JP4411669B2 - カチオン交換樹脂の再生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カチオン交換樹脂の再生方法、特に銀担持活性炭による処理水をイオン交換したカチオン交換樹脂の再生方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を用いる純水製造装置では、水道水、河川水、井戸水等の原水を、必要により凝集、沈殿、濾過等の前処理を行ったのち、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂層に通してカチオン交換およびアニオン交換を行って純水を製造している。このような方法において、原水として水道水のように遊離塩素を含む原水を用いると、樹脂が劣化するので、前処理として活性炭層に通水することにより遊離塩素を除去してからイオン交換を行うことが行われる。
【0003】
このように活性炭処理を行うと、遊離塩素が除去されるため、活性炭層に細菌が増殖し、処理水に有機物や細菌が漏出してイオン交換装置を汚染する。このためこれを防止するために、銀担持活性炭を用いて遊離塩素を除去することにより、銀の殺菌力により細菌の増殖を抑制することが行われる。
【0004】
ところがこのような銀担持活性炭で処理を行うと、活性炭より微量の銀が溶出し、これがカチオン交換樹脂に吸着される。通常カチオン交換樹脂は塩酸や硫酸により再生される。しかし、銀イオンを吸着したカチオン交換樹脂を通常の再生方法で再生すると、塩化銀や硫酸銀のような難溶性の銀化合物が残留するためと推測されるが、ナトリウムやカルシウムイオンは脱着されてイオン交換能が回復するが、再生は十分ではなく処理水の比抵抗の立ち上がりに長時間を要するという問題点がある。
【0005】
銀イオンを吸着したイミノジ酢酸型のカチオン交換樹脂の再生に際し、硫酸銅水溶液で処理したのち塩酸で処理する方法が提案されている(特開昭56−130236号)。しかしここで使用しているカチオン交換樹脂はキレート樹脂であるため、通常の純水製造に使用されるカチオン交換樹脂とはイオン交換機構が異なり、硫酸銅水溶液で通常のカチオン交換樹脂を処理したのち、塩酸で再生を行っても再生は十分になされない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、銀担持活性炭による処理水をイオン交換したカチオン交換樹脂を効率よく再生して銀を脱離させることができ、処理水の比抵抗の立ち上がりを速くすることが可能なカチオン交換樹脂の再生方法を提案することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は次のカチオン交換樹脂の再生方法である。
(1) 銀担持活性炭による処理水をイオン交換したカチオン交換樹脂を再生するに際し、硝酸による再生および水酸化ナトリウムによる再生後、塩酸により再生することを特徴とするカチオン交換樹脂の再生方法。
(2) カチオン交換樹脂が銀イオンを吸着した樹脂である上記(1)記載の方法。
(3) カチオン交換樹脂を塩酸または硫酸で再生するサイクルと、硝酸による再生および水酸化ナトリウムによる再生後、塩酸により再生するサイクルとを組み合わせて行う上記(1)または(2)記載の方法。
【0008】
本発明で用いるカチオン交換樹脂はナトリウムやカルシウムイオン等の通常のカチオンのほか銀を吸着するカチオン交換樹脂であり、一般的には強酸性カチオン交換樹脂が好ましいが、場合によっては弱酸性カチオン交換樹脂であってもよい。本発明で再生の対象とするのは、銀担持活性炭による処理水をイオン交換して銀イオンを吸着したカチオン交換樹脂である。
【0009】
銀担持活性炭は活性炭の表面に金属銀または銀化合物を担持させて殺菌性を付与したものであり、このような活性炭で処理することにより遊離塩素を除去すると同時に細菌の増殖を抑制する目的で使用されるが、他の目的で使用するものでもよい。このような活性炭による処理水はナトリウムやカルシウムイオン等の一般のカチオンのほか微量の銀がイオンとなって溶出している。
【0010】
本発明で再生の対象とするカチオン交換樹脂はこのような銀イオンを吸着した樹脂であり、純水製造装置に用いられるカチオン交換樹脂があげられるが、純水製造装置以外に用いられるカチオン交換樹脂であってもよい。純水製造装置としては強酸性カチオン交換樹脂層と強塩基性アニオン交換樹脂層の組み合わせが一般的であり、その前に弱酸性カチオン交換樹脂層または弱塩基性アニオン交換樹脂層を組み合わせるもの、あるいは後に強酸性カチオン交換樹脂層または混床式のポリッシャを組み合わせるものでもよい。
【0011】
