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JP4581904B2 - 電子写真用記録用紙 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真方式による画像の形成に適した記録用紙に関するものであり、詳細には、表面に顔料を含む塗工層を持たない、いわゆる普通紙と呼ばれる電子写真用記録用紙に関する。
レーザープリンターや複写機といった、電子写真方式の機器はいまやほとんどのオフィスに浸透している。そこで主に使用されているのが、いわゆる普通紙と呼ばれる表面に顔料を含む塗工層を持たない記録用紙である。
しかしながら、電子写真記録方式では紙上に転写されたトナー像を熱定着する際に、紙の片面から加熱されるため加熱面からの脱湿により紙がカールする。特に湿度の高い時期は、水分を多く含んだ用紙においてはカール発生量が大きく、そのため排紙部での紙詰まり、排紙トレイ収容性不良などの問題があった。
この熱定着後に発生するカールを改善するために、さまざまな検討がなされてきた。例えば、古紙含有紙について20℃、65%RHでの平衡水分量のみを規定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、用紙のCD方向の伸縮率を小さくし、表裏のCD方向伸縮率差を小さくする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。CD方向の伸縮率を小さくし、表裏のCD方向伸縮率差を小さくする方法も提案されている。
特開平3−287894号公報 特開平5−341554号公報
しかしながら、特許文献1に記載された用紙のように、用紙の平衡水分を低下させるだけではカール低減効果は小さく、トナーの転写不良が発生する可能性がある。
さらに、特許文献2に記載された用紙のCD方向の伸縮率を小さくし、表裏のCD方向伸縮率差を小さくする方法では、用紙中の水分量が多くなると熱定着後のカールを低減することは困難になる。これは、電子写真方式の画像形成装置に内蔵される一般的な熱定着器は、加熱部と加圧部との間を用紙が通過することによりトナー像を定着する構成を有し、定着に際しては加熱部と加圧部とで温度が異なることに加え、水分を多く含む用紙においては、水分による表裏の伸縮挙動が異なるためである。
また、最近の複写機やプリンターは、小型化、自動両面コピー、自動製本、立ち上がり時間の短縮等といった多機能化に伴って、装置の機構やペーパーパスが複雑化し、また熱定着部材(定着ロールあるいは定着ベルト)の小径化、複雑化も進んでいる。
このため、従来の如く用紙の寸法変化を小さくすると共に、さらに用紙の寸法変化の表裏差だけを小さくしたとしても、上記技術の用紙を、特に、高湿条件下で使用すると、立ち上がり時間の短縮を目的に定着部材のみに加熱源を有して用紙の片面側から熱のかかる小型のプリンターなどでは、片面側からのみの水分蒸発が顕著に起こるために、熱定着後のカールが大きくなる。それゆえ、用紙の端部が装置内の部材と接触して紙詰まり等が容易に発生する。このように上述した従来技術では、熱定着後カールを十分に低減することはできなかった。
本発明は、上記問題を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、電子写真方式により画像を形成する場合の定着後に発生するカールを抑制することができる電子写真用記録用紙を提供することを課題とする。
本発明者らは、電子写真方式記録方式の画像記録に用いる記録用紙のカールの低減について鋭意検討した結果、下記の本発明が前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
<1>
パルプ繊維を主成分として含む電子写真用記録用紙において、マルチトール、ラクチトール、エリストール、及びマルトシルトレハロースからなる群から選ばれる水溶性高結晶化材料を含有することを特徴とする電子写真用記録用紙である。

前記水溶性高結晶化材料の融点が、100℃以上であることを特徴とする<1>に記載の電子写真用記録用紙である。

前記水溶性高結晶化材料の含有量が、0.1g/m2以上であることを特徴とする<1>に記載の電子写真用記録用紙である。

CD伸縮率(%/%)が、0.12以下であることを特徴とする<1>に記載の電子写真用記録用紙である。

CD方向の伸縮率表裏差の絶対値が0.006(%/%)以下である<1>に記載の電子写真用記録用紙である。
本発明によれば、電子写真方式により画像を形成する場合の定着後に発生するカールを抑制することができる電子写真用記録用紙を提供することができる。
<電子写真用記録用紙>
