JP4581904B2 - 電子写真用記録用紙 - Google Patents
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さらに、特許文献2に記載された用紙のCD方向の伸縮率を小さくし、表裏のCD方向伸縮率差を小さくする方法では、用紙中の水分量が多くなると熱定着後のカールを低減することは困難になる。これは、電子写真方式の画像形成装置に内蔵される一般的な熱定着器は、加熱部と加圧部との間を用紙が通過することによりトナー像を定着する構成を有し、定着に際しては加熱部と加圧部とで温度が異なることに加え、水分を多く含む用紙においては、水分による表裏の伸縮挙動が異なるためである。
このため、従来の如く用紙の寸法変化を小さくすると共に、さらに用紙の寸法変化の表裏差だけを小さくしたとしても、上記技術の用紙を、特に、高湿条件下で使用すると、立ち上がり時間の短縮を目的に定着部材のみに加熱源を有して用紙の片面側から熱のかかる小型のプリンターなどでは、片面側からのみの水分蒸発が顕著に起こるために、熱定着後のカールが大きくなる。それゆえ、用紙の端部が装置内の部材と接触して紙詰まり等が容易に発生する。このように上述した従来技術では、熱定着後カールを十分に低減することはできなかった。
即ち、本発明は、
<1>
パルプ繊維を主成分として含む電子写真用記録用紙において、マルチトール、ラクチトール、エリストール、及びマルトシルトレハロースからなる群から選ばれる水溶性高結晶化材料を含有することを特徴とする電子写真用記録用紙である。
前記水溶性高結晶化材料の融点が、100℃以上であることを特徴とする<1>に記載の電子写真用記録用紙である。
前記水溶性高結晶化材料の含有量が、0.1g/m2以上であることを特徴とする<1>に記載の電子写真用記録用紙である。
CD伸縮率(%/%)が、0.12以下であることを特徴とする<1>に記載の電子写真用記録用紙である。
CD方向の伸縮率表裏差の絶対値が0.006(%/%)以下である<1>に記載の電子写真用記録用紙である。
本発明の電子写真用記録用紙(以下、「記録用紙」と称す場合がある)は、パルプ繊維を主成分として含む電子写真用記録用紙において、水溶性高結晶化材料を含有することを特徴とする。
本発明の電子写真用記録用紙は、水溶性高結晶化材料を含むため熱定着後に発生するカールを抑制することができ、特に用紙の水分含有率が高くなり、従来の記録用紙では定着後カールが容易に発生してしまうような湿度50%以上の比較的湿度の高い環境下、特によりカールが発生しやすい湿度80%以上の高湿環境下や、熱定着時に用紙の片面側からより熱のかかる電子写真方式の画像形成装置(一般的には給紙および排紙トレイを除いた本体部の容積が0.25m3以下の小型の装置あるいは0.10m3以下の超小型の装置で、定着機として加熱ロールを備えた装置であれば、加熱ロール径が35mm以下の装置)を用いた場合においても熱定着後に発生するカールを抑制することが容易である。
その結果、電子写真方式において水分含有率の高い記録用紙は、主に加熱定着後の水分脱湿による表裏の収縮率差により発生し、水分含有率が高い記録用紙ほど表裏の収縮率差が生じ大きなカールが発生していることを確認した。
さらに、本発明者等は、検討を重ねた結果、水溶性であり、且つ高結晶化した材料を用紙に含有させると吸湿性が抑制され、吸湿性を押さえる効果以上のカール低減効果があることを確認した。この理由は明確ではないが、水溶性の高結晶化材料は、多量の水分の存在下では容易に溶解し、用紙のセルロース繊維間に侵入してセルロース繊維と水素結合を形成するが、水分が蒸発して結晶化が起こると、高結晶化材料は環境湿度程度の水分下では吸湿性がほとんどないため、用紙全体の水分変化も小さくなり、用紙水分変化で起こるカールも抑えられていると推測される。さらに検討を進めると、セルロース繊維との親和性が良い親水性の高結晶化材料、さらに分子量が500以下の水溶性結晶化材料、そして糖、糖アルコールの水溶性の高結晶化材料を使用することが一層のカール低減することが可能であることを確認した。
