JP4656473B2

JP4656473B2 - Coated tool for hot working with excellent lubricant adhesion and wear resistance

Info

Publication number: JP4656473B2
Application number: JP2001111707A
Authority: JP
Inventors: 謙一井上
Original assignee: Hitachi Metals Ltd
Current assignee: Hitachi Metals Ltd
Priority date: 2001-04-10
Filing date: 2001-04-10
Publication date: 2011-03-23
Anticipated expiration: 2021-04-10
Also published as: JP2002307129A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、温間ないしは熱間で金属同士の摺動を伴う環境にて使用される鍛造用金型等の温熱間加工用被覆工具に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、温熱間加工用工具には、主にＪＩＳに規定されるＳＫＤ６１、ＳＫＴ４といった熱間金型用鋼が広く用いられており、特に耐久性を要求される用途には、これらよりも高温強度の高いＳＫＤ７、ＳＫＤ８、高速度工具鋼あるいはこれらの改良鋼が使用されている。
【０００３】
例えば、温熱間鍛造用金型（以下、金型と記す）においては、近年の、加工効率の向上、被加工製品の高精度化、ニアネットシェイプ化の要求に対し、金型の靭性を保持するとともに、金型作業面の耐摩耗性、耐焼付き性、耐ヒートクラック性を向上させる目的で、プラズマ法、塩浴法、ガス法等による窒化処理や、アークイオンプレーティング法等の物理蒸着法（以下、ＰＶＤ法と記す）による皮膜が窒化処理と組み合わされて適用されるようになってきた。
【０００４】
特開平１１−９２９０９号には、金型母材とＰＶＤ皮膜の密着性を向上させるために、ＣｒＮまたはＴｉＡｌＮといったＰＶＤによる被覆の前処理として、ダイアモンドペースト等による被覆母材の表面粗さの調整、真空ガス窒化処理の適用、電解法による洗浄が提案されている。また、特開平１１−１５２５８３号には、金型の耐ヒートクラック性、耐酸化性の向上を目的に、窒化処理とＰＶＤ法によるＴｉＮ、ＣｒＮ、ＴｉＣｒＮの併用が提案されている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平１１−９２９０９号、特開平１１−１５２５８３号の提案による効果は、従来工具と比較して、２〜３割程度の寿命向上であり、飛躍的な工具寿命の改善は達成できず、加工効率の向上、被加工製品の高精度化、ニアネットシェイプ化といった要求に対しては十分に満足できるものではなかった。
【０００６】
特に被加工製品のニアネットシェイプ化は、製品形状が複雑となるため、加工時には金型作業面への負荷応力も大きくなるだけでなく、被加工材の肉流れ速度が金型の場所によって大きく異なる。つまり、金型の表面温度が不安定な鍛造初期においては、被加工材との摺動発熱による金型の表面温度も場所によって大きく異なることとなる。
【０００７】
一般に温熱間鍛造においては、鍛造毎に潤滑剤を噴霧するが、潤滑剤はある任意の金型表面温度で最も付着しやすくなる特性を有している。このため、金型の表面温度が場所により大きく異なるということは、潤滑剤の付着量も金型の場所により大きく変化し、潤滑剤が適量付着する場所と、付着しない場所が生ずる。
当然、潤滑剤の付着量が低下する部位においては、早期に被加工材との焼付き、かじり等が発生しやすくなる。
【０００８】
このような焼付き、かじり等の発生は、金型作業面と被加工材との界面で、過大な摩擦力を働かせることとなり、著しい摩擦熱が発生する。その結果、金型材表面部では熱により母材が極端に軟化するため、皮膜は容易に剥離してしまい、金型の耐摩耗性は極端に低下してしまう。製品形状によっては、上記摩擦熱が、金型材自身の変態点（７００〜９００℃）を上回るほど高温になる場合があり、金型がさらされる環境は、非常に厳しいものとなる。
【０００９】
現在、温熱間金型用として提案されているＰＶＤ皮膜は、金型母材と皮膜の密着性向上を主体に改善が行われているため、先述の潤滑剤付着性にバラツキが生じる環境で使用すると、早期に焼付き、かじり等が発生してしまい、その効果を十分に発揮する間もなく剥離してしまうという問題があった。
【００１０】
本発明の目的は、上記のような問題を解消した耐焼付き性、耐摩耗性に優れる温熱間加工用被覆工具を提供することである。
【００１１】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、温熱間加工用工具における潤滑剤の付着性および耐焼付き性、耐かじり性に及ぼす、ＰＶＤ皮膜の組成、層構造ならびに成膜条件の影響について詳細な検討を行った。
【００１２】
その結果、最表層に粗さを特定値内に規定した層を適用し、かつ母材直上には、Ｔｉ、Ｖ、Ｃｒ、Ａｌ、Ｓｉから選んだ１種もしくは２種以上の金属元素が主体の窒化物、炭化物、炭窒化物の１種以上を形成することで温熱間加工用工具として極めて良好な潤滑剤付着性ならびに耐焼付き性が得られることを見いだした。この結果により、例えば熱間鍛造用金型においては、鍛造初期の局部的な焼付きは十分に抑制され、熱間鍛造金型として著しく寿命が向上するということを確認した。
【００１３】
