JP4411859B2 - ポリエステル短繊維およびそれからなる中入れ綿、ポリエステル短繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来品に比べて太さ斑や断面異常、融着等の異常糸が極めて少ない高品位な短繊維及びそれからなる中入れ綿に関するものである。また、糸切れや濾圧上昇が抑制され、製糸性に優れたポリエステル短繊維の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル短繊維はその機能性の有用さから多目的に用いられており、例えば、衣料用、資材用、医療用に用いられている。その中でも、汎用性、実用性の点でポリエチレンテレフタレート短繊維が優れ、好適に使用されている。
【0003】
一般にポリエチレンテレフタレート短繊維を構成するポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールから製造されるが、高分子量のポリマーを製造する商業的なプロセスでは、重縮合触媒としてアンチモン化合物が広く用いられている。しかしながら、アンチモン化合物を含有するポリマーは以下に述べるような幾つかの好ましくない特性を有している。
【0004】
例えば、アンチモン触媒を使用して得られたポリマーを溶融紡糸して繊維化する際に、アンチモン触媒の残渣が口金孔周りに堆積することが知られている。この堆積によって、得られる繊維は、その太さ斑が増大したり、中空や異形断面糸において所望の断面形状とならない、即ち断面異常が発生する等、異常糸の発生を招く場合があった。また、この堆積が進行すると口金面での糸切れ発生の原因となり、このようにして糸切れした糸端では冷却前に紡糸応力が緩和されるために極端に大きく膨らむ等、太さ斑が著しく増大したり、冷却される前に他の糸と干渉し融着する等、異常糸が頻発するという問題が発生するため、品位の良い短繊維を安定生産するには口金修正によってこの堆積物を頻繁に除去する必要があった。特に、このようにして得られた短繊維は、必然的に上記のような太さ斑や断面異常、融着といった異常糸が含まれるため、風合いが硬化し、また、開繊性や滑り性が悪く、物性斑や染色斑を引き起こすこともあった。さらには、得られた短繊維を中入れ綿に使用した場合には、風合いの硬化や開繊不良に加えて、断面異常によって、所望の中空糸が得られず、保温性や軽量性が不足する等、高品位な繊維製品が得られないという問題もあった。
【0005】
また、ポリマー中のアンチモン触媒残渣は比較的大きな粒子状となりやすく、異物となって溶融紡糸時のフィルターの濾圧上昇を招くため、パックライフが短く、操業性を低下させる場合もあった。加えて、口金修正やパック交換の際には必然的に製品とならない繊維屑が発生するため、それらの作業頻度が高くなるに伴って繊維屑が増大し、生産性が大きく低下する等の問題を引き起こしていた。
【0006】
アンチモン触媒残渣の堆積が生じるのは、ポリマー中のアンチモン化合物が口金近傍で変成し、一部が気化、散逸した後、アンチモンを主体とする成分が口金に残るためであると考えられている。そこで、上記のような問題を解決するために、アンチモン化合物を重合触媒としてポリエチレンテレフタレートを製造する際に、スルホン酸ホスホニウム塩を少量添加することが提案されている(特許文献1,2参照)。しかしながら、この方法によっても、紡糸時におけるアンチモン化合物の気化をある程度抑制できるものの、その効果は十分ではなく、得られる短繊維には、依然として、太さ斑や断面異常、融着といった異常糸が相当量含まれるものであった。また、この方法によっては、パック内での異物の発生を抑制する効果は少ないため、根本的にフィルターの濾圧上昇を防ぐことはできなかった。
【0007】
以上のことから、アンチモン含有量が少ないか、あるいは含有しないポリエステルが求められている。そこで、重縮合触媒の役割をアンチモン系化合物以外の化合物に求める場合ゲルマニウム化合物が知られているが、ゲルマニウム化合物は非常に高価であり汎用的に用いることは困難であった。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−51439号公報(第1〜3頁)
【0009】
【特許文献2】
特開平6−9767号公報(第1〜3頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記従来の問題を解消し、従来品に比べて太さ斑や断面異常、融着等の異常糸が極めて少ない高品位な短繊維及びそれからなる中入れ綿を提供することにある。また、糸切れや濾圧上昇が抑制され、製糸性に優れたポリエステル短繊維の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような構成を有する。
【0012】
即ち、ポリエステル短繊維であって、短繊維を構成するポリエステルが、クエン酸キレートチタン化合物、乳酸キレートチタン化合物より選ばれるチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであって、かつゲルマニウム化合物およびアンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するゲルマニウム原子およびアンチモン原子の総含有率が30ppm以下であるポリエステルであることを特徴とするポリエステル短繊維である。
【0013】
また、チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであって、かつゲルマニウム化合物およびアンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するゲルマニウム原子およびアンチモン原子の総含有率が30ppm以下であるポリエステルを用いることを特徴とするポリエステル短繊維の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステル短繊維を構成するポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーである。
【0015】
このようなポリエステルとして具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。中でもPETまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体において好適である。
【0016】
また、これらのポリエステルには、ジエチレングリコール以外に共重合成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸等のオキシカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体等が共重合されていてもよい。
【0017】
本発明のポリエステル短繊維において、ポリエステルの触媒として用いることができるチタン化合物は、チタン化合物の置換基が下記一般式1で表される官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種であるチタン化合物、チタン酸化物等が挙げられる。
【0018】
【化2】
【0019】
