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JP3716974B2 - 半導体レーザ素子及びその製造方法 - Google Patents

半導体レーザ素子及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ストライプ状のリッジ(凸部)が設けられた半導体レーザ素子に関する。また、本発明の半導体レーザ素子は、特にGaN、AlN、もしくはInN、又はこれらの混晶であるIII−V族窒化物半導体(InbAldGa1−b−dN、0≦b、0≦d、b+d<1)を用いた素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、窒化物半導体を用いた半導体レーザ素子は、DVDなど、大容量・高密度の情報記録・再生が可能な光ディスクシステムへの利用に対する要求が高まりを見せている。このため、窒化物半導体を用いた半導体レーザ素子は、研究が盛んになされている。また、窒化物半導体を用いた半導体レーザ素子は、紫外域から赤色に至るまで、幅広い可視光の波長域での発振が可能と考えられ、その応用範囲は、前記光ディスクシステムの光源にとどまらず、レーザプリンタ、光ネットワークなどの光源など、多岐にわたるものと期待されている。
【0003】
特に、レーザ素子構造に関しては、様々な研究がなされ、横モードの好適な制御を可能にする構造についても、種々の提案が成されている。その中でも、特に有望視されている構造として、リッジ導波路構造があり、世界に先駆けて出荷が開始された窒化物半導体レーザ素子でも、採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
半導体レーザ素子の構造として、リッジ導波路構造は、構造が単純であることから、容易にレーザ発振が可能な反面、大量生産時において、特性のばらつきが発生しやすい。これは、リッジ導波路構造では、メサストライプの寸法ばらつきに依存して特性が変化するが、メサストライプの形状のばらつきはエッチング精度に依存することから、そのエッチング精度以下には形状ばらつきを抑えることができないからである。また、活性層のエッチングによる損傷、活性層表面がエッチング雰囲気にさらされることによる損傷が大きな半導体材料を用いた半導体レーザ素子では、活性層よりも深くエッチングしてリッジを形成することにより完全屈折率導波型の半導体レーザ素子を構成しようとすると、活性層及び活性層表面のエッチングによる損傷のためにレーザ特性が悪化する。、従って、係る半導体レーザ素子では、活性層に達しない深さでストライプを設けた実効屈折率型の導波路構造としなければならない。しかし、実効屈折率型の導波路構造では、上述したストライプ形状のばらつきによる素子特性変化が顕著なものとなり、量産時において、素子特性のばらつきが大きなものとなる。
【0005】
窒化物半導体を用いたレーザ素子において、上述した分野への応用の実現に向けての次なる課題としては、大量生産で安定した品質の素子を提供することが必須項目となる。
【0006】
しかしながら、現在知られているレーザ素子構造では、リッジ導波路の形成がその足かせとなっている。なぜなら、通常、リッジ導波路の形成には、素子構造となる窒化物半導体を成長させた後、上層からエッチングにより、その窒化物半導体の一部を除去して、導波路を構成するためのリッジ(凸部)を形成することになるが、この時のエッチング精度が、上述したように、得られるレーザ素子の素子特性に大きく影響を及ぼすからである。すなわち、リッジ導波路を形成する凸部の形状、特にその高さ及び幅でもって、横モードが制御され、得られるレーザ光のF.F.P.(ファー・フィールド・パターン)が決定されることから、エッチングによりリッジ導波路を形成する際の、その深さの制御誤差が、直接的に素子特性のばらつきを生み出す大きな要因となるからである。
【0007】
また、従来、窒化物半導体のエッチング方法として、RIE(反応性イオンエッチング)などのドライエッチングを用いることが知られているが、これらのエッチング方法では、素子特性のばらつきを根本的に解決できるほどの精度で、エッチング深さを制御することが困難であった。
【0008】
さらにまた、近年の素子設計において、超格子構造など、数原子層単位で制御された層が、素子構造中に多数設けられて構成されていることも、前記エッチング精度による素子特性ばらつきの原因となっている。すなわち、素子構造を構成する各層の形成において、それぞれの膜厚は、極めて高い精度で制御されて形成されており、それよりも数桁の精度で劣るエッチング方法を用いて、リッジ等を形成することは、高度に設計された素子構造を実現することが困難となり、素子特性向上のネックとなる。
【0009】
例えば、窒化物半導体を用いたレーザ素子において、活性層をエッチングすることなく活性層の上に、リッジ導波路を設ける屈折率導波型の構造により、高出力タイプの窒化物半導体レーザ素子を実現するために、エッチングの深さ方向の精度は、リッジ直下の活性層部とその他の活性層部との実効屈折率差を100分の1の精度で制御する必要がある。その精度を実現するためにには、活性層直上の層において、例えばそれをp型クラッド層とすると、p型クラッド層がほんの一部だけ残るまで、0.01μm以下の精度で深さ制御されたエッチングでもって、リッジを形成しなければならない。また、リッジ導波路の幅に関しては、それよりも低い精度ではあるが、0.1μmの精度でエッチングを制御することが必要である。
【0010】
また、窒化物半導体のエッチング方法として、RIEを用いると、エッチング露出面、及び露出された層が、損傷を受ける傾向にあり、素子特性、素子信頼性の低下を招くものとなる。エッチング方法には、ドライエッチングの他に、ウェットエッチングを用いる方法があるが、窒化物半導体に使用できるウェットエッチング液は、未だ開発されていない。
【0011】
以上のように、窒化物半導体を用いたレーザ素子の高機能化、及び特性のばらつきの少ない大量生産の実現には、エッチング工程におけるリッジ導波路形成時の精度が大きく影響するものであり、精度に優れたリッジ導波路の形成は、極めて重要な課題となっている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記事情に鑑み、ストライプ形状の半導体レーザ素子であっても、その発振・導波に優れた共振器を有する半導体レーザ素子でありながら、安定した横モード制御、F.F.P.に優れたレーザ光を得ることができ、且つ量産時においても、素子ばらつきの少ないレーザ素子若しくは端面発光素子、及びその製造方法を発明するに至ったものである。
【0013】
すなわち本発明の半導体レーザ素子は、下記の構成により本発明の目的を達成することができる。
【0014】
本発明の半導体レーザ素子は、第1の導電型の半導体層と、活性層と、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型の半導体層とが順に積層された積層構造体を備え、前記活性層及びその近傍において幅方向に光の広がりを制限してその幅方向と直交する方向に光を導波させる導波路領域が形成されてなる半導体レーザ素子において、前記導波路領域は、少なくとも第1の導波路領域と第2の導波路領域とを有してなり、前記第1の導波路領域は、前記活性層の幅を制限することによりその活性層とその両側の領域との間の屈折率差によってその制限された活性層内に光を閉じ込めるようにした領域であると共に、前記制限された活性層幅方向で、該活性層幅よりも狭い幅で光を閉じ込めるように、実効的な屈折率差が設けられたものであり、前記第2の導波路領域は、前記活性層において実効的に屈折率差を設けることにより光を閉じ込めるようにした領域であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のレーザ素子は、前記第1の導波路領域における活性層は、前記活性層を含む第1のリッジを形成することにより該活性層の幅が制限され、前記実効的に屈折率が設けられた領域は、前記第2の導電型層に第2のリッジ(第2の導波路領域)、及び前記第1のリッジの上部リッジ(第1の導波路領域)を形成することにより設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のレーザ素子は、前記第1のリッジは、その上部リッジの両側を前記第1の導電型層が露出するまで除去することにより形成され、前記第2のリッジ及び前記上部リッジは、そのリッジの両側において前記活性層の上に前記第2の導電型層を残すように除去することにより形成されたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のレーザ素子は、第1の導電型層と、活性層と、該第1の導電型層と異なる導電型の第2の導電型層とが順に積層された積層構造体で、第2の導電型層に設けられたリッジにより形成されたリッジ導波路領域を有する半導体レーザ素子において、前記導波路領域は、少なくとも第1の導波路領域と第2の導波路領域とを有してなり、第1の導波路領域は、前記リッジ(上部リッジ)の下に、第1の導電型層に設けられた前記上部リッジよりも幅の広い下部リッジを備えた2段リッジで形成されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のレーザ素子は、前記第2のリッジ及び/又は前記上部リッジの両側における、前記活性層上に位置する前記第2の導電型層の膜厚が、0.1μm以下であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のレーザ素子は、第1の導電型層と、活性層と、該第1の導電型層と異なる導電型の第2の導電型層と、が順に積層された積層構造体に、第2の導電型層にストライプ状のリッジを設けることによって実効屈折率型の導波路領域を有する半導体レーザ素子において、前記導波路領域は、少なくとも第1の導波路領域と第2の導波路領域とを有してなり、第1の導波路領域は、前記リッジよりも広い幅の活性層とその両外側の領域で屈折率差が設けられた完全屈折率によって該活性層内に光が閉じ込められることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のレーザ素子は、前記完全屈折率が、第1の導電型層に設けられたストライプ状の凸部により形成されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明のレーザ素子は、第1の導電型層と、活性層と、該第1の導電型層と異なる導電型の第2の導電型層とが順に積層された積層構造体に、ストライプ状の導波路領域を有する半導体レーザ素子において、前記ストライプ状の導波路領域が、共振器方向において、前記第2の導電型層に、第2の導電型層の一部が除去されて、ストライプ状の凸部が設けられた第2の導波路領域と、前記第2の導電型層に形成されたストライプ状の凸部(上部側の凸部)と、前記第1の導電型層に、前記第2の導電型層、活性層、第1の導電型層の一部が除去されて形成されるストライプ状の凸部(下部側の凸部)と、が設けられた第1の導波路領域と、を少なくとも有することを特徴とする。
【0022】
また、本発明のレーザ素子は、前記第2の導波路領域は、共振器方向における長さが、前記第1の導波路領域よりも長いことを特徴とする。
【0023】
また、本発明のレーザ素子は、前記半導体レーザ素子の共振器面の内、少なくとも1つの共振器面が、前記第1の導波路領域の端部に形成されていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明のレーザ素子は、前記第1の導波路領域の端部に形成された共振器面が、出射面であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明のレーザ素子は、前記第2の導波路領域にのみ電極が設けられていることを特徴とする。
【0026】
また、本発明のレーザ素子は、前記第1の導波路領域と第2の導波路領域との間に、共振器方向に傾斜した活性層側面を有して、第1の導波路領域と第2の導波路領域とを連結されていることを特徴とする。
【0027】
また、本発明のレーザ素子は、前記第1の導波路領域と第2の導波路領域の側面が、屈曲して互いに連結されていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明のレーザ素子は、前記端部に共振器面を有する第1の導波路領域は、共振器方向の長さが、少なくとも1μm以上であることを特徴とする。
【0029】
また、本発明のレーザ素子は、前記第1の導電型層、活性層、第2の導電型層に、窒化物半導体が用いられていることを特徴とする。
【0030】
また、本発明のレーザ素子は、前記活性層がInを含む窒化物半導体層であることを特徴とする。
【0031】
また、本発明のレーザ素子は、前記第1の半導体層においてn型窒化物半導体を有し、前記第2の半導体層においてp型窒化物半導体を有することを特徴とする。
【0032】
また、本発明のレーザ素子は、前記積層構造体が、p型窒化物半導体を含むp型クラッド層を有する第2の導電型層、Inを含む窒化物半導体を含む活性層、n型窒化物半導体を有する第1の導電型層であると共に、第2の導波路領域若しくは第1の導波路領域のにおけるストライプ状の凸部(上部側の凸部)若しくはリッジ(上部リッジ)が、該p型クラッド層の膜厚が0.1μmよりも下で、活性層よりも上となる位置に設けられていることを特徴とする。
【0033】
また、本発明のレーザ素子は、第1の導波路領域のストライプ状の凸部若しくはリッジ側面及び第2の導波路領域のストライプ状の凸部若しくはリッジ側面に窒化物半導体が露出されており、該ストライプ状の凸部若しくはリッジ側面に絶縁膜が設けられ、該絶縁膜が、Ti、V、Zr、Nb、Hf、Taよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物、又は、SiN、BN、SiC、AlNよりなる群から選択される少なくとも一種、からなることを特徴とする。
【0034】
また、本発明のレーザ素子は、第1の導波路領域と第2の導波路領域において、前記絶縁膜が異なることを特徴とする。
【0035】
また、本発明のレーザ素子は、前記ストライプ状の凸部若しくはリッジの幅が、1μm以上3μm以下であることを特徴とする。
【0036】
また、本発明のレーザ素子の製造方法は、窒化物半導体を用いて、第1の導電型層と、活性層と、第2の導電型層とを順に積層した積層構造体を形成する積層工程と、第2の導電型層上にストライプ状の第1の保護膜を設けてエッチングして、第2の導電型層にストライプ状の凸部を設ける上部リッジ形成工程、前記第1の保護膜を介して第3の保護膜を設けてエッチングして、前記ストライプ状の凸部のストライプ方向一部に、前記凸部よりも幅の広いストライプ状の凸部を前記凸部より下の第1導電型層に形成する下部リッジ形成工程、とを具備してなる。
【0037】
また、本発明のレーザ素子の製造方法は、前記下部リッジ形成工程の後、前記第3の保護膜を除去して、前記第1の保護膜を介して絶縁性を有する第2の保護膜を、前記ストライプ状の凸部側面、及びエッチングにより露出した窒化物半導体平面に形成する工程、第2の保護膜を形成した後、第1の保護膜を除去する工程を具備してなることを特徴とする。
【0038】
また、本発明のレーザ素子の製造方法は、前記保護膜形成工程の後、前記積層構造体を、第1の導波路領域の途中で切断して、共振器面がへき開面となるように分割する工程を具備してなることを特徴とする。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態の半導体レーザ素子について説明する。
【0041】
本発明に係る実施の形態の半導体レーザ素子は、図1(a)に示すように、ストライプ状の導波路領域として、第1の導波路領域C1と、第2の導波路領域C2とを有するものである。
【0042】
ここで、第1の導波路領域C1は、図1(c)に示すように、活性層を含むように活性層3を含むようにリッジ(第1のリッジ201)を形成することにより活性層3とその両側の領域(ここでは大気中)との間に屈折率差を設けて活性層3に光を閉じ込めるようにした導波路領域である。このように、活性層とその両側の領域との間に実際に屈折率差を設けて光を閉じ込めるようにした導波路領域を、本明細書では完全屈折率型の導波路と呼ぶ。
【0043】
また、第2の導波路領域C2は、図1(b)に示すように、活性層の上に位置する半導体層においてリッジ(第2のリッジ202)を形成することによりその第2のリッジ202の下に位置する活性層3の実効的な屈折率をその両側の活性層より高くして、その実効屈折率が高い活性層3に光を閉じ込めるようにした導波路領域である。このように、活性層とその両側の領域との間に実効的に屈折率差を設けて光を閉じ込めるようにした導波路領域を、本明細書では実効屈折率型の導波路という。
【0044】
このように本発明に係る半導体レーザ素子は、完全屈折率型の導波路と実効屈折率型の導波路とを導波路を有することを特徴としている。。
【0045】
具体的な構造としては、第1の導電型層、活性層、第1の導電型層と異なる導電型の第2の導電型層とが積層された積層構造体が形成されて、活性層に達しない深さで、第2の導電型層2にストライプ状の第2のリッジ(凸部)202を形成することにより第2の導波路領域C2を構成し、第2の導電型層2、活性層3及び第1の導電型層1の一部を含むようにストライプ状の第1のリッジ(凸部)201を形成することにより、第1の導波路領域Cを構成するものである。
【0046】
このように、本発明に係る半導体レーザ素子は、第1の導波路領域C1と第2の導波路領域C2とを導波路内に有することで、様々な素子特性のレーザ素子を得ることが可能になる。また、本発明に係る半導体レーザ素子は、図3(a),(b)、4(a),(b)に示すように、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2、を有する導波路を、様々な形態で形成することができる。ここで、図3(a)は、ストライプ状の凸部が積層構造体の一部を除去することにより設けられた構造のレーザ素子の斜視図及び一部の断面図を示すものであり、図3(b)は図3(a)において、白抜き矢印の方向から観察したものであり、また、図4(a),(b)は、図3とは異なる形態の導波路構造を示すものである。
【0047】
