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JP4668046B2 - 回転位置検出装置の位相調整方法および回転位置検出装置の位相検出装置 - Google Patents

回転位置検出装置の位相調整方法および回転位置検出装置の位相検出装置 Download PDF

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Description

この発明は、回転位置検出装置の位相調整方法および回転位置検出装置の位相検出装置に関し、特に、回転電機に対する回転位置検出装置の相対的な位相を調整する位相調整方法、および回転電機に対する回転位置検出装置の相対的な位相を検出する位相検出装置に関する。
近年、電気自動車やハイブリッド自動車などの駆動用モータとして、小型で効率の良いモータが求められている。このため、同期リラクタンスモータや埋込永久磁石同期モータなどの様々なモータの研究がなされている。
そして、これらのモータを駆動するモータ駆動装置においては、回転磁界によりモータの回転子(ロータ)を連続して回転させるために、ロータの回転位置を検出することが行なわれる。回転位置の検出は、一般に、モータの回転軸に取り付けられたレゾルバ、ロータリエンコーダまたはホール効果素子などの回転位置検出装置を用いて行なわれる(たとえば特許文献1および2参照)。
例えばスイッチトリラクタンスモータの駆動システムにおいては、ロータの回転位置に応じて固定子(ステータ)を励磁していくことによって連続回転が行なわれる。そのため、ロータの突極位置を検出し、その位置に応じて固定子巻線(ステータコイル)に電流を流す必要がある。
具体的には、モータ駆動システムは、速度制御回路から電流波高値指令を出力し、ロータの突極位置に応じて励磁するステータコイルを選択する。そして、PWMによる電流制御が行なわれることにより、3相ステータコイルには位相が120°ずつずれた方形波電流が供給される。
特開2001−197776号公報 特許第2610710号公報
ここで、モータ駆動装置においてモータの高効率制御を実現するためには、ロータの回転位置の正確な検出が必要とされる。これには、回転位置検出装置から出力される回転位置の検出値が、実際のロータの回転位置に正確に対応していることが重要となる。すなわち、回転位置検出装置は、モータの回転軸に対して所定の決められた位置に正確に取り付けられなければならない。
そこで、回転位置検出装置をモータの回転軸に取り付けるにあたっては、ロータの回転位置の起算点となる零点と、回転位置検出装置からの検出値の起算点となる零点とが正確に一致するように、回転位置検出装置の取り付け位置を周方向に微調整する、いわゆる位相調整を行なう必要が生じる。
かかる位相調整は、例えば回転位置検出装置が取り付けられる対象がロータに永久磁石を含む永久磁石モータである場合には、ロータを一定速度で回転させたときにステータコイルに発生する誘起電圧の時間的変化と、回転位置検出装置にて検出される回転位置の時間的変化とが対応するように、回転位置検出装置のモータの回転軸に対する相対的な位相を調整することにより行なうことができる(たとえば特許文献2参照)。
しかしながら、ロータに永久磁石を含まないリラクタンスモータの場合には、ロータを一定速度で回転させてもステータコイルには誘起電圧が発生しないことから、かかる位相調整方法を適用することができない。それゆえ、リラクタンスモータに適用可能であって、かつ回転位置の正確な検出を確保できる、新たな位相調整方法の検討が求められる。
そこで、この発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、リラクタンスモータに対する回転位置検出装置の位相調整を高精度で行なうことができる回転位置検出装置の位相調整方法を提供することである。
また、この発明の目的は、リラクタンスモータに対する回転位置検出装置の相対的な位相を正確に検出可能な回転位置検出装置の位相検出装置を提供することである。