(式1中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基または水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基またはアミノ基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
本発明の式1としては、乳酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系化合物からなる官能基が挙げられる。
【0024】
式1が含まれていることがポリマーの熱安定性及び色調の観点から好ましい。
【0026】
また、本発明ではチタン化合物がチタン酸化物であっても良く、チタン酸化物としては、主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物等が挙げられる。
【0027】
なお、本発明の触媒とは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーにおいて、以下の(1)〜(3)の反応全てまたは一部の素反応の反応促進に実質的に寄与する化合物を指す。
(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応
(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応
(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られたPET低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応
従って、短繊維の艶消し剤等に無機粒子として一般的に用いられている二酸化チタン粒子は上記の反応に対して実質的に触媒作用を有しておらず、本発明の触媒として用いることができるチタン化合物とは異なる。
【0028】
主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、チタンのアルコキシド化合物を原料として、加水分解反応により製造する方法において、この加水分解の速度を制御することによって得られる。具体的には、例えば主原料であるチタンアルコキシド化合物に対して、ケイ素アルコキシド化合物や多価アルコール化合物を共存させ、両者の共沈法、部分加水分解法、配位化学ゾル・ゲル法等によって合成することができる。また、ジルコニウム等の少量の他の金属を併用することができる。ここで共沈法とは2種あるいはそれ以上の成分を含有する所定の組成の溶液を調製し、その組成のまま加水分解反応を進行させる方法である。また、部分加水分解法とは、一方の成分をあらかじめ加水分解した状態としておき、そこへもう一方の成分を加えさらに加水分解を進行させる方法である。また、配位化学ゾル・ゲル法とは、チタンアルコキシド原料とともに分子内に官能基を複数持つ多価アルコール化合物等を共存させ、両者の間であらかじめ反応物を形成させることによって、その後の加水分解反応の速度を制御しようとするものである。以上のような化合物の合成方法は、例えば、上野ら、「金属アルコキシドを用いる触媒調製」、第321頁第1行〜第353頁第16行、(アイピーシー、1993年8月10日発行)等に記載されている。
【0029】
本発明におけるチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)は得られるポリマーに対してチタン原子換算で0.5〜150ppm含有されていることが好ましい。1〜100ppmであるとポリマーの熱安定性や色調がより良好となり好ましく、更に好ましくは3〜50ppmである。
【0030】
本発明のポリエステル短繊維を構成するポリエステルは、チタン化合物と共にリンがポリエステルに対してリン原子換算で0.1〜400ppm含有されていることが好ましい。なお、製糸時におけるポリエステルの熱安定性や色調の観点からリン含有量は、1〜200ppmが好ましく、さらに好ましくは3〜100ppmである。
【0031】
なお、本発明のポリエステル短繊維を構成するポリエステルに含有されるリンは、ポリエステルの製造過程でリン化合物として添加される。このようなリン化合物としてはリン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系のいずれか1種または2種であることが好ましい。具体的には、例えば、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等のリン酸系、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸系、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジエチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジフェニルエステル、ベンジルホスホン酸ジメチルエステル、ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、ベンジルホスホン酸ジフェニルエステル、リチウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ナトリウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、マグネシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、カルシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル等のホスホン酸系化合物、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、イソプロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、トリルホスフィン酸、キシリルホスフィン酸、ビフェニリルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジトリルホスフィン酸、ジキシリルホスフィン酸、ジビフェニリルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アントリルホスフィン酸、2−カルボキシフェニルホスフィン酸、3−カルボキシフェニルホスフィン酸、4−カルボキシフェニルホスフィン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,6−トリカルボキフェニルホスフィン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、ビス(2−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3−ジカルボキルシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,6−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,4−