JP4540090B2 - プラズマディスプレイパネルの駆動方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以後「PDP」と記す)の駆動方法に関し、さらに詳しくは、PDPの駆動に際しオフセット電圧パルスを印加するPDPの駆動方法に関する。PDPは薄型大画面という特徴を持ち、テレビ、公衆表示モニターとして商品化されている。
【0002】
【従来の技術】
PDPとして、AC型3電極面放電形式のPDPが広く知られている。このPDPは、前面側(表示面側)の基板の内側面に面放電が可能な表示電極を水平方向に多数設け、背面側の基板の内側面に多数の選択用電極(信号電極やアドレス電極とも呼ばれる)を表示電極と交差する方向に設け、表示電極と選択用電極の交差部をセルとするものである。なお、本明細書では、表示電極の内、スキャン(走査)に用いる電極をY電極とし、その他の電極をX電極として説明する。
【0003】
この構造のPDPでは、階調表示のため、一般にアドレス・表示分離方式と呼ばれる駆動方式で表示が行われている。すなわち、1フレームを、重み付けをした複数のサブフィールドに分割し、各サブフィールドを、発光させるべきセルを選択するアドレス期間と、選択したセルを発光させる維持期間(表示期間ともいう)とで構成する。
【0004】
そして、表示の際には、Y電極をスキャン電極として用いて画面の走査を行い、その間に所望の選択用電極に電圧(一般に「アドレス電圧」、「アドレス電圧パルス」、「アドレスパルス」などと呼ばれる)を印加して、Y電極と選択用電極との間でアドレス放電を発生させて、発光させるべきセル内に電荷を形成する。次に、X電極とY電極に交互に表示用の電圧(一般に「維持電圧」、「維持電圧パルス」、「維持パルス」などと呼ばれる)を印加して、XY電極間で重み付けの回数だけ維持放電を継続することで、表示を行うようにしている。
【0005】
この維持放電の際に印加する電圧パルスは、図26に示した通り、矩形波を交互に印加する方法が一般的である。なお、この変形例として、放電時の電磁波放射対策例として、図27に示した電圧パルスを印加することが特許文献1や特許文献2などに記載されている。また、駆動マージンを広げる目的、あるいは発光効率を向上させる目的で、図28に示すオフセット電圧パルスを印加することが特許文献3〜7などに記載されている。このオフセット電圧パルスとしては、維持放電パルスの立上り部分にオフセット電圧を重畳したものが用いられている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−229509号公報
【特許文献2】
特開2001−135242号公報
【特許文献3】
特開昭52−150941号公報
【特許文献4】
特開昭52−150940号公報
【特許文献5】
特開昭50−39024号公報
【特許文献6】
特開平3−259183号公報
【特許文献7】
特開平4−267293号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
現在のPDPでは、低消費電力化、高輝度化がデバイスとしての最大の課題であり、そのためにはパネルの発光効率の改善が不可欠である。図28に示したオフセット電圧パルスの印加では、一時的に高電圧を印加して、パネルのライン間静電容量に電荷チャージを充電し、次に放電開始と同時にハイ・インピーダンス状態にすることにより、ライン間に充電された電流を放電に消費させるようにしており、放電電流が駆動回路を伝搬する場合と比較して発光効率が改善する。
【0008】
しかし、図29に示すように、表示率が大きい場合、つまり画面の全セルに対する発光セルの割合が大きい場合には、充電電流よりも放電電流の方が大きくなり、足りない分を回路から供給する際にロスが生じ、十分な効果が得られないという問題がある。
【0009】
また、図30に示すように、表示の階調重みが大きい場合には、放電空間に多数のプライミング粒子が存在するため、放電タイミングが速くなる。オフセット電圧パルスの立ち上がりよりも放電タイミングが速い場合には、意図した電荷チャージを溜めることができないため、足りない分を回路から供給する必要があり、これによるロスの発生で、十分な効果が得られないという問題がある。
【0010】
すなわち、オフセット電圧パルスを用いると、表示率が大きい場合には、充電電流と放電電流のアンバランスによる電圧ドロップにより、発光効率が低下する。また、表示の階調重みが大きい場合には、オフセット電圧の立ち上がりよりも放電タイミングが速くなってしまい、発光効率が低下する。
【0011】
なお、放電時電磁波放射を低減する図27の方法は、上記の方法と比べて、維持パルス周期が2倍になってしまう。
【0012】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、維持期間にオフセット電圧パルスを印加する際、電圧印加のタイミングを調整することで、オフセット放電による発光効率向上効果が電圧ドロップによってキャンセルされることを防止することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一対の基板間に複数の表示電極を平行に設けるとともに、表示電極と交差する方向に複数の選択用電極を設け、表示電極間の表示ラインと選択用電極との交差部をセルとして発光させるよう構成したプラズマディスプレイパネルを用い、画面表示の際には、1フレームを複数のサブフィールドで構成するとともに、各サブフィールドを、発光させるべきセルを選択するアドレス期間と、選択したセルを発光させる維持期間とで構成し、アドレス期間には表示電極を一本おきに走査して発光させるべきセル内に壁電荷を蓄積し、維持期間には走査に用いない表示電極と走査に用いる表示電極との間で、ほぼ矩形波形の電圧パルスにオフセット電圧を重畳した維持電圧パルスを交互に印加してそれらの電極間で維持放電を発生させることで画面表示を行うプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、維持電圧パルスの印加に際し、表示電極を、連続する第1〜第4の4本を1組とする多数組の電極に区分し、第2の電極に電圧が印加されない状態で第1の電極の電圧パルスが立上るとともに第3の電極の電圧パルスが立下り、第3の電極に電圧が印加されない状態でかつ第1の電極の電圧印加中に第2の電極の電圧パルスが立上り、第2の電極の電圧印加中に第1の電極の電圧パルスが立下るとともに第3の電極の電圧パルスが立上り、第1の電極に電圧が印加されない状態でかつ第3の電極の電圧印加中に第2の電極の電圧パルスが立下り、第2〜4の電極についてもこれら第1〜第3の電極の関係と同じになるように、第1〜第4の電極に印加する電圧パルスの位相をシフトさせることからなるプラズマディスプレイパネルの駆動方法である。
【0014】
本発明によれば、第1と第2の電極間の放電、第2と第3の電極間の放電、第3と第1の電極間の放電が、シフトされて発生されるので、オフセット放電(オフセット電圧を重畳した電圧パルスの印加による放電)を行っても、電圧ドロップが発生せず、オフセット放電による発光効率向上効果が電圧ドロップによってキャンセルされることがない。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明において、基板としては、ガラス、石英、セラミック等の基板や、これらの基板上に、電極、絶縁膜、誘電体層、保護膜等の所望の構成物を形成した基板が含まれる。
【0016】