図3(a),(b)、図4(a),(b)に示すように、本発明では、共振器方向(凸部のストライプの長手方向)において、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2、とが様々に配置された構造を採ることができる。また、本発明の半導体レーザ素子は、もちろん第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2以外の導波路領域を有していても良い。例えば図4(a)に示すように、第1の導波路領域C1と第2の導波路領域C2の間に第1の導波路領域C及び第2の導波路領域Cとは異なる導波路領域203を有していても良い。図3(a),(b)は、共振器の一方の共振器面を含むように、第1の導波路領域C1が設けられ、他方の共振器面を含むように第2の導波路領域C2が設けられた構造を有するものである。図4(a)では、第1の導波路領域C1とを構成する第1のリッジ201と、第2の導波路領域C2を構成するストライプ状の第2のリッジ202とが、垂直方向(共振器方向に直交する方向)に対して傾斜するように形成された導波路領域203を介して接合されている構造を有する半導体レーザ素子である。このように、第1の導波路領域C1と第2の導波路領域C2とは、図3(a),(b)に示すように、共振器方向において、ほぼ連続して形成されていても良く、図4(a)に示すように、他の領域を間に挟んで形成されていても良い。
【0048】
また、本発明において、第1のリッジ201の幅と第2のリッジ202の幅は、それぞれの幅がほぼ同じである必要はない。例えば、図1(a)〜(c)、図3(a)に示すように、各リッジの側面が傾斜して形成されている場合、第1の導波路領域Cを構成するために設けられた第1のリッジ201の底部の幅と第2の導波路領域Cを構成するために設けられた第2のリッジ202の底部の幅は必然的に異なるものとなる。第1のリッジの側面と第2のリッジの側面とは、同一平面上に位置することが好ましい。図1(a)及び図3(a)では、ストライプ状の凸部の側面が傾斜したメサ型のうち、下層から上層にむかって幅が小さくなるよう傾斜した順メサ型であるが、これとは逆に上層に向かって幅が大きくなるよう傾斜した逆メサ型でもよく、また両側が同メサ型でも、異なるメサ型でもよい。
【0049】
また、第1のリッジ201の上面の幅と第2のリッジ202の上面の幅は異なっていてもよい。さらに、水平方向の断面で見た時の、第1のリッジ201の幅と第2のリッジ202の幅は、第1のリッジ201と第2のリッジ202との境界部分で不連続に変化するように異なっていてもよい。
【0050】
[共振器構造]
本実施の形態の半導体レーザ素子では、積層構造体の一部を除去して、凸部を形成して、それにより、ストライプ状の導波路を構成している。すなわち、図1、3に示すように、第1の導電型層1、活性層3、第2の導電型層2などを積層した素子構造において、リッジとする部分両側をエッチング等の手段により除去して、ストライプ状の凸部を形成することにより共振器構造を構成した、いわゆるリッジ導波路のレーザ素子において適した構造である。そして、本発明は、それぞれストライプ状の凸部により、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2とを少なくとも設けることで、ビーム特性を改良することができ、特にFFPを楕円から真円まで任意の形状に制御出来るなど、様々な素子特性のレーザ素子を得ることができるものである。この時、ストライプ状のリッジ(凸部)は、上述したように、図1、3に示すような順メサ形状に限定されるものではなく、逆メサ形状であっても良く、また、垂直な側面を有するストライプであっても良い。すなわち、本発明では、要求されるレーザ特性に応じてリッジの形状を変更することができる。
【0051】
また、本発明の半導体レーザ素子においては、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2を構成するために、それぞれストライプ状の凸部201、202を形成した後、それらのリッジの両側に結晶を再成長させて、リッジを埋め込むようにしてもよい。
【0052】
このように、本発明はストライプ状のリッジを有するリッジ導波路構造を前提としているので、低コストでの製造を実現するだけでなく、導波路内において、第1の導波路領域C1と第2の導波路領域C2とを、様々に組み合わせて、配置することで、様々な特性のレーザ素子を実現できる。。例えば、ビーム特性を制御ができることが可能となるので、ビーム補正用のレンズ等を用いなくても良好なFFPが得ることができる。
【0053】
本発明のレーザ素子において、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2に設けられるストライプ状の第1及び第2のリッジ201、202は、図1(b)、図1(c)に示すような形状である。
【0054】
また、本発明は、レーザ発振素子以外の例えば発光ダイオード等の端面発光素子にも適用することができる。この場合、上述した図1等に示す構成において、、発振閾値以下で素子を駆動させることにより発光ダイオードとして動作させることができ、また、導波路端面において、導波路と端面とを垂直とせずに、導波路を端面に垂直な方向から傾けることにより、レーザ発振しないで端面から発光する素子が得られる。
【0055】
[積層構造体]
次に、本実施の形態の半導体レーザ素子における第1の導電型層、活性層、第2の導電型層の詳細構成を説明する。
【0056】
まず、本実施の形態の半導体レーザ素子では、、図1に示すように、第1の導電型層1、第2の導電型層2の中にそれぞれ、クラッド層5、7を有し、そのクラッド層5,7で活性層3を挟み込むことにより厚さ方向に光を閉じ込めている。このようにして、リッジによる幅方向(厚さ方向に直交しかつ共振方向に直交する方向)の光の閉じ込めとクラッド層5,7による厚さ方向における光の閉じ込めにより積層構造体内部に、光導波路領域が設けられる。本発明の半導体レーザ素子においては、各半導体層として、従来から知られている様々な種類の半導体材料を用いることができ、例えばGaAlAs系、InGaAsP系、GaAlInN系の材料を適宜選択して用いることができる。
【0057】
このように、本発明の半導体レーザ素子において、ストライプ状の導波路領域は、第1の導電型層、第2の導電型層に挟まれた活性層及びその近傍に主にリッジに対応して形成されるものであり、このときストライプの長手方向と光の伝搬方向とがほぼ一致しているものである。すなわち、ストライプ状の導波路領域は、上述した主として光が閉じ込められる活性層により構成されるが、光の一部は、その近傍に広がって導波されるので、、例えば、後述する活性層とクラッド層の間にガイド層を形成してそのガイド層を含めた領域を光導波層としてもよい。
【0058】
[第2の導波路領域C
本発明の第2の導波路領域Cは、半導体レーザ素子の導波路において、実効屈折率型の導波路として設けられた領域であり、具体的には、積層構造体において、活性層3の上の第2の導電型層2に、ストライプ状の凸部201を設けて、活性層の面方向(幅方向)に、実効的な屈折率差を設けて、ストライプ状の導波路領域を設けたものである。
【0059】
従来の第2の導波路領域C2だけからなる導波路を形成した実効屈折率型のレーザ素子は、図2(a)に示すように、各半導体層を形成した後、マスク20を設けて、エッチングによりストライプ状の凸部202を形成していた。しかし、活性層に達しない深さのエッチングによりストライプ状の凸部202が形成されて実効的な屈折率差が活性層(導波層)に設けられることとなるため、図2(b)に示すストライプの幅Sw、リッジ(凸部)の高さ(ストライプの深さ)Sh、エッチング底面と活性層上面からの距離Shによって素子特性が大きく影響されることとなる。これは、レーザ素子の製造において、深刻な素子特性のばらつきを生み出す原因となるものである。すなわち、図2(c)、図2(d)に、エッチング精度による、凸部の高さ(エッチング深さ)に対する誤差Hd、ストライプ幅に対する誤差Wdが、直接素子特性のばらつきを生み出すものとなるものである。なぜなら、活性層の上に設けられたストライプ状のリッジ(凸部)202により、活性層(導波層)内に形成される導波路領域は、リッジ202に対応する実効的な屈折率差により設けられるため、上述の凸部の形状が実効的な屈折率差に大きな影響を与えるからである。また、凸部の高さに対する誤差Hdは、活性層上面とエッチング底面との距離に対する誤差でもある。活性層上面とエッチング底面との距離Shが、あまり大きくなると実効的な屈折率差が小さくなるので、光の閉じ込めが弱くなるなど素子特性に大きな影響を与える。このように、凸部形状や、活性層上面とエッチング底面との距離によって実効屈折率は左右されるので、その距離ばらつきに対応してバラツキが生じる。
【0060】
図10、11、12は、従来の実行屈折率型のレーザ素子における、エッチング深さに対する良品率、駆動電流値、レーザ寿命を示すものである。図からわかるように、エッチング深さに対して、レーザ素子の特性は、極めて敏感に変化する。
【0061】
本発明のレーザ素子は、活性層に達しない深さでエッチングされてなる第2の導波路領域C2を導波路の一部として有していることにより、第2の導波路領域C2では、活性層がエッチングによる損傷を受けないようにできるので、素子の信頼性を向上させることができる。また、活性層が大気にさらされると素子特性の劣化が大きな材料では、第2の導波路領域C2が設けられていることで、素子の信頼性の低下を抑えることができる。
【0062】
[第1の導波路領域C
本発明のレーザ素子は、上述したように、ストライプ状の導波路領域として、第2の導波路領域C2に加えて、第1の導波路領域C1を形成することで、様々な特性のレーザ素子を容易に実現できる。これは、積層構造体において、活性層及び第1の導電型層1の一部を含むストライプ状の第1のリッジ(凸部)201を形成することにより構成された第1の導波路領域Cが、横モードの制御性に優れていることによってもたらされる効果である。
【0063】
すなわち、第1の導波路領域Cは、第1のリッジにより活性層の幅そのものを制限して、活性層とその両側の領域との間で実際の屈折率差により光を閉じ込めているので、より強く光を閉じ込めることが可能になる。
【0064】
これにより、不用な横モードの発生をより確実に抑制でき、より確実に横モードを制御できる。
【0065】
このように本発明では、導波路領域の一部に、横モードの制御性に優れた第1の導波路領域を設けることにより、この第1の導波路領域において不用な横モードの発生を抑制して全体としての横モードの制御性を良好なものとして、様々なビーム特性のレーザ素子を容易に得ることが可能となる。
【0066】
本発明のレーザ素子においては、第1の導波路領域を一方の端部に形成して、レーザ共振器の一方の共振器面を含むように形成することで、所望の形状のビームをより容易に得ることができる。言いかえると、図3(b)、図4(a)、4(b)に示すように、レーザ共振器面4が、第1の導波路領域C1の端面に一致するように形成することが好ましい。これは、共振器面の近傍の領域を、第1の導波路領域C1とすることで、その共振器面での反射の前後において光を横モード制御することができ、その他の領域に設ける場合に比べて、横モードの制御が導波路内において、より効果的に機能することとなるためである。
【0067】
また、本発明のレーザ素子において、第1の導波路領域C1の端面をレーザ共振器面とし、そのレーザ共振面を、出射面とすることで、F.F.P.、アスペクト比に優れたビーム特性のレーザ素子を、得ることができる。これは、第1の導波路領域C1を出射面側に設けることで、第1の導波路領域C1においては横モードの制御が容易であることから、容易に出射するレーザ光のビーム特性を制御することが可能となるからである。第1の導波路領域C1が、図3、4に示すように、ストライプ状の第1のリッジ(凸部)201により構成されている場合には、その第1のリッジ201のストライプ幅を調整することで、容易に横モードの制御が可能であり、また、精度良く所望のビーム特性を得ることができる。
【0068】
この時、出射面に設けられる第1の導波路領域C1の長さとしては、得られるレーザ光の少なくとも1波長の長さで形成すればよいが、横モードを制御するという機能的な面からは、レーザ光の数波長の長さで設けることが好ましくこれにより所望のビーム特性を得ることができる。
【0069】
具体的には、1μm以上の長さで第1の導波路領域を形成することがこのましく、これにより、良好な横モードの制御ができる。また、製造面を考慮すると、第1の導波路領域を、5μm以上に設定すると、ストライプ状のリッジ(凸部)201を良好な精度で形成することができるので好ましい。
【0070】
また、活性層幅(共振器方向に垂直な方向における長さ)としては、10μmあればよいが、50μm以上とすることが好ましく、より好ましくは100μm以上で形成されていれば良い。この活性層幅は、正負一対の電極が基板を挟んで対向配置する構成では、チップの幅に相当するものとなり、同一面側に正負一対の電極を設ける構造では、第1導電型層に電極を形成するための露出面を形成することになるので、チップの幅から露出面を形成するために除去した部分の幅を減じた長さになる。
【0071】
[導波路の構成]
本発明のレーザ素子は、ストライプ状の導波路領域が、第1の導波路領域C1と、第2の導波路領域C2とを少なくとも有することを特徴とするものであり、複雑な素子構造の設計変更を伴わずとも、これらの導波路領域を、共振器内に様々に配置、分布させることで、容易にレーザ素子の特性を変更することができる。具体的には、上述したように、第1の導波路領域C1を共振器面に配置することにより、ビーム特性の制御が容易にでき容易に所望の特性を得ることが可能となる。また、導波路を構成する活性層の側面が露出した第1の導波路領域C1が導波路内に占める割合を、第2の導波路領域C2よりも小さくすることで、素子信頼性に優れるレーザ素子が得られる。これは、第2の導波路領域C2を導波路内に多く設けることで、エッチングによる損傷を受けていない活性層の割合を多くすることができるからである。、その結果、素子寿命を向上させることができ、素子寿命についての素子間のばらつきを少なくできる。
【0072】
本発明のレーザ素子は、導波路として、第1の導波路領域C1と、第2の導波路領域C2とを少なくとも有するものであるが、その他に第1の導波路領域C1と、第2の導波路領域C2とは異なる形態の導波路領域を設けても良い。例えば、上述したように、図4(a)に示すように、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2との間の傾斜して形成された平面203により構成領域を設けてもよい。このように、第1の導波路領域C1と第2の導波路領域C2の他に、それらとは異なる導波路領域を設けていても良い。さらに、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2は、導波路内に少なくとも1ずつ存在していれば良く、図4(b)に示すように、それぞれの導波路領域を複数設けても良い。また、第1の導波路領域C1と、第2の導波路領域C2との間に、図3、図4(b)に示すように、なにも設けなくても良く、また図4(a)とは逆の傾斜を設けて、第1の導波路領域C1と第2の導波路領域C2の一部が重なり合うように設けても良い。
【0073】
本発明のレーザ素子において、図13に示すように、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2の他に、活性層側面(導波層側面)204が、共振器方向に対し傾斜するように形成された第3の導波路領域C3を有する構造であってもよい。ここで、図13(a)は、素子構造を説明する模式的な斜視図であり、図13(b)は、上部クラッド層7と活性層3との接合面付近を示す断面図である。この時、第3の導波路領域C3は、上部クラッド層7上にストライプ状のリッジ(凸部)202を第2の導波路領域Cと共有し、活性層(導波層)の端面(側面)204が傾斜されて設けられている。以上のように構成されたレーザ素子において、図13(b)に示すように、共振器方向AAと、活性層の側面方向BBとの成す角αを調整することで、側面204により導波する光を全反射させることができ、ストライプ状の第1の導波路領域C内に、導くことが可能となる。具体的には、角αを70°以下とすることで共振器方向AAに導波する光を端面204に対して入射角20°以上とすることができるので、損失のない全反射が期待できる。従って、角αは目的に応じて70°〜0の範囲で角度を選択することができる。例えば、角αを20°以下とすることで、共振器方向AAに導波する光が、端面204に対して、入射角70°以上とすることができ、この場合も損失のない全反射が期待できる。これらは、第2の導波路領域C2において、活性層(導波層)面内では、実効的な屈折率差により、ストライプ状の導波路領域が形成されているが、その導波路領域からはみだして導波する光も存在し、その光は、第2の導波路領域C2の端部で反射される。
【0074】
この時、光の損失が大きくなると、出力が低下し、電流−光出力のスロープ効率が低下する原因となる。第2の導波路領域C2が、第1の導波路領域Cより広い場合に、前記第3の導波路領域C3を第2の導波路領域C2と第1の導波路領域Cの間にもうけることで、上述の光の損失を低減させ、また、図13に示すように、第1の導波路領域C1との接合部で、良好な光の導波を実現することができる。
【0075】
本発明のレーザ素子において、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2を構成するストライプ状のリッジ(凸部)201、202は、それらのストライプ幅が異なっていても良い。このように、ストライプ幅を変えることで、ビームを様々なアスペクト比に設定することができる。従って、本発明の半導体レーザ素子では、第1リッジ及び第2リッジを、目的に応じた幅に形成できる。例えば、細くすることで幅の制御に精度が問われるようになるが、より真円に近いFFPを得ることができるなどの特性を得ることができるし、或いは幅にたいおうさせてビームの広がり度を変更することも可能になる。具体的な一例としては、図15に示すように、第2の導波路領域C2の一部205において幅を徐々に狭くすることにより、第1の導波路領域Cとの接合部におけるストライプ幅をストライプ幅Sw2同じにでき、第1の導波路領域の幅に対応させて様々なモードのレーザ光を取り出すことが可能となる。図15では、第2の導波路領域C2の幅を徐々に狭くするようにした部分を第3の導波路領域Cとして示している。
