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JP4578489B2 - プラズマディスプレイパネルの製造方法 - Google Patents

プラズマディスプレイパネルの製造方法 Download PDF

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JP4578489B2 JP2007011070A JP2007011070A JP4578489B2 JP 4578489 B2 JP4578489 B2 JP 4578489B2 JP 2007011070 A JP2007011070 A JP 2007011070A JP 2007011070 A JP2007011070 A JP 2007011070A JP 4578489 B2 JP4578489 B2 JP 4578489B2
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Description

本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下PDPと略す)の製造方法に関する。より詳細には、高精細の隔壁を焼成して形成する際の隔壁はがれを防止するためにガラス基板と隔壁間に緩衝層を形成したPDPの製造方法に関する。
近年、大型ディスプレイとしてプラズマディスプレイが注目されている。PDPは液晶パネルに比べて高速の表示が可能であり、且つ大型化が容易であることから、OA機器および広報表示装置などの分野に浸透している。また高品位テレビジョンの分野などでの進展が非常に期待されている。このような用途の拡大にともなって、微細で多数の表示セルを有するカラーPDPが注目されている。
AC型PDPの構造例を図2に示す。PDPは前面板と背面板をはり合わせて構成されている。前面板では、ガラス基板の裏面にITOや酸化錫からなる透明電極が形成されている。透明電極は帯状に複数本形成されている。この隣り合う透明電極間に通常10kHz〜数10kHzのパルス状AC電圧を印加し、表示用の放電を得るが、透明電極のシート抵抗は数10Ω/cmと高いために、電極抵抗が数10kΩ程度になり、印加電圧パルスが十分に立ち上がらず駆動が困難になる。そこで、透明電極上に通常金属のバス電極を形成して抵抗値を下げる。
次に、前面板上に形成した電極を誘電体層によって被覆する。この誘電体層は低融点ガラスを用いる。その後、保護層として、MgOを電子ビーム蒸着法によって形成する。前面板に形成される誘電体は、放電のための電荷を蓄積するコンデンサーとしての役割を有している。
一方背面板は、ガラス基板上に、表示データを書き込む電極を感光性銀ペーストを用いて作製する。その上に放電空間の確保と電極間距離の規定および誤放電防止の役割を果たす隔壁を形成する。次に、隔壁側面と底部にスクリーン印刷法により、赤、緑、青の各色に発光する蛍光体を塗布後、乾燥、焼成を行って蛍光体層を形成する。
背面板と前面板をシールガラスで封着した後、排気し、He、Ne、Xe等の不活性気体の混合ガスを充填し、駆動回路を実装してPDPが作製される。
隣り合う透明電極の間にパルス状の交流電圧を印加するとガス放電が生じプラズマが形成される。ここで生じた紫外線が蛍光体を励起して可視光を発光し前面板を通して表示発光を得る。放電を生じる透明電極は走査電極と維持電極からなっている。実際のパネル駆動において、放電電極である透明電極には維持放電パルスが印加されており、放電を生じさせるときには、背面板上の書き込み電極との間に電圧を印加して対向放電を生じさせ、この放電が維持パルスによって放電電極間で維持される。
上記の構造を有するPDPにおいて、大面積化、高解像度化にともない、高アスペクト比、高精細の隔壁の製造が技術的に困難となり、且つコスト的に不利になってきている。
通常は前面ガラス基板や背面ガラス基板にガラスからなる絶縁ペーストをスクリーン印刷法で印刷・乾燥し、この印刷・乾燥工程を10〜20回繰り返して所定の高さにした後、焼成して形成している。しかしながら、通常のスクリーン印刷法では、特にパネルサイズが大型化した場合に、あらかじめ前面透明平面板上に形成された放電電極と絶縁ガラスペーストの印刷場所との位置あわせが難しく、位置精度が得られ難い問題がある。しかも10〜20回のガラスペーストの重ね合わせ印刷を行うことによって隔壁および壁体の側面エッジ部の波打ちや裾の乱れが生じ、高さの精度が得られないため、表示品質が悪くなり、また作業性が悪い、歩留まりが低いという問題がある。特に、パターン幅が50μm、ピッチが200μm以下になると隔壁底部がペーストのチクソトロピー性により滲みやすく、シャープで残渣のない隔壁形成が難しくなる問題がある。
特許文献1では、感光性ペースト法を用いて、隔壁を1回の露光で形成する方法が提案されている。しかしながら、この方法では線幅を細くしたパターンを形成すると、焼成して隔壁を得る際に、隔壁の断線、はがれ、倒れが発生し、赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体の塗り分けの際に、蛍光体の塗布を精度よく行えず、混色が起こったり,蛍光体の剥がれによって輝度ムラが起き歩留まりが低下する、問題があった。
特開平8−50811号公報
本発明は、高精細の隔壁を形成する際、焼成時の隔壁の断線、はがれ、倒れを防止し、歩留まりのよい高精細プラズマディスプレイを提供することを目的とする。
上記課題を達成するため、本発明のPDPの製造方法は以下の構成をとる。すなわち、書き込み電極、前記書き込み電極を覆う緩衝層、及び前記緩衝層上に設けた隔壁を有するプラズマディスプレイパネル背面板の製造方法であって、基板上に無機粉末、ならびに感光性成分、およびアゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、アントラキノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ジフェニルシアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物およびp−アミノ安息香酸系染料から選ばれる紫外線吸収剤を含む有機成分を含有する緩衝層用ペーストを塗布、乾燥後、全面紫外線露光し、光硬化した緩衝層用ペースト塗布膜上に主としてガラス微粉末からなる無機粉末と感光性を持つ有機成分からなる感光性ペーストを塗布、乾燥して得た塗布膜を紫外線を用いて上方よりマスク露光し、非硬化部分を現像によって除去して隔壁パターンを形成し、その後焼成して上面幅(Lt)30〜60μm、ピッチ(P)160〜220μm、高さ(H)100〜170μmの隔壁を形成することを特徴とする。
本発明の緩衝層を有する高精細隔壁は、焼成の際の隔壁の剥がれが生じないため、高精細のPDPを歩留まりよく製造できるようになる。これにより高精細のプラズマディスプレイを提供することができる。また、特に隔壁下面の太りのない高精細の隔壁を有するプラズマディスプレイを提供することができる。
高精細な隔壁をガラス基板上に直接形成した際は、隔壁と基板との密着力不足により剥がれが生じやすい。隔壁の剥がれが生じると剥がれた箇所で色の混色、誤放電が起こり、また剥がれた隔壁がパネル上に残り画素をつぶしてしまい歩留まりが低下する。
本発明は高精細の隔壁を緩衝層上に設けることによって、ガラス基板上に形成する場合に比べて隔壁の密着性が増大してはがれが抑制されるため、歩留まりが向上することを見いだした。図1に本発明のPDPの構造の1例を示す。
本発明の隔壁各部の形状は、ピッチをP、線幅をL、高さをHとすると、次のような関係にある場合、パネルの輝度、放電寿命の点ですぐれている。

・P=160〜220μmの時L=30〜60μm、H=100〜170μm
線幅については、上記下限より小さいと、パターン形成時のはがれ、倒れ、また焼成後に断線、はがれが生じやすくなる。上記上限より大きいと開口率が小さくなることによる輝度の低下が起こり、好ましくない。
高さについては、上記下限より小さいと、放電空間が狭くなり、プラズマ領域が蛍光体に近くなり、蛍光体がスパッタされるため、寿命の点で好ましくない。上記上限より大きいと放電により発生した紫外線が、蛍光体に届くまでに吸収されてしまうために輝度が下がり、好ましくない。