表示電極および選択電極は、当該分野で公知の各種の材料と方法を用いて形成することができる。表示電極および選択電極に用いられる材料としては、例えば、ITO、SnO2などの透明な導電性材料や、Ag、Au、Al、Cu、Crなどの金属の導電性材料が挙げられる。表示電極および選択電極の形成方法としては、当該分野で公知の各種の方法を適用することができる。たとえば、印刷などの厚膜形成技術を用いて形成してもよいし、物理的堆積法または化学的堆積法からなる薄膜形成技術を用いて形成してもよい。厚膜形成技術としては、スクリーン印刷法などが挙げられる。薄膜形成技術の内、物理的堆積法としては、蒸着法やスパッタ法などが挙げられる。化学的堆積方法としては、熱CVD法や光CVD法、あるいはプラズマCVD法などが挙げられる。
【0017】
本発明においては、維持電圧パルスの印加に際し、表示電極を、連続する第1〜第4の4本を1組とする多数組の電極に区分し、第2の電極に電圧が印加されない状態で第1の電極の電圧パルスが立上るとともに第3の電極の電圧パルスが立下り、第3の電極に電圧が印加されない状態でかつ第1の電極の電圧印加中に第2の電極の電圧パルスが立上り、第2の電極の電圧印加中に第1の電極の電圧パルスが立下るとともに第3の電極の電圧パルスが立上り、第1の電極に電圧が印加されない状態でかつ第3の電極の電圧印加中に第2の電極の電圧パルスが立下り、第2〜4の電極についてもこれら第1〜第3の電極の関係と同じになるように、第1〜第4の電極に印加する電圧パルスの位相をシフトさせる。
【0018】
上記駆動方法においては、維持電圧パルスを、ほぼ矩形波形の電圧パルスに対して、パルス印加の立上り時点でいったん矩形波形の電圧レベルまで電圧を引き上げた後、オフセット電圧のレベルまで電圧を引き上げ、その後矩形波形の電圧レベルまで電圧を引き下げた電圧パルスとしてもよい。
【0019】
また、維持電圧パルスを、ほぼ矩形波形の電圧パルスに対して、パルス印加の立上り時点で直接オフセット電圧のレベルまで電圧を引き上げ、その後矩形波形の電圧レベルまで電圧を引き下げた電圧パルスとしてもよい。
【0020】
さらに、維持電圧パルスを、ほぼ矩形波形の電圧パルスに対して、パルス印加の立上り時点で第1のオフセット電圧パルスを重畳し、さらにパルス印加の中間時点で第2のオフセット電圧パルスを重畳した電圧パルスとしてもよい。この場合、第2のオフセット電圧パルスの電圧レベルを、第1のオフセット電圧パルスの電圧レベルよりも低く、かつ矩形波形の電圧レベルよりも高いレベルとしてもよい。
【0021】
以下、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を詳述する。なお、本発明はこれによって限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
【0022】
図1は本発明の駆動方法を適用するPDPの構成を示す部分分解斜視図である。このPDPはカラー表示用のAC型3電極面放電形式のPDPである。
【0023】
本PDPは、前面側(表示面側)の基板11を含む前面側のパネルアセンブリと、背面側の基板21を含む背面側のパネルアセンブリから構成されている。前面側の基板11と背面側の基板21としては、ガラス基板、石英基板、セラミック基板等を使用することができる。
【0024】
前面側の基板11の内側面には、水平方向に表示電極Xと表示電極Yが等間隔に形成されている。表示電極Xと表示電極Yの間、および表示電極Yと表示電極Xの間の、全てのラインが表示ラインLとなる。各表示電極X、Yは、ITO、SnO2などの幅の広い透明電極12と、例えばAg、Au、Al、Cu、Cr及びそれらの積層体(例えばCr/Cu/Crの積層構造)等からなる金属製の幅の狭いバス電極13から構成されている。表示電極X、Yは、Ag、Auについてはスクリーン印刷のような厚膜形成技術を用い、その他については蒸着法、スパッタ法等の薄膜形成技術とエッチング技術を用いることにより、所望の本数、厚さ、幅及び間隔で形成することができる。
【0025】
表示電極X、Yの上には、表示電極X、Yを覆うように交流(AC)駆動用の誘電体層17が形成されている。誘電体層17は、低融点ガラスペーストを、前面側の基板11上にスクリーン印刷法で塗布し、焼成することにより形成している。
【0026】
誘電体層17の上には、表示の際の放電により生じるイオンの衝突による損傷から誘電体層17を保護するための保護膜18が形成されている。この保護膜は、例えば、MgO、CaO、SrO、BaO等からなる。
【0027】
背面側の基板21の内側面には、平面的にみて表示電極X、Yと交差する方向に複数のアドレス電極(選択電極やデータ電極などとも呼ばれる)Sが形成され、そのアドレス電極Sを覆って誘電体層24が形成されている。アドレス電極Sは、スキャン用の表示電極との交差部で発光セルを選択するためのアドレス放電を発生させるものであり、Cr/Cu/Crの3層構造で形成されている。このアドレス電極Sは、その他に、例えばAg、Au、Al、Cu、Cr等で形成することもできる。アドレス電極Sも、表示電極X、Yと同様に、Ag、Auについてはスクリーン印刷のような厚膜形成技術を用い、その他については蒸着法、スパッタ法等の薄膜形成技術とエッチング技術を用いることにより、所望の本数、厚さ、幅及び間隔で形成することができる。誘電体層24は、誘電体層17と同じ材料、同じ方法を用いて形成することができる。
【0028】
隣接するアドレス電極Sとアドレス電極Sとの間の誘電体層24上には、複数の隔壁29が形成されている。隔壁29は、サンドブラスト法、印刷法、フォトエッチング法等により形成することができる。例えば、サンドブラスト法では、低融点ガラスフリット、バインダー樹脂、溶媒等からなるガラスペーストを誘電体層24上に塗布して乾燥させた後、そのガラスペースト層上に隔壁パターンの開口を有する切削マスクを設けた状態で切削粒子を吹きつけて、マスクの開口に露出したガラスペースト層を切削し、さらに焼成することにより形成する。また、フォトエッチング法では、切削粒子で切削することに代えて、バインダー樹脂に感光性の樹脂を使用し、マスクを用いた露光及び現像の後、焼成することにより形成する。
【0029】
隔壁29の側面及び隔壁間の誘電体層24上には、赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体層28R、28G、28Bが形成されている。蛍光体層28R、28G、28Bは、蛍光体粉末とバインダー樹脂と溶媒とを含む蛍光体ペーストを隔壁29間の凹溝状の放電空間内にスクリーン印刷、又はディスペンサーを用いた方法などで塗布し、これを各色毎に繰り返した後、焼成することにより形成している。この蛍光体層28R、28G、28Bは、蛍光体粉末と感光性材料とバインダー樹脂とを含むシート状の蛍光体層材料(いわゆるグリーンシート)を使用し、フォトリソグラフィー技術で形成することもできる。この場合、所望の色のシートを基板上の表示領域全面に貼り付けて、露光、現像を行い、これを各色毎に繰り返すことで、対応する隔壁間に各色の蛍光体層を形成することができる。
【0030】
PDPは、上記した前面側のパネルアセンブリと背面側のパネルアセンブリとを、表示電極X、Yとアドレス電極Sとが交差するように対向配置し、周囲を封止し、隔壁29で囲まれた放電空間30に放電ガスを充填することにより作製されている。このPDPでは、表示電極X、Yとアドレス電極Sとの交差部の放電空間30が表示の最小単位である1つのセル領域(単位発光領域)となる。1画素はR、G、Bの3つのセルで構成される。
