以下、本発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置について説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置は、第1の半導体レーザ素子および第2の半導体レーザ素子を備える。第1の半導体レーザ素子が出射するレーザ光の波長と、第2の半導体レーザ素子が出射するレーザ光の波長とは異なる。
以下の説明では、第1の半導体レーザ素子として青紫色レーザ光(波長400nm付近)を出射する半導体レーザ素子(以下、青紫色半導体レーザ素子と呼ぶ。)を用いる。
また、第2の半導体レーザ素子として赤色レーザ光(波長658nm付近)を出射する半導体レーザ素子(以下、赤色半導体レーザ素子と呼ぶ。)を用いる。
図1は第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置を示す外観斜視図である。
図1において、半導体レーザ装置500は、導電性のパッケージ本体3、給電ピン1a,1b,2および蓋体4を備える。
パッケージ本体3には、後述する複数の半導体レーザ素子が設けられ、蓋体4により封止されている。蓋体4には、取り出し窓4aが設けられている。取り出し窓4aは、レーザ光を透過する材料からなる。また、給電ピン2は、機械的および電気的にパッケージ本体3と接続されている。給電ピン2は接地端子として用いられる。
半導体レーザ装置500の詳細について説明する。以下、半導体レーザ素子からのレーザ光が出射される方向を正面として説明する。
図2は図1の半導体レーザ装置500の蓋体4を外した状態を示す模式的正面図であり、図3は図1の半導体レーザ装置500の蓋体4を外した状態を示す模式的上面図である。
以下の説明では、図2および図3に示すように、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20からのレーザ光の出射方向をX方向と定義し、X方向に垂直な面内で互いに直交する2方向をY方向およびZ方向と定義する。
図2に示すように、パッケージ本体3と一体化された導電性の支持部材5上には、導電性の融着層Hが形成されている。支持部材5は導電性および熱伝導性に優れた材料からなり、融着層HはAuSn(金錫)からなる。
融着層H上には、上面および下面に導電層31a,31bを備える絶縁性の副基板31が設けられている。副基板31はAlN(窒化アルミニウム)からなる。副基板31の厚みは、例えば約200μmである。
副基板31の導電層31a上には、AuSnからなる融着層Hを介して青紫色半導体レーザ素子10が接着されている。
青紫色半導体レーザ素子10は、p側パッド電極10a、n側パッド電極10bおよび電流ブロック層10cを含む積層構造を有する。青紫色半導体レーザ素子10は、p側パット電極10aが支持部材5側となるように設けられている。
図2において、青紫色半導体レーザ素子10の上面側にn側パッド電極10bが位置し、青紫色半導体レーザ素子10の下面側にp側パッド電極10aが位置している。また、p側パッド電極10a上にリッジ部Riを有し、Riの両側に電流ブロック層10cを有している。青紫色半導体レーザ素子10の詳細は後述する。
青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10b上にSiO2 (酸化ケイ素)からなる絶縁層32が設けられている。以下の説明において、この絶縁層32の厚みをt32とする。絶縁層32の厚みt32についての詳細は後述する。
絶縁層32上にはAuを含む導電層32aが形成されている。導電層32a上には、AuSnからなる融着層Hを介して赤色半導体レーザ素子20が接着されている。
赤色半導体レーザ素子20は、p側パッド電極20a、n側パッド電極20bおよび第1の電流ブロック層20cを含む積層構造を有する。赤色半導体レーザ素子20は、p側パット電極20aが支持部材5側となるように設けられている。
図2において、赤色半導体レーザ素子20の上面側にn側パッド電極20bが位置し、赤色半導体レーザ素子20の下面側にp側パッド電極20aが位置している。また、p側パッド電極20a上にリッジ部Riを有し、Riの両側に第1の電流ブロック層20cを有している。赤色半導体レーザ素子20の詳細は後述する。
青紫色半導体レーザ素子10は、蓋体4の取り出し窓4a(図1参照)の中央部に位置するように設けられる。
図2および図3に示すように、給電ピン1a,1bは、それぞれ絶縁リング1zによりパッケージ本体3と電気的に絶縁されている。給電ピン1aはワイヤW4を介して副基板31上の導電層31aと電気的に接続されている。給電ピン1bはワイヤW1を介して絶縁層32上の導電層32aと電気的に接続されている。
一方、支持部材5の露出した上面と青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bとがワイヤW3により電気的に接続され、支持部材5の露出した上面と赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bとがワイヤW2により電気的に接続されている。これにより、給電ピン2は青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bおよび赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bと電気的に接続されている。すなわち、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20のカソードコモンの結線が実現されている。
給電ピン1a,2間および給電ピン1b,2間のそれぞれに電圧を印加することにより、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20を個別に駆動することができる。
図4は、第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置500の電気的配線を示す回路図である。
上述のように、給電ピン2は支持部材5と電気的に接続されるとともに、青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bおよび赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bと電気的に接続されている。
一方、青紫色半導体レーザ素子10のp側パッド電極10aおよび赤色半導体レーザ素子20のp側パッド電極20aは支持部材5、すなわち給電ピン2から電気的に絶縁されている。
第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置500においては、接地電位よりも高い電圧を給電ピン1a,1bのいずれかに与えることにより、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20を個別に駆動することができる。その結果、各半導体レーザ素子の駆動電圧の制御が容易になる。
ところで、上記の半導体レーザ装置500は光ピックアップ装置等に設けられる。一般に、光ピックアップ装置は交流電圧により駆動される。すなわち、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20は交流電圧により駆動される。この場合、図2の副基板31および絶縁層32は誘電体として作用する。
図5は、図2の副基板31および絶縁層32の誘電体としての作用を説明するための等価回路図である。
図5(a)が青紫色半導体レーザ素子10を駆動する場合の等価回路図を示し、図5(b)が赤色半導体レーザ素子20を駆動する場合の等価回路図を示す。
青紫色半導体レーザ素子10を交流電圧により駆動する場合、青紫色半導体レーザ素子10はリッジ部Riを抵抗とし、電流ブロック層10cを誘電体として図5(a)のように表される。この場合、絶縁性の副基板31は青紫色半導体レーザ素子10と並列に接続された誘電体として作用する。
一般に、絶縁性の層に発生する容量値は次式で表される。
C1=εs・ε0・S/d ・・・(1)
C1は絶縁性の層に発生する容量値であり、εsは絶縁性の層の比誘電率であり、ε0は真空の誘電率である。また、Sは絶縁性の層の面積であり、dは絶縁性の層の厚みである。
第1の実施の形態において、絶縁性の層である電流ブロック層10cは0.5μmの厚み(Z方向)を有する。また、青紫色半導体レーザ素子10は約350μmの幅(Y方向)を有し、約600μmの長さ(X方向)を有する。
また、SiO2 からなる電流ブロック層10cの比誘電率は4であり、真空の誘電率は8.854×10-12 F/mである。
青紫色半導体レーザ素子10に形成されるリッジ部Riの幅(Y方向)は青紫色半導体レーザ素子10の幅に比べて非常に小さい。そこで、電流ブロック層10cの厚み、幅および長さを0.5μm、350μmおよび600μmとする。この場合、電流ブロック層10cに発生する容量値を式(1)に基づいて求めると、電流ブロック層10cに発生する容量値は約15pFとなる。
これに対して、副基板31の厚みは約200μmである。青紫色半導体レーザ素子10の幅(Y方向)が約350μmで、かつ長さ(X方向)が約600μmである場合、副基板31に発生する容量値を式(1)に基づいて求めると、青紫色半導体レーザ素子10の駆動時に副基板31に発生する容量値は約100fF以下となる。
このように、第1の実施の形態において、副基板31に発生する容量値は青紫色半導体レーザ素子10の電流ブロック層10cに発生する容量値と比べて非常に小さい値を示す。
したがって、青紫色半導体レーザ素子10のみを駆動する場合に副基板31および電流ブロック層10cに発生する容量値の合計(以下、実効容量値と呼ぶ。)は、電流ブロック層10cに発生する容量値とほぼ等しくなる。
青紫色半導体レーザ素子10の遮断周波数は、実効容量値に基づいて算出される。遮断周波数が高いほど、半導体レーザ素子の駆動時における高周波特性がよい。
半導体レーザ素子の遮断周波数は簡易的に次式で表される。
fTは半導体レーザ素子の遮断周波数であり、Lは半導体レーザ素子のインダクタンスであり、Cは半導体レーザ素子の駆動時における実効容量値である。
この場合、式(2)に示すように、青紫色半導体レーザ素子10の遮断周波数は実効容量値の1/2乗に反比例する。したがって、青紫色半導体レーザ素子10の実効容量値が小さいほど遮断周波数は高くなる。
上述のように、副基板31で発生する容量値が電流ブロック層10cで発生する容量値に比べて非常に小さい場合、副基板31の影響による遮断周波数の低下は十分に小さくなる。その結果、副基板31の影響による青紫色半導体レーザ素子10の高周波特性の劣化が十分に抑制される。
