JP4411168B2 - 感光性平版印刷版 - Google Patents
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Description
しかしながら通常ラジカル重合系は空気中では酸素の重合阻害により大きく低感度化する。これを防止するために酸素遮断性の保護層が設けられるが、酸素の重合阻害を防止するがために保存安定性が劣化し、暗重合によるカブリを生じる懸念がある。通常これを防ぐために重合禁止剤を添加して感度と保存安定性の両立を図っているのが現状である。
本発明は、当該感光性平版印刷版に係る発明であるが、以下、他の事項も含めて、説明
を行っている。
本発明の感光性平版印刷版が有する感光層の形成のための光重合性組成物は、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(以下、「エチレン性不飽和結合含有化合物」と略記する)、アルカリ水可溶または膨潤性バインダーとして架橋性基を有する高分子バインダー、および、光重合開始剤としてヘキサアリールビイミダゾール化合物を必須成分として含有し、必要に応じ、更に着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を含有する。
エチレン性不飽和結合含有化合物とは、エチレン性不飽和結合を少なくとも一つ有する化合物であり、光重合性組成物が活性光線の照射を受けた時、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋、硬化に寄与する。
エチレン性不飽和結合含有化合物は、例えば、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜6個有する化合物の中から任意に選択することができる。モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
(ただし、RおよびR'はHあるいはCH3を示す。)
本発明の感光層には、側鎖に架橋性基を有する高分子バインダーが用いられる。
ここで架橋性基とは、感光性平版印刷版を露光した際に感光層中で起こるラジカル重合反応の過程で高分子バインダーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。又光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基、オニウム塩構造等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましく、下記一般式(1)〜(3)で表される官能基が特に好ましい。
側鎖に架橋性基を有する高分子バインダーが、水可溶性の有機高分子重合体である場合には水現像が可能になる。
また、本発明の高分子バインダーとしては、同様に側鎖に上記架橋性基とカルボキシル基を有する、ポリウレタン、酸性セルロース誘導体および水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
上記の中でも、(メタ)アクリル酸共重合体およびポリウレタンがより好ましい。特に、ポリウレタン樹脂は、感光層の酸価が低くとも未露光部の現像性を低下させることなく、露光部の現像ダメージを抑制することができ、良好な汚れ性と高い耐刷性を兼ね備えることができる点で好ましい。
以下に側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂について、さらに詳しく説明する。
ジイソシアネート化合物、(ii)カルボキシル基を有するジオール化合物、(iii)架橋性基を有するジイソシアネート化合物および必要であれば(iv)カルボキシル基を有さないジオール化合物、を重付加反応させることにより得ることができる。
以下に上記ポリウレタン樹脂の原料であるジイソシアネート化合物およびジオール化合物について説明する。
ジイソシアネート化合物としては、式(4)で表されるジイソシアネート化合物が挙げられる。
少なくとも1つのカルボキシル基を有するジオール化合物としては、式(5)、(6)、(7)のジオール化合物および/または、テトラカルボン酸2無水物をジオール化合物で開環させた化合物が挙げられる。カルボン酸2無水物を開環させるために使用されるジオール化合物を使用することができる。
酸二無水物、4,4'−スルホニルジフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4'−[3,3'−(アルキルホスホリルジフェニレン)−ビス(イミノカルボニル)]ジフタル酸二無水物、ヒドロキノンジアセテートとトリメット酸無水物の付加体、ジアセチルジアミンとトリメット酸無水物の付加体などの芳香族テトラカルボン酸二無水物;5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物(大日本インキ化学工業(株)製、エピクロンB−4400)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物などの脂環族テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
b)ジイソシアネート化合物をジオール化合物過剰の条件下で反応させ得られたアルコール末端のウレタン化合物と、テトラカルボン酸二無水物とを反応させる方法。
架橋性基を有するジイソシアネート化合物としては、例えば、トリイソシアネート化合物と、架橋性基を有する単官能のアルコール又は単官能のアミン化合物1当量とを付加反応させて得られる生成物がある。
トリイソシアネート化合物としては、例えば下記に示すものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
