JP4660894B2 - 気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体およびそれからなる薬液またはガス搬送および/または貯蔵用容器およびその付属部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体および/または液体の耐透過性に優れた構造体に関するものである。特に、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂を特定の相構造を形成させることによって得られる特異的な耐透過性、低吸水性、吸湿時寸法安定性、成形加工性を有する、気体および/または液体バリア部品への適用に好適な樹脂成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は、機械的特性、耐熱性、耐薬品性および成形性をバランスよく備えているため、電気・電子部品および自動車部品などに広く用いられている。また、近年、安全性、保存安定性、更には環境汚染防止性を確保するために内容物の漏洩防止、外気の混入防止等の目的でガスバリア性が要求される樹脂成形品が増加してきており、その中でもポリアミド樹脂は、優れたガスバリア性を有することから様々な成形品として用いられてきている。しかしながら、ポリアミド樹脂は、吸湿により強靱性は更に向上する反面、寸法変化および剛性などの低下や、更に、高湿度下の使用においては薬液および気体の耐透過性が低下し、その使用範囲を制約されることが多い状況にあり、その改善が望まれている。
【0003】
このようなポリアミド樹脂の物性を補完するために、耐水性、成形加工性に優れる反面、剛性、ガスバリア性や耐熱性などに問題を有するポリオレフィン樹脂とを組み合わせた樹脂組成物および成形体が従来より多数提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの方法では確かにポリアミド樹脂単体に比較し、吸水時の寸法安定性および剛性は向上するものの、必ずしも満足するものではない。また、耐透過性および剛性が必要な部材に用いる場合には十分とはいえず、これらポリアミド樹脂の有する特性とポリオレフィン樹脂の有する特性を兼ね備えている、高度に特性バランスに優れた樹脂成形体がさらに求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリアミド樹脂の有する機械的強度および耐透過性と、ポリオレフィン樹脂の有する低吸水性および靭性との高度なバランスの実現を課題とし、更にポリアミド樹脂の本質的特徴である吸湿による寸法変化および剛性などの機械的性質の低下と薬液およびガスの耐透過性低下を可能な限り抑制した樹脂成形体、特に気体および/または液体バリア部品への適用に好適なポリアミド−ポリオレフィン系気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは上記の課題を解決すべく検討した結果、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂を特定量配合し、さらに必要に応じ無機充填材を配合して得られる成形体において、その樹脂相分離構造がポリオレフィン樹脂相が成形体中で連続した相を形成するよう分散構造を制御することにより上記課題が解決されることを見出し本発明に到達した。
【0007】
すなわち上記目的は、
(1)実質的に(a)ポリアミド樹脂55〜70容量%及び(b)ポリオレフィン樹脂45〜30容量%からなる樹脂組成物で構成され、かつ、電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において(b)ポリオレフィン樹脂がマトリクス相(連続相)、(a)ポリアミド樹脂が分散相となる相構造を形成することを特徴とする気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体。
(2)および、これらを加工して得られる薬液またはガス搬送および/または貯蔵用容器およびその付属部品。により達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
本発明で用いられる(a)成分のポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの成分から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0009】
本発明において、150℃以上の融点を有するポリアミド樹脂は耐熱性や強度に優れ、特に好ましく用いることができる。具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66コポリマー)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0010】
とりわけ好ましいポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6/66コポリマー、またナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/12、およびナイロン6T/6コポリマーなどのヘキサメチレテレフタルアミド単位を有する共重合体を挙げることができ、更にこれらのポリアミド樹脂を耐衝撃性、成形加工性、相溶性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
【0011】
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がなく、サンプル濃度0.01g/mLの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5〜5.0の範囲、特に2.0〜4.0の範囲のポリアミド樹脂が好ましい。
