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JP4477980B2 - X線検査装置、x線検査方法およびx線検査プログラム - Google Patents

X線検査装置、x線検査方法およびx線検査プログラム Download PDF

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Description

本発明は、X線検査装置、X線検査方法およびX線検査プログラムに関する。
従来より、この種のX線検査装置では、対象物にX線を照射し、透過X線を検出するとともに、当該検出した透過X線と理想的な対象物における透過X線とを比較することにより、対象物内の欠陥等を検出していた(例えば、特許文献1参照。)。
特開平2004−12407号公報
上述した従来のX線検査装置においては、自動車の部品として使用される鋳造製品など、比較的大きな製品において高精度に欠陥を検出することが困難であった。すなわち、従来のX線検査装置では、理想的な対象物(正常製品)における透過X線を示すデータを予め準備しているが、実際の検査対象と異なる製品における透過X線を基準としていることに起因して、高精度の検証が困難となる。より具体的には、鋳造製品内で不良の原因となる欠陥の大きさが、鋳造製品の大きさと比較してかなり小さいため、欠陥の大きさが鋳造製品の寸法誤差範囲となり得る。従って、理想的な対象物と実際の検査対象との差異が寸法誤差あるいは欠陥のいずれに起因するのかを確実に判断することができず、正確な良否判定が困難となる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、鋳造製品における欠陥を確実に検出することが可能なX線検査装置、X線検査方法およびX線検査プログラムの提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、鋳造製品を透過した透過X線に基づいて鋳造製品が無欠陥である場合の透過X線を算出し、当該算出した透過X線と実際に検出した透過X線とを比較して鋳造製品の欠陥を検出する。すなわち、鋳造製品を透過した透過X線と比較される比較対象は、実際の鋳造製品の透過X線に基づいて作成される。従って、検査対象の鋳造製品に標準的な鋳造製品と比較して寸法誤差が生じていたとしても、欠陥検出に際してこの寸法誤差は何ら影響を与えない。この結果、高精度に欠陥を検出することができる。
ここで、X線照射手段は鋳造製品にX線を照射することができれば良く、X線の照射方向に鋳造製品を配置し、X線が検査対象となる部位を透過するように構成すればよい。透過X線検出手段においては、鋳造製品を透過したX線を検出することができれば良く、種々の構成を採用することが可能である。例えば、X線をシンチレータで受け止め、可視化した後にCCDで可視光を受光する構成(X線イメージインテンシファイア)等を採用可能である。むろん、CCDが2次元的に配置されていても良いし、1次元的に配置されたCCDによってスキャンを行っても良い。
無欠陥X線算出手段は、鋳造製品が無欠陥である場合の透過X線を、実際に鋳造製品を透過した透過X線に基づいて算出することができれば良く、種々の構成を採用可能である。すなわち、鋳造製品内に欠陥が生じているとその部位におけるX線の吸収量が少なくなり、透過X線に空間的変化が生じるが、当該透過X線の空間的変化は、鋳造製品の厚みによる変化より急峻である。従って、欠陥によって透過X線が空間的に変化している部位を選択的に修正し、周りの空間的変化と同等の変化にすることにより、鋳造製品が無欠陥である場合の透過X線を算出することができる。
このような修正は、種々の手法によって行うことができ、透過X線量が欠陥に起因して変化している部分を検出し、当該欠陥に起因する変化をキャンセルすることによって実現することができる。より具体的には、透過X線の空間的変化に対してローパスフィルタを適用しても良いし、透過X線の空間的変化からその包絡線を形成しても良いし、透過X線の空間的変化に対して膨張/収縮処理を行っても良い。また、上記の何れかの組み合わせによって行っても良い。
ここで膨張処理とは、透過X線の空間的変化を示すプロファイルにおいて、欠陥に起因してプロファイルが変化している部分に着目し、その近傍から最大のプロファイル値を抽出し、着目しているプロファイル値を最大のプロファイル値で置き換える処理であって、プロファイルの微小な凹みを除去する処理である。収縮処理とは着目しているプロファイル値の近傍から最小のプロファイル値を抽出し、処理対象のプロファイル値を最小のプロファイル値で置き換える処理であり、上記膨張後のプロファイルを元の大きさに戻すことができる。尚、上述のように欠陥による透過X線の空間的変化は、鋳造製品の厚みによる変化より急峻であるので、両者を明確に区別することが可能であり、鋳造製品の内部に存在する欠陥のみならず、鋳造製品の表面に存在する欠陥も検出することが可能である。
