JP4683730B2 - 窒化物半導体発光素子とこれを含む装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は窒化物半導体発光素子に関し、特に、その発光寿命、発光強度、および歩留りなどの改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窒化物半導体レーザ素子の出力と寿命を改善するために、GaN基板上に形成された複数の均一なストライプ状のSiO2マスクのパターンとこのSiO2マスクが形成されていない窓部とを覆うようにGaN下地層が積層され、このGaN下地層上に窒化物半導体レーザ素子を形成することは、Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 39(2000)pp. L647-650 において教示されている。
【0003】
すなわち、SiO2マスクの上方領域においてGaN下地層中の貫通転位が減少し、この貫通転位密度の少ない下地層領域を利用することによって、レーザ素子の出力と寿命を改善し得ることが述べられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記文献Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 39(2000)pp. L647-650 に開示された窒化物半導体レーザ素子においても、依然として、さらにその出力や寿命を改善することが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、窒化物半導体発光素子の発光寿命や発光強度などをさらに改善することを主要な目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による窒化物半導体発光素子は、窒化物半導体基板の一主面上に形成されたマスクパターンを含むマスク基板を含み、マスクパターンはその上に窒化物半導体層がエピタキシャル成長しにくい成長抑制膜からなり、この成長抑制膜が形成されていない複数の窓部が存在し、互いに隣接する窓部間のマスク幅として少なくとも2以上の異なる幅が存在していて、マスクパターンはマスクA群とB群とを含み、マスクA群の両側にマスクB群が配置され、マスクA群におけるマスクA幅はマスクB群におけるマスクB幅より広く設定され、窓部およびマスクパターンを覆う窒化物半導体下地層と、この下地層上でn型層とp型層との間において量子井戸層または量子井戸層とこれに接する障壁層とを含む発光層を含む発光素子構造をさらに含み、発光層内に実質的に電流が注入される領域である電流狭窄部はマスクAの上方に形成されていることを特徴としている。
【0007】
なお、電流狭窄部は、マスクAの幅方向の中央線から2μm以上離れた位置に形成されていることが好ましい。また、電流狭窄部は、マスクAと窓部Aとにまたがる領域内の上方に含まれていることが好ましい。さらに、電流狭窄部は、マスクAの領域内の上方に完全に含まれていることがさらに好ましい。
【0008】
マスクA群の領域内の窓部A幅は、マスクB群の領域内の窓部B幅よりも狭く設定されていることが好ましい。
【0009】
マスクA幅は10〜20μmの範囲内にあることが好ましく、窓部A幅は2〜10μmの範囲内にあることが好ましい。
【0010】
マスクB幅は2〜10μmの範囲内にあることが好ましく、窓部B幅は5〜40μmの範囲内にあることが好ましい。
【0011】
マスクAはストライプ状に形成され、その長手方向は窒化物半導体基板の<1−100>方向または<11−20>方向に平行であることが好ましい。
【0012】
窒化物半導体下地層は、AlxGa1-xN(0.1≦x≦0.15)またはInxGa1-xN(0.1≦x≦0.18)を含むことが好ましい。また、量子井戸層は、As、P、およびSbの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0013】
上述のような窒化物半導体発光素子は、光学装置および発光装置において好ましく利用され得る。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下において本発明による種々の実施形態を説明するに際して、いくつかの用語の意味を予め明らかにしておく。
【0015】
「窒化物半導体基板」とは、AlxGayInzN(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1;x+y+z=1)を含む基板を意味する。ただし、この窒化物半導体基板に含まれる窒素元素の約10%以下が、As、P、およびSbの少なくともいずれかで置換されてもよい(ただし、基板の六方晶系が維持されることが前提)。また、窒化物半導体基板は、Si、O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、Mg、およびBeの少なくともいずれかの不純物が添加されてもよい。窒化物半導体基板がn型導電性を有するための不純物としては、これらの不純物のうちでも、Si、O、およびClが特に好ましい。その不純物濃度は、5×1017〜5×1018/cm3の範囲内にあることが好ましい。
【0016】
「成長抑制膜」とは、その上に窒化物半導体層がエピタキシャル成長しにくい膜を意味する。たとえば、成長抑制膜は誘電体膜で形成することができ、より具体的にはSiO2、SiNx、Al2O3、またはTiO2で形成することができる。
【0017】
「窓部」とは、成長抑制膜からなるマスクパターンによって被覆されることなく下地が露出されている部分を意味する。
【0018】
「マスク基板」とは、窒化物半導体基板上に本発明による種々の異なる幅を有する成長抑制膜からなるマスクパターンが形成された基板を意味する(図6(a)参照)。
【0019】
「窒化物半導体下地層」とは、マスク基板のマスクパターンおよび窓部を覆う窒化物半導体膜を意味し、AlxGayInzN(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1;x+y+z=1)を含んでいる。ただし、窒化物半導体基板の場合と同様に、この窒化物半導体下地層に含まれる窒素元素の約10%以下が、As、P、およびSbの少なくともいずれかで置換されてもよい。また、この下地層には、Si、O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、Mg、およびBeの少なくともいずれかの不純物が添加されてもよい。窒化物半導体下地層がn型導電性を有するための不純物としては、これらの不純物のうちでも、Si、O、およびClが特に好ましい。
【0020】
「膜付きマスク基板」とは、マスク基板上のマスクパターンと窓部とを覆う窒化物半導体下地層を含む改良基板を意味する(図6(b)参照)。
【0021】
「発光層」とは、1以上の量子井戸層またはそれと交互に積層された複数の障壁層を含み、発光作用を生じさせ得る層を意味する。ただし、単一量子井戸構造の発光層は、1つの井戸層のみから構成されるか、または障壁層/井戸層/障壁層の積層から構成される。もちろん、多重量子井戸構造の発光層は、交互に積層された複数の井戸層と複数の障壁層を含んでいる。
【0022】
「発光素子構造」とは、発光層に加えて、それを挟むn型層とp型層をさらに含む構造を意味する。
【0023】
[実施形態1]
本発明においては、窒化物半導体基板上に成長抑制膜からなるマスクとこのマスクによって被覆されていない窓部とを有するマスク基板を覆う窒化物半導体下地層上に窒化物半導体発光素子構造が形成され、1つの窒化物半導体素子内でマスク幅および/または窓部幅が適切に変えられることによって、発光寿命や発光強度などの改善された窒化物半導体発光素子を提供し、かつその発光素子に発生しやすいクラックを抑制することができる。
【0024】