本発明の電子写真用記録用紙(以下、「記録用紙」と称す場合がある)は、パルプ繊維を主成分として含む電子写真用記録用紙において、水溶性高結晶化材料を含有することを特徴とする。
本発明の電子写真用記録用紙は、水溶性高結晶化材料を含むため熱定着後に発生するカールを抑制することができ、特に用紙の水分含有率が高くなり、従来の記録用紙では定着後カールが容易に発生してしまうような湿度50%以上の比較的湿度の高い環境下、特によりカールが発生しやすい湿度80%以上の高湿環境下や、熱定着時に用紙の片面側からより熱のかかる電子写真方式の画像形成装置(一般的には給紙および排紙トレイを除いた本体部の容積が0.25m3以下の小型の装置あるいは0.10m3以下の超小型の装置で、定着機として加熱ロールを備えた装置であれば、加熱ロール径が35mm以下の装置)を用いた場合においても熱定着後に発生するカールを抑制することが容易である。
尚、本発明の記録用紙は顔料を実質的に含む塗工層を持たない、いわゆる普通紙である。また、本発明の記録用紙には、パルプ繊維の他に、填料も主成分として含まれていることが好ましい。なお、パルプ繊維と填料との合計含有量が80質量%以上であることが好ましい。
本発明者等は、上記の本発明の記録用紙を見出す為に、まず、電子写真方式に利用される記録用紙において、特に水分含有率の高い記録用紙の熱定着後カールを抑制する方法について鋭意検討した。
その結果、電子写真方式において水分含有率の高い記録用紙は、主に加熱定着後の水分脱湿による表裏の収縮率差により発生し、水分含有率が高い記録用紙ほど表裏の収縮率差が生じ大きなカールが発生していることを確認した。
そこで本発明者等は、水分含有率の高い記録用紙の吸湿性を抑制することを試みた。しかし、吸湿を抑制するだけでは十分なカール低減効果が得られないことを確認した。
さらに、本発明者等は、検討を重ねた結果、水溶性であり、且つ高結晶化した材料を用紙に含有させると吸湿性が抑制され、吸湿性を押さえる効果以上のカール低減効果があることを確認した。この理由は明確ではないが、水溶性の高結晶化材料は、多量の水分の存在下では容易に溶解し、用紙のセルロース繊維間に侵入してセルロース繊維と水素結合を形成するが、水分が蒸発して結晶化が起こると、高結晶化材料は環境湿度程度の水分下では吸湿性がほとんどないため、用紙全体の水分変化も小さくなり、用紙水分変化で起こるカールも抑えられていると推測される。さらに検討を進めると、セルロース繊維との親和性が良い親水性の高結晶化材料、さらに分子量が500以下の水溶性結晶化材料、そして糖、糖アルコールの水溶性の高結晶化材料を使用することが一層のカール低減することが可能であることを確認した。
さらに、本発明者等は、水溶性結晶材料を含有した記録用紙のCD方向の伸縮率、およびその表裏差についても検討を試みたところ、CD方向の伸縮率を小さくし、表裏のCD伸縮率差を小さくすることで、さらなるカール低減効果があることを見出した。
また融点が100℃以上の水溶性高結晶化材料を選定することで、定着器への巻付き現象を抑えることを確認した。
なお、本発明において「水溶性高結晶化材料」とは、純水(25℃における蒸留水またはイオン交換水)100gあたり20g以上溶解し、且つ、示差走査熱量計DSC測定により吸熱ピーク即ち融点が明確に現れ、この吸熱ピークの融点におけるピーク強度が−10mW以下である物質を意味する。
ここで、吸熱ピークの測定は、セイコーインスツル(SII)株式会社製示差走査熱量計DSC6200を使用し、サンプル重量を10mg、昇温速度を10℃/分とし、測定温度を30℃から200℃までの範囲に設定して実施した。 なお、水溶性高結晶化材料の溶解性は、25℃における蒸留水またはイオン交換水100gあたり30g以上溶解することがより好ましく、吸熱ピークの融点におけるピーク強度は−20mW以下であることがより好ましい。
述したような溶解性とDSC測定における吸熱特性とを有する糖や糖アルコール具体例としては、マルチトール、ラクチトール、エリストール、ツイントース、パラチノース、マルトシルトレハロースなどがあげられる。本発明においては、マルチトール、ラクチトール、エリストール、及びマルトシルトレハロースからなる群から選ばれる水溶性高結晶化材料が用いられる。
また、水溶性高結晶化材料の分子量は500以下であることが好ましく、350以下であることがより好ましい。水溶性高結晶化材料の分子量が小さいほどカールをより一層低減させることができる。但し、材料入手の容易性等、実用上の観点からは高結晶化材料の分子量は100以上であることが好ましい。