【0031】
画面表示においては、1フレームを複数のサブフィールドで構成するとともに、各サブフィールドを、発光させるべきセルを選択する選択期間(以後、「アドレス期間」ともいう)と、選択したセルを発光させる維持期間とで構成する。
【0032】
そして、アドレス期間にはY電極を順次走査して発光させるべきセル内に壁電荷を蓄積し、維持期間には全てのセルの表示電極間にパルス状の電圧を印加して画面表示を行う。具体的には、まず、アドレス期間においては、Y電極群をスキャン電極として用いて、順次スキャン電圧を印加してゆき、その間に所望のアドレス電極Sにアドレス電圧を印加し、選択されたアドレス電極SとY電極との間でアドレス放電を発生させることで発光すべきセルを選択する。この発光セル対応の誘電体層上には壁電荷が形成されるので、次に、Y電極群とX電極群との間に交互に維持電圧を印加して、当該壁電荷の蓄積されたセルにおいて再び放電(維持放電または表示放電と呼称)を発生させることで、セルを発光させる。このセルの発光は、表示放電によって発生された紫外線で蛍光体層中の蛍光体を励起して、蛍光体から所望の色の可視光を発生させることにより行われる。
【0033】
図2はPDPを平面的に見た状態を示す説明図である。
本PDPは、隔壁29が蛇行状に形成され、三角形に配置されたR,G,Bの3つのセルで1つの画素を構成するデルタ配置のPDPである。R,G,Bの各セルはほぼ六角形のハニカム構造となっている。
【0034】
表示電極は、X電極、Y電極ともに透明電極12とバス電極13で形成されているが、透明電極12はセルの対応部分のみに形成されている。X電極とY電極は等間隔に配置され、X電極とY電極間、およびY電極とX電極間のすべての透明電極どうしで面放電が可能な構成となっている。
【0035】
図3は本発明の第1の駆動方法の原理を示す説明図である。この図は、表示電極の維持期間に印加する電圧パルス(維持電圧パルス)を示したものである。以下では、説明を容易にするために、表示電極を行電極または単に電極として記すこともある。なお、アドレス期間に印加する電圧パルスは従来公知のものを用いる。
【0036】
表示電極ラインA、B、C、Dは行方向に連続する任意の4本の表示電極ラインである。本駆動法では、維持電圧パルスの印加に際し、表示電極を、連続する電極ラインA、B、C、Dを1組とする多数組の電極に区分する。
【0037】
そして、電極ラインA、B、Cについては、電極ラインBに電圧が印加されない状態で電極ラインAの電圧パルスが立上るとともに電極ラインCの電圧パルスが立下り、電極ラインCに電圧が印加されない状態でかつ電極ラインAの電圧印加中に電極ラインBの電圧パルスが立上り、電極ラインBの電圧印加中に電極ラインAの電圧パルスが立下るとともに電極ラインCの電圧パルスが立上り、電極ラインAに電圧が印加されない状態でかつ電極ラインCの電圧印加中に電極ラインBの電圧パルスが立下り、電極ラインB、C、Dについてもこれら電極ラインA、B、Cの関係と同じになるように、電極ラインA、B、Cに印加する電圧パルスの位相をシフトさせている。
【0038】
走査に用いない電極をX電極とし、走査に用いる電極をY電極とすると、電極ラインA、CをX電極と考え、電極ラインB、DをY電極と考えてもよいし、その逆に、電極ラインA、CをY電極と考え、電極ラインB、DをX電極と考えてもよい。以下では、電極ラインBの上下に存在するセル1とセル2が選択された状態で説明する。
【0039】
具体的には、本駆動方法では、電極ラインBに矩形波形の維持パルスPsを印加すると同時にオフセット電圧パルスPoを印加し、Loレベルにある電極ラインCとの間のセル2にオフセット放電αを引き起こし、次に維持パルスPsの印加より数マイクロ秒後に、電極ラインAをHiレベルからLoレベルに変化させることで、セル1において2回目の放電β(非オフセット放電)を引き起こす。すなわち、発光効率の高いオフセット放電と、発光効率の低い非オフセット放電を分離し、オフセット放電による発光効率向上効果が電圧ドロップによってキャンセルされることを防止する。したがって、表示率が大きい場合でも高い発光効率を得ることができる。
【0040】
本発明は一見したところ、図27の電圧波形と図28の電圧波形を組み合わせただけのように見えるが、以下のような特有の効果を有する。
(1)本発明の電圧波形は、オフセット電圧パルスによる電荷チャージを利用する場合に、電荷チャージと放電電流のバランスをとるものであり、図27の電圧波形には存在しない課題を解決するものである。したがって、本発明における発光効率の上昇量η1は、図27の電圧パルスの印加による発光効率の上昇量をη2とし、図28の電圧パルスの印加による発光効率の上昇量をη3とした場合に、η1>η2,η3であり、かつη1>η2+η3である。
【0041】
(2)図27の電圧パルスの印加では、維持パルス周期が2倍になるという問題があるが、本発明の電圧パルスであれば、オフセット電圧パルスによって放電が速くなり、維持パルス周期が短くなるという効果がある。
【0042】
図4は本発明の第2の駆動方法の原理を示す説明図である。
本駆動方法では、電極ラインBに矩形波形の維持パルスPsを印加すると同時に第1オフセット電圧パルスPo1を印加し、Loレベルにある電極ラインCとの間にオフセット放電αを引き起こし、次に維持パルスPsの印加より数マイクロ秒後に、電極ラインBに第2オフセット電圧パルスPo2を印加すると同時に電極ラインAをHiレベルからLoレベルに変化させることで、電極ラインAとの間に2回目のオフセット放電γを引き起こす。また、これと同時に電極ラインCにオフセット電圧パルスPo1’を印加する事で電極ラインCと電極ラインDの間でオフセット放電α’を起こす。
【0043】
電極ラインBに第2オフセット電圧パルスPo2を印加する理由は2つある。第1は、電極ラインBに2回目のオフセット電圧パルスを印加して新たなチャージを形成し、2回目のオフセット放電γを発生させることで、電圧ドロップが無く発光効率の高いオフセット放電を1つの維持パルス中に2回得ることにある。これにより、表示率の大きい場合でも、充電電流と放電電流のアンバランスによる電圧ドロップを防止することができ、発光効率を改善することができる。
【0044】
第2は、隣接する電極ラインCの立ち上がり速度を高速化するため、隣接する電極ラインBに同位相のオフセットパルスを印加するというものである。これにより、表示の階調重みが大きい場合でも、放電タイミングよりもオフセット電圧の立ち上がりを速くすることができ、発光効率を改善することができる。
【0045】
実施形態1
本実施形態の駆動方法を適用するPDPは図1および図2で示したPDPである。
図5は駆動装置のブロック図である。
本駆動装置は、X側、Y側それぞれ2つのサステナから形成される。すなわち、本駆動装置は、X側(表示電極のX電極側)に電圧を印加する2個のサステナを含んでいる。また、Y側(表示電極のY電極側)に電圧を印加する2個のスキャンドライバと2個のサステナを含んでいる。
【0046】
X側のサステナ1は、X電極の奇数行に接続されており、オフセット回路からオフセット電圧Voの供給を受ける。また、Vw回路1とVx回路1から電圧Vwと電圧Vxの供給を受ける。X側のサステナ2は、X電極の偶数行に接続されており、オフセット回路からオフセット電圧Voの供給を受ける。また、Vw回路2とVx回路2から電圧Vwと電圧Vxの供給を受ける。X側の2個のサステナ1,2はそれぞれ異なったパルスを印加するため独立に駆動される。
