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JP4529569B2 - 車体後部構造 - Google Patents

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JP4529569B2
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Description

本発明は、自動車の車体後部の構造に関し、特に、車体後部フロアの下面に接合されて車体の捻り剛性を高めるとともに、衝突安全性を向上させるためのクロスメンバーの構造の技術分野に属する。
従来より、一般的に、自動車の車体後部フロアには、車体の捻れ剛性を高めるとともにフロアパネルの振動を抑制し、さらには側面への衝突(以下、側突という)による車体の変形を抑えて安全性を向上させるためにクロスメンバーが配設されている。このクロスメンバーは、車幅方向に延びていて左右両側のサイドフレーム間に架設されているとともに、上方に向かって開口する(上開きの)ハット状断面を有し、その上端に形成されたフランジ部が車体後部フロアの下面に接合されて閉断面を構成している。
このようなクロスメンバーの構造としては、例えば特許文献1に開示されるように、クロスメンバーの板厚を各部位毎に変更して、それぞれ所要の強度が得られる最低限度の厚みにすることによって、車体の剛性及び強度を維持しながら、その軽量化を図るようにしたものが知られている。
すなわち、前記特許文献1に開示される自動車のリヤシートクロスメンバーでは、これを車幅方向中間部位のセンタクロスメンバと、その左右両側の延長部材とからなるものとして、側突に対応して相対的に大きな強度が要求される延長部材の板厚をセンタクロスメンバよりも大きくするとともに、さらに大きな強度の必要なタイダウンフックの取付け部にはレインフォース部材を付加している。
特開2001−247058号公報
ところで、一般に、自動車の運動性能向上のためには車体のヨーモーメントを低減することが効果的であることはよく知られており、そのために車体後部フロアについても車軸よりも後側のオーバーハング部を短縮することが考えられる。
しかし、通常、車体後部フロアには車幅方向に延びるリヤクロスメンバーの後方に隣接して、フロアパネルから下方に膨出するようにスペアタイヤの収納部が設けられており、前記のようにオーバーハング部を短縮しようとすれば、その分、スペアタイヤ収納部を車体前側に配置しなくてはならないから、リヤクロスメンバーとの干渉の問題が発生する。
特に、近年ではデザイン上の要求から自動車のタイヤ・ホイールのサイズは大径化する傾向にあり、その分、前記スペアタイヤ収納部も大きくなるから、前記のクロスメンバーとの干渉の問題が生じやすい。
この問題に対し、クロスメンバーそのものの位置を車体前側に移動させようとしても、通常、リヤクロスメンバーの前側には隣接して燃料タンクが配置されているから、そこにはリヤクロスメンバーを移動させる余地はない。
そこで、リヤクロスメンバーの幅を狭めてスペアタイヤ収納部との干渉を避けるとともに、強度や剛性を確保するためにクロスメンバー全体の上下方向の寸法を大きくして、その断面積を維持することや、或いはリヤクロスメンバーを構成する鋼材の板厚を大きくすることも考えられる。
しかしながら、リヤクロスメンバーの下方には通常、前記燃料タンクへの燃料供給管や排気管などが配管されており、さらに、リヤサスペンションのリンク等との干渉も避けなくてはならないから、上下方向について寸法を拡大する余裕はあまり残されていない。また、単に鋼材の板厚を大きくすればその分、重くなってしまうので、自動車の運動性能向上という所期の目的に反することになってしまう。
斯かる問題点に鑑み、本発明の目的は、車体の後部フロア下に配設するクロスメンバーの構造に工夫を凝らして、車体のリヤオーバーハングの短縮やスペアタイヤ収納部の大型化に対応しつつ、その車体後部の強度及び剛性を十分に高くすることにある。