本発明のプラズマディスプレイ用隔壁は側面にテーパー形状を有しているので、緩衝層との接着面積が確保でき、はがれの抑制効果がさらに向上している。
従来のスクリーン印刷法によって形成した隔壁および本発明の隔壁の断面形状の1例をそれぞれ図3および図4に示す。本発明のプラズマディスプレイ用隔壁は、下面幅をLb、半値幅をLh、上面幅をLtとしたとき、その上面幅、半値幅、下面幅の比が次式(1)及び(2)を満足する範囲にあることが好ましい。
Lt/Lh=0.65〜1 (1)
Lb/Lh=1〜2 (2)
(ただしLt=Lh=Lbの場合を除く。)
Lt/Lhが1より大きいと、隔壁中央にくびれが生じる形状となり、隔壁のピッチに対する放電空間の割合、すなわち開口率が小さくなるため、輝度が低下する。また蛍光体は輝度向上のために、底部だけでなく、隔壁側面にも塗布する方法がとられているが、その側面塗布が難しくなり、好ましくない。また0.65より小さいと上面が細くなりすぎ、パネル形成時にかかる大気圧に耐える強度が不足し、先端のつぶれが生じやすくなる。
Lb/Lhが1より小さいと緩衝層との密着面積が確保できにくくなり、また隔壁の強度も落ちるため、パターン形成時の倒れや蛇行および焼成時のはがれの原因になるため、好ましくない。また2より大きいと放電空間が減少することにより輝度が低下する。
より好ましくは、Lt/Lh=0.8〜1、Lb/Lh=1〜1.5の範囲が、開口率の確保の点からすぐれているため、好ましい。ただし、Lt=Lh=Lbの場合は、強度の面で弱くなり、倒れが生じやすくなることから、好ましくない。形状としては、隔壁下面にくびれなどない台形または矩形形状が強度の点から好ましい。
傾斜面は、平面構造に限定せず、曲面形状をしていてもよい。特に、隔壁高さ中央部から底面にかけて曲面形状を有すると、Lb/Lhを大きくしても放電空間を大きくとることができ、輝度が低下しないので好ましい。曲面形状は、隔壁の曲面形状のアール部をR、半値幅をLhとしたとき、R≦Lh/2の関係にあることが、効果が高く特に好ましい。
本発明で用いる緩衝層は、無機粉末および有機成分からなる緩衝層用ペーストをガラス基板上に塗布した後乾燥し、焼成を行って形成する。焼成は乾燥した塗布面に隔壁パターンを形成した後、隔壁パターンと同時に焼成する方法と、ペースト塗布膜のみを焼成して緩衝層を形成した上に、隔壁を形成する方法の二つがある。前者の焼成方法は、工程数が少なくて済む利点がある。後者の方法では、緩衝層を電極上に形成する際、電極の凹凸および隔壁の焼成収縮応力に起因する緩衝層の亀裂などが起きず、歩留まりが高い利点がある。
緩衝層の厚みは、焼成後で3〜20μm、より好ましくは8〜18μmであることが均一な緩衝層の形成のために好ましい。厚みが20μmを越えると、焼成の際、脱媒が困難であり亀裂が生じやすく、またガラス基板へかかる応力が大きいために基板がそる等の問題が生じる。また、3μm未満では厚みの均一性を保持するのが困難である、電極部分の凹凸によって緩衝層に亀裂が入る等の問題が生じる。
緩衝層は、50〜400℃の範囲の熱膨張係数α50〜400が70〜85×10−7/K、より好ましくは72〜80×10−7/Kであるガラスからなることが、基板ガラスの熱膨張係数と整合し、焼成の際にガラス基板にかかる応力を減らすので好ましい。85×10−7/Kを越えると、緩衝層の形成面側に基板が反るような応力がかかり、70×10−7/K未満では緩衝層のない面側に基板が反るような応力がかかる。このため、基板の加熱、冷却を繰り返すと基板が割れる場合がある。また、前面基板との封着の際、基板のそりのために両基板が平行にならず封着できない場合もある。
また緩衝層に含まれるガラスには、ガラス転移点Tgが430〜500℃、軟化点Tsが470〜580℃のものをもちいることが好ましい。緩衝層を形成する際、ガラス転移点が500℃、軟化点が580℃より高いと、高温で焼成しなければならず、焼成の際にガラス基板に歪みが生じる。またガラス転移点が430℃、軟化点が470℃より低い材料は、その後の工程で、蛍光体を塗布、焼成する際に緩衝層に歪みが生じ、膜厚精度が保たれないので好ましくない。
緩衝層には、酸化ビスマス、酸化鉛、酸化亜鉛のうち少なくとも1種類をガラス中に10〜60重量%含むガラス微粒子を用いることによって軟化点、熱膨張係数のコントロールが容易になる。
酸化ビスマス、酸化鉛、酸化亜鉛の添加量は60重量%を越えるとガラスの耐熱温度が低くなり過ぎてガラス基板上への焼き付けが難しくなる。
酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムを含むガラス微粒子を用いることによっても軟化点、熱膨張係数をコントロールすることができるが、その含有率は好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下にすることによって、ペーストの安定性を向上することができる。また、基板ガラスとのイオン交換などの化学反応による基板の変形、変質を防いだり、電極に用いている金属との反応による着色等を防ぐのに有効である。
上記ガラスのうち特に、酸化ビスマスを10〜60重量%含有するガラスを用いることは、ペーストのポットライフが長いことなどの利点がある。
酸化ビスマスを含むガラス組成としては、酸化物換算表記で
酸化ビスマス 10〜40重量部
酸化珪素 3〜50重量部
酸化ホウ素 10〜40重量部
酸化バリウム 8〜20重量部
酸化亜鉛 10〜30重量部
の組成を含むものを50重量%以上含有することが好ましい。
本発明の緩衝層は、無機成分としてフィラーを添加することによって、緩衝層を白色化し、発光時の輝度向上をしたり、緩衝層の表面粗さを調整し、隔壁の密着力を増加することができる。
緩衝層のフィラーの含有量は全無機成分の5〜40重量%であることによって、緩衝層を白色化し、且つ適正な温度範囲で緩衝層を焼結させることができる。5重量%未満だと十分な白色度が得られず、40重量%を越えると、高温で焼成しなければならず、焼成の際にガラス基板に歪みが生じる等の問題がある。
緩衝層のフィラーは酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム等が好適に用いられ、このうち少なくとも1種を含むことによって、緩衝層を白色化できる。緩衝層の白色度は、ハンター表色系L値で示した場合50以上であることが好ましい。
緩衝層用ペースト塗布膜を焼成して緩衝層を形成した後、該緩衝層上に隔壁を形成する場合、緩衝層の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.1〜1.5μmであると隔壁との密着性が増加し、剥がれが防止できるので好ましい。より好ましくはRaが0.3〜0.9μmである。
Raが0.1μm未満では、表面が平滑すぎて焼成時に、有機バインダーが蒸発する際に隔壁と緩衝層の密着力が低下し、隔壁の剥がれ、断線および倒れが生じるようになる。また1.5μmを超えると、焼成時に発生する有機物が誘電体層の凹凸部に残留し、隔壁との密着力が低下するため好ましくない。
ここでRaは、誘電体表面の粗さ曲線からその中心線の方向に長さL(Lは測定長さ)の部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸とし、粗さ曲線をY=f(X)で表したとき、次の式によって求められる値をμmで表したものをいう。
Figure 0004578489
Raは、触針式の表面粗さ計(東京精密製:サーフコム1500A)を用いて、縦倍率2000倍、横倍率10倍で測定した値である。
緩衝層用ペーストに用いる有機成分は、有機バインダー、可塑剤、溶媒および必要に応じ分散剤やレベリング剤などの添加物が含まれる。有機バインダーの具体的な例としては、ポリビニルアルコール、セルロース系ポリマー、シリコンポリマー、ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、ポリアミド、高分子量ポリエーテル、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、α−メチルスチレン重合体、ブチルメタクリレート樹脂などがあげられる。