【0076】
図15では、第2の導波路領域C2を構成するために、第1の導波路領域C1のを構成する第1リッジのストライプ幅Sw2より広い幅Sw1の第1リッジ(凸部)202を設けて、実効的な屈折率変化に対する特性変化の少ない導波路とし、第3の導波路領域C3において、ストライプ幅の異なる導波路領域をうまく接合することができるように、導波路内のストライプ幅に傾斜を設けた領域205を設けて、接合部における損失を最小限に留めている。また、第3の導波路領域Cを構成するためのリッジは、図に示すように活性層よりも上に設けても良いし、第1の導波路領域Cと同様に、第1の導電型層に達する深さにエッチングすることにより設けても良いし、またその間でも良い。
【0077】
このように、本発明の第1、2の導波路領域を構成するためのストライプ状のリッジは様々な形状で形成でき、例えばストライプ方向(ストライプの長手方向)でストライプ幅が異なるテーパ状にしてもよい。具体例としては、実施例1若しくは図15に示すように、第1の導波路領域Cを出射側端部に配置した導波路構造において、ストライプ幅の大きな第2の導波路領域Cを、それより幅の狭い第1の導波路領域Cのストライプに近づくに従って、ストライプ幅を小さくして、光の導波路を両者の接合部までに狭める構造とできる。このようなテーパ状のストライプは、各導波路領域のストライプに部分的に形成しても良く、ストライプ方向の全ての領域で、テーパ状としてもよく、ストライプの両端部に近づくに従ってそれぞれストライプ幅を狭くするような異なるテーパを複数設けることもできる。
【0078】
[窒化物半導体におけるストライプ]
以下、第1導電型および第2導電型の半導体、活性層に窒化物半導体を用いて本発明に係る半導体レーザ素子を構成する場合について説明する。
【0079】
本発明のレーザ素子に用いる窒化物半導体としては、GaN、AlN、もしくはInN、又はこれらの混晶であるIII−V族窒化物半導体(InbAldGa1−b−dN、0≦b、0≦d、b+d≦1)がある。加えて、III族元素としてBを用いたり、V族元素のNの一部を、As、Pで置換した混晶も用いることができる。また、このような窒化物半導体には各導電型の不純物を添加して、所望の導電型とできる。窒化物半導体に用いられるn型不純物としては、具体的にはSi、Ge、Sn、S、O、Ti、Zr等のIV族、若しくはVI族元素を用いることができ、好ましくはSi、Ge、Snを、さらに最も好ましくはSiを用いる。また、p型不純物としては、具体的には、Be、Zn、Mn、Cr、Mg、Caなどが挙げられ、好ましくはMgが用いられる。以下、本発明のレーザ素子について、具体的に窒化物半導体を用いたレーザ素子について説明する。ここで、窒化物半導体を用いたレーザ素子とは、第1の導電型層、活性層、第2の導電型層を積層した積層構造体の各層のいずれかに、窒化物半導体を用いることであり、好ましくは、全ての層に用いることである。例えば、第1の導電型層、第2の導電型層にはそれぞれ、窒化物半導体からなるクラッド層が設けられて、それら2つのクラッド層の間に活性層設けることで導波路を形成する。より具体的には、第1の導電型層にn型窒化物半導体層を、第2の導電型層にp型窒化物半導体層を含み、活性層において、Inを含む窒化物半導体層を含むものとする。
【0080】
(活性層)
本発明において、窒化物半導体を用いて本発明に係る半導体レーザ素子を構成する場合、活性層にInを含む窒化物半導体層を有することで、紫外域、可視域において青色系から赤色系の波長域のレーザ光を発生させることができるまた、Inを含む窒化物半導体層は、活性層が大気にさらされると、レーザ素子駆動において極めて重大な素子劣化を起こす場合があるが、、本発明では活性層に達しない深さで設けられた第1リッジ(凸部)202により構成された第2の導波路領域C2を含んでいるので、そのような素子劣化を最小限に抑えることが可能である。なぜなら、Inは融点が低いため、Inを含む窒化物半導体は、分解、蒸発が起こりやすい材料であり、エッチング時に損傷を受けやすく、また、活性層を露出させた後の加工において、その結晶性を保つことが困難となり、結果として、素子寿命の低下につながるからである。
【0081】
図12は、ストライプ状の凸部形成時のエッチング深さと、素子寿命との関係を示す図である。図からわかるように、Inを含む窒化物半導体を有する活性層では、活性層に達する深さでエッチングすることで、急激に素子寿命が低下し、活性層が大気にさらされることが、レーザ素子の素子信頼性を極めて悪化させることがわかる。
【0082】
本発明のレーザ素子では、導波路として、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2とを有することで、このような活性層を大気にさらすことで特性劣化が懸念される窒化物半導体を用いた半導体レーザ素子においても、素子信頼性に優れたレーザ素子を提供することが可能となる。これは、第1の導波路領域C1を構成するための第1のリッジ(凸部)201が、導波路の一部のみを構成され、素子信頼性の低下を防止することが可能になるからである。例えば、本発明の窒化物半導体を用いたレーザ素子において、共振器長を約650μmとし、第1の導波路領域C1を構成するためのストライプ状の第1のリッジ(凸部)201の長さを10μmとした場合、第1のリッジにおいて露出した活性層に起因する素子信頼性の低下がないことが確認され、5mW時の駆動において、数千時間の寿命が確保できる。
【0083】
本発明の窒化物半導体を用いたレーザ素子において、第1の導波路領域C1若しくは第2の導波路領域C2を構成するリッジのストライプの幅として好ましくは0.5〜4μmに設定され、より好ましくは、1〜3μmの範囲に調整することで、基本(単一)モードで安定した横モードでの発振が可能となる。リッジのストライプの幅が、1μm未満であるとリッジの形成が困難となり、3μm以上であるとレーザ発振波長によっては横モードが多モードになる場合があり、4μm以上になると安定した横モードが得られない場合がある。本発明においてはさらに、1.2〜2μmの範囲に調整すると、更に光出力の高い領域における横モードを効果的に安定(効果的に不用な横モードの発生を抑制する)させることができる。本発明において、リッジのストライプの幅は、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2の少なくとも一方が、前記範囲にあればよいが、共振器面の出射面側に第1の導波路領域C1を設ける場合には、この第1の導波路領域C1のストライプ状の第1のリッジ(凸部)201を前記範囲の幅で設けることが好ましい。また、本発明は、このような狭ストライプ構造に限らず、ストライプ幅5μm以上のストライプにも適用できる。また、導波路端部に第1の導波路領域Cを配置する構成においては、主としてこの第1の導波路領域Cでもって、レーザ光の光学特性を制御するため、第2の導波路領域Cのストライプ幅は、比較的に自由に設定できる。
【0084】
本発明の窒化物半導体を用いたレーザ素子において、第1の導波路領域C1の端面を共振器面(出射面)とすることで、従来得られなかった横モードの制御性、F.F.P.、アスペクト比に優れ、且つ素子信頼性にも優れるレーザ素子が得られる。これは、上述したように、活性層よりも深くエッチングして、第1の導波路領域C1を共振器面の出射面側に設けることで、レーザ素子から出射する光を、出射直前で制御することができるためであり、このこのとにより様々な形状、大きさのスポットのレーザ光を得ることが可能となる。
【0085】
ここで、活性層は、量子井戸構造であっても良く、その場合単一量子井戸、多重量子井戸のどれでも良い。好ましくは量子井戸構造とすることで、発光効率に優れ、高出力のレーザ素子、端面発光素子が得られる。また、第2の導波路領域C2を構成するためにのストライプ状の第2のリッジ(凸部)202は、活性層に達しない深さでエッチングをすることにより形成される。本明細書において、この第2のリッジ202が活性層よりも上に位置するとは、活性層に達しない深さでエッチングされて形成されることである。すなわち、第2の導波路領域C2を構成するストライプ状の第2のリッジ(凸部)202は、活性層とその上に接して設けられた層との界面よりも上に位置するように設けられる。
【0086】
窒化物半導体の活性層としては、上述したように、Inを含む窒化物半導体を用いることが好ましく、具体的には、AlInGa1−x−yN(0≦x≦1、0<y≦1、x+y≦1)で表される窒化物半導体を用いることが好ましい。この場合、量子井戸構造の活性層においては、井戸層としてここで示した窒化物半導体を用いることが好ましいことを意味する。また、近紫外から可視光の緑色までの波長領域(380nm以上550nm)では、InGa1−yN(0<y<1)を用いることが好ましく、またそれ以上の長波長領域(赤色)でも、同様にInGa1−yN(0<y<1)を用いることができ、この時主に、In混晶比yを変化させることにより、所望の波長を得ることができる。380nm以下の短波長の領域では、GaNの禁制帯幅に相当する波長が365nmであるため、GaNとほぼ同じか若しくはそれよりも大きなバンドギャップエネルギーとする必要があるため、例えばAlInGa1−x−yN(0<x≦1、0<y≦1、x+y≦1)が用いられる。
【0087】
活性層を量子井戸構造とする場合、具体的な井戸層の膜厚としては、10Å以上300Å以下の範囲、好ましくは20Å以上200Å以下の範囲とすることで、Vf、しきい値電流密度を低減させることができる。また、結晶成長の観点からは、20Å以上であると、膜厚に大きなむらがなく比較的均一な膜質の層が得られ、200Å以下とすることで結晶欠陥の発生を低く抑えた結晶成長が可能となる。活性層内の井戸層数としては特に限定されず、1以上であり、この時、井戸層の数が4以上である場合には、活性層を構成する各層の膜厚が厚くなると、活性層全体の膜厚が厚くなって、Vfの上昇を招くこととなるため、井戸層の膜厚を100Å以下の範囲として、活性層の膜厚を低く抑えることが好ましい。高出力のLD、LEDにおいては、井戸層の数を1以上3以下とすることで、高い発光効率の素子が得られる傾向にあり、好ましい。
【0088】
また、井戸層にはp又はn型の不純物(アクセプター又はドナー)がドープされていても、アンドープ若しくはノンドープであっても良い。しかしながら、井戸層としてInを含む窒化物半導体を用いる場合、n型不純物濃度が大きくなると結晶性が悪化する傾向にあるため、n型不純物濃度を低く抑えて結晶性の良好な井戸層とすることが好ましい。具体的には、結晶性を最大限に良好なものとするために井戸層をアンドープで成長させることが好ましく、具体的にはn型不純物濃度を5×1016/cm3以下にすることが好ましい。尚、n型不純物濃度を5×1016/cm3以下の状態は、極めて不純物濃度の低い状態であり、この状態では、実質的にn型不純物を含まない井戸層と言える。また、井戸層にn型不純物をドープする場合には、n型不純物濃度が1×1018以下5×1016以上の範囲でドープされていると、結晶性の悪化を低く抑え、なおかつキャリア濃度を高くすることができる。
【0089】
障壁層の組成としては、特に限定されないが、井戸層と同様の窒化物半導体を用いることができ、具体的には井戸層よりIn混晶比の低いInGaNなどのInを含む窒化物半導体、若しくはGaN、AlGaN等のAlを含む窒化物半導体などを用いることができる。この時、障壁層は、井戸層よりもバンドギャップエネルギーを大きくすることが必要である。具体的な組成としては、InβGa1- βN(0≦β<1,α>β)、GaN、AlγGa1- γN(0<γ≦1)などを用いることができ、好ましくはInβGa1- βN(0≦β<1,α>β)、GaNを用いることで良好な結晶性でもって障壁層が形成できる。これは、Inを含む窒化物半導体からなる井戸層をAlGaNなどのAlを含む窒化物半導体の上に直接成長させると、結晶性が低下する傾向にあり、井戸層の機能が悪化する傾向にあるためである。AlγGa1- γN(0<γ≦1)を障壁層として用いる場合には、Alを含む障壁層を井戸層の上に設けるようにし、井戸層の下には、InβGa1- βN(0≦β<1,α>β)、GaNの障壁層を用いた多層膜の障壁層とすることでこれを回避できる。このように、多重量子井戸構造において、井戸層に挟まれた障壁層は、特に1層であること(井戸層/障壁層/井戸層)に限るものではなく、2層若しくはそれ以上の層の障壁層を、「井戸層/障壁層(1)/障壁層(2)/・・・/井戸層」というように、組成・不純物量等の異なる障壁層を複数設けても良い。ここでαは井戸層のIn組成比であり、α>βとして障壁層のIn組成比βを井戸層より小さくすることが好ましい。
【0090】
障壁層は、n型不純物がドープされていても、ノンドープであっても良いが、好ましくはn型不純物がドープされていることである。この時、障壁層中のn型不純物濃度としては、少なくとも5×1016/cm3以上ドープされていることが好ましく、上限としては1×1020/cm3である。具体的には、例えば、高い出力を要求されないLEDである場合には、5×1016/cm3以上2×1018/cm3以下の範囲でn型不純物を有することが好ましく、また、より高出力のLED及び高出力のLDでは、5×1017/cm3以上1×1020/cm3以下の範囲、好ましくは1×1018/cm3以上5×1019/cm3以下の範囲でドープされていることが好ましく、このように高濃度でドープする場合には、井戸層にn型不純物を実質的に含まないか、アンドープで成長させることが好ましい。この時、通常のLEDと、高出力のLED(ハイパワーLED)と高出力のLD(5〜100mW出力のLDなど)とで、n型不純物量が異なるのは、高出力の素子では、より大電流で駆動させ高い出力を得るために、高いキャリア濃度を必要とするためである。前記好ましい範囲でドープされることで、上述したように、良好な結晶性で、高濃度のキャリアを注入することが可能となる。
【0091】
これとは逆に、高出力でない低出力のLD、LED等の窒化物半導体素子の場合には、活性層中の一部の障壁層にn型不純物をドープしたもの、若しくは全ての障壁層を実質的にn型不純物を含まないものとしても良い。n型不純物をドープする場合には、活性層内の全ての障壁層にドープしても良く、一部の障壁層にドープしても良い。一部の障壁層にn型不純物をドープする場合には、活性層内で、n型層側配置された障壁層にドープすることが好ましく、具体的には、n型層側から数えてn番目の障壁層B(n=1,2,3・・・)にドープすることで、電子が効率的に活性層内に注入され、発光効率、内部量子効率に優れた素子となる。これは、障壁層に限らず、井戸層についても同様であり、また両方にドープする場合には、n型層から数えてn番目の障壁層B(n=1,2,3・・・)、m番目の井戸層W(m=1,2,3・・・)にドープすること、すなわち、n型層に近い側からドープすることで、前記効果が得られる傾向にある。
【0092】
障壁層の膜厚としては、特に限定されず500Å以下、より具体的には井戸層と同様に10Å以上300Å以下の範囲が適用できる。
【0093】
本発明の窒化物半導体を用いたレーザ素子において、積層構造体として、第1の導電型層にn型窒化物半導体を有すること、第2の導電型層にp型窒化物半導体を用いることが好ましく、具体的には、それぞれの導電型層に、n型クラッド層、p型クラッド層を設けて、導波路を構成するようにする。この時、各クラッド層と、活性層との間には、後述するようなガイド層、電子閉込め層などを設けても良い。
【0094】
(p型クラッド層)
本発明の窒化物半導体を用いたレーザ素子において、第2の導電型層若しくは第1の導電型層として、p型窒化物半導体(第1のp型窒化物半導体)を含むp型クラッド層を設けることが好ましい。このとき、p型クラッド層が設けられた導電型層とは異なる導電型層に、n型窒化物半導体を含むn型クラッド層を設けて、積層構造体に導波路を形成する。また、このp型クラッド層に用いられる窒化物半導体としては、光を閉じ込めるのに十分な屈折率差が設けられていれば良く、Alを含む窒化物半導体層が好ましく用いられる。また、この層は、単一若しくは多層膜であっても良く、具体的には実施例に示すように、AlGaNとGaNとを交互に積層した超格子構造であっても良く、超格子構造とすると結晶性を良好なものとでき好ましい。さらに、この層は、p型不純物がドープされていても良いし、アンドープであっても良く、実施例に示すように多層膜層において、それを構成する少なくとも1つの層にドープしたものであっても良い。なお、発振波長が長波長の430〜550nmのレーザ素子では、このクラッド層はp型不純物をドープしたGaNが好ましい。また、膜厚としては、特に限定されるものではないが、100Å以上2μm以下で形成すること、好ましくは500Å以上1μm以下の範囲で形成することで、十分な光の閉込め層として機能する。
【0095】
また、本発明において、活性層とp型クラッド層との間に、後述する電子閉込め層、光ガイド層を設けても良い。この時、光ガイド層を設ける場合には、n型クラッド層と活性層との間にも、光ガイド層を設けて、活性層を光ガイド層で挟み込む構造とすることが好ましい。この場合には、SCH構造となり、クラッド層のAl組成比をガイド層のAl組成比より大きくして屈折率差を設け、クラッド層で光を閉込める。クラッド層とガイド層のがそれぞれ多層膜で形成される場合には、Alの組成比の大小はAl平均組成により決定する。
【0096】
(p型電子閉込め層)
また、活性層とp型クラッド層との間、好ましくは活性層とp型光ガイド層との間に設けられるp型電子閉込め層は、活性層へのキャリアの閉込めとしても機能する層であり、閾値電流を低下させることにより容易な発振に寄与し、、具体的にはAlGaNを用いる。特に、第2の導電型層に、p型クラッド層、p型電子閉込め層を設ける構成とすることで、より効果的な電子閉じ込め効果が得られる。このp型電子閉込め層にAlGaNを用いる場合には、好ましくはp型不純物をドープしたものとすることでより確実に前記機能を発揮し得るが、ノンドープであっても前記キャリアの閉込めとして機能を有する。膜厚の下限としては、少なくとも10Åで好ましくは20Åである。また、膜厚としては、500Å以下で形成し、AlxGa1-xNの組成としては、xが0以上、好ましくは0.2以上とする事で前記効果が十分に期待できる。また、n型層側にも、ホールを活性層内に閉じ込めるn側キャリア閉込め層を設けても良い。ホールの閉込めは、電子を閉じ込める場合ほどオフセット(活性層とのバンドキャップの差)を設けなくても、閉込めが可能である。具体的には、p側電子閉込め層と同様の組成を適用できる。また、結晶性を良好なものとするためには、Alを含まない窒化物半導体により形成しても良く、具体的には、活性層の障壁層とほぼ同じ組成を用いることができ、この場合には、キャリア閉込めとなるn側障壁層を、活性層内で最もn型層側に配置させることが好ましく、若しくは活性層に接して、n型層内に配置しても良い。このように、p側、n側のキャリア閉込め層は、好ましくは活性層に接して設けることで、効率良く活性層若しくは井戸層内にキャリアを注入でき、別の形態としては、活性層内において、p側、n側の層と接する層をキャリア閉込め層とすることもできる。