マスク幅と窓部幅が1つの窒化物半導体発光素子内で適切に変えられることによって本発明の効果が得られるのは、マスク基板を構成している基板が窒化物半導体である場合に限られる。なぜならば、窒化物半導体基板以外の基板(以後、異種基板と呼ぶ)を用いたマスク基板上に成長させられた窒化物半導体下地層は、窒化物半導体基板が用いられた場合に比べて強い応力歪みを受けるからである。この理由は、異種基板と窒化物半導体下地層との間の熱膨張係数差が窒化物半導体基板と窒化物半導体下地層との場合に比べて非常に大きいからである。したがって、窒化物半導体基板が異種基板で置換された場合には、本発明による適切な異なる幅を有するマスクおよび窓部が形成されたとしても、マスク基板を被覆する窒化物半導体膜(窒化物半導体下地層上に形成された発光素子構造をも含む)中の結晶歪みは、本発明の場合と同様には緩和され得ない。また、発光素子の歩留りを向上させるクラック抑制効果、しきい値電流密度の低減効果、およびしきい値電圧の低減効果なども、本発明の場合とは同様には得られない。
【0025】
(異なるマスク幅について)
マスク幅が種々に変えられることの効果が、図1の模式的断面図を参照しつつ説明される。この図に示された窒化物半導体レーザ素子においては、窒化物半導体基板上に成長抑制膜からなるストライプ状の周期的な複数のマスクAを含むマスクA群とこれに類似する複数のマスクBを含むマスクB群とが形成され、これらのマスク群を覆うように窒化物半導体膜の下地層、n型層、発光層、p型層などが順次結晶成長させられた。マスクB群はマスクA群の両側に形成され、レーザ素子のリッジストライプ部はマスクAの上方に形成された。なお、隣接するマスクAの間の窓部の幅を窓部A幅と呼び、同様に、隣接するマスクBの間の窓部の幅を窓部B幅と呼ぶこととする。
【0026】
図1では種々に異なるマスク幅の効果を検討するために、窓部A幅と窓部B幅が同じ幅に設定された。ただし、マスクB幅は、マスクA幅よりも狭くされた。なお、図1の窒化物半導体レーザ素子は、後述の実施形態2の場合と同様にして作製され得る。
【0027】
本発明者らの検討結果によれば、窒化物半導体レーザ素子のリッジストライプ部が1つのマスクAの上方に形成されていてかつそのマスクA幅の中央線(図1中のマスクA中央線)がリッジストライプ部を通らないように形成された場合に、レーザ発振寿命が長くなる傾向にあった。さらに詳細に調べたところ、リッジストライプ部がマスクAの上方に形成されていて、そのマスクA中央線から近い方のリッジストライプ部側端までの距離が約2μm以上になった場合に、顕著にレーザ発振寿命が延び始めた。特にリッジストライプ部がマスクAの領域内の上方に完全に含まれている場合に発振寿命が最も長くなり、マスクAと窓部Aとにまたがる領域内の上方にリッジストライプ部が含まれている場合でも発振寿命が改善された。マスクAと窓部Aとにまたがる領域内の上方にリッジストライプ部が含まれている場合には、しきい値電流密度が数%程度減少する点において好ましい。レーザ発振寿命が延びた理由としては、マスク上方における窒化物半導体層の結晶歪みが窓部上方に比べて緩和されるためであると考えられる。
【0028】
レーザ発振の長寿命化の観点からは、マスクA幅は10μm以上で20μm以下であることが好ましく、13μm以上で20μm以下であることがより好ましい。マスクA幅が10μmよりも小さくなれば、レーザ発振寿命がそれほど顕著に延びなくなり得る。マスクA幅が13μm以上になれば、レーザ発振寿命が顕著に延び始める(たとえば、レーザ出力30mWと雰囲気温度60℃の条件の下で、レーザ発振寿命は約15000時間以上)。他方、マスクA幅が20μmを超えれば、徐々にレーザ発振寿命が低下し始めた。この理由としては、もともとマスク幅が10μm以上で20μm以下の範囲内であればそのマスク上方における窒化物半導体層の結晶軸配向が基板の主面に垂直な方向から横方向に多少傾いていたことから、おそらく、マスク幅が20μmを超えればその結晶軸配向の傾きがレーザ発振において無視できなくなるほど大きくなるためではないかと考えられる。また、マスク幅が20μmを超えれば、マスク上方での横方向結晶成長が不十分になって、マスク中央の上方にボイドが形成されやすくなる。
【0029】
上述のマスクA幅の検討結果に従い、10〜20μmの範囲内のマスクA幅に設定されたマスクA群のみが窒化物半導体基板上に形成され、これを利用して窒化物半導体レーザ素子が作成された。しかしながら、このような窒化物半導体レーザ素子においては、その素子不良率が高かった。本発明者らが不良素子チップを詳細に調べたところ、リッジストライプ部を横切るようにしてクラックが多数発生していた。
【0030】
従来では、GaN基板上に窒化物半導体レーザ素子が形成された場合、そのレーザ素子中にほとんどクラックは発生しないと思われていた。しかしながら、実際にGaN基板上にマスクA群のみを形成し、これを覆うように形成された窒化物半導体下地層上に窒化物半導体レーザ素子が成長させられた場合には、そのレーザ素子には多くのクラックが発生していた。この理由としては、窒化物半導体レーザ素子が種々の異なる層の積層構造からなるからであると考えられる(たとえば、AlGaN層はGaN層に比べて格子定数が小さく、InGaN層はGaN層に比べて格子定数が大きい)。さらに、現在の技術で得られるGaN基板ではその基板自体に残留歪みが潜在していることも影響していると考えられる。
【0031】
そこで、本発明では、リッジストライプ部の下方付近に配置されるマスクA群の両側にマスクB群が配置される。ここで、マスクB群はマスクA群と同一の窒化物半導体レーザ素子チップ内に設けられ(図1参照)、マスクB幅はマスクA幅よりも狭く設定される。こうすることによって、レーザ発振の長寿命化を実現しつつ、リッジストライプ部を横切るクラックの発生を抑制することができる。
【0032】
本発明におけるクラック抑制効果は、図2を参照して詳細に説明される。この図においては、窒化物半導体基板上にマスクA群とB群が形成され、これらのマスク群を覆うように窒化物半導体膜の下地層が結晶成長させられた膜付きマスク基板の上面図と側面図が示されている。ここで、マスクB群はマスクA群の両側に配置され、マスクB幅はマスクA幅よりも狭く設定されている。また、図2中に示されたマスクB1、マスクB2、およびマスクB3はマスクB群に属していて、説明の便宜上から番号によって識別されている。さらに、図2に示された領域Aとは、マスクA群の上方に積層された窒化物半導体下地層の範囲を表わしている。
【0033】
図2を参照して、窒化物半導体下地層の表面に発生したクラックaは、マスクB1の幅のほぼ中央上方(図2中の破線a)で進行が阻止された。クラックbはマスクB1を横切ってマスクB2の近傍まで侵入していたが、マスクB2の幅のほぼ中央上方(図2中の破線b)で進行を阻止された。同様に、クラックcについても、マスクB3の幅のほぼ中央上方(図2中の破線c)で進行が阻止された。以上のことから、図2中の領域Aの外側から侵入してくるクラックの進行がマスクB群によって抑制され、結果的に領域A内にリッジストライプ部が形成されれば、窒化物半導体レーザ素子の不良率が低減され得る。
【0034】
この理由としては、レーザ発振の長寿命化の観点からマスク幅を自由に狭くできないマスクAの代わりに、マスクB幅がマスクA幅よりも狭くされることによって、以下の効果が得られるためであると考えられる。第1に、マスクB幅がマスクA幅よりも狭くなることによって、マスクB上方における窒化物半導体層中の結晶軸配向は、マスクA上方におけるそれよりも傾きが小さくなることが考えられる。第2に、マスク幅が狭くなることによって、マスクの上方に発生しやすいボイドが小さくなることが考えられる。
【0035】
他方、マスク上方の窒化物半導体層の結晶軸配向が悪くなるか、またはマスク上方に大きなボイドが発生すれば、そのマスクは新たなクラック発生源となり得る。
【0036】
本発明者らの検討結果によれば、上述のクラック抑制効果は、マスクB幅が2μm以上で10μm以下のときに最も効果的であった。ただしマスクB幅は、マスクA幅よりも狭くしなければ、クラック抑制の効果のためにマスクB群を設ける意味がない。
【0037】