緩衝層用ペーストを塗布、乾燥後、該塗布膜上に感光性ペースト法により隔壁パターンを形成する場合は、隔壁の現像液に溶解しないバインダーを選択する必要がある。
また、緩衝層用ペーストに、感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーのうち少なくとも1種類から選ばれる感光性成分を含有し、さらに必要に応じて、光重合開始剤、紫外線吸収剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤などの添加剤成分を加えることも行われる。これにより、緩衝層用ペーストに感光性を付与し、ガラス基板上に塗布し、乾燥を行った後、露光を行い、緩衝層を光硬化することで隔壁用現像液による緩衝層の浸食を防ぐことができる。
緩衝層用ペーストに紫外線吸収剤を添加することが有効である。緩衝層用ペースト塗布膜上に、感光性ペースト法により隔壁パターンを形成する場合は、露光に用いた光が緩衝層用ペースト塗布膜面から反射し、所望の隔壁パターン形状を得られない場合がある。緩衝層用ペーストに紫外線吸収効果の高い化合物を添加することによって緩衝層用ペースト塗布膜面からの反射を抑制することで隔壁下面の太りのない高精細パターンを得ることが可能となる。紫外線吸収剤は、具体的には、アゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、アミノケトン系染料、アントラキノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ジフェニルシアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、p−アミノ安息香酸系染料などが使用できる。有機系染料は吸光剤として添加した場合にも、焼成後の絶縁膜中に残存しないで吸光剤による絶縁膜特性の低下を少なくできるので好ましい。
緩衝層用ペーストの粘度を調整する際は、バインダー成分の溶媒を用いるのが好ましい。溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
また、ペースト中に可塑剤を含むこともできる。可塑剤の具体的な例としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリンなどがあげられる。
本発明の隔壁の作製方法は特に限定しないが、前記した隔壁形状(下面幅をLb、半値幅をLh、上面幅をLtとしたとき、Lt/Lh=0.65〜1、Lb/Lh=1〜2)を得るには、工程が少なく、微細なパターン形成が可能である感光性ペースト法で作製するのが好ましい。
感光性ペースト法は、主としてガラス粉末からなる無機成分と感光性を持つ有機成分からなる感光性ペーストを塗布、乾燥して得た塗布膜をマスク露光し、非硬化部分を現像によって除去して、隔壁パターンを形成し、その後焼成して隔壁を得る方法である。
本発明の隔壁に用いられるガラス材料としては、屈折率1.5〜1.65であることが好ましい。一般に絶縁体として用いられるガラスは、1.5〜1.9程度の屈折率を有しているが、感光性ペースト法を用いる場合、有機成分の平均屈折率がガラス粉末の平均屈折率と大きく異なる場合は、ガラス粉末と感光性有機成分の界面での反射・散乱が大きくなり、精細なパターンが得られない。一般的な有機成分の屈折率は1.45〜1.7であるため、ガラス粉末と有機成分の屈折率を整合させるためには、ガラス粉末の平均屈折率を1.5〜1.65にすることが好ましい。
プラズマディスプレイやプラズマアドレス液晶ディスプレイの隔壁に用いる場合は、ガラス転移点、軟化点の低いガラス基板上にパターン形成するため、隔壁材質として、ガラス転移点が430〜500℃、熱軟化温度が470〜580℃のガラス材料を用いることが好ましい。感光性ペースト法に用いるガラス粉末の量は、ガラス粉末と有機成分の和に対して65〜85重量%であるのが好ましい。
65重量%より小さいと、焼成時の収縮率が大きくなり、隔壁の断線、剥がれの原因となるため、好ましくない。85重量%より大きいと、感光性成分が少ないことにより、パターンの形成性が悪くなる。
隔壁材質の組成としては、酸化珪素はガラス中に、3〜60重量%の範囲で配合することが好ましく、3重量%未満の場合はガラス層の緻密性、強度や安定性が低下し、また熱膨張係数が所望の値から外れ、ガラス基板とのミスマッチが起こりやすい。また60重量%以下にすることによって、熱軟化点が低くなり、ガラス基板への焼き付けが可能になるなどの利点がある。
酸化ホウ素はガラス中に、5〜50重量%の範囲で配合することによって、電気絶縁性、強度、熱膨張係数、絶縁層の緻密性などの電気、機械および熱的特性を向上することができる。50重量%を越えるとガラスの安定性が低下する。
酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムのうち少なくとも1種類を3〜20重量%含むガラス微粒子を用いることによっても得ることができるが、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の酸化物は添加量としては、20重量%以下、好ましくは、15重量%以下にすることによって、ペーストの安定性を向上することができる。
酸化リチウムを含むガラス組成としては、酸化物換算表記で
酸化リチウム 2〜15重量部
酸化珪素 15〜50重量部
酸化ホウ素 15〜40重量部
酸化バリウム 2〜15重量部
酸化アルミニウム 6〜25重量部
の組成を含むものを50重量%以上含有することが好ましい。
また、上記組成で、酸化リチウムの代わりに、酸化ナトリウム、酸化カリウムを用いても良いが、ペーストの安定性の点で、酸化リチウムが好ましい。
酸化ナトリウム、酸化リチウム、酸化カリウム等のアルカリ金属の酸化物を合計で2〜10重量%含有するガラスを用いることによって、熱軟化温度、熱膨張係数のコントロールが容易になるだけでなく、ガラスの平均屈折率を低くすることができるため、有機物との屈折率差を小さくすることが容易になる。2%より小さい時は、熱軟化温度の制御が難しくなる。10%より大きい時は、放電時にアルカリ金属酸化物の蒸発によって輝度低下をもたらす。さらにアルカリ金属の酸化物の添加量はペーストの安定性を向上させるためにも、10重量%より小さいことが好ましく、より好ましくは8重量%以下である。
特に、アルカリ金属の中では酸化リチウムを用いることによって、比較的ペーストの安定性を高くすることができ、また、酸化カリウムを用いた場合は、比較的少量の添加でも屈折率を制御できる利点があることから、アルカリ金属酸化物の中でも、酸化リチウムと酸化カリウムの添加が有効である。
また、ガラス微粒子中に、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど、特に酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化亜鉛を添加することにより、高度や加工性を改良することができるが、熱軟化点、熱膨張係数、屈折率の制御の点からは、その含有量は40重量%以下が好ましく、より好ましくは25重量%以下である。この結果、ガラス基板上に焼き付け可能な熱軟化温度を有し、平均屈折率を1.5〜1.65にすることができ、有機成分との屈折率差を小さくすることが容易になる。
酸化ビスマスを含有するガラスは熱軟化温度や耐水性向上の点から好ましいが、酸化ビスマスを10重量%以上含むガラスは、屈折率が1.6以上になるものが多い。このため酸化ナトリウム、酸化リチウム、酸化カリウムなどのアルカリ金属の酸化物と酸化鉛を併用することによって、熱軟化温度、熱膨張係数、耐水性、屈折率のコントロールが容易になる。
本発明におけるガラス材質の屈折率測定は、感光性ペースト法で露光する光の波長で測定することが効果を確認する上で正確である。特に、350〜650nmの範囲の波長の光で測定することが好ましい。さらには、i線(365nm)もしくはg線(436nm)での屈折率測定が好ましい。
本発明の隔壁はコントラストをあげる点で優れていることから、黒色に着色されていてもよい。種々の金属酸化物を添加することによって、焼成後の隔壁を着色することができる。例えば、感光性ペースト中に黒色の金属酸化物を1〜10重量%含むことによって、黒色のパターンを形成することができる。
