JP4651239B2 - 有機el素子製造に用いる真空蒸着用金属マスク保持治具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL素子の製造における真空蒸着工程において、真空蒸着用の金属マスクを基板表面に保持するために用いる治具に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、図6に示すように、ガラス板等の透明基板1上に、アノード電極(ITO)2、ホール輸送層3、有機層(発光層)4、電子輸送層5、カソード電極6をこの順に積層し、表面に封止缶7を配置した構成となっている。有機EL素子の種類には、有機層4が高分子タイプと低分子タイプがあり、素子の駆動方式にはパッシブタイプとアクティブタイプがある。これらの有機EL素子の製造工程において、パッシブタイプ及びアクティブタイプの低分子有機層の形成及びパッシブタイプのカソード電極6の形成には真空蒸着が行われている。そして、低分子有機層及びカソード電極の真空蒸着パターニングには、多数の微細なスリットを微小間隔で平行に配列した有効部を備えた金属マスクを使用していた。また、カソード電極の真空蒸着パターニングには、電気絶縁性の隔壁を形成するカソードセパレータ法(特開平8−315981号公報参照)が用いられることもあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、かかる従来技術にはいずれも問題があった。すなわち、金属マスクを用いる場合、従来は、蒸着すべき基板表面に単に金属マスクを載置し、裏面から磁石を用いて保持させているが、そのマスクの有効部(多数の微細なスリットを形成している部分)は剛性がきわめて小さく、このため、金属マスクを基板表面に保持させる際に有効部のスリットにゆがみを生じ易く、特に、スリット形状をきわめて微細にすると、一層スリット精度が維持できなくなり、高精細パターニングができないという問題があった。一方、カソードセパレータ法は、フォトリソグラフィーにて露光の強弱を調整して隔壁の斜面の角度を作っているため、安定した製造が困難であった(逆台形断面の隔壁の斜面部分のテーパー角度が小さいと電極の分離ができず、大きいと三角形状になり倒れてしまう)。
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、金属マスクを用いた真空蒸着パターニングに際し、金属マスクを、その有効部のスリット精度を確保した状態で基板表面に配置することを可能とする真空蒸着用金属マスク保持治具を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の金属マスク保持治具は、有機EL素子製造における真空蒸着工程において、多数のスリットを平行に配列した有効部とその両端の保持部とを備えた略矩形状の金属マスクを、基板表面にスリット精度を確保した状態で配置することができるようにするため、蒸着範囲を規制するウインドウを備えたベースプレートと、前記金属マスクを、その有効部を前記ウインドウの上に位置させ且つ前記スリットの長手方向に引っ張った状態で前記ベースプレートの上に位置させるマスク引張保持手段と、前記ベースプレート及び金属マスクの上に配置した基板を前記ベースプレートに固定する基板クランプ手段とを有する構成としたものである。この構成により、金属マスクを引っ張った状態でベースプレート上に配置し、その上に基板を固定することで、基板表面に金属マスクを、その有効部の多数のスリットを真っ直ぐな状態で且つ所定のピッチで配置することができ、全体を蒸着機にセットすることで基板上に高精細なパターンを蒸着することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の金属マスク保持治具は、上記したように、ウインドウを備えたベースプレートと、金属マスクを、スリットの長手方向に引っ張った状態で前記ベースプレートの上に位置させるマスク引張保持手段と、前記ベースプレート及び金属マスクの上に配置した基板を前記ベースプレートに固定する基板クランプ手段とを有している。
【0008】
本発明に用いるマスク引張保持手段は、金属マスクを適当な張力で引っ張った状態に保持しうるものであり、金属マスクの一端の保持部の全幅を前記ベースプレートに押し付けて固定する固定側マスククランプと、前記ウインドウに関して前記固定側マスククランプとは反対側に配置され、前記固定側マスククランプから離れる方向及び近づく方向に移動可能なスライダと、前記ベースプレートに固定され、前記スライダを移動可能に保持したガイドロッドと、前記金属マスクの他端の保持部の全幅を前記スライダに押し付けて固定する移動側マスククランプと、前記固定側マスククランプと移動側マスククランプで保持された金属マスクに所望の張力を付与するよう前記スライダを前記固定側マスククランプから離れる方向に移動させる移動手段とを有している。この構成のマスク引張保持手段を用いているので、金属マスクの一端の保持部を固定側マスククランプによってベースプレートに固定し、他端を移動側マスククランプによってスライダに固定し、そのスライダを移動手段によって金属マスクを引っ張る方向に移動させることで、金属マスクを引っ張った状態に保持することができ、簡単な操作で有効部の多数のスリットを真っ直ぐな状態で且つ所定のピッチで維持することができる。
