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JP4668786B2 - 標識を使用せずに細胞現象を分類及び特徴づける方法 - Google Patents

標識を使用せずに細胞現象を分類及び特徴づける方法 Download PDF

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Description

本発明は、電磁エネルギーを利用して細胞の生理学的応答の検査及び特徴づけをする標識フリーな方法に関する。特に、本発明は、単一のアッセイ形式において(電気的特性により)細胞の生理機能をモニタリングすることにより、トレーサー分子や(遺伝子導入及び/又は過剰発現のような)系の増強を必要とせずに、細胞の変動(perturbation)の結果として起こる全てのクラスの受容体での特異的な受容体の活性化を、リアルタイムで観測することを可能にする。この方法は、多くのクラスの細胞表面及び細胞質の受容体について使用することができるが、二つのクラスの細胞表面受容体:G−タンパク質共役受容体(GPCR)及びプロテインチロシンキナーゼ受容体(PTKR)のみに焦点を絞って検討した。GPCRの分野では、三つの主要なファミリーが記述されている。これらのファミリーは、GPCRによって使用される主要なシグナル伝達経路を仲介するG−タンパク質によって分類されている。それらはGi,Gs及びGqと命名されている。これらのファミリーのそれぞれにはサブタイプが存在するが、本発明の有用性を示すための試験において、われわれはGi,Gs,Gq又はPTKRのクラスの受容体サブタイプの一つだけを刺激するリガンドを使用した。これら三つの受容体ファミリーの刺激により活性化される主要なシグナル伝達経路は、1)Gi−共役受容体については、細胞内3’,5’サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)の減少、2)Gs−共役受容体については、cAMPの増加、3)Gq−共役受容体については、細胞内カルシウムイオンの増加である。
バイオインピーダンスと細胞分析を結び付ける実験は、科学文献に記述されている。受容体刺激を観察する細胞のバイオインピーダンスを測定する既存の装置は、形態的変化のみ又は通常は一つの周波数のみを使用して測定を行う。Gheorghiuは、100Hzから10KHz及び100kHzから10MHzにそれぞれ現れるα−及びβ−分散(dispersion)はいずれも細胞の誘電行動(dielectric behavior)のモデルにおいて検討されるべきであることを明らかにした(Gheorghiu;“Characterizing Cellular Systems by Means of Dielectric Spectroscopy”(Bioelectromagnetics 17:475−482(1996))。α−分散情報は生物学的な細胞静止電位及び細胞形態の評価を可能にし、一方、細胞の構成部分、例えば細胞膜、細胞質の誘電率及び伝導率に関する情報は、β−分散領域においてのみ表される。膜受容体へのリガンドの結合による細胞膜及び細胞質の両者における既知の生化学的変化を考えると、α−及びβ−分散の両者の周波数領域全体にわたりバイオインピーダンス測定を可能にするシステムは、薬物探索の分野において有用性がある(Smith, Duffy, Shen, and Oluff;“Dielectric Relaxation Spectroscopy and Some Applications in the Pharmaceutical Sciences”(Journal of Pharmaceutical Sciences 84:1029−1044(1995));Foster and Schwann;“Dielectric Properties of Tissues and Biological Materials: A Critical Review”(Critical Review in Biomedical Engineering 17:25−104(1989)))。
Wegenerらは、ウシ大動脈内皮細胞のβ−アドレナリン作動性刺激(このβ−アドレナリン作動性はGsサブタイプの受容体である)を観察するために電気的インピーダンスの測定を使用することに関する実験を検討している(Eur.J.Physiol(1999)437:925−934)が、複数周波数のスキャンニングモードは細胞の特性の速い変化を観察するには単一周波数モードほどには適さないと結論して単一周波数インピーダンスデータしか示さず、受容体の応答の分類方法を示していない。見たところ、彼らが選択した10KHzの測定周波数は、彼らが測定した細胞応答が、β−分散パラメーターでなく、主としてα−分散パラメーターにおける変化に対して感度が高い点に重点を置いており、この点は著者も彼らの結果の検討の中で認めている。彼らの結果は、明らかに細胞と細胞が接着している基質の間のイオン電流の変化及び細胞間空間の電流によるものである。
細胞の活動とバイオインピーダンス測定を結び付ける技術は薬物探索の分野において応用できるであろう。この分野には細胞の測定を行うための技術が多数存在する。しかし、現在の技術の殆どは、その検出機構の重要な要素として光学又は放射能標識を利用している。受容体−リガンドの結合を観測するための技術の一例は、Molecular Devicesによって提供されているFLIPR装置である。この装置は、Gqの連結したGPCRの刺激に応答する細胞内におけるカルシウムの放出を検出するために蛍光プローブを使用する。このFLIPR技術は、応答を検出するために必要な増幅を行うためにこの蛍光プローブを使用する。しかし、細胞及び細胞培養の物質に内在する背景蛍光は、この方法により容易に測定できるのがGq経路のみであるという事実とともに欠点である。