【0097】
(p型ガイド層)
本発明において、活性層を挟むガイド層をクラッド層より内側に設けて、光導波路を形成することで、窒化物半導体において優れた導波路を形成することができる。この時、導波路(活性層とそれを挟み込む両ガイド層)の膜厚としては、具体的には6000Å以下とし、発振閾値電流の急激な増大を抑制し、好ましくは4500Å以下とすることで、低く抑えられた発振閾値電流で、基本モードによる長寿命の連続発振が可能となる。また、両ガイド層は、ほぼ同じ膜厚で形成することが好ましく、ガイド層の膜厚としては100Å以上1μm以下の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは500Å以上2000Å以下で形成することで良好な光導波路を設けることができる。更に、ガイド層としては、窒化物半導体からなり、その外側に設けられるクラッド層と比較して、導波路を形成するために十分なエネルギーバンドギャップを有していればよく、単一の膜、多層膜のどちらでも良い。また、光ガイド層として、具体的には、活性層とほぼ同じ、好ましくはそれよりも大きなバンドギャップエネルギーとすることで良好な導波路の形成が可能であり、量子井戸構造の場合には井戸層よりもバンドギャップエネルギーを大きくし、好ましくは障壁層よりも大きくすることである。さらには、活性層の発光波長よりも10nm程度以上のバンドギャップエネルギーを光ガイド層に設けることで、光の導波に優れた導波路が形成できる。
【0098】
p側光ガイド層として具体的には、発振波長が370〜470nmではアンドープのGaNを用い、比較的長波長な領域(450μm以上)では、InGaN/GaNの多層膜構造を用いることが好ましい。これにより、長波長の領域において、活性層及び光ガイド層により構成される導波路内の屈折率を大きくでき、クラッド層との屈折率差を大きくできる。また、370nm以下の短波長の領域では、GaNの吸収端が365nmであるため、好ましくは、Alを含む窒化物半導体を用いることであり、具体的にはAlGa1−xN(0<x<1)を用いることが好ましく、AlGaN/GaNからなる多層膜、これを交互に積層した多層膜、更に各層を超格子とした超格子多層膜とすることができる。n型ガイド層の具体的な構成は、p型ガイド層と同様であり、活性層のエネルギーバンドギャップを考慮して、GaN、InGaNを用い、アンドープのGaN、活性層に近づくに従いIn混晶比を小さくしたInGaNとGaNとを交互に積層した多層膜で設けると好ましい導波路となる。
【0099】
(n型クラッド層)
本発明の窒化物半導体を用いたレーザ素子において、n型クラッド層に用いる窒化物半導体としては、p型クラッド層と同様に、光を閉じ込めるのに十分な屈折率差が設けられていれば良く、Alを含む窒化物半導体層が好ましく用いられる。また、この層は、単一若しくは多層膜であっても良く、具体的には実施例に示すように、AlGaNとGaNとを交互に積層した超格子構造であっても良い。また、このn型クラッド層は、キャリアの閉込め層、及び光閉込め層として作用し、多層膜構造とする場合には、前述のように、Alを含む窒化物半導体、好ましくはAlGaNを成長させると良い。さらに、この層は、n型不純物がドープされていても良いし、アンドープであっても良く、実施例に示すように多層膜層において、それを構成する少なくとも1つの層にドープしたものであっても良い。なお、発振波長が長波長の430〜550nmのレーザ素子では、このクラッド層はn型不純物をドープしたGaNが好ましい。また、膜厚としては、p型クラッド層と同様に、特に限定されるものではないが、100Å以上2μm以下で形成すること、好ましくは500Å以上1μm以下の範囲で形成することで、十分な光の閉込め層として機能する。
【0100】
ここで、窒化物半導体を用いたレーザ素子において、ストライプ状のリッジを設ける位置を、Alを含む窒化物半導体層内とし、露出した窒化物半導体表面及び凸部側面に絶縁膜を設けることで、良好な絶縁がなされ、絶縁膜の上に電極を設けても、リーク電流のないレーザ素子を得ることができる。これは、Alを含む窒化物半導体には、良好なオーミックコンタクトをなし得る材料がほとんどないため、この半導体表面に絶縁膜、電極などを設けても、リーク電流の発生がほとんどない、好適な絶縁が成されることにある。逆に、Alを含まない窒化物半導体表面に電極を設けると、その電極材料と窒化物半導体との間にオーミックコンタクトが形成されやすく、Alを含まない窒化物半導体表面に絶縁膜を介して電極を形成すると、絶縁膜、電極の膜質により、絶縁膜に微少な孔がある場合にリークの原因となる。そのため、それらを解決するために、絶縁が十分に確保される膜厚で絶縁膜を形成するか、電極の形状、位置を露出した半導体表面にかからないようにするなどの配慮が必要となり、レーザ素子構造の設計において、大きな制約が加わることになる。また、リッジ(凸部)が設けられる位置が問題になるのは、リッジ(凸部)形成時に露出されるリッジの両側の窒化物半導体表面(平面)は、リッジ(凸部)側面に比べて、極めて大きな面積を占めるものであり、この表面において良好な絶縁性が確保されることで、様々な電極形状を適用できかつ電極形成位置を比較的自由に選べる設計自由度の高いレーザ素子となり、リッジ(凸部)の形成において極めて有利なものとなる。ここで、Alを含む窒化物半導体としては、具体的には、AlGaN、若しくは上述したAlGaN/GaNの超格子多層膜構造などが好適に用いられる。
【0101】
ここで、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2として、設けられるストライプ状の第1のリッジ(凸部)201、第2のリッジ202は、図1(b)、1(c)に示すように、各リッジの両側を除去することで形成される。凸部202は上部クラッド層7に設けられ、その時、凸部以外の領域において、上部クラッド層7が露出された表面・平面の位置が、エッチング深さとなる。
【0102】
[電極]
本発明のレーザ素子において、ストライプ状の第1のリッジ及び第2のリッジの上に設ける電極形状により本発明は、特に限定されるものではない。例えば、図1、7等に示すように、第1の導波路領域C1と、第2の導波路領域C2として設けられたストライプ状の第1のリッジ201および第2のリッジ202のそれぞれのほぼ全面に設ける構造であっても良い。また、、例えば、第2の導波路領域C2にのみ電極を設け、第2の導波路領域C2に優先的にキャリアを注入するようにしてもよいし、その逆に第1の導波路領域C1にのみ電極を設ける構造として、共振器方向において導波路内を機能分離させても良い。
【0103】
[絶縁膜]
本発明のレーザ素子において、前記積層構造体の一部を除去して、ストライプ状のリッジを設けて共振器とするような場合には、そのストライプ側面、及びそれに連続するリッジ両側の平面(凸部が設けられている表面)に絶縁膜を形成することが好ましい。例えば、図1に示すようなストライプ状のリッジを設けた後、そのリッジ側面から、リッジの両側の表面にかけて、設けるなどする。
【0104】
本発明のレーザ素子において、窒化物半導体を用いた場合には、図7、8、9に示すように、絶縁膜として、第2の保護膜162を設けることが好ましい。
【0105】
第2の保護膜の材料としてはSiO2以外の材料、好ましくはTi、V、Zr、Nb、Hf、Taよりなる群から選択された少なくとも一種の元素を含む酸化物、SiN、BN、SiC、AlNの内の少なくとも一種で形成することが望ましく、その中でもZr、Hfの酸化物、BN、SiCを用いることが特に好ましい。これらの材料はフッ酸に対しても多少溶解する性質を有しているものもあるが、レーザ素子の絶縁層として用いれば埋め込み層としてSiO2よりもかなり信頼性が高くなる傾向にある。また一般的にPVD、CVDのような気相で成膜した酸化物系薄膜は、その元素と酸素とが当量反応した酸化物となりにくいので、酸化物系薄膜の絶縁性に対する信頼性が不十分となり易い傾向にあるが、本発明で選択した前記元素のPVD、CVDによる酸化物、BN、SiC、AlNはSi酸化物よりも絶縁性に関する信頼性に優れている。しかも酸化物の屈折率を窒化物半導体よりも小さいもの(例えばSiC以外のもの)を選択すると、レーザ素子の埋め込み層として非常に都合がよい。さらにまた、第1の保護膜161をSi酸化物を用いて形成すると、Si酸化物は、フッ酸により除去されるので、図7(b)に示すようにリッジの上面のみに第1の保護膜161を形成して、その上及びリッジの側面、そのリッジの両側の平面(エッチストップ層)、第2の保護膜162を連続して形成して、第1の保護膜161を選択的に除去すると、図7(c)に示すように、リッジの上面を除く面に均一な膜厚を有する第2の保護膜162を形成することができる。
【0106】
また、第2の保護膜の膜厚としては、具体的には、500Å以上1μm以下の範囲、好ましくは1000Å以上5000Å以下の範囲とすることである。なぜなら、500Å以下であると、電極の形成時に、十分な絶縁性を確保することが困難で、1μm以上であると、かえって保護膜の均一性が失われ、良好な絶縁膜とならないからである。また、前記好ましい範囲にあることで、リッジ(凸部)側面において、リッジとの間に良好な屈折率差を有する均一な膜が形成される。
【0107】
また、第2の保護膜を窒化物半導体の埋込層により形成することもでき、半絶縁性、i型の窒化物半導体、各導波路領域のリッジとは逆の導電型、例えば、実施例1の第2の導波路領域Cにおいてはn型の窒化物半導体からなる埋込層を形成してその埋込層を第2の保護膜として用いることができる。また、埋込層の具体例としては、AlGaNなどのAlを含む窒化物半導体によりリッジとの間に屈折率差を設けたり、電流阻止層として機能させたりすることで横方向の光の閉込めが実現され、Inを含む窒化物半導体により光吸収係数差を設けて、レーザ素子としての良好な光学特性が実現される。埋込層に、i型、半絶縁性以外の層を用いる場合には、第2の導波路領域は第2導電型と異なる第1導電型の埋込層とすればよい。一方で、第1の導波路領域を構成する第1のリッジでは、活性層を挟んで、第1,2の導電型層がそれぞれストライプ状に形成されるため、第1の導電型層、若しくは第1の導電型層及び活性層の両側の領域では、第1の導電型と異なる第2の導電型の埋込層とし、第2の導電型層、若しくは第2の導電型層及び活性層の領域では、第2の導電型と異なる第1の導電型の埋込層とする。このように、第1の導波路領域、第2の導波路領域とで、埋込層を異なる層構成とすることもできる。また、埋込層は、第2の保護膜と同様に、ストライプ側面の一部、好ましくはほぼ全面に形成する。また更には、埋込層はリッジ側面とそのリッジの両側の窒化物半導体の表面(平面)に連続して形成することで、より良好な光閉込め、電流狭窄機能を発揮させることができ好ましい。また、埋込層を形成した後、さらにその上に、窒化物半導体の層を、埋込層及び/又はストライプ上部に形成し、各導波路領域を構成するリッジを素子内部に配置した構造とすることもできる。
【0108】
本発明における窒化物半導体を用いたレーザ素子の共振器長としては、400〜900μmの範囲であれば、前後のミラーの反射率を制御することで、駆動電流を低くすることができ、好ましい。
【0109】
[製造方法]
以上のように、本発明の窒化物半導体を用いたレーザ素子は、良好な素子特性を実現でき、更にその第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2となるストライプは以下の方法により形成することで、本発明のレーザ素子におけるストライプ状の導波路領域を精度良く、且つ歩留まり良く製造できる。また、以下の製造方法により信頼性の高いレーザ素子を製造することができる。以下、その製造方法について詳述する
【0110】
また、図8、9に示すように、異種基板の同一面側に正・負一対の電極を形成した素子を製造する場合には、図7に示すように、負電極を形成するn型コンタクト層を露出させるため、その深さまでエッチングを行い、その後ストライプ状の導波路領域を形成するエッチングを行う。
【0111】
(ストライプ状リッジ(凸部)の形成方法1)
図5は、本発明の電極形成方法の工程を説明するための、窒化物半導体を用いた素子構造を形成したウェハの一部を示す模式的な斜視図であり、図6も同様な図で、本発明における別の実施形態を説明するものであり、図7は、第2の保護膜形成後の工程を説明する図であり、図7(b)は、図7(a)において、第2の導波路領域C2断面図を示すものであり、図7(c)は、図7(d)において、第2の導波路領域C2断面図を示すものである。本発明の製造方法において、図5(a)に示すように、素子構造を構成する各半導体層を積層した後、最上層にある第2の導電型層中のコンタクト層8の上にストライプ状の第1の保護膜161を形成する。
【0112】
第1の保護膜161は、特に絶縁性は問わず、窒化物半導体のエッチング速度と差がある材料であればどのような材料でも良い。例えばSi酸化物(SiO2を含む)、フォトレジスト等が用いられ、好ましくは、後に形成する第2の保護膜との溶解度差を設けるために、第2の保護膜よりも酸に対して溶解されやすい性質を有している材料を選択する。酸としてはフッ酸を好ましく用い、そのためフッ酸に対して溶解しやすい材料として、Si酸化物を用いることが好ましい。第1の保護膜のストライプ幅(W)としては3μm〜1μmに調整する。第1の保護膜161のストライプ幅が、おおよそ導波路領域を構成するためのリッジのストライプ幅に相当する。
【0113】
図5(a)は前記第1の保護膜161が、積層構造体表面に形成された様子を示すものである。即ち、図5(a)に示すようなストライプ状の第1の保護膜は、先ず、積層構造体表面のほぼ全面に、第2の保護膜を形成した後、フォトリソグラフィー技術により、所望の形状のマスクを第1の保護膜表面に設けて、コンタクト層8表面にストライプ状の第1の保護膜161を形成する。
【0114】
また図5(a)に示すようなストライプ状の第1の保護膜161を形成するにはリフトオフ法を用いることもできる。即ち、ストライプ状の孔が開いた形状のフォトレジストを形成し、そのフォトレジストの上から全面に第1の保護膜を形成し、その後フォトレジストを溶解除去することにより、コンタクト層8と接触している第1の保護膜161のみを残す手段である。なおリフトオフ法でストライプ状の第1の保護膜を形成するよりも、前述のようにエッチングにより形成することにより、端面がほぼ垂直で形状が整ったストライプが得られやすい傾向にある。
【0115】
次に、図5(b)に示すように、第1の保護膜161をマスクとして、該第1の保護膜161が形成されていない部分をコンタクト層8からエッチングして、第1の保護膜161の直下部分に保護膜の形状に応じたストライプ状のリッジを形成する。エッチングを行う場合、エッチストップをどの位置にするかでレーザ素子の構造、特性が異なってくる。
【0116】
窒化物半導体を用いて形成された層をエッチングする手段としては、例えばRIE(反応性イオンエッチング)のようなドライエッチングを用い、Si酸化物よりなる第1の保護膜をエッチングするには、CF4のようなフッ素化合物系のガスを用いることが望ましく、第2の工程では窒化物半導体をエッチングするには他のIII−V族化合物半導体で良く用いられている、Cl2、CCl4、SiCl4のような塩素系のガスを用いると、Si酸化物との選択比が大きくできるため望ましい。
【0117】
続いて、図5(c)に示すように、ストライプ状のリッジの一部を覆うように、第3の保護膜163を形成する(図5(e)は、図5(c)における第3の保護膜163で覆われた部分の断面図)。第3の保護膜163としては、レジスト膜として、耐ドライエッチング性のある一般的に知られたレジスト膜を用いることができ、具体的には光硬化性樹脂などを用いることができる。この時、第3の保護膜163に覆われたストライプ状のリッジが、第2の導波路領域C2を構成するための第2のリッジ202となり、第3の保護膜で覆われていない領域に、第1の導波路領域C1を構成するための第1のリッジ(凸部)201が形成される。このようにして設けられた第3の保護膜163、第1の保護膜161をマスクとして、それらのマスクが形成されていない積層構造体においてさらにクラッド層5に達する深さで、エッチングして、深さの異なるストライプ状のリッジ(第1のリッジ)が形成される。その後、第3の保護膜163を除去して、図5(d)のように第1のリッジ及び第2のリッジ上に第1の保護膜161を残す(図5(f)は図5(d)における第2のリッジ部の断面図)。
【0118】
次に、図7(a)に示すように、第1の保護膜161と異なる材料であって、絶縁性を有する第2の保護膜162を、ストライプ状のリッジ(凸部)側面と、エッチングされて露出した層(図7では、クラッド層5,7)の平面とに形成する。第1の保護膜161は第2の保護膜162と異なる材料により形成し、、エッチング手段に対して、第1の保護膜161と第2の保護膜162とにおいて選択性を持たせている。そのため、後に第1の保護膜161のみを、例えばフッ酸で除去すると、次の図7(b)に示すような、リッジの上面を開口させ、クラッド層5、7の表面(エッチングにより露出された窒化物半導体の平面)とリッジの側面との両方に連続した第2の保護膜162を形成することができる。このように、第2の保護膜162を連続して形成することにより、高い絶縁性を保持できる。加えて、第1の保護膜161の上から連続して第2の保護膜162を形成すると、クラッド層5、7の上に均一な膜厚で形成できるため、膜厚の不均一が起こりにくく、膜厚の不均一に起因する電流の集中も発生しなくなる。なお、この工程においてエッチストップをクラッド層5,7の途中としているため、図7(a)では第2の保護膜162はクラッド層5,7の平面(露出された上面)に形成されるが、エッチストップをクラッド層5,7よりも下にすると、当然第2の保護膜はそのエッチストップした層の平面に形成されることは言うまでもない。