すなわち、本発明の第１発明は、熱間ダイス鋼もしくは高速度鋼を母材とする、少なくとも作業面に被覆層を有し、被覆層を有した作業面に潤滑剤を付着して使用される温熱間加工用工具であって、該被覆層の最表層は、表面粗さがＲｚ：４〜１５μｍのａ層であり、かつＴｉ、Ｖ、Ｃｒ、Ａｌ、Ｓｉから選んだ１種もしくは２種以上の金属元素が主体の窒化物、炭化物、炭窒化物の１種以上からなるｂ層が、母材直上にあることを特徴とする潤滑剤付着性および耐摩耗性に優れた温熱間加工用被覆工具である。
【００１４】
なお、本発明のａ層は、Ｔｉ、Ｖ、Ｃｒ、Ａｌ、Ｓｉ、Ｃｕの１種もしくは２種以上の金属元素を主体とし、層厚を２〜１５μｍとすることが望ましい。また、上記被覆層は物理蒸着法により被覆されたことが望ましい。更に被覆母材は母材最表面から２５μｍの深さにおける硬さが、母材最表面から５００μｍの深さにおける硬さに比べ、２００ＨＶ０．２以上高いことが望ましい。
【００１５】
【発明実施の形態】
まず、本発明の温熱間加工用被覆工具は、その被覆層が形成される母材として、熱間強度に優れる材料を適用する。この材料としては、例えば従来よりその温熱間工具として適用されている鋼素材であればよく、例えばＪＩＳに規定される熱間ダイス鋼や高速度鋼、そしてそれらの改良鋼であってもよい。はじめに請求項中記載のａ層に関し、その構成要件について詳しく述べる。
【００１６】
ＴｉＮ、ＣｒＮ、ＴｉＡｌＮといったＰＶＤ法による皮膜は、窒化層に比べ著しく硬さは高いことから、切削工具を主体に適用が広がっている。例えば窒化層の硬さは、被処理材の組成にもよるが、１０００〜１１００ＨＶであるのに対して、ＴｉＮでは２０００〜２２００ＨＶ、ＣｒＮでは１８００〜２０００ＨＶ、ＴｉＡｌＮでは２４００〜２７００ＨＶと、窒化層に比べ約２倍以上の硬さが得られる。このため、本来耐摩耗性はＰＶＤによる皮膜の方が優れているはずである。
【００１７】
そこで発明者は温熱間加工用金型の使用環境と表面処理に必要とされる特性について種々検討を重ねた結果、従来より適用されてきたＰＶＤ皮膜は、温熱間加工用金型において、非常に重要な特性である潤滑剤の付着性が、窒化層に比べ極端に劣るということを確認した。
【００１８】
図１は、予め表面処理を施したテストピースを１００〜３５０℃の任意の温度で加熱し、１０％の濃度に調整した白色系潤滑剤（大同化学株式会社製ホットアクアルブ＃３００ＴＫ）水溶液を、距離４７０ｍｍ、噴霧量２．０ｍｌ／ｓで２秒噴霧した際の、試験片表面に付着した潤滑剤の単位面積あたりの重量を示したものである。この時、テストピースは、表面処理を施さないものと、塩浴窒化材、ならびにＰＶＤ法（アークイオンプレーティング法）によるＣｒＮを被覆したものを用いた。
【００１９】
この結果によると、塩浴窒化材については、無処理材に比べ潤滑剤の付着量が多く、特に本潤滑剤が付着し難くなる試験片加熱温度２５０〜３５０℃において、その傾向は顕著になる。この時、ＣｒＮ被覆材の潤滑剤付着性は、無処理材と同等もしくはそれ以下の結果であり、明らかにＰＶＤ皮膜の潤滑剤付着性は、他の表面処理に比べ劣っていることがわかる。このようなＰＶＤ皮膜の潤滑剤付着性に劣る点が、実際の温熱間加工用金型において、特に金型の場所によって表面温度が異なるような複雑な形状の場合では、顕著に現れるため、局部的に潤滑剤の付着し難い部位が発生し、焼付きやかじりを誘発するものと推察された。
【００２０】
そこで、上記試験後のテストピースについて、潤滑剤付着状況の詳細な観察を行った結果、潤滑剤はテストピース表面の微小な凹凸を核にして凝固している様子が認められ、この凝固単位が微細なものほど潤滑剤の付着量は増加するということが確認された。
【００２１】
そこでＰＶＤ法の成膜条件を制御して、被覆層の表面粗さが種々異なるテストピースを作製し、同様の試験方法により表面の面粗さと潤滑剤付着量の関係を調査した。このとき、試験片加熱温度は、潤滑剤が付着し難い３００℃に設定した。
【００２２】
また、ＰＶＤ法による被覆には、純Ｃｒ製ターゲットを用い、被覆材温度５００℃、アルゴン雰囲気中３〜２５Ｐａの圧力を選択し成膜を行った。表面粗さは成膜中の圧力により制御した。成膜初期の５分間についてはＢｉａｓ電圧を−１００Ｖにし、後半の３０分間は０Ｖにした。テストピース被覆面の面粗さは、長さ５ｍｍの領域について、オリンパス光学株式会社製走査型レーザー顕微鏡ＯＬＳ１０００を用いて測定した。
【００２３】
図２に結果を示すが、潤滑剤の付着量は、面粗さＲｚ（ＪＩＳ−Ｂ−０６０１：十点平均粗さ）で４μｍ付近を境に大きく増加し、図１で示した塩浴窒化材と同等以上に改善されることがわかった。また、面粗さＲｚが１６μｍ以上になると、ＰＶＤ皮膜は成膜直後の時点で剥離が生じてしまい、実型への適用は困難であることが認められた。
【００２４】
本発明のａ層は、金型の表面温度が不安定な鍛造初期において、潤滑剤の付着量を向上させることが主な役割であり、その存在は極めて重要である。この効果を発揮するためには、表面粗さＲｚで４μｍ以上必要であるが、１５μｍを越えると皮膜の密着性が極端に低下する。よって本発明のａ層は、表面粗さＲｚで４〜１５μｍとする。本発明のａ層は、特にその組成・構成の規定を設けないが、Ｔｉ、Ｖ、Ｃｒ、Ａｌ、Ｓｉ、Ｃｕの１種もしくは２種以上の金属元素を主体とすることが、以下の理由により、望ましい。
【００２５】
上記組成の中でもＴｉ、Ｖ、Ｃｒ、Ａｌ、Ｓｉについては、本発明の温熱間加工用被覆工具において、下記必須となる、被覆母材直上にＴｉ、Ｖ、Ｃｒ、Ａｌ、Ｓｉから選んだ１種もしくは２種以上の金属元素が主体の窒化物、炭化物、炭窒化物の１種以上からなるｂ層を成膜することと関連している。例えば、ＰＶＤ法の中でもスパッタリング法、アークイオンプレーティング法を適用した場合、ａ層とｂ層を構成する金属元素が異なることは、同様に種類の異なる金属ターゲットを用意する必要がある。このことは、高価なターゲットの種類が増加することとなり、結果的に成膜のコストを増加させてしまうため望ましくない。
