JP4672096B2 - 抗う蝕剤及びこれを含む口腔用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、う蝕原因菌による歯垢の形成を阻害する作用を有する抗う蝕剤に関し、さらに該抗う蝕剤を含有する口腔用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
う蝕(虫歯)の原因となる歯垢は、ストレプトコッカス・ミュータンスを中心とする口腔内細菌により形成される。ストレプトコッカス・ミュータンスはデキストラン合成酵素であるグルコシルトランスフェラーゼを菌体外に産生し、ショ糖を基質として粘着性多糖である不溶性グルカンを合成する。この不溶性グルカン中で口腔内細菌が繁殖して歯垢が形成される。また、ストレプトコッカス・ミュータンス等の口腔内細菌は種々の糖を利用して産生する酸が、エナメル質表面を脱灰し、う蝕を進行させる。従ってストレプトコッカス・ミュータンスによる歯垢を形成させないことが、虫歯予防にとってはきわめて重要なポイントとなる。近年、様々な抗う蝕剤が提案されているものの、う蝕の予防は充分ではなく、実際に利用しうる効果的な抗う蝕剤は未だ見出されていないのが現状である。
【0003】
歯垢を形成させない方法として、ストレプトコッカス・ミュータンスをの増殖を抑制するための殺菌剤、グルコシルトランスフェラーゼによる不溶性グルカン合成の阻害剤、形成された不溶性グルカンを分解する酵素等の様々な抗う蝕剤が研究されている。中でも、天然物由来物質は、比較的安全性が高いため研究対象として注目されている。
例えば、特解昭58−121218号公報には、抗う蝕剤が開示されており、具体例としてタイソウ、ウイキョウ、芍薬、黄連、オウゴン、センブリ等が挙げられている。しかしながら、その効果は、期待されているものとはほど遠く、実際に利用しうる効果的な抗う蝕剤は未だ見出されていないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ストレプトコッカス・ミュータンスによる歯垢形成を阻害することのできる優れた抗う蝕剤を提供し、さらに、歯垢形成を予防することのできる口腔用組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ね、種々の植物抽出液をスクリーニングして、ストレプトコッカス・ミュータンスによる歯垢形成を効果的に阻害する天然由来の抽出物を探索した。その結果、ユッカの抽出物がこれにたいして強力な阻害作用を有してう蝕の予防に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って本発明は、ユッカ抽出物を含有することを特徴とする抗う蝕剤である。
本発明はさらに、上記抗う蝕剤を含有していることを特徴とする口腔用組成物である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
原料のユッカ(Yucca)としては、Yucca arizonica、Yucca brevifolia、Yucca schidigera、Yucca elata、Yucca intermdia、Yucca recurvifolia Salisb、Yucca smalliana Fernald、Yucca aloifolia Linn、Yucca gloriosa Linn、Yucca mohavensis、Yucca peninsularis、Yucca schottii、Yucca whipplei等があり、これらの一種を用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
ユッカは地上茎、地上部(種子を含む)とも抽出原料として使用することができる。原料は適宜適当な大きさに粉砕してから、抽出溶媒として水、親水性有機溶媒又はこれらの混合物で抽出処理する。水と親水性有機溶媒との混合物を使用する場合、水の含有量は全体の70容量%程度までが適当である。抽出用の親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール、アセトン等が好ましい。抽出溶媒の使用量は、重量で抽出原料の3〜10倍量程度が適当である。
【0007】
抽出方法は、特に制限が無く、一般には常温ないし沸点付近の温度に維持した溶媒中に原料を浸漬しておけばよい。溶媒抽出によらず、ステロイドサポニン含有エキスを得る方法として、新鮮な植物体を原料にして搾汁する方法もある。また、所定の抽出溶媒にて抽出して得た抽出液をそのまま用いる以外に、この抽出液を濃縮してもよいし、乾燥させて固形物(粉末状または顆粒状)にしてもよい。さらに、イオン交換樹脂を充填したカラムにより、水、親水性有機溶媒あるいはこれらの混液を用いて分画を行い、サポニン、フラボノイド、レスベラトロールの一種または二種以上を主成分とする抽出物を用いてもよい。本抽出物としては通常食品などに使用されているものが使用でき、それらは市場で入手することができる。例えば、ミツバ貿易(株)から入手可能なユッカフォーメーション50、ユッカエキスパウダー、ユッカサラサポニン50−M、ユッカサラサポニン80−Mなどが挙げられる。本発明品においては、そのような市販品を使用することができる。
【0008】
本発明の抗う蝕剤は、上記のようにして得たユッカ抽出物を有効成分とする。本発明の抗う蝕剤は液状、固形状、半固形状のいずれでもよい。本発明の抗う蝕剤の用途は医薬品、医薬部外品、口腔用組成物などに広く用いることができる。