この発明によれば、回転位置検出装置の位相調整方法は、回転電機に対する回転位置検出装置の相対的な位相を調整する位相調整方法である。回転電機は、複数の突極を有する回転子と、固定子とを有し、回転位置検出装置は、回転子の回転位置を検出し、その検出した回転位置に応じた回転位置信号を出力する。位相調整方法は、回転子を着磁する着磁ステップと、着磁された回転子を回転させたときに固定子に発生する誘起電圧の時間的変化を検出する誘起電圧検出ステップと、着磁された回転子を回転させたときに回転位置検出装置の出力する回転位置信号の時間的変化を検出する回転位置信号検出ステップと、誘起電圧の時間的変化から導出される回転子の回転位置と、回転位置信号の時間的変化から導出される回転子の回転位置との位相差に基づいて、回転電機に対する回転位置検出装置の相対的な位相を調整する位相調整ステップとを備える。
上記の回転位置検出装置の位相調整方法によれば、永久磁石を含まない回転子を着磁することによって、回転子には磁極が形成され、永久磁石モータの回転子と実質的に同等の構造となる。したがって、回転子を回転させたときに発生する誘起電圧を利用して回転位置検出装置の位相調整を高精度に行なうことができる。これにより、回転子の回転位置を正確に検出可能となることから、モータ駆動装置の高効率制御が実現される。
好ましくは、着磁ステップは、複数の突極に対応するよう着磁ヨークにコイルを巻回する第1のサブステップと、コイルを通電することにより回転子を着磁する第2のサブステップとを含む。
上記の回転位置検出装置の位相調整方法によれば、回転子には、着磁ヨークからの磁場の印加を停止した後においても所定量の磁束が残留するため、突極ごとにこの残留磁束に応じた磁極が形成される。したがって、磁極が形成された回転子を回転させることによって固定子に誘起電圧を発生させることができる。
この発明によれば、回転位置検出装置の位相検出装置は、回転電機に対する回転位置検出装置の相対的な位相を検出する位相検出装置である。回転電機は、複数の突極を有する回転子と、固定子とを有し、回転位置検出装置は、回転子の回転位置を検出し、その検出した回転位置に応じた回転位置信号を出力する。位相検出装置は、回転子を着磁する着磁装置と、着磁された回転子を回転させたときに固定子に発生する誘起電圧の時間的変化を検出する誘起電圧検出部と、着磁された回転子を回転させたときに回転位置検出装置の出力する回転位置信号の時間的変化を検出する回転位置信号検出部と、誘起電圧の時間的変化から導出される回転子の回転位置と、回転位置信号の時間的変化から導出される回転子の回転位置との位相差に基づいて、回転電機に対する回転位置検出素子の相対的な位相を検出する位相検出部とを備える。
上記の回転位置検出装置の位相検出装置によれば、永久磁石を含まない回転子を着磁することによって、回転子には磁極が形成され、永久磁石モータの回転子と実質的に同等の構造となる。したがって、回転子を回転させたときに発生する誘起電圧を利用して回転電機に対する回転位置検出装置の相対的な位相を高精度に検出することができる。その結果、回転子の回転位置の正確な検出が可能となり、モータ駆動装置の高効率制御が実現される。
好ましくは、着磁装置は、複数の突極に対応するようにコイルが巻回された着磁ヨークと、コイルを通電するための着磁電源とを含む。
上記の回転位置検出装置の位相検出装置によれば、回転子には、着磁ヨークからの磁場の印加を停止した後においても所定量の磁束が残留するため、突極ごとにこの残留磁束に応じた磁極が形成される。したがって、磁極が形成された回転子を回転させることによって固定子に誘起電圧を発生させることができる。
この発明によれば、回転子に永久磁石を含まないリラクタンスモータにおいて、回転位置検出装置の位相調整を高精度で行なうことができる。その結果、回転子の回転位置を正確に検出することが可能となり、リラクタンスモータの高効率制御が実現される。
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
図1は、この発明の実施の形態による回転位置検出装置が搭載されたモータ駆動装置の概略ブロック図である。
図1を参照して、モータ駆動装置は、交流モータM1と、直流電源Bと、3相インバータ20と、電流センサ24と、回転位置検出装置30と、制御装置40とを備える。
交流モータM1は、ロータに永久磁石や巻線を含まないことを特徴とするリラクタンスモータにより構成される。リラクタンスモータは、同期電動機の一種であり、電動機の突極性に基づくリラクタンストルク、すなわち磁気吸引力を利用して回転力を得る。本発明の実施の形態では、リラクタンスモータの一例として、電力変換器により回転磁界を発生するスイッチトリラクタンスモータ(SRM)が適用される。