一方、赤色半導体レーザ素子20を交流電圧により駆動する場合、赤色半導体レーザ素子20はリッジ部Riを抵抗とし、第1の電流ブロック層20cを誘電体として図5(b)のように表される。この場合、絶縁層32は赤色半導体レーザ素子20と並列に接続された誘電体として作用する。
第1の実施の形態において、空乏層として働く第1の電流ブロック層20cは0.5μmの厚み(Z方向)を有する。また、赤色半導体レーザ素子20は約200μmの幅(Y方向)を有し、約600μmの長さ(X方向)を有する。なお、空乏層として働く第1の電流ブロック層20cは、この第1の電流ブロック層20cはAlInPからなる。
赤色半導体レーザ素子20に形成されるリッジ部Riの幅(Y方向)は赤色半導体レーザ素子20の幅に対して非常に小さい。そこで、第1の電流ブロック層20cの厚み、幅および長さを0.5μm、200μmおよび600μmとする。また、AlInPの比誘電率は約13である。この場合、第1の電流ブロック層20cに発生する容量値を式(1)に基づいて求めると、第1の電流ブロック層20cに発生する容量値は約28pFとなる。
ここで、絶縁層32の厚みt32は、絶縁層32に発生する容量値が第1の電流ブロック層20cに発生する容量値以下となるように設定される。
例えば、絶縁層32の幅(Y方向)が約300μmで、かつ長さ(X方向)が約600μmである場合、赤色半導体レーザ素子20の駆動時に絶縁層32に発生する容量値は厚みt32および上記式(1)に基づいて算出される。すなわち、絶縁層32に発生する容量値は厚みt32と反比例の関係を有する。
図6は、図2の赤色半導体レーザ素子20の駆動時に絶縁層32に発生する容量値と絶縁層32の厚みとの関係を示す図である。図6においては、縦軸が容量値を表し、横軸が絶縁層32の厚みt32を表す。
図6によれば、絶縁層32に発生する容量値を赤色半導体レーザ素子20の第1の電流ブロック層20cに発生する容量値以下にするためには、絶縁層32の厚みt32を0.23μm以上に設定する必要がある。
絶縁層32の厚みt32を0.23μm以上に設定することにより、絶縁層32に発生する容量値は赤色半導体レーザ素子20の第1の電流ブロック層20cに発生する容量値以下となる。
この場合の実効容量値は、第1の電流ブロック層20cに発生する容量値と絶縁層32に発生する容量値との加算値であるため、第1の電流ブロック層20cに発生する容量値の2倍以下となる。
式(2)によれば、赤色半導体レーザ素子20の遮断周波数は実効容量値の1/2乗に反比例する。その結果、絶縁層32に発生する容量値が第1の電流ブロック層20cに発生する容量値以下である場合の赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の遮断周波数は、絶縁層32が設けられない場合の遮断周波数から最大でも約3割の低下にとどめられる。
このように、絶縁層32に発生する容量値が第1の電流ブロック層20cに発生する容量値以下となるように、絶縁層32の厚みを設定することにより、絶縁層32の影響による赤色半導体レーザ素子20の遮断周波数の低下が十分に小さくなる。すなわち、赤色半導体レーザ素子20の高周波特性の劣化が十分に抑制される。
ここで、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の構造の詳細について説明する。
図7に基づいて青紫色半導体レーザ素子10の構造の詳細について作製方法とともに説明する。
図7は、青紫色半導体レーザ素子10の構造の詳細を説明するための模式的断面図である。以下の説明においても、図2および図3と同様にX方向、Y方向およびZ方向を定義する。
青紫色半導体レーザ素子10の製造時においては、n−GaN基板1s上に積層構造を有する半導体層が形成される。n−GaN基板1sは(0001)Ga面を表面とし、約100μmの厚みを有する。また、n−GaN基板1sにはO(酸素)がドープされている。
図7(a)に示すように、n−GaN基板1s上には、積層構造を有する半導体層として、n−GaN層101、n−AlGaNクラッド層102、n−GaN光ガイド層103、MQW(多重量子井戸)活性層104、アンドープAlGaNキャップ層105、アンドープGaN光ガイド層106、p−AlGaNクラッド層107およびアンドープGaInNコンタクト層108が順に形成される。これら各層の形成は、例えば、MOCVD法(有機金属化学気相成長法)により行われる。
図7(b)に示すように、MQW活性層104は4つのアンドープGaInN障壁層104aと3つのアンドープGaInN井戸層104bとが、交互に積層された構造を有する。
ここで、例えば、n−AlGaNクラッド層102のAl組成は0.15であり、Ga組成は0.85である。n−GaN層101およびn−AlGaNクラッド層102にはSiがドープされている。
また、アンドープGaInN障壁層104aのGa組成は0.95であり、In組成は0.05である。アンドープGaInN井戸層104bのGa組成は0.90であり、In組成は0.10である。p−AlGaNキャップ層105のAl組成は0.30であり、Ga組成は0.70である。
さらに、p−AlGaNクラッド層107のAl組成は0.15であり、Ga組成は0.85である。p−AlGaNクラッド層107にはMgがドープされている。アンドープGaInNコンタクト層108のGa組成は0.95であり、In組成は0.05である。
上記の半導体層のうち、p−AlGaNクラッド層107には、X方向に延びるストライプ状のリッジ部Riが形成される。p−AlGaNクラッド層107のリッジ部Riは約1.5μmの幅を有する。
アンドープGaInNコンタクト層108は、p−AlGaNクラッド層107のリッジ部Riの上面に形成される。さらに、その上にはPd/Pt/Auからなるp電極110が形成される。
p−AlGaNクラッド層107の平坦部上面およびリッジ部Riの側面、アンドープGaInNコンタクト層108の側面ならびにp電極110の上面および側面に、SiO2 からなる電流ブロック層10cが形成され、p電極110上に形成された電流ブロック層10cがエッチングにより除去される。そして、外部に露出したp電極110および電流ブロック層10cの上面を覆うように、スパッタ法、真空蒸着法または電子ビーム蒸着法によりp側パッド電極10aが形成される。
このように、n−GaN基板1sの一面側に積層構造を有する半導体層が形成される。また、n−GaN基板1sの他面側にはTi/Pt/Auからなるn側パッド電極10bが形成される。さらに、n側パッド電極10b上の一部の領域には、SiO2 からなる絶縁層32が形成され、絶縁層32上にAuを含む導電層32aが形成される。
上述のように、第1の実施の形態において、SiO2 からなる電流ブロック層10cは、例えば0.5μmの厚みを有する。
この青紫色半導体レーザ素子10では、リッジ部Riの下方におけるMQW活性層104の位置に青紫色発光点が形成される。なお、MQW活性層104は青紫色半導体レーザ素子10のpn接合面に相当する。
図8に基づいて赤色半導体レーザ素子20の構造の詳細について作製方法とともに説明する。
図8は、赤色半導体レーザ素子20の構造の詳細を説明するための模式的断面図である。
赤色半導体レーザ素子20の製造時においては、n−GaAs基板5X上に積層構造を有する半導体層が形成される。このn−GaAs基板5XにはSiがドープされている。
図8(a)に示すように、n−GaAs基板5X上には、積層構造を有する半導体層として、n−GaAs層201、n−AlGaInPクラッド層202、アンドープAlGaInP光ガイド層203、MQW(多重量子井戸)活性層204、アンドープAlGaInP光ガイド層205、p−AlGaInP第1クラッド層206、p−InGaPエッチングストップ層207、p−AlGaInP第2クラッド層208およびp−コンタクト層209が順に形成される。これら各層の形成は、例えば、MOCVD法(有機金属化学気相成長法)により行われる。
図8(b)に示すように、MQW活性層204は2つのアンドープAlGaInP障壁層204aと3つのアンドープInGaP井戸層204bとが、交互に積層された構造を有する。
ここで、例えば、n−AlGaInPクラッド層202のAl組成は0.70であり、Ga組成は0.30であり、In組成は0.50であり、P組成は0.50である。n−GaAs層201およびn−AlGaInPクラッド層202にはSiがドープされている。
アンドープAlGaInP光ガイド層203のAl組成は0.50であり、Ga組成は0.50であり、In組成は0.50であり、P組成は0.50である。
また、アンドープAlGaInP障壁層204aのAl組成は0.50であり、Ga組成は0.50であり、In組成は0.50であり、P組成は0.50である。アンドープInGaP井戸層204bのIn組成は0.50であり、Ga組成は0.50である。アンドープAlGaInP光ガイド層205のAl組成は0.50であり、Ga組成は0.50であり、In組成は0.50であり、P組成は0.50である。
さらに、p−AlGaInP第1クラッド層206のAl組成は0.70であり、Ga組成は0.30であり、In組成は0.50であり、P組成は0.50である。p−InGaPエッチングストップ層207のIn組成は0.50であり、Ga組成は0.50である。
p−AlGaInP第2クラッド層208のAl組成は0.70であり、Ga組成は0.30であり、In組成は0.50であり、P組成は0.50である。
p−コンタクト層209は、p−GaInP層とp−GaAs層との積層構造を有する。このp−GaInP層のGa組成は0.5であり、In組成は0.5である。
なお、上記したAlGaInP系材料の組成は、一般式(Ala Gab )0.5 Inc Pd で表した時のaがAl組成であり、bがGa組成であり、cがIn組成であり、dがP組成である。
p−AlGaInP第1クラッド層206、p−InGaPエッチングストップ層207、p−AlGaInP第2クラッド層208およびp−コンタクト層209のp−GaInPおよびp−GaAsにはZnがドープされている。
p−InGaPエッチングストップ層207上のp−AlGaInP第2クラッド層208およびp−コンタクト層209は、一部の領域(中央部)を除いてエッチング除去されている。
これにより、上記の半導体層のうち、p−AlGaInP第2クラッド層208およびp−コンタクト層209により、X方向に延びるストライプ状のリッジ部Riが形成される。p−AlGaInP第2クラッド層208およびp−コンタクト層209からなるリッジ部Riは約2.5μmの幅を有する。
p−InGaPエッチングストップ層207の上面、p−AlGaInP第2クラッド層208の側面ならびにp−コンタクト層209の側面に、厚みが約0.5μmからなる第1の電流ブロック層20cと厚みが約0.3μmからなる第2の電流ブロック層20dとが積層して選択的に形成される。そして、外部に露出しているp−コンタクト層209の上面および第2の電流ブロック層20dの上面を覆うように、スパッタ法、真空蒸着法または電子ビーム蒸着法によりCr/Auからなるp側パッド電極20aが形成される。