この分野に応用されている技術の別の例は、Vertex Pharmaceuticalsにより提供されているような、安定的に遺伝子導入されたレポーター遺伝子システムのGPCRの特徴づけのための使用である。このシステムは、一つの経路(典型的にはルシフェラーゼ又はベータ−ラクタマーゼの発現)によって複数のGPCRサブタイプ(Gi,Gs又はGq)に連結する相手を選ばないG−タンパク質を使用する。そのためいずれのGタンパク質も光のアウトプットのみを測定することにより特徴づけすることができる。これらのシステムはオーファンGPCR(これはリガンドが判っていないGPCRである)に対するリガンドフィッシング(リガンド釣り)にしばしば応用され、異なるシグナリング経路を検出するための複数のアッセイのプラットホームを不要にする。これらのシステムには二つの大きな欠点がある。第一に、レポーター遺伝子産物からの光アウトプットは細胞内で弱められることがあるために、適切な検出を行うために高いレベルの受容体発現を必要とする。第二に、オーファンGPCRに対するリガンドが発見された後に、正確なシグナル伝達経路の決定にはかなりの量の追加の作業が必要である。
したがって、刺激に対する細胞の生理学的応答がより正確に特徴付けられるように、α−及びβ−分散の両者の情報を得るのに充分な、広い周波数領域にわたって測定する、標識を使用しない、バイオインピーダンスによる特徴づけ方法を開発することに対するニーズが存在する。本発明は、誘発されるセカンドメッセンジャー経路のファミリーに対する電気的特性の変化について記述するものであり、評価対象である受容体又は経路に関する事前の知識を必要とせずに細胞の電気的特性の変化に基づいて経路を分類できることを示す。未知のリガンドを特定の経路との相互作用に割り当てる能力は、既存の技術にはない大きな利点である。既存の技術には、これらのシグナル伝達経路の全てを同時に分類できるものはない。われわれのシステムを使用すると、オーファン受容体に対する経路の分類はリガンドの発見と同時に行われ、しかもレポーター遺伝子システムを含む安定した遺伝子導入細胞系を創る必要がない。さらに、他の特徴づけ技術と異なり、本発明は経路の刺激を検出するための標識の使用を必要とせず、また応答を検出するための遺伝子導入による受容体数の人為的な増幅を必要としない。
発明の要約
本発明は、シグナリング経路の活性化のような種々の細胞現象の分類のための方法である。特に、分子標識を使用せずに、未知のリガンド/受容体の対に対して特定のセカンドメッセンジャー経路を、リアルタイムで割り当てることを可能にする。分類は、細胞の電気的特性の変化に基づいている。生きている細胞を電気回路の中に組み込む。この電気回路の特性はこれらの細胞の影響を受ける。これらの特性は、ある周波数範囲中の単一の又は複数の周波数による測定で測定することができる。細胞の電気的特性の測定は電気回路を使用せずに行うことができることは、注意すべき点である。例えば、光学的測定及び共振空洞(resonant carities)は多数の代替技術のうちの二つである。細胞現象は細胞の電気的特性のみならず細胞−回路相互作用を変化させる可能性があることも注意すべきである。細胞−回路相互作用の変化は、電極に対する細胞の位置及び接触の細部の変化又は細胞の形態変化のような変化を含み得る。これらの細胞現象が誘発した細胞−回路相互作用の変化は細胞現象の分類に役立つ可能性がある。別の態様において、電磁気的スペクトル(例えば、マイクロ波、ラジオ波、オージオ、IR,光、x−線)並びに音波の周波数を使用することができる。情報処理を容易にするために、この電気回路をマイクロタイタープレートのウエルに組み込むことができる。一態様において、96−ウエルマイクロタイタープレートが使用される。その他の態様は種々の数のウエルを持つプレートを使用する。特定の受容体リガンド又はその他の刺激物を加える前に、加えている間に、そして加えた後にデータを収集することができる。細胞がこの刺激に応答する場合は、測定される電気的特性も変化するであろう。
一態様において、われわれの電気回路は、96ウエルマイクロタイタープレートの底にパターン化された相互に指状突起が入り込んでいる形状の(interdigitated)同一平面上の電極で構成されるが、例えば同一平面上の導波路、同軸電極、並行平面電極、又は固体若しくは液体試料の電気的特性を探索するために通常使用されるその他の微視的若しくは巨視的電極の形状のような、追加の2次元的及び3次元的態様を使用することができる。別の電極のタイプを使用することができるが、われわれは一態様において相互に指状突起が入り込んでいる形状の(interdigitated)同一平面上の電極を使用した。その理由は、他のタイプの電極に比較して感度の高い領域が広く、そしてウエルの直径の変化に対して影響を受けにくいからである。図1。生理的緩衝液中の細胞を電極によって部分的に覆われた表面にプレートし、そして各ウエルはシグナル多重発生装置を介して1以上のインピーダンス分析器に連結することができる。インピーダンス分析器を使用して、40Hzから110MHzの周波数範囲にわたって、一定の時間間隔をおいてインピーダンスの大きさと位相の両者を記録する。この周波数は使用したAgilentインピーダンス分析器で可能な全範囲であり、また生理的緩衝液中の細胞に対する典型的なアルファ及びベータ分散の範囲を含んでいる。より高い周波数において、結合水からのガンマ分散(GHz範囲)を含むその他の情報(分散)を得ることができるが、マイクロ波共鳴効果のために既存のデバイス構造ではより困難になる。その他の態様では、異なる周波数領域、並びにその領域内の単一又は複数の周波数を使用する。別の態様における代表的周波数領域は、10Hzから1000GHz,100Hzから500GHz及び100Hzから1GHzを含む。
リガンドがその受容体と相互作用すると、細胞は経時的に生理的変化を受け、それは測定されている電気的特性を変化させる。既に述べたように、細胞の電気的特性の変化は、いずれのセカンドメッセンジャー経路が細胞の変化を誘発しているかを区別するのに充分である。われわれの方法の一態様において、細胞の電気的特性に関する必要な情報は、インピーダンスの変化の中に存在する。別の態様において、類似のデータセットを使用することができる;例えば、複素反射係数(complex reflection coefficients)(Sパラメーター)を記録した場合に、Sパラメーターデータをインピーダンスデータに変換できるので、同じ情報を得るであろう。その他の例として、抵抗、リアクタンス、アドミッタンス、コンダクタンスおよびサセプタンスの測定が含まれる。