【００２６】
ただし、ａ層の望ましい構成元素にＣｕを挙げる理由については例外で、熱伝導率の高いＣｕを適用することにより、潤滑剤の乾燥時間が早まり、潤滑剤の付着量は著しく増加するためである。これはＴｉ、Ｖ、Ｃｒ、Ａｌ、Ｓｉといった他の金属に比べ、その効果が絶大であり、潤滑剤が極めて付着し難い環境下では有効である。以上のような理由から、本発明のａ層は、Ｔｉ、Ｖ、Ｃｒ、Ａｌ、Ｓｉ、Ｃｕの１種もしくは２種以上の金属元素を主体とすることが望ましい。
【００２７】
なお、その主体とすることについては、例えば上記より選ばれた元素種の合計にて５０（原子％）以上、特に効果の期待できるＣｕの選択も鑑みれば合計にて７０（原子％）以上、更には９０（原子％）とすればよいが（実質１００（原子％）を含む）、これについては、その成膜コスト低減の上での、後に述べるｂ層との兼合いにて決定されればよいことは、上記の通りである。
【００２８】
更に本発明のａ層は、その層厚が２〜１５μｍであることが望ましい。層厚が２μｍ未満であると、加工時の負荷が極めて高い場合に、早期に滅失してしまい効果のない場合がある。逆に１５μｍを越えて成膜すると、成膜条件によっては、早期に剥離してしまう場合があるためである。よって、本発明のａ層の層厚は、２〜１５μｍであることが望ましい。
【００２９】
本発明のａ層は、その表面粗さを適度に粗化することで潤滑剤の付着性を向上させ、焼付きを防止するものである。しかし、耐焼付き性の向上を主体に適用されているのみであり、温熱間加工用金型としての耐摩耗性は十分ではない。そのため、Ｔｉ、Ｖ、Ｃｒ、Ａｌ、Ｓｉから選んだ１種もしくは２種以上の金属元素が主体の窒化物、炭化物、炭窒化物の１種以上からなるｂ層を、母材直上に成膜することが必要である。
【００３０】
ここで本発明のｂ層は、例えば窒化物においては、ＴｉＮ、ＣｒＮ、ＶＮ、ＣｒＮといった金属元素が１種の場合や、ＴｉＶＮ、ＴｉＡｌＮ、ＴｉＳｉＮ、ＣｒＳｉＮ、ＣｒＡｌＮ、ＴｉＡｌＳｉＮといった金属元素が２種類以上の場合が挙げられる。金型の形状が極めて複雑で、凸部において非常に応力が集中しやすい場合では、上記窒化物の中でも比較的残留応力が小さく、密着性に優れる、ＴｉＮ、ＣｒＮ、ＶＮ、ＴｉＶＮといった皮膜の適用が好ましく、鍛造温度が高く、皮膜に耐酸化性が求められる場合には、ＴｉＡｌＮ、ＴｉＳｉＮ、ＣｒＡｌＮ、ＣｒＳｉＮといったＡｌ、Ｓｉを含む皮膜が望ましい。
【００３１】
上記は窒化物を例として挙げたが、炭化物、炭窒化物についても同様の効果であり、また、Ｔｉ、Ｖ、Ｃｒ、Ａｌ、Ｓｉからの選択を主体（金属元素のみの原子％で実質１００％を含む）とするも、必要に応じてIVａ、Vａ、VIａ属の金属元素ならびにＢ等を、金属元素のみの原子％で３０％以下、更には１０％以下微量添加してもよい。更に異なる組成の窒化物、炭化物、炭窒化物を２種以上選択し、多層膜として適用してもよい。
【００３２】
以上、本発明の温熱間加工用被覆工具は、熱間ダイス鋼もしくは高速度鋼を母材とする、少なくとも作業面に、上記構成の被覆層を有す温熱間加工用工具であって、その効果を得るに好ましい一具体例としては、母材直上に本発明のｂ層を形成し、そして、該ｂ層の上に最表層となる本発明のａ層を形成するものである。
【００３３】
本発明の温熱間加工用被覆工具は、その被覆方法について特に限定されるものではないが、被覆母材の熱影響、工具の疲労強度、皮膜の密着性等を考慮すると、被覆母材である熱間ダイス鋼もしくは高速度鋼の焼戻し温度以下で成膜でき、皮膜に圧縮応力が残留するアークイオンプレーティング法もしくはスパッタリング法といった被覆母材側にＢｉａｓ電圧を印可する物理蒸着法であることが望ましい。
【００３４】
更に本発明の被覆母材は、より耐摩耗性の向上を目的に、母材最表面から２５μｍの深さにおける硬さが、母材最表面から５００μｍの深さにおける硬さに比べ、２００ＨＶ０．２以上高いこと、つまりその具体例として、窒化処理、浸炭処理等と言った拡散を利用した表面硬化処理を予め適用することが望ましい。この時、窒化処理で形成される白層と呼ばれる窒化物層や、浸炭で認められる炭化物層と言った化合物層は、ｂ層の密着性を低下させる原因となるため、処理条件の制御により形成させないようにするか、研磨等により除去することが望ましい。
【００３５】
【実施例】
次に実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定を受けるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更が可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【００３６】
（実施例１）
ＪＩＳに規定されるＳＫＤ６１を用意し、１０３０℃より油焼入れ後、５５０〜６３０℃での焼戻しにより４７ＨＲＣに調質した。その後、潤滑剤付着性の評価用に厚み３ｍｍ、一辺が３０ｍｍの板状テストピースの加工を行った。
【００３７】
次に、流量比５％Ｎ_２（残Ｈ_２）雰囲気中で、５５０℃、１０時間保持の条件でイオン窒化処理を施した後、それぞれ試験面を研磨によって鏡面に仕上げた。なお、仕上げ後の表面より２５μｍの深さにおける硬さは、全テストピースにて、その５００μｍの深さにおける硬さより２００ＨＶ０．２以上に硬化されていることを確認済みである。そして、仕上げ後の母材表面に対し、次に示す条件にてＰＶＤ法による被覆を行った。
【００３８】