【0012】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン、ペンテンなどのオレフィン類を重合または共重合して得られる熱可塑性樹脂である。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリプロピレンを主成分とする共重合ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ1−ブテン、ポリ1−ペンテン、ポリメチルペンテンなどの単独重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体、ビニルアルコールエステル単独重合体、ビニルアルコールエステル単独重合体の少なくとも一部を加水分解して得られるポリオレフィン樹脂、[(エチレン及び/又はプロピレン)とビニルアルコールエステルとの共重合体]の少なくとも一部を加水分解して得られるポリオレフィン樹脂、[(エチレン及び/又はプロピレン)と(不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]、[(エチレン及び/又はプロピレン)と(不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化して得られるポリオレフィン樹脂、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とのブロック共重合体及びその水素化物などを挙げることができる。これらポリオレフィン樹脂の中でも特にポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリプロピレンを主成分とする共重合ポリプロピレン、エチレン/α−オレフィン共重合体を用いることが好ましい。また、他樹脂との接着等後加工性の必要に応じてポリオレフィン樹脂を2種以上を併用して使用することは実用上好適である。
【0013】
上記のポリプロピレンとしては、特に制限はなく、アイソタクティック、アタクティック、シンジオタクティックなどいずれも使用することができる。またホモポリマー以外にプロピレン成分を70重量%以上含む他のオレフィン成分とのブロック、またはランダム共重合体を使用することができる。
【0014】
本発明のポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.01〜70g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは0.03〜60g/10分である。MFRが0.01g/10分未満の場合は流動性が悪く、70g/10分を超える場合は衝撃強度が低くなるため好ましくない。MFRは、重合されたポリオレフィン樹脂を有機過酸化物とともに加熱分解し調製したものであっても差し支えない。
【0015】
本発明で用いられる(b)ポリオレフィン樹脂の製造方法については特に制限はなく、ラジカル重合、チーグラー・ナッタ触媒を用いた配位重合、アニオン重合、メタロセン触媒を用いた配位重合などいずれの方法でも用いることができる。
【0016】
また、本発明において、ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸、その酸無水物またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種類の化合物で変性をして用いることが好ましい。変性した変性ポリオレフィンを用いることにより、相溶性が一層向上し、成形加工性を保持しつつ耐衝撃性に極めて優れた成形体を得ることができる。変性剤として使用される不飽和カルボン酸、その酸無水物またはその誘導体から選ばれる化合物の例を挙げると、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸およびこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸水素メチル、イタコン酸水素メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル、および5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸などである。これらの中では、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸またはこれらの酸無水物が好適である。
【0017】
また、これらの不飽和カルボン酸、その酸無水物またはその誘導体から選ばれる化合物をポリオレフィン樹脂に導入する方法は特に制限なく、予め主成分であるオレフィン化合物と不飽和カルボン酸、その酸無水物またはその誘導体から選ばれる化合物を共重合せしめたり、未変性ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸、その酸無水物またはその誘導体から選ばれる化合物をラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。変性剤成分の導入量は変性ポリオレフィン中のオレフィンモノマ全体に対して好ましくは0.001〜40モル%、より好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であることが適当である。
【0018】
本発明に用いる無機充填材(c)としては、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填剤を使用することができる。具体的には、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填剤が挙げられる。中でも、ガラス繊維および導電性が必要な場合にはPAN系の炭素繊維が好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。上記の充填剤は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもでき、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0019】
上記の無機充填剤の添加量は、ポリアミド樹脂(a)およびポリオレフィン樹脂(b)の合計量100重量部に対し、5〜200重量部であることが好ましい。より好ましくは5〜150重量部、特に好ましくは5〜100重量部である。無機充填剤の添加量が200重量部を超えると成形加工性や外観が低下し好ましくない。