【0047】
Y側のサステナ1およびサステナ2は、X側のサステナ1およびサステナ2と同じである。
Y側のスキャンドライバ1は、Y電極の奇数行に接続されており、オフセット回路からオフセット電圧Voの供給を受ける。また、Vsc回路とVy回路から電圧Vscと電圧Vyの供給を受ける。さらに、サステナ1から電圧Vwと電圧Vxの供給を受ける。
【0048】
Y側のスキャンドライバ2は、Y電極の偶数行に接続されており、オフセット回路からオフセット電圧Voの供給を受ける。また、Vsc回路とVy回路から電圧Vscと電圧Vyの供給を受ける。さらに、サステナ2から電圧Vwと電圧Vxの供給を受ける。
【0049】
図6および図7にX側駆動回路の詳細を示す。図6は奇数行用のX1駆動回路であり、図7は偶数行用のX2駆動回路である。
X1駆動回路311は、以下の回路1〜10から構成される。
(回路1)Vm≒(VLo+VHi)/2となる電圧VmとトランジスタT1のドレインが接続され、T1のソースが順方向ダイオードD1を介してインダクターI1と接続され、I1の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0050】
(回路2)VmとトランジスタT2のソースが接続され、T2のドレインが逆方向ダイオードD2を介してインダクターI1と接続され、I1の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路3)Vop1≒(VHi+Vo)/2となる電圧Vop1とトランジスタT3のドレインが接続され、T3のソースが順方向ダイオードD3を介してインダクターI2と接続され、I2の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0051】
(回路4)Vop1とトランジスタT4のソースが接続され、T4のドレインが逆方向ダイオードD4を介してインダクターI2と接続され、I2の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路5)VHiとトランジスタT5のドレインが接続され、T5のソースが逆方向ダイオードD5を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路5’)VHiとトランジスタT5’のドレインが接続され、T5’のソースが逆方向ダイオードD5’を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路6)VLoとトランジスタT6のソースが接続され、T6のドレインが順方向ダイオードD6を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路7)VxとトランジスタT7のドレインが接続され、T7のソースが順方向ダイオードD7を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0052】
(回路8)グランドとトランジスタT8のソースが接続され、T8のドレインが順方向ダイオードD8を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路9)VwとトランジスタT9のドレインが接続され、T9のソースが順方向ダイオードD9を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路10)グランドとトランジスタT10のソースが接続され、T10のドレインが逆方向ダイオードD10を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0053】
図12に回路1〜6を用いて維持電圧パルスおよびオフセット電圧パルスを印加する際の各トランジスタのスイッチ・タイミングを示す。
t1:回路1をONにし、VLoからVHiへ電圧を変化させる。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用するため、速度の速い立ち上がりが実現する。実際の到達電圧は多少の回路損失が発生するため、VHiのよりも10〜20%低い電圧VHi−αになる。
【0054】
t2:回路1をOFF、回路3をONする。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用して、VHi−αからVoに電圧を変化させる。スタートの電圧がVHiよりも低いため、回路損失を見込んでも電圧はほぼVoに達する。あらかじめVoに達するようにVop1の設定を行っても良い。
【0055】
t3:回路3をOFF、回路4をONする。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用して、VoからVHiに電圧を変化させる。実際の到達電圧は多少の回路損失が発生するため、VHiよりも10〜20%高い電圧VHi+α’になる。
【0056】
t4:回路3をOFF、回路5、回路5’をONする。VHi+αよりVHiに電圧を引き下げ、固定する。このときパネル内では壁電荷が形成されるため、回路5、回路5’は数マイクロ秒ON状態を維持し、回路内の電流貫通を防ぐためt5の手前でOFFする。
【0057】
t5:回路2をONする。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用して、VHiからVLoに電圧を変化させる。実際の到達電圧は多少の回路損失が発生するため、VLoよりも10〜20%高い電圧VLo+α’’になる。
t6:回路2をOFF、回路6をONする。VLo+αよりVLoに電圧を引き下げ、固定する。回路6は次のパルス印加直前までON状態を維持し、回路内の電流貫通を防ぐため次のt1手前でOFFにする。
回路7〜9はリセット期間およびアドレス期間で使用する。
【0058】
X2駆動回路312は、出力がX電極の偶数行に接続される以外は、X1駆動回路311とほぼ同じ構成で、パルス印加のタイミングを除けば基本動作は同じである。
【0059】
図8および図9にY側駆動回路の詳細を示す。図8は奇数行用のY1駆動回路であり、図9は偶数行用のY2駆動回路である。Y1駆動回路321とY2駆動回路322は基本的に同じ構成である。
【0060】
Y側駆動回路は、スキャン時に各Y電極のON/OFFを制御するためのスキャンドライバと、Vscへの引き上げ回路、および維持電圧パルス、オフセット電圧パルスを印加するための回路から構成される。これらは維持期間には基本的にX側駆動回路と同じ動きをするため、説明を省略する。
【0061】
図10にアドレス側駆動回路を示す。
アドレス側駆動回路33は、各アドレス電極のON/OFFを制御するためのアドレスドライバを含んでいる。
【0062】
図11は本実施形態におけるタイムチャートである。
画面の表示に際しては、維持期間の長さが異なる8つのサブフィールドで1つのフレームを構成する。1つのフレームは1枚の絵を構成し、1秒間に60枚のフレームが連続することでTV動画が形成される。
【0063】
各サブフィールドは、セル内の電荷を初期化するリセット期間と、発光させるべきセルを選択するアドレス期間と、選択されたセルを発光させる維持期間で構成される。
【0064】
図13は各表示電極の1つのサブフィールドにおける駆動電圧波形を示した図である。1つのサブフィールドは、リセット期間、アドレス期間、維持期間より構成される。印加される電圧の例としては例えば、Vw=400(V)、Vx=80(V)、Vy=−120(V)、Vsc=−60(V)、Vadd=60(V)、VHi=80(V)、VLo=−80(V)、Vm=−0(V)、Vop=160(V)が挙げられる。