前記の目的を達成するために、本願の第1の解決手段は、車体の後部フロア下に配設するクロスメンバーを、その後側のスペアタイヤ収納部との干渉を避けるように平面視で中細りの形状にするとともに、その結果として断面積の小さくなるクロスメンバーの中間部位を高張力鋼により形成するものとした。
具体的に、請求項1の発明では、車体後部フロアの下面の左右両側にそれぞれ前後方向に延びるサイドフレームが接合されているとともに、そのフロアから下方に膨出するスペアタイヤ収納部の前方で左右に延びるクロスメンバーの両端部がそれぞれ前記各サイドフレームに結合されており、且つ、該クロスメンバーが上開きのハット状断面を有していて、その上端に形成されたフランジ部が前記フロア下面に接合されている車体後部の構造を前提とする。
そして、前記クロスメンバーの前方に隣接して燃料タンクが配設されているとともに、平面視で、前記クロスメンバーと各サイドフレームとの各結合部位におけるフランジ部を含めた車体後端部位同士を結んだ仮想線が、前記スペアタイヤ収納部と交差している場合に、前記クロスメンバーを、前記スペアタイヤ収納部の前側に隣接する部位の車両前後方向の寸法が、前記各サイドフレームとの各結合部位に比べて小さい、中細りの形状とし、当該スペアタイヤ収納部の前側に隣接する部位を、高張力鋼により形成されて略直線的に左右に延びる中間部材によって構成する一方、該中間部材の左右両端部から前記左右の各サイドフレームまで延びる部位は、それぞれ、前記中間部材よりも破壊強度の低い鋼材により形成されて、前記中間部材に連結される車体内方の端部から前記各サイドフレームに接続される車体外方の端部に向かって断面積が徐々に大きくなる左側及び右側部材によって構成する。
前記の構成によれば、車体後部フロアの下面に接合されるリヤクロスメンバーが左右方向の中間部位において相対的に断面積の小さくなる中細りの形状とされ、そうして幅(車両前後方向の寸法)の狭くなっている中間部位に後側から隣接するようにしてスペアタイヤ収納部が配置されているので、そのスペアタイヤ収納部が比較的大きくても、クロスメンバーとの干渉を回避しながら比較的車体前側寄りに配置することができる。
しかも、そのように相対的に断面積の小さな中間部位を別部材(中間部材)として、これを相対的に破壊強度の高い高張力鋼により形成したことで、前記の如くクロスメンバーが中細りの形状になっていても、そのことによる車体剛性の低下を抑制することができ、また、側突時の安全性を十分に確保することも可能になる。加えて、前記中間部材を略直線的な形状としたことで、高張力鋼であっても比較的容易に成形することができる。
従って、自動車の車体におけるリヤオーバーハングの短縮やスペアタイヤ収納部の大型化に対応しつつ、リヤクロスメンバーによって車体の強度及び剛性を十分に確保することができる。
前記の構成において好ましいのは、前記クロスメンバーの左側及び右側部材のそれぞれにおいて、中間部材に結合される端部のハット状断面を閉塞するように当該各部材の前面部、後面部及び底面部に亘るリブを一体成形することである(請求項2の発明)。
こうすれば、例えば軟鋼材などにより形成される左側及び右側部材において、その断面積が中間部材と同様に小さくなってしまう端部の閉断面が、当該部材の前面部、後面部及び底面部に亘る一体成形のリブによって補強されることから、この閉断面の変形を効果的に抑えて、その剛性を十分に高めることができる。尚、そのリブを車体フロア下に接合するためのフランジ部も一体成形すれば、より好ましい