その他の別の態様において、分類は他の情報(より少ない周波数におけるインピーダンス、インピーダンスの大きさのみ、インピーダンスの位相のみ、又は全回路抵抗又はキャパシタンスのような性質、又は回路の電圧若しくは電流の変化)を使用して行われる。詳細な試験を完了させる必要があるが、経路の分類には比較的簡単な測定で充分であることが、予備的エビデンスにより示されている。
本発明の代表的な一態様において、インピーダンスデータは図2に示された方法で処理される。最初に、マイクロタイタープレートのウエルの中に既知受容体タイプを持つ細胞を入れた後、各時点においてある範囲の周波数領域でインピーダンスを測定する(図2の段階210)。二番目に、物質を加える直前の時点を選んで、「対照」インピーダンスを測定する(212)。図2の態様において、物質は目的とする薬物であるが、別の態様において物質は特定のリガンド、タンパク質、脂質、炭水化物、核酸、水、イオン、又はその他の目的とする物質でよい。薬物添加の後(213、214)、それぞれの周波数についてそれぞれの時点において、ある範囲の周波数についてインピーダンスを測定し(216)、そして「対照」のインピーダンスの大きさ及び位相を差し引く(218)。ここに得られたデータは薬物の添加によって誘発された各周波数に対するインピーダンスの大きさと位相の変化からなる。第四に、細胞の応答をパラメーター化するために、ルジャンドル多項式(Legendre Polynomials)を使用して、変化したインピーダンススペクトルを当てはめる(222)。具体的には、一態様において、各時点においてインピーダンスの大きさの変化は7ルジャンドル多項式に当てはめられ、そしてインピーダンス位相の変化は7ルジャンドル多項式に当てはめられる。この結果、各時点において、大きさのデータから7個の係数が得られ、位相データから7個の係数が得られる。これらの係数のセットを時間の関数としてプロットすると、グラフにはしばしば目視によって特定のセカンドメッセンジャー経路と関連付けることができる「動態」傾向が示される。しかし、コンピューターにより行われる客観的定量的分類はこのようなパターンと傾向には依存しない。むしろ、コンピューターアルゴリズムは薬物添加後の1時点における(この時点及び薬物添加前の選択された時点におけるインピーダンスデータに相当する)係数のみを必要とする。次いで、7個の大きさ係数及び7個の位相係数のセットは、(トレーニングデータセットの)既知経路の係数セットと比較され、そして標準的多次元データ分類アルゴリズムを使用して既知経路が特定される。別の態様では、もっと多い、或いはもっと少ないルジャンドル多項式に当てはまる係数が使用されるか、又は別の方法によりパラメーター化された時間依存性ベクトルが使用される。インピーダンスデータを使用することにより、リガンド−受容体相互作用を、4つのカテゴリー、Gi,Gs,Gq又はPTKRのうちの一つに分類することができる。このようにして、われわれは、今後未知リガンドを前記のクラスの受容体との相互作用に対して割り当てることができる道具を創製した。
未知リガンドの発見
医薬活性の可能性のある未知リガンドを特定する方法の代表的な一態様においては、マイクロタイタープレートのウエルに既知受容体タイプを持つ細胞を入れた後(図2の段階230)、薬物添加の直前の時点においてある範囲の周波数にわたり「対照」インピーダンスの大きさと位相を測定する(232)。リガンドを含む薬物を加えた後(233、234)、添加後の各時点においてある周波数の範囲にわたるインピーダンスの大きさと位相を各周波数について測定し(236)、そして「対照」のインピーダンスの大きさと位相を差し引く(238)。次いで、未知リガンドに対する細胞の応答のパラメーター化した係数を計算し、既知リガンドの係数と比較する(240、242、244)。既知の受容体/リガンド相互作用を使用して未知リガンドに対する細胞応答を分類することにより、細胞応答、刺激された受容体のタイプ、及びセカンドメッセンジャー経路に関する価値のある情報が提供される。
オーファン受容体の発見
同様に、オーファン又は未知の受容体を持つ無処置細胞をリガンドである可能性がある化合物に暴露することにより、オーファン受容体に対するリガンドの発見を可能にして、その結果受容体をオーファンでなくする。同時に、トレーニングセットから得られた既知パターンと比較することにより、受容体によって利用されるシグナル伝達経路が確認される(260〜276)。
実験データの考察
ここで考察する試験は以下のタイプの受容体の分析に絞る。GPCRのカテゴリーの中のGi,Gs及びGqに関係する受容体が試験された。さらに、いくつかのPTKR受容体が試験された。Gi,Gs及びGq受容体は、チャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO)において試験され、一方Gi,Gq及びPTKR受容体はヒト頚管腺癌細胞(HeLa)において試験された。データは3つの種類で示されている。第一の種類は実際のデータの例を示すための生のインピーダンスの差のデータである。第二の種類はルジャンドル多項式でパラメーター化されたデータであり、そして第三の種類は多次元分類データである。
ウエルの底に融着した指状突起が相互に入り込んだ形状の電極を有する96−ウエルマイクロタイタープレートのウエルの中に細胞をプレートする。血清を含む標準的組織培養培地中に細胞をプレートし、標準的な37℃のCOインキュベーター中で終夜インキュベートして接着させた。翌日接着した細胞を含むプレートを10mM HEPESを含むHANKS平衡塩溶液(HH)で洗う。次いでHHをウエルに加え、プレートを1時間室温に平衡させる。次いでプレートを測定器に移し、ベースライン測定を15分間行う。15分間の最後の時点において、種々の受容体に対するリガンドを適切なウエルに加えて、30分間20秒ごとに測定を行う。添加前の15分間のベースライン測定値を添加後の測定値から差し引き、その結果を生のインピーダンスの大きさの差としてプロットする。図3は、GPCRのGq,Gi,Gs及びPTKRに対するリガンドを細胞に加えた場合に得られた結果を示す。曲線に隣接する数字は、リガンド添加後に経過した時間(分)を示している。この図で見ることができるように、それぞれのリガンドはインピーダンスの大きさの差において特徴的な異なる応答を生じる。この図は、実際に得られたデータの例である。このデータの定量的分析は困難であったので、ルジャンドル多項式を使用するデータのパラメーター化の方法が開発された。