交流モータM1は、ステータ10およびロータ12とも突極構造を有する。図1には、3相、ステータ10の突極数が6、ロータ12の突極数が4のSRM構造が例示される。なお、交流モータM1を、ロータのみに突極を有する同期リラクタンスモータを用いて構成してもよい。
ロータ12は、2対の突極が形成された4極のロータである。ロータ12は、たとえば、鉄を主成分とする軟磁性粉末を加圧成形した成形体により形成される。もしくは、軟磁性材料からなる電磁鋼板を突極状に打ち抜いたものを回転軸方向に積層することにより形成しても良い。
一般に知られるように、SRMでは、ロータ12の突極位置を検出し、その検出した突極位置に応じてステータコイルに電流を流す。図1には代表的に、U相のステータコイル110およびU’相のステータコイル112が例示されるが、各相についてステータコイルが配設されている。
3相インバータ20は、各相の電力用半導体素子(図示せず)が配置された一般的な構成を有する。1相の分は、3相インバータからの2本の配線により交流モータM1に接続される。3相モータであれば、図1のように、6本の配線が必要となる。3相インバータ20は、制御装置40からのスイッチング制御信号Su,Sv,Swに従ったスイッチング動作により、直流電源Bからの直流電圧を交流モータM1を駆動するための三相交流電流に変換する。
直流電源Bは、ニッケル水素またはリチウムイオンなどの二次電池からなる。
電流センサ24は、交流モータM1に流れる三相分のモータ電流MCRTを検出し、その検出したモータ電流MCRTを制御装置40へ出力する。
回転位置検出装置30は、交流モータM1の回転軸14に取り付けられており、交流モータM1のロータ12の回転位置θdを検出する。そして、回転位置検出装置30は、その検出した回転位置θdに応じた回転位置信号を制御装置40へ出力する。
より具体的には、回転位置検出装置30は、たとえばレゾルバからなる。レゾルバは、交流モータM1の回転軸14の外周に取り付けられた楕円形の回転体と、この回転体の周囲に配された励磁コイルおよび2つの2次コイルとを含む(図示せず)。そして、励磁コイルに交流電流を流すことにより、2つの2次コイルには、回転体の位置に応じた出力が発生し、この出力差から絶対位置を検出することができる。そして、レゾルバは、一定時間内の位置の変化量をCPU(中央演算ユニット)にて演算することにより、交流モータM1のロータ12の回転位置θdを検出し、その検出した回転位置θdに応じた回転位置信号を制御装置40へ出力される。
制御装置40は、電流センサ24からモータ電流MCRTを受け、回転位置検出装置30から回転位置信号(すなわち、回転位置θd)を受ける。制御装置40は、モータ電流MCRTおよび回転位置θdに基づき、ロータ12の突極位置に応じて励磁するステータコイルを選択する。たとえば一般的に用いられる周知のSRM制御方式に従って、三相ステータコイル(U相,V相,W相)に位相が120°ずつずれた方形波電流が供給され、かつ、U相、V相およびW相と、U’相、V’相およびW’相との間にはそれぞれ180°位相の異なる方形波電流が供給されるように、スイッチング制御信号Su,Sv,Swを発生する。
交流モータM1は、3相インバータ20からの交流電流によりステータコイルに発生される回転磁界によってロータ12が回転することにより、回転軸14に回転力を出力する。
以上に述べた図1のモータ駆動装置において、交流モータM1の高効率制御を実現するためには、ロータ12の回転位置の正確な検出が必要とされる。これには、回転位置検出装置30から出力される回転位置の検出値θdが、実際のロータ12の回転位置θiに正確に一致していることが重要となる。
これに対しては、回転位置検出装置30を交流モータM1の回転軸14に取り付けるにあたっては、ロータ12の回転位置θiの起算点となる零点(すなわち、θi=0°)と、回転位置の検出値θdの起算点となる零点(すなわち、θd=0°)とが正確に一致するように、回転位置検出装置30の取り付け位置を周方向に微調整する、いわゆる位相調整が行なわれる。
ここで、一般的な位相調整の方法としては、回転位置検出装置30が取り付けられる対象が永久磁石同期モータの場合には、ロータを一定速度で回転させたときにステータコイルに発生する誘起電圧の時間的変化と、回転位置検出装置にて検出される回転位置の時間的変化とが対応するように、回転位置検出装置のモータの回転軸に対する相対的な位相を調整することにより行なわれる。