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、及びビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、メチルホスフィン酸メチルエステル、ジメチルホスフィン酸メチルエステル、メチルホスフィン酸エチルエステル、ジメチルホスフィン酸エチルエステル、エチルホスフィン酸メチルエステル、ジエチルホスフィン酸メチルエステル、エチルホスフィン酸エチルエステル、ジエチルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸メチルエステル、フェニルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸フェニルエステル、ジフェニルホスフィン酸メチルエステル、ジフェニルホスフィン酸エチルエステル、ジフェニルホスフィン酸フェニルエステル、ベンジルホスフィン酸メチルエステル、ベンジルホスフィン酸エチルエステル、ベンジルホスフィン酸フェニルエステル、ビスベンジルホスフィン酸メチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸エチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸フェニルエステル等のホスフィン酸系、トリメチルホスフィンオキサイド、トリエチルホスフィンオキサイド、トリプロピルホスフィンオキサイド、トリイソプロピルホスフィンオキサイド、トリブチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、プロピル亜ホスホン酸、イソプロピル亜ホスホン酸、ブチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等の亜ホスホン酸系、メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、プロピル亜ホスフィン酸、イソプロピル亜ホスフィン酸、ブチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸、ジメチル亜ホスフィン酸、ジエチル亜ホスフィン酸、ジプロピル亜ホスフィン酸、ジイソプロピル亜ホスフィン酸、ジブチル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸等の亜ホスフィン酸系、メチルホスフィン、ジメチルホスフィン、トリメチルホスフィン、メエルホスフィン、ジエチルホスフィン、トリエチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系が挙げられ、これらのいずれか1種または2種であることが好ましい。特に熱安定性及び色調改善の観点から、リン酸系及び/またはホスホン酸系であることが好ましい。
【0032】
本発明のポリエステル短繊維を構成するポリエステルは、ゲルマニウム化合物およびアンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するゲルマニウムおよび/またはアンチモン原子として30ppm以下含有することが必要である。この範囲とすることで、成形加工時の口金汚れの発生等が少なく、かつ比較的安価なポリマーを得ることができる。より好ましくは、10ppm以下、特には実質的に含有しないことが好ましい。
【0033】
また、チタン化合物のチタン原子に対してリン原子としてモル比率でTi/P=0.1〜20であるとポリエステルの熱安定性や色調が良好となり好ましい。より好ましくはTi/P=0.2〜10であり、さらに好ましくはTi/P=0.3〜5である。
【0034】
本発明で用いるチタン化合物及びリン化合物は、ポリエステルの反応系にそのまま添加してもよいが、予めエチレングリコールやプロピレングリコール等のポリエステルを形成するジオール成分を含む溶媒と混合し、溶液またはスラリーとし、必要に応じてチタン化合物またはリン化合物合成時に用いたアルコール等の低沸点成分を除去した後、反応系に添加すると、ポリマー中での異物生成がより抑制されるため好ましい。添加時期はエステル化反応触媒やエステル交換反応触媒として、原料添加直後に触媒を添加する方法や、原料と同伴させて添加する方法がある。また、重縮合反応触媒として添加する場合は、実質的に重縮合反応開始前であればよく、エステル化反応やエステル交換反応の前、あるいは反応終了後、重縮合反応触媒が開始される前に添加してもよい。この場合、チタン化合物とリン化合物が接触することによる触媒の失活を抑制するために、異なる反応槽に添加する方法や、同一の反応槽においてチタン化合物とリン化合物の添加間隔を1〜15分とする方法や添加位置を離す方法がある。
【0035】
また、本発明においてチタン化合物を予めリン化合物と反応させたものを触媒として用いることもできる。この場合には、(1)チタン化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液にリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。(2)ヒドロキシカルボン酸系化合物や多価カルボン酸系化合物等のチタン化合物の配位子を用いる場合は、チタン化合物または配位子化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液に配位子化合物またはチタン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。また、この混合溶液にさらにリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下すると、熱安定性及び色調改善の観点から好ましい。上記の反応条件は0〜200℃の温度で1分以上、好ましくは20〜100℃の温度で2〜100分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧でも良い。また、ここで用いる溶媒としては、チタン化合物、リン化合物及びカルボニル基含有化合物の一部または全部を溶解し得るものから選択することができるが、好ましくは、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ベンゼン、キシレンから選ばれる。
【0036】
本発明のポリエステル短繊維を構成するポリエステルは、その製造方法において任意の時点でマンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子換算で1〜400ppm含有し、マンガン化合物とリン化合物の比率がマンガン原子とリン原子のモル比率としてMn/P=0.1〜200となるように添加すると重合活性の低下を抑制することができ、それにより得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。この場合に用いるマンガン化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸マンガン四水塩、酢酸マンガン二水塩等が挙げられる。
【0037】