ルジャンドルパラメーターのグラフは図4〜12に示されている。図4、5及び6はCHO細胞を使用して収集されたデータを示し、図7〜12はHeLa細胞を使用して収集されたデータを示す。図4において、3種の異なるGs受容体を刺激する3つの異なるリガンドがデータを得るために使用された。この受容体は、カルシトニンC1a(内在性)、プロスタノイドEP4(内在性)及びベータ3アドレナリン(遺伝子導入)受容体である。既に記述したように、変換分析(trasformation analysis)によりインピーダンスの大きさについて7個のパラメーターとインピーダンス位相について7個のパラメーターが得られる。これらのパラメーターはグラフ上ではC0〜C6と表示されている。各受容体に対して、二つのグラフのセットが認められる。上側のグラフはインピーダンスの大きさに関するルジャンドルパラメーターを示し、下側のグラフはインピーダンスの位相に関するルジャンドルパラメーターを示している。この図においては、y軸上のパラメーター値の変化の大きさがx軸上の(ベースライン測定開始からの)時間に対してプロットされている。データは平均±標準偏差として示されている。各データのポイントについてNは16〜20である。データがこのように変換されると、明らかなパターンが出現する。そこで、この図に見られたパターンをCHO細胞に対するGsパターンと命名した。この図は、この分析方法を使用して作製されるパターンの種類の代表的なものである。図5は同様の変換の結果を示すが、今回はCHO細胞のムスカリンM1(遺伝子導入)、ムスカリンM3(遺伝子導入)、及びP2Y(内在性)のGq受容体に対するリガンドを使用している。見ることができるように、グラフには明らかに他とは異なるGqパターンが現れている。したがって、この図に認められるパターンは、CHO細胞に対するGqパターンと命名された。図6は、Gsパターンの1セットとGqパターンの1セットを並べて両者の比較を示す。パターンの相違は有意であり、われわれの方法の有用性を明白に実証する最初の例である。
図7〜9において、他の細胞系に結果を拡張するために、また他の受容体ファミリーであるPTKRを含めるために、3種のGq受容体(ブラジキニン、エンドセリン−1及びP2Y(全て内在性);図7)、2種のGi受容体(アルファ2−アドレナリン受容体、CXCR−4(いずれも内在性);図8)、及び3種のPTKR受容体(上皮増殖因子(EGF),インスリン様増殖因子(IGF)及び肝細胞増殖因子(HGF)(全て内在性);図9)に対するリガンドにより刺激されたHeLa細胞のデータの同様な変換が行われた。その結果は、この細胞系の中の受容体のそれぞれのタイプに対して他と異なるパターンを示している。この相違は図10〜12に示す並列による比較により明白である。図10は、Gqに対するパターンの1セットとGiに対する1セットの比較を示す。図11は、同じGqパターンのセットと代表的PTKRにより作られたパターンのセットの比較を示す。そして最後に、図12には、GiセットとPTKRセットの間の比較が示されている。これらのデータは、これらのリガンドにより活性化される異なる細胞内経路がルジャンドルパラメーターのグラフにおける他と異なるパターンとして表示されることを明らかに示している。この関係(Correlation)がわれわれの分類機構の基礎である。ここに示されたのと類似するパターンを生じる未知受容体の刺激は、そのパターンによって同定される細胞内経路を使用しているものとして容易に分類することができる。
パラメーターパターンの結果の目視検査により得ることができた結果を確かめるために、データを標準的多次元データ分類技術で処理した。これらの分析結果は図13及び14に示されている。パターンデータのトレーニングセットが収集され、処理操作に入力した。次いで、分類技術が、そのデータに、使用されたセカンドメッセンジャー経路(受容体タイプ)を正しく割り当てできるか否かを見るために、得られたデータを試験した。図13はCHOデータの分析結果を示し、図14はHeLaデータの分析結果を示す。いずれの場合においても、アルゴリズムは比較的低いエラー率で受容体タイプを容易に推定することができた。したがって、この細胞分析方法は、パターンデータから受容体によって利用されたセカンドメッセンジャー経路を容易にしかもしっかりと推定し得ることを示す。
技術の応用
この明細書に記述した、標識を使用しない、分類及び特徴づけの方法は種々の応用面に使用することができる:
ケース1:既知遺伝子導入受容体のアゴニストの的中同定
この場合には、この方法は既知受容体のアゴニストの的中同定に使用される。医薬品会社から出される質問は、「わが社の化合物ライブラリーの中に含まれる既知受容体に対するアゴニストは存在するか?」である。
われわれがここで取り扱う例は、遺伝子導入G−タンパク質共役受容体(GPCR)であり(顧客の要求に応じて、他のタイプの受容体を使用することができる)、そして手順は以下の通りである。受容体からシグナルを伝達するために必要なセカンドメッセンジャー装置を持つことが知られている細胞系に、目的の受容体を遺伝子導入する。データ分析の際に遺伝子導入操作の対照として使用するために、親細胞系にナンセンス配列を遺伝子導入する。次いで、センス及びナンセンス遺伝子導入細胞系の両者に対して未知化合物(リガンド候補)を試験する。センス遺伝子導入群において刺激が観察され、ナンセンス群に観察されない場合には、的中である。的中の反応の強度は、既知受容体アゴニストにより生じる最大反応強度と比較されるであろう。
この使用例におけるわれわれの方法の利点は次の通りである。遺伝子導入受容体の応答を見るためのレポーターシステムが不要であり、追加の試薬又は蛍光タグが不要であるのでわれわれの方法ではアッセイの準備は最小限であり、またGPCR、プロテインチロシンキナーゼ(PTKR)及び核内受容体を含む多数の異なる種類の受容体で使用することができる。この方法のように同一の方式で3種(Gi,Gs及びGq)の経路の全てを測定できるGPCRのセカンドメッセンジャー経路分析のための単一の方法又は装置は他にはない。さらに、接着細胞にも非接着細胞にも使用することができる。
ケース2:未知遺伝子導入受容体のアゴニストの的中同定及び経路分類