すなわち、永久磁石同期モータの回転軸を別個に設けた駆動モータに連結して当該駆動モータを一定回転速度で駆動する。これにより、永久磁石同期モータにおいて、ロータの永久磁石からステータコイル内部へ通過する鎖交磁束Φには、ロータの回転速度に応じた周期で磁束量が増減するという時間的変化が現われる。この鎖交磁束Φの時間的変化dΦ/dtに相当する誘起電圧の出力波形は、オシロスコープなどを用いて検出される。
このとき、誘起電圧の出力波形の検出に並行して、回転位置検出装置30から得られる回転位置信号の出力波形が検出される。そして、両者の波形が対応するように、回転位置検出装置30と永久磁石同期モータの回転軸との相対的な位相が調整される。回転位置検出装置30は、その調整された相対的な位相を保持するように、ボルト等によって回転軸に固定される。
しかしながら、この発明の実施の形態によるモータ駆動装置においては、交流モータM1がリラクタンスモータであることから、上述した位相調整方法を適用することが出来ない。なぜなら、リラクタンスモータはロータに永久磁石を含まないため、ロータを一定速度で回転させることによってもステータコイルから誘起電圧の出力波形を検出することができないからである。
そこで、かかる位相調整方法に代わる方法としては、ステータコイルを通電することによってステータに磁界を発生させ、その発生した磁界とロータの突極との磁気的相互作用によりロータの突極を周方向に回転させて、そのときのリラクタンスモータの出力トルクを測定する方法が検討される。
具体的には、ロータの突極は、ステータに発生した磁界からの磁気吸引力を受けると、ロータの突極は周方向に所定の回転角度だけ回転し、ステータからロータの突極を通過する磁路の磁気抵抗が最小となるときの回転位置に固定される。このとき、リラクタンスモータからは、所定の回転角度に応じた出力トルクが測定される。
そして、固定されたロータの回転位置を、ロータの回転位置の起算点となる零点(すなわち、θi=0°)に設定し、測定された出力トルクから得られる所定の回転角度だけ回転位置検出装置30の取り付け位置を周方向に微調整する。
ところが、このトルク測定に基づいた位相調整方法においては、以下の理由から位置調整の精度が上記の誘起電圧を用いた位相調整方法に対して劣るという問題がある。
詳細には、ステータに磁界を発生させることにより、ロータの突極には、上述したステータからの磁気吸引力が作用すると同時に、磁気吸引力とは周方向の反対方向に回転摩擦力が作用する。そのため、実際には、ロータの突極は、この磁気吸引力と回転摩擦力とが釣り合う回転位置において固定されることになる。したがって、ロータの突極が固定された回転位置と、ステータからロータの突極を通過する磁路の磁気抵抗が最小となるときの回転位置との間には多少のずれが生じる可能性がある。結果として、ロータの突極が固定された回転位置に基づいて取り付け位置が調整された回転位置検出装置においては、検出される回転位置にこのずれが反映されることとなり、回転位置の検出精度を確保することが困難となる。
また、ロータの突極を回転させるためには、ステータコイルに比較的大きな電流を通電しなければならないことから、かかる大電流をステータコイルに印加するための大型の電源装置が必要となる。このため、図1のモータ駆動装置のコスト面において、設備関連の費用がかさんでしまうという問題も発生する。さらには、出力トルクの測定時において大電流が印加されたステータコイルからの電気的絶縁が確保されるように、安全面への配慮も新たに必要とされる。
そこで、この発明の実施の形態では、リラクタンスモータの回転軸に取り付けられる回転位置検出装置の位相調整を高精度かつ低廉に行なう方法として、以下に述べる位相調整方法を実行する。
図2は、この発明の実施の形態による回転位置検出装置の位相調整方法を説明するためのフローチャートである。
図2を参照して、最初に、交流モータM1のロータ12を着磁することによりロータ12の突極に磁極を形成する(ステップS01)。ロータ12の着磁は、図3に示すように、着磁ヨーク60と着磁電源200とを用いて磁場を発生させ、その発生させた磁場の中にロータ12を置くことにより行なわれる。
図3は、この発明の実施の形態によるロータの着磁工程を説明するための概略図である。