に、請求項の発明では、前記請求項1の発明と同じ前提構成の車体後部構造を対象として、これと同様に、平面視で、前記クロスメンバーと各サイドフレームとの各結合部位におけるフランジ部を含めた車体後端部位同士を結んだ仮想線が、前記スペアタイヤ収納部と交差するようにする。そして、前記クロスメンバーが、高張力鋼により形成され、前記スペアタイヤ収納部の前側に隣接して略直線的に左右に延びるとともに、そのスペアタイヤ収納部の前端側を平面視で囲むように後側のフランジ部が切り欠かれた第1部材と、当該第1部材よりも破壊強度の低い鋼材によって、該第1部材の左右両端部から前記左右の各サイドフレームまでそれぞれ延びる左側並びに右側部、及びそれらを連結するブリッジ部が一体成形された第2部材と、を備え、該ブリッジ部が、前記第1部材によって下方から覆われているとともに、この第1部材の後側フランジ部に前記切り欠きの形成されている車幅方向範囲において車体後部フロアの下面に接合されている構成とする。
前記の構成により、リヤクロスメンバーの左右方向の中間部位においてフランジ部が、後側に隣接するスペアタイヤ収納部の前端側を平面視で囲むように切り欠かれているので、そのスペアタイヤ収納部が比較的大きくても、クロスメンバー(この場合はフランジ部)との干渉を回避しながら比較的車体前側寄りに配置することができる。
しかも、そのようにフランジ部が切り欠かれている中間部を別部材(第1部材)として、これを相対的に破壊強度の高い高張力鋼により形成したことで、フランジ部の切り欠き形成に伴う剛性や強度の低下を抑制することができる。加えて、前記第1部材を略直線的な形状としたことで、高張力鋼であっても比較的容易に成形することができる。
さらに、前記第1部材のフランジ部に切り欠きの形成されている車幅方向範囲において左右両側部材を繋ぐブリッジ部が車体後部フロアの下面に接合されているので、前記切り欠かきの形成によるクロスメンバーとリヤフロアとの接合強度の低下を補完して、十分な強度を得ることができる。
従って、請求項の発明でも、請求項1の発明と同じく、自動車の車体におけるリヤオーバーハングの短縮やスペアタイヤ収納部の大型化に対応しつつ、リヤクロスメンバーによって車体の強度及び剛性を十分に確保することができる。
以上のように、請求項1又は2の発明に係る車体後部構造によると、リヤクロスメンバーを中細りの形状としたことで、その後側に隣接するスペアタイヤ収納部を比較的車体前側寄りに配置することができるとともに、その中細りとなるクロスメンバーの中間部分を高張力鋼により形成したことなどによって剛性及び強度の低下を防止することができる。これにより、自動車のリヤオーバーハングの短縮やスペアタイヤ収納部の大型化に対応しつつ、車体の強度及び剛性を十分に確保することができる。
また、請求項の発明に係る車体後部構造によると、リヤクロスメンバーの後側フランジ部を切り欠いたことで、その後側に隣接するスペアタイヤ収納部を比較的車体前側寄りに配置することができるとともに、その切り欠きの形成されている車幅方向範囲において車体後部フロアに接合する部位(ブリッジ部)を新たに設けたことで、フランジ部の切り欠きによる接合強度の低下を補完して、十分な強度及び剛性を確保することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(実施形態1)
図1〜3には、本発明の実施形態に係る自動車の車体後部フロアの構造(車体後部構造)Aを示し、図1に示すように自動車の車体後部においては、車室の床部分を構成するフロントフロアパネル1の後端から立ち上がるようにキックアップ部2(センタフロアパネル)が配設され、このキックアップ部2のの後側に連続してリヤフロアパネル3が配設されて、車体後部フロアを構成している。また、前記キックアップ部2からリヤフロアパネル3に掛けてのフロア下面の左右両側には、それぞれ、車体前後方向に延びるリヤサイドフレーム4,4が配設されているとともに、これらのリヤサイドフレーム4,4の間にはリヤクロスメンバー5が架設されている。