【0065】
維持期間の時間aにおいては、X電極は奇数行の電圧がVHiからVLoに変動するのと同時に、偶数行の電圧がVLoからVoに変動する。Y電極は奇数行の電圧がVHiに維持され、偶数行の電圧がVLoに維持される。このとき、X電極の偶数行とY電極の偶数行との間でオフセット放電f1が発生する。そしてこれと同時に、X電極の奇数行とY電極の奇数行との間で非オフセット放電f2が発生する。このとき、各電極ラインの上方か下方どちらか一方でしか放電は起こっておらず、電源ラインから補われる電荷チャージの不足分は、従来の駆動方法よりも小さく、発光効率が改善される。
【0066】
時間bにおいては、Y電極は奇数行がVHiからVLoに変動するのと同時に、偶数行がVLoからVoに変動する。X電極の奇数行はVLoに維持され、偶数行はVHiに維持される。発光効率の改善効果は、時間aと同じである。
【0067】
時間cにおいては、X電極は偶数行がVHiからVLoに変動するのと同時に、奇数行がVLoからVoに変動する。Y電極の奇数行はVLoに維持され、偶数行はVHiに維持される。発光効率の改善効果は、時間aおよび時間bと同じである。
【0068】
時間dにおいては、Y電極は偶数行がVHiからVLoに変動するのと同時に、奇数行がVLoからVoに変動する。X電極の偶数行はVLoに維持され、奇数行はVHiに維持される。発光効率の改善効果は、時間a、時間bおよび時間cと同じである。
【0069】
実施形態2
本実施形態は、PDPの構成と装置の全体構成については実施形態1と同じである。内部のX側駆動回路とY側駆動回路が異なる。
【0070】
図14および図15にX側駆動回路の詳細を示す。図14は奇数行用のX1駆動回路であり、図15は偶数行用のX2駆動回路である。
X1駆動回路411は、以下の回路1〜9から構成される。
(回路1)Vm≒(VLo+VHi)/2となる電圧VmとトランジスタT51のソースが接続され、T51のドレインが逆方向ダイオードD51を介してインダクターI13と接続され、I13の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0071】
(回路2)Vop1≒(VLo+Vo)/2となる電圧Vop1とトランジスタT52のドレインが接続され、T52のソースが順方向ダイオードD52を介してインダクターI14と接続され、I14の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0072】
(回路3)Vop1とトランジスタT53のソースが接続され、T53のドレインが逆方向ダイオードD53を介してインダクターI14と接続され、I14の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路4)VHiとトランジスタT54のドレインが接続され、T54のソースが逆方向ダイオードD54を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路4’)VHiとトランジスタT54’のソースが接続され、T54’のドレインが順方向ダイオードD54’を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。T54’はT54とスイッチが同期する。
【0073】
(回路5)VLoとトランジスタT55のソースが接続され、T55のドレインが逆方向ダイオードD55を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路6)VXとトランジスタT56のドレインが接続され、T56のソースが順方向ダイオードD56を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路7)グランドとトランジスタT57のソースが接続され、T57のドレインが順方向ダイオードD57を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0074】
(回路8)VwとトランジスタT58のドレインが接続され、T58のソースが順方向ダイオードD58を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路9)グランドとトランジスタT59のソースが接続され、T59のドレインが逆方向ダイオードD59を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0075】
図18に回路1〜5を用いて維持電圧パルスおよびオフセット電圧パルスを印加する際の各トランジスタのスイッチ・タイミングを示す。
t1:回路2をONにし、VLoからVoへ電圧を変化させる。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用するため、速度の速い立ち上がりが実現する。あらかじめVoに達するようにVop1の調整を行う。
【0076】
t2:回路2をOFF、回路3をONする。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用して、VoからVHiに電圧を変化させる。
【0077】
t3:回路3をOFF、回路4、回路4’をONする。VHiに電圧を固定する。このときパネル内では壁電荷が形成されるため、回路4、回路4’は数マイクロ秒ON状態を維持し、回路内の電流貫通を防ぐためt4の手前でOFFする。
【0078】
t4:回路1をONする。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用して、VHiからVLoに電圧を変化させる。実際の到達電圧は多少の回路損失が発生するため、VLoよりも10〜20%高い電圧VLo+α’’になる。
【0079】
t5:回路1をOFF、回路5をONする。VLo+αよりVLoに電圧を引き下げ、固定する。回路5は次のパルス印加直前までON状態を維持し、回路内の電流貫通を防ぐため次のt1手前でOFFにする。
回路7〜9はリセット期間およびアドレス期間で使用する。
【0080】
X2駆動回路412は、出力がX電極の偶数行に接続される以外は、X1駆動回路411とほぼ同じ構成で、パルス印加のタイミングを除けば基本動作は同じである。
【0081】
図16および図17にY側駆動回路の詳細を示す。図16は奇数行用のY1駆動回路であり、図17は偶数行用のY2駆動回路である。Y1駆動回路421とY2駆動回路422は、奇数行用と偶数行用が異なるだけで、基本的には同じ構成である。
【0082】
Y側駆動回路は、スキャン時に各Y電極のON/OFFを制御するためのスキャンドライバと、Vscへの引き上げ回路、および維持電圧パルス、オフセット電圧パルスを印加するための回路から構成される。これらは維持期間には基本的にX側駆動回路と同じ動きをするため、説明を省略する。
【0083】
アドレス側駆動回路は実施形態1と同じである。また、タイムチャートも実施形態1と同じである。
【0084】
各表示電極の1つのサブフィールドにおける駆動電圧波形は、実施形態1と同じである。印加される電圧の例としては、例えば、Vw=400(V)、Vx=80(V)、Vy=−120(V)、Vsc=−60(V)、Vadd=60(V)、VHi=80(V)、VLo=−80(V)、Vop=80(V)が挙げられる。
【0085】
実施形態3
