JP4503209B2 - 非水電解質電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解質電池に関するもので、特に、非水電解質電池の負極活物質及び非水電解質の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、非水電解質電池、特にリチウム二次電池は、携帯電話,PHS(簡易携帯電話),小型コンピューター等の携帯機器類用電源、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源として注目されている。
【0003】
リチウム二次電池は、一般に、正極活物質を主要構成成分とする正極と、負極活物質を主要構成成分とする負極と、非水電解質とから構成される。
【0004】
リチウム二次電池を構成する正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物が、負極活物質としては、グラファイトに代表される炭素材料が、非水電解質としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等の電解質がエチレンカーボネートを主構成成分とする非水溶媒に溶解されたものが広く知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エチレンカーボネートは融点が高く、低温で電解液が凝固し易い。そのため、エチレンカーボネートに代えて、より融点の低いプロピレンカーボネートを電解液の非水溶媒として使用する方法が知られているが、充電時、とりわけ初充電時にプロピレンカーボネートが炭素材料上で分解するため、電池性能が充分に得られないという問題があった。
【0006】
この問題を解決する手段として、特開平10−97870号公報には、菱面体晶系構造を有するグラファイトを用いることで層面剥離を抑制し、プロピレンカーボネート含有電解液を用いた電池系で不可逆容量を低減する技術が記載されている。また、Simon,B;Flandrois.S;Fevrier-Bouvier,A;Biensan,P.Hexagonal vs Rhombohedral Graphite : The Effect of Crystal Structure on the Electrochemical Intercalation on Lithium Ion.Mol.Cryst.Liq.Cryst.vol.310,1998,p.333-340.には、上記効果に加え、グラファイト中に菱面体構造を数%〜数十%の任意の比率で含む炭素質材料を得る方法が記載されている。しかしながら、これらの技術は、前記不可逆容量を低減させる効果はあるが、リチウム二次電池の低温性能を改善するものではない、という問題点があった。
【0007】
一方、特開平11−111297号公報には、電解液の分解を起こさないためには、グラファイト化物の結晶構造に菱面体晶系を有する結晶が30%以上にならないようにする必要があることが記載されている。また、電解液に用いる溶媒としては、第1溶媒としてエチレンカーボネートと、第2溶媒として一般的に知られている溶媒、例えばジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)などの二重結合を持たないカーボネートが挙げられ、前記第1溶媒と第2溶媒とを混合して用いることが記載されている。
【0008】
さらに、特開平11−283667号公報には、グラファイト系炭素材料でプロピレンカーボネートの分解を起こさないために、ビニレンカーボネートと併用して用いることが記載されている。また、ビニレンカーボネートの添加量としては、5%以上必要であることが記載されている。添加量が5%未満であると電池容量の低下を招くという理由によるものである。すなわち、初充電時にビニレンカーボネートが炭素材料上で分解することにより、炭素材料表面にリチウムイオン透過性の保護被膜を形成するため、プロピレンカーボネートの分解が抑制され、高い低温特性と高いエネルギー密度とを有する非水電解質電池が得られるとされている。しかしながら、ビニレンカーボネートは耐酸化性に劣り、正極上で分解するため、多量に添加すると電池性能を劣化させるという問題があった。
【0009】
また、難燃性溶媒を使用した非水電解質が提案されている。例えば、特開平8−22839号公報などには、非水電解質にリン酸エステルを使用する技術が、特開平7−6786号公報などには、ハロゲン化鎖状カーボネート、特にフッ素化鎖状カーボネートを使用する技術が、特開平10−247519号公報などには、ハロゲン化環状カーボネート、特にフッ素化環状カーボネートを使用する技術が開示されている。これらの化合物のうち、特にフッ素化合物は、電気化学的安定性に優れ、かつ、引火点が高い性質を有しているとされている。さらに、これらの化合物も、電極と非水電解質との界面に保護皮膜を形成するとされている。しかしながら、これらの化合物は、一般的な非水電解質を構成する有機溶媒に比較して非常にコスト高であり、主溶媒として大量に使用するのは現実的ではないという問題があった。
【0010】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、充放電効率が高く、優れた低温性能と高いエネルギー密度を有する非水電解質電池を容易に提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは、鋭意検討の結果、負極活物質に、菱面体晶系構造を含有する炭素材料を用い、さらに非水電解質を構成する非水溶媒を特定のものとすることにより、驚くべきことに、充放電効率が高く、高いエネルギー密度を有する非水電解質電池が得られることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の技術的構成及びその作用効果は以下の通りである。ただし、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。
【0012】
請求項1記載の発明は、非水電解質と、炭素材料を主要構成成分として作製した負極と、正極と、を少なくとも用いて組み立てたプロピレンカーボネートを含有する非水電解質電池において、前記炭素材料は、菱面体晶系構造のグラファイト(以下、「菱面体晶系構造物」という。)を5%以上含むグラファイト(以下、「炭素材料」ということもある。)を主要構成成分とし、且つ、前記非水電解質は、(化学式1)、(化学式2)、(化学式3)又は(化学式4)で示されるいずれかのフッ化物(以下、「特定の構造を有するフッ化物」という。)を非水電解質の全重量に対して0.10重量%〜15重量%含有していることを特徴とする非水電解質電池である。
【0013】
【化5】
【0014】
【化6】
【0015】
【化7】
【0016】
【化8】
【0017】
(但し、(化学式1)、(化学式2)、(化学式3)及び(化学式4)のそれぞれにおいて、R1,R2は少なくとも一方がフッ素原子を1個以上含む官能基又はフッ素原子であって、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、あるいは互いに結合して環を形成していてもよい)