さらに水溶性高結晶化材料の融点は100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。本発明の記録用紙は、通常、原紙表面に高結晶化材料を塗布する工程を経て形成されるが、この場合、融点が100℃を下回ると、定着時に定着器からの剥離不良が発生する場合がある。なお、水溶性高結晶化材料の融点の上限は特に限定されないが、実用上は200℃以下であることが好ましい。
原紙表面に水溶性高結晶化材料を塗布形成する場合、この塗布形成に用いる溶液としては水溶性高結晶化材料と水溶性樹脂とを含む処理液を用いることができる。水溶性樹脂としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、変成カチオン化ポリビニルアルコール、カチオン化デンプン、酸化デンプン、アニオン化デンプン、ノニオン化デンプン、酵素変性デンプン、エーテル化デンプン等との併用が挙げられる。
また、前記処理液は、ポンド方式のサイズプレス処理の他、メタリングサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ロールコーター、バーコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、ブレードコーター等の通常使用されている塗工手段によって、原紙の表面に塗布することができる。
本発明における水溶性高結晶化材料の含有量は、0.1〜4g/m2の範囲であることが好ましく、0.2〜2g/m2の範囲であることがより好ましい。水溶性高結晶化材料の含有量が4g/m2を超えると、普通紙としての質感が損なわれる場合がある。また、0.1g/m2未満であると、カールを低減させる効果が小さくなる場合がある。
本発明の記録用紙のCD伸縮率(%/%)は0.12以下であることが好ましく、0.10以下であることがより好ましく、CD伸縮率は小さいほど好ましい。CD伸縮率を0.12以下とすることで一層のカール低減効果を発揮することができる。
CD伸縮率を小さくする方法としては、ワイヤー速度と原料噴射(ジェット)速度の調整やワイヤーシェーキングにより繊維配向(パルプ繊維が流れ方向に並んでいる傾向)を弱める方法、フェルト搾水時のウエットプレス圧を低くする方法、パルプの叩解を進めるのを避け、濾水度を高くする方法、合成繊維を混ぜあわせる方法などが挙げられる。
なお、CD伸縮率(%/%)は以下のようにして求めた。
まず、記録用紙をマシン流れ方向(MD方向)に垂直な方向(CD方向)に長さが100mm、幅が50mmとなるように採取し、23℃、50%RH環境下に15時間以上調湿する。
この調湿後の記録用紙に対して、等比交換式伸縮計(王子工営製)を使用し、坪量の半分の張力をかけながら、温度23℃の環境の下で図1に示す様に65%RH→25%RH→65%RH→90%RH→65%RHの吸脱湿処理を各1時間(湿度間変更時間20分)3回繰り返した後、3サイクル目最後の65%RHから25%RHに吸脱湿処理を行い、3サイクル目最後の65%RHにおける記録用紙の寸法変化率と、3サイクル目最後の65%RHからさらに25%RHへと調湿した時のときの寸法変化率との差(図1中に示す寸法変化率a)を測定すると共に、この時の3サイクル目最後の65%RHの用紙水分(W65)および25%RHの用紙水分(W25)を測定し、下式(1)によって求めた。
・式(1) CD伸縮率(%/%)=a/(W65−W25)
ここで、図1は、寸法変化率aの定義を説明するためのグラフであり、縦軸が寸法変化率、横軸が相対湿度(%)の変化・サイクルの進行を表し、図1中の「●」印に沿って示す数字は相対湿度を表す。
また、本発明の記録用紙のCD伸縮率表裏差の絶対値は0.006(%/%)以下あることが好ましく、0.005(%/%)以下であることがより好ましい。0.006(%/%)以下とすることで一層のカール低減効果を発揮することができる。
なお、CD伸縮率表裏差は以下のようにして求めた。
まず、記録用紙のCD方向が長辺となるように幅5mm、長さ100mmの短冊状の紙片を作製する。次に、この紙片を23℃、50%の環境下に15時間以上調湿後、図2(A)に示すように片持ち梁で、紙片の長辺方向が鉛直方向と直交し、短辺方向が鉛直方向と一致するように紙片の一方の端を支持する。ここで、長さ100mmのうち50mmを支持し、残りの50mmは宙に浮いた状態とする。なお、図2は、CD伸縮率表裏差の測定方法を説明するための概略図であり、図2(A)は、片持ち梁で支持された紙片を側面から見た概略図であり、図2中、1は紙片、2は片持ち梁を表し、図2(A)中の矢印は鉛直方向を意味する。