前記リヤクロスメンバー5は、その構造について詳しくは後述するが、図2や図3(a)に示すようにリヤフロアパネル3などを取り除いて見ると、左右(車幅方向)の中央付近で幅(前後方向の寸法)の細くなる中細りの形状とされ、リヤフロアパネル3の下方に膨出するスペアタイヤパン3a(スペアタイヤ収納部)の前側を迂回するように左右に延びていて、その左右両端部がそれぞれ左右の各リヤサイドフレーム4,4に接合されている。また、リヤサイドフレーム4,4及びリヤクロスメンバー5は、いずれも上開きのハット状断面を有し、その上端に形成されたフランジ部4a,5aがリヤフロアパネル3の下面に接合されることによって、それぞれ閉断面を構成するようになっている。
前記キックアップ部2からリヤフロアパネル3の前側に掛けてフロントフロアパネル1から一段、高くなった車体フロアの下方には、図2や図3に示すように燃料タンク10が配設されており、この燃料タンク10へ燃料を給油するためのフィラーパイプ11(燃料供給管)や蒸発燃料の通路となるブリーザパイプ12がいずれも車体の左側(図1,2の手前側)に配管されて、前記リヤクロスメンバー5の下方を前後方向に延びている。一方、車体右側においては該リヤクロスメンバー5の下方を排気管13が通っている。
また、この実施形態では、自動車のリヤサスペンションはいわゆるトーションビームアクスル式のものであり、丸パイプからなる左右のトレーリングアーム15(図1、2に車体左側のみ示す)同士を連結する略U字状断面のトーションビーム16が、図2や図3に示すように前記リヤクロスメンバー5の下方に重なるようにして、所定間隔(サスペンションのフルボトム時にもトーションビーム16がリヤクロスメンバー5と接触しないような間隔)を空けて配置されている。尚、図1の符号17,17は、それぞれ下端部が前記トレーリングアーム15に連結されているショックアブソーバを示す。
この実施形態に係る車体後部構造Aの特徴は、前記の如く中細り形状とされたリヤクロスメンバー5の構造にある。すなわち、この実施形態に係る自動車は、その運動性能の向上のために車体のリヤオーバーハングを短縮してヨーモーメントを低減するようにしており、これに伴い車体前方寄りに配置されるスペアタイヤパン3aとの干渉を避けるべく、概ね該スペアタイヤパン3aの車幅方向範囲に相当する部位において、リヤクロスメンバー5の車体後側が隣接するスペアタイヤパン3aの前端側を取り囲むように凹陥されている。
言い換えると、図3(a)に示すように車体フロアを上方から見て、リヤクロスメンバー5は、その中間部位がスペアタイヤパン3aの前端部に隣接して略直線的に車体左右に延びていて、その両端部から車体左右の各リヤサイドフレーム4,4に向かって徐々に幅が拡大するような形状とされている。このことで、リヤクロスメンバー5と各リヤサイドフレーム4,4との結合部位においてそれぞれフランジ部5aを含めた車体後端部位同士を直線(仮想線)で結ぶと、この仮想線Lは前記スペアタイヤパン3aと交差することになる。
ところで、一般に、自動車のフロアにおいて左右のサイドメンバー同士を連結するクロスメンバーは、操縦安定性に影響の大きい車体捻り剛性の確保に大きく寄与するものであり、特にリヤクロスメンバーはリヤサスペンションからの入力を直接的に受けることから、操縦安定性及び乗り心地への影響が極めて強い。また、リヤクロスメンバーは、車体側面への衝突時に車室の変形を抑えて乗員のための空間を確保するという極めて重要な役割も担っている。
従って、前記のようにリヤクロスメンバー5を中間部の細い中細りの形状とした場合、その中間部位における閉断面積の減少によってクロスメンバー5自体の曲げ・捻り剛性が低下し、これにより車体の捻り剛性が低下してしまい、操縦安定性や乗り心地が損なわれるとともに、そのように細くなっている中間部位で座屈耐力が低下することから、側突時にクロスメンバー5が折れ曲がり易くなって、安全性も低下する虞れがある。
