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JP4484980B2 - フォトマスクの洗浄方法、洗浄装置およびフォトマスクの洗浄液 - Google Patents

フォトマスクの洗浄方法、洗浄装置およびフォトマスクの洗浄液 Download PDF

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  • Exposure And Positioning Against Photoresist Photosensitive Materials (AREA)
  • Exposure Of Semiconductors, Excluding Electron Or Ion Beam Exposure (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、一般に半導体装置(LSI)製造の写真製版工程において原盤として使用されるフォトマスクの洗浄方法に関するものであり、より特定的には、極めて清浄な表面を得ることができるように改良されたフォトマスクの洗浄方法に関する。この発明は、またそのような極めて清浄な表面を有するフォトマスクを得ることができるように改良されたフォトマスクの洗浄装置に関する。この発明は、さらに、そのような極めて清浄な表面を有するフォトマスクを得ることができる洗浄液に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトマスクは半導体装置製造の写真製版工程で、転写装置でウェハ表面に集積回路のパターンを転写する際に使用する原版となる。フォトマスクの表面に作り込まれたパターンに欠陥があったり、解像限界以上の異物が存在すると、それがウェハ上にパターンとして転写されてしまう。したがって、フォトマスクの表面上には、解像限界以上のいかなる欠陥も異物の存在も許されない。また、集積回路の高集積化、微細化に伴い、許容される欠陥、異物のサイズは0.5μm以下まで要求されてきている。
【0003】
従来のフォトマスク洗浄は、ウェハ洗浄工程で実績のあるRCA洗浄(硫酸等の酸と過酸化水素水の混合液、ならびに、アンモニア水等のアルカリ性薬液と過酸化水素水の混合液を用いた洗浄)をベースにした洗浄方法で行なわれていた。
【0004】
図11は、その従来の洗浄プロセスのフローを示す図である。
まず、ステップ1の工程において、フォトマスク表面に存在するレジスト、溶剤残等の有機物を分解するために、また、金属不純物を除去するために、高温の硫酸と過酸化水素水の混合液を用いてフォトマスクを洗浄する。この工程で、マスク表面の濡れ性は改善され、その後の洗浄の効率が高められる。
【0005】
次に、ステップ2の工程において、純水のリンス(すすぎ)で硫酸等の薬品を除去する。
【0006】
次に、ステップ3の工程において、付着した異物を除去することを目的として、加温したアンモニアと過酸化水素水の混合液中で、フォトマスクを浸漬洗浄する。このときに、より効果的に異物を除去するために、浸漬槽にメガソニック超音波を加えることもある。
【0007】
この工程の後にも、ステップ4の工程に示すように純水による十分なリンスが必要である。最後にステップ5の工程において、純水でリンスされたフォトマスクを乾燥させる。なお、ステップ3の工程では、アンモニアと過酸化水素水の混合液を用いずに、純水のみを用いて、あるいは洗剤を加えた純水を用いて、メガソニック等の超音波を加えた洗浄を行なうこともある。
【0008】
以上説明した浸漬方式では、複数のマスクを同時に槽内に浸漬することで、処理効率を上げることができるが、汚染のひどいマスクの汚れが、別の比較的清浄なマスクを汚染してしまう可能性がある。
【0009】
この点を改善するために、1枚のフォトマスクを洗浄するための薬液を使い捨てる方式として、マスクを水平に回転させて、固定した、またはスイングするノズルから薬液、純水等を注ぐスピン方式の洗浄も行なわれている。スピン方式では、異物をさらに効果的に除去するために、高圧ジェット純水リンス、メガソニック純水リンス等の機械的な洗浄を行なうこともある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