なお、第1の電流ブロック層20cはアンドープAlInPからなり、空乏層として働く。また、第2の電流ブロック層20dはn−GaAsからなる。
このように、n−GaAs基板5Xの一面側に積層構造を有する半導体層が形成される。さらに、n−GaAs基板5Xの他面側にはAuGe/Ni/Auからなるn側パッド電極20bが形成される。
この赤色半導体レーザ素子20では、リッジ部Riの下方におけるMQW活性層204の位置に赤色発光点が形成される。なお、MQW活性層204は赤色半導体レーザ素子20のpn接合面に相当する。
上記第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置500においては、第2の半導体レーザ素子として赤外レーザ光(波長790nm付近)を出射する半導体レーザ素子(以下、赤外半導体レーザ素子と呼ぶ。)を用いてもよい。この場合、図2、図4および図5の括弧に示すように、青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10b上に赤外半導体レーザ素子30のp側パッド電極が接着される。
図9に基づいて赤外半導体レーザ素子30の構造の詳細について作製方法とともに説明する。
図9は、赤外半導体レーザ素子30の構造の詳細を説明するための模式的断面図である。赤外半導体レーザ素子30の製造時においては、n−GaAs基板5X上に積層構造を有する半導体層が形成される。このn−GaAs基板5XにはSiがドープされている。
図9(a)に示すように、n−GaAs基板5X上には、積層構造を有する半導体層として、n−GaAs層301、n−AlGaAsクラッド層302、アンドープAlGaAs光ガイド層303、MQW(多重量子井戸)活性層304、アンドープAlGaAs光ガイド層305、p−AlGaAs第1クラッド層306、p−AlGaAsエッチングストップ層307、p−AlGaAs第2クラッド層308およびp−GaAsコンタクト層309が順に形成される。これら各層の形成は、例えば、MOCVD法(有機金属化学気相成長法)により行われる。
図9(b)に示すように、MQW活性層304は2つのアンドープAlGaAs障壁層304aと3つのアンドープAlGaAs井戸層304bとが、交互に積層された構造を有する。
ここで、例えば、n−AlGaAsクラッド層302のAl組成は0.45であり、Ga組成は0.55である。n−GaAs層301およびn−AlGaAsクラッド層302にはSiがドープされている。
アンドープAlGaAs光ガイド層303のAl組成は0.35であり、Ga組成は0.65である。また、アンドープAlGaAs障壁層304aのAl組成は0.35であり、Ga組成は0.65である。アンドープAlGaAs井戸層304bのAl組成は0.10であり、Ga組成は0.90である。アンドープAlGaAs光ガイド層305のAl組成は0.35であり、Ga組成は0.65である。
さらに、p−AlGaAs第1クラッド層306のAl組成は0.45であり、Ga組成は0.55である。p−AlGaAsエッチングストップ層307のAl組成は0.70であり、Ga組成は0.30である。
p−AlGaAs第2クラッド層308のAl組成は0.45であり、Ga組成は0.55である。
p−AlGaAs第1クラッド層306、p−AlGaAsエッチングストップ層307、p−AlGaAs第2クラッド層308およびp−GaAsコンタクト層309にはZnがドープされている。
上記において、p−AlGaAsエッチングストップ層307上へのp−AlGaAs第2クラッド層308の形成は、p−AlGaAsエッチングストップ層307の一部(中央部)にのみ行われる。そして、p−AlGaAs第2クラッド層308の上面にp−GaAsコンタクト層309が形成される。
これにより、上記の半導体層のうち、p−AlGaAs第2クラッド層308およびp−GaAsコンタクト層309により、X方向に延びるストライプ状のリッジ部Riが形成される。p−AlGaAs第2クラッド層308およびp−GaAsコンタクト層309からなるリッジ部Riは約2.8μmの幅を有する。
p−AlGaAsエッチングストップ層307の上面、p−AlGaAs第2クラッド層308の側面ならびにp−GaAsコンタクト層309の側面に、厚みが約0.5μmからなる第1の電流ブロック層30cと厚みが約0.3μmからなる第2の電流ブロック層30dとが積層して選択的に形成される。そして、外部に露出しているp−GaAsコンタクト層309の上面および第2の電流ブロック層30dの上面を覆うように、スパッタ法、真空蒸着法または電子ビーム蒸着法によりCr/Auからなるp側パッド電極30aが形成される。
なお、第1の電流ブロック層30cはアンドープAlGaAsからなり、空乏層として働く。また、第2の電流ブロック層20dはn−GaAsからなる。第1の電流ブロック層30cののAl組成は0.65であり、Ga組成は0.35である。
このように、n−GaAs基板5Xの一面側に積層構造を有する半導体層が形成される。さらに、n−GaAs基板5Xの他面側にはAuGe/Ni/Auからなるn側パッド電極30bが形成される。
この赤外半導体レーザ素子30では、リッジ部Riの下方におけるMQW活性層304の位置に赤外発光点が形成される。なお、MQW活性層304は赤外半導体レーザ素子30のpn接合面に相当する。
第2の半導体レーザ素子として赤外レーザ光(波長790nm付近)を出射する赤外半導体レーザ素子30を用いた場合でも、絶縁層32の厚みt32を0.23μm以上に設定することにより、絶縁層32に発生する容量値は赤色半導体レーザ素子30の第1の電流ブロック層30cに発生する容量値以下となる。
それにより、第2の半導体レーザ素子として赤色半導体レーザ素子20を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
なお、第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置500においては、絶縁層32の厚みt32を0.46μm以上に設定し、絶縁層32に発生する容量値を赤色半導体レーザ素子20または赤外半導体レーザ素子30の第1の電流ブロック層20c,30cに発生する容量値の約1/2以下としてもよい。
絶縁層32に発生する容量値が第1の電流ブロック層20c,30cに発生する容量値の約1/2以下である場合の赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の遮断周波数は、絶縁層32が設けられない場合の遮断周波数から最大でも約2割の低下にとどめられる。
このように、絶縁層32に発生する容量値が第1の電流ブロック層20c,30cに発生する容量値の約1/2以下となるように、絶縁層32の厚みを設定することにより、絶縁層32の影響による赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の遮断周波数の低下がより小さくなる。すなわち、絶縁層32の影響による赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の高周波特性の劣化がより十分に抑制される。
また、第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置500においては、絶縁層32の厚みt32を1.20μm以上に設定し、絶縁層32に発生する容量値を赤色半導体レーザ素子20または赤外半導体レーザ素子30の第1の電流ブロック層20c,30cに発生する容量値の約1/5以下としてもよい。
絶縁層32に発生する容量値が第1の電流ブロック層20c,30cに発生する容量値の約1/5以下である場合の赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の遮断周波数は、絶縁層32が設けられない場合の遮断周波数から最大でも約1割の低下にとどめられる。
一般に、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の遮断周波数は半導体レーザ素子の配置のばらつき等により約1割の範囲内で変化する。したがって、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の遮断周波数の低下が約1割までにとどめられると、遮断周波数の劣化は概ね無視することができる。
このように、絶縁層32に発生する容量値が第1の電流ブロック層20c,30cに発生する容量値の約1/5以下となるように、絶縁層32の厚みを設定することにより、絶縁層32の影響による赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の遮断周波数の低下が著しく小さくなる。すなわち、絶縁層32の影響による赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の高周波特性の劣化が極めて十分に抑制される。
第1の実施の形態において、絶縁層32に発生する容量値は第1の電流ブロック層20cに発生する容量値以下である。また、青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bと赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bとが電気的に接続されている。これにより、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の駆動電圧の制御が容易になるとともに、絶縁性の層の影響による赤色半導体レーザ素子20の高周波特性の劣化が十分に抑制されている。
さらに、複数の青紫色半導体レーザ素子10が形成されたウェハと、複数の赤色半導体レーザ素子20が形成されたウェハとを重ね合わせることにより、複数の半導体レーザ装置500を同時に作製することができる。この場合、各青紫色半導体レーザ素子10と各赤色半導体レーザ素子20との位置精度が向上する。その結果、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の発光点の位置決め精度が向上する。
また、支持部材5と青紫色半導体レーザ素子10との間に副基板31を設けることにより青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の発光点位置が調整できる。
第1の半導体レーザ素子として窒化物系半導体を含む青紫色半導体レーザ素子10を用いることにより、青紫色半導体レーザ素子10の放熱性が向上する。また、青紫色半導体レーザ素子10上に赤色半導体レーザ素子20が積層されているので、赤色半導体レーザ素子20の放熱性も向上する。
