JP4590150B2 - インクジェット記録装置及び回復制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクを吐出する記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置、及び記録ヘッドの吐出状態を回復させるための回復制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の記録装置は。画像情報に基づいて、紙やプラスチック薄板等の被記録材上にドットパターンからなる画像を記録するように構成されている。記録装置は、その記録方式により、インクジェット方式、ワイヤドット方式、サーマル方式、レーザービーム方式等に分けることができる。その中でもインクジェット方式は、記録ヘッド(インクジェット記録ヘッド)のノズル先端の開口部である吐出口から、記録用の液体であるインク滴を吐出飛翔させ、これを被記録材に付着させて記録するように構成されている。
【0003】
インクジェット方式の記録装置においては、記録ヘッドの吐出口からインクが蒸発することにより吐出口が目詰まりし、その結果として記録状態が劣化したり、場合によっては記録が行えない状態となることが従来より知られており、このインクの蒸発を抑えるため、記録ヘッドの吐出口をキャップする部材、機構を設けているのが一般的である。このような構成では、キャップ部材を記録ヘッドの吐出口が形成された面に密着させることで吐出口をキャップして外気から遮断した状態(キャップクローズ状態、もしくはクローズ状態という)と、キャップ部材を記録ヘッドの吐出口が形成された面から離した状態(キャップオープン状態、もしくはオープン状態という)とするようキャップ部材と記録ヘッドとを相対移動させる機構により、記録動作中や待機状態などの状態に応じてクローズ状態とオープン状態とに切り替えることが知られている。
【0004】
このキャップの機構によりインクの蒸発を抑えているものの、時間の経過に応じてインクノズル内に気泡が徐々に発生し、その気泡により印字不良を起こすことや、時間の経過に応じてインクノズル内のインクが増粘し、その増粘により印字不良を起こすことがあった。この時間の経過に応じた気泡の発生は、液体であるインク中に溶存していた気体が気泡となって現れるものである。また、印字不良による印字状態の劣化は、吐出口内のノズルに存在するインクの増粘により吐出が不安定となったり不吐出が生じることや、インクの溶剤の蒸発に伴ってインクの色材やインク中の不純物が吐出口周囲に析出することによって生じるものである。このように印字状態が劣化した場合には、外部から強制的にインクを吸引して回復させることで印字を可能にする方法が多くのインクジェット記録装置で採用されている。
【0005】
ここで、吸引による回復動作は一度の動作で多量のインクが排出されることから、回復動作によるインクの消費量を抑えるために、吸引回数はできるだけ少なくすることが好ましい。回復動作によるインク排出量を抑えることで、特に、ランニングコストを低く抑えることや、排出されたインクを収容する部材である廃インク収容部の容量の小型化に貢献することができるからである。そのため、従来の記録装置において、記録装置内にタイマー、もしくはタイマーと同様に時間の計時を行う構成を設け、前回の吸引動作からの経過時間を計測して、その経過時間に応じて吸引を行うかどうかを判定することが知られている。この一例としては、例えば2日、5日と経過しても吸引動作が行われない場合は、経過時間に応じた吸引量の吸引回復動作の制御(タイマー吸引と称する)を行い、また、経過時間が2日よりも短い場合は、インクの吐出動作による回復動作である予備吐出動作を経過時間によって制御するタイマー予備吐を行うことで、ノズル内のインクの増粘やインクの色材や不純物がノズル周りに析出することを防止している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の記録装置の構成では、吸引動作を行うタイミングを基に前回の吸引動作からの経過時間を計測していたため、装置の状態に起因してインクの蒸発の程度が異なった場合を想定しておらず、記録ヘッドの吐出状態を良好に回復できない場合があった。また、記録ヘッドの吐出状態を回復させることを優先した場合には、インクの蒸発の程度が進んでいることを想定して比較的短い経過時間でも吸引回復を行うように予め設定することが考えられるが、インクの蒸発の程度からすると吸引回復を必要としない場合においても吸引回復が実行される可能性もあり、必要以上にインクを消費してしまうという問題がある。