母材直上のｂ層は、小型アークイオンプレーティング装置にて、圧力０．５ＰａのＡｒ雰囲気中で、被覆母材に−４００ＶのＢｉａｓ電圧を印可し、６０分の熱フィラメントによるプラズマクリーニングを行った後、金属成分の蒸発源である各種金属製ターゲットならびに反応ガスとしてＮ_２ガスを用い、被覆母材温度５００℃、反応ガス圧力３．０Ｐａ、−１００ＶのＢｉａｓ電圧にて層厚が５μｍとなるよう成膜した。
【００３９】
また、最表層を形成するａ層を被覆するものについては、ｂ層を被覆した後、連続して被覆を行った。ａ層の成膜には、蒸発源として純Ｃｕターゲットもしくはｂ層の成膜に使用したターゲットを用い、被覆材温度５００℃で、成膜初期の５分間についてはＢｉａｓ電圧を−１００Ｖにし、後の３０分間は０Ｖにして、皮膜の層厚が５μｍとなるよう成膜を行った。この時、純Ｃｕターゲットを使用する場合にはＮ_２雰囲気、ｂ層の成膜に使用したターゲットを使用する場合はＡｒ雰囲気中で成膜を行い、比較例Ｎｏ．２１、Ｎｏ．２２、Ｎｏ．２３の被覆には３Ｐａ、本発明例および比較例Ｎｏ．２４の被覆には１５Ｐａの圧力を用いた。
【００４０】
また、従来例としては、前記イオン窒化処理後にＴｉＮ、ＣｒＮ、（Ｔｉ_０．６０Ａｌ_０．４０）Ｎを、前記ｂ層の被覆と同じ条件で成膜したものを用意した。
【００４１】
得られたテストピースは、オリンパス光学株式会社製走査型レーザー顕微鏡ＯＬＳ１０００を用い、板状テストピース試験面の長さ３ｍｍの領域について面粗さを測定した。その後、潤滑剤付着性の評価を実施した。潤滑剤付着性の評価は、テストピースを３００℃に加熱し、１０％の濃度に調整した白色系潤滑剤（大同化学株式会社製ホットアクアルブ＃３００ＴＫ）水溶液を、距離４７０ｍｍ、噴霧量２．０ｍｌ／ｓで２秒噴霧した際の、試験片表面に付着した潤滑剤の単位面積あたりの重量にて評価を行った。
【００４２】
表１に各テストピースの被覆層の詳細と、潤滑剤付着性評価の結果を示す。なお、本発明の被覆層構成を満たさないテストピースにおいては、その成膜されたａ、ｂ層の定義がし難いものもあるが、本発明との比較を分かり易くするための便宜上、表１の通りに示すものである。
【００４３】
【表１】

【００４４】
表１に示すように、本発明例ならびに比較例Ｎｏ．２４は、表面粗さが本発明の規定範囲を満足しているため、潤滑剤の付着性は著しく優れていることがわかる。一方、比較例Ｎｏ．２１、２２、２３は、ａ層は存在しているものの、その表面粗さが本発明の規定範囲を外れるものであるために、いずれも潤滑剤の付着性が著しく劣る結果となった。言うまでもなく、従来例の潤滑剤付着性は、本発明例に比べ大幅に劣る。以上のことから、潤滑剤の付着性を向上させるには、本発明を満足しなければならないことがわかる。
【００４５】
なお、図３はａ層被覆直後における本発明例Ｎｏ．２の表面ＳＥＭ像であり、粒径で約３μｍのこぶ状粒子によって表面は覆われていることが認められる。
【００４６】
（実施例２）
次に、表１中の本発明例Ｎｏ．１、Ｎｏ．２、Ｎｏ．４、Ｎｏ．７、比較例Ｎｏ．２３、Ｎｏ．２４、従来例Ｎｏ．３２、Ｎｏ．３３と同等の表面被覆層構成であるベアリングレース成型用熱間鍛造パンチを作製し、実金型における寿命で評価を行った。
【００４７】
表２に示す化学成分の高速度鋼ベースの靭性改良材を、金型近似形状に粗加工し、１０８０℃の油焼入れを行い、６００℃の焼戻しにより５５ＨＲＣに調質した。その後、仕上げ加工を行い、それぞれ実施例１と同様の条件で窒化処理ならびにＰＶＤ法による成膜を施した。なお、窒化・仕上げ後の表面より２５μｍの深さにおける硬さが、その５００μｍの深さにおける硬さより２００ＨＶ０．２以上に硬化されていることは確認済みである。
【００４８】
【表２】

【００４９】
上記にて作製された金型は、直径１３０ｍｍ、高さ３００ｍｍの寸法で、その先端部にベアリングレース成型用パンチに加工が施されている。そして、１０００ｔの鍛造プレスを用い、１０７０℃に加熱したＳＵＪ２ワークを熱間鍛造成形した。表３に各パンチの寿命を示す。
【００５０】
【表３】

【００５１】
本発明を適用したパンチは、比較例もしくは従来例適用のパンチに比べ、工具寿命は２倍以上に向上した。また、本発明適用のパンチは、いずれも摩耗による損傷で寿命となったが、比較例Ｎｏ．２３および従来例を適用したパンチは、早期にパンチ先端でかじりを発生した後、局部的にえぐれたように損傷が進行し寿命となった。以上のように、本発明を熱間鍛造用パンチに適用することで、パンチの寿命は飛躍的に向上することが確認された。
【００５２】
なお、実施例１および２においては、ｂ層が窒化物の場合を例にして示したが、ｂ層が炭化物もしくは炭窒化物、さらにはそれらを含む構成であっても、同様の効果が得られる。
【００５３】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明で規定した表面被覆層構造を適用することにより、潤滑剤の付着性に優れ、耐焼付き性、耐かじり性が向上する。その結果、温熱間加工用工具として、耐摩耗性の改善が達成でき、工具寿命を飛躍的に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図１】各表面処理の試験片加熱温度と潤滑剤付着量の関係を示す図である。
【図２】試験片加熱温度３００℃における表面粗さＲｚと潤滑剤付着量の関係を示す図である。
【図３】本発明例Ｎｏ．２の表面ＳＥＭ像であり、本発明の一例を示す顕微鏡写真である。[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a coated tool for hot working such as a forging die used in an environment involving sliding of metals between warm or hot.
