力軸および自動変速機の出力軸に取り付けられた回転検出用ギヤの歯に対向して設けられている。これらの回転数センサは、トルクコンバータ200の入力軸、トルクコンバータ200の出力軸および自動変速機の出力軸の僅かな回転の検出も可能なセンサであり、たとえば、一般的に半導体式センサと称される磁気抵抗素子を使用したセンサである。
さらに、ECT_ECU1020は、エンジンECU1010にエンジン制御信号(たとえばスロットル開度信号)を出力し、エンジンECU1010は、そのエンジン制御信号や他の制御信号に基づいてエンジン100を制御する。ECT_ECU1020は、トルクコンバータ200のロックアップクラッチ制御信号を出力する。このロックアップクラッチ制御信号に基づいて、ロックアップクラッチの係合圧が制御される。これにより、ロックアップクラッチが、係合(オン)状態(ロックアップ状態)にされたり、解放(オフ)状態(トルクコンバータ状態)にされたり、その中間のスリップ状態にされたりする。
また、ECT_ECU1020は、自動変速機にソレノイド制御信号を出力する。このソレノイド制御信号に基づいて、自動変速機の油圧回路のリニアソレノイドバルブやオンオフソレノイドバルブなどが制御され、所定の変速ギヤ段(第1速〜第5速)を構成するように、摩擦係合要素が係合および解放されるように制御される。また、ECU1000は、各種データ(マップを含む)やプログラムが記憶されたメモリを有する。
本実施の形態に係る駆動力制御装置においては、車両の運転者により、アクセルペダルの踏み増し加速が要求された場合、スムーズに車両を加速させることができるように、車両の状態に応じて、エンジントルクを変化させる。車両の状態として、特に重要であるのは、ロックアップクラッチの状態、ダウンシフト変速線までの乖離状態等々である。
図2を参照して、本実施の形態に係る駆動力制御装置であるECU1000のメモリに記憶される、変速マップについて説明する。なお、図2に示すマップは一例であって、本発明がこの図2に示すマップに限定されるものではない。また、図2には、ダウンシフト変速線しか記載していない。ダウンシフト変速線の高速側に、それぞれ対応するアップシフト変速線が設定されている。
図2に示すように、この変速マップは、横軸を車速として縦軸を運転者の加速要求量であるアクセル開度としたマップである。図2の右側が車速の高車速側、上側がスロットル開度の大開度側である。
図2の実線に示すように、車速の低い方から、2nd(2速)→1st(1速)、3rd(3速)→2nd(2速)、4th(4速)→3rd(3速)、5th(5速)→4th(4速)のダウンシフト変速線が設定されている。ダウンシフトされると、ギヤ比が大きくなり加速性能が向上する。
図2に示すように、たとえば、A点は、縦軸方向において4th(4速)→3rd(3速)変速線に対する乖離が大きく、この状態をヒステリシスが大きいという。B点は、縦軸方向において4th(4速)→3rd(3速)変速線に対する乖離が小さく、この状態をヒステリシスが小さいという。B点においては、アクセル開度がもう少し上がると(あるいはB点は車速がもう少し下がり、かつアクセル開度がもう少し上がると)、ダウンシフト変速判断が行なわれる。
図3を参照して、本実施の形態に係る駆動力制御装置であるECT_ECU1020で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと略す。)10にて、ECT_ECU1020は、車両状態を検知する。このとき、少なくとも、アクセルペダル開度、ロックアップクラッチ200の状態(係合状態、解放状態、スリップ状態)、変速線図上における現在の車両状態が検知される。
S20にて、ECT_ECU1020は、加速要求があるか否かを判断する。この判断は、アクセルペダル開度信号に基づいて行なわれる。加速要求があることを検知すると(S20にてYES)、処理はS100へ移される。もしそうでないと(S20にてNO)、この処理は終了する。
S100にて、ECT_ECU1020は、アイドルオフ(駆動)状態であったか否かを判断する。アイドルオフ(駆動)状態であると(S100にてYES)、処理はS200へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS110へ移される。
S110にて、ECT_ECU1020は、エンジン100に要求するエンジントルクの立ち上がり特性を規定するマップとして、マップ(標準)を選択する。