【0009】
更に、本発明では、前記移動手段が、前記ベースプレートと前記スライダの間に配置され、該スライダに、前記固定側マスククランプから離れる方向のばね力を作用させる圧縮コイルバネを備えた構成としている。この構成により、金属マスクに常に一定の引張力を作用させることができ、スリット精度を一層向上させることができる。
【0010】
【実施例】
以下、図面に示す本発明の好適な実施例を説明する。図1は本発明の一実施例に係る金属マスク保持治具の概略平面図、図2はその金属マスク保持治具を矢印A−A方向に見た概略端面図、図3(a)は金属マスクの概略平面図、図3(b)はその金属マスクの有効部の一部の概略断面図、図4は金属マスク保持治具を、金属マスク及び基板を取り付けた状態で示す概略平面図、図5は図4のB−B矢視概略断面図である。図3において、全体を参照符号11で示す金属マスクは、通常、厚み30〜100μm程度の、好ましくは50μm程度のステンレス鋼等の金属板で形成されており、中央に多数の微細なスリット11aを微小間隔で平行に配列した有効部11Aとその両端の保持部11B、11Bとを備えた略矩形状のものである。有効部11Aの長さL及び幅Wやスリット幅等は、形成すべき有機EL素子の大きさに応じて適宜定めるものであり、この実施例では、長さLを60mm、幅Wを40mmとしている。また、有効部11Aに形成するスリット11aの幅wは260μm、スリット11aを形成している金属部11bの幅d(最大幅)は40μmとしている。金属部11bの断面形状は単純な矩形状でもよいが、本実施例では、図3(b)に示すように、台形状として、スリット11aの片側の開口(図面では下側の開口)を他方の開口よりも大きくしている。この構成とすることで、金属マスク11の上に基板12を配置して蒸着操作を行った際、蒸気が広い側の開口から進入し、基板12に均一に蒸着するという利点が得られる。
【0011】
図3(a)において、有効部11Aの両側には、両端の保持部11B、11Bを連結するサポート部11c、11cが形成されている。このサポート部11c、11cは、有効部11Aを補強するために設けたものである。すなわち、有効部11Aは多数の金属部11bを備えた構成ではあるが、金属部11bはきわめて細いため、有効部11Aの剛性がきわめて低く、有効部11Aのみでは取り扱いが困難となる(すぐ変形して不良品となってしまう)ので、その両側にサポート部11c、11cを形成して補強している。サポート部11cの幅は、広い程補強効果は大きくなるが、あまり広くすると、金属マスク11を引っ張ってスリットを整列させる際に要する張力をきわめて大きくしなければならず、作業性が悪くなる。これらを考慮して、サポート部11cの幅は、1.5〜2mm程度とすることが好ましい。
【0012】
図1〜図5において、全体を参照符号13で示す金属マスク保持治具は、中央に蒸着範囲を規制するウインドウ14を備えたベースプレート15と、金属マスク11を、その金属マスク11に形成している有効部11Aをウインドウ14の上に位置させ且つスリットの長手方向に引っ張った状態でベースプレート15の上に位置させるマスク引張保持手段16と、基板12をベースプレート15に固定する基板クランプ手段17等を備えている。ベースプレート15は、その上に金属マスク11を張力を掛けた状態で保持させ且つその上に更に基板12を保持させることができる剛性を備えた板材で構成されている。なお、ベースプレート15は単に1枚の板材で構成する場合に限らず、所定サイズのウインドウを形成した薄い金属板と、その金属板を支持する剛性を備えた板材とで構成してもよく、その場合には、板材には金属板のウインドウよりも大きい開口を形成しておけばよい。
【0013】
マスク引張保持手段16は、金属マスク11の一端の保持部11Bの全幅をベースプレート15に押し付けて固定する固定側マスククランプ20及びボルト21と、ウインドウ14に関して固定側マスククランプ20とは反対側に配置され、固定側マスククランプ20から離れる方向及び近づく方向に移動可能なスライダ23と、ベースプレート15に固定され、スライダ23を移動可能に保持したガイドロッド24と、金属マスク11の他端の保持部11Bの全幅をスライダ23に押し付けて固定する移動側マスククランプ25及びボルト26と、固定側マスククランプ20と移動側マスククランプ25で保持された金属マスク11に所望の張力を付与するようスライダ23を固定側マスククランプ20から離れる方向に移動させる移動手段28等を備えている。移動手段28は、ベースプレート15に固定された支持棒29と、その支持棒29に保持され、ベースプレート15とスライダ23の間に配置された圧縮コイルバネ30からなる弾性手段を備えている。ガイドロッド24の先端には、スライダ23の抜け止め用のストッパ32が取り付けられている。基板クランプ手段17は、基板をベースプレート15に押し付けて固定する基板用クランプ34及びボルト35を備えている。