青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20で発生する熱は支持部材5から放熱される。第1の実施の形態においては、p側パッド電極10aが支持部材5側に位置するように支持部材5上に青紫色半導体レーザ素子10が設けられている。これにより、青紫色半導体レーザ素子10の発光点が支持部材5に近づく。その結果、青紫色半導体レーザ素子10の放熱性が向上する。
赤色半導体レーザ素子20は、p側パット電極20aが支持部材5側となるように設けられている。それにより、赤色半導体レーザ素子20の発光点が支持部材5に近づくので放熱性が向上する。
上記では、第1の半導体レーザ素子である青紫色半導体レーザ素子10上に、第2の半導体レーザ素子である赤色半導体レーザ素子20が積層されている。しかしながら、青紫色半導体レーザ素子10上には、1つの半導体レーザ素子のみならず複数の半導体レーザ素子がY方向に併設されてもよい。この場合、半導体レーザ装置500から出射されるレーザ光の種類(波長)および数を増加させることができる。
また、上記では、青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bおよび赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bが、ともに支持部材5に接続されている。しかしながら、n側パッド電極10b,20bと支持部材5とが電気的に絶縁されてもよい。
この場合、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20のフローティングされた結線が実現できる。それにより、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極10b,20bと電気的に接続される給電ピンに任意の電圧を印加することができる。その結果、半導体レーザ装置500の駆動装置による青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の駆動電圧の制御が容易となる。
第1の実施の形態において、支持部材5が支持部材に相当し、絶縁層32が絶縁層に相当し、導電層32aが導電層に相当する。
また、n−GaN基板1sが第1の基板に相当し、n−GaN基板1s上の半導体層が第1の半導体層に相当し、p側パッド電極10aが第1の一方電極に相当し、n側パッド電極10bが第1の他方電極に相当し、青紫色レーザ光が第1の波長の光に相当し、青紫色半導体レーザ素子10が第1の半導体レーザ素子に相当する。
さらに、n−GaAs基板5Xが第2の基板に相当し、n−GaAs基板5X上の半導体層は第2の半導体層に相当し、p側パッド電極20aおよびp側パッド電極30aが第2の一方電極に相当し、n側パッド電極20bおよびn側パッド電極30bが第2の他方の電極に相当し、赤色レーザ光および赤外レーザ光が第2の波長の光に相当し、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30が第2の半導体レーザ素子に相当し、第1の電流ブロック層20cおよび第1の電流ブロック層30cが電流狭窄層に相当する。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置は、以下の点で第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置500と構成および動作が異なる。
図10は第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置の蓋体4を外した状態を示す模式的正面図であり、図11は第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置の蓋体4を外した状態を示す模式的上面図である。
図10に示すように、パッケージ本体3と一体化された導電性の支持部材5上には、導電性の融着層Hが形成されている。
融着層H上には、n側パッド電極10bが支持部材5側となるように青紫色半導体レーザ素子10が接着されている。
青紫色半導体レーザ素子10のp側パッド電極10a上にSiO2 (酸化ケイ素)からなる絶縁層32が設けられている。第2の実施の形態においても、この絶縁層32の厚みをt32とする。絶縁層32の厚みt32についての詳細は後述する。
絶縁層32上にはAuを含む導電層32aが形成されている。導電層32a上には、p側パッド電極20aが支持部材5側となるようにAuSnからなる融着層Hを介して赤色半導体レーザ素子20が接着されている。
図10の括弧に示すように、青紫色半導体レーザ素子10上には、赤色半導体レーザ素子20に代えて赤外半導体レーザ素子30が積層されてもよい。なお、青紫色半導体レーザ素子10上に赤外半導体レーザ素子30が積層される場合、赤外半導体レーザ素子30はp側パッド電極30aが支持部材5側となるように設けられる。
図10および図11に示すように、給電ピン1a,1bは、それぞれ絶縁リング1zによりパッケージ本体3と電気的に絶縁されている。給電ピン1aはワイヤW3を介して青紫色半導体レーザ素子10のp側パッド電極10aと電気的に接続されている。給電ピン1bはワイヤW1を介して絶縁層32上の導電層32aと電気的に接続されている。支持部材5の露出した上面と赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bとがワイヤW2により電気的に接続されている。
青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bは支持部材5上で融着層Hを介して電気的に接続されている。これにより、給電ピン2は青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bおよび赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bと電気的に接続されている。すなわち、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20のカソードコモンの結線が実現されている。
給電ピン1a,2間および給電ピン1b,2間のそれぞれに電圧を印加することにより、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20を個別に駆動することができる。第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置500の電気的配線は図4と同じである。したがって、第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置500においても、各半導体レーザ素子の駆動電圧の制御が容易となっている。
第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置500を交流電圧により駆動する場合、図10の絶縁層32は第1の実施の形態と同様に誘電体として作用する。
図12は、図10の絶縁層32の誘電体としての作用を説明するための等価回路図である。
図12(a)が青紫色半導体レーザ素子10を駆動する場合の等価回路図を示し、図12(b)が赤色半導体レーザ素子20を駆動する場合の等価回路図を示す。
青紫色半導体レーザ素子10を交流電圧により駆動する場合、青紫色半導体レーザ素子10はリッジ部Riを抵抗とし、電流ブロック層10cを誘電体として図12(a)のように表される。また、赤色半導体レーザ素子20はリッジ部Riを抵抗とし、第1の電流ブロック層20cを誘電体とし、pn接合面を誘電体として図12(a)のように表される。さらに、第1の実施の形態と同様に絶縁層32は誘電体として作用する。
このように、交流電圧による青紫色半導体レーザ素子10の駆動時においては、絶縁層32と赤色半導体レーザ素子20との直列回路が青紫色半導体レーザ素子10に並列に接続される。
一方、赤色半導体レーザ素子20を交流電圧により駆動する場合、赤色半導体レーザ素子20はリッジ部Riを抵抗とし、第1の電流ブロック層20cを誘電体として図12(b)のように表される。
青紫色半導体レーザ素子10を交流電圧により駆動する場合、青紫色半導体レーザ素子10はリッジ部Riを抵抗とし、電流ブロック層10cを誘電体とし、pn接合面を誘電体として図12(a)のように表される。この場合においても、絶縁層32は誘電体として作用する。
図12(a),(b)に示すように、一方の半導体レーザ素子を駆動する際に、絶縁層32と直列に他方の電流ブロック層およびpn接合面が接続される。それにより、絶縁層32および他方の半導体レーザ素子の電流ブロック層およびpn接合面による合成容量値が低減される。その結果、絶縁層32が一方の半導体レーザ素子へ与える影響が低減される。
また、第1の実施の形態で説明したように、青紫色半導体レーザ素子10の駆動時に電流ブロック層10cに発生する容量値は約15pFである。これにより、青紫色半導体レーザ素子10の駆動時においては、絶縁層32に発生する容量値が約15pF以下とすることが好ましい。この場合、絶縁層32の影響による青紫色半導体レーザ素子10の高周波特性の劣化が十分に抑制される。
また、赤色半導体レーザ素子20の駆動時に第1の電流ブロック層20cに発生する容量値は約28pFである。これにより、赤色半導体レーザ素子20の駆動時においては、絶縁層32に発生する容量値が約28pF以下とすることが好ましい。この場合、絶縁層32の影響による赤色半導体レーザ素子20の高周波特性の劣化が十分に抑制される。
上記より、絶縁層32に発生する容量値を約15pF以下とすることにより、絶縁層32の影響による青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20のそれぞれの高周波特性の劣化を十分に抑制することができる。
したがって、第2の実施の形態においては、絶縁層32の厚みt32は、絶縁層32に発生する容量値が電流ブロック層10c,20cに発生する容量値以下となるように設定する。
絶縁層32に発生する容量値を約15pF以下とするためには、絶縁層32の厚みt32を図6に基づいて0.43μm以上に設定する必要がある。
絶縁層32の厚みt32を0.43μm以上に設定することにより、絶縁層32に発生する容量値は青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の電流ブロック層10c,20cに発生する容量値以下となる。
この場合の実効容量値は、電流ブロック層10c,20cに発生する容量値の2倍以下となる。その結果、絶縁層32に発生する容量値が電流ブロック層10c,20cに発生する容量値以下である場合の青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の遮断周波数は、絶縁層32が設けられない場合の遮断周波数から最大でも約3割の低下にとどめられる。