[0002]
[Prior art]
Conventionally, hot mold steels such as SKD61 and SKT4, which are mainly defined in JIS, have been widely used for hot working tools. Especially for applications that require durability, higher temperature strength is required. High SKD7, SKD8, high speed tool steel, or improved steels thereof are used.
[0003]
For example, in hot forging dies (hereinafter referred to as dies), the toughness of the dies is maintained in response to the recent demands for improved processing efficiency, higher precision of processed products, and near net shape. In addition, for the purpose of improving the wear resistance, seizure resistance and heat crack resistance of the mold work surface, nitriding by plasma method, salt bath method, gas method, etc., physical vapor deposition such as arc ion plating method, etc. A film by a method (hereinafter referred to as a PVD method) has been applied in combination with a nitriding treatment.
[0004]
In JP-A-11-92909, in order to improve the adhesion between the mold base material and the PVD film, the surface roughness of the coating base material with diamond paste or the like is adjusted as a pretreatment of the PVD coating such as CrN or TiAlN. Application of vacuum gas nitriding treatment and cleaning by electrolytic method have been proposed. Japanese Patent Application Laid-Open No. 11-152583 proposes the combination of nitriding and TiN, CrN, and TiCrN by the PVD method for the purpose of improving the heat crack resistance and oxidation resistance of the mold.
[0005]
[Problems to be solved by the invention]
However, the effects of the proposals of JP-A-11-92909 and JP-A-11-152583 are about 20 to 30% longer life than conventional tools, and a dramatic improvement in tool life cannot be achieved. However, it has not been able to satisfy the requirements such as improvement of processing efficiency, high precision of processed products, and near net shape.
[0006]
In particular, the near-net shape of workpieces has a complicated product shape, which not only increases the stress applied to the work surface of the mold during machining, but also increases the flow rate of the workpiece depending on the location of the mold. Different. That is, in the initial stage of forging where the surface temperature of the mold is unstable, the surface temperature of the mold due to sliding heat generation with the workpiece also varies greatly depending on the location.
[0007]
In general, in warm hot forging, a lubricant is sprayed for each forging, and the lubricant has a characteristic that it is most likely to adhere at any given mold surface temperature. For this reason, the fact that the surface temperature of the mold varies greatly depending on the location means that the amount of lubricant attached also varies greatly depending on the location of the mold, resulting in a place where an appropriate amount of lubricant is attached and a place where the lubricant is not attached.
Naturally, seizure, galling, and the like with the workpiece are likely to occur at an early stage in a portion where the adhesion amount of the lubricant decreases.
[0008]
Such seizure, galling or the like causes an excessive frictional force to act at the interface between the mold work surface and the workpiece, and generates significant frictional heat. As a result, the base material is extremely softened by heat on the surface of the mold material, so that the coating is easily peeled off, and the wear resistance of the mold is extremely lowered. Depending on the product shape, the frictional heat may become so high that it exceeds the transformation point (700 to 900 ° C.) of the mold material itself, and the environment to which the mold is exposed becomes very severe.
[0009]
Currently, PVD coatings that have been proposed for hot molds have been improved mainly by improving the adhesion between the mold base material and the coating, so they can be used in environments where there is a variation in the adhesion of the above-mentioned lubricant. Then, there was a problem that seizure, galling, etc. occurred at an early stage, and the film peeled off soon without fully exhibiting its effects.
[0010]
An object of the present invention is to provide a coated tool for hot working which is excellent in seizure resistance and wear resistance, which solves the above problems.
[0011]
[Means for Solving the Problems]
The inventor has conducted detailed studies on the influence of the composition of the PVD film, the layer structure, and the film forming conditions on the adhesion, seizure resistance, and galling resistance of the lubricant in the hot working tool.
[0012]
As a result, a layer whose roughness is specified within a specific value is applied to the outermost layer, and one or more metal elements selected from Ti, V, Cr, Al, and Si are mainly formed immediately above the base material. It has been found that by forming at least one of nitrides, carbides, and carbonitrides, extremely good lubricant adhesion and seizure resistance can be obtained as a tool for hot working. From this result, for example, in a hot forging die, it was confirmed that local seizure at the initial stage of forging was sufficiently suppressed and the life was significantly improved as a hot forging die.
[0013]
That is, the first invention of the present invention, a hot-die steel or high speed steel as a base material, have a coating layer on at least the working surface, adhering the lubricant used in the work surface having a coating layer a thermal-working tool that, the outermost layer of the coating layer, the surface roughness Rz: a a layer of a range of 4-15 .mu.m, and Ti, V, Cr, Al, selected from Si 1 kind or 2 Hot-working with excellent lubricant adhesion and wear resistance characterized in that the b layer consisting of one or more of nitrides, carbides and carbonitrides mainly composed of more than one kind of metal element is directly above the base material. It is a coated tool.