また、本発明のポリエステル短繊維を構成するポリエステルは、その製造方法において任意の時点でさらにコバルト化合物を添加すると得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。この場合に用いるコバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト四水塩等が挙げられる。
【0038】
また、得られるポリマーの色調やポリマーの耐熱性を向上させる目的で、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等を添加してもよい。
【0039】
さらに、二酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、カーボンブラック等の粒子のほか、着色防止剤、安定剤、抗酸化剤、末端封鎖剤等の添加剤を含有しても差支えない。
【0040】
本発明のポリエステル短繊維は、チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであって、かつゲルマニウム化合物およびアンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するゲルマニウム原子およびアンチモン原子の総含有率が30ppm以下であるポリエステルを溶融紡糸延伸、捲縮付与の後、カットすることを特徴とするポリエステル短繊維の製造方法で製造できる。具体例としてPETの例を記載するがこれに限定されるものではない。
【0041】
PETは通常、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスである。ここでエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、前述のチタン化合物を触媒として添加してもよい。また、エステル交換反応においては、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム等の化合物や前述のチタン化合物を触媒として用いて反応を進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加することが行われる。
【0042】
本発明のポリエステル短繊維を構成するポリエステルの製造方法は、(1)または(2)の一連の反応の任意の段階、好ましくは(1)または(2)の一連の反応の前半で得られた低重合体に、艶消し剤として二酸化チタン粒子や、コバルト化合物等の添加物を添加した後、重縮合触媒として前述のチタン化合物を添加し重縮合反応を行い、高分子量のPETを得るというものである。
【0043】
また、上記の反応は回分式、半回分式あるいは連続式等の形式に適応し得る。
【0044】
本発明のポリエステル短繊維を構成するポリエステルは、溶融重縮合に引き続いて固相重縮合を行って高分子量のポリエステルを製造する方法も好ましく採用できる。固相重合を行うことは、ポリエステルの高分子量化と共にCOOH末端基濃度を低減できるため好適である。
【0045】
本発明のポリエステル短繊維は、脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、エーテルエステル、ポリエーテル、シリコーン、鉱物油から選ばれる平滑剤を少なくとも1種類含有する油剤が付与されていることが好ましい。また、上記のような油剤は、紡出後に付与されても良いし、紡糸・延伸工程後に仕上げ剤として付与されても良い。ポリエステル短繊維に上記のような平滑剤を含有した油剤を付与することによって、ポリエステル短繊維の滑り性が向上し、紡糸、延伸での工程通過性、および得られる短繊維の捲縮斑や毛羽等を抑制できる。さらには、短繊維の開繊性が良くなるため、例えば、中入れ綿として用いた場合には、短繊維の分散性が向上することによって、側地(布団カバー、枕カバー、クッションカバー等)内での短繊維の偏りが極めて少ない、高品位な繊維製品を得ることが可能となる。また、上記のような繊維間での滑り性を向上させる観点から、油剤としては、脂肪酸エステルまたはシリコーン系の平滑剤を主成分とすることが好ましい。
【0046】
本発明では、油剤を構成する成分は平滑剤に加えて、油剤を水に乳化させ、低粘度化して糸条への付着、浸透性を向上させる乳化剤、また必要に応じて帯電防止剤、イオン性界面活性剤、集束剤、防錆剤、防腐剤、酸化防止剤を適宜配合したものを使用することができる。
【0047】
本発明のポリエステル短繊維は、染色が前提となるような衣料用途等の色調が重要視される用途でも幅広く使用するために、黄味の色調の指標であるb*値が−1〜5であることが好ましく、−1〜3であることがより好ましい。
【0048】
本発明のポリエステル短繊維は、捲縮数が6山/25mm以上であり、そして捲縮率が10%以上であると、嵩高で軽量感のある良好な風合いを達成することができる。また、捲縮数が多すぎたり、捲縮率が大きすぎると、嵩高性が逆に低下してしまうことがあるため、捲縮数、捲縮率はそれぞれ20山/25mm以下、50%以下であることが好ましい。捲縮数は8〜15山/25mmがより好ましく、捲縮率は15〜30%がより好ましい。
【0049】
また、本発明のポリエステル短繊維では、工程通過性や製品の力学的強度を十分高く保つためには、強度は2.0cN/dtex以上であることが好ましい。また、本発明のポリエステル短繊維の伸度は10〜80%であると、繊維製品にする際の工程通過性が向上する。さらに本発明のポリエステル短繊維では、沸収が0〜30%であれば繊維および繊維製品の寸法安定性が良好である。
【0050】
本発明でいうポリエステル短繊維とは、ポリエステルからなる繊維であって、その繊維長が2〜150mmの繊維を意味する。本発明のポリエステル短繊維の繊維長は、好ましくは3〜100mmの範囲であり、用途に応じて適宜選択される。また、本発明のポリエステル短繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.1〜100dtexであり、より好ましくは0.3〜50dtexである。
【0051】
また、本発明のポリエステル短繊維の断面形状は、丸断面、中空断面または三葉断面等の多葉断面、およびその他の異形断面についても自由に選択することが可能である。特に、中入れ綿等の軽量性やソフト性、保温性が重要視されるような用途では、中空断面形状のポリエステル短繊維が好ましい。この場合の中空率は、15〜45%であることが好ましい。中空率を15%以上とすることで軽量性、ソフト性および保温性が達成され、また、中空率を45%以下とすることで捲縮加工時に中空が潰れたり、繊維にクラックが入ることが抑制され、繊維の物性や品位を保つことができる。ここで言う中空率とは、繊維断面の外形から求めた面積に対する中空部分の面積比を百分率で表したものである。
【0052】
また、本発明のポリエステル短繊維は、少なくともポリエステルを成分に含んだ芯鞘型、偏心芯鞘型、サイドバイサイド型または割繊維分割型など、あるいは海島型などの1成分を溶出するタイプの複合繊維であっても良い。
【0053】