このような問題に対して、クロスメンバー5の断面の寸法を上下方向に大きくして、これにより強度や剛性を確保することも考えられるが、この実施形態では、上述したようにリヤクロスメンバー5の下方には車体の左右両側にてそれぞれ燃料系統の配管11,12及び排気管13がレイアウトされており、さらに、リヤサスペンションのトーションビーム16との干渉も避けなくてはならないから、リヤクロスメンバー5の寸法を上下方向に拡大する余裕は殆どない。
また、単純にリヤクロスメンバー5の鋼板の厚みを大きくすることも考えられなくはないが、この場合には、板厚を大きくした分、リヤクロスメンバー5が重くなってしまい、自動車の運動性能向上という所期の目的との間に矛盾を生じることになる。
そこで、この実施形態では、前記のように中細りの形状となるリヤクロスメンバー5の構造に工夫を凝らして、重量の増大を殆ど招くことなく、その剛性や強度を確保するようにした。すなわち、図4に示すように、前記リヤクロスメンバー5は、スペアタイヤパン3aの前端部に対応して車幅方向の中央部寄りに位置する中間部材51と、その左右両端部からそれぞれ車体左右の各リヤサイドフレーム4,4まで延びる左側及び右側部材52,53との3つに分割されている。
前記中間部材51は、高張力鋼板をプレス成形したもので、それぞれ車幅方向に延びる前面部51a、後面部51b及び底面部51cの3つの壁部を備えて、上方に開口するハット状の略一定の断面形状を有しており、その前面部51a及び後面部51bの上端からそれぞれ前側及び後側に折り曲げられて、スポット溶接などによりリヤフロアパネル3に接合されるフランジ部51d,51d(リヤクロスメンバー5のフランジ部5aの一部を構成する)が形成されている。この中間部材51は、リヤクロスメンバー5の中では最も幅が狭く、スペアタイヤパン3aの前端部に隣接して左右に略直線的に延びるように配置される。
そのように高張力鋼板によって形成したことで、前記中間部材51は、通常の軟鋼材などにより形成したものに比べて大幅に破壊強度が高くなり、また重量増を招くことなく剛性も高くすることができるから、中細りのリヤクロスメンバー5の中央部位における剛性の低下を抑えることができるとともに、その座屈耐力を高めて側突時の車室の変形をリヤクロスメンバー5により十分に抑制することができる。しかも、略直線的に延びる形状としたことで、高張力鋼板であっても比較的容易にプレス成形することができる。
一方、前記左側部材52及び右側部材53は、いずれも前記中間部材51よりも成形の容易な例えば軟鋼板などをプレス成形してなり、それぞれ車幅方向に延びる前面部52a,53a、後面部52b,53b及び底面部52c,53cの3つの壁部を備えて上方に開口するハット状の断面形状を有するものであるが、その断面積は、前記中間部材51aの左右両端部に接続される車体内方の端部から左右の各リヤサイドフレーム4,4,に接続される車体外方の端部に向かって徐々に大きくなっている。
また、前記中間部材51の左右両端部に各々接続される左側部材52及び右側部材53の車体内方端には、該各部材52,53の前面部52a,53a、後面部52b,53b及び底面部52c,53cに亘って、ハット状断面を閉塞するようにリブ52e,53eが一体成形されている。このことで、断面積が前記中間部材51と同様に小さくなってしまう左側及び右側部材52,53の車体内方の端部断面が、そこに一体成形されたリブ52e,53eによって塞がれて効果的に補強される。
さらに、前記左側部材52及び右側部材53には、各々、前面部52a,53a及び後面部52b,53bの上端からそれぞれ前側及び後側に折り曲げられて、リヤフロアパネル3に接合されるフランジ部52d,52d,53d,53d(リヤクロスメンバー5のフランジ部5aの一部を構成する)が形成されるとともに、前記リブ52e,53eの上端から車体内方に折り曲げられてそれぞれ前記中間部材51に覆われた状態でリヤフロアパネル3に接合されるインナーフランジ部52f,53fが設けられている。