請求項1記載の発明によれば、非水電解質中に上記したような特定の構造を有するフッ化物を含有することにより、初充電時に、フッ化物がグラファイト上で分解し、グラファイト表面にリチウムイオン透過性の保護被膜を形成するため、非水電解液を構成するプロピレンカーボネートその他の有機溶媒の分解を抑制できるので、2サイクル目以降の充放電を充分に行うことができ、充放電効率を向上させることができる。その上、フッ化物は、フッ素化されているため耐酸化性が高く、正極上での酸化分解がほとんど起こらず、過剰に添加しても電池性能を劣化させることはない。よって、充放電効率が高く、高いエネルギー密度を有する非水電解質電池とすることができる。
【0018】
ここで、グラファイトが菱面体晶系構造物を5%以上含むことにより、上記効果が極めて顕著に発揮される。すなわち、グラファイトの最も一般的な構造は六方晶系構造であり、炭素網面はA層に対して近接するB層がずれたABAB型積層構造をとっている。一方、熱力学的に準安定なもう一つの状態として菱面体晶系構造があり、ABCABC型積層構造をとっている。例えば、六方晶系構造のみからなるグラファイトを負極に用い、非水電解質の主たる溶媒にプロピレンカーボネートを用いた場合には、リチウムイオンが電気化学的にインターカレーションする際に形成されるSEI(Solid Electrolyte Interface)層が十分に形成されないため、不可逆容量が非常に大きく電池性能が良好ではないが、菱面体晶系構造を含むグラファイトを負極に用いた場合には、特に非水電解質の溶媒としてプロピレンカーボネートより先に還元分解される構造を有するフッ化物を含有させると、不可逆容量を大きく低減させる効果が見られる。フッ化物は還元によって分解され、特に活性な菱面体晶系構造のグラファイト表面に保護皮膜(SEI)が形成されるので、プロピレンカーボネートその他の溶媒の還元分解を防ぎ、不可逆容量を大きく低減させる効果があると考えられる。
【0019】
請求項2記載の発明は、前記非水電解液は、環状カーボネートのフッ化物又は鎖状カーボネートのフッ化物を含有していることを特徴とする非水電解質電池である。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、非水電解質中に環状カーボネートのフッ化物又は鎖状カーボネートのフッ化物を含有することにより、初充電時に、環状カーボネートのフッ化物又は鎖状カーボネートのフッ化物が炭素材料上で分解し、炭素材料表面にリチウムイオン透過性の保護被膜を形成するため、非水電解液を構成するその他の有機溶媒の分解を抑制できるので、2サイクル目以降の充放電を充分に行うことができ、充放電効率を向上させることができる。その上、環状カーボネートのフッ化物又は鎖状カーボネートのフッ化物は、フッ素化されているため耐酸化性が高く、正極上での酸化分解がほとんど起こらず、過剰に添加しても電池性能を劣化させることはない。よって、充放電効率が高く、高いエネルギー密度を有する非水電解質電池とすることができる。
【0021】
請求項3記載の発明は、前記非水電解液は、π結合を有する環状カーボネートを含有していることを特徴とする非水電解質電池である。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、特定の構造を有するフッ化物を含有し、且つ、π結合を有する環状カーボネートを両方含有する相乗効果により、いずれか単独で含有する場合に比較し、負極表面に形成されるリチウムイオン透過性の保護被膜が、緻密で、且つ、リチウムイオン透過性に優れたものとなるため、非水電解液を構成するその他の有機溶媒の分解をより効果的に抑制できる。特に、菱面体晶系構造を含むグラファイトを負極に用いた場合には、非水電解質中にπ結合を有するカーボネートを含有させると、不可逆容量を大きく低減させる効果が見られるが、さらに特定の構造を有するフッ化物を含有させることにより、比較的耐酸化性に劣り、過剰に添加すると電池性能を劣化させる要因となりうる、π結合を有する環状カーボネートの含有量を減らすことができる。
【0023】
請求項4記載の発明は、前記π結合を有する環状カーボネートは、ビニレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート及び1,2−ジフェニルビニレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする非水電解質電池である。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、非水電解質中に含有するπ結合を有する環状カーボネートを、ビニレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネートから選ばれる少なくとも1種とすることにより、初充電時に炭素材料表面に形成されるリチウムイオン透過性の保護被膜が、緻密で、且つ、リチウムイオン透過性に優れたものとなるため、非水電解液を構成するその他の有機溶媒の分解を効果的に抑制でき、2サイクル目以降の充放電を充分に行うことができ、充放電効率を向上させることができる。
【0025】
本発明は、前記非水電解質は、π結合を有さない環状カーボネートを含有していることを特徴とする非水電解質電池である。
【0026】
本発明によれば、非水電解質中にπ結合を有さない環状カーボネートを含有することにより、π結合を有さない環状カーボネートが、高沸点、高誘電率及び高耐酸化性を有するため、非水電解質のリチウムイオン伝導度を向上でき、さらに耐酸化性を向上できることから、上記効果が効果的に得られる。よって、充放電効率が高く、優れた低温性能と高いエネルギー密度を有する非水電解質電池とすることができる。
【0027】
本発明は、前記π結合を有さない環状カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする非水電解質電池である。
【0028】
本発明によれば、非水電解質中に含有するπ結合を有さない環状カーボネートを、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートから選ばれる少なくとも1種とすることにより、これら高誘電率を有し、耐酸化性に優れた有機溶媒の特性を生かすことができるため、上記効果がより効果的に得られる。
【0029】
本発明は外装体に金属樹脂複合フィルムを用いたことを特徴とする非水電解質電池である。
【0030】
本発明によれば、金属樹脂複合フィルムは、金属よりも軽く、また、薄形形状に容易に成形できるので、非水電解質電池の小形軽量化が可能である。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を例示するが、本発明は、これらの記述に限定されるものではない。
【0032】
本発明に係る非水電解質電池は、炭素材料を主要構成成分として塗布した負極と、正極活物質を主要構成成分として塗布した正極と、電解質塩を非水溶媒に溶解した非水電解質とから構成され、一般的には、負極と正極との間に、非水電解質電池用セパレータが設けられる。