異物除去を目的としたアンモニア/過酸化水素水の処理工程(上記ステップ3の工程)においては、次の問題があった。すなわち、浸漬方式の洗浄では、複数のフォトマスクを同じ薬品を用いて処理するので、薬液の劣化や汚染を避けるために、薬液の交換頻度が増加し、薬液の使用量が増加する。さらに、洗浄効率(洗浄歩留り)が悪い場合には、1枚のフォトマスク当りの洗浄回数が増えることになり、そのために薬品使用量、純水使用量、電気等のエネルギの使用量が増加する。
【0011】
また、最近は、フォトマスクを透過した光の位相を部分的に変えることにより、ウェハ上でのレジストの解像力を上げる位相シフトマスクが開発され、実用化されている。MoSiON膜は、この位相シフトマスクの一種であるハーフトーンフォトマスクの遮光膜に使用されている材料である。
【0012】
MoSiON膜は、従来のアンモニア/過酸化水素水中の浸漬処理のようなアルカリ性薬品を用いた洗浄処理では、透過率や位相角が大幅に変動してしまい、製品として出荷する際の品質を保持できなかった。したがって、実際には、異物除去に有効なアンモニア/過酸化水素水を用いた洗浄は、MoSiON膜には実施できず、純水のみを用いた洗浄、あるいは洗剤を用いた洗浄を行なっていたので、異物の残留が問題になっていた。
【0013】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、少量の薬液で従来の洗浄方法と同等あるいはそれ以上の異物除去効果を発揮し、かつ、薬品や純水の使用量を削減することができるように改良されたフォトマスクの洗浄方法を提供することを目的とする。
【0014】
この発明は、また、位相シフトフォトマスクの遮光帯(MoSiON膜)の透過率等に変動を与えずに、異物除去を効果的に行なうことができるように改良されたフォトマスクの洗浄方法を提供することにある。
【0015】
この発明は、また、そのような洗浄方法を実現することのできる洗浄装置を提供することにある。
【0016】
この発明のさらに他の目的は、そのようなフォトマスクの洗浄方法を実現することのできる、フォトマスクの洗浄液を提供することを主要な目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、まず、硫酸と過酸化水素水の混合液を用いて、フォトマスクの表面に存在する有機物および金属不純物を除去する。上記フォトマスクの表面に付着している異物を、H2ガス溶解水を用いて除去する。上記フォトマスクを乾燥させる。
【0018】
前述の実施の形態によれば、H2ガス溶解水を用いるので、異物が高い除去率で除去された。
【0019】
前述の実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、上記H2ガス溶解水は、アルカリ性にされている。アルカリ性にすることにより、異物がさらに高い除去率で除去されるようになる。
【0020】
前述の実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、上記H2ガス溶解水は、アンモニアでアルカリ性にされている。
【0021】
この実施の形態によれば、H2ガス溶解水が、アンモニアを含むので、さらに高い除去率で粒子が除去される。
【0022】
前述の実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、H2ガス溶解水が、微量のKOHでアルカリ性にされている。アルカリ性にすることにより、異物がさらに高い除去率で除去されるようになる。
【0023】
前述の実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、上記第2の工程において、超音波処理を併用する。
【0024】
この実施の形態によれば、超音波処理を併用することにより、フォトマスクの表面に付着する微粒子状の異物を効果的に除去することができる。
【0025】
前述の実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、上記第1の工程においても、超音波処理を併用する。超音波処理を併用するので、有機物および金属不純物が、さらに効率よく除去される。
【0026】
前述の実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、上記異物は、微粒子状異物である。微粒子状の異物は、超音波により物理的に除去されやすくなる。
【0027】