そして、そのようにインナーフランジ部52f,53fがリヤフロアパネル3に接合されることにより、前記の如くリブ52e,53eによって効果的に補強された左側及び右側部材52,53の車体内方の端部における車体フロアとの接合強度も高くなり、前記リブ52e,53eによる補強とも相俟って、断面積の小さな車体内方の端部における左側及び右側部材52,53の剛性及び強度が十分に高くなる。
したがって、上述の如き構造のリヤクロスメンバー5を用いた、この実施形態の車体後部構造Aによると、リヤフロアパネル3の下面に接合させるリヤクロスメンバー5をその中央付近において幅の狭い中細りの形状とし、その幅狭の部分に後側から隣接するようにしてスペアタイヤパン3aをレイアウトしたことで、このスペアタイヤパン3aが比較的大きな場合でも、これを車体前側寄りにレイアウトして、車体のリヤオーバーハングを短縮することができる。
また、そのように中細りとなって断面積の小さくなるリヤクロスメンバー5の中央付近を別部材(中間部材51)として、これを高張力鋼により形成したことで、リヤクロスメンバー5中細り形状に起因する車体剛性の低下を抑制するとともに、側突時の安全性を十分に確保することができる。
こうして自動車の車体リヤオーバーハングの短縮やタイヤ・ホイールの大径化に対応しつつ、車体の強度及び剛性を十分に確保することができる。
(実施形態2)
図5は、本発明の実施形態2に係るリヤクロスメンバー6の概略構造を示す。この実施形態2の車体後部構造Aは、前記リヤクロスメンバー6の構造以外は前記実施形態1のものと同じなので、以下、同一部材には同一の符号を付してその説明は省略する。そして、この実施形態2のものでは、前記実施形態1のリヤクロスメンバー5のようにスペアタイヤパン3aとの隣接部位で幅を狭めるのではなく、長手方向に略一定の幅としながら、スペアタイヤパン3aの前側に隣接するフランジ部を、平面視で該スペアタイヤパン3aの前端側を取り囲むように切り欠いたものである。
この結果として、図示しないが、この実施形態2においても前記実施形態1と同様に、平面視でリヤクロスメンバー6と各リヤサイドフレーム4,4との結合部位においてそれぞれフランジ部を含めた車体後端部位同士を結んだ仮想線は、スペアタイヤパン3aと交差することになる。
より具体的に、同図に示すように、この実施形態のリヤクロスメンバー6は、前記実施形態1のものとは異なり長手方向に略一定の断面形状を有する一方、実施形態1のものと同様に左右方向の中間部61とその左右両側の左側部62及び右側部63とに分かれており、その中間部61が高張力鋼板のプレス加工により形成されて単独で第1部材61を構成し、また、左側部62及び右側部63は両者を繋ぐブリッジ部64とともに例えば軟鋼板のプレス加工により一体成型されて、第2部材65を構成している。
前記第1部材61は、前記実施形態1の中間部材51と同様にそれぞれ車幅方向に延びる前面部61a、後面部61b及び底面部61cの3つの壁部を備えて、上方に開口する略一定のハット状断面を有しており、その前面部61a及び後面部61bの上端からそれぞれ前側及び後側に折り曲げられて、リヤフロアパネル3に接合されるフランジ部61d,61dが形成されている。この第1部材61の後側のフランジ部61dには、隣接するスペアタイヤパン3aの前端側(図には仮想線で示す)を平面視で取り囲むようにして、切り欠き61eが形成されている。
そのようにフランジ部61dを切り欠いたことで、その分、スペアタイヤパン3aを車体前側寄りに配置することができる。また、第1部材61を高張力鋼板により形成したことで、切り欠かき61eの形成に起因する剛性や強度の低下を抑制することができ、しかも、略直線的に延びる形状としたことで、高張力鋼板であっても比較的容易にプレス成形することができる。
一方、前記第2部材65の左側部62及び右側部63は、いずれも前記第1部材61と同様に前面部62a,63a、後面部62b,63b及び底面部62c,63cの3つの壁部を備え、その前面部62a,63a及び後面部62b,63bの上端がそれぞれ前側及び後側に折り曲げられて、リヤフロアパネル3に接合されるフランジ部62d,52d,63d,63dが形成されている。