【0007】
また、インクの消費量を抑えるためには、吸引回数はできるだけ少なくすることが好ましく、経過時間がある程度長い時間に達した場合にのみ吸引回復動作が実行されるよう制御することとなるが、十分な回復が行われない場合が発生してしまう。例えば、黒文字のみのプリントを連続で印字(例えば、2、3時間の連続印字)した後に、カラーの記録を行うような場合、カラー側のノズルは、記録を行わないでキャップオープンされた状態であり、ノズルにおいては、インクの蒸発に起因して、インクの色材や不純物がノズル周りに析出してしまい、蒸発の条件によっては前記色材や不純物が結晶化する。従って、これらの析出物や、色材、不純物の結晶化によって印字不良が生じてしまうこととなる。同様に、光沢メディアのような特殊紙では、顔料ブラックを用いて印刷を行わないよう制御されるのが一般的であり、この特殊紙でカラープリントを連続して記録(例えば、2、3時間の連続記録)した後に、顔料ブラックを用いた印字を行うような場合、ブラック側のノズルでは記録を行われないでキャップオープンされた状態である。よって、ノズルにおいては、インク乾燥によるインクの増粘や固着によって目詰まりが発生してしまい、印字不良が起きてしまう。よって、吸引が行われない期間が短い場合、前記タイマー予備吐が行われているが、それだけでは不十分であり、前記の印字不良が起きてしまう。
【0008】
このように、記録動作によってはキャップがオープンされた状態が続くこともある。このキャップがオープンされた状態とキャップがクローズされた状態とでは、経過時間におけるインクの蒸発、乾燥の程度や、析出物の発生の程度が異なるため、従来のように経過時間を基に吸引回復動作の実行を決定する構成においては、吸引回復動作においてインクが無駄に消費されてしまったり、吐出不良の発生の頻度が高くなってしまう、という問題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の問題点に鑑み、適切な回復動作の制御の実行を目的としてなされたものであり、回復動作の実行を適切に制御することにより、回復動作におけるインクの消費量を抑え、且つ、吐出不良の発生を抑え、ランニングコストを抑えながら信頼性の高いインクジェット記録装置、ならびに回復制御方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は上記目的を達成するために、記録ヘッドに備えられた複数の吐出口から記録媒体上にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドのインク吐出性能を保持するための回復処理を行う回復手段と、前記記録ヘッドの複数の吐出口が備えられた吐出口面をキャップするためのキャップ部材と、前記キャップ部材が前記吐出口面をキャップしていない時間を計測する計測手段と、前記吐出口面をキャップしていない時間中に前記記録ヘッドから吐出されるインク量を算出する算出手段と、前記キャップ部材が前記吐出口面をキャップしても前記計測した時間をリセットすることなく累積し、該累積した時間が所定時間を超えたか否かを判断し、前記累積時間が所定時間を超えたと判断した場合にさらに前記算出手段によって算出された前記インク量が所定量に満たないかを判断するとともに、前記累積時間が所定時間を超え且つ前記インク量が所定量に満たないことに応じて前記回復手段に前記回復処理を行わせる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の回復制御方法は、記録ヘッドに備えられた複数の吐出口から記録媒体上にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置の回復制御方法において、前記記録ヘッドのインク吐出性能を保持するための回復処理を行う回復工程と、キャップ部材により前記記録ヘッドの複数の吐出口が備えられた吐出口面をキャップする工程と、前記キャップ部材が前記吐出口面をキャップしていない時間を計測する計測工程と、前記吐出口面をキャップしていない時間中に前記記録ヘッドから吐出されるインク量を算出する算出工程と、前記キャップ部材が前記吐出口面をキャップしても前記計測した時間をリセットすることなく累積し、該累積した時間が所定時間を超えたか否かを判断し、前記累積時間が所定時間を超えたと判断した場合にさらに前記算出工程において算出された前記インク量が所定量に満たないかを判断するとともに、前記累積時間が所定時間を超え且つ前記インク量が所定量に満たないことに応じて前記回復工程において前記回復処理を行わせる制御工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す概観斜視図であり、この図1におうては、装置の外装である上ケースを除いた状態を示している。