ここで、吸熱ピークの測定は、セイコーインスツル(SII)株式会社製示差走査熱量計DSC6200を使用し、サンプル重量を10mg、昇温速度を10℃/分とし、測定温度を30℃から200℃までの範囲に設定して実施した。 なお、水溶性高結晶化材料の溶解性は、25℃における蒸留水またはイオン交換水100gあたり30g以上溶解することがより好ましく、吸熱ピークの融点におけるピーク強度は−20mW以下であることがより好ましい。
まず、記録用紙をマシン流れ方向(MD方向)に垂直な方向(CD方向)に長さが100mm、幅が50mmとなるように採取し、23℃、50%RH環境下に15時間以上調湿する。
この調湿後の記録用紙に対して、等比交換式伸縮計(王子工営製)を使用し、坪量の半分の張力をかけながら、温度23℃の環境の下で図1に示す様に65%RH→25%RH→65%RH→90%RH→65%RHの吸脱湿処理を各1時間(湿度間変更時間20分)3回繰り返した後、3サイクル目最後の65%RHから25%RHに吸脱湿処理を行い、3サイクル目最後の65%RHにおける記録用紙の寸法変化率と、3サイクル目最後の65%RHからさらに25%RHへと調湿した時のときの寸法変化率との差(図1中に示す寸法変化率a)を測定すると共に、この時の3サイクル目最後の65%RHの用紙水分(W65)および25%RHの用紙水分(W25)を測定し、下式(1)によって求めた。
・式(1) CD伸縮率(%/%)=a/(W65−W25)
ここで、図1は、寸法変化率aの定義を説明するためのグラフであり、縦軸が寸法変化率、横軸が相対湿度(%)の変化・サイクルの進行を表し、図1中の「●」印に沿って示す数字は相対湿度を表す。
なお、CD伸縮率表裏差は以下のようにして求めた。
まず、記録用紙のCD方向が長辺となるように幅5mm、長さ100mmの短冊状の紙片を作製する。次に、この紙片を23℃、50%の環境下に15時間以上調湿後、図2(A)に示すように片持ち梁で、紙片の長辺方向が鉛直方向と直交し、短辺方向が鉛直方向と一致するように紙片の一方の端を支持する。ここで、長さ100mmのうち50mmを支持し、残りの50mmは宙に浮いた状態とする。なお、図2は、CD伸縮率表裏差の測定方法を説明するための概略図であり、図2(A)は、片持ち梁で支持された紙片を側面から見た概略図であり、図2中、1は紙片、2は片持ち梁を表し、図2(A)中の矢印は鉛直方向を意味する。
・式(2) k=2ΔY/(ΔX2+ΔY2)
・式(3) M={(Wg−Wo)/Wg}×100
但し、式(3)中、Mは紙片の水分(%)、Wgは、カール測定用紙片と同じ湿度下において測定した紙片の重量、Woは全てのカールの測定が終了した後の紙片の絶乾重量を表す。
・式(4) Δk=(k80−k25)/ (M80−M25)
・式(5) (Bf−Bw)=−2tΔk/3
具体的には、ワイヤーと原料噴射(ジェット)の速度差の調整、ジェットのワイヤー上への着地位置(フォーミングボードとの相対的な位置関係)と引き続く各種脱水エレメントによる脱水速度(ギャップフォーマーやオントップフォーマーの場合の表裏脱水バランスを含む)の調整、ウエットプレス圧の調整等により、繊維配向、微細繊維(ファイン)比率、灰分比率、密度の表裏差をコントロールすることができ、これらの最適化により、CD伸縮率表裏差を−0.006〜0.006(%/%)の範囲に保持することができる。
前記填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の無機顔料、及び、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、キトサン粒子、セルロース粒子、ポリアミノ酸粒子、尿素樹脂等の有機顔料を挙げることができる。
さらにサイズ剤と繊維の定着剤とを組み合わせて使用することもできる。この場合には、定着剤として硫酸アルミニウム、カチオン化澱粉等を使用することができる。また、記録用紙の保存性を向上させる観点からは、中性サイズ剤を使用することが好ましい。サイズ度はサイズ剤の添加量によって調整する。
<実施例1>
パルプ原料として濾水度470mlの広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を使用し、次に示す内添薬品、填料をパルプ当たりの乾燥表示で添加して紙料とした。