【0119】
次の工程では、図7(b)に示すように、第1の保護膜161をリフトオフにより除去する。その後に、第2の保護膜162とコンタクト層8の上に、そのコンタクト層8と電気的に接触するように電極を形成する。本発明では、リッジの上にストライプ状の開口部を有する第2の保護膜を先に形成しているために、この電極を形成する際に、ストライプ幅の狭いコンタクト層のみに電極を形成する必要がなく、開口部に露出したコンタクト層から第2の絶縁膜上に連続した電極を大面積で形成できる。これにより、オーミック接触を兼ねた電極材料を選択してオーミック接触用の電極とボンディング用の電極を兼ねた電極とを一緒に形成できる。
【0120】
窒化物半導体を用いたレーザ素子では、ストライプ状の導波路領域を形成する場合、ウェットエッチングではエッチングが難しいため、ドライエッチングが用いられる。ドライエッチングでは、第1の保護膜と窒化物半導体との選択性が重要視されるため、第1の保護膜としてSiO2が用いられる。しかしながらSiO2をエッチストップした層の上面に形成する第2の保護膜にも使用すると、絶縁性が不十分であり、また第1の保護膜と同一材料であるので、第1の保護膜のみを除去することが困難となる。そのため、本発明では、第2の保護膜をSiO2以外の材料とし、第1の保護膜との間の選択性を確保している。、また、第2の保護膜形成後は窒化物半導体をエッチングすることがないため、第2の保護膜は、窒化物半導体との間のエッチング速さに関して、問題とされることはない。
【0121】
(ストライプ状凸部の形成方法2)
図16は本発明の半導体レーザの別な製造方法の工程を説明するための、窒化物半導体を用いた素子構造を形成したウエハの一部を示す模式的な斜視図である。各工程は前述した形成方法1の工程とほぼ同様に行うが、ここでは、負電極を形成するn型コンタクト層を露出させるためにエッチングをする時に同時に、共振器端面を形成するものである。つまり、形成方法1とは各部位の形成される順序が異なる。形成方法2では、まずn型コンタクト層を露出させる(図16(a))。このとき、共振器端面も同時に形成しておく。次いでストライプ状のリッジ(凸部)及び第1、第2の導波路領域、更に電極を形成する工程は、前記形成方法1と同様に行う(図16(b))。このように、まずエッチングにより共振器端面を形成しておくことで、劈開では良好な共振器端面が得られない場合などにも対応することができる。
【0122】
以上説明したように、本発明のレーザ素子において、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2を構成するためのストライプ状の第2のリッジ(凸部)202を、効率的に形成することができ、また、電極を積層構造体のリッジの表面に形成できる。
【0123】
(エッチング手段)
本発明の製造方法において、窒化物半導体のエッチング手段としては、例えばRIE(反応性イオンエッチング)のようなドライエッチングを用いる場合、第1の工程で多用するSi酸化物よりなる第1の保護膜をエッチングするために、CF4のようなフッ素化合物系のガスを用いることが望ましく、第2の工程では窒化物半導体をエッチングするために他のIII−V族化合物半導体で良く用いられている、Cl2、CCl4、SiCl4のような塩素系のガスを用いることが、Si酸化物との選択比が大きくできるので望ましい。
【0124】
(チップ化)
図17は、前記のようにウエハ上に形成された積層構造体をチップ化する時の切断位置を説明するための模式的断面図である。図17(a)は、基板のみを、図17(b)は基板とn型層とを分割する場合を示す。また、1対の電極が形成された領域を1つの単位として、図のように左からI、II、III、IVとする。図17(a)のIa、IIa、IVaは第1の導波路領域が右側に向いており、IIIaはその逆に向いている。また、図17(b)は、Ib、IIb、IIIbは第1の導波路領域が右側に向いており、IVbはその逆に向いている。なお、このような分割前の配置は、工程等に応じて、好適なものを選択することができる。
【0125】
AA切断位置で分割すると、エッチングにより形成された共振器端面をそのまま残すことができる。I及びIIでは、AA切断面で分割後、更にBB切断面で分割すると、光反射側の共振器端面が劈開面となる。また、IIはDD切断面で分割することで、光出射側の共振器端面も劈開面となる。また、CC切断面で分割すると、IIIaとIVaの光反射側の共振器端面が同時に劈開面として形成される。同様にEE切断面で分割すると、IIIbとIVbの光出射側の共振器端面が、同時に劈開面として形成される。このように、素子の端面及び共振器面は、切断位置によってエッチング端面あるいは劈開端面とすることができる。
【0126】
ここで、図17(a)に示すIa及びIIaの間のように、Iaの共振器端面とIIbとの共振器端面の間には基板のみしか存在しないようにするには、前述の図16(b)のようにエッチングにより共振器端面を形成したものを、さらに基板までエッチングすることで得ることができる。このように基板までエッチングするのは、分割する際に、半導体層にクラックが生じるのを防ぐためである。ここで、図16(a)を経ずに、1度のエッチングで基板まで露出させると、エッチング時間が長いために先に露出される活性層近傍のエッチング面が荒れてしまい、良好な共振器端面が得られにくくなる。しかし、図16(a)のようなn型層までのエッチング工程を経て、次いで、基板までのエッチングを行うというように2度に分けて行うことで、良好な共振器端面が得られ、かつ、分割もしやすくすることができる。図16(d)は図16(c)を矢印の位置で切断した図であるが、前記のように2度のエッチング工程を経ることで、図中のDのような突き出し領域が生じる。基板までエッチングするときには、この突き出し領域Dの光の出射方向への突き出しが小さくなるように行う必要がある。なぜなら、Dの幅(突き出す長さ)が大きくなると、光出射面から出射された光が遮られて良好なF.F.P.が得られにくくなるからである。この場合、少なくとも光出射側の端面でのDが小さければ問題はない。
【0127】
(反射膜)
図18は、共振器端面に設ける反射膜の形成方法を説明するための模式図である。図18のようにバー状に分割した半導体を光反射側の端面或いは光出射側の端面が反射膜の原料と対向するように設置して、スパッタなどの方法で反射膜を形成する。このようにバー状に分割してその分割面を反射膜の原料と対向するように設置してスパッタで形成することで、多層膜にする場合でも膜質が均一で劣化しにくい高品質の反射膜を形成することができる。このような反射膜は、高出力が要求される素子に用いる場合により効果的であり、特に多層膜にすることで高出力に耐えうる反射膜とすることができる。端面の反射膜は、電極の上部からスパッタしても、側面になっている共振器端面にまで回り込ませるようにして形成することもできる。しかしその場合は、バー状にして端面を上に向けるという工程を省くことができるというメリットはあるものの、端面に対して横方向から回り込むように形成されていくので、均一な膜、特に多層膜が得られにくくなり、膜質がやや劣るものとなる。なお、このような反射膜は、光反射端面及び光出射端面の両方に設けてもよく、また、片方だけでもよく、また、異なる材料を用いていてもよい。
【0128】
また、本発明において、その他の活性層、クラッド層等のデバイス構造としては、特に限定されず、種々の層構造を用いることができる。デバイス構造の具体的な実施の形態としては、例えば後述の実施例に記載されているデバイス構造が挙げられる。また、電極等も特に限定されず種々のものを用いることができる。また、レーザ素子として用いた各層の窒化物半導体は、特にその組成に限定されるものではなく、上述した組成式(InbAlcGa1−b−cN、0≦b、0≦d、b+d<1)であらわされる窒化物半導体を用いることができる。
【0129】
本発明において、窒化物半導体の成長はMOVPE、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、HVPE(ハライド気相成長法)、MBE(分子線気相成長法)等、窒化物半導体を成長させるのに知られているすべての方法を適用できる。
【0130】
実施例
以下本発明に係る実施例について説明する。
【0131】
以下の実施例は、窒化物半導体を用いたレーザ素子であるが、本発明のレーザ素子は、これに限らず、本発明の技術的思想において、様々な半導体に実施できることは言うまでもない。
【0132】
[実施例1]
以下、実施例1のレーザ素子について、説明する。具体的には、実施例1として、図8に示す断面構造を有する第2の導波路領域Cと、図9に示す断面構造を有する第1の導波路領域Cとを備えたレーザ素子を作製する。
【0133】
ここで、本実施例1ではサファイア基板、すなわち、基板として窒化物半導体と異なる異種基板を用いているが、GaN基板などの窒化物半導体からなる基板を用いても良い。ここで、異種基板としては、例えば、C面、R面、及びA面のいずれかを主面とするサファイア、スピネル(MgA124)のような絶縁性基板、SiC(6H、4H、3Cを含む)、ZnS、ZnO、GaAs、Si、及び窒化物半導体と格子整合する酸化物基板等、窒化物半導体を成長させることが可能な基板を用いることができる。好ましい異種基板としては、サファイア、スピネルが挙げられる。また、異種基板は、通常使用される低指数面から傾いた面を有していてもよく(オフアングル)、この場合ステップ状にオフアングルされた基板を用いると窒化ガリウムからなる下地層の成長を結晶性よく成長させることができる。
更に、異種基板を用いる場合には、異種基板上に下地層となる窒化物半導体を成長させた後、素子構造形を成する前に、異種基板を研磨などの方法により除去して下地層のみとし、その下地層を窒化物半導体の単体基板として素子構造を形成してもよく、また、素子構造形成後に、異種基板を除去してもよい。
【0134】
図8のように、異種基板を用いる場合には、バッファ層、下地層を形成した上に、素子構造を形成すると、良好な窒化物半導体からなる素子構造を形成できる。ここで、図8は、第2の導波路領域C2における素子構造を説明する断面図であり、図9は、第1の導波路領域C1における素子構造を説明する断面図である。
【0135】
(バッファ層102) 本実施例1では最初に、2インチφ、C面を主面とするサファイアよりなる異種基板101をMOVPE反応容器内にセットし、温度を500℃にして、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH3)を用い、GaNよりなるバッファ層を200Åの膜厚で成長させる。
【0136】
(下地層103) バッファ層102を成長させた後、温度を1050℃にして、TMG、アンモニアを用い、アンドープGaNよりなる窒化物半導体層103を4μmの膜厚で成長させる。この層は、素子構造を形成するための下地層(成長基板)として形成するものである。下地層として、その他に、ELOG(Epitaxially Laterally Overgrowth)成長させた窒化物半導体を用いることができ、こうすると、より結晶性が良好な窒化物半導体を成長させることができる。ELOG成長とは、横方向成長を伴う成長方法の総称であり、例えば、異種基板上に、窒化物半導体層を成長させた後、その表面に窒化物半導体の成長が困難な保護膜を、例えば、ストライプ状に一定間隔で形成し、その保護膜の間に露出した窒化物半導体表面から新たに窒化物半導体を成長させることにより、基板全体を窒化物半導体で覆う成長方法である。すなわち、マスクが形成されたマスク領域と、窒化物半導体が露出した非マスク領域とを交互に形成し、その非マスク領域に露出した窒化物半導体表面から窒化物半導体を再び成長させると、最初は厚さ方向に成長が進んでいたものが、成長が進むに従いマスク領域を覆うように横方向にも成長して基板全体を覆うようになる。
また、ELOG成長として、異種基板上に最初に成長させた窒化物半導体層において、基板表面が露出するように開口部を設け、その開口部側面に位置する窒化物半導体から横方向へ窒化物半導体を成長させることにより、成膜する方法もある。
本発明では、これら種々のELOG成長を用いることができ、これらのELOG成長方法を用いて、窒化物半導体を成長させると、横方向の成長により形成された窒化物半導体は、結晶性が良好であることから、全体として結晶性の良好な窒化物半導体層が得られるという利点がある。
【0137】
次に、窒化物半導体からなる下地層の上に、素子構造を構成する以下の各層を積層する。
【0138】
(n型コンタクト層104)
まず、得られた窒化物半導体基板(下地層)103上にTMG、アンモニア、不純物ガスとしてシランガスを用い、1050℃でSiを1×1018/cmドープしたGaNよりなるn型コンタクト層104を4.5μmの膜厚で成長させる。
【0139】
(クラック防止層105) 次に、TMG、TMI(トリメチルインジウム)、アンモニアを用い、温度を800℃にしてIn0.06Ga0.94Nよりなるクラック防止層105を0.15μmの膜厚で成長させる。なお、このクラック防止層は省略可能である。
【0140】
(n型クラッド層106) 次に、温度を1050℃にして、原料ガスとしてTMA(トリメチルアルミニウム)、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのAlGaNよりなるA層を25Åの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cmドープしたGaNよりなるB層を25Åの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ160回繰り返してA層とB層の積層し、総膜厚8000Åの多層膜(超格子構造)よりなるn型クラッド層106を成長させる。この時、アンドープAlGaNのAl混晶比としては、0.05以上0.3以下の範囲であれば、十分にクラッド層として機能する屈折率差を設けることができる。
【0141】
(n型光ガイド層107) 次に、同様の温度で、原料ガスとしてTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるn型光ガイド層107を0.1μmの膜厚で成長させる。n型光ガイド層107には、n型不純物をドープしてもよい。
【0142】
(活性層108) 次に、温度を800℃にして、原料ガスとしてTMI(トリメチルインジウム)、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cmドープしたIn0.05Ga0.95Nよりなる障壁層を100Åの膜厚で成長させる。続いて、シランガスを止め、アンドープのIn0.1Ga0.9Nよりなる井戸層を50Åの膜厚で成長させる。この操作を3回繰り返し、最後が障壁層となるように積層した総膜厚550Åの多重量子井戸構造(MQW)の活性層108を成長させる。
【0143】
(p型電子閉込層109) 次に、同様の温度で原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてCpMg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、Mgを1×1019/cmドープしたAlGaNよりなるp型電子閉込層109を100Åの膜厚で成長させる。この層は、特に設けなくても良いが、電子閉込めとして機能し、閾値の低下に寄与する。
【0144】
(p型光ガイド層110) 次に、温度を1050℃にして、原料ガスとしてTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるp型光ガイド層110を750Åの膜厚で成長させる。
このp型光ガイド層110は、アンドープとして成長させるが、p型電子閉込層109からのMgの拡散により、Mg濃度が5×1016/cmとなりp型を示す。またこの層は成長時に意図的にMgをドープしても良い。
【0145】
(p型クラッド層111) 続いて、1050℃でアンドープAl0.16Ga0.84Nよりなる層を25Åの膜厚で成長させ、続いてTMAを止め、Cp2Mgを用いて、MgドープGaNよりなる層を25Åの膜厚で成長させ、これを繰り返すことにより、総膜厚0.6μmの超格子層よりなるp側クラッド層111を成長させる。p側クラッド層は少なくとも一方がAlを含む窒化物半導体層を含み、互いにバンドギャップエネルギーが異なる窒化物半導体層を積層した超格子で作製する場合、不純物はいずれか一方の層に多くドープして、いわゆる変調ドープを行うと結晶性が良くなる傾向にある。しかしながら、本発明では、両方に同じようにドープしても良い。クラッド層111は、Alを含む窒化物半導体層、好ましくはAlXGa1-XN(0<X<1)を含む超格子構造とすることが望ましく、さらに好ましくはGaNとAlGaNとを積層した超格子構造とする。p側クラッド層111を超格子構造とすることによって、クラッド層全体としてのAl混晶比を大きくすることができるので、クラッド層自体の屈折率を小さくでき、さらにバンドギャップエネルギーを大きくできるので、閾値を低下させる上で非常に有効である。さらに、超格子としたことにより、クラッド層自体に発生するピットが超格子にしないものに比較して少なくできるので、ショートの発生も少なくなる。
【0146】
(p型コンタクト層112) 最後に、1050℃で、p側クラッド層111の上に、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層112を150Åの膜厚で成長させる。p側コンタクト層はp型のInXAlYGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)で構成することができ、好ましくはMgをドープしたGaNとすれば、p電極20と最も好ましいオーミック接触が得られる。コンタクト層112は電極を形成する層であるので、1×1017/cm3以上の高キャリア濃度とすることが望ましい。1×1017/cm3よりも低いと電極と好ましいオーミックを得るのが難しくなる傾向にある。さらにコンタクト層の組成をGaNとすると、電極材料と好ましいオーミックが得られやすくなる。反応終了後、反応容器内において、ウエハを窒素雰囲気中、700℃でアニーリングを行い、p型層を更に低抵抗化する。
【0147】