この場合にも再度的中同定を記述することになるが、今回は未知遺伝子導入受容体のアゴニストの経路分類に関するわれわれの方法の能力の記述を付け加える。このケースに関しては、われわれはオーファンGPCRをオーファンでなくすることを記述する。
ここでは目的の受容体はオーファンGPCR(oGPCR)である。これらはヒトゲノムの配列分析中に発見された受容体であり、それらは多くの病気の過程の非常に重要な仲介物である可能性がある。現時点では、そのリガンドは未知であり、それらが利用するセカンドメッセンジャー経路も未知である。このケースでは、HEK293細胞(又は、顧客の要求によりいずれかのほかの細胞系)に対するパターンのデータベース(トレーニングセット)を再度確立し、またGPCRのGi,Gs又はGqに特異的なリガンドにより刺激されたときに得られるパターンを含める。oGPCR遺伝子をHEK293細胞に導入し、そして親細胞にナンセンス遺伝子を導入する。次いで、両細胞系を企業の化合物ライブラリーに暴露する。oGPCR遺伝子導入群に刺激が観察され、ナンセンス群に観察されなければ、的中である。刺激はパターンを生じるので、これをデータベース中に存在するパターンと比較して、oGPCRにより利用されたセカンドメッセンジャー経路が同時に決定される。
われわれの方法は、GPCRをオーファンでなくするための極めて強力な道具である。この方法により、的中同定及びoGPCRにより利用される経路に関する情報を同時に提供することができる。これを行うことができる単一の市販の方法又は装置は無い。この方法は、oGPCRに関心を持つ医薬品会社に時間と試薬の極めて大きな節約をもたらすであろう。この分野で使用される現在市販のほかのシステムは全て、分子タグ又は導入レポーター遺伝子システムに依存しており、oGPCRにより使用されているセカンドメッセンジャー経路を確認するために、的中同定の後に非常に多くの作業をしなければならない。われわれの方法によれば、この余分な作業は不要である。
ケース3:既知及び未知、遺伝子導入及び内在性の受容体のアゴニストに関するEC 50 値及び強度順位の決定
このケースにおいて、アゴニストのEC50値及び強度順位を決定するためにわれわれの方法及び装置をどのように使用するかを記述する。
既知及び未知の受容体の両者について、リガンドが同定されその受容体とマッチされた際、われわれのシステムを使用してEC50値の決定が容易に行われる。濃度を増加させながらリガンドを細胞に加え、そして応答を経時的に記録する。応答が最大値に達したときを決定するために、動的情報が記録される。セットしたエンドポイントにおいて記録された最大インピーダンスシグナルを、加えた濃度に対してプロットし、そしてデータをS字曲線に適合させる。次いで、EC50値をその適合する方程式から計算する。一連の構造的に類似するアゴニストの強度順位は、別々の実験においてそれぞれの化合物について得られたEC50値を比較して決定することができる。このように、リガンド及び受容体のセカンドメッセンジャー経路を同定することができるのと同一の方法及び装置を、EC50値及び強度順位を決定するために使用することができる。この場合においては、われわれの方法によって収集される情報のほんの一部が使用されるに過ぎない。しかし、得られたものは高度に有用な薬理学的情報である。
この場合においてわれわれの方法及び装置の利点は、ケース1に列挙したものと同じである。さらに、われわれの方法は、分子タグを必要とせずに全ての種類の内在性受容体を容易に分析するためのものであり、他方他の方法は全て何らかの標識を使用することにより機能する。このため、より生理的に意義のある情報が得られる利点がある。さらにその他の利点としては、細胞溶解又は固定を必要とせずにリアルタイムに分析を行うことができることである。その他の利点は、細胞応答分析に関連する多くの作業を行うのにただ一つの装置が必要であるに過ぎないことである。
ケース4:既知及び未知、遺伝子導入及び内在性の受容体のアンタゴニストに関する的中同定、IC 50 値および強度順位の決定
このケースにおいて、アンタゴニストの的中同定、IC50値及び強度順位を決定するためにわれわれの方法及び装置をどのように使用するかを記述する。
既知及び未知の受容体の両者について、リガンドが同定されその受容体とマッチされた際、われわれのシステムを使用してアンタゴニストに関する的中同定及びIC50値の決定が容易に行われる。アンタゴニストの的中同定のために、企業の化合物ライブラリーが目的の受容体を含む細胞に適用されるであろう。既知又は発見されたリガンドにより刺激された後、的中は減弱した応答として示される。IC50値決定のために、濃度を増加させてアンタゴニストを細胞に加え、最大の半分の刺激を生じるアゴニスト濃度に対する応答を経時的に測定する。阻害が最大値に達したときを決定するために動的情報が記録される。セットしたエンドポイントにおいて記録された最小インピーダンスシグナルを、加えた阻害物質濃度に対してプロットし、そしてデータをS字曲線に適合させる。次いで、IC50値はその適合する方程式から計算される。一連の構造的に類似するアンタゴニストの強度順位は、個別の実験においてそれぞれの化合物について得られたIC50値を比較して決定することができる。このように、リガンドおよび受容体のセカンドメッセンジャー経路を同定することができるのと同一の方法及び装置を、アンタゴニストの的中同定を行い、IC50値を算出しそして阻害物質の強度順位を決定するために使用することができる。この場合においても、われわれの方法により収集される情報のほんの一部を使用するに過ぎない。しかし、得られたものは高度に有用な薬理学的情報である。
ケース3の下に列記されたものと同じ。
ケース5:アポトーシスのエフェクターの同定
このケースにおいて、アポトーシスのエフェクターを同定するためにこの方法及び装置をどのように使用できるかを記述する。
このケースにおいて、HEK293細胞(又は顧客の要求により、他のいずれかの細胞系)に対するアポトーシスのパターンのデータベース(トレーニングセット)を確立し、またアポトーシスの既知エフェクターによる刺激の際に生じるパターンを含める。企業の化合物ライブラリーの未知化合物のいずれかを使用して得られたパターンをトレーニングセットにおいて得られたアポトーシスパターンと比較するであろう。若しこれらのパターンにマッチするものがあれば、アポトーシスの新しいエフェクターが発見されるであろう。この分析は、アゴニスト又はアンタゴニストフィッシングとは別に、或いはそれと連結して行うことができるであろう。情報はデータ収集の際に同時に得られ、そしてアポトーシスの刺激物質は潜在的薬物候補として直ちに除外することができるので、これはアンタゴニストフィッシングの際に特に有用であろう。このようにして、薬物探索過程において、莫大な量の時間と労力を節約することができるであろう。