S200にて、ECT_ECU1020は、ロックアップオン(ロックアップクラッチ200が係合状態)であるか否かを判断する。この判断は、LC制御信号に基づいて行なわれる。ロックアップオンのロックアップ状態である(トルクコンバータ状態でない)と(S200にてYES)、処理はS300へ移される。もしそうでないと(S200にてNO)、処理はS210へ移される。
S210にて、ECT_ECU1020は、エンジン100に要求するエンジントルクの立ち上がり特性を規定するマップとして、マップ(小)を選択する。マップ(小)は、たとえば、図4に示すようなの立ち上がり特性を規定したマップである。
S300にて、ECT_ECU1020は、ダウンシフト変速線とのヒステリシスが大きいか否かを判断する。この判断は、車速とスロットル開度と図2に示すダウンシフト変速マップとに基づいて行なわれる。ダウンシフト変速線とのヒステリシスが大きいと(S300にてYES)、処理はS400へ移される。もしそうでないと(S300にてNO)、処理はS310へ移される。
S310にて、ECT_ECU1020は、エンジン100に要求するエンジントルクの立ち上がり特性を規定するマップとして、マップ(大)を選択する。マップ(大)は、たとえば、図5に示すような立ち上がり特性を規定したマップである。
S400にて、ECT_ECU1020は、ギヤ段を規制中であるか否かを判断する。この判断は、ギヤホールドしていたりダウンシフトの飛びギヤ段制御中であると、規制中であると判断される。ギヤ段規制中であると(S400にてYES)、処理はS510へ移される。もしそうでないと(S400にてNO)、処理はS410へ移される。
S410にて、ECT_ECU1020は、エンジン100に要求するエンジントルクの立ち上がり特性を規定するマップとして、マップ(中)を選択する。マップ(中)は、たとえば、図6に示すようなの立ち上がり特性を規定したマップである。
S510にて、ECT_ECU1020は、選択したマップを用いてエンジン100に要求するエンジントルクに向けてエンジントルクを増加させるようにスロットル開度を制御する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る駆動力制御装置を搭載した車両の動作について説明する。
[アイドルからの加速]
加速要求されたときに(S20にてYES)、アイドルオフでないと(S100にてNO)、標準的なマップが選択される(S110)。このとき、車両の動作は、図7に示すようなエンジンが車輪で駆動されている被駆動状態から駆動状態に切り替わる(いわゆる)チップイン状態として表わされるものであったり、図8に示すような減速フレックス制御中におけるチップイン状態で表わされるものであったりする。
なお、減速フレックス制御は、トルクコンバータにおける入力側回転数であるエンジン回転数(Ne)と出力側回転数であるタービン回転数(Nt)との差回転が一定(たとえば50rpm)になるようにロックアップクラッチ200がスリップ制御されている状態である。
なお、加速要求されたときに(S20にてYES)、アイドルオフであると(S100にてYES)、車両の動作は、図9に示すような駆動状態である。
[ロックアップオフ状態(=トルクコンバータ状態)からの加速]
加速要求されたときに(S20にてYES)、アイドルオフであって(S100にてYES)、ロックアップクラッチ200がオン状態でない(ロックアップオフ状態=トルクコンバータ状態)であると(S200にてNO)、マップ(小)が選択される(S210)。このとき、車両の動作状態は、図9で表わされるような駆動状態であって、かつ、エンジン100のトルクがトルクコンバータにより増幅される状態である。このため、トルクコンバータ状態からの加速であるため、初期のピックアップトルク(加速トルク)は、ある程度大きいことが予測される。このため、エンジントルクの立ち上がり特性は、さほど大きいものでなくてもよいことになる。その結果、図4に示すようなの立ち上がり特性が選択される。
[ロックアップオン状態かつダウンシフトに近い状態からの加速]
