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JP4511328B2 - 電気二重層キャパシタ用非水電解液及びそれを備えた非水電解液電気二重層キャパシタ - Google Patents

電気二重層キャパシタ用非水電解液及びそれを備えた非水電解液電気二重層キャパシタ Download PDF

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Description

本発明は、電気二重層キャパシタ用非水電解液及びそれを備えた非水電解液電気二重層キャパシタに関し、特に安全性に優れた電気二重層キャパシタ用非水電解液及び非水電解液電気二重層キャパシタに関するものである。
電気二重層キャパシタは、電極と電解質との間に形成される電気二重層を利用したコンデンサであり、電極表面において電解質から電気的にイオンを吸着するサイクルが充放電サイクルである点で、物質移動を伴う酸化還元反応のサイクルが充放電サイクルである電池とは異なる。このため、電気二重層キャパシタは、電池と比較して瞬間充放電特性に優れ、化学反応を伴わないため、充放電を繰り返しても瞬間充放電特性が殆ど劣化しない。また、電気二重層キャパシタにおいては、充放電時に充放電過電圧がないため、簡単で且つ安価な電気回路で足りる。更に、残存容量が分かり易く、-30〜90℃の広範囲の温度条件下に渡って耐久温度特性を有し、無公害性である等、電池に比較して優れた点が多いため、近年地球環境に優しい新エネルギー貯蔵製品として脚光を浴びている。更に、電気二重層キャパシタは、上述のような特徴を有するため、電気自動車、燃料電池車やハイブリッド電気自動車のエネルギー回生やエンジン始動時の電源としても脚光を浴びるようになってきた。
上記電気二重層キャパシタは、正・負の電極と電解質とを有するエネルギー貯蔵デバイスであり、電極と電解質との接触界面においては、極めて短い距離を隔てて正・負の電荷が対向して配列し、電気二重層を形成している。従って、電解質は、電気二重層を形成するためのイオン源としての役割を担うため、電極と同様に、電気二重層キャパシタの基本特性を左右する重要な物質である。該電解質としては、従来、水系電解液、非水電解液及び固体電解質等が知られているが、電気二重層キャパシタのエネルギー密度を向上させる点から、高い作動電圧を設定可能な非水電解液が特に脚光を浴び、実用化が進んでいる。該非水電解液としては、例えば、炭酸カーボネート(炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、γ-ブチロラクトン等の高誘電率の非プロトン性有機溶媒に、(C25)4P・BF4や、(C25)4N・BF4等の溶質(支持塩)を溶解させた混合溶液が実用化されている。
しかしながら、上記非プロトン性有機溶媒は、引火点が低いため、例えば、電気二重層キャパシタが発熱等により発火した際に、引火する危険性が高い。また、該非プロトン性有機溶媒は、電気二重層キャパシタの発熱につれ、気化・分解してガスを発生したり、発生したガス及び熱により電気二重層キャパシタの破裂・発火を引き起こしたりする危険性も高い。
これに対して、電気二重層キャパシタ用の非水電解液にホスファゼン化合物を添加して、該非水電解液に不燃性、難燃性又は自己消火性を付与して、非常時に電気二重層キャパシタが発火・引火する危険性を大幅に低減した非水電解液電気二重層キャパシタが開発されている(特許文献1参照)。
特開2001−217152号公報
上記ホスファゼン化合物は、短絡等により非水電解液電気二重層キャパシタが非常に高温になった際に、熱分解して電解液中の非プロトン性有機溶媒の燃焼を抑制する物質を放出し、電気二重層キャパシタの安全性を改善できるものの、使用するホスファゼン化合物の分子構造によっては、燃焼抑制に寄与しない部分があるため、更に改良の余地がある。
そこで、本発明の目的は、燃焼抑制効果に優れた化合物を添加してなる、優れた安全性を有する電気二重層キャパシタ用非水電解液及び該非水電解液を備えた安全性の高い非水電解液電気二重層キャパシタを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ホスファゼン化合物を添加した非水電解液の熱分解生成物中に特に優れた燃焼抑制効果を有する化合物が存在し、該化合物を非水電解液に添加することで、非水電解液及び非水電解液電気二重層キャパシタの安全性を大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の電気二重層キャパシタ用非水電解液は、分子中にP−F結合及び/又はP−NH2結合を有するホスフィンオキサイド化合物と、支持塩とを含むことを特徴とする。