続いて、片持ち梁で支持された紙片が放置された環境の湿度を、温度を23℃に保持したまま湿度を50%RH(3時間)−85%RH(3時間)−25%RH(2時間)−85%RH(3時間)−25%RH(2時間)−80%RH(4時間)−25%RH(4時間)の如く変化させる(なお、湿度の変更にかける時間はそれぞれ40分である)。これにより紙片中に含まれるの水分を変化させ、図2(B)に示すように紙片にカールを発生させ、80%RHおよび最後の25%RH調湿後のΔXおよびΔYの値を測定し、下式(2)により各々の湿度における紙片のカール曲率kを求める。
・式(2) k=2ΔY/(ΔX2+ΔY2
なお、図2(B)は、片持ち梁で支持された紙片がカールした状態を示す概略図であり、図2(A)を真上方向から見た状態を示す図である。図2(B)中、3は紙片が真っ直ぐな状態(カールする前の状態)と仮定した場合に紙片が存在するライン(基準線)、4は紙片1の長手方向において片持ち梁2で支持されない側の端部を表し、5は端部4を始発点として基準線3と直交するラインと基準線3との交点、6は基準線3が片持ち梁2と交差する点を表し、ΔXは交点5と交点6との直線距離、ΔYは端部4と交点5との直線距離を意味する。
また、カール測定用とは別途に準備した紙片を用いて下式(3)により、上述と同様に湿度を変化させ、80%RHおよび最後の25%RH調湿後における水分(M)を求める。
・式(3) M={(Wg−Wo)/Wg}×100
但し、式(3)中、Mは紙片の水分(%)、Wgは、カール測定用紙片と同じ湿度下において測定した紙片の重量、Woは全てのカールの測定が終了した後の紙片の絶乾重量を表す。
次に、式(2)および式(3)に示されるkおよびMの値として、50%RH−85%RH−25%RH−85%RH−25%RH−80%RH−25%RHの如く繰り返す加湿脱湿サイクルでの最終の湿度25%RH及び湿度80%RHにおける紙片の水分、M25、M80、及び、カール曲率、k25とk80を求め、これらの値から下式(4)により紙片の水分が1%変化した場合の曲率変化Δkを求める。
・式(4) Δk=(k80−k25)/ (M80−M25)
ここで、記録用紙がフェルト側とワイヤー側との2層から構成されていると仮定して、それぞれの層の水分が1%変化した場合の寸法変化率、即ちそれぞれの伸縮率をBf、BwとするとCD伸縮率表裏差(Bf−Bw)〔%〕は、曲率変化Δkおよび記録用紙の厚みをtを用いると、近似的に下式(5)で表される。
・式(5) (Bf−Bw)=−2tΔk/3
CD伸縮率表裏差を小さくする方法として、フェルト側とワイヤー側との繊維配向、微細繊維(ファイン)比率、灰分比率、密度を整える方法、またサイズプレスでの表裏塗布量(濃度)を調整する方法などがある。
具体的には、ワイヤーと原料噴射(ジェット)の速度差の調整、ジェットのワイヤー上への着地位置(フォーミングボードとの相対的な位置関係)と引き続く各種脱水エレメントによる脱水速度(ギャップフォーマーやオントップフォーマーの場合の表裏脱水バランスを含む)の調整、ウエットプレス圧の調整等により、繊維配向、微細繊維(ファイン)比率、灰分比率、密度の表裏差をコントロールすることができ、これらの最適化により、CD伸縮率表裏差を−0.006〜0.006(%/%)の範囲に保持することができる。
本発明の記録用紙に使用されるパルプ繊維としては、化学パルプ、具体的には広葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等の他、木材及び綿、麻、じん皮等の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプ等が好ましく挙げられる。
また、木材やチップを機械的にパルプ化したグランドウッドパルプ、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、及びチップをやや軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ、中でも高収率が特徴であるケミサーモメカニカルパルプ等も使用できる。これらはバージンパルプのみで使用してもよいし、必要に応じて古紙パルプを加えてもよい。
特に前記バージンパルプとしては、塩素ガスを使用せず二酸化塩素を使用する漂白方法(Elementally Chrorine Free:ECF)や、塩素化合物を一切使用せずにオゾン/過酸化水素等を主に使用して漂白する方法(Total Chlorine Free:TCF)で漂白処理されたものであることが好ましい。
また、前記古紙パルプの原料としては、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙などの上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙;を配合することができる。
本発明の記録用紙の作製に用いられる原紙において使用する古紙パルプは、前記古紙パルプの原料を、オゾン漂白処理又は過酸化水素漂白処理の少なくとも一方で処理して得られたものであることが好ましい。