[0014]
The a layer of the present invention is preferably composed mainly of one or more metal elements of Ti, V, Cr, Al, Si, and Cu and has a layer thickness of 2 to 15 μm. The coating layer is preferably coated by physical vapor deposition. Further, it is desirable that the coating base material has a hardness at a depth of 25 μm from the outermost surface of the base material higher by 200 HV0.2 or more than a hardness at a depth of 500 μm from the outermost surface of the base material.
[0015]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
First, in the coated tool for hot working of the present invention, a material excellent in hot strength is applied as a base material on which the coating layer is formed. The material may be a steel material that has been conventionally applied as a hot tool, for example, hot die steel or high speed steel defined in JIS, and improved steels thereof. First, the constituent requirements of the layer a described in the claims will be described in detail.
[0016]
The coating by the PVD method such as TiN, CrN, TiAlN has a remarkably high hardness compared to the nitride layer, so that the application is mainly applied to cutting tools. For example, the hardness of the nitrided layer is 1000 to 1100 HV, although it depends on the composition of the material to be treated, compared to 2000 to 2200 HV for TiN, 1800 to 2000 HV for CrN, 2400 to 2700 HV for TiAlN, About twice or more of the hardness can be obtained. For this reason, the coating by PVD should be superior in terms of wear resistance.
[0017]
Thus, as a result of various investigations on the usage environment of the hot working mold and the characteristics required for the surface treatment, the inventor has found that the PVD coating that has been applied conventionally is very different in the hot working mold. It was confirmed that the adhesion of the lubricant, which is an important characteristic, is extremely inferior to the nitrided layer.
[0018]
FIG. 1 shows an example of a white lubricant (Daido Chemical Co., Ltd. Hot Aqua Lub # 300TK) aqueous solution prepared by heating a surface-treated test piece at an arbitrary temperature of 100 to 350 ° C. to adjust the concentration to 10%. The weight per unit area of the lubricant adhering to the surface of the test piece when sprayed for 2 seconds at a distance of 470 mm and a spray amount of 2.0 ml / s is shown. At this time, the test piece was not subjected to surface treatment, and was coated with a salt bath nitride material and CrN by PVD method (arc ion plating method).
[0019]
According to this result, the salt bath nitride material has a larger amount of lubricant compared to the non-treated material, and the tendency becomes remarkable particularly at the test piece heating temperature of 250 to 350 ° C. at which the lubricant does not easily adhere. . At this time, the lubricant adhesion of the CrN coating material is equal to or less than that of the non-treated material, and it is apparent that the lubricant adhesion of the PVD film is inferior to other surface treatments. Such inferior adhesion of the PVD film to the lubricant is prominent in an actual hot-working mold, particularly in the case of a complicated shape with different surface temperatures depending on the location of the mold. It was speculated that a part where the lubricant hardly adheres was generated, and seizure and galling were induced.
[0020]
Therefore, as a result of detailed observation of the adhesion state of the lubricant on the test piece after the above test, it was found that the lubricant was solidified with the fine irregularities on the surface of the test piece as the core, and this solidification unit was It was confirmed that the finer the amount, the greater the amount of lubricant attached.
[0021]
Therefore, test pieces having different surface roughnesses of the coating layer were prepared by controlling the film formation conditions of the PVD method, and the relationship between the surface roughness and the amount of lubricant adhered was investigated by the same test method. At this time, the test piece heating temperature was set to 300 ° C. at which the lubricant hardly adheres.
[0022]
For the PVD coating, a pure Cr target was used, and a film was formed by selecting a coating material temperature of 500 ° C. and a pressure of 3 to 25 Pa in an argon atmosphere. The surface roughness was controlled by the pressure during film formation. The Bias voltage was set to −100 V for 5 minutes at the beginning of the film formation, and 0 V for the latter 30 minutes. The surface roughness of the test piece-coated surface was measured using a scanning laser microscope OLS1000 manufactured by Olympus Optical Co., Ltd. for a region having a length of 5 mm.
[0023]
The results are shown in FIG. 2, and the amount of lubricant adhered greatly increases with a surface roughness Rz (JIS-B-0601: 10-point average roughness) around 4 μm, and the salt bath nitriding shown in FIG. 1. It was found that the improvement was equal to or better than that of the material. Further, when the surface roughness Rz was 16 μm or more, the PVD film was peeled off immediately after film formation, and it was recognized that application to a real mold was difficult.
[0024]
The a layer of the present invention has a main role in improving the adhesion amount of the lubricant in the initial stage of forging where the surface temperature of the mold is unstable, and its existence is extremely important. In order to exert this effect, the surface roughness Rz needs to be 4 μm or more, but if it exceeds 15 μm, the adhesion of the film is extremely lowered. Therefore, the a layer of the present invention has a surface roughness Rz of 4 to 15 μm. The a layer of the present invention does not particularly define the composition and configuration, but it is mainly composed of one or more metal elements of Ti, V, Cr, Al, Si, and Cu for the following reasons. Is desirable.
[0025]
Among the above compositions, Ti, V, Cr, Al, and Si are selected from Ti, V, Cr, Al, and Si just above the coating base material, which is essential for the following in the coated tool for hot working of the present invention. This is related to the formation of a b layer composed of one or more of nitrides, carbides and carbonitrides mainly composed of seeds or two or more metal elements. For example, when the sputtering method and the arc ion plating method are applied among the PVD methods, it is necessary to prepare different types of metal targets in the same manner that the metal elements constituting the a layer and the b layer are different. This is undesirable because it increases the types of expensive targets and consequently increases the cost of film formation.