以上において異なるマスク幅の効果に関してリッジストライプ構造を有する窒化物半導体レーザ素子チップ(図8(a)参照)を例にして説明されたが、電流阻止層を有する窒化物半導体レーザ素子チップ(図8(b)参照)においても異なるマスク幅の効果は同様である。電流阻止層を有する窒化物半導体レーザ素子チップの場合、前述のリッジストライプ部は2つの電流阻止層に挟まれた部分に相当する(図8参照)。また、より一般的な表現をすれば、リッジストライプ部および2つの電流阻止層に挟まれた部分は、p型層またはn型層を介して実質的に発光層中に電流が注入されて発光に寄与する電流狭窄部分に相当する。
【0038】
なお、窒化物半導体基板上において、マスクA群とマスクB群の2種類のマスク群に限られず、望まれる場合には3種類以上のマスク群を含んでもよいことは言うまでもない。
【0039】
(異なる窓部幅について)
窓部幅が種々に変えられたことの効果が、図3と図4の模式的断面図を参照しつつ説明される。図3に示された窒化物半導体レーザ素子チップにおいては、n電極とp電極が窒化物半導体基板に関して同一面側に形成されている。その窒化物半導体基板上には、マスクA群とマスクB群が形成され、これらのマスク群を被覆するように窒化物半導体膜の下地層、n型層、発光層、p型層などが順次に結晶成長させられる。マスクA群は、リッジストライプ部の下方付近に配置され、マスクB群はそのマスクA群の両側に配置される。
【0040】
なお、図3では種々に異なる窓部幅の効果を検討するために、マスクA幅とマスクB幅が10〜20μmの範囲内で同じ幅に設定された。ただし、窓部B幅は、窓部A幅よりも広くされた。なお、図3の窒化物半導体レーザ素子チップは、後述の実施形態2の場合と同様にして作製され得る。
【0041】
本発明者らの検討結果によれば、リッジストライプ部の下方のマスクA群における窓部A幅が狭ければ狭いほど、レーザ発振が長寿命化する傾向にあった。この理由としては、窓部幅の上方において結晶成長した窒化物半導体層は、マスク上方におけるそれよりも結晶歪みの緩和効果が小さいためであると考えられる。すなわち、窓部幅を狭くすることによって単位面積当りのマスク占有率が高くなり、これに伴って、結晶歪が緩和された窒化物半導体層領域を広くできるからであると考えられる。レーザ発振の長寿命化の観点からさらに詳細に調べたところ、窓部A幅は2μm以上で10μm以下であることが好ましく、2μm以上で6μm以下であることがより好ましかった。すなわち、窓部A幅が10μm以下になればレーザ発振寿命が延び始め、さらに6μm以下になれば顕著に発振寿命が延び始めた(たとえば、レーザ出力30mWと雰囲気温度60℃の条件の下で、レーザ発振寿命は約15000時間以上)。他方、窓部A幅が2μmよりも狭くなればマスクを被覆する窒化物半導体下地層を厚く成長させても、完全にマスクを平坦に被覆することが困難になり始める。
【0042】
上述の窓部A幅の検討結果に従い、2〜10μmの範囲内の窓部A幅に設定されたマスクA群のみが窒化物半導体基板上に形成され、これを利用して窒化物半導体レーザ素子が作製された。しかしながら、このような窒化物半導体レーザ素子においては、そのしきい値電流密度が高かった。
【0043】
そこで本発明では、リッジストライプ部の下方付近に配置されたマスクA群の両側にマスクB群が配置される。ここで、マスクB群はマスクA群と同一の窒化物半導体レーザ素子チップ内に設けられ(図3参照)、前述のように窓部B幅は窓部A幅よりも広く設定される。
【0044】
こうすることによって、レーザ発振の長寿命化を実現しつつ、かつレーザ素子のしきい値電流密度を下げ得ることが見出された。本発明者らの詳細な検討の結果では、窓部B幅は5μm以上で40μm以下であることが好ましく、11μm以上で30μm以下であることがより好ましかった。ただし、窓部B幅が窓部A幅よりも広い関係は維持されるべきである。窓部B幅が約5μm以上になればしきい値電流密度の低減効果が現われ始め、11μm以上ではほぼ3%以上のしきい値電流密度の低減効果が得られ始めた。窓部B幅の上限値については、しきい値電流密度の観点からは特に制約はなく、広いほど好ましかった。しかしながら、窓部B幅が広くなりすぎれば、窒化物半導体レーザ素子の結晶歪みが低減されにくくなるので、結晶歪みの緩和の観点からは40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましかった。
【0045】
次に、窒化物半導体基板の裏面側にn電極が形成されかつp型層上にp電極が形成された窒化物半導体レーザ素子チップが、図4を参照して説明される。この窒化物半導体レーザ素子においては、窒化物半導体基板上にマスクA群とマスクB群が形成され、これらのマスク群を被覆するように窒化物半導体膜の下地層、n型層、発光層、p型層などが順次に結晶成長させられる。リッジストライプ部はマスクA群の上方に形成され、マスクB群はマスクA群の両側に配置されている。
【0046】
なお、図4では種々に異なる窓部幅の効果を検討するために、マスクA幅とマスクB幅が10〜20μmの範囲内で同じ幅に設定された。ただし、窓部B幅は、窓部A幅よりも広くされた。図4の窒化物半導体レーザ素子は、後述の実施形態2の場合と同様に作製され得る。
【0047】
前述と同様に、レーザ発振の長寿命化の観点からは、リッジストライプ部の下方に位置するマスクA群の窓部A幅は2μm以上で10μm以下であることが好ましく、2μm以上で6μm以下であることがより好ましかった。
【0048】
本発明者らの検討結果によれば、図4におけるように窓部A幅よりも広い窓部B幅を有するマスクB群をマスクA群の両側に配置したところ、マスクA群のみを含む場合に比べて窒化物半導体レーザ素子におけるレーザ発振のしきい値電圧が約0.3〜1V程度低減することが見出された。
【0049】
本発明者らの詳細な検討結果によれば、窓部B幅は前述と同様に5μm以上で40μm以下であることが好ましく、11μm以上で30μm以下であることがさらに好ましかった。ただし、窓部B幅は窓部A幅よりも広い関係は維持される。窓部B幅が約5μm以上になればしきい値電圧の低減効果が現われ始め、11μm以上ではほぼ0.5V以上の低減効果が得られ始めた。窓部B幅の上限値については、しきい値電圧の観点からは特に制約はなく、広いほど好ましい。しかしながら、窓部B幅が広くなりすぎれば、窒化物半導体レーザ素子の結晶歪みが低減されにくくなるので、結晶歪みの緩和の観点からは40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましかった。
【0050】
以上では、異なる窓部幅の効果に関してリッジストライプ構造を有する窒化物半導体レーザ素子チップ(図8(a)参照)を例にして説明されたが、電流阻止層を有する窒化物半導体レーザ素子チップ(図8(b)参照)においても異なる窓部幅の効果は同様である。また、窒化物半導体基板上において、マスクA群とマスクB群の2種類のマスク群に限られず、望まれる場合には3種類以上のマスク群を含んでいてもよいことは言うまでもない。さらに、種々の異なる窓部幅の特徴が前述の種々に異なるマスク幅の特徴と組合されてもよいことも言うまでもない。
【0051】
(ストライプ状マスクの長手方向について)
主面として{0001}C面を有する窒化物半導体基板上に形成されたストライプ状マスクの長手方向は、<1−100>方向に平行であることが最も好ましく、<11−20>方向に平行であることが次に好ましかった。これらの特定結晶方向に関するマスクの長手方向は、{0001}C面内で±5°程度の開き角度を有していても実質的な影響を生じなかった。
【0052】
窒化物半導体基板の<1−100>方向に沿ってマスクが形成されることの利点は、クラックの抑制効果が非常に大きいことである。この方向に沿って形成されたマスク上に窒化物半導体膜が被覆されれば、その窒化物半導体膜はマスク上で主に{11−20}ファセット面を形成しながらそのマスクを被覆した(図5(a)参照)。この{11−20}ファセット面は基板の主面に対して垂直であって、かつマスクはエピタキシャル成長を生じにくい成長抑制膜で形成されているので、図5(a)に示された窒化物半導体領域Aと窒化物半導体領域Bは、互いの{11−20}ファセット面のみで接触してマスクを被覆した。したがって、図5(a)の窒化物半導体領域Aで発生したクラックは、容易には窒化物半導体領域B内に伝播し得なかった。この<1−100>方向の特徴が、マスクB群の特徴と組合せられることによって、より一層のクラック抑制効果が発揮され得る。