以上のようにして窒化物半導体を成長させ各層を積層した後、ウエハを反応容器から取り出し、最上層のp型コンタクト層の表面にSiO2よりなる保護膜を形成して、RIE(反応性イオンエッチング)を用いSiCl4ガスによりエッチングし、図8に示すように、n電極を形成すべきn型コンタクト層104の表面を露出させる。このように窒化物半導体を深くエッチングするには保護膜としてSiO2が最適である。また、n型コンタクト層104を露出させると同時に、共振器面となる活性層端面を露出させて、エッチング端面を共振器面としても良い。
【0148】
次に上述したストライプ状の導波路領域として、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2を形成する方法について詳説する。まず、最上層のp型コンタクト層(上部コンタクト層)8のほぼ全面に、PVD装置により、Si酸化物(主として、SiO2)よりなる第1の保護膜を0.5μmの膜厚で形成した後、パターンニングすることにより、第1の保護膜161を形成する(実施の形態の説明に用いた図5(a)参照)。ここで、第1の保護膜161のパターンニングは、フォトリソグラフィー技術、及びCF4ガスを用いたRIE(反応性イオンエッチング)装置により行う。次に、第1の保護膜161をマスクとして、そのマスクの両側にp型クラッド層111が薄く残るように、p型コンタクト層112及びp型クラッド層111の一部を除去することにより、活性層3よりも上に、ストライプ状の凸部を形成する(実施の形態の説明に用いた図5(b)参照)。これにより、第2の導波路領域C2を構成するための第2のリッジ202が形成される。この時、第2のリッジは、p側コンタクト層112、およびp側クラッド層111の一部をエッチングして、p型クラッド層111の膜厚が0.01μmとなる深さでエッチングされて、形成されている。
【0149】
次に、ストライプ状の第2のリッジを形成した後、第3の保護膜163としてフォトレジスト膜を、第2のリッジの一部(第1の導波路領域を構成する部分)を除いて形成する(実施の形態の説明に用いた図5(c)参照)。尚、第2の導波路領域を形成する部分の凸部の上面及び第1の導波路領域を構成する部分に位置する凸部の上面には、第1の保護膜161が形成されたまま残っている。
続いて、RIE(反応性イオンエッチング)装置に移し、第3の保護膜163及び第1の保護膜161をマスクとして、SiCl4ガスを用いて、第1の導波路領域を形成する部分において第1の保護膜161の両側をn型クラッド層106が露出する深さで、エッチングすることで、第1の導波路領域C1を構成するストライプ状の第1のリッジを、形成する。この時、形成されるストライプ状の第1のリッジは、第1のリッジ両側のn型クラッド層106の膜厚が0.2μmとなる深さまでエッチングされて形成されている。
次に、第3の保護膜163を除去する。
【0150】
更に、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2を形成したウエハを、PVD装置に移送し、Zr酸化物(主としてZrO2)よりなる第2の保護膜162を、第1の保護膜161の上、第1と第2のリッジの側面、エッチングにより露出されたp型クラッド層111及びn型クラッド層106の上に0.5μmの膜厚で連続して形成する(実施の形態の説明で用いた図7(a)参照)。
【0151】
第2の保護膜162形成後、ウエハを600℃で熱処理する。このようにSiO2以外の材料で第2の保護膜を形成した場合、第2の保護膜成膜後に、300℃以上、好ましくは400℃以上であって、窒化物半導体の分解温度以下(1200℃)で熱処理することにより、第2の保護膜を第1の保護膜を溶解させる材料(フッ酸)に対して溶解しにくくできるため、この熱処理工程を加えることが望ましい。
【0152】
次に、ウエハをフッ酸に浸漬し、第1の保護膜161を除去する(リフトオフ法)。これにより、p型コンタクト層112の上に設けられていた第1の保護膜161が除去されて、p型コンタクト層112が露出される。以上のようにして、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2に設けられたストライプ状の第1と第2のリッジ(凸部)201、202の側面と、それに連続するリッジ両側の平面(第2のリッジの両側に位置するp型クラッド層111の表面と第1のリッジの両側に位置するn型クラッド層の表面)に第2の保護膜162が形成される(実施の形態の説明で用いた図7(b),(c)参照)。続いて、n電極121を形成する領域において、n型コンタクト層104に達する深さで、エッチングし、n型電極121を形成するためのn型コンタクト層104の表面を露出させる(実施の形態の説明で用いた図7(c)参照)。
【0153】
このように、p型コンタクト層112の上に設けられた第1の保護膜161が、除去された後、図8に示すように、その露出したp側コンタクト層の表面にオーミック接触するNi/Auよりなるp電極120を形成する。但しp電極120は100μmのストライプ幅として、図8に示すように、第2の保護膜162の上に渡って形成する。この時、p電極120は、ストライプ方向において、本実施例1では、第2の導波路領域Cだけに形成している。また、本実施例1ではさらに、p電極120は、第2の導波路領域Cの両端部に達しない長さで形成する。第2の保護膜162形成後、既に露出させたn側コンタクト層104の表面にはTi/Alよりなるn電極21をストライプと平行な方向で形成する。
【0154】
次に、p及びn電極上の取り出し電極を設けるための領域にマスクをし、SiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜164を形成する。そして、そのマスクを除去することにより、誘電体多層膜164において、p及びn電極上を開口させる開口部を形成し、その開口部を介してp,n電極上にNi−Ti−Au(1000Å−1000Å−8000Å)よりなる取り出し(パッド)電極122,123をそれぞれ形成する。尚、本実施例1において、第2の導波路領域Cにおける活性層108の幅は、200μmの幅(共振器方向に垂直な方向の幅)に形成する。また、ガイド層も同様の幅に形成されている。
【0155】
n電極とp電極とを形成した後、さらに基板が露出するまでエッチングして、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2の端部に、共振器面を設ける。
本実施例1のレーザ素子では、共振器の全長が650μmになるように、また、第1の導波路領域C1は一方の共振端面を含み全長が5μmになるように形成した。従って、第2の導波路領域C2は他方の端面を含み全長が645μmである。そして、エッチング面である共振器端面にそれぞれSiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜を形成した。その後、ウエハのサファイア基板を研磨して70μmとし、ストライプ状の電極に垂直な方向で、基板側からバー状に分割して、更にバー状のウエハを個々の素子毎に分割してレーザ素子を得る。
尚、実施例1では、エッチング面に誘電体多層膜を形成することにより共振器面を形成したが、共振面の形成方法として、GaNの劈開面である(1 1- 0 0)M面で、ウエハをバー状に分割して、その面を共振器面とする方法を用いてもよい。
【0156】
以上のようにして作製された実施例1のレーザ素子において、室温においてしきい値2.0kA/cm2、30mWの出力において発振波長405nmの連続発振が確認され、またF.F.Pにおいて、良好なビームが得られ、そのアスペクト比は、1.5と、光ディスクシステムの光源として、十分に満足するビーム特性を有する。このような優れた特性は、主に利得領域として機能する第2の導波路領域Cのストライプ幅にかかわらずに、出射側の第1の導波路領域Cの凸部の幅を適宜調節することにより、所望の光特性のレーザ光を取り出せるという本発明の特有の作用によるものである。また、本実施例1のレーザ素子は、5〜30mWでの光出力域において、横モードの移動がなく、光ディスクシステムの読込、書込光源として適した特性を有する。加えて、30mWでの駆動において、従来の屈折率導波型のレーザ素子と同様に優れたレーザ素子が得られる。
【0157】
また、実施例1では、図7(c)に示すように、第1の導波路領域C1にかかる(覆う)長さでp電極を設けてもよく、このようにしても、実施例1と同等にビーム特性に優れるレーザ素子で、素子寿命の長いものとなる。
【0158】
[実施例2]
実施例1において、第1の導波路領域C1の長さを、1μmとする他は、実施例1と同様にしてレーザ素子を得る。第1の導波路領域C1をこのように、短く形成するためには、実施例1において、実際に得られる共振器長よりもストライプ状の第1のリッジを長く(たとえば、数十μm〜100μm程度の長さ)形成した後、第1の導波路領域C1が所望の長さとなる位置でエッチング、または基板分割により共振器面を形成する。このため、実施例1に比べて、第2のリッジ201の形状を安定して形成することが難くなるが、この長さでも横モードの良好な制御は可能であり、かつ第1の導波路領域が短くなることから、素子寿命については、実施例1よりも僅かに優れている。
【0159】
[実施例3]
実施例3の半導体レーザ素子は、両端部にそれぞれ5μmの長さの第1の導波路領域C1を形成する以外は実施例1と同様に構成する(図4(b)参照)。すなわち、本実施例3のレーザ素子では、中央部に第2の導波路領域C2を配置し、その両側に第1の導波路領域C1を配置し、その第1の導波路領域C1共振器がそれぞれ共振端面を含むようにしている。このように構成された実施例3のレーザ素子は、レーザのビーム形状において、F.F.P.、アスペクト比ともに、実施例1とほぼ同等の特性を有する。
【0160】
[実施例4]
実施例1において、第2の導波路領域C2を構成するための第2のリッジ(凸部)202を、その第2のリッジの両側に500Åの厚さのp型ガイド層が残るようにエッチングすることにより形成した以外は、実施例1と同様にして構成する。得られるレーザ素子は、実施例1に比べて閾値電流が低くなる傾向があるが、ビーム特性については、実施例1とほぼ同等に良好なものが得られる。
【0161】
[実施例5]
本実施例5の半導体レーザ素子は、実施例1において、第1の導波路領域C1と第2の導波路領域Cとの間に、傾斜面を設けた以外は実施例1と同様に構成する(図4(a)参照)。
すなわち、本実施例5では、第1の導波路領域C1と第2の導波路領域Cとの境界において、第1のリッジの両側に位置するn型クラッド層106の表面と第2のリッジの両側に位置するp型クラッド層111の表面との間に形成されるエッチング断面を、n型クラッド層106の表面に対して90°以上になるように傾斜させている。
このように作製されるレーザ素子は、実施例1に比べて、素子特性にばらつきが生じる場合があるが、良好なFFPが得られかつ信頼性を向上させることができるという本発明の効果は得られる。
【0162】
[実施例6]
本実施例6の半導体レーザ素子は、図13に示すように、第1の導波路領域Cと第2の導波路領域Cの間に第3の導波路領域Cを設けた以外は実施例1と同様に作製される。すなわち、本実施例6のレーザ素子は、第2の導電型層(p型クラッド層111)に達する深さで、第2のリッジ(凸部)202を形成した後、第1の導電型層(n型クラッド層106)までエッチングして第1のリッジを形成する際に、共振器方向との成す角αが20°である側面204を有する第3の導波路領域C3を同時に形成する。このようにして、第1の導波路領域C1と、第2の導波路領域C2の他に、第3の導波路領域C3を有する実施例6のレーザ素子が作製される。このように構成された実施例6のレーザ素子では、第2の導波路領域C2において活性層面内に広がって導波されていた光が、第3の導波路領域Cの側面204で反射され、第1の導波路領域C1へと導かれるので、円滑な導波が可能になる。すなわち、共振器方向に導波する光が、側面204に、入射角(90°−α)で入射することで、側面204で全反射され、光の損失なく、ストライプ状の導波路領域内に、導くことができるためである。第2の導波路領域C2、第3の導波路領域C3では、第2の導電型層(p型クラッド層111)に設けられた第2のリッジ(凸部)202により実効的な屈折率差が活性層面内に設けられ、ストライプ状の導波路領域が形成されており、この第3の導波路領域C3では、第2のリッジの直下の領域からはみ出して導波する光を、第1の導波路領域C1内へ、好適に導くことができる。
【0163】
以上のように、実施例6では、側面204が第1の導波路領域C1における第1のリッジ(凸部)201側面に対して傾斜して設けられていることで、スムーズな光の導波を実現できる。また、側面204と第2の導波路領域C2との境界部で、図13に示すように、屈曲することなく直接、第2の導波路領域Cの側面に繋がっていてもよい。
【0164】
このように、本実施例6のレーザ素子では、第2の導波路領域C2において、活性層面内におけるストライプ状の導波路領域内、若しくはそれをはずれて導波する光を、第1の導波路領域C1内に効率よく導くことができるため、素子特性を向上させることができる。本実施例6のレーザ素子では、特に閾値電流密度を低下させることができ、スロープ効率を向上させることができる。
【0165】
[実施例7]
実施例7のレーザ素子は、第1の導波路領域Cを側面が2段になった2段リッジにより構成した点が実施例1とは異なり、それ以外の部分は実施例1と同様に構成される。
すなわち、実施例7では、活性層まで達しないようにエッチングすることにより、ストライプ状のリッジを形成した後、第1の導波路領域を形成する部分においてそのリッジのストライプ幅よりも広いリッジをn型クラッド層106までエッチングすることにより、2段リッジを形成する。
ここで、図14(a)は、本実施例7のレーザ素子構造を説明する斜視図であり、図14(c)は、第1の導波路領域C1における断面図であり、図14(b)は、第2の導波路領域C2における断面図である。本実施例7のレーザ素子では、図14(a)に示すように、第1の導波路領域C2が、幅Sw1の上部リッジ(凸部)と幅Sw2の下部リッジ(凸部)とからなる2段リッジにより形成されている。この第1の導波路領域Cにおいて、活性層は下部リッジの中に位置し、この下部リッジの幅Sw2により活性層3の幅が決定されているので、実質的には下部リッジにより導波路が形成されていると考えることができる。この実施例7の構造にすると、実施例1等の第1のリッジを形成する場合に比較して、下部リッジの幅Sw2の制御が容易になり、その結果、第1の導波路領域の活性層の幅を精度良く形成することができる。これは、図5に示す方法で、第1の導波路領域C1を構成するための第1のリッジ201を形成すると、1つのマスクにより2段階でエッチングをすることになるので、2回目のエッチングにより第1の導電型層1に達する深さでエッチングする際に、最初に形成された第2のリッジと共通する部分とその下の部分との境界において側面に段差ができ、その下の部分における幅を精度よく制御できない場合があるためである。
【0166】
しかし、本実施例7では、第2のリッジと共通のエッチング工程で、上部リッジを形成した後に、下部リッジを形成するために上部リッジを形成した時のマスクとは別のマスクを形成してその別のマスクを用いてエッチングすることにより下部リッジを形成しているので、下部リッジの幅を精度よく形成することができ、その下部リッジ内に位置する活性層3の幅を精度良く形成できる。
従って、本実施例によれば、実施例1と同等な特性を有しかつ製造ばらつきの少ないレーザ素子を提供できる。すなわち、本実施例7のレーザ素子は、製造において有利なものである。
【0167】
[実施例8]
本実施例8のレーザ素子は、第1の導波路領域と第2の導波路領域の間に第3の導波路領域を形成したレーザ素子であって、その第3の導波路領域を実施例6とは異なる形態で構成した例である。
具体的には、本実施例8のレーザ素子において、第3の導波路領域Cは、図15(a)に示すように、p型クラッド層111及びp型コンタクト層112に設けられた第3のリッジにより構成されており、その第3のリッジは第1の導波路領域に近づくにしたがって幅が狭くなるように形成されている。
すなわち、本実施例8では、第3の導波路領域を形成することにより、導波路の幅が互いに異なる第1の導波路領域と第2の導波路領域とを、導波路の幅を不連続に変化させることなく接続できる。
ここで、図15(a)は、実施例8のレーザ素子構造を説明する斜視図であり、図15(b)は活性層における横断面図である。また、図15(b)において、Sw1で示す幅は、第2のリッジの底部における幅であり、Sw2で示す幅は第1のリッジにおける活性層部分の幅である。
【0168】
ここで、図15(b)における想像線(2点鎖線)は、第2のリッジ及び第3のリッジを活性層の横断面に投影した線であるが、第2の導波路領域及び第3の導波路領域における導波路はそれぞれ、第2のリッジ及び第3のリッジに対応して活性層内に実効的な屈折率差が形成されることにより構成されるので、その想像線(2点鎖線)は実質的には第2の導波路領域及び第3の導波路領域における導波路を示していると考えることができる。
以上のように作製される実施例8のレーザ素子は、実施例1と同様に、優れた特性が得られる。
【0169】
[実施例9]
本実施例9は、実施例1と同様に構成されるレーザ素子を実施例1とは異なる方法で作製した例である。
すなわち、本実施例9では、第1のリッジを形成した後に第2のリッジを形成している。
具体的には、実施例1と同様にして各層を積層し、その後、図5(a)に示すように、積層体表面にストライプ状の第1の保護膜161を形成する。そして、図6(a)に示すように、第1の保護膜161の一部(第1の導波路領域を形成する部分)を除いて、第3の保護膜163を形成し、図6(b)に示すように、第1の保護膜161の両側を下部クラッド層5(n型クラッド層106)が露出する深さでエッチングして、第1のリッジ201を形成する。続いて、第3の保護膜163をいったん除去した後、図6(c)に示すように、第1のリッジ201を覆うように、第3の保護膜163を形成する。この状態では、第2の導波路領域を形成する部分における、第1の保護膜161の両側以外は、第1の保護膜161及び第3の保護膜163の少なくとも一方の保護膜で覆われていることになる。このような状態にしたあと、第1の保護膜161、第3の保護膜163で覆われていない領域を活性層まで達しないようにエッチングすることで、第2のリッジを形成する。