図3を参照して、着磁ヨーク60は、鉄芯にコイル62が巻回されて形成される。コイル62は、合計4個あり、各々が通電時に発生する磁界の方向がロータ12の突極にそれぞれ対応するように鉄芯に巻回される。
着磁電源200は、着磁ヨーク60のコイル62に接続される。着磁電源200は、内部に大容量のコンデンサを有し、このコンデンサに充電したエネルギーを一気に放電することによって、瞬間的に大電流を発生する。発生した大電流は、着磁ヨーク60のコイル62に通電される。これにより、着磁ヨーク60のコイル62の各々には、対応するロータ12の突極に向かって強い磁場がパルス状に発生する。
ここで、ロータ12は、鉄を主成分とする軟磁性体からなるため、着磁ヨーク60からの強い磁場を受けると、図4に示す磁化特性に従って磁化される。詳細には、図4に示すように、磁場Hをゼロから徐々に印加していくと、ロータ12に生じる磁束の数は緩やかな曲線を描きながら次第に増加し(すなわち、磁束密度Bが高くなり)、やがて飽和する。なお、この磁場Hがゼロのときから飽和磁化までの過程は一般に、初磁化過程と称され、かつ、この軌跡は初磁化曲線と称される。
そして、磁場Hを飽和磁化から徐々に減少していくと、先の初磁化曲線とは異なる軌跡を辿りながら、磁束密度Bは減少する。そして、磁場Hがゼロのときには所定の磁束密度B0を示す。この磁場Hがゼロのときの磁束密度B0は、一般に、残留磁束密度と称される。すなわち、一旦強い磁場Hが印加されると、その後は磁場Hを印加しなくても、ロータ12には所定の磁束密度B0で示される磁束が残っていることを意味する。なお、この残留磁束密度を利用した最たるものが永久磁石である。
ここで、ロータ12は軟磁性体からなるため、永久磁石を構成するフェライトなどと比較して、残留磁束密度B0が著しく低い。すなわち、ロータ12に形成された磁極の強さは、永久磁石の磁極に対して相対的に劣ることになる。しかしながら、わずかな残留磁束密度B0によっても、ロータ12には、図3に示すように、突極ごとにN極およびS極が交互に形成される。これは、磁極の強さは相対的に弱いものの、ロータ12が永久磁石同期モータのロータと同等の構造を有するといえる。
したがって、この着磁されたロータ12の外周側にステータを配して交流モータM1を構成し、ロータ12を一定速度で回転させれば、ロータ12の突極からステータコイル内部を通過する鎖交磁束Φが発生することとなる。そして、その鎖交磁束Φの磁束量には、ロータ12の回転速度に応じた周期で増減するという時間的変化が現われ、この時間的変化に応じた誘起電圧がステータコイルに発生する。
そこで、この誘起電圧の時間的変化を検出すれば、検出された誘起電圧の時間的変化と回転位置検出装置にて検出される回転位置の時間的変化とに基づいて、回転位置検出装置の位相調整を行なうことが可能となる。
すなわち、この発明の実施の形態によれば、ロータに永久磁石を含まないリラクタンスモータにおいても、上述した永久磁石同期モータと同様の方法に従って回転位置検出装置の位相調整を行なうことができる。これにより、上述したトルク測定に基づいた位相調整方法に対して回転位置検出装置の位相調整をより高精度に行なうことができる。その結果、ロータ12の回転位置を正確に検出することが可能となる。
また、上述したトルク測定に基づいた位相調整方法に対して、ステータコイルに大電流を印加するための電源装置を必要としないことから、設備関連の費用を低廉に抑えることができる。
さらには、回転位置検出装置の位相調整時には、ステータコイルには大電流が通電されないことから、ステータコイルに対する電気的絶縁の確保が不要となる。すなわち、安全性が十分に確保された状況で位相調整を行なうことができる。
なお、この発明の実施の形態によれば、ロータ12を着磁するための着磁ヨーク60と着磁電源200とが必要となるが、これらは、汎用性の点で、ステータコイルを通電するための電源装置に対して優るといえる。すなわち、着磁ヨーク60は、巻回されるコイルの巻き方を変えるのみで、突極数の異なる様々なロータ12に柔軟に対応することが出来る。また、ステータコイルに大電流を印加するための電源装置の出力端子とステータコイルとを接続するための作業が不要となることから、作業性にも優れているといえる。
次に、再び図2を参照して、着磁したロータ12を用いて行なわれる回転位置検出装置30の位相調整方法について説明する。