【0014】
図1において、給紙トレイ11にセットされたシート(被記録媒体)は給紙ローラ(不図示)の回転によって給紙され、この給紙されたシートは搬送ローラ(不図示)によってプラテン31上を搬送される。この搬送の間にキャリッジ20に搭載された記録ヘッド21から、その走査に伴なってインクが吐出されシート上に画像などの記録(形成)がなされる。
【0015】
また、図1において、キャリッジ20は上記記録ヘッド21およびこれに供給するインクを貯留したインクタンク22を着脱自在に搭載するものである。このキャリッジ20は走査レール33と摺動可能に係合すると共に、キャリッジモータ(不図示)の駆動力がベルトなどの伝達機構を介して伝達されることにより、上記記録ヘッド21の走査を行うことができる。また、キャリッジ20の移動範囲の一方の端部には、記録ヘッド20の吐出機能を良好に維持する吐出回復処理を行うための回復系50が設けられている。
【0016】
なお、キャリッジ20には、上述のように記録ヘッド21及びインクタンク22が着脱自在に搭載されるものであるが、本実施形態では、記録ヘッド21を一体に取り付けたホルダに、さらにインクタンク22が取り付けられたタンクホルダが装着され、これらが一体でキャリッジ20に搭載される形態を採用している。また、記録ヘッド21及びインクタンク22は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクにそれぞれ対応して記録を行うものである。さらに、本実施形態における記録ヘッド21は、熱エネルギーを利用してインクに気泡を生じさせ、この気泡の圧力によってインクを吐出する、所謂バブルジェット(R)方式の記録ヘッドである。従って、記録ヘッド21には、インクを吐出させる気泡を発生させる為の熱エネルギーを付与する電気・熱変換体(図示略)が設けられている。また、個々の記録ヘッドには、吐出口に連通するノズルに対してインクを供給するための液室が設けられており、インクタンク22から供給されたインクは一旦液室内に収容され、インクの吐出に伴って液室から各ノズルへインクが再充填(リフィル)される。本発明においては、各インクに対応させて記録ヘッドを備えており、液室はインク毎に対応して備えられていることとなる。
【0017】
図2は、図1に示したインクジェットプリンタの回復系50の構成例を示す模式図である。
【0018】
図2において、24は走査レール33と係合するためのキャリッジ20の軸受け部である。51は記録ヘッドの吐出口面を覆うことのできるキャップで、矢印A方向に移動可能であり、キャリッジ20がホームポジションに設けられた回復系上に位置する時に不図示の上昇下降機構にて上昇することで吐出口面を密着し、下降することで吐出口面から離脱できるような構成となっている。
【0019】
図2において、56はキャップに連通した吸引チューブ、57はキャップに連通した大気連通チューブ、58は大気連通弁機構であり、大気連通チューブ57に連結されている。この大気連通弁は不図示のカム機構で開閉できるようになっている。52は吸引ポンプであり、チューブポンプを形成している。51はポンプベースであり、内側にチューブガイド面51aが半円形状で形成されている。53はコロホルダーであり、これに2個のコロ(ローラ)55が回転軸54を中心とする回転に応じて吸引チューブ56をしごきながら移動することでキャップ40内に負圧を発生させている。70はブレード、71はブレードを保持しているブレードホルダーであり、キャップ40が下方に移動して待機しているときに矢印B方向にブレードホルダー71がスライドすることにより、ブレード70が吐出口面に当接しながら吐出口面に残留したインク滴や紙粉などのごみをワイピングするように構成されている。
【0020】
図3はキャップ40の構成を説明するためのキャップ部分の拡大断面図である。キャップ40には吸引用の連通口40aがあり、この連通口40aは図2に示した吸引チューブ56と連結されている。また、40bは大気連通用の連通口であり、図2に示した大気連通チューブ57と連結されている。また、キャップ40内部には多孔質の吸収体45が備えられている。