【0020】
本発明の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体における(a)成分のポリアミド樹脂および(b)成分のポリオレフィン樹脂の配合割合は、ポリオレフィン樹脂成分が連続相(マトリックス相)を形成し、ポリアミド樹脂成分が分散相を形成する相構造(例えば海島構造)の場合には、ポリアミド樹脂55〜70容量%、ポリオレフィン樹脂45〜30容量%である。このようなポリオレフィン樹脂成分が少量成分である場合は、例えばポリアミド樹脂/ポリオレフィン樹脂の溶融粘度比を適切に制御することによってポリオレフィン樹脂が連続相をとる相構造を形成することができる。この相構造の成形体は、吸水時特性および耐透過性のバランスが優れたものであり特に好ましい。(a)成分のポリアミド樹脂が80容量%を超えると、本発明の樹脂成形体の特徴であるポリオレフィン樹脂成分が連続相を形成することが困難となり、本発明の目的を達成することができない。また、(a)成分のポリアミド樹脂が5容量%未満になると樹脂成形体の耐透過性の低下をきたすので好ましくない。
【0023】
本発明で用いる(d)層状珪酸塩は、アルミニウム、マグネシウム、リチウム等から選ばれる元素を含む8面体シートの上下に珪酸4面体シートが重なって1枚の板状結晶層を形成している2:1型の構造を持ち、その板状結晶層の層間に交換性の陽イオンを有しているものである。その1枚の板状結晶の大きさは、通常幅0.05〜0.5μm、厚さ6〜15オングストロームである。また、その交換性陽イオンのカチオン交換容量は0.2〜3meq/gのものが挙げられ、好ましくはカチオン交換容量が0.8〜1.5meq/gのものである。
【0024】
層状珪酸塩の具体例としてはモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母等が挙げられ、天然のものであっても合成されたものであっても良い。これらのなかでもモンモリロナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト系粘土鉱物やNa型四珪素フッ素雲母、Li型フッ素テニオライトなどの膨潤性合成雲母が好ましい。
【0025】
本発明で用いる層状珪酸塩は、層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンである層状珪酸塩が好ましい。
【0026】
有機オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。これらのなかではアンモニウムイオンとホスホニウムイオンが好ましく、特にアンモニウムイオンが好んで用いられる。アンモニウムイオンとしては、1級アンモニウムイオン、2級アンモニウムイオン、3級アンモニウムイオン、4級アンモニウムイオンのいずれでも良い。
【0027】
1級アンモニウムイオンとしてはデシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オレイルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどが挙げられる。
2級アンモニウムイオンとしてはメチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
3級アンモニウムイオンとしてはジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
4級アンモニウムイオンとしてはベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウムイオン、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0028】
また、これらの他にもアニリン、p−フェニレンジアミン、α−ナフチルアミン、p−アミノジメチルアニリン、ベンジジン、ピリジン、ピペリジン、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などから誘導されるアンモニウムイオンなども挙げられる。
【0029】
これらのアンモニウムイオンの中でも、トリオクチルメチルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、12−アミノドデカン酸から誘導されるアンモニウムイオンなどが好ましい。
【0030】
本発明における層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩は、交換性の陽イオンを層間に有する層状珪酸塩と有機オニウムイオンを公知の方法で反応させることにより製造することができる。具体的には、水、メタノール、エタノールなどの極性溶媒中でのイオン交換反応による方法や、層状珪酸塩に液状あるいは溶融させたアンモニウム塩を直接反応させることによる方法などが挙げられる。
【0031】
本発明において、層状珪酸塩に対する有機オニウムイオンの量は、層状珪酸塩の分散性、溶融時の熱安定性、成形時のガス、臭気の発生抑制などの点から、層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対し通常、0.4〜2.0当量の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.8〜1.2当量である。また、これら層状珪酸塩は上記の有機オニウム塩に加え、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用しても良い。
【0032】
好ましいカップリング剤は、有機シラン系化合物が挙げられる。その具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等の炭素炭素不飽和基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。特に、炭素−炭素不飽和基含有アルコキシシラン化合物が好ましく用いられる。
【0033】