銀担持活性炭の処理水をカチオン交換樹脂でイオン交換すると、銀イオンはカチオン交換樹脂に交換吸着される。銀イオンは一般に中性塩となっているので、弱酸性カチオン交換樹脂層を設ける場合でも、銀イオンは主として強酸性カチオン交換樹脂に吸着される。カチオン交換樹脂には銀以外にもナトリウム、カルシウム等の一般のカチオンが吸着され、量的には一般のカチオンの方が多く吸着される。
【0012】
通水により銀その他のカチオンが吸着されたカチオン交換樹脂は通常は塩酸、硫酸等により再生されるが、このような通常の再生を繰り返していると、不溶性の銀化合物が残留し、これが再生後の水洗水に溶出して比抵抗の立ち上がりが悪化し、水洗水を多量に使用する必要があるとともに、再生時間が長くなる。
【0013】
そこで本発明は、このような銀吸着カチオン交換樹脂の再生に際して、硝酸による再生および水酸化ナトリウムによる再生後、塩酸により再生を行う。
【0015】
すなわち硝酸による再生後、水酸化ナトリウムによる再生を行い、その後塩酸による再生を行う。再生レベルは60g・HNO3/liter−樹脂以上、好ましくは120〜300g・HNO3/liter−樹脂、40g・NaOH/liter−樹脂以上、好ましくは100〜200g・NaOH/liter−樹脂、および30g・HCl/liter−樹脂以上、好ましくは100〜200g・HCl/liter−樹脂とするのが好ましい。強酸性カチオン交換樹脂を複数段にわたって用いる場合も同様とする。
【0016】
このような再生方法は樹脂を劣化させやすいので、全サイクルについて行う必要はなく、塩酸、硫酸で再生する通常のサイクルと、硝酸による再生および水酸化ナトリウムによる再生後、塩酸により再生するサイクルを組み合わせるのが好ましい。この場合塩酸、硫酸で再生する通常のサイクル2〜1000回につき、硝酸による再生および水酸化ナトリウムによる再生後、塩酸により再生するサイクル1回の割合とするのが好ましい。通常の再生における塩酸による再生の再生レベルは30g・HCl/liter−樹脂以上、好ましくは70〜150g・HCl/liter−樹脂、硫酸再生の場合、50g・H2SO4/liter−樹脂以上、好ましくは100〜200g・H2SO4/liter−樹脂が好ましい。
【0017】
このようなカチオン交換樹脂の前段に弱酸性カチオン交換樹脂を用いる場合の塩酸による再生の再生レベルは30g・HCl/liter−樹脂以上、好ましくは70〜150g・HCl/liter−樹脂、硫酸再生の場合、50g・H2SO4/liter−樹脂以上、好ましくは100〜200g・H2SO4/liter−樹脂が好ましい。
また上記のカチオン交換樹脂と組み合わせて用いる強または弱塩基性アニオン交換樹脂の再生レベルは40g・NaOH/liter−樹脂、好ましくは100〜200g・NaOH/liter−樹脂とするのが好ましい。
【0018】
上記の再生において、硝酸による再生、水酸化ナトリウムによる再生および塩酸による再生は向流再生でも並流再生でもよく、それぞれ一般の再生と同様に薬注、押出、水洗の工程を行う。上記の再生により樹脂に付着した不溶性の銀化合物は除去され、水洗時の比抵抗の立ち上がりが速くなる。
【0019】
【発明の効果】
以上の通り本発明によれば、硝酸による再生および水酸化ナトリウムによる再生後、塩酸により再生するようにしたので、銀担持活性炭による処理水をイオン交換したカチオン交換樹脂を効率よく再生して銀を脱離させることができ、処理水の比抵抗の立ち上がりを早くすることが可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。
図1は実施形態における純水製造装置の系統図である。
【0021】
図1において、1は銀担持活性炭塔、2は弱塩基性アニオン交換樹脂塔(以下、弱アニオン樹脂塔という)、3は強酸性カチオン交換樹脂塔(以下、強カチオン樹脂塔という)、4は強酸性アニオン交換樹脂塔(以下、強アニオン樹脂塔という)、5は強酸性カチオン交換樹脂塔(以下、強カチオン樹脂塔という)で、それぞれ銀担持活性炭1a、弱塩基性アニオン交換樹脂2a、強酸性カチオン交換樹脂3a、強塩基性アニオン交換樹脂4a、強酸性カチオン交換樹脂5aが充填されている。7は比抵抗計である。
【0022】
上記の装置による純水製造は、原水をラインL1から銀担持活性炭塔1、弱アニオン樹脂塔2、強カチオン樹脂塔3、強アニオン樹脂塔4、強カチオン樹脂塔5にラインL2〜L5を通して供給し、それぞれの塔で吸着またはイオン交換を行い、最終的にラインL6、L7を通して純水を得る。このとき銀担持活性炭塔1から溶出する銀イオンは強カチオン樹脂塔3、5に吸着される。その間比抵抗計7において水質(比抵抗)を検出する。
【0023】