実施の形態のフォトマスクの洗浄装置は、フォトマスクの表面に存在する有機物と金属不純物を硫酸と過酸化水素水の混合液である第1の洗浄液で除去する酸槽を備える。当該洗浄装置は、上記フォトマスクの表面に付着している異物を、H2ガス溶解水を含む第2洗浄液で除去する異物除去槽を備える。当該洗浄装置はさらに、フォトマスクの乾燥を行なう乾燥槽を備える。当該洗浄装置は、上記酸槽に第1洗浄液を供給する第1洗浄液供給手段と、上記異物除去槽に第2洗浄液を供給する第2洗浄液供給手段とをさらに備える。上記第1洗浄液供給手段に、上記第1洗浄液の濃度および温度を制御する第1制御手段が設けられている。上記第2洗浄液供給手段に、上記第2洗浄液の濃度および温度を制御する第2制御手段が設けられている。
【0028】
この実施の形態によれば、2ガス溶解水を含む洗浄液で、フォトマスクの表面に付着している異物を除去するので、マスクから、高い除去率で異物を除去することができる。
【0029】
前述の実施の形態のフォトマスクの洗浄装置においては、上記異物除去槽に、該異物除去槽に超音波を送り込む超音波処理手段が設けられている。
【0030】
この実施の形態によれば、超音波で処理することができるので、微粒子状の異物を効果的に除去することができる。
【0031】
前述の実施の形態のフォトマスクの洗浄装置においては、上記酸槽に、該酸槽に超音波を送り込む超音波処理手段が設けられている。
【0032】
この実施の形態によれば、酸槽においても超音波が送り込まれるので、洗浄効率が高められる。
【0033】
前述の実施の形態のフォトマスクの洗浄装置においては、上記異物除去槽に、該異物除去槽内に、所定の濃度のアンモニア水を供給するアンモニア水供給手段がさらに設けられている。
【0034】
この実施の形態によれば、異物除去槽にアンモニアを供給することができるので、異物を効果的に除去することができるようになる。
【0035】
実施の形態のフォトマスクの洗浄液は、H2ガス溶解水を含む。洗浄液がH2ガス溶解水を含むので、異物を効果的に除去することができる。
【0036】
この実施の形態のフォトマスクの洗浄液によれば、上記H2ガス溶解水は、アルカリ性にされている。アルカリ性にされていることにより、除去率がさらに高まる。
【0037】
前述の実施の形態のフォトマスクの洗浄液においては、上記H2ガス溶解水は、アンモニアでアルカリ性にされている。
【0038】
この実施の形態によれば、アンモニアでアルカリ性にされているので、極めて低濃度のアンモニア量で洗浄効果を上げることができる。
【0039】
前述の実施の形態の方法は、MoSiON膜を形成したハーフトーン位相シフトフォトマスクの洗浄方法に係る。この実施の形態によれば、H2ガス溶解水を用いて異物洗浄処理をするので、MoSiON膜の透過率変動を管理基準以下に抑え、かつ洗浄効率を上げることができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図について説明する。
【0041】
実施の形態1
実施の形態1では、製造工程中にフォトマスクの表面に付着する微細なごみや金属や有機物を、効果的に除去する方法について述べる。CrON膜が遮光膜として形成されているフォトマスクの表面に、異物としてシリカ(SiO2)粒子を付着させたものを準備する。これを、図2に示すような石英製のオーバーフロー槽301内で種々の薬液中に浸漬し、超音波発振器302を用いてメガソニック超音波処理を行なった。図1は、CrON膜上のシリカ粒子の、各薬液処理後の除去率を示したものである。
【0042】
図1に示すように、薬液として、A(純水)、B(希アンモニア水(pH10))、C(0.1%濃度のアンモニア水)、D(H2ガス溶解水)、E(微量のアンモニアを添加し、pHを約10にしたH2ガス溶解水)、F(アンモニアを0.1%添加したH2ガス溶解水)を用い、実験し、それぞれの場合の異物の除去率を確認した。なお、H2ガス溶解水とは、H2ガスが溶解した純水で、生成方法については後述する。
【0043】
また、ここで使用したH2ガス溶解水は、純水を電気分解した際に、陰極側に生成したH2ガスが溶解した純水で、H2ガスの濃度は約1.3ppmであつた。なお、除去率は、処理前に存在した粒子の個数に対する、処理により除去された粒子の個数の割合で表わしている。
【0044】
図1から明らかなように、純水中、希アンモニア水(pH10)中では、除去率はそれぞれ0.1%、−30%となり、異物を模したシリカ粒子は、ほとんど除去されなかった。しかし、H2ガスを溶解させたH2ガス溶解水では、約30%の除去率で、シリカ粒子が除去された。さらに、ごく微量のアンモニア水を添加し、水素イオン濃度pHを約10にしたH2ガス溶解水中では、約65%まで除去率が向上した。アンモニアを0.1%添加したH2ガス溶解水中では、99%の高い除去率でシリカ粒子が除去された。なお、単に0.1%の濃度のアンモニアが溶けた水では、除去率が52%であった(グラフCを参照)。