このように、絶縁層32に発生する容量値が電流ブロック層10c,20cに発生する容量値以下となるように、絶縁層32の厚みを設定することにより、絶縁層32の影響による青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の遮断周波数の低下が十分に小さくなる。すなわち、絶縁層32の影響による青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の高周波特性の劣化がともに十分に抑制される。
なお、絶縁層32の厚みt32を0.86μm以上に設定し、絶縁層32に発生する容量値を青紫色半導体レーザ素子10の電流ブロック層10cに発生する容量値の約1/2以下としてもよい。
絶縁層32に発生する容量値が電流ブロック層10cに発生する容量値の約1/2以下である場合の青紫色半導体レーザ素子10の遮断周波数は、絶縁層32が設けられない場合の遮断周波数から最大でも約2割の低下にとどめられる。
このように、絶縁層32に発生する容量値が電流ブロック層10cに発生する容量値の約1/2以下となるように、絶縁層32の厚みを設定することにより、絶縁層32の影響による青紫色半導体レーザ素子10の遮断周波数の低下がより小さくなる。すなわち、絶縁層32の影響による青紫色半導体レーザ素子10の高周波特性の劣化がより十分に抑制される。
さらに、青紫色半導体レーザ素子10に対して、赤色半導体レーザ素子20の第1の電流ブロック層20cに発生する容量値は、電流ブロック層10cより大きい。したがって、絶縁層32の影響による赤色半導体レーザ素子20の遮断周波数の低下もより小さくなる。すなわち、絶縁層32の影響による赤色半導体レーザ素子20の高周波特性の劣化もより十分に抑制される。
また、絶縁層32の厚みt32を1.20μm以上に設定し、絶縁層32に発生する容量値を青紫色半導体レーザ素子10の電流ブロック層10cに発生する容量値の約1/5以下としてもよい。
絶縁層32に発生する容量値が第1の電流ブロック層20c,30cに発生する容量値の約1/5以下である場合の青紫色半導体レーザ素子10の遮断周波数は、絶縁層32が設けられない場合の遮断周波数から最大でも約1割の低下にとどめられる。
このように、実効容量値が電流ブロック層10cに発生する容量値の約1/5以下となるように、絶縁層32の厚みを設定することにより、絶縁層32の影響による青紫色半導体レーザ素子10の遮断周波数の低下が著しく小さくなる。すなわち、絶縁層32の影響による青紫色半導体レーザ素子10の高周波特性の劣化が極めて十分に抑制される。
さらに、青紫色半導体レーザ素子10に対して、赤色半導体レーザ素子20の第1の電流ブロック層20cに発生する容量値は、電流ブロック層10cより大きい。したがって、絶縁層32の影響による赤色半導体レーザ素子20の遮断周波数の低下も著しく小さくなり、概ね無視することができる。すなわち、絶縁層32の影響による赤色半導体レーザ素子20の高周波特性の劣化も極めて十分に低減される。
絶縁層32の厚みt32を0.65μm以上に設定してもよい。図6によれば、絶縁層32の厚みt32を0.65μm以上に設定することにより、絶縁層32に発生する容量値を10pF以下にすることができる。したがって、青紫色半導体レーザ素子10の駆動時における青紫色半導体レーザ素子10の実効容量値は、約23〜24pF程度となる。なお、ここでは、赤色半導体レーザ素子20のpn接合面に発生する容量値は考慮しない。
通常、青紫色半導体レーザ素子10のインダクタンスは約3nHである。上記の実効容量値および上式(2)に基づいて青紫色半導体レーザ素子10の遮断周波数を算出する。絶縁層32に発生する容量値が10pF以下の場合、青紫色半導体レーザ素子10の遮断周波数は600MHz以上となる。
一般に青紫色半導体レーザ素子10を備える光ピックアップ装置においては、青紫色半導体レーザ素子10の遮断周波数を600MHz以上に設定することが好ましいとされている。
したがって、第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置500においては、絶縁層32の厚みt32を0.65μm以上に設定することにより、青紫色半導体レーザ素子10の遮断周波数が600MHz以上に設定され、光ピックアップ装置等に用いる際に良好な性能を得ることができる。
第2の実施の形態において、絶縁層32に発生する容量値は電流ブロック層10cおよび第1の電流ブロック層20cに発生する容量値のうちの小さい方の容量値以下である。また、青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bと赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bとが電気的に接続されている。これにより、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の駆動電圧の制御が容易になるとともに、絶縁性の層の影響による赤色半導体レーザ素子20の高周波特性の劣化が十分に抑制されている。
さらに、複数の青紫色半導体レーザ素子10が形成されたウェハと、複数の赤色半導体レーザ素子20が形成されたウェハとを重ね合わせることにより、複数の半導体レーザ装置500を同時に作製することができる。この場合、各青紫色半導体レーザ素子10と各赤色半導体レーザ素子20との位置精度が向上する。その結果、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の発光点の位置決め精度が向上する。
また、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20が、p側パッド電極10aおよびp側パッド電極20aとが絶縁層32を介して対向するように配置されている。それにより、青紫色半導体レーザ素子10の半導体層と、赤色半導体レーザ素子20の半導体層とが近づくので、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の発光点を互いに近づけることができる。それにより、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20より出射されるレーザ光を集光レンズに透過する際に、レンズによる収差を抑制することができる。
第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置500においては、支持部材5および青紫色半導体レーザ素子10間に副基板31が設けられていないが、支持部材5および青紫色半導体レーザ素子10間に副基板31が設けられてもよい。
この場合、副基板31の厚みにより青紫色半導体レーザ素子10、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の各発光点の位置調整を行うことができる。
また、支持部材5および青紫色半導体レーザ素子10間に副基板31を設ける場合、副基板31により青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bと支持部材5とが電気的に絶縁されてもよい。この場合、青紫色半導体レーザ素子10のフローティングされた結線が実現できる。それにより、青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bと電気的に接続される給電ピンに任意の電圧を印加することができる。その結果、半導体レーザ装置500の駆動装置による青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の駆動電圧の制御が容易となる。
第2の実施の形態において、電流ブロック層10cが第1の電流狭窄層に相当し、第1の電流ブロック層20c,30cが第2の電流狭窄層に相当する。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る半導体レーザ装置は、以下の点で第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置500と構成および動作が異なる。
図13は第3の実施の形態に係る半導体レーザ装置の蓋体4を外した状態を示す模式的正面図であり、図14は第3の実施の形態に係る半導体レーザ装置の蓋体4を外した状態を示す模式的上面図である。
図13に示すように、パッケージ本体3と一体化された導電性の支持部材5上には、導電性の融着層Hが形成されている。融着層H上には、n側パッド電極10bが支持部材5側となるように青紫色半導体レーザ素子10が接着されている。
第3の実施の形態において、青紫色半導体レーザ素子10の幅(Y方向)および長さ(X方向)は第1の実施の形態における青紫色半導体レーザ素子10よりも大きい。
青紫色半導体レーザ素子10のp側パッド電極10aは半導体層に形成される電流ブロック層10cの一部領域に形成されている。これにより、電流ブロック層10cは、p側パッド電極10a下で青紫色半導体レーザ素子10に流れる電流を狭窄する。すなわち、p側パッド電極10a下にリッジ部Riが形成される。上述のように、電流ブロック層10cはSiO2 からなる。
XY平面において、p側パッド電極10aと離間した状態で、電流ブロック層10cの他の領域にAuを含む導電層33が形成されている。XY平面における導電層33の形成領域を導電層形成領域と呼ぶ。
導電層33上には、p側パッド電極20aが支持部材5側となるようにAuSnからなる融着層Hを介して赤色半導体レーザ素子20が接着されている。
図13の括弧に示すように、青紫色半導体レーザ素子10上には、赤色半導体レーザ素子20に代えて赤外半導体レーザ素子30が積層されてもよい。
図13および図14に示すように、給電ピン1a,1bは、それぞれ絶縁リング1zによりパッケージ本体3と電気的に絶縁されている。給電ピン1aはワイヤW3を介して青紫色半導体レーザ素子10のp側パッド電極10aと電気的に接続されている。給電ピン1bはワイヤW1を介して導電層33と電気的に接続されている。支持部材5の露出した上面と赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bとがワイヤW2により電気的に接続されている。
青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bは支持部材5上で融着層Hを介して電気的に接続されている。これにより、給電ピン2は青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bおよび赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bと電気的に接続されている。すなわち、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20のカソードコモンの結線が実現されている。