本実施形態は、PDPの構成と装置の全体構成については実施形態1と同じである。内部のX側駆動回路とY側駆動回路が異なる。
【0086】
図19および図20にX側駆動回路の詳細を示す。図19は奇数行用のX1駆動回路であり、図20は偶数行用のX2駆動回路である。
X1駆動回路511は、以下の回路1〜11から構成される。
(回路1)Vm≒(VLo+VHi)/2となる電圧VmとトランジスタT94のソースが接続され、T94のドレインが逆方向ダイオードD94を介してインダクターI23と接続され、I23の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0087】
(回路2)Vop1≒(VLo+Vo)/2となる電圧Vop1とトランジスタT95のドレインが接続され、T95のソースが順方向ダイオードD95を介してインダクターI124と接続され、I124の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0088】
(回路3)Vop1とトランジスタT96のソースが接続され、T96のドレインが逆方向ダイオードD96を介してインダクターI124と接続され、I124の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路4)VHiとトランジスタT99のドレインが接続され、T99のソースが逆方向ダイオードD99を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路4’)VHiとトランジスタT99’のソースが接続され、T99’のドレインが順方向ダイオードD99’を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。T99’はT99とスイッチが同期する。
【0089】
(回路5)Vop2≒(VHi+Vo)/2となる電圧Vop2とトランジスタT97のドレインが接続され、T97のソースが順方向ダイオードD97を介してインダクターI125と接続され、I125の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路6)Vop1とトランジスタT98のソースが接続され、T98のドレインが逆方向ダイオードD98を介してインダクターI125と接続され、I125の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0090】
(回路7)VLoとトランジスタT100のソースが接続され、T100のドレインが逆方向ダイオードD100を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路8)VXとトランジスタT56のドレインが接続され、T101のソースが順方向ダイオードD101を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路9)グランドとトランジスタT102のソースが接続され、T102のドレインが順方向ダイオードD102を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路10)VwとトランジスタT103のドレインが接続され、T103のソースが順方向ダイオードD103を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0091】
(回路11)グランドとトランジスタT104のソースが接続され、T104のドレインが逆方向ダイオードD104を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0092】
図23に回路1〜5を用いて維持電圧パルスおよびオフセット電圧パルスを印加する際の各トランジスタのスイッチ・タイミングを示す。本実施形態はVo=Vo2となる場合について示している。
【0093】
t1:回路2をONにし、VLoからVoへ電圧を変化させる。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用するため、速度の速い立ち上がりが実現する。あらかじめVoに達するようにVop1の調整を行う。
【0094】
t2:回路2をOFF、回路3をONする。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用して、VoからVHiに電圧を変化させる。
t3:回路3をOFF、回路4、回路4’をONする。VHiに電圧を固定する。このときパネル内では壁電荷が形成されるため、回路4、回路4’は数マイクロ秒ON状態を維持し、回路内の電流貫通を防ぐためt4の手前でOFFする。
【0095】
t4:回路5をONにし、VHiからVo2≒Voへ電圧を変化させる。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用するため、速度の速い立ち上がりが実現する。あらかじめVoに達するようにVop2の調整を行う。
【0096】
t5:回路5をOFF、回路6をONする。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用して、Vo2≒VoからVHiに電圧を変化させる。
t6:回路6をOFF、回路4、回路4’をONする。VHiに電圧を固定する。このときパネル内では壁電荷が形成されるため、回路4、回路4’は数マイクロ秒ON状態を維持し、回路内の電流貫通を防ぐためt7の手前でOFFする。
【0097】
t7:回路1をONする。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用して、VHiからVLoに電圧を変化させる。実際の到達電圧は多少の回路損失が発生するため、VLoよりも10〜20%高い電圧VLo+α’’になる。
【0098】
t8:回路1をOFF、回路7をONする。VLo+αよりVLoに電圧を引き下げ、固定する。回路7は次のパルス印加直前までON状態を維持し、回路内の電流貫通を防ぐため次のt1手前でOFFにする。
回路8〜11はリセット期間およびアドレス期間で使用する。
【0099】
X2駆動回路512は、出力がX電極の偶数行に接続される以外は、X1駆動回路511とほぼ同じ構成で、パルス印加のタイミングを除けば基本動作は同じである。
【0100】
図21および図22にY側駆動回路の詳細を示す。図21は奇数行用のY1駆動回路であり、図22は偶数行用のY2駆動回路である。Y1駆動回路521とY2駆動回路522は、奇数行用と偶数行用が異なるだけで、基本的には同じ構成である。
【0101】
Y側駆動回路は、スキャン時に各Y電極のON/OFFを制御するためのスキャンドライバと、Vscへの引き上げ回路、および維持電圧パルス、オフセット電圧パルスを印加するための回路から構成される。これらは維持期間には基本的にX側駆動回路と同じ動きをするため、説明を省略する。
【0102】
アドレス側駆動回路は実施形態1と同じである。また、タイムチャートも実施形態1と同じである。
【0103】
図24は各表示電極の1つのサブフィールドにおける駆動電圧波形を示した図である。印加される電圧の例としては、例えば、Vw=400(V)、Vx=80(V)、Vy=−120(V)、Vsc=−60(V)、Vadd=60(V)、VHi=80(V)、VLo=−80(V)、Vop1=80(V)、Vop2=160(V)が挙げられる。
【0104】