【0045】
このように、H2ガスが溶解した純水(H2ガス溶解水)中でメガソニック超音波処理をすると、フォトマスクの表面に付着する微粒子状の異物を効果的に除去することができる。また、微量のアンモニアを添加したH2ガス溶解水を用いることで、フォトマスクの表面に付着する異物の除去効率を大幅に改善できることがわかった。
【0046】
水素イオン濃度pHが約10の薬液に使用するアンモニアの濃度は、約0.003%であり、このような極めて低濃度のアンモニアでもH2ガス溶解水では洗浄効果を上げることができる。したがって、従来の洗浄方法に比較して薬液を大幅に削減できる。また、濃厚な薬液を使用する場合と比較して、その後のリンスに使用する純水の量を大幅に削減できる。さらに、洗浄能力の向上により、洗浄処理時間を短縮でき、電気等のエネルギを節約できる。
【0047】
2ガス溶解水の生成方法を、図3に示す。H2ガスは、ガスボンベから直接供給するか、または水を電気分解して発生させる等の方法で供給し、ガス溶解ユニットの中で純水中に溶解される。ガスを溶解させる方法には、ポンプで攪拌器の中にガスと純水を供給し、水中で多数の気泡を発生させてかき混ぜる方法、またはガス透過膜を使用して、純水中にガスを溶解させる方法がある。このような方法で作成したH2ガス溶解水に、希アンモニア水等の薬液を添加することにより、水素イオン濃度を変えることができる。
【0048】
実施の形態2
実施の形態2では、ハーフトーンフォトマスクのような位相シフトフォトマスク上の異物を除去するのに最適な洗浄方法について述べる。
【0049】
ハーフトーンマスクの遮光膜はMoSiON膜である。MoSiON膜が約0.1μm成膜されたガラス基板を、種々の洗浄液中に2時間浸漬して、波長246nmにおける透過率の変動(%)を確認した。
【0050】
図4は、洗浄処理後の透過率変動を示す図である。なお、洗浄液としては、図4に示すように、A(1%濃度のアンモニア水)、B(アンモニア/過酸化水素水)、C(5%濃度のアンモニア水)、D(10%濃度のアンモニア水)、E(H2ガス溶解水)、F(アンモニアを微量添加したH2ガス溶解水(pH10))を用いて、実験した。
【0051】
その結果、従来のフォトマスク洗浄で異物除去を目的として使用されていたアンモニア/過酸化水素水(B)の処理では、透過率が1.04%上昇した。また、アンモニア濃度5%の純水(C)、アンモニア濃度1%の純水(A)では、透過率がそれぞれ0.9%、0.27%上昇した。しかし、H2ガス溶解水(E)、アンモニアを微量添加したpH10のH2ガス溶解水(F)では、それぞれ0.02%、0.1%しか、透過率は上昇しなかった。
【0052】
フォトマスクの表面に形成した遮光膜であるMoSiON膜の透過率が変動すると、ウェハ上に回路パターンを転写したときのレジスト形状、寸法に変動が発生し、最終的にLSIの特性を劣化させてしまう。そのため、その透過率は厳しく管理されている。従来のアンモニア/過酸化水素水での処理は、透過率の変動が大きいため、MoSiON膜を形成したフォトマスクの洗浄には使用できない。しかし、図4に示すような、H2ガス溶解水、アンモニアを微量添加したpH10のH2ガス溶解水における透過率の変動量であれば、許容範囲内である。
【0053】
図5は、アルミナ(Al23)粒子を種々の液中でメガソニック超音波処理をしたときの、アルミナ粒子の除去率を示したものである。もちろん、このアルミナ(Al23)粒子は、MoSiON膜上に異物として付着されたものである。
【0054】
除去率は、メガソニック処理で除去された粒子の個数を、処理前に存在した粒子の個数で除して求めた。なお、使用する液としては、図5に示すように、A(純水)、B(pH10の希アンモニア水)、C(H2ガス溶解水)、D(アンモニアを微量添加したpH10のH2ガス溶解水)、E(アンモニア濃度1%のH2ガス溶解水)、F(アンモニア/過酸化水素水)を用いて実験した。
【0055】