本発明の電気二重層キャパシタ用非水電解液の好適例においては、前記ホスフィンオキサイド化合物の含有率が3体積%以上であり、5体積%以上であるのが更に好ましい。
本発明の電気二重層キャパシタ用非水電解液の他の好適例においては、前記ホスフィンオキサイド化合物が下記式(I):
O=PR1 3 ・・・ (I)
(式中、R1は、それぞれ独立して一価の置換基又はハロゲン元素であり、少なくとも一つのR1はフッ素又はアミノ基である)で表される。ここで、式(I)中のR1が、それぞれ独立してフッ素、アミノ基、アルキル基及びアルコキシ基からなる群から選択され、且つ少なくとも一つのR1がフッ素又はアミノ基であるのが更に好ましい。また、式(I)中のR1の少なくとも一つがフッ素で、且つ式(I)中のR1の少なくとも一つがアミノ基であるホスフィンオキサイド化合物、並びに、式(I)中のR1の総てが、フッ素又はアミノ基であるホスフィンオキサイド化合物が特に好ましい。
本発明の電気二重層キャパシタ用非水電解液は、更に非プロトン性有機溶媒を含むのが好ましい。ここで、該非プロトン性有機溶媒としては、ニトリル化合物、環状及び鎖状のエステル化合物並びに鎖状のエーテル化合物が好ましい。
また、本発明の非水電解液電気二重層キャパシタは、上記電気二重層キャパシタ用非水電解液と、正極と、負極とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、分子中にP−F結合及び/又はP−NH2結合を有するホスフィンオキサイド化合物を含み、発火・引火の危険性が大幅に抑制された電気二重層キャパシタ用非水電解液を提供することができる。また、該非水電解液を備え、安全性が著しく改善された非水電解液電気二重層キャパシタを提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の電気二重層キャパシタ用非水電解液は、分子中にP−F結合及び/又はP−NH2結合を有するホスフィンオキサイド化合物と、支持塩とを含み、必要に応じて、非プロトン性有機溶媒等を含んでもよい。本発明者らが、フッ素含有ホスファゼン化合物と支持塩と非プロトン性有機溶媒とからなる非水電解液の800℃での熱分解生成物を調査したところ、分子中にP−F結合及び/又はP−NH2結合を有するホスフィンオキサイド化合物が、優れた燃焼抑制効果を有することを見出した。本発明の非水電解液電気二重層キャパシタの非水電解液には、かかるホスフィンオキサイド化合物が含まれるため、非水電解液及び該非水電解液を備えた電気二重層キャパシタの発火・引火の危険性が大幅に抑制されている。
本発明の電気二重層キャパシタ用非水電解液に用いられるホスフィンオキサイド化合物は、分子中にP−F結合及び/又はP−NH2結合を有する限り特に制限はない。かかるホスフィンオキサイド化合物の中でも、上記式(I)で表されるホスフィンオキサイド化合物が好ましい。式(I)において、R1は、それぞれ独立して一価の置換基又はハロゲン元素であり、少なくとも一つのR1はフッ素又はアミノ基である。ここで、ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられ、これらの中でも、フッ素が特に好ましい。一方、一価の置換基としては、アミノ基、アルコキシ基、アルキル基、カルボキシル基、アシル基、アリール基等が挙げられ、これらの中でも、電解液の発火・引火の危険性を低減する効果に優れる点で、アミノ基及びアルコキシ基が好ましい。また、上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、プロポキシ基、フェノキシ基等が挙げられ、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、上記アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等が挙げられ、上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。これら一価の置換基中の水素元素は、ハロゲン元素で置換されているのが好ましく、ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられ、フッ素が最も好ましく、次いで、塩素が好ましい。
上記ホスフィンオキサイド化合物は、分子中の10質量%以上がハロゲン元素であるのが好ましく、分子中の15質量%以上がハロゲン元素であるのが更に好ましい。また、該ホスフィンオキサイド化合物は、分子中の7質量%以上がフッ素であるのが好ましく、分子中の10質量%以上がフッ素であるのが更に好ましい。分子中の10質量%以上がハロゲン元素であるホスフィンオキサイド化合物は、非水電解液の燃焼を抑制する効果に優れ、分子中の7質量%以上がフッ素であるホスフィンオキサイド化合物は、非水電解液の燃焼を抑制する効果に特に優れる。