【0033】
本発明に係る特定の構造を有するフッ化物は、(化学式1)、(化学式2)、(化学式3)又は(化学式4)のいずれかの構造を含むものである。
【0034】
ここで(化学式1)、(化学式2)、(化学式3)及び(化学式4)のそれぞれにおいて、R1及びR2は少なくとも一方がフッ素原子を含む官能基又はフッ素原子である。また、R1とR2は同じであっても異なっていてもよい。また、R1とR2とが互いに結合して環状構造を形成していてもよい。本明細書においてR1及びR2はC,H,O,Fのみからなる有機官能基である。フッ素原子を含む官能基の例としては、例えば、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基などの水素原子の少なくとも1個以上がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。なかでも、環状カーボネートのフッ化物又は鎖状カーボネートのフッ化物が好ましい。なお、フッ素原子置換数は特に限定されない。
【0035】
環状カーボネートのフッ化物は、(化学式5)に示される構造を有するものである。
【0036】
【化9】
【0037】
また、鎖状カーボネートのフッ化物は、(化学式6)に示される構造を有するものである。
【0038】
【化10】
【0039】
前記特定の構造を有するフッ化物は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0040】
前記特定の構造を有するフッ化物の含有量は、非水電解質の全重量に対して0.01重量%〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは0.10重量%〜15重量%である。フッ化物の含有量が、非水電解液の全重量に対して0.01重量%以上であることによって、初充電時における非水電解液を構成するその他の有機溶媒の分解をほぼ完全に抑制し、充電をより確実に行うことができる。また、20重量%以下であることによって、電解液の粘度が高くなりすぎないので、高率充放電時や低温下においても、充分な電池性能を発揮することができる。
【0041】
なお、本発明においては、π結合を有する環状カーボネートを含有することにより、本発明の効果が充分に発揮できるため好ましく、なかでも、ビニレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネートから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよいが、特に、ビニレンカーボネートを少なくとも含有することが好ましい。
【0042】
π結合を有する環状カーボネートの含有量は、非水電解質の全重量に対して0.01重量%〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.10重量%〜5重量%、さらに好ましくは0.10重量%〜2重量%である。π結合を有する環状カーボネートの含有量が、非水電解液の全重量に対して0.01重量%以上であることによって、初充電時における非水電解液を構成するその他の有機溶媒の分解をほぼ完全に抑制し、充電をより確実に行うことができる。また、10重量%以下であることによって、π結合を有する環状カーボネートが正極上で分解することによる電池性能の劣化がほとんど発生せず、充分な電池性能を発揮することができる。
【0043】
非水電解液を構成する有機溶媒は、一般に非水電解質電池用非水電解質に使用される有機溶媒が使用できる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、等の環状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状エステル;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート;酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル;テトラヒドロフラン又はその誘導体、1,3−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキサラン又はその誘導体;スルホラン、スルトン又はその誘導体等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
なお、本発明においては、非水電解質中に高誘電率を有するπ結合を有さない環状カーボネートを含有することにより、本発明の効果が充分に発揮できるため好ましく、なかでも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートから選ばれる少なくとも1種を含有することが、特に好ましい。
【0045】
電解質塩としては、例えば、LiClO4,LiBF4,LiAsF6,LiPF6,LiSCN,LiBr,LiI,Li2SO4,Li2B10Cl10,NaClO4,NaI,NaSCN,NaBr,KClO4,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)又はカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCF3SO3,LiN(CF3SO2)2,LiN(C2F5SO2)2,LiN(CF3SO2)(C4F9SO2),LiC(CF3SO2)3,LiC(C2F5SO2)3,(CH3)4NBF4,(CH3)4NBr,(C2H5)4NClO4,(C2H5)4NI,(C3H7)4NBr,(n−C4H9)4NClO4,(n−C4H9)4NI,(C2H5)4N−maleate,(C2H5)4N−benzoate,(C2H5)4N−phtalate等の四級アンモニウム塩、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
【0046】
これらの塩の中で、LiPF6は解離性に優れ、優れた伝導度が得られる点で好ましい。
【0047】
また、LiBF4は、LiPF6と比較して解離度や伝導度は低いものの、電解液中に存在する水分との反応性が低いので、電解液の水分管理を簡素化することが可能であり製造コストを低減することが可能である点で好ましい。さらに、電極や外装材の腐食を引き起こすフッ酸発生の程度が少なく、外装材として金属樹脂複合フィルム等の200μm以下の薄い材料を採用した場合であっても、高い耐久性を有する非水電解質電池が得られる点で好ましい。
【0048】
あるいは、LiPF6やLiBF4と、LiN(C2F5SO2)2のようなパーフルオロアルキル基を有するリチウム塩とを混合して用いると、電解液の粘度をさらに下げることができる点、保存性を向上させる効果がある点で好ましい。
【0049】
非水電解質における電解質塩の濃度としては、高い電池特性を有する非水電解質電池を確実に得るために、0.1mol/l〜5mol/lが好ましく、さらに好ましくは、1mol/l〜2.5mol/lである。