維持期間の時間aにおいては、X電極は奇数行がVHiからVLoに変動するのと同時に、偶数行がVLoからVoに変動する。Y電極は奇数行がVHiからVo2≒Voに変動し、偶数行はVLoに維持される。このとき、X電極の偶数行とY電極の偶数行との間でオフセット放電f1が発生すると同時に、X電極の奇数行とY電極の奇数行との間でオフセット放電f2が発生する。このとき、各電極ラインの上方か下方どちらか一方でしか放電は起こっておらず、電源ラインから補われる電荷チャージの不足分は、従来駆動方法よりも小さく、発光効率が改善する。また、維持期間中の全ての放電がオフセット放電になったことにより、実施形態1、実施形態2と比較して、さらに高発光効率である。また、オフセット電圧パルスによって放電が速くなり、維持パルス周期を短くする効果も、実施形態1および実施形態2よりも大きい。
【0105】
時間bにおいては、Y電極は奇数行がVHiからVLoに変動するのと同時に、偶数行がVLoからVoに変動する。X電極は偶数行がVHiからVo2≒Voに変動し、奇数行はVLoに維持される。このとき、Y電極の奇数行とX電極の奇数行との間でオフセット放電f3が発生すると同時に、X電極の偶数行とY電極の偶数行との間でオフセット放電f4が発生する。発光効率の改善効果、維持パルス周期短縮効果は、時間aと同じである。
【0106】
時間cにおいては、X電極は偶数行がVHiからVLoに変動するのと同時に、奇数行がVLoからVoに変動する。Y電極は偶数行がVHiからVo2≒Voに変動し、奇数行はVLoで維持される。このとき、X電極の奇数行とY電極の奇数行との間でオフセット放電f5が発生すると同時に、X電極の偶数行とY電極の偶数行との間でオフセット放電f6が発生する。発光効率の改善効果、維持パルス周期短縮効果は時間aおよび時間bと同じである。
【0107】
時間dにおいては、Y電極の偶数行がVHiからVLoに変動するのと同時に、奇数行がVLoからVoに変動する。X電極は奇数行がVHiからVo2≒Voに変動し、偶数行はVLoに維持される。このとき、Y電極の偶数行とX電極の偶数行との間でオフセット放電f7が発生すると同時に、X電極の奇数行とY電極の偶数行との間でオフセット放電f8が発生する。発光効率の改善効果、維持パルス周期短縮効果は、時間a、時間bおよび時間cと同じである。
【0108】
実施形態4
本実施形態は、PDPの構成と装置の全体構成については実施形態3と同じである。内部のX側駆動回路とY側駆動回路も同じであるが、電圧設定値に以下に示す制限が加わる点が、実施形態3と異なる。
X1駆動回路は、以下の回路1〜9から構成される。
(回路1)Vm≒(VLo+VHi)/2となる電圧VmとトランジスタT51のソースが接続され、T51のドレインが逆方向ダイオードD51を介してインダクターI13と接続され、I13の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0109】
(回路2)Vop1≒(VLo+Vo)/2≒(Vo2+VHi)/2となる電圧Vop1とトランジスタT52のドレインが接続され、T52のソースが順方向ダイオードD52を介してインダクターI14と接続され、I14の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0110】
(回路3)Vop1とトランジスタT53のソースが接続され、T53のドレインが逆方向ダイオードD53を介してインダクターI14と接続され、I14の反対の端がパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路4)VHiとトランジスタT54のドレインが接続され、T54のソースが逆方向ダイオードD54を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路4’)VHiとトランジスタT54’のソースが接続され、T54’のドレインが順方向ダイオードD54’を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。T54’はT54とスイッチが同期する。
【0111】
(回路5)VLoとトランジスタT55のソースが接続され、T55のドレインが逆方向ダイオードD55を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路6)VxとトランジスタT56のドレインが接続され、T56のソースが順方向ダイオードD56を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路7)グランドとトランジスタT57のソースが接続され、T57のドレインが順方向ダイオードD57を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0112】
(回路8)VwとトランジスタT58のドレインが接続され、T58のソースが順方向ダイオードD58を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
(回路9)グランドとトランジスタT59のソースが接続され、T59のドレインが逆方向ダイオードD59を介してパネルのX電極の奇数行に接続される。
【0113】
図25に回路1〜5を用いて維持電圧パルスおよびオフセット電圧パルスを印加する際の各トランジスタのスイッチ・タイミングを示す。本実施形態はVo2≒(Vo+VLo−VHi)、VHi<Voとなる場合について示している。
【0114】
t1:回路2をONにし、VLoからVoへ電圧を変化させる。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用するため、速度の速い立ち上がりが実現する。あらかじめVoに達するようにVop1の調整を行う。
【0115】
t2:回路2をOFF、回路3をONする。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用して、VoからVHiに電圧を変化させる。
t3:回路3をOFF、回路4、回路4’をONする。VHiに電圧を固定する。このときパネル内では壁電荷が形成されるため、回路4、回路4’は数マイクロ秒ON状態を維持し、回路内の電流貫通を防ぐためt4の手前でOFFする。
【0116】
t4:回路2をONにし、VHiからVo2≒(Vo+VLo−VHi)へ電圧を変化させる。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用するため、速度の速い立ち上がりが実現する。
【0117】
t5:回路2をOFF、回路3をONする。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用して、Vo2からVHiに電圧を変化させる。
t6:回路3をOFF、回路4、回路4’をONする。VHiに電圧を固定する。このときパネル内では壁電荷が形成されるため、回路4、回路4’は数マイクロ秒ON状態を維持し、回路内の電流貫通を防ぐためt7の手前でOFFする。
【0118】
t7:回路1をONする。パネルの容量Cとインダクターによる共振現象を利用して、VHiからVLoに電圧を変化させる。実際の到達電圧は多少の回路損失が発生するため、VLoよりも10〜20%高い電圧VLo+α’’になる。
【0119】
t8:回路1をOFF、回路5をONする。VLo+αよりVLoに電圧を引き下げ、固定する。回路7は次のパルス印加直前までON状態を維持し、回路内の電流貫通を防ぐため次のt1手前でOFFにする。