ステップS01において着磁されたロータ12は、ステータ10と組付けられて交流モータM1を構成する。そして、交流モータM1の回転軸14には、回転位置検出装置30が取り付けられる。さらに、交流モータM1の回転軸14には別個に設けた駆動モータが連結される。
そして、当該駆動モータを一定回転速度で駆動することにより、ロータ12の突極からステータコイル内部へ通過する鎖交磁束Φには、ロータ12の回転速度に応じた周期で磁束量が増減するという時間的変化が現われる(ステップS02)。詳細には、図5(a)を参照して、鎖交磁束Φは、余弦波状の波形を示し、ロータ12の回転位置θiが0°および360°のときに最大となる。
そして、この鎖交磁束Φの時間的変化dΦ/dtに相当する誘起電圧Vは、図5(b)に示すように、正弦波状の波形を示す。誘起電圧Vは、ロータ12の回転位置θi=0°において、電圧値がゼロとなるゼロクロス点(図中の点P0_iに相当)を有する。なお、かかる誘起電圧Vの出力波形は、オシロスコープなどにより検出される(図2のステップS03)。
このとき、誘起電圧Vの出力波形の検出に並行して、回転位置検出装置30から出力される回転位置信号が検出される。回転位置信号は、回転位置検出装置30にて検出される回転位置θdに応じた信号であり、図5(c)に示すように、回転位置θd=0°を起点とし、かつθd=360°を終点として回転位置θdの増加に従って単調増加する波形を示す。回転位置信号の大きさがゼロとなる回転位置(図中の点P0_d)は、回転位置θdの起算点となる零点に相当する。
そして、回転位置検出装置30の位相調整は、誘起電圧Vの出力波形のゼロクロス点P0_iと、回転位置検出信号の零点P0_dとの位相差Δθを抽出し(図2のステップS04)、その抽出した位相差Δθが零となるように回転位置検出装置30と交流モータM1の回転軸との相対的な位相を調整することにより行なわれる(図2のステップS05)。最後に、回転位置検出装置30は、その調整された相対的な位相を保持するように、ボルト等によって交流モータM1の回転軸14に固定される。
[変更例]
以下に、図3で説明した交流モータM1のロータ12の着磁工程についての変更例を示す。
図6は、この発明の実施の形態の変更例によるロータの着磁工程を説明するための概略図である。
なお、図6の着磁工程は、図3の着磁工程に対して、着磁ヨーク60からロータ12の突極に向かって発生する磁場が、突極ごとに同じ方向となるように着磁電源200からコイル62に大電流を通電する点でのみ異なる。
これにより、ロータ12の突極は、全て同じ磁極(図6ではN極)となるように磁化される。なお、かかる磁極の構成の変更は、着磁ヨーク60へのコイル62の巻き方を変えることにより容易に変更することができる。
たとえば図6のように、ロータ12の突極を全てN極となるように着磁した場合、ロータ12を一定速度で回転させたときにステータコアを通過する鎖交磁束Φは、図7(a)に示す出力波形となる。なお、鎖交磁束Φは、図5(a)の場合と同様に、回転位置θiが0°,360°のときに最大となる。
そして、鎖交磁束Φの時間的変化を表わす誘起電圧Vは、図7(b)に示す出力波形となる。誘起電圧Vの出力波形からは、回転位置θiが0°のときにゼロクロス点P0_iが検出される。
また、回転位置検出装置30から出力される回転位置信号においては、図5(c)の場合と同様に、回転位置θdに比例して単調増加する出力波形が得られる。そして、回転位置信号の大きさがゼロとなる点P0_dが零点(θd=0°)とされる。
したがって、回転位置検出装置30の位相調整は、誘起電圧Vのゼロクロス点P0_iと回転位置信号の零点P0_dとの位相差Δθが零となるように、回転位置検出装置30と交流モータM1の回転軸14との相対的な位相を調整することにより行なうことができる。
以上のように、この発明の実施の形態によれば、ロータに永久磁石を含まないリラクタンスモータにおいて、回転位置検出装置の位相調整を高精度に行なうことができる。その結果、ロータの回転位置を正確に検出することが可能となる。
また、トルク測定に基づいた位相調整方法に対して、ステータコイルに大電流を印加するための電源装置を必要としないことから、設備関連の費用を低廉に抑えることができる。
さらには、回転位置検出装置の位相調整時には、ステータコイルには大電流が通電されないことから、ステータコイルに対する電気的絶縁の確保が不要となる。すなわち、安全性が十分に確保された状況で位相調整を行なうことができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