【0050】
正極の主要構成成分である正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有リン酸塩、リチウム含有硫酸塩などを単独あるいは混合して用いることが望ましい。リチウム含有遷移金属酸化物としては、一般式LiyCo1-xMxO2、LiyMn2-xMXO4(Mは、IからVIII族の金属(例えば、Li,Ca,Cr,Ni,Mn,Fe,Coの1種類以上の元素)であり、異種元素置換量を示すx値については置換できる最大量まで有効であるが、好ましくは放電容量の点から0≦x≦1である。また、リチウム量を示すy値についてはリチウムを可逆的に利用しうる最大量が有効であり、好ましくは放電容量の点から0≦y≦2である。)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
また、前記リチウム含有化合物に他の正極活物質を混合して用いてもよく、他の正極活物質としては、CuO,Cu2O,Ag2O,CuS,CuSO4等のI族金属化合物、TiS2,SiO2,SnO等のIV族金属化合物、V2O5,V6O12,VOx,Nb2O5,Bi2O3,Sb2O3等のV族金属化合物、CrO3,Cr2O3,MoO3,MoS2,WO3,SeO2等のVI族金属化合物、MnO2,Mn2O3等のVII族金属化合物、Fe2O3,FeO,Fe3O4,Ni2O3,NiO,CoO3,CoO等のVIII族金属化合物、又は、一般式LixMX2,LixMNyX2(M、NはIからVIII族の金属、Xは酸素、硫黄などのカルコゲン化合物を示す。)等で表される、例えばリチウム−コバルト系複合酸化物やリチウム−マンガン系複合酸化物等の金属化合物、さらに、ジスルフィド,ポリピロール,ポリアニリン,ポリパラフェニレン,ポリアセチレン,ポリアセン系材料等の導電性高分子化合物、擬グラファイト構造炭素質材料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
負極の主要構成成分である負極活物質としては、炭素質材料、及び、負極特性を向上させる目的でリンやホウ素を添加し改質を行った材料等が挙げられる。炭素質材料の中でもグラファイトは、金属リチウムに極めて近い作動電位を有するので電解質塩としてリチウム塩を採用した場合に自己放電を少なくでき、かつ充放電における不可逆容量を少なくできるので、負極活物質として好ましい。グラファイト結晶には良く知られている六方晶系とその他に菱面体晶系に属するものがある。特に、菱面体晶系のグラファイトは、電解液中の溶媒の選択性が広く、例えばプロピレンカーボネートのような溶剤を用いても、層剥離が抑制され優れた充放電効率を示すことから望ましい。
【0053】
以下に、好適に用いることのできる菱面体晶系のグラファイトのエックス線回折等による分析結果を示す;
格子定数 a0 =0.3635nm、 α=39.49°
【0054】
大部分の天然黒鉛及び人造黒鉛は六方晶系であるが、天然黒鉛及び非常に高温で加熱処理された人造黒鉛中に菱面体晶系構造が数%存在していることが知られている。また、粉砕や摩砕することにより六方晶系から菱面体晶系への増加があることが知られている。特に、グラファイト粒子表面に菱面体晶系が多く含まれ、粒子内部は六方晶系が多く含まれるようなグラファイトは高容量、耐溶剤性、製造工程などの優位性から最も望ましい。
【0055】
ここで、特開2000-348727号公報に記載された、グラファイトの結晶全体に含まれる菱面体晶系の算出方法を示す。エックス線広角回折法によって測定された菱面体晶に帰属される(101)回折線のピーク面積をr(101)、同様にして測定された六方晶に帰属される(101)回折線のピーク面積をh(101)とし、(式1)によってグラファイト結晶全体に占める菱面体晶の存在割合R%を算出するものである。
【0056】
【式1】
【0057】
初期充放電における不可逆容量を大きく低減させる効果があることから、菱面体晶系のグラファイトは負極炭素質材料の5%以上含まれていることが望ましく、顕著な効果を得るためには15%以上含まれていることが望ましい。
【0058】
また、負極材料には菱面体晶系のグラファイト以外に、六方晶系グラファイトはもとより、スズ酸化物,ケイ素酸化物等の金属酸化物、リン、ホウ素、アモルファスカーボン等を添加して改質を行うことも可能である。特に、負極材料の表面を上記の方法によって改質することで、電解液の分解を抑制し電池特性を高めることが可能であり望ましい。さらに、グラファイトに対して、リチウム金属、リチウム−アルミニウム,リチウム−鉛,リチウム−スズ,リチウム−アルミニウム−スズ,リチウム−ガリウム,及びウッド合金等のリチウム金属含有合金等を併用することや、あらかじめ電気化学的に還元することによってリチウムが挿入されたグラファイト等も負極材料として使用可能である。
【0059】
また、正極活物質の粉体及び負極活物質の粉体の少なくとも表面層部分を電子伝導性やイオン伝導性の良いもの、あるいは疎水基を有する化合物で修飾することも可能である。例えば、金,銀,カーボン,ニッケル,銅等の電子伝導性のよい物質や、炭酸リチウム,ホウ素ガラス,固体電解質等のイオン伝導性のよい物質、あるいはシリコーンオイル等の疎水基を有する物質をメッキ,焼結,メカノフュージョン,蒸着,焼き付け等の技術を応用して被覆することが挙げられる。
【0060】
正極活物質の粉体及び負極活物質の粉体は、平均粒子サイズ100μm以下であることが望ましい。特に、正極活物質の粉体は、非水電解質電池の高出力特性を向上する目的で10μm以下であることが望ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0061】
以上、正極活物質及び負極活物質について詳述したが、正極及び負極には、主要構成成分である前記活物質の他に、導電剤、結着剤及びフィラーが、他の構成成分として含有されてもよい。
【0062】
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種又はそれらの混合物として含ませることができる。
【0063】
これらの中で、導電剤としては、導電性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。導電剤の添加量は、正極又は負極の総重量に対して1重量%〜50重量%が好ましく、特に2重量%〜30重量%が好ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
【0064】
結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン,ポリフッ化ビニリデン,ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレンジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類等を1種又は2種以上の混合物として用いることができる。また、多糖類の様にリチウムと反応する官能基を有する結着剤は、例えばメチル化するなどしてその官能基を失活させておくことが望ましい。結着剤の添加量は、正極又は負極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0065】