【0053】
他方、窒化物半導体基板の<11−20>方向に沿ってマスクが形成されることの利点は、マスクが窒化物半導体膜で覆われるときにそのマスク上方領域における窒化物半導体膜の表面モフォロジーが良好になることである。この方向に沿って形成されたマスク上に窒化物半導体膜が被覆されれば、その窒化物半導体膜はマスク上で主に{1−101}ファセット面を形成しながらそのマスクを被覆した。この{1−101}ファセット面は非常に平坦で、このファセット面と結晶成長面とが接するエッジ部分も非常に急峻であった(図5(b)参照)。このことが、マスク上方を被覆した窒化物半導体膜の表面モフォロジーが良好になり得る要因ではないかと考えられる。窒化物半導体膜からなる下地層の表面モフォロジーが良好であれば、たとえばマスクA群の上方に形成されたリッジストライプ部を有する窒化物半導体レーザ素子チップの素子不良率が低減され得る。
【0054】
(窒化物半導体下地層について)
マスク基板を被覆する窒化物半導体膜からなる下地層は、Si、O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、MgおよびBeの不純物群のうちで1種以上を含むことができる。この下地層がGaN膜、AlGaN膜またはInGaN膜であれば、以下の効果が得られる。
【0055】
窒化物半導体下地層がGaN膜であることは、以下の点において好ましい。すなわち、GaN膜は二元混晶であるので、結晶成長の制御性が良好である。また、GaN膜の表面マイグレーション長はAlGaN膜に比べて長く、InGaN膜に比べて短いので、マスクを完全かつ平坦に被覆するように適度な横方向成長を得ることができる。ここで、横方向成長とは、基板の主面に平行な方向の成長を意味する。この横方向成長が促進されれば、マスク上方を被覆する窒化物半導体膜中の結晶歪みが緩和され得る。窒化物半導体下地層として利用されるGaN膜の不純物濃度は1×1017/cm3以上で5×1018/cm3以下であることが好ましい。このような濃度範囲で不純物を添加すれば、窒化物半導体下地層の表面モフォロジーが良好になって、発光層の層厚が均一化され、発光素子特性が向上し得る。
【0056】
窒化物半導体下地層がAlGaN膜であることは、以下の点において好ましい。すなわち、AlGan膜がマスク基板を被覆する場合にはマスク上方にボイドが形成されにくく、クラックの発生率が低減された。AlGaN膜においてはAlが含まれているので、GaN膜やInGaN膜に比べて表面マイグレーション長が短く、これはAlGaN膜がマスクに付着しやすいことを意味する。このことが、マスク上でボイドを生じにくくさせていると考えられる。
【0057】
さらに、AlGaN膜について調べたところ、AlxGa1-xN膜のAl組成比xは0.01以上で0.15以下であることが好ましく、0.01以上で0.07以下であることがより好ましかった。Al組成比xが0.01よりも小さければボイドの発生を抑制することが難しくなり、Al組成比xが0.15よりも大きくなれば前述の表面マイグレーション長が短くなりすぎて(横方向成長が不十分)、マスク上方の結晶歪みの緩和効果が得られにくくなる可能性がある。なお、AlGaN膜に限られず、この膜と同様の効果は、窒化物半導体下地層にAlが含まれていれば得られる。また、窒化物半導体下地層として利用されるAlGaN膜の不純物濃度は、3×1017/cm3以上で5×1018/cm3以下であることが好ましい。このような濃度範囲でAlと同時に不純物が添加されていれば、窒化物半導体下地層の表面マイグレーション長が適度に短くなって好ましい。
【0058】
窒化物半導体下地層がInGaN膜であることは、以下の点において好ましい。すなわち、InGaN膜がマスク基板を被覆すれば、リッジストライプ部の形成位置によって、レーザ発振寿命が劇的に短くなることはなかった。InGaN膜においては、Inが含まれているので、GaN膜やAlGaN膜に比べて弾力性がある。したがって、InGaN膜はマスクを覆って窒化物半導体基板からの結晶歪みを窒化物半導体膜全体に拡散させ、マスク上方の結晶歪みと窓部上方の結晶歪みとの間の差異を緩和させる働きを有すると考えられる。
【0059】
さらにInGaN膜について調べたところ、InxGa1-xN膜のIn組成比xは0.01以上で0.18以下であることが好ましく、0.01以上で0.1以下であることがさらに好ましかった。In組成比xが0.01よりも小さければInを含むことによる弾力性の効果が得られにくくなる可能性があり、In組成比xが0.18よりも大きくなればInGaN膜の結晶性が低下してしまう可能性がある。なお、InGaN膜に限らず、この膜と同様の効果は、窒化物半導体下地層にInが含まれていれば得られる。また、窒化物半導体下地層として利用されるInGaN膜の不純物濃度は、1×1017/cm3以上で4×1018/cm3以下であることが好ましい。このような濃度範囲でInと同時に不純物が添加されていれば、窒化物半導体下地層の表面モフォロジーが良好であって、かつ弾性力を保有し得るので好ましい。
【0060】
(窒化物半導体下地層の膜厚について)
マスク基板が窒化物半導体膜の下地層で完全に被覆されるためには、その被覆膜厚は約2μm以上で30μm以下であることが好ましい。ここで、被覆膜厚とは、平坦な窒化物半導体基板上に直接窒化物半導体膜を成長させたときの膜厚に対応する厚さを意味する。被覆膜厚が2μmよりも薄くなれば、マスク基板に形成されたマスク幅や窓部幅にも依存するが、窒化物半導体膜でマスク基板を完全かつ平坦に被覆することが困難になり得る。他方、被覆膜厚が30μmよりも厚くなれば、マスク基板上の横方向成長よりも垂直方向(基板の主面に対して垂直方向)の成長の方が次第に顕著になり、結晶歪みの緩和効果が十分に発揮されにくくなる。
【0061】
[実施形態2]
実施形態2では、膜付きマスク基板上に形成されたリッジストライプ構造を有する窒化物半導体レーザ素子チップの作製方法が説明される。なお、本実施形態において特には言及されていない事項に関しては、前述の実施形態1の場合と同様である。
【0062】
(膜付きマスク基板の形成方法)
図6の模式的断面図において、GaN基板101上に形成されたマスクを含むマスク基板(図6(a))と、このマスク基板上にn型Al0.05Ga0.95N膜102が被覆された膜付きマスク基板(図6(b))が表わされている。このようなマスク基板は、以下のようにして形成され得る。
【0063】
まず、主面方位が(0001)面であるGaN基板101の表面に、SiO2からなる成長抑制膜が、電子ビーム蒸着法(EB法)またはスパッタリング法によって0.1μmの厚さに形成された。その後、リソグラフィ技術を用いて、GaN基板101の<1−100>方向に沿って、ストライプ状のマスクが形成された。これらのストライプ状のマスクは、マスクAとマスクBの2種類を含んでいる。マスクA群は、13μmのマスクA幅と7μmの窓部A幅で形成された。マスクB群は、5μmのマスクB幅と15μmの窓部B幅で形成された。このようにして、本実施形態におけるマスク基板が完成させられた(図6(a))。
【0064】
このマスク基板は、十分に有機洗浄されてからMOCVD(有機金属気相成長法)装置内に搬送された。そして、マスク基板上には、V族元素用原料のNH3(アンモニア)およびIII族元素用原料のTMGa(トリメチルガリウム)とTMAl(トリメチルアルミニウム)が供給され、さらにこれらの原料に不純物としてSiH4(Si不純物濃度1×1018/cm3)が添加されて、1050℃の結晶成長温度の条件の下で厚さ6μmのn型Al0.05Ga0.95N膜102が積層された。このようにして、本実施形態における膜付きマスク基板100が完成させられた(図6(b))。
【0065】