欠陥検出手段においては、上記検出された透過X線と上記算出された無欠陥である場合の透過X線とを比較することで欠陥を検出することができればよい。すなわち、無欠陥である場合の透過X線と比較して所定の変化があれば欠陥であると判定することができる。例えば、両者の差分を取れば、検出された透過X線において、無欠陥である場合と比較して透過量が多かった部分を抽出することができるので、この透過量が所定の閾値を超える場合に欠陥であると判定することが可能である。
さらに、鋳造製品の欠陥を検出することで、鋳造製品の良否判定を行うことが可能である。このため、上記検出された欠陥と上記鋳造製品における所定の基準位置との距離を算出し、当該距離が所定の基準距離以上であるときに上記鋳造製品が良品であると判定する構成を採用することができる。すなわち、欠陥が存在することに起因して鋳造製品が破壊されることを想定すれば、破壊の原因となる欠陥が存在しなければその鋳造製品を良品とすることができる。
このような欠陥が存在するか否かは、鋳造製品に亀裂を生じさせ得る部位(所定の基準位置)と欠陥との距離によって評価することができるので、当該部位とその距離を予め決めておけば、鋳造製品が良品であるか否かを判定することが可能になる。このような所定の基準位置としては、欠陥が近くに存在することによって破壊の原因となり得る位置であれば良く、応力が集中する部位など鋳造製品における種々の位置にこの基準位置を設定することができる。
このような基準位置としては、他にも各種の位置に設定することができ、例えば、鋳造製品の輪郭に設定することが可能である。すなわち、欠陥と鋳造製品の輪郭が所定の基準距離以上離れていれば良品とすることができるが、所定の基準距離より離れていなければ破壊の原因になるとして不良とする。所定の基準距離は予め決められていれば良く、鋳造製品の大きさや材質、信頼性に鑑みて調整することができる。
また、鋳造製品の輪郭は、鋳造製品における端面や外面がこれに相当する。上記所定の基準位置が輪郭に設定されていることが決まっていれば、当該輪郭の特定の位置が所定の基準位置であると決定する必要はない。すなわち、鋳造製品の欠陥は鋳造製品の至る所に存在し得るが、この欠陥が輪郭との関係で破壊の原因になるか否かを評価するためには、欠陥の位置と鋳造製品の輪郭との最短距離を算出するのが好ましい。従って、当該最短距離を算出する場合には、欠陥の位置と鋳造製品の輪郭とを最短距離に相当する線分で結んだとき、この線分の輪郭側の端部が上記所定の基準位置となる。
さらに、正確な良否判定を行うため、欠陥の大きさを考慮しても良い。すなわち、判定手段において、上記検出された欠陥と上記鋳造製品における所定の基準位置との距離が上記所定の基準距離以下であり、かつ当該欠陥が所定の大きさ以上であるときに上記鋳造製品が不良品であると判定する。欠陥は鋳造製品における破壊の原因になり得るが、小さな欠陥であれば、破壊の原因から除外することも可能である。そこで、欠陥と上記所定の基準位置が所定の基準距離以下であり、かつ欠陥が所定の大きさ以上である場合に不良品とするのが好ましい。ここで、所定の大きさは予め決められていれば良く、鋳造製品の大きさや材質、信頼性に鑑みて調整することができる。
さらに、鋳造製品の品質を確保すると同時にX線検査における工程の増加を抑えるため、予め決められた位置を検査対象とする構成を採用しても良い。すなわち、X線照射手段において、上記鋳造製品とX線の照射領域との相対位置関係を調整する照射領域調整部を構成し、当該照射領域調整部により、上記鋳造製品において予め決められた領域が照射領域に位置するように調整する。ここで、予め決められた領域は、その領域に欠陥が存在することによって鋳造製品が破壊され得る領域である。この構成により、必要かつ充分な工程のみで鋳造製品の良否判定を実施することが可能になる。
さらに、上記検出された欠陥と上記鋳造製品における所定の基準位置との距離に基づいて鋳造製品の良否判定を行うにあたり、容易に正確な良否判定を行うための構成を採用することができる。例えば、透過X線の2次元分布を分析する構成において、欠陥の検出処理を行いやすいように透過X線画像を移動させる構成を採用可能である。
すなわち、透過X線検出手段において、透過X線の2次元分布を示す透過X線画像を検出すると、透過X線の2次元分布に基づいて欠陥の2次元分布を検出することが可能になるが、欠陥の2次元分布を検出した後には、この欠陥と所定の基準位置との相対関係を比較する必要がある。上記鋳造製品における所定の基準位置が任意の位置に存在するとすれば、この比較を行う際に当該所定の基準位置を検出する必要がある。