この際に用いる黒色の金属酸化物として、Cr、Fe、Co、Mn、Cuの酸化物の内、少なくとも1種、好ましくは3種以上を含むことによって、黒色化が可能になる。特に、FeとMnの酸化物をそれぞれ0.5重量%以上含有することによって、黒色パターンを形成できる。
さらに、黒色以外に、赤、青、緑等に発色する無機顔料を添加したペーストを用いることによって、各色のパターンを形成できる。これらの着色パターンは、プラズマディスプレイのカラーフィルターなどに好適に用いることができる。
また、本発明の隔壁の比重は2〜3.3であることが好ましい。2以下にするためには、ガラス材料に酸化ナトリウムや酸化カリウムなどのアルカリ金属の酸化物を多く含ませなければならず、放電中に蒸発して放電特性を低下させる要因となるため、好ましくない。3.3以上になると、大画面化した時ディスプレイが重くなったり、自重で基板に歪みを生じたりするので好ましくない。
本発明の隔壁材料にガラス軟化点が650〜850℃であるフィラーを10〜50重量%含ませてもよい。これにより、感光性ペースト法において、パターン形成後の焼成時の収縮率が小さくなり、パターン形成が容易になる。フィラーとしては、熱軟化温度が600℃以上の高融点ガラスやセラミックスなどを用いることができる。
高融点ガラス粉末としては、酸化珪素、酸化アルミニウムを15重量%以上含有するガラス粉末が好ましく、これらの含有量合計がガラス粉末中50重量%以上であることが、必要な熱特性を持たせるためには有効である。一例としては、以下の組成を含有するガラス粉末を用いることが好ましい。
酸化珪素:15〜50重量%
酸化ホウ素:5〜20重量%
酸化アルミニウム:15〜50重量%
酸化バリウム:2〜10重量%
感光性ペーストの有機成分は、感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーのうち少なくとも1種類から選ばれる感光性成分を含有し、さらに必要に応じて、バインダー、光重合開始剤、紫外線吸収剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、有機溶媒、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤などの添加剤成分を加えることも行われる。
感光性成分としては、光不溶化型のものと光可溶化型のものがあり、光不溶化型のものとして、
(A)分子内に不飽和基などを1つ以上有する官能性のモノマー、オリゴマー、ポリマーを含有するもの
(B)芳香族ジアゾ化合物、芳香族アジド化合物、有機ハロゲン化合物などの感光性化合物を含有するもの
(C)ジアゾ系アミンとホルムアルデヒドとの縮合物などいわゆるジアゾ樹脂といわれるもの等がある。
また、光可溶型のものとしては、
(D)ジアゾ化合物の無機塩や有機酸とのコンプレックス、キノンジアゾ類を含有するもの
(E)キノンジアゾ類を適当なポリマーバインダーと結合させた、例えばフェノール、ノボラック樹脂のナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルフォン酸エステル等がある。
本発明において用いる感光性成分は、上記のすべてのものを用いることができる。感光性ペーストとして、無機微粒子と混合して簡便に用いることができる感光性成分は、(A)のものが好ましい。
感光性モノマーとしては、炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物で、その具体的な例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート等のアクリレート、また、これらの芳香環の水素原子のうち、1〜5個を塩素または臭素原子に置換したモノマー、もしくは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボキシメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、および、上記化合物の分子内のアクリレートを一部もしくはすべてをメタクリレートに変えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン、N,N,N’,N’−テトラ(2−ヒドロキシー3−メタクリロキシプロピル)ポリオキシプロピレンジアミンなどが挙げられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
これら以外に、不飽和カルボン酸等の不飽和酸を加えることによって、感光後の現像性を向上することができる。不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、またはこれらの酸無水物などがあげられる。
これらモノマーの含有率は、ガラス粉末と感光性成分の和に対して、5〜30重量%が好ましい。これ以外の範囲では、パターンの形成性の悪化、硬化後の硬度不足が発生するため好ましくない。
バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、α−メチルスチレン重合体、ブチルメタクリレート樹脂などがあげられる。
また、前述の炭素−炭素二重結合を有する化合物のうち少なくとも1種類を重合して得られたオリゴマーやポリマーを用いることができる。重合する際に、これら光反応性モノマーの含有率が、10重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上になるように、他の感光性のモノマーと共重合することができる。
共重合するモノマーとしては、不飽和カルボン酸等の不飽和酸を共重合することによって、感光後の現像性を向上することができる。不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、またはこれらの酸無水物などがあげられる。
こうして得られた側鎖にカルボキシル基等の酸性基を有するポリマーもしくはオリゴマーの酸価(AV)は50〜180、さらには70〜140の範囲が好ましい。酸価が50未満であると、現像許容幅が狭くなる。また、酸価が180を越えると未露光部の現像液に対する溶解性が低下するようになるため現像液濃度を濃くすると露光部まで剥がれが発生し、高精細なパターンが得られにくい。
以上示した、ポリマーもしくはオリゴマーに対して、光反応性基を側鎖または分子末端に付加させることによって、感光性を持つ感光性ポリマーや感光性オリゴマーとして用いることができる。好ましい光反応性基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などがあげられる。
このような側鎖をオリゴマーやポリマーに付加させる方法は、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させて作る方法がある。
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどがあげられる。
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート等がある。
また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05〜1モル当量付加させることが好ましい。
感光性ペースト中の感光性ポリマー、感光性オリゴマーおよびバインダーからなるポリマー成分の量としては、パターン形成性、焼成後の収縮率の点で優れていることから、ガラス粉末と感光性成分の和に対して、5〜35重量%であることが好ましい。この範囲外では、パターン形成が不可能もしくは、パターンの太りがでるため好ましくない。
光重合開始剤としての具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4’−モルフォリノブチロフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタノール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組み合わせなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