その結果、以下の事柄がわかった。純水(A)、希アンモニア水(B)、H2ガス溶解水(C)中では、除去率は、それぞれ5.0、−0.2、0.0%で、アルミナ粒子がほとんど除去されていない。しかし、アンモニアを微量添加したH2ガス溶解水(D)中では、31.6%の除去率でアルミナ粒子が除去された。さらに、アンモニアの添加量を増やし、濃度1%のカソード水中では、39.6%の除去率で、アルミナ粒子が除去された。従来より用いられている異物除去に有効なアンモニア/過酸化水素水(F)では、31%の除去率である。したがって、アンモニアを微量添加したH2ガス溶解水(D)は、アンモニア/過酸化水素水(F)中での処理と同等の異物除去効果を与えることがわかった。
【0056】
すなわち、図4と図5に示した結果より、濃度が0.003%というような微量のアンモニアを添加したH2ガス溶解水を用いて、異物洗浄処理することで、MoSiON膜の透過率を変動させることなく、かつ従来と同等またはそれ以上の洗浄効果を出すことができることがわかった。また、アンモニア濃度が1%以下であれば、洗浄処理を短時間に限定することにより、透過率変動を管理基準(たとえば、0.5%)以下に抑え、かつ洗浄効率を上げることができる。
【0057】
実施の形態3
実施の形態1,2では、H2ガス溶解水にアンモニアを添加した。本実施の形態ではアンモニアの代わりに、微量のKOH等の電解物質を添加して弱アルカリ性にした薬液を用いた。これによっても、同様の効果が得られる。
【0058】
実施の形態4
図2に示すように、マスク基板を、従来のオーバーフロー槽内に導入されたH2ガス溶解水または微量のアンモニア水を加えたH2ガス溶解水に浸漬処理することで、実施の形態1、2に記載した効果が得られる。超音波を印加することにより、さらに洗浄効果が高められる。
【0059】
実施の形態5
実施の形態5では、フォトマスクの洗浄工程の全体について述べる。
【0060】
図6は、本発明の高性能な洗浄プロセスのフローを示す図である。まず、ステップ1の工程で、フォトマスク表面に存在するレジストおよび溶剤等の有機物の分解のために、かつ表面の濡れ性の改善のために、さらに、金属不純物の除去のために、高温の硫酸と過酸化水素の混合液を用いてフォトマスクを洗浄する。次に、ステップ2の工程において、フォトマスク表面に残留する硫酸と付着した異物の除去をする洗浄処理を行なう。
【0061】
具体的には、洗浄されるフォトマスクに形成されている遮光膜がCrON膜の場合には、実施の形態1に示したように、H2ガス溶解水あるいは微量のアンモニアを添加したH2ガス溶解水中で、メガソニック超音波処理をすることで、フォトマスクの表面に付着する微粒子状の異物を除去する。
【0062】
使用するアンモニアの濃度はpH10の場合で約0.003%である。このような極めて低濃度で洗浄効果を上げることができるので、従来の洗浄方法に比較して、薬液の大幅な削減ができる。また、濃厚な薬品を使用する場合と比較して、その後のリンスに使用する純水の量を大幅に削減できる。
【0063】
さらに、洗浄能力の向上で異物除去のための洗浄処理時間が短縮でき、電気等のエネルギを節約できる。また、硫酸と過酸化水素水の混合液を用いて有機物や金属不純物を除去した後の残留する薬液のリンスにも、アンモニア等の電解質添加のH2ガス溶解水を用いる。そのことにより、該リンス液に純水を用いたときに比べて、リンス中における液中浮遊粒子の基板表面への再付着が少なくなるとともに、リンス液量、リンス時間、電気等のエネルギが一層節約できる。
【0064】
洗浄されるフォトマスクがハーフトーンマスクであり、形成されている遮光膜がMoSiON膜の場合には、このステップ2の工程において、実施の形態2に示したように、濃度が0.003%のような微量のアンモニアを添加したH2ガス溶解水を用いて異物を洗浄除去する。このような薬液を用いて処理することにより、MoSiON膜の透過率を変動させることなく、従来と同等またはそれ以上の洗浄効果を出すことができる。また、アンモニア濃度が1%以下であれば、短時間の洗浄処理に限定することにより、透過率変動を管理基準(たとえば、0.5%)以下に抑え、かつ洗浄効率を上げることができる。この際、メガソニック超音波処理を併用すればさらに効果的であることは言うまでもない。
【0065】
次に、ステップ3の工程において、洗浄されたフォトマスクを乾燥して終了させる。
【0066】
このような洗浄プロセスを用いることにより、従来の処理と比べて、付着異物の除去効率が向上するので、その処理時間は短縮されるとともに、純水の使用量や電気エネルギを削減できる。また、洗浄に使用する薬液の使用量も大幅に削減できる。
【0067】