なお、成長抑制膜としては、SiO2以外に、SiNx、Al2O3、またはTiO2などで形成されてもよい。また、ストライプ状のマスクの長手方向は、GaN基板101の<1−100>方向の代わりに、<11−20>方向に沿って形成されてもよい。さらに、本実施形態では窒化物半導体基板として(0001)主面を有するGaN基板101が用いられたが、他の面方位および他の窒化物半導体基板が用いられてもよい。その基板の主面方位に関しては、C面{0001}、A面{11−20}、R面{1−102}、M面{1−100}、または{1−101}面などを好ましく用いることができる。また、これらの面方位から2度以内のオフ角度の主面を有する基板であれば、その表面モフォロジーが良好である。他の窒化物半導体基板としては、窒化物半導体レーザの場合には垂直横モードの単峰化のためにはクラッド層よりも屈折率の低い層がそのクラッド層の外側に接していることが好ましく、たとえばAlGaN基板が好ましく用いられ得る。
【0066】
(結晶成長)
図7は膜付きマスク基板上に成長させられた窒化物半導体レーザ素子のチップを表わしている。この窒化物半導体レーザ素子は、GaN基板101上のマスクAとBおよびn型Al0.05Ga0.95N下地層102を含む膜付きマスク基板100、n型In0.07Ga0.93Nクラック防止層103、n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層104、n型GaN光ガイド層105、発光層106、p型Al0.2Ga0.8Nキャリアブロック層107、p型GaN光ガイド層108、p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層109、p型GaNコンタクト層110、n電極111、p電極112、SiO2誘電体膜113、およびn型電極パッド114を含んでいる。
【0067】
このような窒化物半導体レーザ素子の作製において、まず、MOCVD装置内で膜付きマスク基板100上において、V族元素用原料のNH3とIII族元素用原料のTMGaまたはTEGa(トリエチルガリウム)に、III族元素用原料のTMIn(トリメチルインジウム)と不純物としてのSiH4(シラン)が加えられ、800℃の結晶成長温度でn型In0.07Ga0.93Nクラック防止層103が厚さ40nmに成長させられた。次に、基板温度が1050℃に上げられ、III族元素用原料のTMAlまたはTEAl(トリエチルアルミニウム)が用いられて、厚さ0.8μmのn型Al0.1Ga0.9Nクラッド層104(Si不純物濃度1×1018/cm3)が成長させられ、続いてn型GaN光ガイド層105(Si不純物濃度1×1018/cm3)が厚さ0.1μmに成長させられた。
【0068】
その後、基板温度が800℃に下げられ、厚さ8nmのIn0.01Ga0.99N障壁層と厚さ4nmのIn0.15Ga0.85N井戸層とが交互に積層された発光層(多重量子井戸構造)106が形成された。この実施形態では、発光層106は障壁層で開始して障壁層で終了する多重量子井戸構造を有し、3層(3周期)の量子井戸層を含んでいた。また、障壁層と井戸層の両方に、Si不純物が1×1018/cm3の濃度で添加された。なお、障壁層と井戸層との間または井戸層と障壁層との間に、1秒以上で180秒以内の結晶成長中断期間が挿入されてもよい。こうすることによって、各層の平坦性が向上し、発光スペクトルの半値幅が減少するので好ましい。
【0069】
発光層106にAsが添加される場合にはAsH3(アルシン)またはTBAs(ターシャリブチルアルシン)を用い、Pが添加される場合にはPH3(ホスフィン)またはTBP(ターシャリブチルホスフィン)を用い、そしてSbが添加される場合にはTMSb(トリメチルアンチモン)またはTESb(トリエチルアンチモン)を用いればよい。また、発光層が形成される際に、N原料として、NH3以外にN2H4(ジメチルヒドラジン)が用いられてもよい。
【0070】
次に、基板が再び1050℃まで昇温されて、厚さ20nmのp型Al0.2Ga0.8Nキャリアブロック層107、厚さ0.1μmのp型GaN光ガイド層108、厚さ0.5μmのp型Al0.1Ga0.9Nクラッド層109、および厚さ0.1μmのp型GaNコンタクト層110が順次に成長させられた。p型不純物としては、Mg(EtCP2Mg:ビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム)が5×1019/cm3〜2×1020/cm3の濃度で添加された。p型GaNコンタクト層110のp型不純物濃度は、p電極112との界面に近づくに従って増大させることが好ましい。こうすることによって、p電極との界面におけるコンタクト抵抗が低減する。また、p型不純物であるMgの活性化を妨げているp型層中の残留水素を除去するために、p型層成長中に微量の酸素が混入されてもよい。
【0071】
このようにして、p型GaNコンタクト層110が成長させられた後、MOCVD装置のリアクタ内の全ガスが窒素キャリアガスとNH3に変えられ、60℃/分の冷却速度で基板温度が冷却された。基板温度が800℃に冷却された時点でNH3の供給が停止され、5分間だけその基板温度に保持されてから室温まで冷却された。この基板の保持温度は650℃から900℃の間にあることが好ましく、保持時間は3分以上で10分以下であることが好ましかった。また、室温までの冷却速度は、30℃/分以上であることが好ましい。こうして形成された結晶成長膜がラマン測定によって評価された結果、従来のp型化アニールが行なわれていなくても、その成長膜は既にp型化の特性を示していた(すなわち、Mgが活性化していた)。また、p電極112を形成したときのコンタクト抵抗も低減していた。これに加えて従来のp型化アニールが組合わされれば、Mgの活性化率がさらに向上して好ましかった。
【0072】
本実施形態におけるIn0.07Ga0.93Nクラック防止層103は、In組成比が0.07以外であってもよいし、InGaNクラック防止層が省略されてもよい。しかしながら、クラッド層とGaN基板との格子不整合が大きくなる場合には、InGaNクラック防止層が挿入される方が好ましい。
【0073】
本実施形態の発光層106は、障壁層で始まり障壁層で終わる構成であったが、井戸層で始まり井戸層で終わる構成であってもよい。また、発光層中の井戸層数は、前述の3層に限られず、10層以下であればしきい値電流値が低くなって室温連続発振が可能であった。特に、井戸層数が2以上で6以下のときにしきい値電流密度が低くなって好ましかった。
【0074】
本実施形態の発光層106においては、井戸層と障壁層の両方にSiが1×1018/cm3の濃度で添加されたが、Siが添加されなくてもよい。しかしながら、Siが発光層に添加された方が、発光強度が強くなった。発光層に添加される不純物としては、Siに限られず、O、C、Ge、Zn、およびMgの少なくともいずれかが添加されてもよい。また、不純物の総添加量としては、約1×1017〜1×1019/cm3程度が好ましかった。さらに、不純物が添加される層は井戸層と障壁層の両方であることに限られず、これらの片方の層のみに不純物が添加されてもよい。
【0075】
本実施形態のp型Al0.2Ga0.8Nキャリアブロック層107は、Al組成比が0.2以外であってもよいし、このキャリアブロック層が省略されてもよい。しかしながら、キャリアブロック層を設けたほうがしきい値電流密度が低くなった。これは、キャリアブロック層107が発光層106内にキャリアを閉じ込める働きがあるからである。キャリアブロック層のAl組成比を高くすることは、これによってキャリアの閉じ込めが強くなるので好ましい。逆に、キャリアの閉じ込めが保持される範囲内でAl組成比を小さくすれば、キャリアブロック層内のキャリア移動度が大きくなって電気抵抗が低くなるので好ましい。
【0076】
本実施形態では、p型クラッド層109とn型クラッド層104として、Al0.1Ga0.9N結晶が用いられたが、そのAl組成比は0.1以外であってもよい。そのAlの混晶比が高くなれば発光層106とのエネルギギャップ差と屈折率差が大きくなり、キャリアや光が発光層内に効率よく閉じ込められ、レーザ発振しきい値電流密度の低減が可能になる。逆に、キャリアや光の閉じ込めが保持される範囲内でAl組成比を小さくすれば、クラッド層内でのキャリア移動度が大きくなり、素子の動作電圧を低くすることができる。