給電ピン1a,2間および給電ピン1b,2間のそれぞれに電圧を印加することにより、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20を個別に駆動することができる。
第3の実施の形態に係る半導体レーザ装置500の電気的配線は図4と同じである。したがって、第3の実施の形態に係る半導体レーザ装置500においても、各半導体レーザ素子の駆動電圧の制御が容易となっている。
ここで、第3の実施の形態においても、交流電圧による赤色半導体レーザ素子20の駆動時には、導電層形成領域の電流ブロック層10cが誘電体として作用する。したがって、第3の実施の形態では、導電層形成領域の電流ブロック層10cに発生する容量値が第1の電流ブロック層20cに発生する容量値以下となることが好ましい。
第1の実施の形態で示したように、第1の電流ブロック層20cの厚み、幅および長さが0.5μm、200μmおよび600μmである場合、第1の電流ブロック層20cに発生する容量値は約28pFである。
ここで、XY平面における導電層形成領域の面積は第1の実施の形態で説明した絶縁層32(導電層32a)と同じである。すなわち、導電層形成領域の幅(Y方向)が約300μmで、かつ長さ(X方向)が約600μmである
したがって、導電層形成領域の電流ブロック層10cに発生する容量値を約28pF以下とするためには、電流ブロック層10cの厚みを図6に基づいて0.23μm以上に設定する必要がある。
このように、電流ブロック層10cの厚みを0.23μm以上に設定することにより、電流ブロック層10cに発生する容量値は赤色半導体レーザ素子20の第1の電流ブロック層20cに発生する容量値以下となる。
この場合の実効容量値は、第1の電流ブロック層20cに発生する容量値の2倍以下となる。その結果、電流ブロック層10cに発生する容量値が第1の電流ブロック層20cに発生する容量値以下である場合の赤色半導体レーザ素子20の遮断周波数は、電流ブロック層10cが設けられない場合の遮断周波数から最大でも約3割の低下にとどめられる。
このように、電流ブロック層10cに発生する容量値が第1の電流ブロック層20cに発生する容量値以下となるように、電流ブロック層10cの厚みを設定することにより、電流ブロック層10cの影響による赤色半導体レーザ素子20の遮断周波数の低下が十分に小さくなる。すなわち、電流ブロック層10cの影響による赤色半導体レーザ素子20の高周波特性の劣化が十分に抑制される。
なお、電流ブロック層10cの厚みを0.46μm以上に設定し、電流ブロック層10cに発生する容量値を赤色半導体レーザ素子20の第1の電流ブロック層20cに発生する容量値の約1/2以下としてもよい。
電流ブロック層10cに発生する容量値が第1の電流ブロック層20cに発生する容量値の約1/2以下である場合の赤色半導体レーザ素子20の遮断周波数は、絶縁層32が設けられない場合の遮断周波数から最大でも約2割までの低下にとどめられる。
このように、電流ブロック層10cに発生する容量値が第1の電流ブロック層20cに発生する容量値の約1/2以下となるように、電流ブロック層10cの厚みを設定することにより、電流ブロック層10cの影響による赤色半導体レーザ素子20の遮断周波数の低下がより小さくなる。すなわち、電流ブロック層10cの影響による赤色半導体レーザ素子20の高周波特性の劣化がより十分に抑制される。
また、電流ブロック層10cの厚みを1.20μm以上に設定し、電流ブロック層10cに発生する容量値を赤色半導体レーザ素子20の第1の電流ブロック層20cに発生する容量値の約1/5以下としてもよい。
電流ブロック層10cに発生する容量値が第1の電流ブロック層20cに発生する容量値の約1/5以下である場合の赤色半導体レーザ素子20の遮断周波数は、電流ブロック層10cが設けられない場合の遮断周波数から最大でも約1割の低下にとどめられる。
一般に、半導体レーザ素子の遮断周波数は半導体レーザ素子の配置のばらつき等により約1割の範囲内で変化する。したがって、赤色半導体レーザ素子20の遮断周波数の低下が約1割の低下にとどめられると、遮断周波数の劣化は概ね無視することができる。
このように、電流ブロック層10cに発生する容量値が第1の電流ブロック層20cに発生する容量値の約1/5以下となるように、電流ブロック層10cの厚みを設定することにより、電流ブロック層10cの影響による赤色半導体レーザ素子20の遮断周波数の低下が著しく小さくなる。すなわち、電流ブロック層10cの影響による赤色半導体レーザ素子20の高周波特性の劣化が極めて十分に抑制される。
なお、上記では、電流ブロック層10cに発生する容量値を調整するために電流ブロック層10cの厚みを所定の値に設定している。しかしながら、電流ブロック層10cの材質、幅(Y方向)および長さ(X方向)を設定することにより、電流ブロック層10cに発生する容量値を調整してもよい。
第3の実施の形態において、電流ブロック層10cに発生する容量値は第1の電流ブロック層20cに発生する容量値以下である。また、青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bと赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bとが電気的に接続されている。これにより、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の駆動電圧の制御が容易になるとともに、絶縁性の層の影響による赤色半導体レーザ素子20の高周波特性の劣化が十分に抑制されている。
さらに、複数の青紫色半導体レーザ素子10が形成されたウェハと、複数の赤色半導体レーザ素子20が形成されたウェハとを重ね合わせることにより、複数の半導体レーザ装置500を同時に作製することができる。この場合、各青紫色半導体レーザ素子10と各赤色半導体レーザ素子20との位置精度が向上する。その結果、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の発光点の位置決め精度が向上する。
また、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20が、p側パッド電極10aおよびp側パッド電極20aとが対向するように配置されている。それにより、青紫色半導体レーザ素子10の半導体層と、赤色半導体レーザ素子20の半導体層とが近づくので、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の発光点を互いに近づけることができる。それにより、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20より出射されるレーザ光を集光レンズに透過する際に、レンズによる収差を抑制することができる。
第3の実施の形態において、導電層33が導電層に相当し、電流ブロック層10cが第1の電流狭窄層に相当し、第1の電流ブロック層20c,30cが第2に電流狭窄層に相当する。
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る半導体レーザ装置は、以下の点で第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置500と構成および動作が異なる。
図15は第4の実施の形態に係る半導体レーザ装置を示す外観斜視図である。
図15において、第4の実施の形態に係る半導体レーザ装置500は、第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置500に加えて給電ピン1cをさらに備える。
図16は図15の半導体レーザ装置500の蓋体4を外した状態を示す模式的正面図であり、図17は図15の半導体レーザ装置500の蓋体4を外した状態を示す模式的上面図である。
図16に示すように、パッケージ本体3と一体化された導電性の支持部材5上には、第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置500と同様に、複数の融着層Hを介して副基板31、青紫色半導体レーザ素子10、絶縁層32および赤色半導体レーザ素子20が順に積層されている。
なお、本例においても、副基板31は上面および下面に導電層31a,31bを備える。絶縁層32上には導電層32aが形成されている。
図16の括弧に示すように、青紫色半導体レーザ素子10上には、赤色半導体レーザ素子20に代えて赤外半導体レーザ素子30が積層されてもよい。
図16および図17に示すように、給電ピン1a,1b,1cは、それぞれ絶縁リング1zによりパッケージ本体3と電気的に絶縁されている。
給電ピン1aはワイヤW4を介して副基板31上の導電層31aと電気的に接続されている。これにより、給電ピン1aは青紫色半導体レーザ素子10のp側パッド電極10aと電気的に接続される。
給電ピン1bはワイヤW1を介して絶縁層32上の導電層32aと電気的に接続されている。これにより、給電ピン1bは赤色半導体レーザ素子20のp側パッド電極20aと電気的に接続される。
給電ピン1cはワイヤW2を介して赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bと電気的に接続されるとともに、ワイヤW3を介して青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bに電気的に接続されている。これにより、給電ピン1cは青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20の共通のn側パッド電極として作用する。すなわち、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20のカソードコモンの結線が実現されている。
特に、第4の実施の形態では、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20が、それぞれ導電性の支持部材5から電気的に絶縁されている。すなわち、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20が支持部材5からフローティング状態で結線されている。
給電ピン1a,1c間および給電ピン1b,1c間のそれぞれに電圧を印加することにより、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20を個別に駆動することができる。
図18は、第4の実施の形態に係る半導体レーザ装置500の電気的配線を示す回路図である。
上述のように、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20はともに、支持部材5から電気的に絶縁されている。この場合、給電ピン1cに任意の電圧を印加することができる。