本発明のポリエステル短繊維の製造方法は、チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであって、かつゲルマニウム化合物およびアンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するゲルマニウム原子およびアンチモン原子の総含有率が30ppm以下であるポリエステルを用いることを特徴とする。
【0054】
上記のようなポリエステルを用いて、ポリエステル短繊維を製造した場合には、溶融紡糸時において、触媒の残渣が口金孔周りに堆積することが殆どないため、口金修正の頻度を少なくしても、糸切れや吐出曲がりが発生せず、安定的に高品位なポリエステル短繊維の生産が可能となる。さらには、パック内で触媒残渣が凝集することがないため、フィルターの濾圧上昇が少なく、パックライフを長くできることによって、優れた操業性が可能となる。
【0055】
本発明のポリエステル短繊維は、上記のようなポリエステルを用いていれば良く、その繊維化については、溶融紡糸、延伸、捲縮付与およびカットの各工程からなる従来公知の溶融紡糸法を採用することができる。
【0056】
溶融紡糸はプレッシャーメルター型やエクストルーダー型等の従来公知の紡糸機を用いることができる。溶融紡糸された糸条には、冷却、油剤付与、引き取りの後、引き揃え、延伸、熱固定が施される。引き揃えは、巻き取った糸を複数本合糸することによって行い、得られたトウは液浴にて延伸を行うことができる。
【0057】
次いで、延伸糸に捲縮を付与し、所望の繊維長にカットする。捲縮付与方法は、特に限定されないが、例えばスタッフィングボックス法、押し込み加熱ギア法、高速エアー噴射押し込み法等が挙げられる。また、必要に応じて、油剤を仕上げ剤として延伸後や捲縮付与後に付与することもできる。
【0058】
本発明のポリエステル短繊維の好ましい製造方法を以下に例示する。まず、溶融紡糸における紡糸温度は、用いるポリエステルの共重合比率や分子量によって異なるが、220〜330℃とすることが望ましい。紡糸温度が220℃未満では溶融押し出しが困難であり、330℃を超えるとポリエステルの分解が顕著となり、捲縮特性に優れた高強度のポリエステル短繊維を得ることが困難となる。
【0059】
溶融紡糸された糸条は、引き取り速度を400〜2,000m/分、延伸倍率を1.5〜6倍とすると、ポリエステル短繊維を繊維構造体として用いた場合に適切な強度を備えたポリエステル短繊維が得られる。引き揃えは、最終的に総繊度が5〜100万dtexのトウとなるように行えば良い。また、トウを均一に延伸するためには、60〜100℃の温水を用いた液浴延伸を行うことが好ましい。次いで、延伸糸にスタッフィングボックス法等によって、捲縮数6山/25mm以上、捲縮度10%以上となるように捲縮を付与し、3〜100mmの繊維長にカットする。
【0060】
また、溶融紡糸後の繊維糸条には、脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、エーテルエステル、ポリエーテル、シリコーン、鉱物油から選ばれる平滑剤を少なくとも1種類含有する油剤を付与することが好ましい。上記のような油剤は、紡出後に付与されても良いし、紡糸・延伸工程後に仕上げ剤として付与されても良い。ポリエステル短繊維に上記のような平滑剤を含有した油剤を付与することによって、ポリエステル短繊維の滑り性が向上し、紡糸、延伸での工程通過性が良くなり、さらには、短繊維の開繊性が良くなるため、この短繊維を紡績糸、不織布、中入れ綿、バインダー繊維といった繊維構造体に加工する際の工程通過性も良好となる。
【0061】
本発明のポリエステル短繊維は、太さ斑や断面異常、融着等の異常糸が極めて少なく、従来品に比べて高品位であることが特徴である。本発明のポリエステル短繊維は、風合いや開繊性、滑り性、均一染色性といった諸特性において優れた特性を有するものである。つまり、従来のポリエステル短繊維では、上記のような異常糸が多いために、風合いが硬化し、また開繊性や滑り性が悪いことによって、得られる繊維に物性斑や染色斑が生じる等の問題が頻発していたが、本発明のポリエステル短繊維では、異常糸が極めて少ないため、これらの問題を全て解消することができるのである。また、本発明のポリエステル短繊維は、その優れた特性によって、紡績糸、不織布、中入れ綿、バインダー繊維等の種々の繊維構造体に好適に用いることができる。これらの繊維構造体は、ポリエステル短繊維を少なくともその一部に用いていれば特に限定されず、ポリエステル以外の繊維、例えば、ポリ乳酸やポリグリコール酸やポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等の生分解性繊維や、綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維、レーヨンやアセテート等の再生繊維、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン、ポリウレタン等の合成繊維との混用品等でも良い。
【0062】
特に、本発明のポリエステル短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、短繊維に太さ斑や繊維間での融着、中空断面異常が極めて少ないために、風合いや保温性に優れた高品位な繊維製品となるため、より好ましい形態である。
【0063】
本発明のポリエステル短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、嵩高性が50cm3/g以上であることが好ましい。嵩高性が50cm3/g未満の場合は、例えば、布団に用いた場合には空隙率が低く、布団としての保温性が低くなり布団として満足できるものとはならない。布団としての保温性の面から嵩高性は好ましくは60cm3/g以上、特に好ましくは100cm3/g以上である。嵩高性は高ければ高い程、軽量性と保温性が優れたものとなる。
【0064】
繊維の捲縮形態については機械捲縮でもスパイラル捲縮でも良いが、嵩高性をより高めるためにはスパイラル捲縮の方が好ましい。スパイラル捲縮を付与する手段は多くあるが、例えば、繊維を断面方向に非対称性を持たせ、延伸時の配向差によるスパイラル捲縮を発現させる方法、および延伸後のリラックス熱処理時に生じる収縮率差によってスパイラル捲縮を発現させる方法等がある。
【0065】
また、本発明のポリエステル短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、その圧縮率が45%以上であることが好ましい。ここで圧縮率とは、中入れ綿の圧縮時の嵩高性を表す指標である。圧縮率が低い場合には、小さな圧縮荷重でも嵩高特性が低下し、前述した保温性が低下してしまうことがある。この観点からより好ましい圧縮率は50%以上、特に好ましい圧縮率は60%以上である。また、逆に、圧縮率が高すぎると、中入れ綿の弾力が不足し、硬い触感になる場合があるため、圧縮率は90%以下が好ましい。
【0066】
中入れ綿が圧縮に耐えるため、単繊維繊度について好ましい範囲が存在する。圧縮特性を向上させる目的から好ましい単繊維繊度は3dtex以上、特に好ましくは5dtex以上である。但し、繊度が大きすぎると粗硬感が強くなり好ましくない。本発明のポリエステル短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿において、好ましい単繊維繊度は50dtex以下、特に好ましくは20dtex以下である。