【0014】
次に、上記構成の金属マスク保持治具13による金属マスク保持動作及び真空蒸着動作を説明する。万力等でスライダ23を、圧縮コイルバネ30を圧縮させる方向に移動させ、その位置に保持する。次に、金属マスク11をベースプレート15上に置き、有効部11Aをウインドウ14に合わせ且つウインドウ14に対してアライメントする。その状態で、金属マスク11の一端を固定側マスククランプ20でベースプレート15に固定し、他端を、移動側マスククランプ25でスライダ23に固定する。その後、万力を開放し、スライダ23を移動自在とする。これにより、圧縮コイルバネ30がスライダ23を外向きに押して移動させ、金属マスク11に均一なテンションを加える。かくして、金属マスク11は均一な張力で引っ張られた状態となり、有効部11Aの多数のスリットが真っ直ぐで且つ一定ピッチで並んだ状態に保持される。
【0015】
次に、基板12を、その蒸着すべき領域を金属マスク11の有効部11Aに対してアライメントを取って、金属マスク11上に乗せ、基板用クランプ34でベースプレート15に固定する。以上により、金属マスク11が多数のスリットを所定の形状に保持した状態で基板12の表面に配置されることとなる。その後、金属マスク保持治具13によって組み合わされた金属マスク11と基板12を、そのままの状態で蒸着機にセットし、蒸着を行う。以上により、基板12の表面に、金属マスク11の有効部11Aのスリットに対応して蒸着が行われ、高精細パターニングが行われる。
【0016】
なお、上記実施例では、ベースプレートに1個のウインドウを形成しているが、本発明はこの構成に限らず、ベースプレートに複数のウインドウを形成し、且つ金属マスクにも、ベースプレートのウインドウに対応する部分に多数のスリットを形成した有効部を形成し、多面付けする構成としてもよい。
【0017】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明方法及び本発明の治具は、有機EL素子の製造工程において、真空蒸着に用いる金属マスクをスリットの長手方向に引っ張った状態で基板表面に配置する構成としたことにより、きわめて微細なスリットを微細な間隔に配置した高精細なマスクでも、スリットを真っ直ぐな状態で且つ所定のピッチに保持した状態で基板表面に配置することができ、真空蒸着により高精細なパターンを基板上に形成することができるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る金属マスク保持治具の概略平面図
【図2】図1に示す金属マスク保持治具を矢印A−A方向に見た概略端面図
【図3】(a)金属マスクの概略平面図
(b)その金属マスクの有効部の一部の概略断面図
【図4】金属マスク保持治具を、金属マスク及び基板を取り付けた状態で示す概略平面図
【図5】図4のB−B矢視概略断面図
【図6】有機EL素子の一部を示す概略斜視図
【符号の説明】
11 金属マスク
11A 有効部
11B 保持部
11a スリット
11b 金属部
11c サポート部
13 金属マスク保持治具
14 ウインドウ
15 ベースプレート
16 マスク引張保持手段
17 基板クランプ手段
20 固定側マスククランプ
23 スライダ
24 ガイドロッド
25 移動側マスククランプ
28 移動手段
30 圧縮コイルバネ
34 基板用クランプ
Claims (1)
- 有機EL素子製造における真空蒸着工程で用いる真空蒸着用金属マスク保持治具であって、蒸着範囲を規制するウインドウを備えたベースプレートと、多数のスリットを平行に配列した有効部とその両端の保持部とを備えた略矩形状の真空蒸着用金属マスクを、前記有効部を前記ウインドウの上に位置させ且つ前記スリットの長手方向に引っ張った状態で前記ベースプレートの上に位置させるマスク引張保持手段と、前記ベースプレート及び金属マスクの上に配置した基板を前記ベースプレートに固定する基板クランプ手段とを有し、前記マスク引張保持手段が、前記金属マスクの一端の保持部の全幅を前記ベースプレートに押し付けて固定する固定側マスククランプと、前記ウインドウに関して前記固定側マスククランプとは反対側に配置され、前記固定側マスククランプから離れる方向及び近づく方向に移動可能なスライダと、前記ベースプレートに固定され、前記スライダを移動可能に保持したガイドロッドと、前記金属マスクの他端の保持部の全幅を前記スライダに押し付けて固定する移動側マスククランプと、前記固定側マスククランプと移動側マスククランプで保持された金属マスクに所望の張力を付与するよう前記スライダを前記固定側マスククランプから離れる方向に移動させる移動手段とを有し、該移動手段が、前記ベースプレートと前記スライダの間に配置され、該スライダに、前記固定側マスククランプから離れる方向のばね力を作用させる圧縮コイルバネを備えていることを特徴とする真空蒸着用金属マスク保持治具。
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