光重合開始剤は、感光性成分に対し、0.05〜20重量%の範囲で添加され、より好ましくは、0.1〜15重量%である。重合開始剤の量が少なすぎると、光感度が不良となり、光重合開始剤の量が多すぎれば、露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
紫外線吸収剤を添加することも有効である。紫外線吸収効果の高い化合物を添加することによって光硬化反応の閾値を高め、散乱光による所望部分以外の硬化を防止し、高アスペクト比、高精細、高解像度が得られる。紫外線吸収剤は、具体的には、アゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、アミノケトン系染料、アントラキノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ジフェニルシアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、p−アミノ安息香酸系染料などが使用できる。有機系染料は吸光剤として添加した場合にも、焼成後の絶縁膜中に残存しないで吸光剤による絶縁膜特性の低下を少なくできるので好ましい。
紫外線吸光剤の添加量はガラス粉末に対して0.05〜10重量%が好ましい。0.05重量%以下では紫外線吸光剤の添加効果が減少し、10重量%を越えると焼成後の絶縁膜特性が低下するので好ましくない。より好ましくは0.1〜8重量%である。
有機染料からなる紫外線吸光剤の添加方法の一例を上げると、有機染料を予め有機溶媒に溶解した溶液を作製し、それをペースト作製時に混練する方法以外に、該有機溶媒中にガラス微粒子を混合後、乾燥する方法があげられる。この方法によってガラス微粒子の個々の粒子表面に有機の膜をコートしたいわゆるカプセル状の微粒子が作製できる。
本発明において、無機微粒子に含まれるPb、Fe、Cd、Mn、Co、Mgなどの金属および酸化物がペースト中に含有する場合、感光性成分と反応してペーストが短時間でゲル化し、塗布できなくなる場合がある。このような反応を防止するために安定化剤を添加してゲル化を防止することが好ましい。用いる安定化剤としては、トリアゾール化合物が好ましく用いられる。トリアゾール化合物としては、ベンゾトリアゾール誘導体が好ましく用いられる。この中でも特にベンゾトリアゾールが有効に作用する。本発明において使用されるベンゾトリアゾールによるガラス微粒子の表面処理の一例を上げると、無機微粒子に対して所定の量のベンゾトリアゾールを酢酸メチル、酢酸エチル、エチルアルコール、メチルアルコールなどの有機溶媒に溶解した後、これら微粒子が十分に浸すことができるように溶液中に1〜24時間浸積する。浸積後、好ましくは20〜30℃下で自然乾燥して溶媒を蒸発させてトリアゾール処理を行った微粒子を作製する。使用される安定化剤の割合(安定化剤/無機微粒子)は0.05〜5重量%が好ましい。
増感剤は、感度を向上させるために添加される。増感剤の具体例としては、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニル−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。なお、増感剤の中には光重合開始剤としても使用できるものがある。増感剤を本発明の感光性ペーストに添加する場合、その添加量は感光性成分に対して通常0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。増感剤の量が少なすぎれば光感度を向上させる効果が発揮されず、増感剤の量が多すぎれば露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
また、増感剤は、露光波長に吸収を有しているものが用いられる、この場合、吸収波長近傍では屈折率が極端に高くなるため、増感剤を多量に添加することによって、有機成分の屈折率を向上することができる。この場合の増感剤の添加量は3〜10重量%添加することができる。
重合禁止剤は、保存時の熱安定性向上および光硬化反応の閾値を高め、散乱光による所望部分以外の硬化を防止し、高アスペクト比、高精細、高解像度パターンを得るために添加される。重合禁止剤の具体的な例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノエステル化物、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、p−t−ブチルカテコール、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールなどが挙げられる。重合禁止剤を添加する場合、その添加量は、感光性ペースト中に、通常、0.01〜6重量%である。
可塑剤の具体的な例としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリンなどがあげられる。
酸化防止剤は、保存時におけるアクリル系共重合体の酸化を防ぐために添加される。酸化防止剤の具体的な例として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−4−エチルフェノール、2,2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス[3,3−ビス−(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、ジラウリルチオジプロピオナート、トリフェニルホスファイトなどが挙げられる。
酸化防止剤を添加する場合、その添加量は通常、添加量は、ペースト中に、通常、0.001〜1重量%である。
本発明の感光性ペーストには、溶液の粘度を調整したい場合、有機溶媒を加えてもよい。このとき使用される有機溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
有機成分の屈折率とは、露光により感光性成分を感光させる時点におけるペースト中の有機成分の屈折率のことである。つまり、ペーストを塗布し、乾燥工程後に露光を行う場合は、乾燥工程後のペースト中の有機成分の屈折率のことである。例えば、ペーストをガラス基板上に塗布した後、50〜100℃で1〜30分乾燥して屈折率を測定する方法などがある。
本発明における屈折率の測定は、一般的に行われるエリプソメトリー法やVブロック法が好ましく、測定は露光する光の波長で行うことが効果を確認する上で正確である。特に、350〜650nmの範囲中の波長の光で測定することが好ましい。さらには、i線(365nm)もしくはg線(436nm)での屈折率測定が好ましい。
また、有機成分が光照射によって重合した後の屈折率を測定するためには、ペースト中に対して光照射する場合と同様の光を有機成分のみに照射することによって測定できる。
緩衝層用ペーストおよび隔壁用感光性ペーストは、通常、上記の無機および有機の各種成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラや混練機で均質に混合分散し作製する。
ペーストの粘度は無機微粒子、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤などの添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は2000〜20万cps(センチ・ポイズ)である。例えばガラス基板への塗布をスクリーン印刷法以外にスピンコート法で行う場合は、200〜5000cpsが好ましい。スクリーン印刷法で1回塗布して膜厚10〜20μmを得るには、4000〜20万cpsが好ましい。
所定厚みの隔壁用感光性ペースト塗布膜に高精細なパターンを露光し、高アスペクト比のパターンを解像度高く形成するためには、露光用の活性光線を塗布膜の最下部までできるだけ多く透過させることが必須である。
具体的には、感光性ペーストは、50μm厚みの塗布膜で測定した全光線透過率が50%以上であることが好ましい。また、測定波長は、ペーストを塗布後、露光する光の波長で測定することが効果を確認する上で正確である。光線透過率は、島津製作所製の分光光度計(UV−3101PC)を用いて測定したものである。