加速要求されたときに(S20にてYES)、アイドルオフであって(S100にてYES)、ロックアップクラッチ200がオン状態であって(ロックアップオン状態=ロックアップ状態)であって(S200にてYES)、かつダウンシフト変速線とのヒステリシスが大きくないと(S300にてNO)、マップ(大)が選択される(S310)。このとき、車両の動作状態は、エンジン100のトルクがトルクコンバータにより増幅されない状態である。このため、トルクコンバータによるトルク増幅が期待できない上に、ダウンシフト変速が近いので、摩擦係合要素のつかみ替えによりトルク伝達されにくい状態(されない状態を含む)である。すなわち、この状態は、ピックアップトルクが最も発現されにくい状態である。このため、エンジントルクの立ち上がり特性は、大きいものでなければならないことになる。その結果、図5に示すようなの立ち上がり特性が選択される。
[ロックアップオン状態かつダウンシフトに近くない状態からの加速]
加速要求されたときに(S20にてYES)、アイドルオフであって(S100にてYES)、ロックアップクラッチ200がオン状態であって(ロックアップオン状態=ロックアップ状態)であって(S200にてYES)、かつダウンシフト変速線とのヒステリシスが大きいと(S300にてYES)、マップ(中)が選択される(S410)。このとき、車両の動作状態は、エンジン100のトルクがトルクコンバータにより増幅されない状態である。このため、トルクコンバータによるトルク増幅が期待できないが、ダウンシフト変速が近くないので、摩擦係合要素のつかみ替えによりトルク伝達されにくい状態(されない状態を含む)にはならない。すなわち、この状態は、トルクコンバータによるトルク増幅されない点ではピックアップトルクが発現されにくい状態であるが、ダウンシフト変速が発生しない点ではピックアップトルクが発現される状態である。このため、エンジントルクの立ち上がり特性は、中ぐらいのものでよいことになる。その結果、図6に示すようなの立ち上がり特性が選択される。
図10に、ロックアップオン状態で加速が要求された場合の車両の状態を示す。図10に示すように、加速要求が発生する時刻t(1)以前から、ロックアップクラッチ200はオン状態であると想定して(S200にてYES)、時刻t(1)において加速要求が発生した時点でも、トルクコンバータによるトルク増幅作用が発現しない。このため、従来のように標準的な吸入空気量の増加のさせ方をすると、吸入空気量の滑らかな増加により、加速するのに十分なトルクがエンジンから出力されない。その結果、時刻t(2)を経過しても十分な加速度が発現せず、時刻t(3)にならないと十分な加速度が発現しない。
本実施の形態に係る駆動力制御装置においては、ロックアップクラッチ200がオン状態であるときにはトルクコンバータによるトルク増幅作用が発現しないため、吸入空気量は速やかに増加するようにスロットル開度を制御するようにした。このため、従来に比べて、吸入空気量が速やかに多くなり(時刻t(2))、トルクコンバータによるトルク増幅作用が発現しなくとも、加速に十分なエンジントルクがエンジンから出力される。その結果、時刻t(2)で十分な加速度が発生させることができる。
さらに、図11に、ロックアップオン状態でダウンシフト変速線に近い状態で加速が要求された場合の車両の状態を示す。図11に示すように、加速要求が発生する時刻t(1)以前から、ロックアップクラッチ200はオン状態であると想定して(S200にてYES)、時刻t(1)において加速要求が発生した時点でも、トルクコンバータによるトルク増幅作用が発現しない。さらに、ダウンシフト変速線とのヒステリシスが大きくなく(S300にてNO)、加速中に自動変速機300の摩擦係合要素のつかみ替えが発生して(時刻t(2)から時刻t(3)の間)出力トルクが不足する、加速トルクが最も発生しにくい状態である。
このため、従来のように標準的な吸入空気量の増加のさせ方をすると、吸入空気量の滑らかな増加により、加速するのに十分なトルクがエンジンから出力されない。これは、Hi側のクラッチ油圧が抜けてLo側のクラッチ油圧が上昇するまで、トルク伝達されにくいことに起因する。その結果、変速が開始されると(時刻t(2))その変速が終了するまで(時刻t(3))、加速度が十分ではない。
本実施の形態に係る駆動力制御装置においては、ロックアップクラッチ200はオン状態であるので、トルクコンバータによるトルク増幅作用が発現しないことに加えて、ダウンシフト変速が近いので、吸入空気量がオーバーシュートするようにスロットル開度を制御するようにした(時刻t(2))。このため、従来に比べて、吸入空気量が速やかにかつ十分に多くなり、トルクコンバータによるトルク増幅作用が発現しなくて、かつダウンシフト変速が発生しても、加速に十分なエンジントルクがエンジンから出力される(時刻t(2))。その結果、十分な加速度が発生させることができる。