前記オゾン漂白処理は、上質紙に通常含まれている蛍光染料等を分解する作用があり、前記過酸化水素漂白処理は、脱墨処理時に使用されるアルカリによる黄変を防ぐ作用がある。
前記古紙パルプは、オゾン漂白処理又は過酸化水素漂白処理の二つの処理を組み合わせることによって、古紙の脱墨を容易にするだけでなくパルプの白色度もより向上させることができる。また、パルプ中の残留塩素化合物を分解・除去する作用もあるため、塩素漂白されたパルプを使用した古紙の有機ハロゲン化合物含有量低減において多大な効果を得ることができる。また、中質古紙を使用する場合は、吸湿性の観点から漂白工程にてリグニン量が少ないものを使用することが好ましい。
パルプの叩解はできるだけ進めないほうが良く本発明において濾水度は430ml〜500mlc.s.f.(カナダ標準フリーネス)の範囲が好ましい。
また、本発明の記録用紙には、パルプ繊維に加えて、不透明度、白さ、及び表面性を調整するため填料を添加する。また、記録用紙中のハロゲン量を低減したい場合には、ハロゲンを含まない填料を使用することが好ましい。
前記填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の無機顔料、及び、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、キトサン粒子、セルロース粒子、ポリアミノ酸粒子、尿素樹脂等の有機顔料を挙げることができる。
添加する填料の量としては、記録用紙中に5〜20質量%の添加が好ましく、より好ましくは10〜15質量%である。填料の量が多すぎると紙紛の発生が著しくなり、搬送ロールの劣化、摩擦抵抗の低下による走行不良や現像部内への侵入による画質劣化を起こす場合がある。
また、用紙に古紙パルプを配合する場合には、古紙パルプ原料に含まれる灰分を予め推定して添加量を調整する必要がある。
本発明の記録用紙は、電子写真方式による画像形成に際して、十分なトナー転写性をもたせるためには、その表面電気抵抗率が、23℃、50%RH下で、1.0×109〜1.0×1012Ω/□の範囲であることが好ましく、5.0×109〜1.0×1012Ω/□の範囲であることがより好ましく、1.0×1010〜1.0×1011Ω/□の範囲であることがさらに好ましい。
また、同様の観点から、本発明の記録用紙の体積電気抵抗率は1.0×1010〜1.0×1012Ω・cmの範囲であることが好ましく、1.3×1010〜1.6×1011Ω・cmの範囲であることがより好ましく、1.3×1010〜4.3×1010Ω・cmの範囲であることがさらに好ましい。
尚、上記の電気抵抗率の測定は、23℃、50%RHの環境下にて、JIS K 6911に準拠した方法で測定したものである。測定器としては、アドバンテスト製 デジタル超高抵抗計R8340とレジスティビティ・チャンバーR12704を使用し、印加電圧を100Vにて測定した。サンプルは23℃、50%RHの環境下に24時間以上放置した後、測定を行った。
本発明の記録用紙のサイズ度は、バインダーの量、種類のみによっても必要な値に調整することができる。しかし、それだけではサイズ度の調整が十分でない場合には、さらに、表面サイズ剤を使用してもよい。このような表面サイズ剤としてはロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤、澱粉、ポリビニルアルコール等を使用することができる。
また、抄紙工程中の紙料調成段階で内添サイズ剤を配合し、予めサイズ度を調整してもよい。なお、記録用紙中のハロゲン量を低減したい場合には、ハロゲンを含まない内添サイズ剤や表面サイズ剤を使用することが好ましい。具体的には、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等を使用することができる。
さらにサイズ剤と繊維の定着剤とを組み合わせて使用することもできる。この場合には、定着剤として硫酸アルミニウム、カチオン化澱粉等を使用することができる。また、記録用紙の保存性を向上させる観点からは、中性サイズ剤を使用することが好ましい。サイズ度はサイズ剤の添加量によって調整する。
また、トナー転写性を良好にし、粒状性を向上させる観点から、記録用紙の平滑度が20〜100秒であることが好ましく、70〜100秒であることがより好ましい。平滑度が20秒未満であると、粒状性が悪化する場合がある。また、平滑度が100秒を超えると、高い平滑度を得るために製造の際、高圧でニップ処理することとなり、その結果として用紙の不透明性が下がってしまったり、カールが大きくなる可能性があるため好ましくない。平滑度はJIS P 8119:1998に準拠して測定されたものである。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