この時、第1の導波路領域C、第2の導波路領域Cを構成する各リッジのリッジ幅、リッジ高さは、実施例1と同様にする。続いて、第1の導波路領域C上の第3の保護膜163を除去して、ストライプ状のマスクである第1の保護膜だけとし、その後の工程は実施例1と同様に第2の保護膜(埋込層)をストライプ側面及びそれに連続する窒化物半導体層平面に形成する。その後さらに、実施例1と同様にして、レーザ素子を得る。以上の実施例9の方法によれば、実施例1で説明した方法に比較して、工数が多くなるが、実施例1と同様のレーザ素子を製造できる。
【0170】
[実施例10]
本実施例10は、窒化物半導体基板を用いてレーザ素子を作製する例であり、基本的な素子構造としては、第2の導波路領域Cにおいては図8に示す構造を有し、第1の導波路領域Cにおいては、図9に示す構造を有する。
【0171】
(基板101)本実施例10では、以下のように作製される厚さ80μmのGaNよりなる窒化物半導体基板を用いる。
【0172】
ここでは、まず、窒化物半導体を成長させる異種基板として、厚さが425μm、2インチφ、主面がC面、オリエンテーションフラット面(以下、オリフラ面と記す)がA面のサファイア基板を用意し、MOCVDの反応容器内にそのウエハをセットする。次に、温度を510℃にして、キャリアガスとして水素、原料ガスとしてアンモニアとTMG(トリメチルガリウム)とを用い、サファイア基板上にGaNよりなる低温成長バッファ層を約200Å(オングストローム)の膜厚で成長させ、さらに温度を1050℃とし、原料ガスにTMG、アンモニアを用い、アンドープのGaNよりなる下地層を2.5μmの膜厚で成長させる。続いて、ウエハをサファイア基板のオリフラ面(A面)に垂直な方向からθ=0.3°だけ傾けた方向に、それぞれ幅6μmのストライプ状のSiO2からなる複数のマスクを、マスク間の間隔(マスク開口部)が14μmになるように平行に形成する。そして、MOCVD装置に戻して、アンドープGaNを15μmの膜厚で成長させる。このようにすると、マスク開口部から選択的に成長されたGaNはマスク開口部では主として縦方向(厚み方向)に成長し、マスクの上では横方向成長してマスク及びマスク開口部を覆う下地層が形成される(ELOG成長)。このように成長された下地層において、横方向成長された窒化物半導体層は貫通転位を低減させることができる。具体的には、貫通転位は、マスク開口部の上と、マスクの両側から横方向成長した窒化物半導体が接合するマスク中央部付近とで、転位密度が1010/cm程度と高くなり、マスク中央部を除くマスクの上では転位密度が10/cm程度と低くなる。
次に、ウエハをHVPE装置に載置して、下地層の上にさらにアンドープのGaNを約100μmの膜厚で成長させる(この約100μmの膜厚で成長させた層を厚膜層という。)。続いて、異種基板、低温成長バッファ層、下地層、厚膜層の一部を除去して厚膜層のみとし(単体化)、膜厚80μmのGaN基板を得る。ここで、HVPEによる厚膜層は、GaN以外に他の窒化物半導体を用いても良いが、本発明では、良好な結晶性でかつ厚膜の窒化物半導体を容易に成長できるGaN又はAlNを用いることが好ましい。また、異種基板等の除去は、以下に示す素子構造を形成した後、また、導波路を形成した後、電極を形成した後、いずれの段階で行っても良い。また、ウエハをバー状、チップ状に切断する前に異種基板等を除去することで、チップ状に切断する際に、窒化物半導体の劈開面(六方晶系で近似した{1 1- 0 0}M面、{1010}A面、(0001)C面)を用いて切断・劈開できる。
【0173】
(下地層102)
窒化物半導体基板101の上に、窒化物半導体基板を作製する際の下地層と同様にストライプ状のSiOマスクを用いて横方向成長を伴うように窒化物半導体を成長させることにより、下地層102を15μmの膜厚で形成する。
【0174】
(バッファ層103)
次に、下地層102の上に、Al混晶比が0.01のアンドープAlGaNからなるバッファ層103を形成する。このバッファ層103は省略可能であるが、横方向成長を用いた基板がGaNである場合、若しくは横方向成長させて形成した下地層がGaNである場合に、それよりも熱膨張係数の小さい窒化物半導体、すなわち、AlGa1−aN(0<a≦1)等からなるバッファ層103を用いることで、ピットを低減させることができるため、バッファ層103を形成することが好ましい。すなわち、下地層102のように、横方向成長を伴って成膜された窒化物半導体層上に別の窒化物半導体を成長させるとピットが発生しやすいが、このバッファ層103は、ピットの発生を防ぐ効果がある。
【0175】
更にバッファ層103のAl混晶比aが、0<a<0.3であることが好ましく、これにより、結晶性が良好なバッファ層を形成することができる。また、このバッファ層をn側コンタクト層としての機能を兼ねる層として形成しても良いし、バッファ層103を形成した後、前記バッファ層と同様の組成式で表されるn側コンタクト層を形成して、そのn側コンタクト層104にもバッファ効果を持たせるようにしてもよい。すなわち、このバッファ層103は、横方向成長層(GaN基板)と素子構造を構成する窒化物半導体層との間、又は素子構造中の活性層と横方向成長層(GaN基板)との間に設けること、さらに好ましくは素子構造中の基板側、下部クラッド層と横方向成長層(GaN基板)との間に、少なくとも1層以上設けることで、ピットを低減し、素子特性を向上させることができる。また、n側コンタクト層の機能を兼ね備えたバッファ層とする場合には、電極との良好なオーミックコンタクトが得られるように、Al混晶比aを0.1以下とすることが好ましい。この下地層102の上に形成するバッファ層は、上述した異種基板上に設けるバッファ層と同様に300℃以上900℃以下の低温で成長させても良いが、好ましくは800℃以上1200℃以下の温度で単結晶成長させると、上述したピット低減効果がより効果的に得られる傾向にある。さらに、このバッファ層103は、n型、p型不純物をドープしても良いし、アンドープでも良いが、結晶性を良好なものとするためにはアンドープで形成することが好ましい。またさらに、2層以上のバッファ層を設ける場合には、n型、p型不純物濃度、Al混晶比を変化させて設けることができる。
【0176】
(n側コンタクト層104)
バッファ層103の上に、膜厚4μm、Siを3×1018/cmドープしたAl0.01Ga0.99Nからなるn側コンタクト層104を形成する。
(クラック防止層105)
n側コンタクト層104の上に膜厚0.15μmのIn0.06Ga0.94Nからなるクラック防止層105を形成する。
(n側クラッド層106)
クラック防止層105の上に、総膜厚1.2μmの超格子構造のn側クラッド層106を形成する。
具体的には、膜厚25ÅのアンドープAl0.05Ga0.95N層と、膜厚25Å、Siを1×1019/cmドープしたGaN層と、を交互に積層することにより、n側クラッド層106を形成する。
(n側光ガイド層107)
n側クラッド層106の上に膜厚0.15μmのアンドープGaNからなるn側光ガイド層107を形成する。
(活性層108)
n側光ガイド層107の上に、総膜厚550Åの多重量子井戸構造の活性層108を形成する。
具体的には、Siを5×1018/cmドープした膜厚140ÅのSiドープIn0.05Ga0.95Nよりなる障壁層(B)と、膜厚50ÅのアンドープIn0.13Ga0.87Nよりなる井戸層(W)とを、(B)−(W)−(B)−(W)−(B)の順に積層することにより、活性層108を形成する。
(p側電子閉込め層109)
活性層108の上に膜厚100Å、Mgを1×1020/cmドープしたp型Al0.3Ga0.7Nからなるp側電子閉込め層109を形成する。
(p側光ガイド層110)
p側電子閉込め層109の上に膜厚0.15μmのMgを1×1018/cmドープしたp型GaNからなるp側光ガイド層110を形成する。
(p側クラッド層111)
p側光ガイド層110の上に総膜厚0.45μmの超格子構造のp側クラッド層111を形成する。
具体的には、膜厚25ÅのアンドープAl0.05Ga0.95Nと、膜厚25ÅでMgを1×1020/cmドープしたp型GaNと、を交互に積層するすることにより、p側クラッド層111を形成する。
(p側コンタクト層112)
p側クラッド層111の上に、膜厚150Å、Mgを2×1020/cmドープしたp型GaNからなるp側コンタクト層112を形成する。
以上のように、n側コンタクト層104〜p側コンタクト層112までの素子構造を形成した後、実施例1と同様にして、n側コンタクト層104を露出させ、第1の導波路領域C、第2の導波路領域Cをエッチングにより形成し、第2の保護膜162(埋込層)を第1のリッジおよび第2のリッジの各側面及びそれに連続する窒化物半導体層平面に形成する。この時、第2の導波路領域Cを構成するための第2のリッジは、第2のリッジの両側のp側光ガイド層110の膜厚が0.1μmとなる深さでエッチングすることにより形成する。
【0177】
次に、本実施例10における各レーザ素子の共振端面の形成方法について説明する。
本実施例10では、2つのレーザ素子を1組とし、その2つの素子が1つの面(対向面)に対して対称となるように向かい合うように配置することにより、効率的に各共振端面を形成している。
具体的には、10μmの長さの第1の導波路領域C(1組のレーザ素子の第1の導波路領域が連結された状態のもの)を挟んでその両側にそれぞれ645μmの長さの第2の導波路領域Cを形成する(図17(b)のIIIb及びIVbの部分を参照)。
この両側の第2の導波路領域Cの外側の端面はn側コンタクト層を露出させる際のエッチングにより同時に形成する。
【0178】
続いて、実施例1と同様に、n側コンタクト層104、p側コンタクト層112表面に、n電極121、p電極120を形成する。
次に、第2の導波路領域の端面、導波路領域を構成するための各リッジの側面を含む露出された面全てに、誘電体多層膜からなる絶縁膜(反射膜)164を形成する。
これにより、第2の導波路領域C端面において反射膜として機能し、他の部分で絶縁膜として機能(特にp−n電極間の短絡を防止する機能)する絶縁膜164が形成される。尚、本実施例10では、p電極120は、図8,9と異なり、p側コンタクト層112表面の一部に、p側コンタクト層112のストライプ幅よりも小さい幅で形成し、またp電極120のストライプ方向では、第2の導波路領域C上部だけに形成する。尚、p電極120は、第2の導波路領域Cの端部からは若干離して形成する。
【0179】
そして、n電極、p電極上の絶縁膜164の一部を除去して、各電極を露出させ、各電極表面上に、電気的に接続するパッド電極122,123を形成する。次に、長さが10μmの第1の導波路領域Cのほぼ中央部(図17(b)のE−E線を参照)において、窒化物半導体のM面で劈開して、バー状とし、更にそのバーを各素子間において劈開されたM面に垂直なA面で共振器方向に平行に劈開して、レーザチップを得る。
以上のようにして得られるレーザチップは、実施例1と同様に、約5μmの長さで第1の導波路領域Cと、645μmの長さの第2の導波路領域Cとを有し、第1の導波路領域C端面を出射側とする。
【0180】
得られるレーザ素子は、室温で閾値電流密度2.5kA/cm、閾値電圧4.5Vで、発振波長は405nmであり、出射されるレーザビームのアスペクト比1.5である。また、30mWの連続発振で、1000時間以上の長寿命の高出力のレーザ素子が得られる。また、本レーザ素子は、5mW〜80mWの出力域で連続発振が可能で、その出力域において、光ディスクシステムの光源として適したビーム特性を有する。
【0181】
[実施例11]
実施例11のレーザ素子は、実施例10の厚さ80μmのアンドープGaNからなる基板に代えて、基板101として、膜厚80μmのSiがドープされたn型GaNを用いて構成する。尚、このSiがドープされたn型GaNからなる基板101は、実施例10と同様にして、異種基板の上に、低温成長バッファ層を形成して、下地層を横方向成長を伴う成長により形成した後、HVPEにて、厚膜のSiドープしたGaNを100μmで成長させ、異種基板を除去して得られる。
【0182】
本実施例11では、n型GaN基板101の上に、SiドープAl0.01Ga0.99Nからなるバッファ層102を形成し、その上に、素子構造として、実施例1と同様にn側コンタクト層104〜p側コンタクト層112まで積層する。
【0183】
続いて、各素子の導波路領域を形成するための領域を規定するためにn側コンタクト層112表面が露出するようにエッチングして分離溝を形成する。実施例11では、実施例10と異なり、同一面側に正負一対の電極を形成せずに、基板を挟んで電極を対向配置する構造とするため、n側コンタクト層露出面にn電極を設けるスペースを設ける必要はない。従って、隣接する素子を実施例10に比較してを接近して配置することができる。
尚、本実施例11では、エッチングによりn側コンタクト層を露出させることにより、各領域を規定しているが、本構成では電極を対向配置するためエッチングすることなく以下の工程を行っても良い。また、分離溝を形成する場合には、n側コンタクト層と基板との間の層を露出させるようにしても良いし、基板を露出させるように分離溝を形成するようにしてもよい。さらに、基板を露出させて分離溝を形成する場合、基板の途中までエッチングして基板を露出させても良い。
尚、各素子を構成するために規定する領域は必ずしも各素子ごとに形成する必要はなく、実施例10で説明したように2つの素子を構成するための領域を一体て形成しても良いし、さらに3以上の素子を形成する領域を一体で形成してもよい(例えば、図17(a)、(b)のIII及びIVに示す部分を一体で形成する。)
光を導波する方向に対して垂直な方向についても同様に、素子間に分離溝を形成することなく、複数の領域を連続して形成してもよい。
尚、基板を分割する部分において、活性層よりも深くエッチングすることにより溝を形成した後、その溝の部分で基板を分割すると(例えば、図17(a),図17(b)においてA−Aで示す部分)、分割の衝撃による活性層部分における割れ、欠けを回避できる。
【0184】
本実施例11では、1つの素子毎に領域を分離して各素子を作製する。続いて、実施例10と同様に、各導波路領域を構成するために、それぞれストライプ状のリッジを形成し、各素子に対応して領域毎にそれぞれ、第1の導波路領域C、第2の導波路領域Cをそれぞれ形成する。この時、第1の導波路領域Cは、ストライプ長さ10μmで形成する。
【0185】
続いて、実施例10と同様に、p側コンタクト層表面に、その表面よりも幅の狭いストライプ状のp電極を、第2の導波路領域Cのみに形成する。ここで、ストライプ状のp電極は、第2の導波路領域Cのを構成するための第2のリッジの端面から若干離れるようにその端部に達しない長さで、形成する。
次に基板の裏面側(素子構造が形成された基板面に対向する面側)に、n電極を形成し、p電極、n電極を、基板及び素子構造を挟んで対向配置する。続いて、実施例10と同様に、基板の素子構造が形成された側の表面ほぼ全面に、誘電体多層膜からなる絶縁膜(反射膜)164を形成し、p電極の一部を露出させて、その露出したp電極に電気的に接続するパッド電極を形成する。
【0186】
最後に、図17(b)のIIに示すように、共振器に垂直な切断方向として、第1の導波路領域Cにおいてそのほぼ中央部のD−D切断位置と、各素子間のA−A切断位置で基板のM面で劈開し、バー状とした後その劈開面に垂直なA面で素子間を劈開してチップ状のレーザ素子を得る。
【0187】
このようにして得られるレーザ素子は、第1の導波路領域C端部に設けられた劈開面と、第2の導波路領域C端部に設けられ、反射膜が設けられたエッチング端面とを共振器面として有し、レーザ発振させることができる。このようにして得られるレーザ素子は、実施例10と同様に優れたレーザ特性を有する。
【0188】
[実施例12]
実施例12のレーザ素子は、実施例10において、n型コンタクト層までエッチングする時に同時に共振器端面を形成し、この共振器端面間の基板を分割する前に基板までエッチングし、図17(a)のI及びIIにおいてAA切断面で分割する。この時、共振器端面から突き出した部分は、3μmとした。このようにして得られるレーザ素子の特性は、実施例10と同様に優れた素子特性、光学特性を有する。
【0189】
[比較例1]
比較例1として、実施例1において、第1の導波路領域を形成することなく、全長にわたって第2の導波路領域を形成したレーザ素子を作製する。
本比較例1では、実施例1と同様に、素子構造となる各層を積層する。その後、図5(b)に示すように、第1の保護膜161をマスクとして用いてストライプ状の第2のリッジを素子の一端面から他端面に至るように形成する。
次に、その全長に亙って形成された第1のリッジの側面、及びその両側のエッチング露出面に、ZrO2からなる保護膜を形成しウエハをフッ酸に浸漬し、第1の保護膜161をリフトオフ法により除去する。続いて、実施例1と同様に、共振器面、各電極を形成して、第2の導波路領域C2とを構成するための第2のリッジのみを有する比較例1のレーザ素子を得る。
以上のようにして作製される比較例1のレーザ素子は、不要な横モードを効果的に抑えることが困難で、横モードの安定性に乏しく、電流―光出力特性においてキンクの発生が多発するレーザ素子となる。
特に光出力の大きな高出力域、例えば光ディスクシステムのデータ書き込み時に必要な30mWの出力などの条件下では、横モードの移動が発生しやすい。また、ストライプ状の第2のリッジの寸法精度に、素子特性が敏感に反応することから、図10に観るように、素子間のばらつきが大きく、製造歩留まりを向上させることが困難である。また、得られるレーザ光のスポットのアスペクト比は、2.5〜3.0の間に位置するものがほとんどで、アスペクト比の合格ラインを2.0以下とすると、製造歩留まりが大きく低下する。
【0190】
以下、本発明に係るレーザ素子の構成により得られる効果(レーザ素子寿命、駆動電流、横モードの制御性)を確認するために行った検討結果について説明する。
本検討では、実施例1と同様の素子構造(半導体積層構造)を用いて、エッチング深さを順次変化させて、リッジの高さが異なるレーザ素子を作製して、各レーザ素子について、レーザ素子寿命、駆動電流、横モードの制御性を評価した。
【0191】
図12は、エッチング深さに対するレーザ寿命(光出力は30mWとして試験した)を示すものである。