【0021】
図4は本実施例に用いたインクジェット記録ヘッドの吐出口面の部分を示した説明図であり、図4においては、吐出口側を正面から見た図を示している。また、図4に示す矢印はキャリッジ20の走査方向(主走査方向)を示しており、21−Bk、21−C、21−M、21−Yは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのノズル列を示している。このように、各色のノズルは主走査方向と異なる方向に沿って複数配列されてノズル列を形成しており、複数の色に対応した複数のノズル列は主走査方向へ沿って配置されている。
【0022】
本実施形態ではこれら4色のノズル列を一つのキャップで覆うようにキャップ40を吐出口面21aに密着させる。なお、本発明において、記録ヘッド21のノズル構成は特に図4に示される構成に限定されるものではなく、複数の色に対応したノズル列を一直線上に配置したり、各色のノズル列の順序を入れ替えた構成としてもよい。
【0023】
図5は本発明を適用可能なインクジェット記録装置の構成例を示すブロック図である。
【0024】
この図において、インクジェット記録装置の構成は、画像入力部63、それに対応する画像信号処理部64、中央制御部(CPU)60といったソフト系処理手段と、操作部66、回復系制御回路67、キャリッジ制御回路76、紙送り制御回路77、ヘッド駆動制御回路78といったハード系処理手段とに大別され、それぞれメインバスライン65に対しアクセスするよう構成されている。
【0025】
また、中央制御部60は制御プログラムを格納するプログラムROM61と記録ヘッド20に供給するプリントデータなどの各種データを保存しておくランダムアクセスメモリ(RAM)を有し、入力情報に対して適正記録条件をキャリッジ制御回路76、紙送り制御回路77、ヘッド駆動制御回路78に与えてそれぞれキャリッジモータ73、搬送モータ74、記録ヘッド21を駆動して記録を行う。ROM61には後述する回復動作タイミングチャートを実行するプログラムも保存されており、必要に応じて(例えば、操作部66からの吸引回復動作の実行命令)、回復系制御回路67や、ヘッド駆動制御回路78に制御条件を与え回復動作を実行する。回復系制御回路67は回復系モータ68を駆動し、不図示のカム機構などによりキャップ40、大気連通弁58、ブレード70、吸引ポンプ52を動作させ、ヘッド駆動制御回路77は記録ヘッド21の電気・熱変換体の駆動を行うもので、記録時のインク吐出や予備吐出を行うものである。これによって、以下に説明する回復動作を実行することができる。
【0026】
本発明の実施形態ではキャップを被嵌した状態で大気連通弁を開放する動作を、ポンプを一時停止してから行っていたが、特にこれに限定されることはなく、ポンプの吸引動作を行いながら大気連通弁を開放するような構成にしても良い。
【0027】
また、本発明の実施形態では説明の都合上、キャップが一つの構成の場合で説明したが、キャップが複数ある場合でもそれぞれのキャップでの吸引動作において本発明を適用することが出来るし、複数のキャップの何れかの吸引動作のみで適用することもできる。
【0028】
また、ポンプの構成をチューブポンプ形態で説明してきたが、特にこれに限定されることはなく、キャップ内に負圧を発生できるポンプ構成であれば何でもよい。
【0029】
(第1の実施形態)
まず、本発明の特徴的構成における第1の実施形態を説明する。
【0030】
この第1の実施形態では、図1ないし図2に示す構成を備えたインクジェット記録装置において次のような制御動作を行うものとなっている。
【0031】
印刷開始の際にホームポジションの回復系50においてキャップ状態にあった記録ヘッド21とキャップ40とを離間させてキャップオープン状態とし、このキャップオープンと同時にタイマーをスタートさせ、印刷を行う。そして、キャップがオープンしている時間の累積を行い、所定時間Thを超えると、吸引を行うと言った回復制御を行っている。ここで、回復吸引後はキャップオープンタイマーをリセットする。
【0032】
まず、図7のフローチャートに基づき、連続キャップオープン時に行うキャップオープンタイマー吸引の制御を説明する。
【0033】