上記ホスフィンオキサイド化合物としては、式(I)中のR1の少なくとも一つがフッ素で、且つ式(I)中のR1の少なくとも一つがアミノ基であるホスフィンオキサイド化合物、並びに、前記式(I)中のR1の総てがフッ素又はアミノ基であるホスフィンオキサイド化合物が特に好ましい。これらホスフィンオキサイド化合物は、電解液の燃焼抑制に寄与するフッ素及びアミノ基の分子中に占める割合が高いため、優れた燃焼抑制効果を有する。
上記式(I)のホスフィンオキサイド化合物として、具体的には、トリフルオロホスフィンオキサイド[O=PF3]、トリアミノホスフィンオキサイド[O=P(NH2)3]、アミノジフルオロホスフィンオキサイド[O=PF2NH2]、ジアミノフルオロホスフィンオキサイド[O=PF(NH2)2]、ジメトキシフルオロホスフィンオキサイド[O=PF(OCH3)2]、エトキシジフルオロホスフィンオキサイド[O=PF2(OC25)]、メトキシジフルオロホスフィンオキサイド[O=PF2(OCH3)]、ジエトキシフルオロホスフィンオキサイド[O=PF(OC25)2]等が挙げられる。
上記ホスフィンオキサイド化合物の非水電解液中における含有率は、3体積%以上であるのが好ましく、5体積%以上であるのが更に好ましい。上記ホスフィンオキサイド化合物の非水電解液中における含有率が3体積%以上であれば、非水電解液の発火・引火の危険性を充分に抑制することができる。なお、上記ホスフィンオキサイド化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
本発明の電気二重層キャパシタ用非水電解液に用いられる支持塩としては、従来公知のものから選択できるが、電解液における電気伝導性等が良好な点で、四級アンモニウム塩が好ましい。該四級アンモニウム塩は、非水電解液において、電気二重層を形成するためのイオン源としての役割を担う溶質であり、電解液の電気伝導性等の電気特性を効果的に向上させることが可能な点で、多価イオンを形成し得る四級アンモニウム塩が好ましい。
上記四級アンモニウム塩としては、例えば、(CH3)4N・BF4、(CH3)325N・BF4、(CH3)2(C25)2N・BF4、CH3(C25)3N・BF4、(C25)4N・BF4、(C37)4N・BF4、CH3(C49)3N・BF4、(C49)4N・BF4、(C613)4N・BF4、(C25)4N・ClO4、(C25)4N・AsF6、(C25)4N・SbF6、(C25)4N・CF3SO3、(C25)4N・C49SO3、(C25)4N・(CF3SO2)2N、(C25)4N・BCH3(C25)3、(C25)4N・B(C25)4、(C25)4N・B(C49)4、(C25)4N・B(C65)4等が好適に挙げられる。また、これらの四級アンモニウム塩の陰イオン部(例えば、・BF4、・ClO4、・AsF6等)を、・PF6で置き換えたヘキサフルオロリン酸塩も好ましい。これらの中でも、分極率を大きくすることで溶解度を向上させることができる点で、異なるアルキル基がN原子に結合した四級アンモニウム塩が好ましい。更に、上記四級アンモニウム塩としては、例えば、以下の式(a)〜(j)で表わされる化合物等も好ましい。ここで、式(a)〜(j)において、Meはメチル基を、Etはエチル基を表わす。
Figure 0004511328
これらの四級アンモニウム塩の中でも、特に、高い電気伝導性を確保する点からは、陽イオンとして(CH3)4+や、(C25)4+等を発生し得る塩が好ましい。また、式量が小さい陰イオンを発生し得る塩が好ましい。これらの四級アンモニウム塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の電気二重層キャパシタ用非水電解液中の支持塩の濃度としては、0.2〜2.5mol/L(M)が好ましく、0.8〜1.5mol/L(M)が更に好ましい。支持塩の濃度が0.2mol/L(M)未満では、電解液の電気伝導性等の電気特性を充分に確保できないことがあり、2.5mol/L(M)を超えると、電解液の粘度が上昇し、電気伝導性等の電気特性が低下することがある。