ポリウレタン樹脂の側鎖に不飽和基を導入する方法としては、前述の方法の他に、ポリウレタン樹脂製造の原料として、側鎖に不飽和基を含有するジオール化合物を用いる方法も好適である。そのようなジオール化合物は、例えば、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルのように市販されているものでもよいし、ハロゲン化ジオール化合物、トリオール化合物、アミノジオール化合物と、不飽和基を含有するカルボン酸、酸塩化物、イソシアネート、アルコール、アミン、チオール、ハロゲン化アルキル化合物との反応により容易に製造される化合物であってもよい。これら化合物の具体的な例として、下記に示す化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
(式中、nは1以上の整数を表す。)
族炭化水素基を示し、L4は2価の脂肪族炭化水素基を示す。好ましくは、L1、L2、L3はそれぞれアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリレン基を示し、L4はアルキレン基を示す。またLl、L2、L3、L4中にはイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばエーテル、カルボニル、エステル、シアノ、オレフィン、ウレタン、アミド、ウレイド基またはハロゲン原子等が存在していてもよい。n1、n2はそれぞれ2以上の整数であり、好ましくは2〜100の整数を示す。
HO−L6−O−CO−L7−CO−O−L6−OH (14)
HO−L7−CO−O−L6−OH (15)
HO−L8−NH−CO−L9−CO−NH−L8−OH (19)
HO−L9−CO−NH−L8−OH (20)
HO−Ar2−(L16−Ar3)n−OH (21)
HO−Ar2−L16−OH (22)
ロキシ、ハロゲノの各基が好ましい。)を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を示す。必要に応じ、L16中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばエステル、ウレタン、アミド、ウレイド基を有していてもよい。
式(21)または(22)で示されるジオール化合物としては具体的には以下に示すものが含まれる。
本発明におけるポリウレタン樹脂バインダーにおいて、さらに下記式(31)、(32)に示すアミノ基含有化合物を組み合わせてジイソシアネート化合物と反応させ、ウレア構造を形成してポリウレタン樹脂の構造に組み込んでもよい。
えばアルコキシ、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I)、エステル、カルボキシル基などの各基が含まれる。)を有していてもよいアルキル、アラルキル、アリール基を示し、好ましくは水素原子、置換基としてカルボキシル基を有していてもよい炭素数1〜8個のアルキル、炭素数6〜15個のアリール基を示す。L17は置換基(例えば、アルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、アリーロキシ、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I)、カルボキシル基などの各基が含まれる。)を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基を示す。必要に応じ、L17中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばカルボニル、エステル、ウレタン、アミド基などを有していてもよい。なおR106、L17、R106'のうちの2個で環を形成してもよい。
以下、一般式(i)で表される繰り返し単位を有する樹脂を、適宜、特定(メタ)アクリル樹脂と称し、詳細に説明する。
鎖状構造の連結基としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。また、これらのアルキレンがエステル結合を介して連結されている構造もまた好ましいものとして例示する
ことができる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ
原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。R3が有してもよい置換基としては、R2が導入し得る置換基として挙げたものと同様である。但し、R3の炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。
常、他の共重合成分と組み合わされ、共重合体として使用される。共重合体における一般式(i)で表される繰り返し単位の総含有量は、その構造や、光重合性組成物の設計等によって適宜決められるが、好ましくは樹脂成分の総モル量に対し、1〜99モル%、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは5〜20モル%の範囲で含有される。
また、光重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物と架橋性基を有する高分子バインダーは、質量比で1/9〜9/1の範囲とするのが好ましい。より好ましい範囲は2/8〜8/2であり、更に好ましくは3/7〜7/3である。
併用される樹脂は、架橋性基を有する高分子バインダーの質量に対し、一般的には50質量%以下、好ましくは30質量%以下で用いられる。
本発明の感光性平版印刷版の感光層には光重合開始剤として、ヘキサアリールビスイミダゾールを含有する。
ヘキサアリールビスイミダゾールとしては、種々のものを用いることができるが、例えば、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号記載のロフィンダイマー類、例えば2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2'−ビス(o,o'−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−メチルフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