例えば、赤色半導体レーザ素子20の駆動時においては、給電ピン1cに接地電位を与え、給電ピン1aに接地電位よりも高い電圧を印加する。一方、赤色半導体レーザ素子20よりも駆動電圧が高い青紫色半導体レーザ素子10の駆動時においては、給電ピン1cに負の電圧を印加し、給電ピン1aに赤色半導体レーザ素子20の駆動時と同じ電圧を印加する。
このように、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20が支持部材5から電気的に絶縁されている。また、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極10b,20bと電気的に接続されている給電ピン1aに任意の電圧を印加することができるので、各半導体レーザ素子の駆動電圧の制御が容易となっている。
第4の実施の形態において、青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bおよび赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bは互いに電気的に接続されるとともに、支持部材5と電気的に絶縁されている。この場合、青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bおよび赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bにそれぞれ電圧を印加することができる。
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態に係る半導体レーザ装置は、以下の点で第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置500と構成および動作が異なる。第5の実施の形態に係る半導体レーザ装置の外観は図15の半導体レーザ装置500と同じであり、第4の実施の形態と同様に、第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置500に加えて、給電ピン1cをさらに備える。
図19は第5の実施の形態に係る半導体レーザ装置の蓋体4を外した状態を示す模式的正面図であり、図20は第5の実施の形態に係る半導体レーザ装置の蓋体4を外した状態を示す模式的上面図である。
パッケージ本体3と一体化された導電性の支持部材5上には、第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置500と同様に、複数の融着層Hを介して副基板31および青紫色半導体レーザ素子10が順に積層されている。第5の実施の形態においても、副基板31は上面および下面に導電層31a,31bを備える。
青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10b上の一部領域(以下、第1の絶縁領域と呼ぶ。)にSiO2 からなる絶縁層34が設けられている。以下の説明において、この絶縁層34の厚みをt34とする。絶縁層34の厚みt34についての詳細は後述する。絶縁層34上にはAuを含む導電層34aが形成されている。
さらに、第1の絶縁領域を除く青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10b上の一部領域(以下、第2の絶縁領域と呼ぶ。)にSiO2 からなる絶縁層35が設けられている。以下の説明において、この絶縁層35の厚みをt35とする。絶縁層35の厚みt35についての詳細は後述する。絶縁層35上にはAuを含む導電層35aが形成されている。
上記の第1の絶縁領域および第2の絶縁領域はn側パッド電極10b上で、互いに離間している。したがって、絶縁層34,35上の導電層34a,35aは電気的に絶縁されている。
導電層34a上では、融着層Hを介して赤色半導体レーザ素子20が、p側パッド電極20aが支持部材5側となるように接着されている。導電層35a上では、融着層Hを介して赤外半導体レーザ素子30が、p側パッド電極30aが支持部材5側となるように接着されている。
ここで、第5の実施の形態において、青紫色半導体レーザ素子10は約700μmの幅(Y方向)を有し、約600μmの長さ(X方向)を有する。赤色半導体レーザ素子20は約200μmの幅(Y方向)を有し、約600μmの長さ(X方向)を有する。赤外半導体レーザ素子30は約200μmの幅(Y方向)を有し、約600μmの長さ(X方向)を有する。
さらに、絶縁層34,35は第1の実施の形態の絶縁層32と同様に約300μmの幅(Y方向)を有し、約600μmの長さ(X方向)を有する。
図19および図20に示すように、給電ピン1a,1b,1cは、それぞれ絶縁リング1zによりパッケージ本体3と電気的に絶縁されている。
給電ピン1aはワイヤW6を介して副基板31上の導電層31aと電気的に接続されている。これにより、給電ピン1aは青紫色半導体レーザ素子10のp側パッド電極10aと電気的に接続される。
給電ピン1bはワイヤW1を介して絶縁層34上の導電層34aと電気的に接続されている。これにより、給電ピン1bは赤色半導体レーザ素子20のp側パッド電極20aと電気的に接続される。
給電ピン1cはワイヤW4を介して絶縁層35上の導電層35aと電気的に接続されている。これにより、給電ピン1bは赤外半導体レーザ素子30のp側パッド電極30aと電気的に接続される。
支持部材5の露出した上面と青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bとがワイヤW2により電気的に接続され、支持部材5の露出した上面と赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bとがワイヤW3により電気的に接続され、支持部材5の露出した上面と赤外半導体レーザ素子30のn側パッド電極30bとがワイヤW5により電気的に接続されている。
これにより、給電ピン2は青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10b、赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bおよび赤外半導体レーザ素子30のn側パッド電極30bと電気的に接続されている。すなわち、青紫色半導体レーザ素子10および赤色半導体レーザ素子20のカソードコモンの結線が実現されている。
給電ピン1a,2間、給電ピン1b,2間および給電ピン1c,2間のそれぞれに電圧を印加することにより、青紫色半導体レーザ素子10、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30を個別に駆動することができる。
図21は、第5の実施の形態に係る半導体レーザ装置500の電気的配線を示す回路図である。
上述のように、給電ピン2は支持部材5と電気的に接続されるとともに、青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10b、赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bおよび赤外半導体レーザ素子30のn側パッド電極30bと電気的に接続されている。
一方、青紫色半導体レーザ素子10のp側パッド電極10a、赤色半導体レーザ素子20のp側パッド電極20aおよび赤外半導体レーザ素子30のp側パッド電極30aは支持部材5、すなわち給電ピン2と電気的に絶縁されている。
これにより、青紫色半導体レーザ素子10を駆動するためには、給電ピン2に対して、給電ピン1aに接地電位よりも高い電圧を印加する必要がある。また、赤色半導体レーザ素子20を駆動するためには、給電ピン2に対して、給電ピン1bに接地電位よりも高い電圧を印加する必要がある。さらに、赤外半導体レーザ素子30を駆動するためには、給電ピン2に対して、給電ピン1cに接地電位よりも高い電圧を印加する必要がある。
このように、第5の実施の形態に係る半導体レーザ装置500においては、接地電位よりも高い電圧を給電ピン1a,1b,1cのいずれかに与えることにより、青紫色半導体レーザ素子10、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30を個別に駆動することができる。その結果、各半導体レーザ素子の駆動電圧の制御が容易になる。
第5の実施の形態において、交流電圧による青紫色半導体レーザ素子10の駆動時には副基板31が誘電体として作用する。しかしながら、第1の実施の形態と同様に、副基板31の厚みは約200μmであり、電流ブロック層10cの0.5μmの厚みに比べて著しく大きい。したがって、副基板31が青紫色半導体レーザ素子10に与える影響はほぼ無視することができる。
一方、交流電圧による赤色半導体レーザ素子20の駆動時には絶縁層34が誘電体として作用する。第5の実施の形態において、第1の電流ブロック層20cの形状は第1の実施の形態で説明した第1の電流ブロック層20cの形状と同じである。また、絶縁層34の形状は第1の実施の形態で説明した絶縁層32の形状と同じである。
したがって、絶縁層34の厚みt34は0.23μm以上に設定することが好ましく、0.46μm以上に設定することがより好ましい。さらに、絶縁層34の厚みt34は1.20μm以上に設定することが非常に好ましい。
他方、交流電圧による赤外半導体レーザ素子30の駆動時には絶縁層35が誘電体として作用する。第5の実施の形態において、第1の電流ブロック層30cの形状は第1の実施の形態で説明した第1の電流ブロック層20cの形状と同じである。また、絶縁層35の形状は第1の実施の形態で説明した絶縁層32の形状と同じである。
したがって、絶縁層35の厚みt35は0.23μm以上に設定することが好ましく、0.46μm以上に設定することがより好ましい。さらに、絶縁層35の厚みt35は1.20μm以上に設定することが非常に好ましい。
第5の実施の形態では、赤色半導体レーザ素子20の第1の電流ブロック層20cに発生する容量値と、赤外半導体レーザ素子30の第1の電流ブロック層30cに発生する容量値とがほぼ同じ場合について説明している。
しかしながら、第1の電流ブロック層20c,30cの各々に発生する容量値が互いに大きく異なる場合には、それぞれに応じて厚みt34,t35を設定してもよい。
また、第5の実施の形態において、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30は互いに同一の基板上に作製されてもよい。この場合、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30がモノシリック構造を有することにより、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の赤色発光点および赤外発光点の間隔の精度を著しく向上させることができる。