[0026]
However, the reason for mentioning Cu as a desirable constituent element of the a layer is an exception, and by applying Cu having a high thermal conductivity, the drying time of the lubricant is accelerated, and the adhesion amount of the lubricant is remarkably increased. . This is more effective than other metals such as Ti, V, Cr, Al, and Si, and is effective in an environment where the lubricant is extremely difficult to adhere. For the reasons described above, the a layer of the present invention is preferably composed mainly of one or more metal elements of Ti, V, Cr, Al, Si, and Cu.
[0027]
As for the main component, for example, 50 (atomic%) or more in total of the element types selected from the above, and 70 (atomic%) or more in total considering the selection of Cu that can be expected to be particularly effective. Further, it may be 90 (atomic%) (including substantially 100 (atomic%)), but this is determined by the balance with the b layer described later in reducing the film forming cost. What is necessary is as described above.
[0028]
Furthermore, the layer a of the present invention preferably has a layer thickness of 2 to 15 μm. When the layer thickness is less than 2 μm, there is a case where the layer is lost at an early stage when the load during processing is extremely high, which may not be effective. Conversely, when the film is formed to exceed 15 μm, it may be peeled off early depending on the film forming conditions. Therefore, the layer thickness of the a layer of the present invention is desirably 2 to 15 μm.
[0029]
The a layer of the present invention is intended to improve the adhesion of the lubricant by appropriately roughening the surface roughness and prevent seizure. However, only the improvement of seizure resistance is mainly applied, and the wear resistance as a hot working die is not sufficient. Therefore, a b layer composed of one or more of nitrides, carbides and carbonitrides mainly composed of one or more metal elements selected from Ti, V, Cr, Al and Si is formed directly on the base material. It is necessary to.
[0030]
Here, in the b layer of the present invention, for example, in the case of nitride, there are one or more kinds of metal elements such as TiN, CrN, VN, and CrN, or two or more kinds of metal elements such as TiVN, TiAlN, TiSiN, CrSiN, CrAlN, and TiAlSiN. Is the case. When the shape of the mold is extremely complex and stress is very likely to be concentrated on the convex part, the application of a coating such as TiN, CrN, VN, TiVN, which has a relatively small residual stress among the above nitrides and excellent adhesion When the forging temperature is high and oxidation resistance is required for the coating, a coating containing Al and Si such as TiAlN, TiSiN, CrAlN, and CrSiN is desirable.
[0031]
In the above, nitride is taken as an example, but the same effect is obtained with respect to carbide and carbonitride, and selection from Ti, V, Cr, Al, and Si is mainly performed (substantially 100% by atomic% of only metal element). If necessary, metal elements of group IVa, Va, VIa and B may be added in a trace amount of 30% or less, or even 10% or less in terms of atomic% of the metal element alone. Furthermore, two or more types of nitrides, carbides, and carbonitrides having different compositions may be selected and applied as a multilayer film.
[0032]
As described above, the coated tool for hot working according to the present invention is a hot working tool having a coating layer having the above-described configuration on at least a work surface, which is made of hot die steel or high speed steel. As a preferred specific example for obtaining the effect, the b layer of the present invention is formed directly on the base material, and the a layer of the present invention which is the outermost layer is formed on the b layer.
[0033]
The coated tool for hot working of the present invention is not particularly limited with respect to the coating method, but is a coated base material in consideration of the thermal effect of the coated base material, the fatigue strength of the tool, the adhesion of the film, and the like. It must be a physical vapor deposition method that applies a Bias voltage to the coating base material side such as an arc ion plating method or a sputtering method that can be formed at a temperature lower than the tempering temperature of hot die steel or high-speed steel and compressive stress remains in the film. desirable.
[0034]
Furthermore, the coated base material of the present invention has a hardness at a depth of 25 μm from the outermost surface of the base material of 200 HV0. 0 compared with a hardness at a depth of 500 μm from the outermost surface of the base material for the purpose of further improving the wear resistance. It is desirable to apply in advance a surface hardening treatment using diffusion such as nitriding treatment, carburizing treatment, etc. as a specific example of being 2 or higher. At this time, a nitride layer called a white layer formed by nitriding treatment and a compound layer called a carbide layer recognized by carburizing cause a decrease in the adhesion of the b layer, so that it is formed by controlling the processing conditions. It is desirable not to let it be removed or to be removed by polishing or the like.
[0035]
【Example】
Next, the present invention will be described in detail based on examples. However, the present invention is not limited by the following examples, and can be arbitrarily changed without departing from the gist of the present invention. Included in the technical scope.
[0036]
Example 1
SKD61 prescribed by JIS was prepared, oil-quenched from 1030 ° C, and tempered to 47HRC by tempering at 550 to 630 ° C. Thereafter, a plate-shaped test piece having a thickness of 3 mm and a side of 30 mm was processed for evaluation of lubricant adhesion.
[0037]
Next, ion nitriding treatment was performed in a flow rate ratio of 5% N ₂ (residual H ₂ ) atmosphere at 550 ° C. for 10 hours, and then the test surfaces were polished into mirror surfaces. It has been confirmed that the hardness at a depth of 25 μm from the finished surface is cured to 200 HV 0.2 or more from the hardness at a depth of 500 μm in all test pieces. Then, the surface of the base material after finishing was coated by the PVD method under the following conditions.
[0038]
The b layer directly above the base metal is subjected to plasma cleaning with a hot filament for 60 minutes by applying a Bias voltage of -400 V to the coated base metal in a small arc ion plating apparatus in an Ar atmosphere at a pressure of 0.5 Pa. After that, various metal targets which are evaporation sources of metal components and N ₂ gas as a reaction gas, a coating base material temperature of 500 ° C., a reaction gas pressure of 3.0 Pa, and a Bias voltage of −100 V have a layer thickness of 5 μm. The film was formed to be
[0039]
Moreover, about what coat | covers a layer which forms outermost layer, after coating b layer, it coat | covered continuously. For the formation of the a layer, a pure Cu target or a target used for the formation of the b layer was used as an evaporation source, the coating temperature was 500 ° C., the bias voltage was set to −100 V for the initial 5 minutes, and the later The film was formed so that the film thickness was 5 μm for 30 minutes. At this time, when using a pure Cu target, the film was formed in an N ₂ atmosphere, and when using the target used for forming the b layer, the film was formed in an Ar atmosphere. 21, no. 22, no. The coating of No. 23 is 3 Pa. For the 24 coating, a pressure of 15 Pa was used.