われわれの方法は、試験したいずれの化合物に対してもアポトーシスの可能性を同時に分析する。したがって、可能性がある候補であってもアポトーシスを促進する候補はその過程の早期において除外することができるので、薬物探索過程の莫大な費用を節約できることを示す。
ケース6:細胞毒性のエフェクターの同定
このケースにおいて、細胞毒性のエフェクターを同定するためにこの方法及び装置をどのように使用できるかを記述する。
このケースにおいて、HEK293細胞(又は顧客の要求により、他のいずれかの細胞系)に対する細胞毒性のパターンのデータベース(トレーニングセット)を確立し、また細胞毒性の既知エフェクターによる刺激の際に生じるパターンを含める。企業の化合物ライブラリーの未知化合物のいずれかを使用して得られたパターンをトレーニングセットにおいて得られた細胞毒性パターンと比較するであろう。若しこれらのパターンにマッチするものがあれば、細胞毒性の新しいエフェクターが発見されるであろう。この分析は、アゴニスト又はアンタゴニストフィッシングとは別に、或いはそれと連結して行うことができるであろう。情報はデータ収集の際に同時に得られ、そして細胞毒性化合物はいずれも可能性のある薬物候補から直ちに除外することができるので、これはアンタゴニストフィッシングの際に特に有用であろう。このようにして、薬物探索過程において、莫大な量の時間と労力を節約することができるであろう。
われわれの方法は、試験したいずれの化合物に対しても細胞毒性の可能性を同時に分析する。したがって、可能性がある候補であっても毒性がある候補を過程の早期において除外することができるので、薬物探索過程の莫大な費用を節約できることを示す。
ケース7:複合刺激に対する細胞の総合的応答の分析
このケースにおいて、複合刺激に対する細胞の総合的応答の分析のためのわれわれの方法の使用を記述する。
われわれの方法により得られるパターンは、刺激の後に細胞の中及び周囲で生じる細胞の複雑な総合的現象の表現である。このケースのために、われわれは、他の刺激に対するある刺激の影響はどのようなものであるかを決定しようと試みている。例えば、既知GPCRのGi受容体を刺激する場合に、細胞がこのアゴニストに対して応答しつつある間に、PTKRに対するリガンドを適用したら、影響はどのようなものであろうか?われわれの方法は総合的細胞現象の表現を作ることができるので、所望の多数の刺激による総合された現象を調べることができる。最初に、GPCRについて既に考察したような、1つの細胞タイプ内の別々の経路の刺激を表すデーターベースパターンのセットを確立する。次いで、リガンド又は刺激物質による刺激の前、間、又は後に、第二のリガンド又は刺激物質を加えて、最初のリガンド又は刺激物質により誘発されたパターンに対して生じた影響を分析する。われわれは、個別のルジャンドルパラメーターと細胞の独特な生理学的現象の相関を行っているところである。このように、二つ以上の刺激が細胞に加えられたときに、複合的刺激の影響の下に、どの細胞の生理学的現象が維持され、そしてどの現象が変化するかを確かめることができるであろう。最終的には、全ての薬物は常態的に複合刺激がその細胞に押し寄せてくる複雑な個体で使用されるものであるので、このことは医薬品探索過程において極めて重要である。
われわれの方法は、経路の標識或いはその他の操作を使用せずに、総合的細胞応答の分析を可能にする。標識を使用せずに、リアルタイムにこれを行える方法は他にない。
ケース8:腫瘍細胞悪性化の分析
このケースにおいて、腫瘍細胞の悪性化の分析にわれわれの方法をどのように使用できるかを記述する。
腫瘍細胞は比較的良性の細胞として始まるが、分裂し、増殖するにしたがって、次第に攻撃的となり、そして最終的に高度に転移性になる。これが生じた場合には、腫瘍細胞はそれまで持っていた拘束から解き放たれて、体中に拡がる。この過程は悪性化と呼ばれ、最終的に患者に死をもたらす。この過程が生じると、先祖の細胞に比較して、細胞は同じ刺激に対して次第に異なる応答をするようになる。繰り返しになるが、われわれの方法は、細胞の総合的表現を表すので、腫瘍細胞の悪性化にしたがって同一の刺激に対して異なるパターンを示すはずである。このケースにおいて、あるリガンド又は刺激に対するパターンのデータベースが創られるであろう。腫瘍細胞の悪性化にしたがって、同じリガンドが再適用され、パターンの変化が記録される。このようにして、試験腫瘍細胞がわれわれの方法で検査された場合に、応答のパターンをデータベースと比較することができ、そして悪性化の段階の決定を行うことができる。かくして、われわれは腫瘍細胞の悪性化段階を分類するための分析手段を創りだした。
われわれの方法は、標識或いは他の操作を使用せずに、腫瘍細胞の悪性化を分析することを可能にする。標識を使用せずに、リアルタイムにこれを行える方法は他にない。
ケース9:幹細胞分化の決定
このケースにおいて、幹細胞分化の分析にわれわれの方法をどのように使用することができるかを記述する。
幹細胞はいずれの細胞タイプにも分化する能力を持つ多能細胞として始まる。この細胞は環境から異なる刺激を受けると、それが持つ発現タンパク質の補体(Complement)を変え、その最終的機能を変える。ある時点において、この過程は停止し、細胞はこの一つの機能を実行するように固定される。このように、それは肝細胞又は軟骨細胞又は心臓細胞になるように分化する。繰り返しになるが、われわれの方法は細胞の総合的表現を作るので、幹細胞が分化すると、同じ刺激に対して異なるパターンを作るはずである。このケースにおいて、あるリガンド又は刺激に対するパターンのデータベースが創られるであろう。幹細胞が分化するにしたがって、同じリガンドが再適用され、パターンの変化が記録されるであろう。このようにして、試験幹細胞がわれわれの方法で検査された場合、応答のパターンをデータベースと比較することができ、そして分化段階の決定を行うことができる。このようにして、われわれは個別の幹細胞が何に分化するかを分類する分析手段を創り出した。