まず、ステップS701では、キャップオープン後、キャップオープンタイマーONにする。次に、ステップS702に進んで、記録動作を開始する。次に、ステップS703に進み、キャップオープンタイマー経過時間Tが、所定のしきい値Th以上かどうか判断を行う。T<Thの場合、ステップS702に進み、T≧Thの場合、ステップS704に進み、回復吸引を行う。次にステップS705に進み、キャップオープンタイマーをリセットして(T=0)、ステップS701に戻る。
【0034】
ここで、一例として図6のグラフは、吐出口における、インクの蒸発による固着や不純物の結晶化が起こらないためのキャップオープン時間と一液室当りのインク消費量の関係を示す。なお、液室とは前述のように記録ヘッドに設けられるものであり、「一液室当りのインク消費量」とはインク毎に消費されるインク量を示す。
【0035】
図6の直線Aは、吐出における不良が起こらない場合の一液室当りのインク消費量とキャップオープン時間の関係を表したものである。また、直線Cは、タイマー予備吐のみを行っている場合の一液室当りのインク消費量とキャップオープン時間の関係を表している。つまり、キャップオープンした状態でしきい値Thが過ぎた時、インクの消費量がこの直線Aより下にある場合、ノズル近傍での固着や不純物の析出による目詰まりが発生してしまう。つまり、所定時間内におけるインク消費量が、目詰まりが生じない程度に消費されるべきインク量を下回る場合に、目詰まりを生じてしまう。実験により、キャップオープン時間が約2時間越えると、インクの蒸発による固着や不純物の結晶化が始まり出すことがわかっている。よって今回、所定のしきい値Thは2(hour)とし、キャップオープン時間が2時間過ぎた時、所定量(約0.13g)の回復吸引が入るようにしている。その時の一液室当りのインク消費量とキャップオープン時間の関係を表したのが直線Bである。
【0036】
また、T≦Thの場合、キャップクローズ後は、キャップオープン累積時間を装置内の記憶手段であるメモリに記憶しておき、次回のキャップオープン時には、記憶したキャップオープン累積時間を読み出して、キャップオープンタイマーは、読み出したキャップオープン累積時間から計時を始める。ここで、なんらかの吸引回復動作が行われた場合は、全てのキャップオープンタイマーをリセットする。つまり、ユーザによる強制的な吸引回復処理の命令や、別の要因によって吸引回復処理が実行された場合には、キャップオープンタイマーがリセットされることになる。
【0037】
また、上述の実施形態おいて、キャップオープン時間は、ほぼ印字時間と同じなので、キャップオープン時間を印字時間として行っても良い。
【0038】
これにより、ある特定のノズルだけで記録している場合、吸引を行う事で、インクをリフレッシュさせ、使っていなかったノズル近傍において、インクの蒸発による固着や不純物の結晶化による印字不良を防ぐことが出来る。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について詳細に説明する。
【0040】
本実施形態では、第1の実施形態のようなキャップオープンタイマー作動時において、さらに吸引処理の回数を減らし、消費インク量を低減するために、ドットカウントを行い、消費したインクの量を測定する。ドットカウントとは、記録の際にインク滴を吐出して形成するドットのカウントを行うことを意味し、吐出を行わせるデータをカウントすることによって消費したインク量を推定することができる。なお、ドットカウントは、インク滴の吐出単位で行うことも可能であるが、所定ドット数を一単位としてカウントする構成であってもよい。本実施形態において、所定時間Th内に、消費したインク量が、キャップオープンタイマー吸引の吸引量以上になった場合、キャップオープンタイマー、ドットカウントのいずれもリセットを行い、吸引回復処理は行わないよう制御する。
【0041】
図8のフローチャートに基づき、本実施形態の、キャップオープン時のドット数によるタイマー吸引の制御を説明する。
【0042】
まず、キャップオープン後、ステップS801で前回のキャップオープン経過時間を読みこみ、キャップオープンタイマーを動作させる。次に、ステップS802で前回のドット数を読みこみ、ドットカウントを開始する。つぎにステップS803で記録動作を行う。次にステップS804において排紙後、この記録におけるドット数を読みこみ、今回の前記ドット数を加算する。次にステップS805で、キャップオープン経過時間Tが、所定のしきい値Th以上かどうか判断を行う。T≧Thの場合、ステップS812に進み、ドット数Dが所定のドット数Dh以上であるかを判断する。D≧Dhの場合はステップS814に進み、D<Dhの場合、ステップS813に進み回復吸引を行ってステップS814に進む。