本発明の非水電解液に用いることができる非プロトン性有機溶媒は、電解液の低粘度化が可能であり、容易に電気二重層キャパシタとしての最適なイオン導電性を達成することができる。該非プロトン性有機溶媒として、具体的には、アセトニトリル(AN)、プロピオノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物;1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル化合物;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジフェニルカーボネート、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン等のエステル化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン及びアセトニトリルが好ましい。なお、環状のエステル化合物は、比誘電率が高く支持塩の溶解能に優れる点で、また、鎖状のエステル化合物及びエーテル化合物は、低粘度であるため電解液の低粘度化の点で好適である。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
<非水電解液電気二重層キャパシタ>
次に、本発明の非水電解液電気二重層キャパシタを詳細に説明する。本発明の非水電解液電気二重層キャパシタは、上述の電気二重層キャパシタ用非水電解液と、正極と、負極とを備え、必要に応じて、セパレーター等の電気二重層キャパシタの技術分野で通常使用されている他の部材を備える。
本発明の非水電解液電気二重層キャパシタの正極及び負極としては、特に制限はないが、通常、多孔質炭素系の分極性電極が好ましい。該電極としては、通常、比表面積及びかさ比重が大きく、電気化学的に不活性で、抵抗が小さい等の特性を有するものが好ましい。ここで、上記多孔質炭素としては、活性炭等が挙げられる。
上記電極は、一般的には、活性炭等の多孔質炭素を含有し、必要に応じて導電剤や結着剤等のその他の成分を含有する。上記電極に好適に用いることができる活性炭の原料としては、特に制限はなく、例えば、フェノール樹脂の他、各種の耐熱性樹脂、ピッチ等が好適に挙げられる。耐熱性樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ビスマレイミドトリアジン、アラミド、フッ素樹脂、ポリフェニレン、ポリフェニレンスルフィド等が好適に挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記活性炭の形態としては、より比表面積を高くして、非水電解液電気二重層キャパシタの充電容量を大きくする点から、粉末状、繊維布状等の形態が好ましい。また、これらの活性炭は、電気二重層キャパシタの充電容量をより高くする目的で、熱処理、延伸成形、真空高温処理、圧延等の処理がなされていてもよい。
上記電極に用いる導電剤としては、特に制限はないが、黒鉛、アセチレンブラック等が挙げられる。また、上記電極に用いる結着剤としては、特に制限はないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。これらの添加剤は、従来と同様の配合割合で用いることができる。
本発明の非水電解液電気二重層キャパシタは、上述した電極(正極及び負極)、非水電解液の他、セパレーター、集電体、容器等を備えるのが好ましく、更に通常電気二重層キャパシタに使用されている公知の各部材を備えることができる。ここで、セパレーターは、非水電解液電気二重層キャパシタの短絡防止等を目的として、正負電極間に介在される。該セパレーターとしては、特に制限はなく、通常、非水電解液電気二重層キャパシタのセパレーターとして用いられる公知のセパレーターが好適に用いられる。セパレーターの材質としては、例えば、微多孔性フィルム、不織布、紙等が好適に挙げられる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製の不織布、薄層フィルム等が好適に挙げられる。これらの中でも、厚さ20〜50μm程度のポリプロピレン又はポリエチレン製の微孔性フィルムが特に好適である。
上記集電体としては、特に制限はなく、通常非水電解液電気二重層キャパシタの集電体として用いられる公知のものが好適に用いられる。該集電体としては、電気化学的耐食性、化学的耐食性、加工性、機械的強度に優れ、低コストであるものが好ましく、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、導電性樹脂等の集電体層等が好ましい。また、上記容器としては、特に制限はなく、通常非水電解液電気二重層キャパシタの容器として用いられる公知のものが好適に挙げられる。該容器の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、導電性樹脂等が好適である。