これらカップリング剤での層状珪酸塩の処理は、水、メタノール、エタノールなどの極性溶媒中、あるいはこれらの混合溶媒中でカップリング剤を層状珪酸塩に吸着させる方法か、ヘンシェルミキサー等の高速攪拌混合機の中で層状珪酸塩を攪拌しながらカップリング剤溶液を滴下して吸着させる方法、さらには層状珪酸塩に直接シランカップリング剤を添加して、乳鉢等で混合して吸着させることによる方法のどれを用いても良い。層状珪酸塩をカップリング剤で処理する場合には、カップリング剤のアルコキシ基の加水分解を促進するために水、酸性水、アルカリ性水等を同時に混合するのが好ましい。また、カップリング剤の反応効率を高めるため、水のほかにメタノールやエタノール等の水、カップリング剤両方を溶解する有機溶媒を混合してもかまわない。このようなカップリング剤で処理した層状珪酸塩を熱処理することによってさらに反応を促進させることも可能である。なお、予め層状珪酸塩のカップリング剤での処理を行わずに、層状珪酸塩とポリアミド樹脂を溶融混練する際に、これらカップリング剤を添加するいわゆるインテグラルブレンド法を用いてもよい。
【0034】
層状珪酸塩の有機オニウムイオンによる処理とカップリング剤による処理の順序にも特に制限はないが、まず有機オニウムイオンで処理した後、カップリング剤処理をすることが好ましい。
【0035】
本発明において(d)層状珪酸塩の含有量は、無機灰分量として定義され、(a)ポリアミド樹脂と(b)ポリオレフィン樹脂の合計100重量部に対して0.1〜50重量部とすることが好ましく、更に好ましくは1〜20重量部、特に好ましくは1.5〜10重量部である。含有量が少なすぎると物性改良効果が小さく、含有量が多すぎると靱性が低下する場合がある。無機灰分量は樹脂組成物2gを500℃の電気炉で3時間灰化させて求められる。
【0036】
本発明の気体および/または液体バリア部品用樹脂組成物に導電性を付与するために導電性フィラーおよび/または導電性ポリマーを使用することが可能であり、特に限定されるものではないが、導電性フィラーとして、通常樹脂の導電化に用いられる導電性フィラーであれば特に制限は無く、その具体例としては、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆された無機フィラー、カーボン粉末、黒鉛、炭素繊維、カーボンフレーク、鱗片状カーボンなどが挙げられる。
【0037】
金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。
金属繊維の金属種の具体例としては鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、黄銅などが例示できる。
かかる金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維はチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
【0038】
金属酸化物の具体例としてはSnO2(アンチモンドープ)、In2O3(アンチモンドープ)、ZnO(アルミニウムドープ)などが例示でき、これらはチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
【0039】
導電性物質で被覆された無機フィラーにおける導電性物質の具体例としてはアルミニウム、ニッケル、銀、カーボン、SnO2 (アンチモンドープ)、In2O3(アンチモンドープ)などが例示できる。また被覆される無機フィラーとしては、マイカ、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛系ウィスカー、酸化チタン酸系ウィスカー、炭化珪素ウィスカーなどが例示できる。被覆方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法、焼き付け法などが挙げられる。またこれらはチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
【0040】
カーボン粉末はその原料、製造法からアセチレンブラック、ガスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラックなどに分類される。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、その原料、製造法は特に限定されないが、アセチレンブラック、ファーネスブラックが特に好適に用いられる。またカーボン粉末は、その粒子径、表面積、DBP吸油量、灰分などの特性の異なる種々のカーボン粉末が製造されている。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、これら特性に特に制限は無いが、強度、電気伝導度のバランスの点から、平均粒径が500nm以下、特に5〜100nm、更には10〜70nmが好ましい。また表面積(BET法)は10m2/g以上、更には30m2/g以上が好まし。またDBP給油量は50ml/100g以上、特に100ml/100g以上が好ましい。また灰分は0.5%以下、特に0.3%以下が好ましい。
【0041】
かかるカーボン粉末はチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。また溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
【0042】
本発明の気体および/または液体バリア部品用樹脂組成物を加工して得られた成形体は、しばしば表面の平滑性が求められる。かかる観点から、本発明で用いられる導電性フィラーは、本発明で用いられる無機充填材(c)同様、高いアスペクト比を有する繊維状フィラーよりも、粉状、粒状、板状、鱗片状、或いは樹脂組成物中の長さ/直径比が200以下の繊維状のいずれかの形態であることが好ましい。
【0043】
導電性ポリマーをの具体例としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどが例示できる。
【0044】