さらに、遮光膜がMoSiON膜の場合であっても、透過率を変動させることなく、効果的な洗浄を行なうことができる。
【0068】
実施の形態6
実施の形態6では、実施の形態1から5によるフォトマスク洗浄方法を実現するための、フォトマスクの洗浄装置について述べる。
【0069】
図7は、本発明に係る高性能なフォトマスク洗浄装置の概念図である。洗浄装置は、装置本体100と、装置本体100に配置された各槽に対して、薬液あるいは純水等を、所定の濃度や温度に設定制御して供給する洗浄液供給・制御部200とからなる。装置本体100は、センダーユニット101、酸槽102、異物除去槽103、乾燥槽104およびレシーバ105で構成されている。また、洗浄液供給・制御部200は、酸調合タンク201、アルカリ・洗浄調合タンク202、H2ガス溶解水生成ユニット203、IPA(イソプロピルアルコール)ユニット204および制御ユニット205から構成されている。
【0070】
次に、図7を用いて、装置の動作について説明する。
フォトマスクは、装置本体100のセンダーユニット101にセットされる。この際、フォトマスクは1枚ずつまたは複数枚同時にセットされる。センダーユニット101でセットされたフォトマスクは酸槽102に送り込まれる。酸槽102では、酸調合タンク201から供給される硫酸/過酸化水素水等により酸処理が行なわれる。酸槽102での処理が終了すると、フォトマスクは次に異物除去槽103に送り込まれる。異物除去槽103には、制御ユニット205により、H2ガス溶解水生成ユニット203で生成したH2ガス溶解水と、アルカリ・洗浄調合タンク202で所定の濃度に設定されたアンモニア水が供給されるように構成されている。異物除去槽103では、実施の形態1で説明したように、H2ガス溶解水中で、メガソニック超音波処理が施される。これによって、フォトマスクの表面に付着する微粒子状の異物が効果的に除去される。また、微量のアンモニアを添加したH2ガス溶解水を用いることで、フォトマスクの表面に付着した異物粒子の除去効率を大幅に改善できる。
【0071】
この場合、使用するアンモニアの濃度はpH10の場合で、約0.003%である。このような極めて低濃度のアンモニアで洗浄効果を上げることができるので、使用する薬液の量を大幅に削減できる。また、濃厚な薬品を使用する場合と比較して、その後のリンスに使用する純水の量を大幅に削減できる。さらに、洗浄能力の向上で異物除去のための洗浄処理時間が短縮でき、電気等のエネルギを節約できる。
【0072】
なお、酸槽102および異物除去槽103の構成は、図2に示したようなオーバーフロー槽の構成を採用することにより、超音波処理も併用できるので洗浄効果をさらに改善できる。また、各槽の薬液をオーバーフロー、循環フィルタリングすることで、純水や薬液の使用量を節約し、かつ薬液内の異物数を低いレベルに管理できる。
【0073】
次に、各槽内において、H2ガス溶解水あるいは低濃度のアンモニア水等の薬液をフォトマスク表面に注ぐための方法の一例を図8に示す。図8に示すように、水平に回転させたフォトマスク基板40の表面に、洗浄処理チャンバ(槽)内に固定されたノズル41またはスイングするアーム42に固定されたノズルから、H2ガス溶解水または微量のアンモニア水を加えたH2ガス溶解水を注ぐことで実現できる。また、処理するマスクの種類により洗浄パスを区分する場合のために、これらを複数槽ごとに設置してもよい。
【0074】
洗浄槽には、水平方向にマスクを回転させて、固定ノズルまたはスイング可能なアームに固定されたノズルから、H2ガス溶解水を含む薬液、純水等をマスクに注ぐユニットを設置することもできる。このユニットでは、ブラシスクラブ洗浄をすることもできる。また、スイングするノズルからH2ガス溶解水や微量のアンモニア水を添加したH2ガス溶解水をマスクに注ぎ、さらにメガソニック超音波を加えることもできる。また、このメガソニックノズルから、メガソニックが加わった純水のみをマスクに注ぎ、かつ、そこに別のノズルから、アンモニア水、アンモニア水/過酸化水素水の混合液、H2ガス溶解水、アンモニア水を微量添加したH2ガス溶解水等を注いで、効果的に、異物を除去することができる。
【0075】
乾燥ユニットには、IPA等のアルコールの蒸気乾燥や水平状態でマスクを高速で回転させるスピン乾燥、その他の乾燥方法のユニットを接続する。なお、図7には、IPA蒸気乾燥ユニットを設置した構成の装置を示している。
【0076】