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極又は負極の総重量に対して添加量は30重量%以下が好ましい。
【0066】
正極及び負極は、前記活物質、導電剤及び結着剤をN−メチルピロリドン,トルエン等の有機溶媒に混合させた後、得られた混合液を下記に詳述する集電体の上に塗布し、乾燥することによって、好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコーダー等の手段を用いて任意の厚さ及び任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0067】
集電体としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、正極用集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等の他に、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。負極用集電体としては、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。
【0068】
集電体の形状については、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされた物、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体等が用いられる。厚さの限定は特にないが、1〜500μmのものが用いられる。これらの集電体の中で、正極としては、耐酸化性に優れているアルミニウム箔が、負極としては、還元場において安定であり、且つ電導性に優れ、安価な銅箔、ニッケル箔、鉄箔、及びそれらの一部を含む合金箔を使用することが好ましい。さらに、粗面表面粗さが0.2μmRa以上の箔であることが好ましく、これにより正極活物質又は負極活物質と集電体との密着性は優れたものとなる。よって、このような粗面を有することから、電解箔を使用するのが好ましい。特に、ハナ付き処理を施した電解箔は最も好ましい。
【0069】
非水電解質電池用セパレータとしては、優れたレート特性を示す微多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
【0070】
非水電解質電池用セパレータの空孔率は強度の観点から98体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。
【0071】
また、非水電解質電池用セパレータは、例えばアクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタアクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーと電解液とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。
【0072】
さらに、非水電解質電池用セパレータは、上述したような多孔膜や不織布等とポリマーゲルを併用して用いると、電解液の保液性が向上するため望ましい。即ち、ポリエチレン微孔膜の表面及び微孔壁面に厚さ数μm以下の親溶媒性ポリマーを被覆したフィルムを形成し、該フィルムの微孔内に電解液を保持させることで、前記親溶媒性ポリマーがゲル化する。
【0073】
該親溶媒性ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデンの他、エチレンオキシド基やエステル基等を有するアクリレートモノマー、エポキシモノマー、イソシアネート基を有するモノマー等が架橋したポリマー等が挙げられる。架橋にあたっては、熱、紫外線(UV)や電子線(EB)等の活性光線等を用いることができる。
【0074】
該親溶媒性ポリマーには、強度や物性制御の目的で、架橋体の形成を妨害しない範囲の物性調整剤を配合して使用することができる。該物性調整剤の例としては、無機フィラー類{酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩}、ポリマー類{ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート等}等が挙げられる。該物性調整剤の添加量は、架橋性モノマーに対して通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
【0075】
前記アクリレートモノマーについて例示すると、二官能以上の不飽和モノマーが好適に挙げられ、より具体例には、2官能(メタ)アクリレート{エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸・ジネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、重合度2以上のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、重合度2以上のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体のジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等}、3官能(メタ)アクリレート{トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンのエチレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのプロピレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート等}、4官能以上の多官能(メタ)アクリレート{ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンヘキサ(メタ)アクリレート等}が挙げられる。これらのモノマーを単独もしくは、併用して用いることができる。
【0076】