[0040]
Further, as a conventional example, a film in which TiN, CrN, (Ti _0.60 Al _0.40 ) N was formed under the same conditions as the coating of the b layer after the ion nitriding treatment was prepared.
[0041]
The obtained test piece was measured for surface roughness of a 3 mm long region of the plate-like test piece test surface using an Olympus Optical Scanning Laser Microscope OLS1000. Thereafter, evaluation of lubricant adhesion was performed. Lubricant adhesion was evaluated by heating a test piece to 300 ° C. and adjusting a concentration of 10% to a white lubricant aqueous solution (Daido Chemical Co., Ltd. Hot Aqua Lube # 300TK) at a distance of 470 mm and a spray amount of 2. Evaluation was performed based on the weight per unit area of the lubricant adhered to the surface of the test piece when sprayed at 0 ml / s for 2 seconds.
[0042]
Table 1 shows the details of the coating layer of each test piece and the results of the evaluation of lubricant adhesion. In some test pieces that do not satisfy the coating layer configuration of the present invention, it is difficult to define the formed a and b layers. However, for convenience in order to make the comparison with the present invention easier to understand, Table 1 It is shown as follows.
[0043]
[Table 1]

[0044]
As shown in Table 1, the present invention example and comparative example No. No. 24 shows that the adhesiveness of the lubricant is remarkably excellent because the surface roughness satisfies the specified range of the present invention. On the other hand, Comparative Example No. In Nos. 21, 22, and 23, although the a layer was present, the surface roughness was outside the specified range of the present invention. Needless to say, the lubricant adhesion of the conventional example is significantly inferior to that of the present invention. From the above, it can be seen that the present invention must be satisfied in order to improve the adhesion of the lubricant.
[0045]
Note that FIG. 2 is a surface SEM image, and it is recognized that the surface is covered with knot-like particles having a particle size of about 3 μm.
[0046]
(Example 2)
Next, the present invention example No. 1 in Table 1 was used. 1, no. 2, no. 4, no. 7, Comparative Example No. 23, no. 24, Conventional Example No. 32, no. A hot forging punch for bearing race molding having a surface coating layer configuration equivalent to 33 was prepared and evaluated by the life of the actual mold.
[0047]
The high-speed steel-based toughness improving material having the chemical composition shown in Table 2 was roughly processed into a mold approximate shape, subjected to oil quenching at 1080 ° C., and tempered to 55 HRC by tempering at 600 ° C. Then, finishing was performed, and nitriding and film formation by the PVD method were performed under the same conditions as in Example 1, respectively. It has been confirmed that the hardness at a depth of 25 μm from the surface after nitriding / finishing is hardened to 200 HV 0.2 or more than the hardness at a depth of 500 μm.
[0048]
[Table 2]

[0049]
The mold produced as described above has a diameter of 130 mm and a height of 300 mm, and a bearing race molding punch is processed at its tip. Then, a SUJ2 work heated to 1070 ° C. was hot forged using a 1000-ton forging press. Table 3 shows the life of each punch.
[0050]
[Table 3]

[0051]
The punch to which the present invention is applied has improved the tool life by more than twice as compared with the punch of the comparative example or the conventional example. In addition, the punches according to the present invention all had a life due to damage due to wear. In the punches to which No. 23 and the conventional example were applied, galling occurred at the tip of the punch at an early stage, and after that, the damage progressed as if it was locally removed and the life was reached. As described above, it was confirmed that the life of the punch was dramatically improved by applying the present invention to the hot forging punch.
[0052]
In Examples 1 and 2, the case where the b layer is a nitride is shown as an example, but the same effect can be obtained even if the b layer is a carbide or carbonitride, and further includes such a structure. It is done.
[0053]
【The invention's effect】
As described above, by applying the surface coating layer structure defined in the present invention, the adhesion of the lubricant is excellent, and seizure resistance and galling resistance are improved. As a result, it is possible to achieve an improvement in wear resistance as a hot working tool, and to dramatically improve the tool life.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a diagram showing the relationship between the test piece heating temperature and the amount of lubricant adhered in each surface treatment.
FIG. 2 is a graph showing the relationship between the surface roughness Rz and the lubricant adhesion amount at a test piece heating temperature of 300 ° C.
FIG. It is a surface SEM image of 2, and is a microscope picture which shows an example of this invention.

Claims

Hot die steel or high speed steel as a base material, have a coating layer on at least the working surface, a thermal-working tool to be used in adhering the lubricant to the work surface having a coating layer, The outermost layer of the coating layer is a layer whose surface roughness is Rz: 4 to 15 μm, and a nitride mainly composed of one or more metal elements selected from Ti, V, Cr, Al, and Si. A coating tool for hot working excellent in lubricant adhesion and wear resistance, characterized in that a b layer composed of one or more of carbide, carbonitride is directly on the base material.

2. The lubrication according to claim 1, wherein the a layer is mainly composed of one or more metal elements of Ti, V, Cr, Al, Si, and Cu, and has a layer thickness of 2 to 15 μm. Coated tool for hot working with excellent agent adhesion and wear resistance.

3. The coating tool for hot working with excellent lubricant adhesion and wear resistance according to claim 1 or 2, wherein the coating layer is coated by a physical vapor deposition method.

4. The hardness at a depth of 25 μm from the outermost surface of the coated base material is 200 HV0.2 or more higher than the hardness at a depth of 500 μm from the outermost surface of the base material. 5. Coated tool for hot working with excellent lubricant adhesion and wear resistance.