スピン乾燥ユニットを設置した場合は、洗浄液供給・制御部200内のIPAユニット204は省略される。各ユニットで使用する薬液は、本体から独立した薬液供給ユニット(図示せず)から供給される。洗浄液供給・制御部200には、装置の動作を制御するためのシーケンサ等の制御ユニットが設置される。乾燥されたマスクは、レシーバユニット105に搬送されて、専用のケース等に収納される。
【0077】
実施の形態7
図9に示すように、従来のライン型のメガソニックノズル50を使用し、メガソニックを加えたH2ガス溶解水または微量のアンモニア水を加えたH2ガス溶解水で、マスク基板40をリンスすることで、実施の形態1、2、3、4の効果が得られる。
【0078】
実施の形態8
レジスト除去処理後にCrON膜上に残留した異物を検出した。図10は、検出した異物の数をまとめたグラフである。マスクのレジスト除去工程において、薬液による湿式処理で、レジストを除去する。図10では、純水でリンスを行なったときにマスク上に残留した異物の個数と、H2ガス溶解水を用いてリンスを行なったときにマスク上に残留した異物の個数が比較して示されている。残留する異物数は、純水から、H2ガス溶解水に変えることで、約1/4になった。このように洗浄工程のみでなく、レジスト除去工程にも、H2ガス溶解水を使用することで、残留する異物を減らすことができる。さらに、アンモニアを添加したH2ガス溶解水中で処理することでも、同様の効果が得られる。
【0079】
実施の形態9
実施の形態1、2、3および4で得た効果は、パターン形成されたマスク基板のみでなく、マスクの材料であるマスクブランクスの製造工程での湿式処理で採用しても、同様の効果が得られる。
【0081】
実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、H2ガス溶解水を用いるので、異物が高い除去率で除去されるという効果を奏する。
【0082】
実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、アルカリ性にされているので、異物がさらに高い除去率で除去されるという効果を奏する。
【0083】
実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、H2ガス溶解水が、アンモニアを含むので、さらに高い除去率で粒子が除去されるという効果を奏する。
【0084】
実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、H2ガス溶解水が、微量のKOHでアルカリ性にされているので、異物がさらに高い除去率で除去されるようになる。
【0085】
実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、超音波処理を併用するので、フォトマスクの表面に付着する微粒子状の異物を効果的に除去することができるという効果を奏する。
【0086】
実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、超音波処理を併用するので、有機物および金属不純物が、さらに効率よく除去されるという効果を奏する。
【0087】
実施の形態のフォトマスクの洗浄方法においては、微粒子状の異物が、物理的に除去されやすくなるという効果を奏する。
【0088】
実施の形態のフォトマスクの洗浄装置においては、H2ガス溶解水を含む洗浄液で、フォトマスクの表面に付着している異物を除去するので、マスクから、高い除去率で異物を除去することができるという効果を奏する。
【0089】
実施の形態のフォトマスクの洗浄装置においては、超音波で処理することができるので、微粒子状の異物を効果的に除去することができるという効果を奏する。
【0090】
実施の形態のフォトマスクの洗浄装置においては、酸槽においても、超音波が送り込まれるので、洗浄効率が高められるという効果を奏する。
【0091】
実施の形態のフォトマスクの洗浄装置においては、異物除去槽にアンモニアを供給することができるので、異物を効果的に除去することができるという効果を奏する。
【0092】
実施の形態のフォトマスクの洗浄液は、H2ガス溶解水を含むので、異物を効果的に除去することができるという効果を奏する。
【0093】
実施の形態のフォトマスクの洗浄液によれば、アルカリ性にされているので、除去率がさらに高まるという効果を奏する。
【0094】
実施の形態のフォトマスクの洗浄液においては、アンモニアでアルカリ性にされているので、極めて低濃度のアンモニア量で洗浄効果を上げることができるという効果を奏する。