本発明の口腔用組成物における上記抗う蝕剤の含有量は、口腔用組成物の全重量に基づいて、該抗う蝕剤の有効成分であるユッカ抽出物として0.01〜20重量%が適当であり、好ましくは0.05〜10重量%である。口腔用組成物において、ユッカ抽出物が0.01重量%よりも少ないと、抗う蝕剤としての効果に乏しくなる場合があり、また、20重量%よりも多いと効果が頭打ちとなり経済的に不利になる場合がある。
本発明の口腔用組成物は、練歯磨、潤製歯磨、液体歯磨等の歯磨剤、洗口液、マウスウォッシュ、口中清涼剤、うがい用錠剤、義歯用洗浄剤、チューインガム等の形態とすることができる。これらは、上記抗う蝕剤を含有してなるものであるが、その特徴に応じ他の成分を本発明の効果を損ねない範囲で配合し、通常の方法で調製することができる。
【0009】
具体的には、練歯磨などの歯磨剤には、研磨剤として結晶質シリカ、非晶質シリカ、その他のシリカ系研磨剤、アルミノシリケート、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、酸化チタン、第2リン酸カルシウム・2水和物、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等(通常配合量3〜99重量%)、粘結剤としてカラゲナン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギネート、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム等のガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン等の合成粘結剤、ゲル化性シリカ、ゲル化性アルミニウムシリカ、ビーガント、ラポナイト等の無機粘結剤(通常配合量0.5〜10重量%)、粘稠剤としてソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット等(通常配合量1〜50重量%)を配合することができる。
【0010】
また、界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸塩、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アルキルグリコシド類、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられ、その配合量は通常0〜5重量%である。
【0011】
更に任意成分として、例えばキシリトール、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル、p−メトキシシンアミックアルデヒド、ショ糖、果糖、サイクラミン酸ナトリウム等の甘味料、スペアミント油、ペパーミント油、ウインターグリーン油、サッサフラス油、チョウジ油、ユーカリ油、セージ油、マヨナラ油、タイム油、レモン油、オレンジ油、1−メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、チモール、サリチル酸メチルなどの香料、安息香酸、安息香酸ナトリウム、p−ヒドロキシプロピルベンゾイックアシッド、p−ヒドロキシブチルベンゾイックアシッド、低級脂肪酸モノグリセライドなどの防腐剤、
【0012】
第4級アンモニウム塩、トリクロサン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等の殺菌剤、イプシロンアミノカプロン酸、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、溶菌酵素、リゾチーム等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化第一スズなどのフッ化物、クロルヘキシジン塩類、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン塩類、グリチルレチン酸、クロロフィル、カロペプタイド、ビタミン類、アズレン、塩化リゾチーム、歯石防止剤、歯垢防止剤、硝酸カリウム、乳酸アルミニウムなどを添加することができる。なお、これらの任意成分の添加量は、本発明を防げない範囲で通常量とすることができる。
【0013】
【実施例】
以下に試験例および実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
【試験例】
<歯垢付着抑制実験>
ストレプトコッカス・ミュータンスの試験管壁への付着抑制効果を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
ストレプトコッカス・ミュータンス菌6715株(gタイプ)をブレインハートインフュージョン液体培地(BHI培地)で37℃,24時間培養して得られた菌液0.1mlと5%ショ糖添加BHI培地4.5mlおよびユッカ抽出物あるいは滅菌精製水0.5mlを試験管内で混合し検液とし、30°の角度に傾け37℃、18時間培養した。なお、上記検液において、ユッカ抽出物濃度を0.2〜5.0%で変動させた。
培養後,BHI培地および浮遊物を破棄した。次に5mlの精製水を静かに加え、ボルテックスミキサーで1分間攪拌して付着性の弱い歯垢を洗浄し、試験管壁に残った不溶物を付着菌体とした。5mlの精製水を試験管に加え超音波処理により付着菌体を懸濁させ、濁度を吸光度550nmで測定した。ユッカ抽出物の代わりに滅菌精製水を用いた実験をコントロールとして、歯垢付着阻害活性を評価した。
付着阻害率は次式により算出した。
付着阻害率(%)=(1−試料の濁度/コントロールの濁度)×100
【0014】
【表1】
歯垢付着阻害率(%)
表1から、ユッカ抽出物は歯垢付着阻害作用を持ち、有効な抗う蝕剤であることが認められた。
【0015】
以下に、ユッカ抽出物を配合した口腔内組成物の実施例を示す.