上記導電性フィラーおよび/または導電性ポリマーは、2種以上を併用して用いても良い。かかる導電性フィラー、導電性ポリマーの中で、特にカーボンブラックが強度、経済性の点で特に好適に用いられる。
【0045】
本発明で用いられる導電性フィラーおよび/または導電性ポリマーの含有量は、用いる導電性フィラーおよび/または導電性ポリマーの種類により異なるため、一概に規定はできないが、導電性と流動性、機械的強度などとのバランスの点から、(a)および(b)成分と(c)成分の合計100重量部に対し、1〜250重量部、好ましくは3〜100重量部の範囲が好ましく選択される。
【0046】
また導電性を付与した場合、十分な帯電防止性能を得る意味で、その体積固有抵抗が1010Ω・cm以下であることが好ましい。但し上記導電性フィラー、導電性ポリマーの配合は一般に強度、流動性の悪化を招きやすい。そのため目標とする導電レベルが得られば、上記導電性フィラー、導電性ポリマーの配合量はできるだけ少ない方が望ましい。目標とする導電レベルは用途によって異なるが、通常体積固有抵抗が100Ω・cmを越え、1010Ω・cm以下の範囲である。
【0047】
また、本発明のポリアミド樹脂には、長期耐熱性を向上させるために銅化合物が好ましく用いることができる。銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2ーメルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどの錯化合物などが挙げられる。なかでも1価の銅化合物とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第一銅、ヨウ化第一銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、通常ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部であることが好ましい。添加量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。本発明では銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムを挙げることができ、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0048】
本発明における組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
【0049】
本発明で規定した要件を満たす樹脂成形体が得られる限り、分散状態の調整方法に特に制限はないが、この溶融混練において、好ましい分散状態を実現するためには、たとえば2軸押出機で溶融混練する場合にメインフィーダーからポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂を供給し、無機充填材を押出機の先端部分のサイドフィーダーから供給する方法や事前にポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂を溶融混練した後、無機充填材と溶融混練する方法などが挙げられる。また、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂に層状珪酸塩を配合する際には、ポリアミド樹脂の重合系に層状珪酸塩を存在せしめる方法や両者を溶融混練する方法のいずれでもよい。
【0050】
本発明の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体の成形方法に関しても制限はなく、公知の方法(射出成形、押出成形、吹込成形、プレス成形等)を利用することができるが、好ましい方法としては、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形である。また、成形温度については、通常、ポリアミドの融点より10〜50℃高い温度範囲から選択され、一般的には、単層であるが、二色成形法により多層にしてもかまわない。
【0051】
本発明の樹脂成形体における各層の配置については特に制限はなく、全ての層を本発明の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体で構成してもよいし、他の層にその他の熱可塑性樹脂あるいは気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体の充填材未添加品を用いて構成してもよい。本発明の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体からなる層はその耐透過性効果を十分に発揮させる上で、2層の場合は最内層であることが好ましい。
【0052】
ここで用いられる本発明の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体以外の層として用いられる熱可塑性樹脂としては、飽和ポリエステル、ポリスルホン、四フッ化ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリケトン共重合体、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン、ABS、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマなどが例示でき、必要に応じ、これらの一種以上の熱可塑性樹脂を配合して用いることも、それらに各種添加剤を添加して所望の物性を付与して用いることもできる。また、得られた成形品同士あるいはその他の成形品と接着または溶着させてもよく、その方法は特に限定されず一般的な技術を用いることが可能である。
【0053】