【0077】
AlGaNクラッド層の厚みは0.7μm〜1.5μmの範囲内にあることが好ましく、このことによって垂直横モードの単峰化と光閉じ込め効率が増大し、レーザの光学特性の向上とレーザしきい値電流密度の低減が可能になる。
【0078】
クラッド層はAlGaN3元混晶に限られず、AlInGaN、AlGaNP、AlGaNAsなどの4元混晶であってもよい。また、p型クラッド層は、電気抵抗を低減するために、p型AlGaN層とp型GaN層を含む超格子構造、またはp型AlGaN層とp型InGaN層を含む超格子構造を有していてもよい。
【0079】
本実施形態ではMOCVD装置による結晶成長法が例示されたが、分子線エピタキシー法(MBE)、ハイドライド気相成長法(HVPE)などが用いられてもよい。
【0080】
(チップ化工程)
前述の結晶成長で形成されたエピウエハ(膜付きマスク基板上に多層の窒化物半導体層がエピタキシャル成長させられたウエハ)がMOCVD装置から取出され、レーザ素子チップに加工される。ここで、窒化物半導体レーザ素子層が形成されたエピウエハの表面は平坦であり、マスク基板に含まれるマスクと窓部は窒化物半導体下地層と発光素子構造層で完全に覆われていた。
【0081】
n電極111は、ドライエッチング法を利用してエピウエハの表側からn型Al0.05Ga0.95N膜102を露出させてから、Hf/Alの順序の積層で形成された。このn電極111上にはn電極パッド114としてAuが蒸着された。n電極材料としては、Ti/Al、Ti/Mo、またはHf/Auなどの積層が用いられてもよい。n電極にHfが用いられれば、そのn電極のコンタクト抵抗が下がるので好ましい。マスク基板は、窒化物半導体で形成されているので、その裏面側上にn電極が形成されてもよい。ただし、その場合には窒化物半導体基板がn型の導電性を有するように不純物がドープされる必要がある。
【0082】
p電極部分は、マスクの長手方向に沿ってストライプ状にエッチングされ、これによってリッジストライプ部(図7参照)が形成された。このリッジストライプ部は、マスクAの上方においてマスクA幅の中央(図7のマスクA中央線)からそのマスク幅方向に2μm離れた位置に1.7μmの幅で形成された。その後、SiO2誘電体膜113が蒸着され、p型GaNコンタクト層110の上面がこの誘電体膜から露出されて、その上にp電極112がPd/Mo/Auの積層として蒸着されて形成された。p電極としては、Pd/Pt/Au、Pd/Au、またはNi/Auなどの積層が用いられてもよい。
【0083】
最後に、エピウエハはリッジストライプの長手方向に対して垂直方向にへき開され、共振器長500μmのファブリ・ペロー共振器が作製された。共振器長は、一般に300μmから1000μmの範囲内であることが好ましい。ストライプ状マスクの長手方向が<1−100>方向に沿って形成された共振器のミラー端面は、窒化物半導体結晶のM面{1−100}になる。ミラー端面を形成するためのへき開とレーザチップの分割は、膜付きマスク基板100の裏面側からスクライバを用いて行なわれた。ただし、へき開はウエハの裏面全体を横断してスクライバによる罫書き傷がつけられてからへき開されるのではなく、ウエハの一部、たとえばウエハの両端のみにスクライバによる罫書き傷がつけられてへき開された。これにより、素子端面の急峻性やスクライブによる削りかすがエピ表面に付着しないので、素子歩留まりが向上する。
【0084】
なお、レーザ共振器の帰還手法としては、一般に知られているDFB(分布帰還)、DBR(分布ブラッグ反射)なども用いられ得る。
【0085】
ファブリ・ペロー共振器のミラー端面が形成された後には、そのミラー端面にSiO2とTiO2の誘電体膜を交互に蒸着し、70%の反射率を有する誘電体多層反射膜が形成された。この誘電体多層反射膜としては、SiO2/Al2O3などの多層膜を用いることもできる。
【0086】
上述の方法で実際に作製された窒化物半導体レーザ素子チップの断面観察を行なったところ、図7に示されているように、マスクAとマスクBが同じレーザ素子チップ内に形成されていた。本発明に従って膜付きマスク基板上に窒化物半導体レーザ素子が形成されることによって結晶歪みが緩和され、レーザ出力30mWと雰囲気温度60℃の条件の下で、約15000時間のレーザ発振寿命が達成された。また、クラックの発生率も低減され、かつ歩留りが向上し、さらにしきい値電流密度が3%程度減少した。
【0087】
なお、本実施形態2では、リッジストライプ構造を有する窒化物半導体レーザ素子について説明されたが、電流阻止層を有する窒化物半導体レーザ素子であっても同様の効果を得ることができる(図8(b)参照)。また、本実施形態で述べられたマスク基板に形成されるマスクA幅、窓部A幅、マスクB幅、および窓部B幅は、前述の実施形態1で述べられた条件を満足する範囲内であれば他の数値で形成されてもよい。このことは、以下の実施形態のいずれにおいても同様である。
【0088】
[実施形態3]
実施形態3においては、窒化物半導体基礎基板とこの上に積層された窒化物半導体層上にマスクが形成されたこと以外は、実施形態1および2と同様である。本実施形態における膜付きマスク基板の形成方法では、まず主面方位が(0001)面のGaN基礎基板がMOCVD装置内に装填された。そのGaN基礎基板上にNH3とTMGaが供給されて、比較的低い550℃の成長温度の下で低温GaNバッファ層が形成された。そして、成長温度が1050℃まで昇温され、その低温GaNバッファ層上にNH3、TMGa、およびSiH4が供給されて、n型GaN層が形成された。このn型GaN層が形成された窒化物半導体基板がMOCVD装置から取出された。
【0089】
続いて、MOCVD装置から取出された基板のn型GaN層の表面上にSiNxからなる成長抑制膜がスパッタリング法で0.15μmの厚さに堆積された。その後、リソグラフィ技術を用いて、GaN基板の<1−100>方向に沿ってSiNxからなるストライプ状のマスクAとBが形成された。マスクA幅は10μmであって窓部A幅は2μmであり、マスクB幅は3μmであって窓部B幅は15μmであった。こうして、本実施形態におけるマスク基板が形成された。
【0090】
このマスク基板は十分に有機洗浄され、再びMOCVD装置内に搬入された。そして、マスク基板上に、V族元素原料のNH3、III族元素原料のTMG、および不純物としてのSiN4(Si不純物濃度1×1018/cm3)が供給され、1050℃の成長温度の下で厚さ5μmのGaN下地層が積層された。こうして、本実施形態における膜付きマスク基板が作製された。
【0091】
なお、本実施形態で説明された低温GaNバッファ層は低温AlxGa1-xN(0≦x≦1)バッファ層であればよく、また、この低温バッファ層自体が省略されてもよい。しかしながら、現在供給されているGaN基板はその表面モフォロジーが十分には好ましくないので、低温AlxGa1-xNバッファ層が挿入された方が、表面モフォロジーが改善されるので好ましい。なお、低温バッファ層とは、比較的低い約450〜600℃の成長温度で形成されるバッファ層を意味し、この成長温度範囲で形成された低温バッファ層は多結晶または非晶質である。
【0092】
[実施形態4]
実施形態4は、マスク基板上のマスクが一方向のストライプ形状ではなく、種々の異なる方向のストライプ状マスクを含むマスクパターンで形成されたこと以外では、実施形態1から3と同様である。すなわち、本実施形態では、種々の異なるマスクパターンを有するマスク基板が図9の模式的平面図を参照して説明される。
【0093】
図9(a)のマスク基板は、実施形態1などで述べられたマスクA群の両側に、2種類の異なる方向のストライプ状マスクが互いに直交したマスクパターンを含んでいる。このようなマスク基板を用いることによって、クラックの抑制効果が向上し、発光素子チップの歩留まりが向上し得る。
【0094】