この発明は、モータの回転子の回転位置を検出する回転位置検出装置およびそれを備えるモータ駆動装置に適用することができる。
この発明の実施の形態による回転位置検出装置が搭載されたモータ駆動装置の概略ブロック図である。 この発明の実施の形態による回転位置検出装置の位相調整方法を説明するためのフローチャートである。 この発明の実施の形態によるロータの着磁工程を説明するための概略図である。 ロータの磁化特性を説明する図である。 交流モータのステータコイルを通過する鎖交磁束の時間的変化(図5(a))およびステータコイルに発生する誘起電圧の時間的変化(図5(b))と、回転位置信号の時間的変化(図5(c))とを示すタイミングチャートである。 この発明の実施の形態の変更例によるロータの着磁工程を説明するための概略図である。 交流モータのステータコイルを通過する鎖交磁束の時間的変化(図7(a))およびステータコイルに発生する誘起電圧の時間的変化(図7(b))と、回転位置信号の時間的変化(図7(c))とを示すタイミングチャートである。
符号の説明
10 ステータ、12 ロータ、14 回転軸、20 3相インバータ、24 電流センサ、30 回転位置検出装置、40 制御装置、60 着磁ヨーク、62 コイル、110,112 ステータコイル、200 着磁電源、M1 交流モータ。

Claims (4)

  1. 回転電機に対する回転位置検出装置の相対的な位相を調整する回転位置検出装置の位相調整方法であって、
    前記回転電機は、複数の突極を有する回転子と、固定子とを有し、
    前記回転子は、永久磁石を含まず、かつ軟磁性材料によって形成され、
    前記回転位置検出装置は、前記回転子の回転位置を検出し、その検出した回転位置に応じた回転位置信号を出力し、
    前記位相調整方法は、
    磁場を発生させて前記回転子を着磁する着磁ステップと、
    着磁された前記回転子を回転させたときに前記固定子に発生する誘起電圧の時間的変化を検出する誘起電圧検出ステップと、
    着磁された前記回転子を回転させたときに前記回転位置検出装置の出力する前記回転位置信号の時間的変化を検出する回転位置信号検出ステップと、
    前記誘起電圧の時間的変化から導出される前記回転子の回転位置と、前記回転位置信号の時間的変化から導出される前記回転子の回転位置との位相差に基づいて、前記回転電機に対する前記回転位置検出装置の相対的な位相を調整する位相調整ステップとを備える、回転位置検出装置の位相調整方法。
  2. 前記着磁ステップは、
    前記複数の突極に対応するよう着磁ヨークにコイルを巻回する第1のサブステップと、
    前記コイルを通電することにより前記回転子を着磁する第2のサブステップとを含む、請求項1に記載の回転位置検出装置の位相調整方法。
  3. 回転電機に対する回転位置検出装置の相対的な位相を検出する回転位置検出装置の位相検出装置であって、
    前記回転電機は、複数の突極を有する回転子と、固定子とを有し、
    前記回転子は、永久磁石を含まず、かつ軟磁性材料によって形成され、
    前記回転位置検出装置は、前記回転子の回転位置を検出し、その検出した回転位置に応じた回転位置信号を出力し、
    前記位相検出装置は、
    磁場を発生させて前記回転子を着磁する着磁装置と、
    着磁された前記回転子を回転させたときに前記固定子に発生する誘起電圧の時間的変化を検出する誘起電圧検出部と、
    着磁された前記回転子を回転させたときに前記回転位置検出装置の出力する回転位置信号の時間的変化を検出する回転位置信号検出部と、
    前記誘起電圧の時間的変化から導出される前記回転子の回転位置と、前記回転位置信号の時間的変化から導出される前記回転子の回転位置との位相差に基づいて、前記回転電機に対する前記回転位置検出素子の相対的な位相を検出する位相検出部とを備える、回転位置検出装置の位相検出装置。
  4. 前記着磁装置は、
    前記複数の突極に対応するようにコイルが巻回された着磁ヨークと、
    前記コイルを通電するための着磁電源とを含む、請求項3に記載の回転位置検出装置の位相検出装置。
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