【0067】
また、本発明のポリエステル短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、その回復率が70%以上であると、弾力のある触感が得られるため好ましい。回復率は好ましくは85%以上であり、大きいほど好ましい。回復率とは、中入れ綿に荷重を乗せて圧縮した後、その荷重を取り除いたときの嵩高の回復度合いを表す指標である。本発明のポリエステル短繊維は、平滑剤を少なくとも1種類含有する油剤が付与されることによって、滑り性が大幅に向上し、圧縮時に短繊維間でのからまりやひっかかりが少なくなるため、回復率が高い値となる。これによって、弾力のある中入れ綿が可能となるため、より好ましい形態である。
【0068】
本発明のポリエステル短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、布団、枕等の寝装用途をはじめとして、クッション材やぬいぐるみ等の中入れ綿としても好適に用いられる。
【0069】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の特性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)PET中のチタン元素、リン元素、アンチモン元素等の含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)により求めた。なお、ポリエステルに二酸化チタン粒子が含有されている際には、次の前処理をした上で蛍光X線分析を行った。すなわち、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対してポリマー5g)し、このポリマー溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調製した後、遠心分離器(回転数18000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することによりポリマーを再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI社製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間真空乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を施して得られたポリマーについてチタン元素、リン元素、アンチモン元素等の分析を行った。
【0070】
一方、二酸化チタン粒子が含有されていない場合は、前処理を行う必要がないので、ポリマーをそのまま分析すればよい。
(2)ポリマーの色調
色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM−3)を用いて、ハンター値(L、a、b値)として測定した。
(3)短繊維の色調(b*値)
カットする前の繊維サンプルを透明プレートに、下地の色がほぼ無視できる程度まで密に積層して巻き付け、ミノルタ社製「スペクトロフォトメーターCM−3700d」を用いて測定した。このとき、光源としてはD65(色温度6504K)を用い、10°視野で測定を行った。
(4)短繊維の強度、伸度、沸収、捲縮数および捲縮率
JIS L 1015に準拠した。
(5)短繊維の品位
短繊維100万本に相当する重量の原綿を、0.02wt%染料(Diaselliton Fast Rubine-3B)水溶液を使用し、98℃15分の条件で染色し、水洗、乾燥した。この原綿をハンドカードでよく開繊した後、ルーペで検鏡し、濃染糸(濃く染まっている糸で濃染部が10mm以上の糸)および融着糸の数から次の指標で評価した。
○:濃染糸と融着糸の総数が10本未満
△:濃染糸と融着糸の総数が10本以上20本未満
×:濃染糸と融着糸の総数が20本以上
(6)製糸性
紡糸を行う紡糸錘の内任意に5錘を選び、各錘における短繊維の製造開始から最初に糸切れが発生するまでの時間の平均値から次の指標で評価した。
○:40時間以上
△:25時間以上40時間未満
×:25時間未満
(7)中入れ綿の嵩高性、圧縮率および回復率
JIS L 1097に準拠した。
(8)中入れ綿の風合い
10人の試験者によって次の指標で官能評価を行った。
○:ソフト感、軽量感が極めて優れている。
△:ソフト感、軽量感が優れている。
×:ソフト感、軽量感がもの足りない。
(9)中入れ綿の滑り性
原綿を手で解した時の解れ易さを次の指標で評価した。
○:極めて容易に解れる。
△:容易に解れる。
×:解れにくい。
【0071】
なお、以下に実施例で使用した触媒A〜Iの合成方法を記す。
<触媒A.クエン酸キレートチタン化合物(リン酸混合)の合成方法>
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、リン酸の85重量/重量%水溶液(114g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.49重量%、pH=5.0)。
<触媒B.クエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)の合成方法>
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.49重量%、pH=5.5)。
<触媒C.クエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法>
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)及びリン酸の85重量/重量%水溶液(39.9g、0.35モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量3.36重量%、pH=4.6)。
<触媒D.乳酸キレートチタン化合物(リン酸混合)の合成方法>
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、リン酸の85重量/重量%水溶液(114g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量4.23重量%、pH=5.0)。
<触媒E.乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)の合成方法>
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量4.23重量%、pH=5.4)。
<触媒F.乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法>
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)及びリン酸の85重量/重量%水溶液(39.9g、0.35モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量5.71重量%、pH=4.0)。
【0072】
[製造例1]