併用する場合、併用する光重合開始剤(系)の使用量は、ヘキサアリールビイミダゾール化合物の添加量に対し、一般的に1〜50質量%、好ましくは5〜20質量%である。
ある種の添加剤(以後、共増感剤という)を用いることで、該感光層の感度をさらに向上させる事ができる。これらの作用機構は、明確ではないが、多くは次のような化学プロセスに基づくものと考えられる。
即ち、先述の光重合開始系の光吸収により開始される光反応と、それに引き続く付加重合反応の過程で生じる様々な中間活性種(ラジカル、過酸化物、酸化剤、還元剤等)と、共増感剤が反応し、新たな活性ラジカルを生成するものと推定される。
共増感剤は、大きくは、以下の(a)〜(c)に分類されるが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては、通説がない場合も多い。
(a)還元されて活性ラジカルを生成しうる化合物
(b)酸化されて活性ラジカルを生成しうる化合物
(c)活性の低いラジカルと反応し、より活性の高いラジカルに変換するか、もしくは連鎖移動剤として作用する化合物
炭素−ハロゲン結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、トリハロメチル−s−トリアジン類や、トリハロメチルオキサジアゾール類等が好適に使用できる。
フェロセン、鉄アレーン錯体類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
同様の作用を示す。具体的には、2−アルキル−1−[4−(アルキルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロノン−1類、並びに、これらと、ヒドロキシアミン類とを反応したのち、N−OHをエーテル化したオキシムエーテル類を挙げることができる。
共増感剤は、単独でまたは2種以上併用して用いることができる。
共増感剤の使用量は、エチレン性不飽和結合含有化合物100質量部に対し通常0.05〜100質量部、好ましくは1〜80質量部、さらに好ましくは3〜50質量部である。
また、本発明においては以上の基本成分の他に光重合性組成物の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
熱重合禁止剤の添加量は、感光層を構成する全固形分に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体等の添加量は、感光層を構成する全固形分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
更に感光層の着色を目的として、着色剤を添加してもよい。着色剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料(C.I.Pigment Blue 15:3、15:4、15:6など)、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料がある。染料および顔料の添加量は全組成物の約0.5質量%〜約20質量%が好ましい。加えて、硬化皮膜の物性を改良するために、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。これらの添加量は全組成物の10質量%以下が好ましい。
本発明の主要な目的の一つである、平版印刷版を得るには上記感光層を、表面が親水性の支持体上に設ける。親水性の支持体としては、従来公知の、平版印刷版に使用される親水性支持体を限定無く使用することができる。使用される支持体は寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙若しくはプラスチックフィルム等が含まれ、これらの表面に対し、必要に応じ親水性の付与や、強度向上、等の目的で適切な公知の物理的、化学的処理を施しても良い。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のもの、例えばJIS A 1050、JISA 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などを適宜利用することが出来る。また、本発明に用いられるアルミニウム基板の厚みは、およそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mmから0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさおよびユーザーの希望により適宜変更することができる。アルミニウム基板には適宜必要に応じて後述の基板表面処理が施されてもよい。もちろん施されなくてもよい。
アルミニウム基板は、通常粗面化処理される。粗面化処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレインなどがある。さらに塩酸または硝酸電解液中で電気化学的に粗面化する電気化学的粗面化方法、およびアルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするポールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を粗面化するブラシグレイン法のような機械的粗面化法を用いることができ、上記粗面化方法を単独あるいは組み合わせて用いることもできる。その中でも粗面化に有用に使用される方法は塩酸または硝酸電解液中で化学的に粗面化する電気化学的方法であり、適する陽極時電気量は50C/dm2〜400C/d2の範囲である。さらに具体的には、0.1〜50%の塩酸または硝酸を含む電解液中、温度20〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm2〜400C/dm2の条件で交流および/または直流電解を行うことが好ましい。