図9(b)のマスク基板は、実施形態1などで述べられたマスクA群の両側に、2種類の異なる方向のストライプ状マスクが互いに60°の角度で交わったマスクパターンを含んでいる。特に、{0001}主面を有する窒化物半導体基板が用いられた場合、この2種類の異なる方向は結晶学的に等価(たとえば、横方向成長の形態が等価)な特性を示すので好ましい。図9(b)のようなマスク基板を用いることによっても、クラックの抑制効果が向上し、発光素子チップの歩留まりが向上し得る。
【0095】
図9(c)のマスク基板は、実施形態1などで述べられたマスクA群の両側に、3種類の異なる方向のストライプ状マスクが互いに60°の角度で交わったマスクパターンを含んでいる。特に、{0001}主面を有する窒化物半導体基板が用いられる場合、これら3種類の異なる方向も結晶学的に等価な特性を示すので好ましい。図9(c)のようなマスク基板を用いることによっても、クラックの抑制効果が向上し、発光素子チップの歩留まりが向上し得る。
【0096】
[実施形態5]
実施形態5においては、膜付きマスク基板上に窒化物半導体発光ダイオード素子層が形成された。この際に、その発光ダイオード素子層は従来と同様の方法で形成された。ただし、窒化物半導体発光ダイオード素子中の発光層のうちで電流が注入されて実際の発光に寄与する電流狭窄部分がマスクA群の上方領域に含まれるように形成され、そのマスクA群の両側にマスクB群が配置されていた。
【0097】
本発明を窒化物半導体発光ダイオード素子に適用することによって、その発光強度が向上した。特に、窒化物半導体を原材料とする白色窒化物半導体ダイオード素子や琥珀色窒化物半導体発光ダイオード素子のように、発光波長が短波長(420nm以下)または長波長(600nm以上)の発光ダイオード素子は、本発明による膜付きマスク基板上に形成されることによって、従来に比較して約1.5倍以上の発光強度を得ることができた。また、従来の窒化物半導体発光ダイオード素子チップでは、電流が注入されて実際に発光に寄与する発光層の電流狭窄部分にクラックが発生しやすく、それらのクラック部分は、非発光のラインとして観察され、発光強度の低下と素子不良をもたらしていた。しかし、本発明によって、窒化物発光ダイオードの発光強度の向上とともにクラックの発生が抑制され、素子不良率が低減した。
【0098】
[実施形態6]
実施形態6においては、Nの一部と置換すべきAs、P、およびSbの少なくともいずれかの置換元素を発光層に含ませたこと以外は、実施形態1と2および5と同様であった。より具体的には、As、P、およびSbの少なくともいずれかの置換元素が、窒化物半導体発光素子の発光層中で少なくとも井戸層のNの一部に置換して含められた。このとき、井戸層に含まれたAs、P、および/またはSbの総和の組成比をxとしてNの組成比をyとするときに、xはyよりも小さくかつx/(x+y)は0.3(30%)以下であって、好ましくは0.2(20%)以下である。また、As、P、および/またはSbの総和の好ましい濃度の下限値は、1×1018/cm3以上であった。
【0099】
この理由は、置換元素の組成比xが20%よりも高くなれば井戸層内のある領域ごとに置換元素の組成比の異なる濃度分離が生じ始め、さらに組成比xが30%よりも高くなれば濃度分離から六方晶系と立方晶系が混在する結晶系分離に移行し始めて、井戸層の結晶性が低下する可能性が高くなるからである。他方、置換元素の総和の濃度が1×1018/cm3よりも小さくなれば、井戸層中に置換元素を含有させたことによる効果が得られ難くなるからである。
【0100】
本実施形態による効果としては、井戸層にAs、P、およびSbの少なくともいずれかの置換元素を含ませることによって、井戸層中の電子とホールの有効質量が小さくなりかつ移動度が大きくなる。半導体レーザ素子の場合、小さな有効質量は小さい電流注入量でレーザ発振のためのキャリア反転分布が得られることを意味し、大きな移動度は発光層中で電子とホールが発光再結合によって消滅しても新たな電子とホールが拡散によって高速で注入され得ることを意味する。すなわち、発光層にAs、P、およびSbのいずれをも含有しないInGaN系窒化物半導体レーザ素子に比べて、本実施形態では、しきい値電流密度が低くかつ自励発振特性の優れた(雑音特性に優れた)半導体レーザを得ることが可能である。
【0101】
ところが、窒化物半導体レーザ素子チップ中にクラックが発生すれば、As、P、Sbなどの元素がクラックを通して発光層中から抜け出したり他層へ拡散しやすくなるので、それらの元素を発光層中に含ませたことによる利点が得られにくかった。
【0102】
本発明ではレーザ発振の長寿命化を実現しつつクラックの発生率をも低減させることができるので、As、P、Sbなどの元素が窒化物半導体発光レーザ素子の発光層中の少なくとも井戸層内に含まれることによって、それらの元素による上述の利点を得ることが可能である。
【0103】
他方、本実施形態が窒化物半導体発光ダイオード素子に適用された場合、井戸層にAs、P、および/またはSbの置換元素を含ませることによって、従来のInGaN井戸層を含む窒化物半導体発光ダイオード素子と比較して、井戸層中のIn組成比が低減され得る。これは、Inの濃度分離による結晶性の低下が抑制され得ることを意味する。特に、窒化物半導体を原材料とする発光波長が短波長(440nm以下)または長波長(600nm以上)の窒化物半導体発光ダイオード素子の場合、In組成比が低いか全く含有されることなく井戸層が形成され得るので、従来のInGaN系窒化物半導体発光ダイオード素子と比較して色むらが小さく、強い発光強度が得られる。また、これらの窒化物半導体発光ダイオード素子チップにおける利点は、上述の窒化物半導体レーザ素子チップの場合と同様に、本発明によるクラックの抑制効果によって発揮され得るものである。
【0104】
[実施形態7]
実施形態7においては、上述の実施形態による窒化物半導体レーザ素子が光学装置において適用された。上述の実施形態における青紫色(380〜420nmの発振波長)の窒化物半導体レーザ素子は、種々の光学装置において好ましく利用することができ、たとえば光ピックアップ装置に利用すれば以下の点において好ましい。すなわち、そのような窒化物半導体レーザ素子は、高温雰囲気中(60℃)において高出力(30mW)で安定して動作し、かつレーザ発振寿命が長いことから、信頼性の高い高密度記録再生用光ディスク装置に最適である(発振波長が短いほど、より高密度の記録再生が可能である)。
【0105】
図10において、上述の実施形態による窒化物半導体レーザ素子が光学装置に利用された一例として、たとえばDVD装置のように光ピックアップを含む光ディスク装置が模式的なブロック図で示されている。この光学情報記録再生装置において、窒化物半導体レーザ素子1から射出されたレーザ光3は入力情報に応じて光変調器4で変調され、走査ミラー5およびレンズ6を介してディスク7上に記録される。ディスク7は、モータ8によって回転させられる。再生時にはディスク7上のビット配列によって光学的に変調された反射レーザ光がビームスプリッタ9を介して検出器10で検出され、これによって再生信号が得られる。これらの各要素の動作は、制御回路11によって制御される。レーザ素子1の出力については、通常は記録時に30mWであり、再生時には5mW程度である。
【0106】
本発明によるレーザ素子は上述のような光ディスク記録再生装置に利用され得るのみならず、レーザプリンタ、バーコードリーダ、光の3原色(青色、緑色、赤色)レーザによるプロジェクタなどにも利用し得る。
【0107】
[実施形態8]
実施形態8においては、実施形態5または6による窒化物半導体発光ダイオード素子が半導体発光装置において利用された。すなわち、実施形態5または6による窒化物半導体発光ダイオード素子は、少なくとも光の3原色(赤色、緑色、青色)の1つとして、表示装置(半導体発光装置の一例)において利用可能である。そのような窒化物半導体発光ダイオード素子を利用することによって、色むらが少なくかつ発光強度の高い表示装置が作製され得る。
【0108】