上記の純水製造において、弱塩基性アニオン交換樹脂2a、強酸性カチオン交換樹脂3a、強塩基性アニオン交換樹脂4a、強酸性カチオン交換樹脂5aのイオン交換能力が低下したときは通水を停止して再生に移る。再生は弱アニオン樹脂塔2、強カチオン樹脂塔3、強アニオン樹脂塔4、強カチオン樹脂塔5にそれぞれ薬注路L12〜L15から再生剤を薬注し、排液路L22〜L25から再生排液を排出して弱塩基性アニオン交換樹脂2a、強酸性カチオン交換樹脂3a、強塩基性アニオン交換樹脂4a、強酸性カチオン交換樹脂5aを再生する。再生剤は弱アニオン樹脂塔2および強アニオン樹脂塔4は水酸化ナトリウム水溶液、強カチオン樹脂塔3、5は前記硝酸、水酸化ナトリウムおよび塩酸の順序で再生剤を薬注する。それぞれの再生剤の薬注後は純水による押出および水洗を行う。
【0024】
各塔の再生を行った後、銀担持活性炭塔1、弱アニオン樹脂塔2、強カチオン樹脂塔3、強アニオン樹脂塔4、強カチオン樹脂塔5を通して純水および/または原水を通水して水洗を行い、比抵抗計7により比抵抗を測定し、所定の比抵抗に達した時点で採水を行う。
【0025】
上記のような再生を行うサイクルは塩酸、または硫酸による再生を行うサイクル2〜5回に1回の割合で行う。これにより樹脂の劣化を防止して効率よく純水の製造を行うことができる。図1では通水、再生とも下向流の例を示したが、それぞれ上向流でもよく、また再生は向流再生でも並流再生でもよい。また純水製造装置の構成を弱アニオン樹脂塔2、強カチオン樹脂塔3、強アニオン樹脂塔4、強カチオン樹脂塔5の組み合わせとしたが、他の組み合わせでもよく、強カチオン樹脂塔と強アニオン樹脂塔との組み合わせでもよい。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
【0027】
参考例1
図1の装置において、銀担持活性炭塔1、弱アニオン樹脂塔2、強カチオン樹脂塔3、強アニオン樹脂塔4、強カチオン樹脂塔5にそれぞれ銀担持活性炭200ml、OH型弱塩基性アニオン交換樹脂175ml、H型強酸性カチオン交換樹脂160ml、OH型強塩基性アニオン交換樹脂200ml、H型強酸性カチオン交換樹脂50mlを充填し、通水速度170ml/分で通水して純水を製造した。活性炭処理水の銀イオン濃度は0.5μg/lであった。
【0028】
再生は弱アニオン樹脂塔2は水酸化ナトリウムにより再生レベル40g・NaOH/liter−樹脂で、強カチオン樹脂塔3、5はそれぞれ硝酸により200g・HNO3/liter−樹脂で、強アニオン樹脂塔4は100g・NaOH/liter−樹脂で再生を行った。このような通水、再生を3サイクル行った時の比抵抗の立ち上がりの結果を図2に示す。
【0029】
参考例2
参考例1において、強カチオン樹脂塔3、5の再生をそれぞれ水酸化ナトリウムにより再生レベル200g・NaOH/liter−樹脂で再生後、塩酸により再生レベル200g・HCl/liter−樹脂で再生したほかは同様に試験した結果を図3に示す。
【0030】
実施例1
参考例1において、強カチオン樹脂塔3、5の再生をそれぞれ硝酸により再生レベル200g・HNO3/liter−樹脂で再生後、水酸化ナトリウムにより再生レベル200g・NaOH/liter−樹脂で再生し、さらに塩酸により再生レベル200g・HCl/liter−樹脂で再生したほかは同様に試験した結果を図4に示す。
【0031】
比較例1
参考例1において、強カチオン樹脂塔3の再生を塩酸により再生レベル60g・HCl/liter−樹脂で再生し、また強カチオン樹脂塔5の再生を塩酸により200g・HCl/liter−樹脂で再生したほかは同様に試験した結果を図5に示す。
【0032】
以上の結果より、参考例1、2および実施例1は比較例1に比べて比抵抗の立ち上がりが速い。また参考例1、2を組み合わせた実施例1の方法が最も立ち上がりが速いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【 図1】 実施形態における純水製造装置の系統図である。
【図2】 参考例1の結果を示すグラフである。
【図3】 参考例2の結果を示すグラフである。
【図4】 実施例1の結果を示すグラフである。
【図5】 比較例1の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 銀担持活性炭塔
2 弱アニオン樹脂塔
3、5 強カチオン樹脂塔
4 強アニオン樹脂塔
Claims (3)
- 銀担持活性炭による処理水をイオン交換したカチオン交換樹脂を再生するに際し、硝酸による再生および水酸化ナトリウムによる再生後、塩酸により再生することを特徴とするカチオン交換樹脂の再生方法。
- カチオン交換樹脂が銀イオンを吸着した樹脂である請求項1記載の方法。
- カチオン交換樹脂を塩酸または硫酸で再生するサイクルと、硝酸による再生および水酸化ナトリウムによる再生後、塩酸により再生するサイクルとを組み合わせて行う請求項1または2記載の方法。
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