・アルケニル無水コハク酸(ファイブラン81 日本ヌエスシー):0.1質量部
・カチオン化澱粉(Cato−304 日本エヌエスシー):0.5質量部
・軽質炭酸カルシウム(TP121奥多摩工業社製):5質量部
この紙料を使用して、長網抄紙機で抄紙し、サイズプレス、マシンカレンダーを通し、坪量70g/m2の原紙を得た。
・水:83質量部
・表面サイズ剤(荒川化学工業社ポリマロン1355、固形分25%):6質量部
・酸化澱粉C(エースC 王子コーンスターチ社製):10質量部
・導電剤 硫酸ナトリウム:1質量部
・水溶性高結晶化材料(ラクチトール、分子量344、融点122℃ 和光純薬試薬):6.2質量部
尚、CD伸縮率(%/%)は、抄紙時のワイヤー速度とパルプ噴き出し速度の調整により繊維配向比を変えることで変化させ、また、CD伸縮率表裏差はワイヤーからの脱水速度及びワイヤー速度とパルプ噴き出し速度の調整により変化させ実施例1の記録用紙を得た。実施例1の記録用紙のCD伸縮率は0.12(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.006(%/%)であった。
水溶性高結晶化材料としてマルチトール(分子量344、融点150℃ 和光純薬試薬)を用いた以外は実施例1同様にして作製し、実施例2の記録用紙を得た。
実施例2の記録用紙のCD伸縮率は0.12(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.006(%/%)であった。
パルプの濾水度を420mlとし、水溶性高結晶化材料としてエリスリトール(分子量122、融点121℃ 和光純薬試薬)を用い、ワイヤーからの脱水速度を上げ及びワイヤー速度を上げた以外は実施例1と同様に作製し、実施例3の記録用紙を得た。
実施例3の記録用紙のCD伸縮率は0.14(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.008(%/%)であった。
水溶性高結晶化材料としてエリスリトール(分子量122、融点121℃ 和光純薬試薬)を使用し、ワイヤーからの脱水速度を上げた以外は実施例1と同様に作製し、実施例4の記録用紙を得た。
実施例4の記録用紙のCD伸縮率は0.12(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.008(%/%)であった。
水溶性高結晶化材料としてエリスリトール(分子量122、融点121℃ 日研化成社製)を使用し、ワイヤー速度を遅くし、さらにワイヤーからの脱水速度を下げた以外は実施例1と同様に作製し、実施例5の記録用紙を得た。
実施例5の記録用紙のCD伸縮率は0.10(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.004(%/%)であった。
水溶性高結晶化材料としてマルトシルトレハロース(分子量342、融点98℃ 林原社製)を使用し、水溶性高結晶化材料の含有量を増した以外は実施例5と同じ条件で記録用紙を作製し、実施例6の記録用紙を得た。
実施例6の記録用紙のCD伸縮率は0.10(%/%)、CD伸縮率表裏差は0.004(%/%)であった。
水溶性高結晶化材料としてエリスリトール(分子量122、融点121℃ 日研化成社製)を使用し、ワイヤー速度を遅くし、さらにワイヤーからの脱水速度を下げ、水溶性結晶材料の含有量を減した以外は実施例1と同様に作製し、実施例7の記録用紙を得た。
実施例7の記録用紙のCD伸縮率は0.10(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.004(%/%)であった。
水溶性高結晶化材料を添加しない以外は実施例1と同じ条件で記録用紙を作製し、比較例1の記録用紙を得た。
比較例1の記録用紙のCD伸縮率は0.12(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.006(%/%)であった。
高結晶化材料でない水溶性材料としてショ糖(分子量342、融点185℃ 和光純薬試薬)を使用した以外は実施例1と同じ条件で記録用紙を作製し、比較例2の記録用紙を得た。