ステップS814ではキャップオープンタイマーをリセットする。次にステップS815に進み、ドットカウンターもリセットをして、ステップS806に進む。また、ステップS805において、ステップS805において、T<Thの場合ステップS806に進み、次の記録データがあれば、ステップS803に戻り、記録データが無ければ、ステップS807に進み、キャップオープンタイマーをストップする。次にステップS808に進み、ドットカウンターをストップする。次にステップS809に進み、キャップオープン経過時間を記憶させる。次にステップS810に進み、吐出されたドット数を記憶させる。そして、ステップS811に進み、キャップクローズを行う。
【0043】
また、吸引回復による消費インク量をさらに減らすために、所定時間Thが経過し、ドット数Dが所定ドット数Dhを超えていない時、回復吸引の吸引量を所定のドット数Dhとドット数Dの差(Dh−D)に対応した吸引量に変更し回復吸引を行ってもよい。
【0044】
以上の構成により、必要な吸引回復動作の回数を行いつつ、必要以上に吸引回数を行うことがないため、インクの消費を抑えることができ、且つ高品位な印字状態を保ちながら装置の信頼性を向上させることができる。
【0045】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
【0046】
この第3の実施形態では、第1の実施形態、第2の実施形態の構成において、例えば、キャップが複数設けられ、それぞれのキャップで独立して吸引回復処理を行うことが可能な回復手段を持っている場合の、キャップごとの吐出されるインクの排出量をそれぞれ測定を行ったり、またインクごとにインクの排出量(吐出したドット数)をそれぞれ測定し、所定時間Th内に、消費したインク量(例えばインクごとなら、CMYそれぞれのインク消費量)が、それぞれ所定以上になった場合、キャップオープンタイマー、ドットカウントのいずれもリセットを行い、どれか一つでも前記条件を満たさない時は、回復吸引を行う。
【0047】
次に、図9に示すフローチャートのステップS905、ステップS912からステップS915に基づいて、この第3の実施形態におけるキャップオープン時のタイマー吸引による回復動作の有無を一例としてインクごと(C,M,Y)のドットカウントに基づいて決定する場合について説明する。ここで、他のステップにおいては、第2の実施形態におけるフローチャートと同じなので、説明は省略する。
【0048】
まず、ステップS905で、キャップオープン経過時間Tが、所定のしきい値Th以上かどうか判断を行う。T≧Thの場合、ステップS912に進み、C、M、Yのそれぞれのドット数が所定のドット数Dhより全て大きい場合はステップS914へ、一つでも小さい場合はステップS913へ進む。ステップS913では回復吸引を行い、新しいインクにリフレッシュさせ、次のステップS914へ処理を進める。次にステップS914では、キャップオープンタイマーをリセットする。次にステップS915では、ドットカウントをリセットし、ステップS916に進みシーケンスを続ける。
【0049】
これによって、ある特定のキャップ、インクにおいて、使用頻度が低いものがある場合も、ノズル近傍において、インクの蒸発による固着や不純物の結晶化による印字不良を防ぐことができる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、記録ヘッドの吐出口をキャッピングするキャップがオープンしている時間を管理して、キャップオープン状態が所定時間続いた場合に回復吸引を行うことにより、ある特定のノズル列から吐出し続けることによって、使用していないノズル列のノズル近傍において、インクの蒸発が始まってしまい、固着や不純物の結晶化によりノズルの目詰まりが発生するのを最小限に抑え、高品質な印字を保つことができる。
【0051】
また、キャップ別、インク別にドット数を管理することで、余分な吸引回復の動作回数を減らし、インクの消費量を抑えつつ、高品位な記録を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す概観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の回復系の構成例一実施の形態を示す模式図である。
【図3】キャップ部分の拡大断面図である。
【図4】記録ヘッドの吐出口面の説明図である。