次に、緩衝層用ペーストおよび感光性ペーストを用いて、緩衝層上にパターン加工を行う一例について説明するが、本発明はこれに限定されない。
ガラス基板やセラミックスの基板上に、緩衝層用ペーストを5〜30μmの厚みで塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーター等の方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、ペーストの粘度を選ぶことによって調整できる。
ここでペーストを基板上に塗布する場合、基板と塗布膜との密着性を高めるために基板の表面処理を行うことができる。表面処理液としてはシランカップリング剤、例えばビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス−(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどあるいは有機金属例えば有機チタン、有機アルミニウム、有機ジルコニウムなどである。シランカップリング剤あるいは有機金属を有機溶媒、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどで0.1〜5%の濃度に希釈したものを用いる。次にこの表面処理液をスピナーなどで基板上に均一に塗布した後に80〜140℃で10〜60分間乾燥することによって表面処理ができる。
緩衝層用ペーストの塗布の後、ペースト中の溶媒を除去するため、乾燥を行う。この後、緩衝層ペースト塗布膜を焼成して得た緩衝層上に隔壁パターンを形成する場合と、焼成せずに塗布膜上に隔壁パターンを形成する2通りがある。前者の場合、焼成雰囲気や、温度はペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素等の雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。ガラス基板上の場合は、540〜610℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行う。後者の場合、緩衝層用ペースト中に光もしくは熱重合性の成分が含まれる際は、光、または熱架橋により硬化し、感光性ペースト法による隔壁パターン形成の際の現像液による浸食を防ぐ。
形成した緩衝層または緩衝層用ペースト塗布膜上に感光性ペーストを全面塗布、もしくは部分的に塗布する。塗布した後、露光装置を用いて露光を行う。露光は通常のフォトリソグラフィーで行われるように、フォトマスクを用いてマスク露光する方法が一般的である。用いるマスクは、感光性有機成分の種類によって、ネガ型もしくはポジ型のどちらかを選定する。また、フォトマスクを用いずに、赤色や青色のレーザー光などで直接描画する方法を用いても良い。
露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機等を用いることができる。また、大面積の露光を行う場合は、基板上に感光性ペーストを塗布した後に、搬送しながら露光を行うことによって、小さな露光面積の露光機で、大きな面積を露光することができる。
この際使用される活性光源は、たとえば、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザー光などが挙げられるが、これらの中で紫外線が好ましく、その光源としてはたとえば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みによって異なるが、1〜100mW/cmの出力の超高圧水銀灯を用いて0.1〜30分間露光を行う。
塗布した感光性ペースト表面に酸素遮蔽膜を設けることによって、パターン形状を向上することができる。酸素遮蔽膜の一例としては、ポリビニルアルコール(PVA)やセルロースなどの膜、あるいは、ポリエステルなどのフィルムが上げられる。
PVA膜の形成方法は濃度が0.5〜5重量%の水溶液をスピナーなどの方法で基板上に均一に塗布した後に70〜90℃で10〜60分間乾燥することによって水分を蒸発させて行う。また水溶液中にアルコールを少量添加すると絶縁膜との塗れ性が良くなり蒸発が容易になるので好ましい。さらに好ましいPVAの溶液濃度は、1〜3重量%である。この範囲にあると感度が一層向上する。PVA塗布によって感度が向上するのは次の理由が推定される。すなわち感光性成分が光反応する際に、空気中の酸素があると光硬化の感度を妨害すると考えられるが、PVAの膜があると余分な酸素を遮断できるので露光時に感度が向上すると考えられる。
ポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレン等の透明なフィルムを用いる場合は、塗布後の感光性ペーストの上に、これらのフィルムを張り付けて用いる方法もある。
露光後、感光部分と非感光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行うが、この場合、浸漬法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法で行う。用いる現像液は、感光性ペースト中の有機成分が溶解可能である有機溶媒を使用できる。また該有機溶媒にその溶解力が失われない範囲で水を添加してもよい。感光性ペースト中にカルボキシル基等の酸性基を持つ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム水溶液などのような金属アルカリ水溶液を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。
有機アルカリとしては、アミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。アルカリ濃度が低すぎると可溶部が除去されず、アルカリ濃度が高すぎると、パターン部を剥離させ、また非可溶部を腐食させるおそれがあり好ましくない。また、現像時の現像温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
次に焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や、温度はペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素等の雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。
ガラス基板上にパターン加工する場合は、540〜610℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行う。
また、以上の塗布や露光、現像、焼成の各工程中に、乾燥、予備反応の目的で、50〜300℃加熱工程を導入しても良い。
以下に、本発明を実施例を用いて、具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定はされない。なお、実施例、比較例中の濃度(%)は特にことわらない限り重量%である。
実施例1
<有機成分の調製>以下に示す溶媒および下記のポリマをそれぞれ40%溶液となるように混合し、攪拌しながら60℃まで加熱し、すべてのポリマを均質に溶解させた。
溶媒:ガンマブチロラクトン
ポリマ:40%のメタアクリル酸(MAA)、30%のメチルメタアクリレート(MMA)および30%のスチレン(St)からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタアクリレート(GMA)を付加反応させた重量平均分子量43000、酸価95の感光性ポリマ。
ついで溶液を室温まで冷却し、該ポリマ溶液に有機成分を構成する各成分を以下に示す割合で加えて溶解させた。その後、この溶液を400メッシュのフィルターを用いて濾過し、有機ビヒクルA1を作製した。
有機ビヒクルA1組成
有機染料:スダンIV(アゾ系有機染料、化学式C2420O、分子量380.45) 0.2重量%
上記ポリマ溶液:49.3重量%
モノマ:TPA330(日本化薬社製:トリメチロールプロパントリアクリレート・モディファイドPO) 19.7重量%