われわれの方法は、標識或いは他の操作を使用せずに、幹細胞分化を分析することを可能にする。標識を使用せずに、リアルタイムにこれを行える方法は他にない。
要約
要約すると、この方法が遺伝子導入並びに内在性の受容体のいずれにより刺激される経路も容易に分類できることを立証した。本発明は、経路分類の操作を包含しており、多数の細胞表面受容体と相互作用するような未知リガンドを分類するための装置及びアルゴリズム及びソフトウエアの能力を組み込んでいる。これは、GPCRのGi,Gs又はGq又はPTKRに関係する実験により示されている。本発明の独特の態様は、どのような種類の標識も必要とせず、また特別な増幅機構も必要とせずに、シグナル伝達経路の分類を行う過程の組み合わせである。細胞自体が増幅単位として作用する。一態様において、接着真核細胞がこのシステムに使用された。別の態様では原核細胞が使用される。さらに別の態様は、真核又は原核のいずれかの細胞型とともに非接着細胞を組み込むことができる。さらに、この方法の種々の態様は、刺激の後に細胞の誘電的性質の特有の変化がある限り、広範囲の細胞現象を分類することができる可能性を有しているので、前記経路に限定されない。
この技術は、下記を含む種々の領域における応用を立証している:
1.多くの受容体及び細胞型の受容体特異的活性化の検出−
A. 表面、細胞質及び核内受容体
B. GPCR(Gi,Gs,Gq−共役及び混合GPCR)、プロテインチロシンキナーゼ受容体及びステロイド受容体
C. 内在性及び遺伝子導入受容体
D. 細胞の接着層
E. 電極上に沈殿した懸濁細胞
2.化合物の強度の順位を付けるためのEC50/IC50値を決定するための濃度反応曲線の作成
3.受容体特異的アゴニスト及びアンタゴニストの同定
4.3GPCRファミリー、PTK受容体ファミリー、(Smad又はJak/STAT又はNF−カッパBにより機能する)サイトカイン受容体ファミリー、核内受容体ファミリー又はイオンチャネル受容体ファミリーのような特定の受容体ファミリー又はサブファミリーの代表的応答パターン又はそれを推定する応答パターンの作製。
5.特定の分子又は細胞現象を阻害する化学的モジュレーターによる受容体特異的活性化に関係する生化学的シグナリング経路のサブセクションの遮断及び/又は調節の検出
6.受容体によらない細胞活性化の検出
7.下記による受容体及びリガンドの脱オーファン化:
a.オーファン受容体のリガンド/アゴニスト/アンタゴニストの同定、及び受容体ファミリー(例えば、Gq−GPCR)及びシグナリング経路の決定
8.受容体又は化合物のMOA(作用機序)の推定
9.細胞死の検出及び測定及び細胞死の様式(例えば、アポトーシスに対する壊死、アポトーシスの特別な経路(例えば、bcl−2−依存に対するbcl−2−非依存アポトーシス))
10.複合刺激に対する総合的細胞応答の検出
11.幹細胞分化の検出
12.腫瘍細胞悪性化の検出
上記は本発明方法の可能な態様及び応用を完全に記述したものであるが、種々の代替、修飾及び同等物を使用することが可能である。さらに、この出願に引用した全ての出版物及び特許文書は全ての目的に関して個別の出版物及び特許文書がそれぞれ表示しているのと同じ範囲でその全体を引用により取り入れた。
図1aは、バイオインピーダンス測定システムの一態様を説明するブロックダイアグラム。 図1bは、特徴づけの方法の一態様にしたがって使用されるバイオインピーダンスシステムを説明している。 図2は、細胞のバイオインピーダンス特徴づけ方法の段階を説明している。 図3は、4つの主要受容体ファミリーにおける実測のインピーダンスの大きさの差を示している。 図4は、CHO細胞上の3つのGs受容体におけるルジャンドルパラメーターのグラフを示す。 図5は、CHO細胞上の3つのGq受容体におけるルジャンドルパラメーターのグラフを示す。 図6は、CHO細胞上のGs及びGq受容体のパラメーターグラフの比較を示す。 図7は、HeLa細胞上の3つのGq受容体におけるルジャンドルパラメーターのグラフを示す。 図8は、HeLa細胞上の2つのGi受容体におけるルジャンドルパラメーターのグラフを示す。 図9は、HeLa細胞上の3つのPTKR受容体におけるルジャンドルパラメーターのグラフを示す。 図10は、HeLa細胞上のGq及びGi受容体のパラメーターグラフの比較を示す。 図11は、HeLa細胞上のGq及びPTKR受容体のパラメーターグラフの比較を示す。 図12は、HeLa細胞上のGi及びPTKR受容体のパラメーターグラフの比較を示す。 図13は、CHO細胞におけるデータ分類に関する分析マトリックスを示す。 図14は、HeLa細胞におけるデータに関する分析マトリックスを示す。

Claims (16)

  1. 標識を使用せずに刺激と受容体との相互作用に由来する信号伝達を分類する方法であって、
    該分類は、刺激の適用後における電気回路に組み込まれた細胞の電気的特性の変化を測定することにより行われ、
    (a)既知の受容体タイプ及び既知のメッセンジャー経路を有する受容体を持つ細胞を有する電気回路について、選択された時間の選択された複数の時点においてある周波数範囲で、複数の周波数の電磁スペクトルを適用した後の電気的特性の値を測定するステップと;
    (b)既知の受容体刺激を加える直前の時点に相当する対照の時点を選択するステップと;
    (c)既知刺激を該電気回路に加えて、該刺激が該受容体と相互作用し得るようにするステップと;
    (d)該対照時点の後の各時点において測定された電気的特性の値から対照時点に測定された電気的特性の値を差し引くことにより、それぞれの周波数について電気的特性の値の変化を計算するステップと;
    (e)それぞれの時点、受容体及び刺激について該電気的特性の値の変化をパラメーター化するステップと;
    (f)該電気的特性の値のパラメーター化された変化を、既知刺激/受容体相互作用クラスに割り当てるステップと
    を含む、方法。
  2. g)既知受容体タイプを持つ細胞について、選択された時期の選択された複数の時点において、ある周波数範囲の複数の周波数について該細胞を含む前記電気回路の電気的特性の値を測定するステップと;