第5の実施の形態に係る半導体レーザ装置500は、青紫色半導体レーザ素子10、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30を備える。これにより、半導体レーザ装置500は3種類の波長のレーザ光を出射することができる。
第5の実施の形態において、絶縁層34,35が絶縁層に相当し、導電層34a,35aが導電層に相当する。
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態に係る半導体レーザ装置は、以下の点で第5の実施の形態に係る半導体レーザ装置500と構成および動作が異なる。第6の実施の形態に係る半導体レーザ装置の外観は第5の実施の形態と同様に、図15の半導体レーザ装置500と同じである。
図22は第6の実施の形態に係る半導体レーザ装置の蓋体4を外した状態を示す模式的正面図であり、図23は第6の実施の形態に係る半導体レーザ装置の蓋体4を外した状態を示す模式的上面図である。
図22に示すように、パッケージ本体3と一体化された導電性の支持部材5上には、導電性の融着層Hが形成されている。融着層H上には、n側パッド電極10bが支持部材5側となるように青紫色半導体レーザ素子10が接着されている。
第6の実施の形態において、青紫色半導体レーザ素子10は幅(Y方向)が約800μmであり、長さ(X方向)が約600μmである。
青紫色半導体レーザ素子10のp側パッド電極10aは半導体層に形成される電流ブロック層10cの一部領域に形成されている。第3の実施の形態と同様に、p側パッド電極10a下には青紫色半導体レーザ素子10のリッジ部Riが形成されており、電流ブロック層10cはSiO2 からなる。
なお、第6の実施の形態において、p側パッド電極10aが形成される一部領域は、XY平面における青紫色半導体レーザ素子10全体の大きさの約1/4である。例えば、p側パッド電極10aは幅(Y方向)が約200μmであり、長さ(X方向)が約600μmである。
XY平面において、p側パッド電極10aと離間した状態で、電流ブロック層10cの他の領域にAuを含む導電層36,37が形成されている。XY平面における導電層36の形成領域を第1の導電層形成領域と呼ぶ。XY平面における導電層37の形成領域を第2の導電層形成領域と呼ぶ。Y方向において、p側パッド電極10aは第1および第2の導電層形成領域間に位置する。
導電層36,37は、ともに幅(Y方向)が約300μmであり、長さ(X方向)が約600μmである。
導電層36上には、p側パッド電極20aが支持部材5側となるようにAuSnからなる融着層Hを介して赤色半導体レーザ素子20が接着されている。
導電層37上には、p側パッド電極30aが支持部材5側となるようにAuSnからなる融着層Hを介して赤外半導体レーザ素子30が接着されている。
図22および図23に示すように、給電ピン1a,1b,1cは、それぞれ絶縁リング1zによりパッケージ本体3と電気的に絶縁されている。
給電ピン1aはワイヤW5を介して導電層37と電気的に接続されている。これにより、給電ピン1aは赤外半導体レーザ素子30のp側パッド電極30aと電気的に接続される。
給電ピン1bはワイヤW1を介して導電層36と電気的に接続されている。これにより、給電ピン1bは赤色半導体レーザ素子20のp側パッド電極20aと電気的に接続される。
給電ピン1cはワイヤW3を介して青紫色半導体レーザ素子10のp側パッド電極10aと電気的に接続されている。
支持部材5の露出した上面と赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bとがワイヤW2により電気的に接続されている。支持部材5の露出した上面と赤外半導体レーザ素子30のn側パッド電極30bとがワイヤW4により電気的に接続されている。
第6の実施の形態において、青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10bは支持部材5上に融着層Hを介して電気的に接続されている。これにより、給電ピン2は青紫色半導体レーザ素子10のn側パッド電極10b、赤色半導体レーザ素子20のn側パッド電極20bおよび赤外半導体レーザ素子30のn側パッド電極30bと電気的に接続されている。すなわち、青紫色半導体レーザ素子10、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30のカソードコモンの結線が実現されている。
給電ピン1c,2間、給電ピン1b,2間および給電ピン1a,2間のそれぞれに電圧を印加することにより、青紫色半導体レーザ素子10、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30を個別に駆動することができる。第6の実施の形態に係る半導体レーザ装置500の電気的配線は図21と同じである。なお、図21においては、括弧内に第6の実施の形態に係る給電ピンの符号が示されている。このように、第6の実施の形態に係る半導体レーザ装置500においても、各半導体レーザ素子10,20,30の駆動電圧の制御が容易となっている。
交流電圧による青紫色半導体レーザ素子10の駆動時において、p側パッド電極10aが形成される電流ブロック層10cの一部領域は誘電体として作用する。
図24は、図22の青紫色半導体レーザ素子10の駆動時に電流ブロック層10cで発生する容量値と電流ブロック層10cの厚みとの関係を示す図である。図24においては、縦軸が容量値を表し、横軸が電流ブロック層10cの厚みを表す。このように、一部領域の電流ブロック層10aに発生する容量値は電流ブロック層10cの厚みに応じて変化する。なお、第6実施の形態では、電流ブロック層10cの厚みは後述の第1の電流ブロック層20c,30cの厚みにより異なる。
交流電圧による赤色半導体レーザ素子20の駆動時には第1の導電層形成領域の電流ブロック層10cが誘電体として作用する。第6の実施の形態において、第1の電流ブロック層20cの形状は第1の実施の形態で説明した第1の電流ブロック層20cの形状と同じである。また、第1の導電層形成領域の電流ブロック層10cは導電層36と同じ幅および長さを有する。
さらに、交流電圧による赤色半導体レーザ素子30の駆動時には第2の導電層形成領域の電流ブロック層10cが誘電体として作用する。第6の実施の形態において、第1の電流ブロック層30cの形状は第1の実施の形態で説明した第1の電流ブロック層30cの形状と同じである。また、第2の導電層形成領域の電流ブロック層10cは導電層37と同じ幅および長さを有する。
したがって、電流ブロック層10cの厚みは、図6に基づいて0.23μm以上に設定することが好ましく、0.46μm以上に設定することがより好ましい。さらに、電流ブロック層10cの厚みは1.20μm以上に設定することが非常に好ましい。
特に、電流ブロック層10cの厚みを0.23μm以上に設定する場合、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の駆動時に電流ブロック層10cに発生する容量値は、図24に基づいて約20pF以下にすることができる。これにより、電流ブロック層10cの影響による赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の高周波特性の劣化が十分に抑制される。
青紫色半導体レーザ素子10の駆動時においても、電流ブロック層10cに発生する容量値が約20pF以下となるので、青紫色半導体レーザ素子10の高周波特性がより向上する。特に、青紫色半導体レーザ素子10の遮断周波数が600MHz以上に設定されるので、半導体レーザ装置500を光ピックアップ装置等に用いる際に良好な性能を得ることができる。
また、電流ブロック層10cの厚みを0.46μm以上に設定する場合、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の駆動時に電流ブロック層10cに発生する容量値は、約10pF以下にすることができる。これにより、電流ブロック層10cの影響による赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の高周波特性の劣化がより十分に抑制される。
さらに、電流ブロック層10cの厚みを1.20μm以上に設定する場合、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の駆動時に電流ブロック層10cに発生する容量値は、約4pF以下にすることができる。これにより、電流ブロック層10cの影響による赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の高周波特性の劣化が極めて十分に抑制される。
また、青紫色半導体レーザ素子10の駆動時においても、電流ブロック層10cに発生する容量値が約4pF以下となるので、青紫色半導体レーザ素子10の高周波特性が著しく向上する。それにより、半導体レーザ装置500を光ピックアップ装置等に用いる際に良好な性能を得ることができる。
第6の実施の形態では、赤色半導体レーザ素子20の第1の電流ブロック層20cに発生する容量値と、赤外半導体レーザ素子30の第1の電流ブロック層30cに発生する容量値とがほぼ同じ場合について説明している。
しかしながら、第1の電流ブロック層20c,30cの各々に発生する容量値が互いに大きく異なる場合には、それぞれに応じて厚みを設定してもよい。
上述のように、第6の実施の形態に係る半導体レーザ装置500においては、青紫色半導体レーザ素子10のp側パッド電極10aと赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30のp側パッド電極20a,30aとが対向するように配置されている。
これにより、青紫色半導体レーザ素子10、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30のそれぞれの発光点をYZ平面内でほぼ同一直線上に配置することが可能となっている。
第6の実施の形態において、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30は互いに同一の基板上に作製されてもよい。この場合、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30がモノシリック構造を有することにより、赤色半導体レーザ素子20および赤外半導体レーザ素子30の赤色発光点および赤外発光点の間隔の精度を著しく向上させることができる。
第6の実施の形態において、導電層36および37が導電層に相当し、電流ブロック層10cが第1の電流狭窄層に相当し、第1の電流ブロック層20cおよび30cが第2の電流狭窄層に相当する。