【0095】
実施の形態のMoSiON膜を形成したハーフトーン位相シフトフォトマスクの洗浄方法においては、透過率変動を管理基準以下に抑え、かつ洗浄効率を上げることができる。
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 CrON膜上のシリカ粒子の各薬液処理後の除去率をまとめたグラフ図である。
【図2】 超音波振動子を設置したオーバーフロー槽の概念図である。
【図3】 H2ガス溶解水の生成プロセスの概念図である。
【図4】 MoSiON膜の、アルカリ処理後の、透過率の変動量をまとめたグラフ図である。
【図5】 MoSiON膜上のアルミナ粒子の、各薬液処理後の、除去率をまとめたグラフ図である。
【図6】 マスク洗浄プロセスフローの概念図である。
【図7】 マスク洗浄装置の概念図である。
【図8】 水平にマスク基板を回転させる、マスク基板の洗浄方法の概念図である。
【図9】 ライン型のメガソニックノズルを使用した、マスク基板の洗浄方法の概念図である。
【図10】 レジスト除去処理後における、CrON膜上に残留した異物の検出数をまとめたグラフ図である。
【図11】 従来のマスク洗浄プロセスのフロー図である。
【符号の説明】
102 酸槽、103 異物除去槽、104 乾燥槽。

Claims (8)

  1. 硫酸と過酸化水素水の混合液を用いて、遮光膜としてMoSiON膜を有するハーフトーン位相シフトフォトマスクの表面に存在する有機物および金属不純物を除去する第1工程と、
    前記ハーフトーン位相シフトフォトマスクの表面に付着している異物を、H2ガスを溶解した純水に0.003%以上1%以下の濃度のアンモニアを添加してアルカリ性にされたH2ガス溶解水を用いて除去する第2工程と、
    前記ハーフトーン位相シフトフォトマスクを乾燥させる第3工程と、
    を備えた、MoSiON膜の遮光膜を有するハーフトーン位相シフトフォトマスクの洗浄方法。
  2. 前記第2の工程において、超音波処理を併用する、請求項1に記載の遮光膜としてMoSiON膜を有するハーフトーン位相シフトフォトマスクの洗浄方法。
  3. 前記第1の工程において、超音波処理を併用する請求項1に記載の遮光膜としてMoSiON膜を有するハーフトーン位相シフトフォトマスクの洗浄方法。
  4. 前記異物は、微粒子状の異物である、請求項1に記載の遮光膜としてMoSiON膜を有するハーフトーン位相シフトフォトマスクの洗浄方法。
  5. 遮光膜としてMoSiON膜を有するハーフトーン位相シフトフォトマスクの表面に存在する有機物と金属不純物を、硫酸と過酸化水素水の混合液である第1洗浄液で除去する酸槽と、
    前記ハーフトーン位相シフトフォトマスクの表面に付着している異物を、H2ガスを溶解した純水に0.003%以上1%以下の濃度のアンモニアを添加してアルカリ性にされたH2ガス溶解水を含む第2洗浄液で除去する異物除去槽と、
    前記ハーフトーン位相シフトフォトマスクの乾燥を行なう乾燥槽と、
    前記酸槽に前記第1洗浄液を供給する第1洗浄液供給手段と、
    前記第1洗浄液供給手段に設けられ、前記第1洗浄液の濃度および温度を制御する第1制御手段と、
    前記異物除去槽に前記第2洗浄液を供給する第2洗浄液供給手段と、
    前記第2洗浄液供給手段に設けられ、前記第2洗浄液の濃度および温度を制御する第2制御手段と、
    前記異物除去槽に設けられ、該異物除去槽内に、前記アンモニア水を供給するアンモニア水供給手段と
    を備えた、遮光膜としてMoSiON膜を有するハーフトーン位相シフトフォトマスクの洗浄装置。
  6. 前記異物除去槽には、該異物除去槽に超音波を送り込む超音波処理手段が設けられている、請求項5に記載の遮光膜としてMoSiON膜を有するハーフトーン位相シフトフォトマスクの洗浄装置。
  7. 前記酸槽には、該酸槽に超音波を送り込む超音波処理手段が設けられている、請求項5に記載の遮光膜としてMoSiON膜を有するハーフトーン位相シフトフォトマスクの洗浄装置。
  8. 2ガスを溶解した純水に0.003%以上1%以下の濃度のアンモニアを添加してアルカリ性にされたH2ガス溶解水を含む、遮光膜としてMoSiON膜を有するハーフトーン位相シフトフォトマスクの洗浄液。
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