開始剤:イルガキュア907(チバガイギー社製:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン) 3.1重量%
増感剤:DETX−S(日本化薬社製:2,4−ジエチルチオキサントン) 3.1重量%
増感助剤:EPA(日本化薬社製:p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル) 1.6重量%
可塑剤:ジブチルフタレート(DBP) 2.7重量%
増粘剤:SiO/酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル溶液(濃度15重量%) 6.3重量%
溶媒:ガンマブチロラクトン14.0重量%
得られた有機ビヒクル60gに対して下記に示すガラス粉末(1)を75g添加し、3本ローラーで均一に混練することによって隔壁用感光性ペーストを製造した。ガラス粉末は、あらかじめアトラクターにて微粉末にしたものを用いた。
ガラス粉末(1)
組成LiO 9%、SiO 22%、B 33%、BaO 4%、Al 23%、ZnO 2%、MgO 7%。平均粒径2.6μmの非球状粉末。Tg(ガラス転移点) 480℃、Ts(軟化点) 520℃。熱膨張係数79×10−7/K。g線(436nm)での屈折率1.59。
次に背面板用ガラス基板として、サイズ240×300mm(A4サイズ)のガラス基板(旭硝子社製PD−200)を使用した。このガラス基板に、書き込み電極として感光性銀ペーストを用いてフォトリソ法により、ピッチ150μm、線幅60μm、焼成後厚み6μmおよびピッチ220μm、線幅80μm、焼成後厚み6μmの2種類のストライプ状電極を形成した。
次に、以下に示す組成の有機ビヒクルA2をA1と同様の条件で作製し、A2を50gと下記に示すガラス粉末(2)を85gとを3本ローラーを用いて均一に混練し、緩衝層用ペーストを作製した。
有機ビヒクルA2組成
有機染料:スダンIV(アゾ系有機染料、化学式C2420O、分子量380.45) 0.2重量%
ポリマ溶液:A1と同一のポリマ溶液 52.5重量%
モノマ:TPA330(日本化薬社製:トリメチロールプロパントリアクリレート・モディファイドPO) 10.5重量%
開始剤:イルガキュア907(チバガイギー社製:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン) 4.0重量%
増感剤:DETX−S(日本化薬社製:2,4−ジエチルチオキサントン) 4.0重量%
増感助剤:EPA(日本化薬社製:p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル) 2.0重量%
可塑剤:ジブチルフタレート(DBP) 3.5重量%
増粘剤:SiO2/酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル溶液(濃度15重量%) 8.3重量%
溶媒:ガンマブチロラクトン 15.0重量%
ガラス粉末(2)
組成Bi 27%、SiO 14%、B 18%、BaO 14%、Al 4%、ZnO 21%、NaO 2%。平均粒径3.4μmの非球状粉末。Tg 486℃、Ts 531℃。熱膨張係数75×10−7/K。g線(436nm)での屈折率1.75。
得られた緩衝層用ペーストを325メッシュのスクリーンを用いてスクリーン印刷による塗布、乾燥を行い、乾燥後厚み20μmの均一な膜を得た。塗布厚みはスキージ角度と速度によって調整した。このようにして得た緩衝層用ペースト塗布膜に、上面から15mW/cm出力の超高圧水銀灯で全面紫外線露光し、光硬化を行った。露光量は1000mJ/cmであった。
次に、光硬化した膜上に隔壁用感光性ペーストを上記の緩衝層用ペースト塗布と同じ方法で塗布、乾燥を繰り返し塗布厚み200μmの膜を形成した。その後、80℃で1時間保持して乾燥した。
続いて、フォトマスクを介して上面から15mW/cm出力の超高圧水銀灯で紫外線露光した。露光量は10000mJ/cmであった。マスクは次のものを用いた。
ピッチ220μm、線幅50μmのストライプパターンのネガ型のクロムマスク(厚み200μmの塗布膜に用いた)。
次に、35℃に保持したモノエタノールアミンの0.2重量%の水溶液を150秒間シャワーすることにより現像し、その後シャワースプレーを用いて水洗浄し、光硬化していないスペース部分を除去して設けたガラス基板上にストライプ状の隔壁を形成した。
このようにして得た基板を、空気中で570℃で30分間焼成を行い、緩衝層および隔壁を形成した。走査型電子顕微鏡を用いた基板の断面観察によって、隔壁高さ、上面幅、半値幅、下面幅、緩衝層厚みを測定し、3サンプルの平均値を算出した。また焼成後の隔壁の断線、剥がれ、倒れの有無を評価した。断線、剥がれ、倒れの欠陥ない場合は○とし、該欠陥がある場合は全隔壁の本数に対する欠陥のある隔壁の本数の割合を%で示した。結果を表1に示す。
隔壁を形成した背面板の隔壁内の所定の溝にスクリーン印刷法を用いて、蛍光体層を形成した。すなわち、赤(R)を形成する場合、Rの感光性蛍光体ペーストを用いて、位置あわせを行い印刷する。緑(G)、青(B)に関しても同様の操作を行った後、焼成(500℃、30分)を行い、3色の蛍光体を所定の位置に形成した。
前面板は以下の工程によって作製した。先ず、ガラス基板上に、ITOをスパッタ法で形成後、レジスト塗布し、露光・現像処理、エッチング処理によって焼成厚み0.1μm、線幅200μmの透明電極を形成した。また、黒色銀粉末からなる感光性銀ペーストを用いて、フォトリソ法により、焼成後厚み10μmのバス電極を形成した。電極はピッチ220μm、線幅80μmのものを作製した。
さらに、電極形成した前面板上に透明誘電体ペーストを20μm塗布し、430℃で20分間保持して焼き付けた。次に、形成した透明電極、黒色電極、誘電体層を一様に被覆するように電子ビーム蒸着機を用いて、厚みは0.5μmのMgO膜を形成して前面板を完成させた。
次に、前面板および背面板用ガラス基板にシール剤となる低融点ガラスペーストを設け、所定の配置になるよう位置合わせして対向配置し、450℃、30分間処理してガラス基板を封止した。その後、表示領域内内部の排気およびHe 99%、Xe 1%の混合ガスの封入を行ってプラズマディスプレイパネルを完成させた。このパネルに電圧を印加して表示を行った。全面点灯時の輝度を大塚電子社製の側光機MCPD−200を用いて測定した。
隔壁の剥がれによる蛍光体の混色、誤放電等の欠点はなく、表示は良好であった。輝度は150cd/mであった。 実施例2
隔壁用のガラス粉末を下記の(3)に変更した以外は実施例1と同様にPDPを作製、評価した。結果を表1に示す。
ガラス粉末(3)
組成LiO 7%、SiO 23%、B 33%、BaO 4%、CaO 4%、Al 19%、MgO 6%、ZnO 3%、ZrO 1%。平均粒径2.6μmの非球状粉末。Tg 485℃、Ts 525℃。熱膨張係数75×10−7/K。g線(436nm)での屈折率1.58。
隔壁の剥がれによる蛍光体の混色、誤放電等の欠点はなく、表示は良好であった。輝度は150cd/mであった。
実施例3
隔壁用の有機ビヒクルを下記のA3に変更し、該隔壁用感光性ペースト塗布膜への露光量を1J/cmとした以外は実施例1と同様にPDPを作製、評価した。結果を表1に示す。
有機ビヒクルA3組成
有機染料:スダンIV(アゾ系有機染料、化学式C2420O、分子量380.45) 0.2重量%
ポリマ溶液:A1と同一のポリマ溶液 53.5重量%
モノマ:MGP−400:N,N,N’,N’−テトラ(2−ヒドロキシー3−メタクリロキシプロピル)ポリオキシプロピレンジアミン 20.0重量%
開始剤:イルガキュア369(チバガイギー社製:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4’−モルフォリノブチロフェノン) 7.0重量%
増感剤:DETX−S(日本化薬社製:2,4−ジエチルチオキサントン) 7.0重量%
可塑剤:ジブチルフタレート(DBP) 2.3重量%
溶媒:ガンマブチロラクトン 10.0重量%
隔壁の剥がれによる蛍光体の混色、誤放電等の欠点はなく、表示は良好であった。輝度は150cd/mであった。