本発明の非水電解液電気二重層キャパシタの形態としては、特に制限はなく、シリンダ型(円筒型、角型)、フラット型(コイン型)等の公知の形態が、好適に挙げられる。これらの非水電解液電気二重層キャパシタは、例えば、電気自動車や燃料電池自動車の主電源若しくは補助電源や、種々の電子機器、産業用機器、航空用機器等のメモリーバックアップ用や、玩具、コードレス用機器、ガス機器、瞬間湯沸し機器等の電磁ホールド用や、腕時計、柱時計、ソーラ時計、AGS腕時計等の時計用の電源等として好適に用いられる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(非水電解液の熱分解生成物と限界酸素指数との関係)
プロピレンカーボネート(PC)90体積%及び下記式(II):
(NPR2 23 ・・・ (II)
で表され、6つのR2中、1つがエトキシ基で、5つがフッ素の環状ホスファゼン化合物A[25℃における粘度:1.2mPa・s]10体積%からなる混合溶液に、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート[Et4N・BF4](支持塩)を1mol/L(M)になるように溶解させ、非水電解液Aを調製した。
また、環状ホスファゼン化合物Aに代えて、環状ホスファゼン化合物B[式(II)において、6つのR2のうち2つがエトキシ基で、4つがフッ素である環状ホスファゼン化合物25℃における粘度:1.2mPa・s]を用いて非水電解液Bを調製し、環状ホスファゼン化合物Aに代えて、環状ホスファゼン化合物C[式(II)において、6つのR2のうち1つがフェノキシ基(PhO−)で、5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物、25℃における粘度:1.7mPa・s(1.7cP)]を用いて非水電解液Cを調製した。
更に、γ-ブチロラクトン(GBL)に、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート[Et4N・BF4](支持塩)を1mol/L(M)になるように溶解させ、非水電解液Dを調製した。
上記非水電解液A〜Dに対して、下記の方法で限界酸素指数を測定し、更に、800℃で熱分解させ、各熱分解生成物をGC-MSで分析した。なお、各熱分解生成物の発生量は、非水電解液Aを熱分解した際に発生したO=PF3のGCのピーク高さを100として指数化した。結果を表1に示す。
(1)電解液の限界酸素指数
JIS K 7201に準じて、電解液の限界酸素指数を測定した。限界酸素指数が大きい程、電解液が燃焼し難いことを示す。具体的には、SiO2シート(石英濾紙、不燃性)127mm×12.7mmをU字型のアルミ箔で補強して自立可能とし、該SiO2シートに前記電解液1.0mLを含浸して試験片を作製した。該試験片を試験片支持具に垂直に、燃焼円筒(内径75mm、高さ450mm、直径4mmのガラス粒を底部から100±5mmの厚さに均等に満たし金属製の網をその上に置いたもの)の上端部から100mm以上の距離に位置するように取り付け、次に、燃焼円筒に酸素(JIS K 1101又はこれと同等以上のもの)及び窒素(JIS K 1107の2級又はこれと同等以上のもの)を流し、試験片を所定の条件下で点火し(熱源はJIS K 2240の1種1号)、燃焼状態を調べた。但し、燃焼円筒内の総流量は11.4L/minである。この試験を3回行い、その平均値を表2に示す。なお、酸素指数とは、材料が燃焼を持続するのに必要な容量パーセントで表される最低酸素濃度の値をいい、本願では、試験片が3分以上継続して燃焼するか、着炎後の燃焼長さが50mm以上燃えるのに必要な最低の酸素流量とそのときの窒素流量から、下記の式:
限界酸素指数=(酸素流量)/[(酸素流量)+(窒素流量)]×100(体積%)
に従って限界酸素指数を算出した。
次に、上記各熱分解生成物の発生量(指数)と各非水電解液の限界酸素指数(体積%)との相関係数を算出し、表1に示す結果を得た。なお、相関係数の値が大きい程、熱分解生成物の発生量と非水電解液の限界酸素指数との正の相関が強く、即ち、燃え難いことを意味する。
Figure 0004511328
表1から、熱分解生成物中のO=PF2(OCH3)、O=PF(OCH3)2、O=PF2NH2の発生量と非水電解液の限界酸素指数との正の相関が強く、これらのホスフィンオキサイド化合物が電解液の燃焼抑制に寄与していることが分る。
(比較例1及び実施例1〜3)
次に、上記熱分解生成物又は環状ホスファゼン化合物A 10体積%と、プロピレンカーボネート(PC)90体積%とを混合し、更に、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート[Et4N・BF4](支持塩)を1mol/Lになるように溶解させて非水電解液を調製した。得られた非水電解液の限界酸素指数を上記の方法で測定し、表2に示す結果を得た。