前記アクリレートモノマーには、物性調整等の目的で1官能モノマーを添加することもできる。該一官能モノマーの例としては、不飽和カルボン酸{アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、メチレンマロン酸、アコニット酸等}、不飽和スルホン酸{スチレンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等}又はそれらの塩(Li塩、Na塩、K塩、アンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩等)、またこれらの不飽和カルボン酸をC1〜C18の脂肪族又は脂環式アルコール、アルキレン(C2〜C4)グリコール、ポリアルキレン(C2〜C4)グリコール等で部分的にエステル化したもの(メチルマレート、モノヒドロキシエチルマレート、など)、及びアンモニア、1級又は2級アミンで部分的にアミド化したもの(マレイン酸モノアミド、N−メチルマレイン酸モノアミド、N,N−ジエチルマレイン酸モノアミドなど)、(メタ)アクリル酸エステル[C1〜C18の脂肪族(メチル、エチル、プロピル、ブチル、2−エチルヘキシル、ステアリル等)アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、又はアルキレン(C2〜C4)グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等)及びポリアルキレン(C2〜C4)グリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)と(メタ)アクリル酸とのエステル];(メタ)アクリルアミド又はN−置換(メタ)アクリルアミド[(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等];ビニルエステル又はアリルエステル[酢酸ビニル、酢酸アリル等];ビニルエーテル又はアリルエーテル[ブチルビニルエーテル、ドデシルアリルエーテル等];不飽和ニトリル化合物[(メタ)アクリロニトリル、クロトンニトリル等];不飽和アルコール[(メタ)アリルアルコール等];不飽和アミン[(メタ)アリルアミン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等];複素環含有モノマー[N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン等];オレフィン系脂肪族炭化水素[エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、(C6〜C50)α−オレフィン等];オレフィン系脂環式炭化水素[シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ノルボルネン等];オレフィン系芳香族炭化水素[スチレン、α−メチルスチレン、スチルベン等];不飽和イミド[マレイミド等];ハロゲン含有モノマー[塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン等]等が挙げられる。
【0077】
前記エポキシモノマーについて例示すると、グリシジルエーテル類{ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル等}、グリシジルエステル類{ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等}、グリシジルアミン類{トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノフェニルメタン等}、線状脂肪族エポキサイド類{エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等}、脂環族エポキサイド類{3,4エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート等}等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独もしくは硬化剤を添加して硬化させて使用することができる。
【0078】
該硬化剤の例としては、脂肪族ポリアミン類{ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、3,9−(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトロオキサスピロ[5,5]ウンデカン等}、芳香族ポリアミン類{メタキシレンジアミン、ジアミノフェニルメタン等}、ポリアミド類{ダイマー酸ポリアミド等}、酸無水物類{無水フタル酸、テトラヒドロメチル無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水メチルナジック酸}、フェノール類{フェノールノボラック等}、ポリメルカプタン{ポリサルファイド等}、第三アミン類{トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等}、ルイス酸錯体{三フッ化ホウ素・エチルアミン錯体等}等が挙げられる。
【0079】
前記イソシアネート基を有するモノマーについて例示すると、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,2,4)−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチルジフェニル4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、トリメチルキシレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、trans−1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0080】
前記イソシアネート基を有するモノマーを架橋するにあたって、ポリオール類及びポリアミン類[2官能化合物{水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等}、3官能化合物{グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリエタノールアミン等}、4官能化合物{ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド等}、5官能化合物{2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエチレントリアミンなど}、6官能化合物{ソルビトール、マンニトール、ズルシトール等}、8官能化合物{スークロース等}]、及びポリエーテルポリオール類{前記ポリオール又はポリアミンのプロピレンオキサイド及び/又はエチレンオキサイド付加物}、ポリエステルポリオール[前記ポリオールと多塩基酸{アジピン酸、o,m,p−フタル酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、リシノール酸}との縮合物、ポリカプロラクトンポリオール{ポリε−カプロラクトン等}、ヒドロキシカルボン酸の重縮合物等]等、活性水素を有する化合物を併用することができる。
【0081】