比較例2の記録用紙のCD伸縮率は0.12(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.006(%/%)であった。
水溶性高結晶化材料を添加しない以外は実施例3と同じ条件で記録用紙を作製し、比較例3の記録用紙を得た。比較例3の記録用紙のCD伸縮率は0.14(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.009(%/%)であった。
高結晶化材料でない水溶性材料としてマルトトリオース(分子量504、融点135℃ 和光純薬工業試薬)を使用した以外は実施例1と同じ条件で記録用紙を作製し、比較例4の記録用紙を得た。比較例4の記録用紙のCD伸縮率は0.12(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.006(%/%)であった。
市販の用紙(紀州製紙社製、再生PPC100)を比較例5の記録用紙として使用した。比較例5の記録用紙のCD伸縮率は0.16(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.010(%/%)であった。
実施例1〜7及び比較例1〜5の電子写真用記録用紙について電子写真記録装置として、富士ゼロックス(株)製のDocuPrint260を用い、定着温度を190℃に設定して、印刷後のカール、定着器巻き付き性を下記の基準で行なった。その結果を表1に示す。
23℃、65%RH環境下に15時間以上調湿した、実施例および比較例の記録用紙を用いて、用紙の長手部分を先端にして、画像濃度5%の文書を黒単色で印字する。この時、それぞれの記録紙各10枚を連続で印字する。印字後速やかに平らな測定台に載せ、測定台から記録紙の一番下までの距離を測定する。この時4隅を測定し、最も距離の大きい場所について以下の判定基準で評価し、◎、○、○−を許容範囲とした。用紙の大きさはA4サイズである。
◎:10mm未満
○:10mm以上15mm未満
○−:15mm以上20mm未満
△:20mm以上30mm未満
×:30mm以上
28℃、85%RH環境下に15時間以上調湿した、実施例および比較例の記録用紙のA4サイズを用いて、用紙の長手部分を先端となるようにセット(ロングエッジフィード)し、短部両端に幅5cm長さ18cmの黒ベタ画像を乗せ、連続10枚印字を行う。定着器への巻付き及び印字後黒ベタ部分の画像を目視にて観察し、記録用紙の定着器への巻き付き跡が発生しているかを確認した。◎、○を許容範囲とした。
◎:定着器への巻付き発生なし、巻き付き跡の発生も無い
○:定着器への巻付き発生なし、巻き付き跡の発生が10枚中1枚僅かに発生。
△:定着器への巻付き発生なし、巻き付き跡の発生が10枚中2枚以上発生。
×:定着器にまき付きJamが発生した。
2 片持ち梁
3 基準線
4 紙片1の長手方向において片持ち梁2で支持されない側の端部
5 端部4を始発点として基準線3と直交するラインと基準線3との交点
6 基準線3が片持ち梁2と交差する点
Claims (5)
- パルプ繊維を主成分として含む電子写真用記録用紙において、マルチトール、ラクチトール、エリストール、及びマルトシルトレハロースからなる群から選ばれる水溶性高結晶化材料を含有することを特徴とする電子写真用記録用紙。
- 前記水溶性高結晶化材料の融点が、100℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用記録用紙。
- 前記水溶性高結晶化材料の含有量が、0.1g/m2以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用記録用紙。
- CD伸縮率(%/%)が、0.12以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用記録用紙。
- CD方向の伸縮率表裏差の絶対値が0.006(%/%)以下である請求項1に記載の電子写真用記録用紙。
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