【実施例1】
練歯磨剤の調製
以下の処方(単位:重量%)にて、練歯磨剤を常法に従って調製した。
リン酸水素カルシウム無水和物 20.0
リン酸水素カルシウム2水和物 20.0
無水ケイ酸 5.0
カラーギナン 0.7
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.3
グリセリン 20.0
70%ソルビット液 10.0
トリクロサン 0.1
サッカリンナトリウム 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ユッカ抽出物(ユッカサラサポニン80-M) 0.1
香料 1.0
精製水 残
合計 100.0%
【0016】
【実施例2】
練歯磨剤の調製
以下の処方(単位:重量%)にて、練歯磨剤を常法に従って調製した。
無水ケイ酸 20.0
二酸化チタン 0.5
カラーギナン 1.0
プロピレングリコール 3.0
70%ソルビット液 20.0
グリセリン 20.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.05
塩化セチルピリジニウム 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.7
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.3
銅クロロフィリンナトリウム 0.05
ユッカ抽出物(ユッカサラサポニン80-M) 0.1
香料 1.0
精製水 残
合計 100.0%
【0017】
【実施例3】
練歯磨剤の調製
以下の処方(単位:重量%)にて、練歯磨剤を常法に従って調製した。
水酸化アルミニウム 30.0
無水ケイ酸 5.0
塩化ナトリウム 10.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム(DS:0.7) 0.1
カルボキシメチルセルロースナトリウム(DS:1.0) 0.9
グリセリン 20.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.8
イソプロピルメチルフェノール 0.02
酢酸 dl−αトコフェロール 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 3.0
パラオキシ安息香酸エチル 0.1
ユッカ抽出液(ユッカサラサポニン80-M) 0.1
香料 1.0
精製水 残
合計 100.0%
【0018】
【実施例4】
練歯磨剤の調製
以下の処方(単位:重量%)にて、練歯磨剤を常法に従って調製した。
ピロリン酸カルシウム 32.0
無水ケイ酸 6.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム(DS:0.7) 0.2
カルボキシメチルセルロースナトリウム(DS:1.0) 0.8
グリセリン 25.0
グリチルレチン酸 0.2
塩化セチルピリジニウム 0.05
イプシロンアミノカプロン酸 0.1
ユッカ抽出物(ユッカサラサポニン80-M) 0.1
香料 0.1
精製水 残
合計 100.0%
【0019】
【実施例5】
液状歯磨剤の調製
以下の処方(単位:重量%)にて、液状歯磨剤を常法に従って調製した。
無水ケイ酸 10.0
キサンタンガム 1.0
グリセリン 10.0
70%ソルビット液 30.0
キシリトール 1.0
パラオキシ安息香酸エチル 0.1
パラオキシ安息香酸ブチル 0.05
リン酸二水素ナトリウム2水和物 0.3
水酸化ナトリウム 0.05
ユッカ抽出物(ユッカサラサポニン80-M) 0.1
香料 0.5
精製水 残
合計 100.0%
【0020】
【実施例6】
洗口剤の調製
以下の処方(単位:重量%)にて、洗口液を常法に従って調製した。
変性アルコール56号 5.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
グリセリン 5.0
キシリトール 25.0
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
パラオキシ安息香酸エチル 0.05
パラオキシ安息香酸プロピル 0.05
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.12
黄色4号 0.0002
緑色3号 0.0002
ユッカ抽出物(ユッカサラサポニン80-M) 0.1
精製水 残
合計 100.0%
【0021】
【実施例7】
チューインガムの調製
以下の処方(単位:重量%)にて、チューインガムを常法に従って調製した。
【0022】
【実施例8】
義歯洗浄剤ペーストの調製
以下の処方(単位:重量%)にて、義歯洗浄剤ペーストを常法に従って調製した。
無水ケイ酸 3.0
増粘性シリカ 10.0
ポリエチレングリコール400 5.0
グリセリン 35.0
60%ソルビット液 30.0
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.5
香料 1.0
ユッカ抽出液 (ユッカサラサポニン80-M) 0.1
炭酸ナトリウム 適量
精製水 残
合計 100.0%
【発明の効果】
本発明のユッカ抽出物を有効成分とする抗う蝕剤は,ストレプトコッカス・ミュータンスによる歯垢形成を顕著に阻害する。従って、これを口腔用組成物の成分とすることにより、う蝕の予防効果に優れた口腔用組成物を提供することができる。
Claims (1)
- 水、親水性有機溶媒又は水と親水性有機溶媒との混合物によるユッカ・シディゲラ(Yucca shidigera)の地上茎及び地上部(種子を含む)から選ばれる部位の抽出物を含有することを特徴とする抗う蝕剤。
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