パルプ原料として濾水度470mlの広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を使用し、次に示す内添薬品、填料をパルプ当たりの乾燥表示で添加して紙料とした。
・アルケニル無水コハク酸(ファイブラン81 日本ヌエスシー):0.1質量部
・カチオン化澱粉(Cato−304 日本エヌエスシー):0.5質量部
・軽質炭酸カルシウム(TP121奥多摩工業社製):5質量部
この紙料を使用して、長網抄紙機で抄紙し、サイズプレス、マシンカレンダーを通し、坪量70g/m2の原紙を得た。
下記組成の表面サイズプレス液を調整し、塗布量(乾燥質量換算)が両面合計で1.5g/m2となるように原紙の両面に等量ずつ塗布し、記録用紙を得た。
・水:83質量部
・表面サイズ剤(荒川化学工業社ポリマロン1355、固形分25%):6質量部
・酸化澱粉C(エースC 王子コーンスターチ社製):10質量部
・導電剤 硫酸ナトリウム:1質量部
・水溶性高結晶化材料(ラクチトール、分子量344、融点122℃ 和光純薬試薬):6.2質量部
尚、CD伸縮率(%/%)は、抄紙時のワイヤー速度とパルプ噴き出し速度の調整により繊維配向比を変えることで変化させ、また、CD伸縮率表裏差はワイヤーからの脱水速度及びワイヤー速度とパルプ噴き出し速度の調整により変化させ実施例1の記録用紙を得た。実施例1の記録用紙のCD伸縮率は0.12(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.006(%/%)であった。
<実施例2>
水溶性高結晶化材料としてマルチトール(分子量344、融点150℃ 和光純薬試薬)を用いた以外は実施例1同様にして作製し、実施例2の記録用紙を得た。
実施例2の記録用紙のCD伸縮率は0.12(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.006(%/%)であった。
<実施例3>
パルプの濾水度を420mlとし、水溶性高結晶化材料としてエリスリトール(分子量122、融点121℃ 和光純薬試薬)を用い、ワイヤーからの脱水速度を上げ及びワイヤー速度を上げた以外は実施例1と同様に作製し、実施例3の記録用紙を得た。
実施例3の記録用紙のCD伸縮率は0.14(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.008(%/%)であった。
<実施例4>
水溶性高結晶化材料としてエリスリトール(分子量122、融点121℃ 和光純薬試薬)を使用し、ワイヤーからの脱水速度を上げた以外は実施例1と同様に作製し、実施例4の記録用紙を得た。
実施例4の記録用紙のCD伸縮率は0.12(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.008(%/%)であった。
<実施例5>
水溶性高結晶化材料としてエリスリトール(分子量122、融点121℃ 日研化成社製)を使用し、ワイヤー速度を遅くし、さらにワイヤーからの脱水速度を下げた以外は実施例1と同様に作製し、実施例5の記録用紙を得た。
実施例5の記録用紙のCD伸縮率は0.10(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.004(%/%)であった。
<実施例6>
水溶性高結晶化材料としてマルトシルトレハロース(分子量342、融点98℃ 林原社製)を使用し、水溶性高結晶化材料の含有量を増した以外は実施例5と同じ条件で記録用紙を作製し、実施例6の記録用紙を得た。
実施例6の記録用紙のCD伸縮率は0.10(%/%)、CD伸縮率表裏差は0.004(%/%)であった。
<実施例7>
水溶性高結晶化材料としてエリスリトール(分子量122、融点121℃ 日研化成社製)を使用し、ワイヤー速度を遅くし、さらにワイヤーからの脱水速度を下げ、水溶性結晶材料の含有量を減した以外は実施例1と同様に作製し、実施例7の記録用紙を得た。
実施例7の記録用紙のCD伸縮率は0.10(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.004(%/%)であった。
<比較例1>
水溶性高結晶化材料を添加しない以外は実施例1と同じ条件で記録用紙を作製し、比較例1の記録用紙を得た。
比較例1の記録用紙のCD伸縮率は0.12(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.006(%/%)であった。
<比較例2>