【図5】本発明に関わるインクジェット記録装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における一液室当りのインク消費量とキャップオープン時間の関係を表すグラフである。
【図7】本発明の第1の実施形態における通常記録動作時のシーケンスを示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態における記録比率設定時のシーケンスを示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施形態における両面記録動作時のシーケンスを示すフローチャートである。
【符号の説明】
20 キャリッジ
21 記録ヘッド
22 インクタンク
40 キャップ
50 回復系
52 吸引ポンプ
58 大気連通弁
70 ブレード
71 ブレードホルダー
60 CPU
61 ROM
62 RAM
67 回復系制御回路
68 回復系モータ
76 キャリッジ制御回路
77 ヘッド駆動制御回路
78 紙送り制御回路
Claims (15)
- 記録ヘッドに備えられた複数の吐出口から記録媒体上にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドのインク吐出性能を保持するための回復処理を行う回復手段と、
前記記録ヘッドの複数の吐出口が備えられた吐出口面をキャップするためのキャップ部材と、前記キャップ部材が前記吐出口面をキャップしていない時間を計測する計測手段と、
前記吐出口面をキャップしていない時間中に前記記録ヘッドから吐出されるインク量を算出する算出手段と、
前記キャップ部材が前記吐出口面をキャップしても前記計測した時間をリセットすることなく累積し、該累積した時間が所定時間を超えたか否かを判断し、前記累積時間が所定時間を超えたと判断した場合にさらに前記算出手段によって算出された前記インク量が所定量に満たないかを判断するとともに、前記累積時間が所定時間を超え且つ前記インク量が所定量に満たないことに応じて前記回復手段に前記回復処理を行わせる制御手段と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 記録ヘッドに備えられた複数の吐出口から記録媒体上にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドのインク吐出性能を保持するための回復処理を行う回復手段と、
前記記録ヘッドの複数の吐出口が備えられた吐出口面をキャップするためのキャップ部材と、前記記録媒体上に記録を行っている時間を計測する計測手段と、
前記記録を行っている時間中に前記記録ヘッドから吐出されるインク量を算出する算出手段と、前記キャップ部材が前記吐出口面をキャップしても前記計測した時間をリセットすることなく累積し、該累積した時間が所定時間を超えたか否かを判断し、前記累積時間が所定時間を超えたと判断した場合にさらに前記算出手段によって算出された前記インク量が所定量に満たないかを判断するとともに、前記累積時間が所定時間を超え且つ前記インク量が所定量に満たないことに応じて前記回復手段に前記回復処理を行わせる制御手段と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記制御手段は、前記回復処理が行われたことに応じて前記累積時間をリセットすることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
- 前記キャップ部材が前記吐出口面をキャップしているキャッピング状態と、前記キャップ部材が前記吐出口面をキャップしていないキャップオープン状態とに、前記キャップ部材を移動させるためのキャッピング手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 前記回復手段によって行われる前記回復処理は、吸引により前記複数の吐出口からインクを排出させる吸引回復処理を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 前記制御手段は、前記インク量が前記所定量に満たないことに応じて前記累積時間と前記インク量をリセットすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 前記算出手段は、前記記録ヘッドから吐出されたインク滴数をカウントすることにより、前記インク量を算出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 記録すべき記録データの有無を判断する手段と、