また、前記左側部62及び右側部63の各底面部62c,63cにおける車体内方の端部には前記ブリッジ部64の左右両端部が連続していて、このブリッジ部64は、前記左側部62及び右側部63と連続する部位からそれぞれ車体内方の斜め上方に向かって延びる左右一対の傾斜面部64a,64aと、この各傾斜面部64a,64aの上端同士を連繋するように左右に延びる上面部64bとからなる。
そして、前記第2部材65の左右両側部62,63の各フランジ部62d,63dがそれぞれリヤフロアパネル3の下面の左右両側部位にスポット溶接などにより接合されるとともに、それらの中間の部位ではブリッジ部64の上面部64bも接合され、これにより前記第2部材65がリヤフロアパネル3に取り付けられる。また、そのブリッジ部64を下方から覆うようにして前記第1部材61がリヤフロアパネル3に下方から取り付けられる。この際、図示の如く、第1部材61のフランジ部61dは全体としてリヤフロアパネル3の下面に接合されるとともに、特に左右両端部においては前記第2部材65の左右両側部62,63のフランジ部62d,63dに下方から重ね合わされて接合される。
ここで、前記第1部材61の後側フランジ部61dには切り欠き61eが形成されていて、この切り欠き61eの形成部位ではリヤフロアパネル3との接合強度は得られないことになるが、その第1部材61と一体になる第2部材65のブリッジ部64が、ちょうど前記切り欠き61eの形成されている車幅方向範囲においてリヤフロアパネル3に接合されており、このことで、当該切り欠き61eの形成による接合強度の低下を補完することができる。
したがって、この実施形態2によれば、リヤクロスメンバー6の左右方向中間部位を構成する第1部材61の後側フランジ部61dを、スペアタイヤパン3aの前端側を取り囲むように切り欠いたことで、前記実施形態1と同様にスペアタイヤパン3aを車体前側寄りに配置することができ、これによりリヤオーバーハングの短縮が可能になる。
また、前記第1部材61を高張力鋼により形成して剛性及び強度を高めることができるとともに、この第1部材61のフランジ部61dが切り欠かれている範囲に対応付けて、第2部材65のブリッジ部64をリヤフロアパン3の下面に接合したので、フランジ部61dを切り欠いたことによるリヤクロスメンバー6とリヤフロアパネル3との接合強度の低下を補完して、車体の剛性や強度を十分に確保することができる。
(他の実施形態)
本発明の構成は、前記実施形態1、2のものに限定されることはなく、その他の種々の構成をも包含するものである。すなわち、例えば前記実施形態1のリヤクロスメンバー5においては、中細りの形状とすることでスペアタイヤパン3aとの干渉を回避するようにしており、その代わりにフランジ部5aは切り欠かないでリヤフロアパネル3との間の接合強度を確保するようにしているが、これに限らず、例えば前記実施形態2のもののようにリヤクロスメンバー5の中間部材51の後側フランジ部51dを切り欠くようにしてもよい。
こうすれば、フランジ部51dの切り欠きによってもスペアタイヤパン3aとの干渉を避けることができるので、その分は中間部材51の幅を広げて(断面積を大きくして)、剛性や強度を高めることができる。但し、フランジ部51dを切り欠けば、その分、リヤフロアパネル3との間の接合強度は低下することになるので、その点については前記実施形態2と同様に補強する必要がある
本発明の実施形態1に係る自動車の車体後部フロアの概略構造を示す斜視図。 リヤフロアパネルを取り除いてリヤクロスメンバーの配置を示す図1相当図。 リヤフロアパネルを取り除いてリヤクロスメンバーの配置を示す上面図(a)、及び側面図(b)。 リヤクロスメンバーの構造を示す斜視図。 実施形態2に係る図4相当図。