高純度テレフタル酸(三井化学社製)100kgとエチレングリコール(日本触媒社製)45kgのスラリーを予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート(以下、BHTと略称する)約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、このエステル化反応生成物の123kgを重縮合槽に移送した。
【0073】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された前記重縮合反応槽に、酸化チタン粒子のエチレングリコールスラリーを得られるポリマーに対して0.3重量%添加した。クエン酸キレートチタン化合物及びリン酸からなるpH=5.0のエチレングリコール溶液(触媒A)を得られるポリマーに対してチタン原子換算で12ppm、リン原子換算で7.2ppmとなるように添加し、その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から280℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてPETのペレットを得た。得られたPETの〔η〕は0.660であった。色調はL=77、a=−1.0、b=2.5であり良好なものであった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は12ppm、リン原子の含有量は7.2ppmであり、Ti/P=1であることを確認した。
【0074】
該PETペレットを、ロータリー式の固相重合装置に仕込み、温度220℃、圧力1torrにて38時間減圧固相縮合を行い固相重合PET(P1)を得た、該固相重合PETは、〔η〕が0.938であった。
【0075】
[製造例2]
触媒にクエン酸キレートチタン化合物とフェニルホスホン酸からなる触媒B(pH=5.5)を用いる以外は製造例1と同様に溶融重合と固相重合を行い、〔η〕が0.930の固相重合PET(P2)を得た。
【0076】
[製造例3]
触媒にクエン酸キレートチタン化合物とフェニルホスホン酸及びリン酸からなる触媒C(pH=4.6)を用いる以外は製造例1と同様に溶融重合と固相重合を行い、〔η〕が0.935の固相重合PET(P3)を得た。
【0077】
[製造例4]
触媒に乳酸キレートチタン化合物とリン酸からなる触媒D(pH=5.0)を用いる以外は製造例1と同様に溶融重合と固相重合を行い、〔η〕が0.940の固相重合PET(P4)を得た。
【0078】
[製造例5]
触媒に乳酸キレートチタン化合物とフェニルホスホン酸からなる触媒E(pH=5.4)を用いる以外は製造例1と同様に溶融重合と固相重合を行い、〔η〕が0.940の固相重合PET(P5)を得た。
【0079】
[製造例6]
触媒に乳酸キレートチタン化合物とフェニルホスホン酸及びリン酸からなる触媒F(pH=4.0)を用いる以外は製造例1と同様に溶融重合と固相重合を行い、〔η〕が0.940の固相重合PET(P6)を得た。
【0083】
[製造例10]
製造例1におけクエン酸キレートチタン化合物及びリン酸からなるる触媒加えて三酸化アンチモン(以下、Sb2O3と略称する)(住友金属鉱山社製)をアンチモン元素として15ppm併用した以外は製造例1と同様に溶融重合と固相重合を行い、〔η〕が0.960の固相重合PET(P10)を得た。
【0084】
[製造例11]
製造例10においてクエン酸キレートチタン化合物及びリン酸からなるる触媒と併用したSb2O3をGeO2に変更した以外は製造例10と同様に溶融重合と固相重合を行い、〔η〕が0.962の固相重合PET(P11)を得た。
【0085】
[製造例12]
触媒にSb2O3(住友金属鉱山社製)を、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で400ppm、リン酸を得られるポリマーに対してリン原子換算で10ppm添加したこと以外は製造例1と同様にして溶融重合と固相重合を行い、〔η〕が0.940の固相重合PET(P12)を得た。
【0086】
[製造例13]
テレフタル酸ジメチル100kg、エチレングリコール60kg、酢酸マンガン4水塩0.03kg(テレフタル酸ジメチルに対して0.024モル%)、色剤として酢酸コバルト4水塩0.009kg(テレフタル酸ジメチルに対して0.007モル%)、及びジエチレングリコール0.15kgをエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下3時間かけて140℃から220℃まで昇温して生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応させた。続いて得られた生成物に3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラn−ブチルホスホニウム塩(テレフタル酸ジメチルに対して0.025モル%)を20%加熱エチレングリコール溶液の状態で添加した。
【0087】
その後220℃で20分間攪拌した後、安定剤として正リン酸の56%水溶液0.03部(テレフタル酸ジメチルに対して0.033モル%)を添加し、同時に過剰エチレングリコールの昇温追出しを開始した。10分後重縮合触媒として三酸化アンチモン0.04kg(テレフタル酸ジメチルに対して0.027モル%)を添加した。内温が240℃に到達した時点でエレチングリコールの追出しを終了し反応生成物を重合缶に移した。
【0088】
次いで昇温しながら常圧反応させた後、1時間かけて760mmHgから1mmHgまで減圧し、同時に1時間30分かけて内温を280℃まで昇温した。1mmHg以下の減圧下、重合温度280℃で更に2時間重合した時点で窒素ガスで真空を破って重合反応を終了し、窒素ガス加圧下に280℃で冷水中にポリマーの吐出を行ない、カッティングしてPETのペレットを得た。得られたPET(P13)の〔η〕は、0.620であった。
【0089】
実施例1
P1を乾燥後、エクストルーダー型紡糸機に供して、約290℃で3分間混練した溶融ポリマを紡糸パック内の絶対濾過精度10μmの金属不織布を使用した濾過層を通して、185ホールを有する中空断面糸用口金から吐出量355g/分で紡出し、紡糸速度1000m/分で引き取った。同様に紡糸した複数の糸条を合糸し、キャンに受けた。そして、この未延伸糸をさらに合糸して70万dtexのトウとし、90℃の水槽中で3.2倍に延伸した後、スタッファーボックスで機械捲縮(ニップ圧2kg/cm2、押し込み圧1kg/cm2)を付与した。次いで、130℃でリラックス熱処理を行い、脂肪酸エステルを主成分(65重量%)とする油剤を付与した後カットし、単繊維繊度6dtex、繊維長64mm、中空断面(中空率34%)のPET短繊維(SF1)を得た。このPET短繊維の特性は表1に示す通り、強度5.0cN/dtex、伸度38%、沸収8%、b*値2.6と良好な糸物性を示し、また、捲縮数10山/25mm、捲縮率26%と良好な捲縮特性を示した。この短繊維には、異常糸が極めて少なく、良好な品位を示すものであった。加えて、製造時の糸切れ回数は極めて少なく、製糸性は良好であり、短繊維100kg製造後の口金吐出孔周辺の付着堆積物は極微少であった。また、パック内の濾圧は終始安定しており、紡糸開始から30時間後もパック交換する必要がなかった。