本発明の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体は例えば、フロン−11、フロン−12、フロン−21、フロン−22、フロン−113、フロン−114、フロン−115、フロン−134a、フロン−32、フロン−123、フロン−124、フロン−125、フロン−143a、フロン−141b、フロン−142b、フロン−225、フロン−C318、R−502、1,1,1−トリクロロエタン、塩化メチル、塩化メチレン、塩化エチル、メチルクロロホルム、プロパン、イソブタン、n−ブタン、ジメチルエーテル、ひまし油ベースのブレーキ液、グリコールエーテル系ブレーキ液、ホウ酸エステル系ブレーキ液、極寒地用ブレーキ液、シリコーン油系ブレーキ液、鉱油系ブレーキ液、パワースアリリングオイル、ウインドウオッシャ液、ガソリン、メタノール、エタノール、イソプタノール、ブタノール、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、メタン、プロパン、天然ガス、アルゴン、ヘリウム、キセノン、医薬剤等の気体および/または液体あるいは気化ガス等の透過性が吸水時でも低く優れていることから、燃料タンク、オイル用リザーバータンク、その他シャンプー、リンス、液体石鹸等の各種薬剤用ボトルなどの薬液保存容器またはそれらタンク、ボトルに付属するカットオフバルブなどのバルブや継手類、付属ポンプのゲージ、ケース類などの部品、フューエルフィラーアンダーパイプ、ORVRホース、リザーブホース、ベントホースなどの各種燃料チューブ接続部品(コネクター等)、オイルチューブ接続部品、ブレーキホース接続部品、ウインドウオッシャー液用ノズル、冷却水、冷媒等用クーラーホース接続用部品、エアコン冷媒用チューブ接続用部品、消火器および消火設備用ホース、医療用冷却機材用チューブの接続用部品およびバルブ類、その他薬液およびガス搬送用チューブ用途、薬品保存用容器等の薬液および耐ガス透過性が必要とされる用途、自動車部品、内燃機関用途、電動工具ハウジング類などの機械部品を始め、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品など各種用途に有効である。
【0054】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
(1)アルコールガソリン透過性直径40mmの押出機の先端にチューブ状に成形するダイス、チューブを冷却し寸法制御するサイジングダイ、および引取機からなるものを使用し、外径:8mm、内径:6mmのチューブを成形した。該チューブを20cm長にカットし、チューブの一端を密栓し、内部に市販レギュラーガソリンとエタノールを75対25重量比に混合したアルコールガソリン混合物を6g精秤して内部に仕込み、残りの端部も密栓した。その後、全体の重量を測定し、試験チューブを40℃の防爆型オーブンにいれ、500時間処理し、減量した重量を測定した。
(2)吸湿時のアルコールガソリン透過性上記(1)と同様にアルコールガソリン混合物を充填した試験チューブを温度40℃、相対湿度65%の恒温恒湿器中で500時間処理し、減量した重量を測定した。
(3)酸素透過性JIS K7126 A法(差圧法)に準じてGTR−10(ヤナコ分析工業製)を用いて測定を行った。
(4)材料強度以下の標準方法に従って測定した。
引張強度 :ASTM D638曲げ弾性率 :ASTM D790Izod衝撃強度 :ASTM D256
(5)吸水率ASTM 1号試験片(厚さ1/8インチ)を用い、温度60℃、相対湿度95%の恒温恒湿器中に、24時間静置し、成形直後の絶対乾燥時(絶乾時)と吸水後の重量から吸水時重量増加率として求めた。
吸水率(%)={(吸水後の重量−絶乾時の重量)/絶乾時の重量}×100
(6)吸水時寸法安定性上記吸水率と同様に吸水処理した試験片において、成形直後の絶対乾燥時(絶乾時)と吸水後の試験片長さ(長尺方向)から吸水時寸法増加率として求めた。
吸水時寸法安定性(%)={(吸水後の試験片長さ−絶乾時の試験片長さ)/絶乾時の試験片長さ}×100
(7)吸水時弾性率上記吸水率と同様に吸水処理した試験片の曲げ弾性率を測定した。
(8)相分離構造の観察チューブ成形品の断面部分を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察を行なった。
(9)溶融粘度比プランジャー式キャピラリーレオメーターを用いて、溶融混練温度でのせん断速度10sec-1の溶融粘度(poise)を測定し求めた。
溶融粘度比=ポリアミド樹脂の溶融粘度÷ポリオレフィン樹脂の溶融粘度実施例及び比較例で使用したポリアミド樹脂およびポリオレフィンは以下のとおり。
参考例1
Na型モンモリロナイト(クニミネ工業:クニピアF、陽イオン交換容量120m当量/100g)100gを温水10リットルに攪拌分散し、ここにトリオクチルメチルアンモニウムクロライド48g(陽イオン交換容量と等量)を溶解させた温水2Lを添加して1時間攪拌した。生じた沈殿を濾別した後、温水で洗浄した。この洗浄と濾別の操作を3回行い、得られた固体を80℃で真空乾燥して乾燥した有機化層状珪酸塩を得た。この有機化層状珪酸塩の無機灰分量を測定したところ無機灰分の割合は67重量%であった。なお無機灰分量は層状珪酸塩0.1gを500℃の電気炉で3時間灰化させて求めた値である。
<ポリアミド樹脂>
(N6−1):融点225℃、相対粘度2.80のナイロン6樹脂。
(N6−2):融点225℃、相対粘度3.30のナイロン6樹脂。
(N6−3):融点225℃、相対粘度4.30のナイロン6樹脂。
(N6−4):融点225℃、相対粘度2.80のナイロン6樹脂100重量部に参考例で得られた有機化層状珪酸塩5部を混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度250℃で溶融押出して得られた層状珪酸塩含有ナイロン6樹脂。
(N66):融点265℃、相対粘度3.20のナイロン66樹脂。
(N6/66):融点217℃、相対粘度2.85のナイロン6/66共重合体。
<ポリオレフィン樹脂>
(PP−1):ポリプロピレン(MFR=10)100重量部、無水マレイン酸0.8部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.05部を混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度220℃で溶融押出して得られた変性ポリプロピレン。