そこで、透過X線画像内で上記鋳造製品における所定の基準位置に相当する部位が予め決められた検査位置となるように、上記透過X線画像を移動させる。すなわち、2次元平面上で座標軸を固定した座標系を設定し、この座標系において固定的な検査位置を予め決定しておく。そして、この座標系に対して相対的に透過X線画像を移動させることによって、検査位置と上記鋳造製品における所定の基準位置とを重ね合わせる。この結果、欠陥と所定の基準位置との距離は常に同じ式によって算出することが可能になり、非常に容易に両者の距離を算出可能になる。
例えば、鋳造製品における所定の基準位置を鋳造製品におけるある端面に設定した場合、当該端面が常に特定の検査位置に存在するのであれば、上記座標系で常に同じ式によって端面の直線を表現することができる。従って、上記欠陥の位置をこの座標系の座標値で表現すれば、当該欠陥の座標値と上記端面の直線を示す式とを用いて常に同じ式によって両者の距離を算出することが可能である。以上のように透過X線画像を移動させる際には、2次元平面上でどのように移動させても良い。すなわち、2次元平面上で物体の様子は位置と配向角度によって表現されるので、これらの位置と配向角度のいずれかまたは双方を変更することによって画像を移動させることができる。
画像を移動させる際に好適な構成例として、テンプレートマッチングによって上記鋳造製品における所定の基準位置と上記検査位置との偏差を検出してもよい。すなわち、良品の鋳造製品における基準のX線画像を予め作成し、この画像と上記透過X線画像とを比較する。このとき、基準のX線画像における所定の基準位置と上記予め決められた検査位置とを一致させた状態を基準のX線画像の初期位置とし、上記2次元平面上で座標軸を固定した座標系で予め確定しておく。
そして、当該基準のX線画像をこの座標系で逐次移動して上記透過X線画像と一致するか否かを検出すれば、両者が一致するまでに上記基準のX線画像を移動させた移動量が、上記鋳造製品における所定の基準位置と上記検査位置との偏差に相当する。従って、この偏差を補償するように上記透過X線画像を移動させれば、透過X線画像内での上記所定の基準位置が予め決められた検査位置となるように、上記透過X線画像を移動させることが可能である。
さらに、上記検出された欠陥と上記鋳造製品における所定の基準位置との距離に基づいて鋳造製品の良否判定を行うにあたり、より正確な良否判定を行うため、鋳造製品とX線の照射領域との相対位置関係のずれを修正する構成を採用することができる。すなわち、X線照射手段に照射領域調整部を設け、上記鋳造製品とX線の照射領域との相対位置関係を調整できるように構成し、透過X線検出手段に位置ずれ検出部を設け、上記鋳造製品とX線の照射領域との相対位置関係のずれを検出する。そして、相対位置関係のずれが検出されたとき、上記照射領域調整部はこのずれを補償する調整を行う。
この結果、上記鋳造製品にX線が照射される際に配置されるべき所定の位置と実際の位置にずれが生じていても、その相対位置関係を修正してX線を照射することが可能であり、高精度に欠陥を検出し、また、良否判定を行うことが可能である。尚、2次元的な位置のずれは、上述のように透過X線画像を移動させることによって修正することが可能である。従って、上記透過X線画像における2次元平面に対して直交する方向にずれが生じているときに鋳造製品とX線の照射領域との相対位置関係を修正するのが好ましい。
位置ずれ検出部においては、鋳造製品とX線の照射領域との相対位置関係が予め決められた基準に対してずれていることを検出することができればよい。従って、このずれを検出するためのセンサを設けるなど種々の構成を採用可能であるが、その好ましい態様として透過X線画像に基づいてずれを検出する構成を採用可能である。すなわち、透過X線画像は、透過X線の2次元分布を示しているので、この2次元平面内でのずれを検出することが容易であるとともに、透過X線画像内の鋳造製品の像に基づいてこの2次元平面内に直交する方向へのずれを検出することも可能である。
例えば、上述のように良品の鋳造製品における基準のX線画像と上記透過X線画像とを比較するテンプレートマッチングを行うにあたり、両者の一致度が所定の基準を超えない場合に鋳造製品が透過X線画像における2次元平面に対して直交する方向にずれていると判定する。この方向へのずれを検出できれば、鋳造製品の姿勢を修正するなどして、ずれの影響を抑えた透過X線画像を取得し直すことが可能である。この結果、より正確に欠陥の検出と良否判定を実施することが可能になる。