該架橋反応にあたって、触媒を併用することができる。該触媒について例示すると、有機スズ化合物類、トリアルキルホスフィン類、アミン類[モノアミン類{N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン等}、環状モノアミン類{ピリジン、N−メチルモルホリン等}、ジアミン類{N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル1,3−ブタンジアミン等}、トリアミン類{N,N,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン等}、ヘキサミン類{N,N,N’N’−テトラ(3−ジメチルアミノプロピル)−メタンジアミン等}、環状ポリアミン類{ジアザビシクロオクタン(DABCO)、N,N’−ジメチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等}等、及びそれらの塩類等が挙げられる。
【0082】
本発明に係る非水電解質電池は、電解液を、例えば、非水電解質電池用セパレータと正極と負極とを積層する前又は積層した後に注液し、最終的に、外装材で封止することによって好適に作製される。また、正極と負極とが非水電解質電池用セパレータを介して積層された発電要素を巻回してなる非水電解質電池においては、電解液は、前記巻回の前後に発電要素に注液されるのが好ましい。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが、真空含浸方法や加圧含浸方法も使用可能である。
【0083】
外装体としては、非水電解質電池の軽量化の観点から、薄い材料が好ましく、例えば、金属箔を樹脂フィルムで挟み込んだ構成の金属樹脂複合フィルムが好ましい。金属箔の具体例としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、ステンレス鋼、チタン、金、銀等、ピンホールのない箔であれば限定されないが、好ましくは軽量且つ安価なアルミニウム箔が好ましい。また、電池外部側の樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム,ナイロンフィルム等の突き刺し強度に優れた樹脂フィルムを、電池内部側の樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム,ナイロンフィルム等の、熱融着可能であり、かつ耐溶剤性を有するフィルムが好ましい。
【0084】
【実施例】
以下、本発明のさらなる詳細を実施例により説明するが、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
本発明電池にかかる非水電解質電池の断面図を図1に示す。
【0086】
本発明にかかるリチウム電池は、正極1、負極2、及びセパレータ3からなる極群4と、非水電解質と、金属樹脂複合フィルム5から構成されている。正極1は、正極合剤11が正極集電体12上に塗布されてなる。また、負極2は、負極合剤21が負極集電体22上に塗布されてなる。非水電解質は極群4に含浸されている。金属樹脂複合フィルム5は、極群4を覆い、その四方を熱溶着により封止されている。
【0087】
次に、上記構成の電池の製造方法を説明する。
【0088】
正極1は次のようにして得た。正極活物質としてのLiCoO2と、導電剤としてのアセチレンブラックとを混合し、さらに結着剤としてポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液を混合し、この混合物をアルミニウム箔からなる正極集電体12の片面に塗布した後、乾燥し、正極合剤11の厚さが0.1mmとなるようにプレスした。以上の工程により正極1を得た。
【0089】
また、負極2は、次のようにして得た。まず、天然黒鉛をジェットミルにより摩砕した後、菱面体晶系を含む炭素材料を作製した。エックス線回折図の面積より(式1)の算出結果から、摩砕前の天然黒鉛は、3%の菱面体晶系しか含まないのに対し、摩砕後の天然黒鉛は、15%の菱面体晶系を含む炭素材料であることがわかった。このようにして得られた菱面体晶系を含む炭素材料を負極活物質とし、結着剤であるポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液を混合し、この混合物を銅箔からなる負極集電体22の片面に塗布した後、乾燥し、負極合剤21厚さが0.1mmとなるようにプレスした。以上の工程により負極2を得た。
【0090】
一方、セパレータ3にはポリエチレン製微多孔膜(厚さ25μm、開孔率50%)を用いた。
【0091】
極群4は、正極合剤11と負極合剤21とを対向させ、その間にセパレータ3を配し、正極1、セパレータ3、負極2の順に積層することにより、構成した。
【0092】
非水電解質は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比5:4:1の割合で混合した混合溶媒1リットルに1モルのLiPF6を溶解させた電解液を作成し、前記電解液に対し10重量%の(化学式7)に示されるトリフルオロエチルメチルカーボネート及び2重量%のビニレンカーボネートをさらに混合することにより得た。
【0093】
【化11】
【0094】
次に、前記非水電解質中に極群4を浸漬させることにより、極群4に非水電解質を含浸させ、た。さらに、金属樹脂複合フィルム5で極群4を覆い、その四方を熱溶着により封止した。
【0095】
以上の製法により得られた非水電解質電池を本発明電池Aとする。なお、本発明電池Aの設計容量は、10mAhである。
【0096】
(実施例2)
非水電解質として、前記電解液に対し10重量%の(化学式8)に示されるトリフルオロプロピレンカーボネート及び2重量%のスチレンカーボネートをさらに混合したものを用いたことを除いては、実施例1と同一の原料及び製法により、容量10mAhの非水電解質電池を作製し、本発明電池Bとした。
【0097】
【化12】
【0098】
(実施例3)
非水電解質として、前記電解液に対し15重量%のトリフルオロエチルメチルカーボネートをさらに混合したものを用いたことを除いては、実施例1と同一の原料及び製法により、容量10mAhの非水電解質電池を作製し、本発明電池Cとした。
【0099】
(比較例1)
非水電解質として、前記電解液に対し2重量%のビニレンカーボネートをさらに混合したものを用いたことを除いては、実施例1と同一の原料及び製法により、容量10mAhの非水電解質電池を作製し、比較電池Dとした。
【0100】
(比較例2)
非水電解質として、前記電解液をそのまま用いたことを除いては、実施例1と同一の原料及び製法により、容量10mAhの非水電解質電池を作製し、比較電池Eとした。
【0101】
(比較例3)
負極活物質として、摩砕していない天然黒鉛を用いたことを除いては、実施例1と同一の原料及び製法により、容量10mAhの非水電解質電池を作製し、比較電池Fとした。
【0102】
(電池性能試験)
次に、これらの本発明電池A、B、C及び比較電池D、E、Fについて、初充電及び初放電容量を測定した。初充電容量は、20℃において、電流2mA、終止電圧4.2V、10時間の定電流定電圧充電を行い、充電電気量を測定して充電容量を求めた。初放電容量は、初充電後、20℃において、電流2mA、終止電圧2.7Vの定電流放電を行い放電容量を求めた。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