次に、活性炭[AC, 商品名:Kuractive-1500、クラレケミカル社製]、アセチレンブラック(導電剤)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)(結着剤)を、それぞれ、質量比(活性炭:アセチレンブラック:PVDF)で8:1:1となるように混合して、混合物を得た。得られた混合物の100mgを採取し、これを20mmφの耐圧カーボン製容器に入れて、圧力150kgf/cm2、常温の条件下で圧粉成形し、正極及び負極(電極)を作製した。得られた電極(正極及び負極)と、アルミニウム金属板(集電体)(厚み:0.5mm)と、ポリプロピレン/ポリエチレン板(セパレーター)(厚み:25μm)とを用いてセルを組み立て、真空乾燥によって十分に乾燥させた。該セルを上記非水電解液で含浸し、非水電解液電気二重層キャパシタを作製した。得られた電気二重層キャパシタのサイクル特性及び低温特性を下記の方法で試験した。結果を表2に示す。
(2)電気二重層キャパシタのサイクル特性
得られた非水電解液電気二重層キャパシタについて、20℃において初期及び1000サイクル充電・放電後の放電容量を測定して、初期における放電容量と1000サイクル後の放電容量とから、下記の式:
容量維持率S=1000サイクル後の放電容量/初期放電容量×100(%)
に従って容量維持率Sを算出し、キャパシタのサイクル特性の指標とした。
(3)電気二重層キャパシタの低温特性
得られた非水電解液電気二重層キャパシタについて、20℃、-20℃のそれぞれの環境下で1000サイクル充電・放電後の放電容量を測定した。20℃における1000サイクル後の放電容量と、-20℃における1000サイクル後の放電容量とから、下記の式:
容量維持率L=放電容量(-20℃)/放電容量(20℃)×100(%)
に従って容量維持率Lを算出し、キャパシタの低温特性の指標とした。
Figure 0004511328
表2に示すように、分子中にP−F結合及び/又はP−NH2結合を有するホスフィンオキサイド化合物を電解液に添加することにより、非水電解液の限界酸素指数を向上させることができ、非水電解液の安全性を改善できることが確認された。

Claims (10)

  1. 分子中にP−F結合及び/又はP−NH2結合を有するホスフィンオキサイド化合物と、支持塩とを含むことを特徴とする電気二重層キャパシタ用非水電解液。
  2. 前記ホスフィンオキサイド化合物の含有率が3体積%以上であることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用非水電解液。
  3. 前記ホスフィンオキサイド化合物の含有率が5体積%以上であることを特徴とする請求項2に記載の電気二重層キャパシタ用非水電解液。
  4. 前記ホスフィンオキサイド化合物が下記式(I):
    O=PR1 3 ・・・ (I)
    (式中、R1は、それぞれ独立して一価の置換基又はハロゲン元素であり、少なくとも一つのR1はフッ素又はアミノ基である)で表されることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用非水電解液。
  5. 前記式(I)中のR1が、それぞれ独立してフッ素、アミノ基、アルキル基及びアルコキシ基からなる群から選択され、且つ少なくとも一つのR1がフッ素又はアミノ基であることを特徴とする請求項4に記載の電気二重層キャパシタ用非水電解液。
  6. 前記式(I)中のR1の少なくとも一つがフッ素で、且つ式(I)中のR1の少なくとも一つがアミノ基であることを特徴とする請求項5に記載の電気二重層キャパシタ用非水電解液。
  7. 前記式(I)中のR1が、それぞれ独立してフッ素又はアミノ基であることを特徴とする請求項5に記載の電気二重層キャパシタ用非水電解液。
  8. 更に非プロトン性有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用非水電解液。
  9. 前記非プロトン性有機溶媒が、ニトリル化合物、環状若しくは鎖状のエステル化合物又は鎖状のエーテル化合物を含むことを特徴とする請求項8に記載の電気二重層キャパシタ用非水電解液。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ用非水電解液と、正極と、負極とを備えた非水電解液電気二重層キャパシタ。
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