前記累積時間および前記インク量を記憶する記憶手段とを備え、
前記制御手段は、前記記録すべき記録データが無いことに応じて前記キャップ部材が前記吐出口面をキャップするよう前記キャッピング手段を制御するとともに、前記累積時間と前記インク量とを前記記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。 - 前記インク量に基づいて、前記回復手段による前記回復処理の動作を異ならせることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 前記回復手段によって行われる前記回復処理は、吸引により前記複数の吐出口からインクを排出させる吸引回復処理であり、前記吸引の量を異ならせることにより前記回復処理の動作を異ならせることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置。
- 前記記録ヘッドはインク色ごとに複数設けられ、
前記算出手段は、前記インク色ごとに前記記録ヘッドから吐出されるインク量を算出し、
前記制御手段は、前記累積時間が所定時間を超え且つ前記算出手段によって算出された前記インク色ごとの前記インク量のうち少なくとも一色の前記インク量が所定量に満たないことに応じて、前記回復手段に前記回復処理を行わせることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。 - 前記キャップ部材は複数設けられ、
前記計測手段は、前記キャップ部材ごとに前記吐出口面をキャップしていない時間を計測し、
前記制御手段は、前記キャップ部材ごとに前記累積時間が所定時間を超え且つ前記インク量が所定量に満たないことに応じて前記回復手段に前記回復処理を行わせることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。 - 記録ヘッドに備えられた複数の吐出口から記録媒体上にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置の回復制御方法において、
前記記録ヘッドのインク吐出性能を保持するための回復処理を行う回復工程と、
キャップ部材により前記記録ヘッドの複数の吐出口が備えられた吐出口面をキャップする工程と、
前記キャップ部材が前記吐出口面をキャップしていない時間を計測する計測工程と、
前記吐出口面をキャップしていない時間中に前記記録ヘッドから吐出されるインク量を算出する算出工程と、
前記キャップ部材が前記吐出口面をキャップしても前記計測した時間をリセットすることなく累積し、該累積した時間が所定時間を超えたか否かを判断し、前記累積時間が所定時間を超えたと判断した場合にさらに前記算出工程において算出された前記インク量が所定量に満たないかを判断するとともに、前記累積時間が所定時間を超え且つ前記インク量が所定量に満たないことに応じて前記回復工程において前記回復処理を行わせる制御工程と、
を有することを特徴とする回復制御方法。 - 記録ヘッドに備えられた複数の吐出口から記録媒体上にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置の回復制御方法において、
前記記録ヘッドのインク吐出性能を保持するための回復処理を行う回復工程と、
キャップ部材により前記記録ヘッドの複数の吐出口が備えられた吐出口面をキャップする工程と、
前記記録媒体上に記録を行っている時間を計測する計測工程と、
前記記録を行っている時間中に前記記録ヘッドから吐出されるインク量を算出する算出工程と、
前記キャップ部材が前記吐出口面をキャップしても前記計測した時間をリセットすることなく累積し、該累積した時間が所定時間を超えたか否かを判断し、前記累積時間が所定時間を超えたと判断した場合にさらに前記算出工程において算出された前記インク量が所定量に満たないかを判断するとともに、前記累積時間が所定時間を超え且つ前記インク量が所定量に満たないことに応じて前記回復工程において前記回復処理を行わせる制御工程と、
を有することを特徴とする回復制御方法。 - 前記制御工程において、前記回復処理が行われたことに応じて前記累積時間がリセットされることを特徴とする請求項13または14に記載の回復制御方法。
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