表1に示すように、比較電池E及びFは、初充電容量が設計容量の約1.5〜2倍と非常に大きくなり、かつ、初放電容量は非常に小さいものであった。これは、比較電池Fでは、炭素材料中に菱面体晶系構造物が3%しか含まれず、比較電池Eでは非水電解質中にπ結合を有する環状カーボネート及び環状カーボネートのフッ化物又は鎖状カーボネートのフッ化物をいずれも含有しないため、初充電中に非水電解質中のプロピレンカーボネートが炭素材料上で分解し、可逆容量が低下したためと考えられる。
【0105】
一方、比較電池Dは、初充電容量は設計容量の約1.2倍であり、初放電容量は設計容量の約0.87倍であった。これは、炭素材料中に菱面体晶系構造物が15%含まれているため、初充電中に非水電解質中のビニレンカーボネートが炭素材料上で分解することによる、炭素材料表面へのリチウムイオン透過性の保護被膜形成効果が有効に得られ、プロピレンカーボネートの分解が抑制されるため、比較電池E、Fに比較して初充電容量及び初放電容量が改善されるが、ビニレンカーボネートの分解に消費される電気量が大きく、かつ、余剰のビニレンカーボネートが正極上で分解するため、初放電容量が低くなったものと考えられ、必ずしも充分改善されたとは言えない。
【0106】
これに対し、本発明電池A、B、Cは、比較電池D、E、Fと比較して、初充電容量及び初放電容量がともに優れており、高い低温特性と高いエネルギー密度とを兼ね備える非水電解質電池であることが確認された。これは、初充電時に環状カーボネートのフッ化物であるトリフルオロプロピレンカーボネート又は鎖状カーボネートのフッ化物であるトリフルオロエチルメチルカーボネートが炭素材料上で分解し、炭素材料表面にリチウムイオン透過性の保護被膜を形成するためと考えられる。特に、本発明電池A、Bは、π結合を有する環状カーボネートであるビニレンカーボネート又はスチレンカーボネートを含有し、且つ、環状カーボネートのフッ化物であるトリフルオロプロピレンカーボネート又は鎖状カーボネートのフッ化物であるトリフルオロエチルメチルカーボネートを両方含有する相乗効果により、いずれか単独で含有する場合に比較し、負極表面に形成されるリチウムイオン透過性の保護被膜が、緻密で、且つ、リチウムイオン透過性に優れたものとなるため、プロピレンカーボネートの分解を確実に抑制できるためと考えられる。よって、充放電効率が高く、高いエネルギー密度を有する非水電解質電池とすることができる。
【0107】
以上、説明したように、本発明によれば、請求項1に記載したように、非水電解質中に特定の構造を有するフッ化物を含有することにより、初充電時にフッ化物が炭素材料上で分解し、炭素材料表面にリチウムイオン透過性の保護被膜を形成するため、非水電解液を構成するその他の有機溶媒の分解を確実に抑制できるので、2サイクル目以降の充放電を充分に行うことができる。このとき、フッ化物は耐酸化性が高く、正極上での酸化分解がほとんど起こらず、過剰に添加しても電池性能を劣化させることはない。よって、充放電効率が高く、高いエネルギー密度を有する非水電解質電池を提供できる。さらに、炭素材料が菱面体晶系構造物を5%以上含むことにより、上記効果がより有効に発揮される。
【0108】
また、本発明によれば、請求項2に記載したように、非水電解質中に環状カーボネートのフッ化物又は鎖状カーボネートのフッ化物を含有することにより、初充電時に環状カーボネートのフッ化物又は鎖状カーボネートのフッ化物が炭素材料上で分解し、炭素材料表面にリチウムイオン透過性の保護被膜を形成するため、非水電解液を構成するその他の有機溶媒の分解を確実に抑制できるので、2サイクル目以降の充放電を充分に行うことができる。このとき、環状カーボネートのフッ化物又は鎖状カーボネートのフッ化物は、フッ素化されているため耐酸化性が高く、正極上での酸化分解がほとんど起こらず、過剰に添加しても電池性能を劣化させることはない。よって、充放電効率が高く、高いエネルギー密度を有する非水電解質電池を提供できる。
【0109】
また、本発明によれば、請求項3に記載したように、非水電解質中にπ結合を有する環状カーボネートを含有することにより、特定の構造を有するフッ化物を含有し、且つ、π結合を有する環状カーボネートを両方含有する相乗効果により、いずれか単独で含有する場合に比較し、非水電解液を構成するその他の有機溶媒の分解をより効果的に抑制できる。
【0110】
また、本発明によれば、請求項4に記載したように、非水電解質中に含有するπ結合を有する環状カーボネートを、ビニレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネートから選ばれる少なくとも1種とすることにより、非水電解液を構成するその他の有機溶媒の分解を効果的に抑制でき、2サイクル目以降の充放電を充分に行うことができ、充放電効率を向上させることができる。
【0111】
また、本発明によれば、非水電解質中にπ結合を有さない環状カーボネートを含有することにより、上記効果が効果的に得られる。よって、充放電効率が高く、高いエネルギー密度を有する非水電解質電池とすることができる。
【0112】
また、本発明によれば、非水電解質中に含有するπ結合を有さない環状カーボネートを、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートから選ばれる少なくとも1種とすることにより、これら高誘電率を有し、耐酸化性に優れる有機溶媒の特性を生かすことができるため、上記効果がより効果的に得られる。
【0113】
【発明の効果】
本発明によれば、初期充放電効率に優れた非水電解質電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非水電解質電池の断面図である。
【符号の説明】
1 正極
11 正極合剤
12 正極集電体
2 負極合剤
21 負極合剤
22 負極集電体
3 セパレータ
4 極群
5 金属樹脂複合フィルム
Claims (4)
- プロピレンカーボネートを含有し、且つ、(化学式1)、(化学式2)、(化学式3)又は(化学式4)で示されるいずれかのフッ化物を非水電解質の全重量に対して0.10重量%〜15重量%含有している非水電解質と、菱面体晶系構造のグラファイトを5%以上含むグラファイトを主要構成成分として作製した負極と、正極と、を少なくとも用いて組み立てた非水電解質電池。
- 前記フッ化物は、環状カーボネートのフッ化物又は鎖状カーボネートのフッ化物であることを特徴とする請求項1記載の非水電解質電池。
- 前記非水電解液は、π結合を有する環状カーボネートを含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解質電池。
- 前記π結合を有する環状カーボネートは、ビニレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート及び1,2−ジフェニルビニレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の非水電解質電池。
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