高結晶化材料でない水溶性材料としてショ糖(分子量342、融点185℃ 和光純薬試薬)を使用した以外は実施例1と同じ条件で記録用紙を作製し、比較例2の記録用紙を得た。
比較例2の記録用紙のCD伸縮率は0.12(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.006(%/%)であった。
<比較例3>
水溶性高結晶化材料を添加しない以外は実施例3と同じ条件で記録用紙を作製し、比較例3の記録用紙を得た。比較例3の記録用紙のCD伸縮率は0.14(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.009(%/%)であった。
<比較例4>
高結晶化材料でない水溶性材料としてマルトトリオース(分子量504、融点135℃ 和光純薬工業試薬)を使用した以外は実施例1と同じ条件で記録用紙を作製し、比較例4の記録用紙を得た。比較例4の記録用紙のCD伸縮率は0.12(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.006(%/%)であった。
<比較例5>
市販の用紙(紀州製紙社製、再生PPC100)を比較例5の記録用紙として使用した。比較例5の記録用紙のCD伸縮率は0.16(%/%)、CD伸縮率表裏差絶対値は0.010(%/%)であった。
−記録用紙の評価−
実施例1〜7及び比較例1〜5の電子写真用記録用紙について電子写真記録装置として、富士ゼロックス(株)製のDocuPrint260を用い、定着温度を190℃に設定して、印刷後のカール、定着器巻き付き性を下記の基準で行なった。その結果を表1に示す。
−印刷後のカール評価−
23℃、65%RH環境下に15時間以上調湿した、実施例および比較例の記録用紙を用いて、用紙の長手部分を先端にして、画像濃度5%の文書を黒単色で印字する。この時、それぞれの記録紙各10枚を連続で印字する。印字後速やかに平らな測定台に載せ、測定台から記録紙の一番下までの距離を測定する。この時4隅を測定し、最も距離の大きい場所について以下の判定基準で評価し、◎、○、○−を許容範囲とした。用紙の大きさはA4サイズである。
◎:10mm未満
○:10mm以上15mm未満
○−:15mm以上20mm未満
△:20mm以上30mm未満
×:30mm以上
−定着器巻き付き性評価−
28℃、85%RH環境下に15時間以上調湿した、実施例および比較例の記録用紙のA4サイズを用いて、用紙の長手部分を先端となるようにセット(ロングエッジフィード)し、短部両端に幅5cm長さ18cmの黒ベタ画像を乗せ、連続10枚印字を行う。定着器への巻付き及び印字後黒ベタ部分の画像を目視にて観察し、記録用紙の定着器への巻き付き跡が発生しているかを確認した。◎、○を許容範囲とした。
◎:定着器への巻付き発生なし、巻き付き跡の発生も無い
○:定着器への巻付き発生なし、巻き付き跡の発生が10枚中1枚僅かに発生。
△:定着器への巻付き発生なし、巻き付き跡の発生が10枚中2枚以上発生。
×:定着器にまき付きJamが発生した。
Figure 0004581904
表1より、実施例1〜7の電子写真用記録用紙を用いて電子写真記録装置にて印字した場合は、印刷後のカールが低減していることがわかる。
寸法変化率aの定義を説明するためのグラフである。 CD伸縮率表裏差の測定方法を説明するための概略図である。
符号の説明
1 紙片
2 片持ち梁
3 基準線
4 紙片1の長手方向において片持ち梁2で支持されない側の端部
5 端部4を始発点として基準線3と直交するラインと基準線3との交点
6 基準線3が片持ち梁2と交差する点

Claims (5)

  1. パルプ繊維を主成分として含む電子写真用記録用紙において、マルチトール、ラクチトール、エリストール、及びマルトシルトレハロースからなる群から選ばれる水溶性高結晶化材料を含有することを特徴とする電子写真用記録用紙。
  2. 前記水溶性高結晶化材料の融点が、100℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用記録用紙。
  3. 前記水溶性高結晶化材料の含有量が、0.1g/m2以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用記録用紙。
  4. CD伸縮率(%/%)が、0.12以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用記録用紙。
  5. CD方向の伸縮率表裏差の絶対値が0.006(%/%)以下である請求項1に記載の電子写真用記録用紙。
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