図12に示すように、エッチング深さをp型クラッド層とp型光ガイド層の境界付近とした場合に、最も素子寿命は長くなり、それより浅くても深くても寿命は短くなる。また、p型光ガイド層とp型電子閉じ込め層との境界付近までエッチングすると、レーザ寿命は急激に低下し、活性層に達する深さでストライプ状の導波路領域が形成されると、素子寿命に多大に悪影響を及ぼすことを示している。従って、素子寿命を考慮した場合、p型電子閉込め層に達しない深さでエッチングが行われる方がよい。また、p型クラッド層とp型光ガイド層の境界から上下0.1μm程度の範囲の深さまでエッチングをしてリッジを形成すると、極めて良好な寿命が得られることが理解できる。また、厚さ方向の光の閉じ込めを考慮すると、p型ガイド層まで達しないようにエッチングすることが好ましく、この点を含めると、p型光ガイド層とp型クラッド層の界面付近からその境界の上0.1μmの間に達する深さにエッチングすることがより好ましい。
【0192】
図10は、エッチング深さに対する良品率を示すグラフである。図10から、p型クラッド層とp型光ガイド層の境界の上0.1μmよりも深くエッチングすることで、高い良品率が得られることが分る。ここで、図10の良品率とは、発振を確認した素子の内、5mWで基本単一横モード発振が可能な素子の割合を示すものであり、この時の導波路領域のストライプ幅は1.8μmであった。
また、エッチング深さが、リッジの両側にp型クラッド層が0.1μm以上残る深さでエッチングをすると、キンクの発生が急激に起こり、大幅に良品率が減少する。
【0193】
図11は、エッチング深さに対する駆動電流(光出力30mWにおける)を示すもので、この検討において導波路領域は幅1.8μmに設定した。図11から明らかなように、p型光ガイド層の中間点(厚さ方向の中間点)より深いところ(活性層側)までエッチングすると、エッチング深さに拘わらず50mAで一定となる。また、p型光ガイド層の中間点から徐々にエッチング深さを浅くしていくと、p型クラッド層とp型光ガイド層の境界の上0.1μmまでは緩やかに電流値が上昇し、p型クラッド層とp型光ガイド層の境界の上0.1μmより浅いエッチング深さ(リッジの両側にp型クラッド層が膜厚0.1μm以上の厚さで残るエッチング深さ)にすると急激に電流値が上昇する。更に、p型クラッド層が0.25μm以上の厚さで残るようにエッチングすると30mWの光出力が得られなくなる。
【0194】
[比較例2]
比較例2として、実施例1において、第2の導波路領域を形成することなく、全長にわたって第1の導波路領域を形成したレーザ素子を作製する。
本比較例2では、実施例1と同様に、素子構造となる各層を積層する。その後図5(a)に示すように、ストライプ状の第1の保護膜161を設け、第1の保護膜の両側の領域を下部クラッド層5に達する深さでエッチングすることにより、第1の導波路領域C1を構成するためのストライプ状のリッジを形成する。その後、リッジの上面および側面、そのリッジの両側のエッチング露出面に、ZrO2からなる保護膜を形成しウエハをフッ酸に浸漬し、第1の保護膜161をリフトオフ法により除去する。続いて、実施例1と同様に、共振器面、各電極を形成して、図9に示すような断面構造を有し、かつ第1の導波路領域C1のみを有するレーザ素子を得る。この比較例2において、ストライプ状のリッジは、実施例1の第1の導波路領域C1と同様に、リッジの両側のn型クラッド層の膜厚が0.2μmとなる深さまでエッチングされて形成されている。
【0195】
得られるレーザ素子は、活性層よりも深くエッチングしたストライプであるため、実施例1に比べて素子寿命に劣り、図12に示すように素子寿命が短く、実用に耐えうるレーザ素子とはならない。
【0196】
【発明の効果】
本発明のレーザ素子は、導波路として、共振器方向に、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2とを有することで、素子信頼性、横モードの制御性に優れている。また、本発明によれば、簡単な設計変更で多様な素子特性のレーザ素子を提供できる。
【0197】
また、従来、実用に耐える素子信頼性と、安定した横モードの発振等、優れた素子特性の両立は困難であったが、本発明のレーザ素子では、生産性及び信頼性に優れ、且つ素子特性に優れるレーザ素子を得ることが可能となる。加えて、第1の導波路領域C1を共振面の出射面側に一部設けることで、多様なスポット形状、アスペクト比のビームを取り出すことが可能になる。すなわち、本発明によれば、種々のビーム特性を実現でき、レーザ素子の応用範囲を拡大する上において、その効果は多大なものである。
【0198】
従来、窒化物半導体を用いたレーザ素子において、結晶の再成長、プロトンなどのイオンの打ち込みが困難なため、ストライプのレーザ素子しか、製造歩留まり、生産性に耐えうるものとならず、また、Inを含む窒化物半導体を有する活性層が大気にさらされると、その損傷が大きく、素子寿命が大幅に低下する事から、実効屈折率型レーザ素子しか選択できなかった。しかし、本発明のレーザ素子では、第1の導波路領域C1、第2の導波路領域C2を有することで、素子信頼性を確保しながら、横モードの制御性、ビーム特性に優れるレーザ素子を得ることが可能となり、またその素子構造は、量産においても優れた歩留まりで製造可能となることから、窒化物半導体を用いたレーザ素子の応用、及び飛躍的な普及を可能なものとすることができる。加えて、高密度記録の光ディスクシステムの光源として、データ読込時(5mW)、データ書込時(30mW)の両方の光出力域において、横モードの移動がなく、また30mW駆動でも1000時間を超えるレーザ素子で、光源としてアスペクト比が1.0〜1.5の範囲と優れるレーザ素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明に係る実施の形態のレーザ素子の構成を模式的に示す斜視図である。
(b)は、実施の形態のレーザ素子の第2の導波路領域における断面図である。
(c)は、実施の形態のレーザ素子の第1の導波路領域における断面図である。
【図2】(a)は、従来のレーザ素子において、リッジを形成する前の模式断面図である。
(b)は、従来のレーザ素子において、リッジを形成した後の模式断面図である。
(c),(d)は図(b)の部分拡大図である。
【図3】(a)は、本発明の実施の形態のレーザ素子の層構成を示す模式的な斜視図であり、(b)は、図3(a)の側面図である。
【図4】(a)は本発明に係る一変形例のレーザ素子の側面図である。
(b)は本発明に係る他の変形例のレーザ素子の側面図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明のレーザ素子のリッジを形成する工程を示す斜視図である。
(e)は、図5(c)の第2の導波路領域を形成する部分における断面図である。
(f)は、図5(d)の第2の導波路領域を形成する部分における断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、図5(a)〜(d)に示す方法とは異なる方法による本発明のレーザ素子のリッジの形成工程を示す斜視図である。
【図7】(a)〜(d)は、本発明のレーザ素子における電極を形成する工程を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る実施例1のレーザ素子の第2の導波路領域における模式断面図である。
【図9】本発明に係る実施例1のレーザ素子の第1の導波路領域における模式断面図である。
【図10】実効屈折率型のレーザ素子における、エッチング深さと良品率との関係を示すグラフである。
【図11】実効屈折率型のレーザ素子における、エッチング深さと駆動電流との関係を示すグラフである。
【図12】実効屈折率型のレーザ素子における、エッチング深さと素子寿命との関係を示すグラフである。
【図13】(a)は、本発明に係る実施例6のレーザ素子の斜視図である。
(b)は、本発明に係る実施例6のレーザ素子の横断面図である。
【図14】(a)は、本発明に係る実施例7のレーザ素子の斜視図である。
(b)は、本発明に係る実施例7のレーザ素子の第2の導波路領域における断面図である。
(c)は、本発明に係る実施例7のレーザ素子の第1の導波路領域における断面図である。
【図15】(a)は、本発明に係る実施例8のレーザ素子の斜視図である。
(b)は、本発明に係る実施例8のレーザ素子の横断面図である。
【図16】(a)〜(d)は、ウエハ上に形成される素子を用いて、本発明のレーザ素子の製造方法を説明するための斜視図である。
【図17】(a)、(b)は、本発明のレーザ素子の製造方法において、切断位置を説明するための模式断面図である。
【図18】本発明のレーザ素子の製造方法において、反射膜を形成する工程を説明するための模式図である。
【符号の簡単な説明】
1・・・第1の導電型層、 2・・・第2の導電型層、 3・・・活性層、 4・・・共振器面、 5・・・下部クラッド層、 6・・・下部コンタクト層、 7・・・上部クラッド層、 8・・・上部コンタクト層、 9・・・基板、 10・・・第1の導波路領域C1、 11・・・第2の導波路領域C2、 101・・・基板、 102・103・・・バッファ層・下地層、 104・・・n型コンタクト層、 105・・・クラック防止層、 106・・・n型クラッド層、107・・・n型光ガイド層、 108・・・活性層、 109・・・p側キャップ層、 110・・・p型光ガイド層、 111・・・p型クラッド層、 112・・・p型コンタクト層、 20,120・・・p電極、 21,121・・・n電極、 22,122・・・pパッド電極、 23,123・・・nパッド電極、 161・・・第1の保護膜、 162・・・第2の保護膜(埋込層)、 163・・・第3の保護膜、 164・・・絶縁膜

Claims (25)

  1. 第1の導電型の半導体層と、活性層と、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型の半導体層とが順に積層された積層構造体を備え、前記活性層及びその近傍において幅方向に光の広がりを制限してその幅方向と直交する方向に光を導波させる導波路領域が形成されてなる半導体レーザ素子において、
    前記導波路領域は、少なくとも第1の導波路領域と第2の導波路領域とを有してなり、
    前記第1の導波路領域は、前記活性層の幅を制限することによりその活性層とその両側の領域との間の屈折率差によってその制限された活性層内に光を閉じ込めるようにした領域であると共に、前記制限された活性層幅方向で、該活性層幅よりも狭い幅で光を閉じ込めるように、実効的な屈折率差が設けられたものであり、
    前記第2の導波路領域は、前記活性層において実効的に屈折率差を設けることにより光を閉じ込めるようにした領域であることを特徴とする半導体レーザ素子。
  2. 前記第1の導波路領域における活性層は、前記活性層を含む第1のリッジを形成することにより該活性層の幅が制限され、
    前記実効的に屈折率が設けられた領域は、前記第2の導電型層に第2のリッジ(第2の導波路領域)、及び前記第1のリッジの上部リッジ(第1の導波路領域)を形成することにより設けられている請求項1記載の半導体レーザ素子。
  3. 前記第1のリッジは、その上部リッジの両側を前記第1の導電型層が露出するまで除去することにより形成され、前記第2のリッジ及び前記上部リッジは、そのリッジの両側において
    前記活性層の上に前記第2の導電型層を残すように除去することにより形成された請求項2記載の半導体レーザ素子。
  4. 第1の導電型層と、活性層と、該第1の導電型層と異なる導電型の第2の導電型層とが順に積層された積層構造体で、第2の導電型層に設けられたリッジにより形成されたリッジ導波路領域を有する半導体レーザ素子において、
    前記導波路領域は、少なくとも第1の導波路領域と第2の導波路領域とを有してなり、
    第1の導波路領域は、前記リッジ(上部リッジ)の下に、第1の導電型層に設けられた前記上部リッジよりも幅の広い下部リッジを備えた2段リッジで形成されることを特徴とする半導体レーザ素子。
  5. 前記第2のリッジ及び/又は前記上部リッジの両側における、前記活性層上に位置する前記第2の導電型層の膜厚が、0.1μm以下である請求項3又は4記載の半導体レーザ素子。
  6. 第1の導電型層と、活性層と、該第1の導電型層と異なる導電型の第2の導電型層と、が順に積層された積層構造体に、第2の導電型層にストライプ状のリッジを設けることによって実効屈折率型の導波路領域を有する半導体レーザ素子において、
    前記導波路領域は、少なくとも第1の導波路領域と第2の導波路領域とを有してなり、
    第1の導波路領域は、前記リッジよりも広い幅の活性層とその両外側の領域で屈折率差が設けられた完全屈折率によって該活性層内に光が閉じ込められることを特徴とする半導体レーザ素子。
  7. 前記完全屈折率が、第1の導電型層に設けられたストライプ状の凸部により形成されていることを特徴とする請求項6記載の半導体レーザ素子。
  8. 第1の導電型層と、活性層と、該第1の導電型層と異なる導電型の第2の導電型層とが順に積層された積層構造体に、ストライプ状の導波路領域を有する半導体レーザ素子において、
    前記ストライプ状の導波路領域が、共振器方向において、前記第2の導電型層に、第2の導電型層の一部が除去されて、ストライプ状の凸部が設けられた第2の導波路領域と、
    前記第2の導電型層に形成されたストライプ状の凸部(上部側の凸部)と、前記第1の導電型層に、前記第2の導電型層、活性層、第1の導電型層の一部が除去されて形成されるストライプ状の凸部(下部側の凸部)と、が設けられた第1の導波路領域と、を少なくとも有することを特徴とする半導体レーザ素子。
  9. 前記第2の導波路領域は、共振器方向における長さが、前記第1の導波路領域よりも長いことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
  10. 前記半導体レーザ素子の共振器面の内、少なくとも1つの共振器面が、前記第1の導波路領域の端部に形成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
  11. 前記第1の導波路領域の端部に形成された共振器面が、出射面であることを特徴とする請求項10に記載の半導体レーザ素子。
  12. 前記第2の導波路領域にのみ電極が設けられていることを特徴とする請求項11に記載の半導体レーザ素子。
  13. 前記第1の導波路領域と第2の導波路領域との間に、共振器方向に傾斜した活性層側面を有して、第1の導波路領域と第2の導波路領域とを連結されていることを特徴とする請求項11に記載の半導体レーザ素子。
  14. 前記第1の導波路領域と第2の導波路領域の側面が、屈曲して互いに連結されていることを特徴とする請求項11に記載の半導体レーザ素子。
  15. 前記端部に共振器面を有する第1の導波路領域は、共振器方向の長さが、少なくとも1μm以上であることを特徴とする請求項10又は11に記載の半導体レーザ素子。
  16. 前記第1の導電型層、活性層、第2の導電型層に、窒化物半導体が用いられていることを特徴とする請求項6乃至15のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
  17. 前記活性層がInを含む窒化物半導体層であることを特徴とする請求項16に記載の半導体レーザ素子。
  18. 前記第1の半導体層においてn型窒化物半導体を有し、前記第2の半導体層においてp型窒化物半導体を有することを特徴とする請求項16又は17に記載の半導体レーザ素子。
  19. 前記積層構造体が、p型窒化物半導体を含むp型クラッド層を有する第2の導電型層、Inを含む窒化物半導体を含む活性層、n型窒化物半導体を有する第1の導電型層であると共に、第2の導波路領域若しくは第1の導波路領域におけるストライプ状の凸部(上部側の凸部)若しくはリッジ(上部リッジ)が、該p型クラッド層の膜厚が0.1μmよりも下で、活性層よりも上となる位置に設けられていることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
  20. 第1の導波路領域のストライプ状の凸部若しくはリッジ側面及び第2の導波路領域のストライプ状の凸部若しくはリッジ側面に窒化物半導体が露出されており、該ストライプ状の凸部若しくはリッジ側面に絶縁膜が設けられ、該絶縁膜が、Ti、V、Zr、Nb、Hf、Taよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物、又は、SiN、BN、SiC、AlNよりなる群から選択される少なくとも一種、からなることを特徴とする請求項16乃至19のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
  21. 第1の導波路領域と第2の導波路領域において、前記絶縁膜が異なることを特徴とする請求項20に記載の半導体レーザ素子。
  22. 前記ストライプ状の凸部若しくはリッジの幅が、1μm以上3μm以下であることを特徴とする請求項20又は21に記載の半導体レーザ素子。
  23. 窒化物半導体を用いて、第1の導電型層と、活性層と、第2の導電型層とを順に積層した積層構造体を形成する積層工程と、第2の導電型層上にストライプ状の第1の保護膜を設けてエッチングして、第2の導電型層にストライプ状の凸部を設ける上部リッジ形成工程、前記第1の保護膜を介して第3の保護膜を設けてエッチングして、前記ストライプ状の凸部のストライプ方向一部に、前記凸部よりも幅の広いストライプ状の凸部を前記凸部より下の第1導電型層に形成する下部リッジ形成工程、とを具備してなる半導体レーザ素子の製造方法。
  24. 前記下部リッジ形成工程の後、前記第3の保護膜を除去して、前記第1の保護膜を介して絶縁性を有する第2の保護膜を、前記ストライプ状の凸部側面、及びエッチングにより露出した窒化物半導体平面に形成する工程、第2の保護膜を形成した後、第1の保護膜を除去する工程を具備してなることを特徴とする請求項23に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
  25. 前記保護膜形成工程の後、前記積層構造体を、第1の導波路領域の途中で切断して、共振器面がへき開面となるように分割する工程を具備してなることを特徴とする請求項24に記載の半導体レーザ素子。
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