また、そのような光の3原色を生じ得る窒化物半導体発光ダイオード素子は、白色光源装置においても利用され得る。他方、発光波長が紫外領域から紫色領域(380〜440nm程度)にある本発明による窒化物半導体発光ダイオード素子は、蛍光塗料を塗布することによって白色光源装置としても利用し得る。
【0109】
このような白色光源を用いることによって、従来の液晶ディスプレイに用いられてきたハロゲン光源に代わって、低消費電力で高輝度のバックライトの実現が可能になる。これは、携帯ノートパソコンや携帯電話におけるマン・マシンインターフェイスの液晶ディスプレイ用バックライトとしても利用することができ、小型で高鮮明な液晶ディスプレイを提供することができる。
【0110】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、窒化物半導体発光素子において、発光寿命や発光強度などを改善するとともにクラックの発生防止をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による窒化物半導体レーザ素子チップの一例を示す模式的な断面図である。
【図2】 本発明において用いられ得る膜付きマスク基板の上面と側面を表わす模式図である。
【図3】 本発明による窒化物半導体レーザ素子チップの他の例を示す模式的な断面図である。
【図4】 本発明による窒化物半導体レーザ素子チップの他の例を示す模式的な断面図である。
【図5】 マスク基板上における窒化物半導体膜の成長を示す模式的な断面図である。
【図6】 (a)は本発明において用いられるマスク基板を示す模式的な断面図であり、(b)は(a)のマスク基板から形成された膜付きマスク基板を示す模式的な断面図である。
【図7】 本発明による窒化物半導体レーザ素子チップの他の例を示す模式的な断面図である。
【図8】 (a)はリッジストライプ構造を有する窒化物半導体レーザ素子チップを示す模式的な断面図であり、(b)は電流阻止層を含む窒化物半導体レーザ素子チップを示す模式的な断面図である。
【図9】 本発明において用いられ得るマスク基板の上面図であり、(a)においてはマスクA群の両側に2種の方向で互いに直交するストライプを含むマスクパターンが設けられており、(b)においてはマスクA群の両側に互いに60°の角度で交差するストライプ状マスクを含むマスクパターンが設けられており、そして(c)においてはマスクA群の両側に互いに60°で交差する3種類の方向のマスクを含むマスクパターンが配置されている。
【図10】 本発明による窒化物半導体レーザ素子を利用した光ピックアップ装置を含む光学装置の一例を示す模式的なブロック図である。
【符号の説明】
100 膜付き基板、101 GaN基板、102 n型Al0.05Ga0.95N膜、103 n型In0.07Ga0.93Nクラック防止層、104 n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層、105 n型GaN光ガイド層、106 発光層、107p型Al0.2Ga0.8Nキャリアブロック層、108 p型GaNガイド層、109 p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層、110 p型GaNコンタクト層、111 n電極、112 p電極、113 SiO2誘電体膜、114 n電極パッド。
Claims (18)
- 窒化物半導体基板の一主面上に形成されたマスクパターンを含むマスク基板を含み、
前記マスクパターンはその上に窒化物半導体層がエピタキシャル成長しにくい成長抑制膜からなり、前記成長抑制膜が形成されていない複数の窓部が存在し、
互いに隣接する前記窓部間のマスク幅として少なくとも2以上の異なる幅が存在していて、前記マスクパターンはマスクA群とB群とを含み、
前記マスクA群の両側に前記マスクB群が配置され、前記マスクA群におけるマスクA幅は前記マスクB群におけるマスクB幅より広く設定されており、
前記窓部および前記マスクパターンを覆う窒化物半導体下地層と、
前記下地層上でn型層とp型層との間において量子井戸層または量子井戸層とこれに接する障壁層とを含む発光層を含む発光素子構造をさらに含み、
前記発光層内に実質的に電流が注入される領域である電流狭窄部は前記マスクAの上方に形成されていることを特徴とする窒化物半導体発光素子。 - 前記電流狭窄部はマスクAの幅方向の中央線から2μm以上離れた位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記電流狭窄部はマスクAの領域内の上方に完全に含まれていることを特徴とする請求項2に記載の窒化物半導体発光素子。
- 電流狭窄部はマスクAと窓部Aにまたがる領域の上方に含まれていることを特徴とする請求項2に記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記マスクA群の領域内の窓部A幅は前記マスクB群の領域内の窓部B幅よりも狭く設定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記マスクA幅は10〜20μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1から5のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記窓部A幅は2〜10μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1から6のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記マスクB幅は2〜10μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1から7のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記窓部B幅は5〜40μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1から8のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記マスクAはストライプ状に形成され、その長手方向は前記窒化物半導体基板の<1−100>方向に平行であることを特徴とする請求項1から9のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記マスクAはストライプ状に形成され、その長手方向は前記窒化物半導体基板の<11−20>方向に平行であることを特徴とする請求項1から9のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記マスクB群は複数の異なる方向に平行なマスクBを含み、それらのマスクBは桝目状のパターンを形成していることを特徴とする請求項1から11のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記窒化物半導体下地層はAlxGa1-xN(0.1≦x≦0.15)を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記窒化物半導体下地層はInxGa1-xN(0.1≦x≦0.18)を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記量子井戸層はAs、P、およびSbの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1から14のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記成長抑制膜は誘電体膜であることを特徴とする請求項1から15のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
- 請求項1から16のいずれかの項に記載された窒化物半導体発光素子を含むことを特徴とする光学装置。
- 請求項1から16のいずれかの項に記載された窒化物半導体発光素子を含む発光装置。
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