以上のようにして、本実施の形態に係る駆動力制御装置によると、エンジンと、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータを備えた自動変速機とを搭載した車両において、運転者が加速を要求した場合、トルクコンバータ状態であるか否か、ダウンシフト変速線とのヒステリシスが大きいか否かに基づいて、エンジントルクを変化させるようにした。このため、トルク増幅機能が作用しないロックアップオン状態で、かつダウンシフト変速が近く加速トルクの発生が見込みにくい状態の場合には、エンジントルクの立ち上がり特性を大きくした。この結果、本実施の形態に係る駆動力制御装置によると所望の加速を実現することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施の形態に係る駆動力制御装置を含む車両の制御ブロック図である。 本発明の実施の形態に係る駆動力制御装置に記憶される、変速マップを示す図である。 本発明の実施の形態に係る駆動力制御装置であるECT_ECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 第1のマップに規定されるエンジントルクの立ち上がり特性を示す図である。 第2のマップに規定されるエンジントルクの立ち上がり特性を示す図である。 第3のマップに規定されるエンジントルクの立ち上がり特性を示す図である。 車両の状態を示す図(その1)である。 車両の状態を示す図(その2)である。 車両の状態を示す図(その3)である。 本発明の実施の形態に係る駆動力制御装置であるECUでプログラムが実行されたときの車両の状態を示す図(その1)である。 本発明の実施の形態に係る駆動力制御装置であるECUでプログラムが実行されたときの車両の状態を示す図(その2)である。
符号の説明
100 エンジン、200 トルクコンバータ、300 歯車式変速機構、1000 ECU、1010 エンジンECU、1020 ECT_ECU、2200 ブレーキセンサ。

Claims (3)

  1. エンジンと、ロックアップ機構を備えたトルクコンバータを有する自動変速機とが搭載された車両の駆動力制御装置であって、前記自動変速機は予め準備されたダウンシフト変速線にしたがってダウンシフト変速が判断され、
    前記駆動力制御装置は、
    前記ロックアップ機構の状態を検知するための手段と、
    前記車両の状態と前記ダウンシフト変速線とに基づいて、前記ダウンシフト変速が近いか否かを判断するための判断手段と、
    前記車両の加速時において、前記エンジンに要求するトルクに向けてエンジントルクを増加させるための制御手段とを含み、
    前記制御手段は、前記ロックアップ機構の状態および前記ダウンシフト変速についての判断の少なくともいずれかに基づいて、前記エンジントルクの立ち上がり特性を変化させてエンジントルクを増加させるための手段を含み
    前記エンジントルクを増加させるための手段は、前記ロックアップ機構がオン状態であって、かつダウンシフト変速が近いと判断されると、前記ロックアップ機構がオフ状態であるときに比べて、またはダウンシフト変速が近くないときに比べて、前記エンジントルクの立ち上がり特性を大きくするための手段を含む、駆動力制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記ロックアップ機構がオフ状態であることが検知されると、前記ロックアップ機構がオン状態であるときに比べて、前記エンジントルクの立ち上がり特性を小さくするための手段を含む、請求項1に記載の駆動力制御装置。
  3. 前記制御手段は、前記ロックアップ機構がオン状態であることが検知されると、前記ロックアップ機構がオフ状態であるときに比べて、前記エンジントルクの立ち上がり特性を大きくするための手段を含む、請求項1に記載の駆動力制御装置。
JP2006000099A 2006-01-04 2006-01-04 車両の駆動力制御装置 Expired - Fee Related JP4600291B2 (ja)

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