実施例4
緩衝層用ペーストのガラス粉末を以下に示すガラス粉末(4)に変更した以外は実施例3と同様にPDPを作製、評価した。結果を表1に示す。
ガラス粉末(4)
組成Bi 38%、SiO 7%、B 19%、BaO 12%、Al 3%、ZnO 21%、Tg 476℃、Ts 525℃、熱膨張係数75×10−7/K。
隔壁の剥がれによる蛍光体の混色、誤放電等の欠点はなく、表示は良好であった。輝度は150cd/mであった。
実施例5
隔壁用のガラス粉末をガラス粉末(3)に変更した以外は実施例4と同様にPDPを作製、評価した。結果を表1に示す。隔壁の剥がれによる蛍光体の混色、誤放電等の欠点はなく、表示は良好であった。輝度は150cd/mであった。
参考例1
緩衝層用の有機ビヒクルの組成を以下に示すA4に変更し、該緩衝層ペーストの塗布膜への全面紫外線露光を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてPDPを作製、評価した。結果を表1に示す。
有機ビヒクルA4組成
ポリマ溶液:ポリビニルブチラール(非感光ポリマ重量平均分子量114000)/イソブタノール溶液(濃度20重量%) 94.6重量%
可塑剤:ジブチルフタレート(DBP) 1.6重量%
増粘剤:SiO/酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル溶液(濃度15重量%) 3.8重量%
隔壁の剥がれによる蛍光体の混色、誤放電等の欠点はなく、表示は良好であった。輝度は150cd/mであった。
参考例2
緩衝層用ペーストを以下の組成とし、該緩衝層ペーストを塗布して得た厚み25μmの塗布膜を、空気中で560℃で30分間焼成を行って緩衝層を形成した。
ガラス粉末(4) 50.0重量%
白色顔料:TiO(石原産業(株)製:TR−50) 5.0重量%
ポリマ溶液:エチルセルロース/テルピネオール溶液(濃度50重量%) 20.0重量%
増粘剤:SiO/酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル溶液(濃度15重量%) 5.0重量%
次に、得られた緩衝層上に以下の組成有機ビヒクルA5を80gとガラス粉末(3)70gからなる隔壁用感光性ペーストを用いて隔壁パターンを形成した。パターン形成時の露光量は400mJ/cmであった。
有機ビヒクルA5組成
紫外線吸収剤1:ユビナール3039(BASF社製:2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート) 3.1重量%
紫外線吸収剤2:ベーシックブルー7 0.02重量%
紫外線吸収剤3:1,2,3−ベンゾトリアゾール 3.9重量%
ポリマ溶液:実施例1と同一のポリマ溶液 46.8重量%
モノマー:MGP400:N,N,N’,N’−テトラ(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピル)ポリオキシプロピレンジアミン 18.7重量%
開始剤:イルガキュア369(チバガイギー社製:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4’−モルフォリノブチロフェノン) 7.5重量%
増感剤:DETX−S(日本化薬社製:2,4−ジエチルチオキサントン) 0.7重量%
重合禁止剤:ヒドロキノンモノメチルエーテル 7.5重量%
可塑剤:ジブチルフタレート(DBP) 1.8重量%
溶媒:ガンマブチロラクトン 9.98重量%
その他は実施例1と同様にしてPDPを作製、評価した。結果を表1に示す。隔壁の剥がれによる蛍光体の混色、誤放電等の欠点はなく、表示は良好であった。輝度は180cd/mであった。
参考例3
緩衝層ペーストの塗布厚みを15μmとした以外は参考例2と同様にしてPDPを作製、評価した。結果を表1に示す。隔壁の剥がれによる蛍光体の混色、誤放電等の欠点はなく、表示は良好であった。輝度は180cd/mであった。
比較例
緩衝層なしで隔壁を形成した以外は実施例1と同様にしてPDPの作製、評価した。結果を表1に示す。隔壁の剥がれによる蛍光体の混色、誤放電等の欠陥が多数あった。輝度は130cd/mであった。
Figure 0004578489
本発明のPDPの構造を示すPDP断面図である。 従来のAC型PDPの構造を示すPDP断面図である。 従来のスクリーン印刷法によって作製した隔壁の断面図である。 本発明の隔壁形状を示す隔壁断面図である。
符号の説明
1:前面ガラス基板
2:透明誘電体層
3:保護層
4:透明電極
5:バス電極
6:隔壁
7:蛍光体層
8:書き込み電極
9:背面ガラス基板
10:緩衝層

Claims (8)

  1. 書き込み電極、前記書き込み電極を覆う緩衝層、及び前記緩衝層上に設けた隔壁を有するプラズマディスプレイパネル背面板の製造方法であって、基板上に無機粉末、ならびに感光性成分、およびアゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、アントラキノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ジフェニルシアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物およびp−アミノ安息香酸系染料から選ばれる紫外線吸収剤を含む有機成分を含有する緩衝層用ペーストを塗布、乾燥後、全面紫外線露光し、光硬化した緩衝層用ペースト塗布膜上に主としてガラス微粉末からなる無機粉末と感光性を持つ有機成分からなる感光性ペーストを塗布、乾燥して得た塗布膜を紫外線を用いて上方よりマスク露光し、非硬化部分を現像によって除去して隔壁パターンを形成し、その後焼成して上面幅(Lt)30〜60μm、ピッチ(P)160〜220μm、高さ(H)100〜170μmの隔壁を形成することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  2. 前記緩衝層用ペーストに含まれる紫外線吸収剤がアゾ系染料である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  3. 前記感光性ペーストがアゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、アミノケトン系染料、アントラキノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ジフェニルシアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物およびp−アミノ安息香酸系染料から選ばれる紫外線吸収剤を含む請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  4. 前記隔壁の上面幅(Lt)、半値幅(Lh)、下面幅(Lb)の比が下記に示される範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイの製造方法。
    Lt/Lh=0.65〜1
    Lb/Lh=1〜2
    ただし、Lt=Lh=Lbの場合をのぞく。
  5. 前記緩衝層の厚みが、3〜20μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  6. 前記緩衝層が、50〜400℃の熱膨張係数α50400が70〜85×10-7/Kのガラスからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  7. 前記緩衝層が、Tg(ガラス転移点)が430〜500℃、Ts(軟化点)が470〜580℃のガラスからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  8. 前記緩衝層が、酸化ビスマスを10〜60重量%含むガラスからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のプラズマディスプレイの製造方法。
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