(PP−2):ポリプロピレン(MFR=0.5)100重量部、無水マレイン酸0.8部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.05部を混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度220℃で溶融押出して得られた変性ポリプロピレン。
(PP−3):ポリプロピレン(MFR=10)。
(PE−1):ポリエチレン(MFR=30)100重量部、無水マレイン酸1部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.1部を混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度220℃で溶融押出して得られた変性ポリエチレン。
(PE−2):密度0.905のメタロセン系触媒によって製造された低密度ポリエチレン(エチレン/ヘキセン共重合体、MFR=4)。
実施例1、5〜8、13、比較例1〜6
表1、2に示すようにポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂を混合し、日本製鋼所製TEX30型2軸押出機のメインフィダーから供給し、無機充填材供給する場合は、シリンダー途中のサイドフィダーを用いて供給する方法で混練温度250℃(N66は280℃)、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行った。得られたペレットを乾燥後、射出成形(東芝機械IS100FA、金型温度80℃)により試験片を調製した。各サンプルの耐透過性、材料強度および吸水時特性などを測定した結果は表1に示すとおりであった。また、相分離構造を評価した電子顕微鏡写真をそれぞれ図1(実施例7)および図2(比較例6)に示す。なお、ここで表中のGFはガラス繊維(繊維径10μm、3mmチョップドストランド、日本電気ガラス社製)、MFはミルドファイバー(平均繊維長140μm、平均繊維径9μm、日本電気ガラス社製)をそれぞれ表す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
実施例1、5〜8、13および比較例1〜6より特定の相分離構造を規定した本発明の樹脂成形体は、耐透過性が良好であり、特に吸水時の耐透過性、寸法安定性と吸水時剛性のバランスに優れた特性が得られる実用価値の高いものである。
【0057】
【発明の効果】
本発明の樹脂成形体は、気体および/または液体バリア性が良好であり、特に高湿下でも耐透過性および剛性が良好であることから各種用途に展開可能であり、例えば電気・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品、建材、包装材、家具、日用雑貨などに適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例7の相分離構造を示す電子顕微鏡写真であり、黒く染まっている部分がポリアミド樹脂成分である。
【図2】 比較例6の相分離構造を示す電子顕微鏡写真であり、黒く染まっている部分がポリアミド樹脂成分である。
Claims (10)
- 実質的に(a)ポリアミド樹脂55〜70容量%及び(b)ポリオレフィン樹脂45〜30容量%からなる樹脂組成物で構成され、かつ、電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において(b)ポリオレフィン樹脂がマトリクス相(連続相)、(a)ポリアミド樹脂が分散相となる相構造を形成することを特徴とする気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体。
- (a)成分のポリアミド樹脂と(b)成分のポリオレフィン樹脂の合計100重量部に対して(d)層状珪酸塩0.1〜50重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体。
- (a)成分のポリアミド樹脂と(b)成分のポリオレフィン樹脂の合計100重量部に対して(c)無機充填材5〜200重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体。
- (b)成分のポリオレフィン樹脂がポリエチレンまたはポリプロピレンを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体。
- (b)成分のポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸、その酸無水物またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種類の化合物によって変性された変性ポリオレフィン樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体。
- (b)成分のポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸無水物によって変性されたポリプロピレンを含有することを特徴とする請求項5に記載の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体。
- (a)成分のポリアミド樹脂がナイロン6樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体。
- (a)成分のポリアミド樹脂がナイロン66樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体。
- 成形体を得る方法が射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形の内から選ばれることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の気体および/または液体バリア部品用樹脂成形体を加工して得られる薬液またはガス搬送および/または貯蔵用容器およびその付属部品。
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