A 車体後部構造
3 リヤフロアパネル(車体後部フロア)
3a スペアタイヤパン(スペアタイヤ収納部)
4 リヤサイドフレーム
5 リヤクロスメンバー
5a フランジ部
51 中間部材
51d フランジ部
52 左側部材
52a 前面部
52b 後面部
52c 底面部
52d フランジ部
52e リブ
53 右側部材
53a 前面部
53b 後面部
53c 底面部
53d フランジ部
53e リブ
6 リヤクロスメンバー
61 第1部材
61d フランジ部
61e 切り欠き
62 第2部材の左側部
63 右側部
64 ブリッジ部
65 第2部材
L 仮想線

Claims (3)

  1. 車体後部フロアの下面の左右両側にそれぞれ前後方向に延びるサイドフレームが接合されているとともに、そのフロアから下方に膨出するスペアタイヤ収納部の前方で左右に延びるクロスメンバーの両端部がそれぞれ前記各サイドフレームに結合されており、且つ、該クロスメンバーが上開きのハット状断面を有していて、その上端に形成されたフランジ部が前記フロア下面に接合されている車体後部の構造であって、
    前記クロスメンバーの前方に隣接して燃料タンクが配設され、
    平面視で、前記クロスメンバーと各サイドフレームとの各結合部位におけるフランジ部を含めた車体後端部位同士を結んだ仮想線が、前記スペアタイヤ収納部と交差しており、
    前記クロスメンバーは、
    前記スペアタイヤ収納部の前側に隣接する部位の車両前後方向の寸法が、前記各サイドフレームとの各結合部位に比べて小さい、中細りの形状とされ、
    当該スペアタイヤ収納部の前側に隣接する部位が、高張力鋼により形成されて略直線的に左右に延びる中間部材によって構成される一方、
    該中間部材の左右両端部から前記左右の各サイドフレームまで延びる部位がそれぞれ、前記中間部材よりも破壊強度の低い鋼材により形成され、前記中間部材に連結される車体内方の端部から前記各サイドフレームに接続される車体外方の端部に向かって断面積が徐々に大きくなる左側及び右側部材によって構成されていることを特徴とする車体後部構造。
  2. 請求項1に記載の車体後部構造において、
    クロスメンバーの左側及び右側部材には、それぞれ、中間部材に結合される端部のハット状断面を閉塞するように当該各部材の前面部、後面部及び底面部に亘るリブが一体成形されていることを特徴とする車体後部構造。
  3. 車体後部フロアの下面の左右両側にそれぞれ前後方向に延びるサイドフレームが接合されているとともに、そのフロアから下方に膨出するスペアタイヤ収納部の前方で左右に延びるクロスメンバーの両端部がそれぞれ前記各サイドフレームに結合されており、且つ、該クロスメンバーが上開きのハット状断面を有していて、その上端に形成されたフランジ部が前記フロア下面に接合されている車体後部の構造であって、
    平面視で、前記クロスメンバーと各サイドフレームとの各結合部位におけるフランジ部を含めた車体後端部位同士を結んだ仮想線が、前記スペアタイヤ収納部と交差しており、 前記クロスメンバーが、
    高張力鋼により形成され、前記スペアタイヤ収納部の前側に隣接して略直線的に左右に延びるとともに、そのスペアタイヤ収納部の前端側を平面視で囲むように後側のフランジ部が切り欠かれた第1部材と、
    前記第1部材よりも破壊強度の低い鋼材によって、該第1部材の左右両端部から前記左右の各サイドフレームまでそれぞれ延びる左側及び右側部と、それらを連結するブリッジ部とが一体成形された第2部材と、を備え、
    前記ブリッジ部が、前記第1部材によって下方から覆われているとともに、この第1部材の後側フランジ部に前記切り欠きの形成されている車幅方向範囲において車体後部フロアの下面に接合されていることを特徴とする車体後部構造。
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