【0090】
実施例2〜6、10〜11
P1の代わりにP2〜6、P10〜11を用いたこと以外は実施例1と同様にして、PET短繊維(SF2〜6、SF10〜11)を得た。これらPET短繊維の特性は表1に示す通りであり、良好な糸物性と捲縮特性を示した。加えて、品位や製糸性は良好であり、短繊維100kg製造後の口金吐出孔周辺の付着堆積物は極微少であった。また、パック内の濾圧は終始安定しており、紡糸開始から30時間後もパック交換する必要がなかった。
【0091】
比較例1
P1の代わりにP12を用いたこと以外は実施例1と同様にして、PET短繊維(SF12)を得た。このPET短繊維の特性は表1に示す通りであり、糸物性と捲縮特性については良好であったが、異常糸がやや多いために品位が不十分であり、また、製造時の糸切れ回数がやや多く、製糸性についても満足いくものではなかった。加えて、短繊維100kg製造後の口金吐出孔周辺には、付着堆積物が目立ち、引き続き短繊維を安定製造するには口金修正が必要な状況であった。また、パック内の濾圧が経時的に増大し、30時間毎にパック交換する必要があった。
【0092】
比較例2
P1の代わりにP13を用いたこと以外は実施例1と同様にして、PET短繊維(SF13)を得た。このPET短繊維の特性は表1に示す通りであり、糸物性と捲縮特性については良好であったが、異常糸がやや多いために品位が不十分であり、また、製造時に糸切れ回数がやや多く、製糸性についても満足いくものではなかった。加えて、短繊維100kg製造後の口金吐出孔周辺には、付着堆積物が存在し、引き続き短繊維を安定製造するには口金修正が必要な状況であった。また、パック内の濾圧が経時的に増大し、30時間毎にパック交換する必要があった。
【0093】
【表1】
【0094】
実施例12
SF1を中入れ綿として布団を作製した。この中入れ綿の特性は表2に示す通りであり、嵩高性120cm3/g、圧縮率62%、回復率93%と非常に嵩高性に優れるものであり、これらの特性によって、ソフト感や軽量感が存在するとともに保温性にも優れたものであった。また、この中入れ綿は滑り性が良好であり、布団カバー内での短繊維の分散性が良いため、この中入れ綿によって、綿の粗密斑が極めて少ない高品位な布団製品を製造することが可能であった。
【0095】
実施例13,14
SF1の代わりにSF5又はSF10を用いたこと以外は実施例12と同様にして布団を作製した。これらの中入れ綿の特性は表2に示す通りであり、嵩高性に優れ、また、品位や滑り性も良好であり、高品位な布団製品を製造することが可能であった。
【0096】
実施例15
脂肪酸エステルを主成分とする油剤の代わりに、シリコーン系化合物を主成分(80重量%)とする油剤を使用したこと以外は実施例1と同様にしてPET短繊維(SF13)を得た。このSF13をSF1の代わりに用いたこと以外は実施例12と同様にして布団を作製した。これらの中入れ綿の特性は表2に示す通りであり、嵩高性に優れ、また、品位や滑り性も良好であり、高品位な布団製品を製造することが可能であった。
【0097】
実施例16
脂肪酸エステルを主成分とする油剤の代わりに、ポリエーテルを主成分(75重量%)とする油剤を使用したこと以外は実施例1と同様にしてPET短繊維(SF14)を得た。このSF14をSF1の代わりに用いたこと以外は実施例12と同様にして布団を作製した。これらの中入れ綿の特性は表2に示す通りであり、嵩高性に優れ、また、品位や滑り性も良好であり、高品位な布団製品を製造することが可能であった。
【0098】
【表2】
【0099】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエステル短繊維の製造時において、製糸性が良好であり、かつ従来品に比べて高品位な短繊維を提供することができる。さらに、本発明のポリエステル短繊維は、捲縮特性や品位、滑り性に優れるため、布団、枕等の寝装用途をはじめとして、クッション材やぬいぐるみ等の中入れ綿としても好適に用いられる。
Claims (8)
- ポリエステル短繊維であって、短繊維を構成するポリエステルが、クエン酸キレートチタン化合物、乳酸キレートチタン化合物より選ばれるチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであって、かつゲルマニウム化合物およびアンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するゲルマニウム原子およびアンチモン原子の総含有率が30ppm以下であるポリエステルであることを特徴とするポリエステル短繊維。
- ポリエステルが、クエン酸キレートチタン化合物、乳酸キレートチタン化合物より選ばれるチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)をポリエステルに対するチタン原子換算で0.5〜150ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.1〜400ppm含有するポリエステルであることを特徴とする請求項1記載のポリエステル短繊維。
- クエン酸キレートチタン化合物、乳酸キレートチタン化合物より選ばれるチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)とリン化合物の比率が、チタン原子とリン原子のモル比率としてTi/P=0.1〜20であることを特徴とする請求項2記載のポリエステル短繊維。
- 脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、エーテルエステル、ポリエーテル、シリコーン、鉱物油から選ばれる平滑剤を少なくとも1種類含有する油剤が付与されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステル短繊維。
- 捲縮数6山/25mm以上、捲縮度10%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル短繊維。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載のポリエステル短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿。
- 嵩高性50cm3/g以上、圧縮率45%以上、回復率70%以上であることを特徴とする請求項6記載の中入れ綿。
- クエン酸キレートチタン化合物、乳酸キレートチタン化合物より選ばれるチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであって、かつゲルマニウム化合物およびアンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するゲルマニウム原子およびアンチモン原子の総含有率が30ppm以下であるポリエステルを溶融紡糸、延伸、捲縮付与の後、カットすることを特徴とするポリエステル短繊維の製造方法。
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