以上のようにして粗面化処理されたアルミニウム基板には、その後に陽極酸化処理がなされ酸化皮膜が形成される。陽極酸化処理は、硫酸、燐酸、シュウ酸もしくは硼酸/硼酸ナトリウムの水溶液が単独もしくは複数種類組み合わせて電解浴の主成分として用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分はもちろん含まれても構わない。さらには第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3成分とは、例えばNa、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオンやアンモニウムイオン
等に陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、硼酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては0〜10000ppm程度含まれてもよい。陽極酸化処理の条件に特に限定はないが、好ましくは30〜500g/リットル、処理液温10〜70℃で、電流密度0.1〜40A/m2の範囲で直流または交流電解によって処理される。形成される陽極酸化皮膜の厚さは0.5〜1.5μmの範囲である。好ましくは0.5〜1.0μmの範囲である。
本発明における感光性平版印刷版には、感光層と基板との間の密着性や汚れ性を改善する目的で、中間層を設けてもよい。このような中間層の具体例としては、特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特開平11−38635号、特開平11−38629号、特開平10−282645号、特開平10−301262号、特開平11−24277号、特開平11−109641号、特開平10−319600号、特開平11−327152号、特開2000−10292号、特開2000−235254号、特開2000−352824号、特開2001−209170号の各公報等に記載のものを挙げることができる。
感光層の塗設に際しては、上記各成分を溶媒に溶解し塗布液を調製する。ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライト、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチ
ルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート−3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどの有機溶媒がある。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。
塗布溶液中の固形分の濃度は通常1〜50質量%である。
本発明に用いられる保護層は25℃、1気圧下における酸素透過性Aが1.0≦A≦20(cc/m2・day)であることを特徴とする。酸素透過性Aが1.0(cc/m2・day)未満で極端に低い場合は、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。逆に、酸素透過性Aが20(cc/m2・day)を超えて高すぎる場合は感度の低下を招く。
.5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜30質量%である。
本発明の感光性平版印刷版の製版方法に使用される現像液は、特に限定されないが、例えば、無機アルカリ塩とノニオン系界面活性剤を含有し、通常pHが11.0〜12.5であるものが好適に使用される。
チウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、及び同アンモニウム等の無機アルカリ剤が挙げられる。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明における感光性平版印刷版を、例えば、カーボンアーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、ヘリウムカドミウムレーザー、アルゴンイオンレーザー、FD・YAGレーザー、ヘリウムネオンレーザー、半導体レーザー(350nm〜600nm)等の従来公知の活性光線で画像露光した後、現像処理することにより、アルミニウム板支持体表面に画像を形成することができる。
画像露光後、現像までの間に、感光層の硬化率を高める目的で50℃〜140℃の温度で1秒〜5分の時間の加熱プロセスを設けることを行っても良い。加熱温度が前記の範囲において、硬化率アップの効果があり、未露光部での暗重合による残膜も生じない。
上記のような処理により得られた印刷版は特開2000−89478号公報に記載の方法による後露光処理やバーニングなどの加熱処理により、耐刷性を向上させることができる。
このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
なお、実施例2及び3は参考例である。
厚さ0.3mmのアルミニウム板を10質量%水酸化ナトリウムに60℃で25秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20質量%硝酸で中和洗浄し、次いで水洗した。 これを正弦波の交番波形電流を用いて1質量%硝酸水溶液中で300クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。引き続いて1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に40℃で5秒間浸漬後30質量%の硫酸水溶液中に浸漬し、60℃で40秒間デスマット処理した後、20質量%硫酸水溶液中、電流密度2A/dm2において、陽極酸化皮膜の厚さが2.7g/m2になるように、2分間陽極酸化処理した。その表面粗さを測定したところ、0.3μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