    h)未知刺激を加える直前の時点に相当する対照の時点を選択するステップと;
    i)未知刺激を該電気回路に加えて、該刺激が該受容体と相互作用し得るようにするステップと;
    j)未知刺激を加えた後の各時点の電気的特性の値から、対照時点に測定された電気的特性の値を差し引くことにより、それぞれの周波数について電気的特性の値の変化を計算するステップと;
    k)それぞれの時点、受容体及び刺激について該電気的特性の値の変化をパラメーター化するステップと;
    未知刺激を加えた後の電気的特性の値におけるパラメーター化された変化を、既知刺激についてパラメーター化された変化と比較して、電気的特性の値の変化を細胞応答と関連付けるステップと;
    該未知の刺激に対する該細胞応答を、既知の物質/受容体相互作用クラスに割り当て、該刺激を分類するステップと
    をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. g)未知受容体タイプを持つ細胞について、選択された時期の選択された複数の時点において、ある周波数範囲の複数の周波数について、該細胞を有する前記電気回路の電気的特性の値を測定するステップと;
    h)既知の応答性を有する刺激を加える直前の時点に相当する対照の時点を選択するステップと;
    i)刺激を該回路に加えて、該刺激が該受容体と相互作用できるようにするステップと;
    j)刺激を加えた後の各時点の電気的特性の値から、対照時点に測定された電気的特性の値を差し引くことにより、それぞれの周波数について電気的特性の値の変化を計算するステップと;
    k)それぞれの時点、受容体及び刺激について該電気的特性の値の変化をパラメーター化するステップと;
    l)刺激を加えた後の電気的特性の値における該パラメーター化された変化を、既知受容体についての電気的特性の値におけるパラメーター化された変化と比較して、電気的特性の値の変化を細胞応答と関連付けるステップと;
    l)該未知の受容体の該細胞応答を、既知物質/受容体相互作用クラスに割り当て、該受容体を分類するステップと
    をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記電気的特性は、インピーダンスである、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
  5. g)既知受容体タイプを持つ細胞を有する前記電気回路について、選択された時期の選択された複数の時点において、ある周波数範囲の複数の周波数インピーダンスの値を測定するステップと;
    h)未知刺激を加える直前の時点に相当する対照の時点を選択するステップと;
    i)未知刺激を該電気回路に加えて、該刺激が該細胞受容体と相互作用し得るようにするステップと;
    j)未知刺激を加えた後の各時点のインピーダンスの値から、該対照時点に測定されたインピーダンスの値を差し引くことにより、各周波数に対するインピーダンスの変化を計算するステップと;
    k)それぞれの時点、受容体及び刺激についてインピーダンスの変化をパラメーター化するステップと;
    )未知刺激を加えた後のインピーダンスのパラメーター化された変化を、既知刺激に対するインピーダンスのパラメーター化された変化と比較して、インピーダンスのパラメーター化された変化を細胞応答と関連付けるステップと;
    )該細胞応答を既知物質/受容体相互作用クラスに割り当て、該刺激を分類するステップと
    をさらに含む、請求項に記載の方法。
  6. g)未知受容体タイプを持つ細胞を有する前記電気回路について、選択された時期の選択された複数の時点において、ある周波数範囲の複数の周波数でのインピーダンスの値を測定するステップと;
    h)既知の応答を有する刺激を加える直前の時点に相当する対照の時点を選択するステップと;
    i)刺激を該電気回路に加えて、該刺激が該細胞受容体と相互作用し得るようにするステップと;
    j)刺激を加えた後の各時点のインピーダンの値から、対照時点に測定されたインピーダンスを差し引くことにより、各周波数についてインピーダンスの変化を計算するステップと;
    k)それぞれの時点、受容体及び刺激についてインピーダンスの変化をパラメーター化するステップと;
    )刺激を加えた後のインピーダンスのパラメーター化された変化を、既知受容体についてのインピーダンスのパラメーター化された変化と比較して、インピーダンスのパラメーター化された変化を細胞応答と関連付けるステップと;
    )該細胞応答を既知物質/受容体相互作用クラスに割り当て、該受容体を分類するステップと
    をさらに含む、請求項に記載の方法。
  7. 前記インピーダンスの変化が、抵抗又はリアクタンスとして測定される、請求項4から6の何れか1項に記載の方法。
  8. 前記インピーダンスの変化が、アドミッタンス、コンダクタンス又はサセプタンスとして測定される、請求項4から6の何れか1項に記載の方法。
  9. 前記細胞応答が、リガンド/受容体相互作用によるシグナル伝達、細胞毒性、アポトーシス、腫瘍細胞増殖、及び肝細胞分化からなる群から選択される、請求項1から8の何れか1項に記載の方法。
  10. 前記電気的特性が、インピーダンス位相、インピーダンスの大きさ、複素反射係数、総回路抵抗及び総回路キャパシタンスからなる群から選択される、請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
  11. 前記周波数の範囲が10Hzから1000MHzである、請求項1から10の何れか1項に記載の方法。
  12. 前記刺激が物質である、請求項1から11の何れか1項に記載の方法。
  13. 前記物質が低分子リガンドである、請求項12に記載の方法。
  14. 前記物質が、リガンド、タンパク質、抗体、脂質、炭水化物、核酸、水又はイオンである、請求項12に記載の方法。
  15. 前記分類がリアルタイムに行われる、請求項1から14の何れか1項に記載の方法。
  16. 前記電気回路が、指状突起が相互に入り込んだ形状の同一平面上の電極を含む、請求項1から15の何れか1項に記載の方法。
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