回路6〜9はリセット期間およびアドレス期間で使用する。
【0120】
X2駆動回路は、出力がX電極の偶数行に接続される以外は、X1駆動回路とほぼ同じ構成で、パルス印加タイミングを除けば基本動作は同じである。
【0121】
なお、Vo2<Voの関係にある理由は、実施形態3のようにVo2≒Voであれば、プライミング粒子による放電開始タイミングが高速になりすぎて、オフセット電圧パルスのスピードが如何なる回路構成をもってしても追いつかなくなる場合があり、これを避ける目的がある。すなわち、放電開始タイミングの高速化を図っても、あまり速すぎると問題を引き起こすため、回路構成とパネル構成に対して最適値を持つということである。本実施例ではVo2<Voの関係にあるが、ここに示した事例を回避するためには、Vo2>Voの関係にしてもよい。
【0122】
また、Vo2≒(Vo+VLo−VHi)の関係にある理由は、回路構成を実施形態3で示したものよりも簡略化するためである。
【0123】
Y側駆動回路の詳細構成は、実施形態3と同じである。維持期間における動作は、基本的にX側駆動回路と同じ動きをするため、説明を省略する。
アドレス側駆動回路は実施形態1と同じである。また、タイムチャートも実施形態1と同じである。
【0124】
各表示電極の1つのサブフィールドにおける駆動電圧波形は、Vop2の電圧設定以外は、実施形態3と同じであるため、説明を省略する。印加される電圧の例としては、例えば、Vw=400(V)、Vx=80(V)、Vy=−120(V)、Vsc=−60(V)、Vadd=60(V)、VHi=80(V)、VLo=−80(V)、Vop1=120(V)が挙げられる。
【0125】
【発明の効果】
本発明によれば、走査に用いない表示電極群と走査に用いる表示電極群との間で維持放電が発生される際には、電圧パルスの位相がシフトされて印加されるので、オフセット放電を行っても、電圧ドロップが発生せず、オフセット放電による発光効率向上効果が電圧ドロップによってキャンセルされることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の駆動方法を適用するPDPの構成を示す部分分解斜視図である。
【図2】本発明の駆動方法を適用するPDPを平面的に見た状態を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の駆動方法の原理を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の駆動方法の原理を示す説明図である。
【図5】実施形態1の駆動装置のブロック図である。
【図6】実施形態1の奇数行用のX1駆動回路を示す説明図である。
【図7】実施形態1の偶数行用のX2駆動回路を示す説明図である。
【図8】実施形態1の奇数行用のY1駆動回路を示す説明図である。
【図9】実施形態1の偶数行用のY2駆動回路を示す説明図である。
【図10】実施形態1のアドレス側駆動回路を示す説明図である。
【図11】実施形態1におけるタイムチャートである。
【図12】実施形態1の回路の各トランジスタのスイッチ・タイミングを示す説明図である。
【図13】実施形態1の各表示電極の駆動電圧波形を示した図である。
【図14】実施形態2の奇数行用のX1駆動回路を示す説明図である。
【図15】実施形態2の偶数行用のX2駆動回路を示す説明図である。
【図16】実施形態2の奇数行用のY1駆動回路を示す説明図である。
【図17】実施形態2の偶数行用のY2駆動回路を示す説明図である。
【図18】実施形態2の回路の各トランジスタのスイッチ・タイミングを示す説明図である。
【図19】実施形態3の奇数行用のX1駆動回路を示す説明図である。
【図20】実施形態3の偶数行用のX2駆動回路を示す説明図である。
【図21】実施形態3の奇数行用のY1駆動回路を示す説明図である。
【図22】実施形態3の偶数行用のY2駆動回路を示す説明図である。
【図23】実施形態3の回路の各トランジスタのスイッチ・タイミングを示す説明図である。
【図24】実施形態3の各表示電極の駆動電圧波形を示した説明図である。
【図25】実施形態3の回路の各トランジスタのスイッチ・タイミングを示す説明図である。
【図26】従来の維持放電の際に印加する電圧波形を示す説明図である。
【図27】従来の放電時の電流低減、電磁波放射対策に印加する電圧波形を示す説明図である。
【図28】従来の維持放電の際に印加するオフセット波形を示す説明図である。
【図29】従来の表示率が大きい場合のオフセット波形を示す説明図である。
【図30】従来の表示の階調重みが大きい場合のオフセット波形を示す説明図である。
【符号の説明】
10 PDP
11 前面側の基板
12 透明電極
13 バス電極
17,24 誘電体層
18 保護膜
21 背面側の基板
28R,28G,28B 蛍光体層
29 隔壁
30 放電空間
31 X側駆動回路
311,411,511 X1駆動回路
312,412,512 X2駆動回路
32 Y側駆動回路
321,421,521 Y1駆動回路
322,422,522 Y2駆動回路
33 アドレス側駆動回路
L 表示ライン
S 信号電極
X,Y 表示電極
Claims (2)
- 一対の基板間に複数の表示電極を平行に設けるとともに、表示電極と交差する方向に複数の選択用電極を設け、表示電極間の表示ラインと選択用電極との交差部をセルとして発光させるよう構成したプラズマディスプレイパネルを用い、画面表示の際には、1フレームを複数のサブフィールドで構成するとともに、各サブフィールドを、発光させるべきセルを選択するアドレス期間と、選択したセルを発光させる維持期間とで構成し、アドレス期間には表示電極を一本おきに走査して発光させるべきセル内に壁電荷を蓄積し、維持期間には走査に用いない表示電極と走査に用いる表示電極との間で、ほぼ矩形波形の電圧パルスにオフセット電圧を重畳した維持電圧パルスを交互に印加してそれらの電極間で維持放電を発生させることで画面表示を行うプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、維持電圧パルスの印加に際し、表示電極を、連続する第1〜第4の4本を1組とする多数組の電極に区分し、第2の電極に電圧が印加されない状態で第1の電極の電圧パルスが立上るとともに第3の電極の電圧パルスが立下り、第3の電極に電圧が印加されない状態でかつ第1の電極の電圧印加中に第2の電極の電圧パルスが立上り、第2の電極の電圧印加中に第1の電極の電圧パルスが立下るとともに第3の電極の電圧パルスが立上り、第1の電極に電圧が印加されない状態でかつ第3の電極の電圧印加中に第2の電極の電圧パルスが立下り、第2〜4の電極についてもこれら第1〜第3の電極の関係と同じになるように、第1〜第4の電極に印加する電圧パルスの位相をシフトさせ、維持電圧パルスが、ほぼ矩形波形の電圧パルスに対して、パルス印加の立上り時点で第1のオフセット電圧パルスを重畳し、さらにパルス印加の中間時点で第2のオフセット電圧パルスを重畳した電圧パルスであることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
- 第2のオフセット電圧パルスの電圧レベルが、第1のオフセット電圧パルスの電圧レベルよりも低く、かつ矩形波形の電圧レベルよりも高いレベルである請求項1記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
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