このように処理されたアルミニウム板に、まずバーコーターを用いて次の中間層液を塗布したあと80℃で20秒間乾燥した。乾燥後の中間層塗布質量は10mg/m2であった。
中間層液
・下記ゾル液 100g
・メタノール 900g
ゾル液
・ホスマーPE(ユニケミカル(株)製) 5g
・メタノール 45g
・水 10g
・85%リン酸 5g
・テトラエトキシシラン 20g
・3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン 15g
この上に、下記組成の高感度光重合性組成物P−1を乾燥塗布質量が1.4g/m2となるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、感光層を形成した。
エチレン性不飽和結合含有化合物(A1) 4.2 質量部
線状有機高分子重合体(高分子バインダー)(B1) 3.6 質量部
増感剤(C1) 0.21質量部
光重合開始剤(D1) 0.81質量部
連鎖移動剤(E1) 0.3 質量部
ε―フタロシアニン分散物 0.76質量部
フッ素系ノニオン界面活性剤メガファックF780 0.05質量部
(大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 58 質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 53 質量部
この感光層上に表1に記載の組成物を乾燥塗布質量が2.45g/m2となるように塗布し、120℃で1分間乾燥させ、感光性平版印刷版を得た。
(1)耐刷性
得られた感光性平版印刷版を富士写真フイルム(株)製Vx9600CTP(光源波長:405nm)にて感材上の露光量が0.05mJ/cm2になるように調整し画像状に描き込みを行った。その後、下記組成のアルカリ現像液を仕込んだG&J製PSプロセッサーIP850HDを用い、液温を25℃に保ち、現像時間28秒で現像した。得られた平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。
(酸素透過率の測定)
両面を厚さ約20μmのポリエチレンでコートした厚さ約200μmの印画紙表面に、前記光重合性層上に塗布するのと同様に酸素遮断層を塗布、乾燥し、測定用の試料を作製した。予め測定した印画紙の酸素透過率は、下記測定条件において約700ml/(m2・day・atom)であり、酸素遮断層における透過率を測定する際には十分無視できる値であった。
このようにして得られた試料を用い、JIS K7126B及びASTM D3985に記載の気体透過度試験方法に準じて、モコン社製OX−TRAN2/20を用いて、25℃60%RHの条件で酸素透過率〔ml/(m2・day・atom)〕を測定した。
水酸化カリウム 0.15g
ポリオキシエチレンナフチルエーテル(n=13) 5.0g
キレスト400(キレート剤) 0.1g
水 94.75g
上記感光性平版印刷版として、合紙とともにアルミクラフト紙で密閉し、60℃で3日放置したものを用いた以外は感度評価時とすべて同じ方法で網点面積測定を行った。次に、60℃、3日放置有りの網点面積と60℃、3日放置無しの網点面積との差を取り、強制経時による網点変動(Δ%)を測定した。この数字の絶対値が小さいほど強制経時による影響が少ない、すなわち保存安全性が高いことを示す。
(実施例4)
実施例1の線状有機高分子重合体(高分子バインダー)(B1)をB2に変更した以外は実施例1と同様の方法により実施例4の平版印刷版を得た。
(実施例5)
実施例1の線状有機高分子重合体(高分子バインダー)(B1)をB3に変更した以外は実施例1と同様の方法により実施例5の平版印刷版を得た。
(比較例3)
比較例1の線状有機高分子重合体(高分子バインダー)(B1)をB2に変更した以外は比較例1と同様の方法により比較例3の平版印刷版を得た。
(比較例4)
比較例1の線状有機高分子重合体(高分子バインダー)(B1)をB3に変更した以外は比較例1と同様の方法により比較例4の平版印刷版を得た。
(比較例5)
実施例1の線状有機高分子重合体(高分子バインダー)(B1)をB4に変更した以外は実施例1と同様の方法により比較例5の平版印刷版を得た。
Claims (4)
- 親水性支持体上に感光層及び保護層を有し、該感光層がエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、架橋性基を有する高分子バインダー及びヘキサアリールビイミダゾール化合物を含有し、該保護層の酸素透過性(25℃、1気圧下)が1.0〜20cc/m2・dayの範囲であり、該保護層がポリビニルピロリドンまたはその変性物を含有し、該ポリビニルピロリドンまたはその変性物の該保護層中の含有率が、15〜30質量%であることを特徴とする感光性平版印刷版。
- 該高分子バインダーが架橋性基を有するポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版。
- 該高分子バインダーが架橋性基を有する(メタ)アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版。
- ポリビニルアルコールを該保護層の主成分として用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性平版印刷版。
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