さらに、欠陥の検出が困難である場合に、解析を行う際の条件を変更して再度欠陥の検出を行うことが可能である。すなわち、X線の照射条件と、上記透過X線検出手段におけるX線の検出条件と、無欠陥である場合の透過X線の算出手法と、鋳造製品とX線の照射領域との相対位置関係とのいずれかまたは組み合わせを調整できるように構成しておき、欠陥の検出が困難となる難検出条件が発生している場合にこの調整を行う。
難検出条件としては、種々の条件を想定可能であり、例えば、上記判定手段において上記検出された欠陥と上記鋳造製品における所定の基準位置との距離を上記所定の基準距離と比較するにあたり、算出された距離の測定バラツキを含めると、基準距離より遠いのか近いのかを判別できない場合がある。この場合は、欠陥の検出が困難であると言える。また、欠陥の位置により検出困難となる場合がある。すなわち、透過X線は鋳造製品の厚みを反映しているが、透過X線の厚みが大きく変化する部位に欠陥が存在する場合は、透過X線の変化が欠陥あるいは鋳造製品の厚みのいずれに起因するのか判別困難となる。従って、この場合も欠陥の検出が困難であると言える。
このように欠陥の検出が困難である場合、X線の照射条件、例えば、照射時間やX線のエネルギー等を変更すれば、S/N比を調整することができるので、上記測定バラツキを抑えることが可能になる。また、X線の検出条件、例えば、検出時の分解能を調整しても上記測定バラツキを抑えることが可能である。さらに、上記無欠陥X線算出手段における透過X線の算出手法を変更すれば、無欠陥である場合の透過X線として算出される結果が異なるので、判別しづらかった欠陥を容易に判別できるようにすることも可能である。
さらに、上記照射領域調整部によって設定される上記相対位置関係を変動することにより、鋳造製品の姿勢を変更することができるので、欠陥が判別しやすいように鋳造製品を配向させることができる。すなわち、透過X線では鋳造製品の2次元的な厚みを反映した情報が得られるので、ある姿勢の鋳造製品にX線を照射した場合に欠陥が検出困難であっても、鋳造製品の姿勢を変えてX線を照射すれば、欠陥を検出容易な位置に移動させることが可能である。
以上は、本発明が装置として実現される場合について説明したが、かかる装置を実現する方法においても本発明を適用可能である。その一例として、請求項1に対応した方法を実現する構成としてもよい。むろん、その実質的な動作については上述した装置の場合と同様である。また、請求項2〜請求項に対応した方法も構成可能である。このようなX線検査装置は単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。従って、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。
発明の思想の具現化例として上記方法を制御するためのソフトウェアとなる場合には、かかるソフトウェアあるいはソフトウェアを記録した記録媒体上においても当然に存在し、利用される。その一例として、請求項1に対応した機能をソフトウェアで実現する構成としてもよい。むろん、請求項2〜請求項に対応したソフトウェアも構成可能である。


また、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。一次複製品、二次複製品などの複製段階については全く問う余地無く同等である。その他、供給装置として通信回線を利用して行なう場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態のものとしてあってもよい。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)本発明の構成:
(2)X線検査処理:
(3)検査位置修正処理:
(4)良否判定処理:
(5)他の実施形態:
(1)本発明の構成:
図1は本発明にかかるX線検査装置の概略ブロック図である。同図において、このX線検査装置は、X線撮像機構部10とX線撮像制御部20とから構成されている。X線撮像機構部10は、X線発生器11と位置決め機構12とX線検出器13とを備えている。X線撮像制御部20は、X線制御部21と位置決め機構制御部22と透過X線画像取得部23とCPU24と入力部25と出力部26とメモリ27とを備えている。この構成において、CPU24は、メモリ27に記録された図示しないプログラムを実行し、各部を制御し、また所定の演算処理を実施することができる。
メモリ27はデータを蓄積可能な記憶媒体であり、予め閾値データ27aと検査部位データ27bと撮像条件データ27cと基準X線画像データ27dとが記録されている。閾値データ27aは、後述の処理で参照される各種の閾値を示すデータであり、予め決定されメモリ27に記録される。検査部位データ27bは、検査対象となる鋳造製品において欠陥を検出すべき部位を示すデータである。撮像条件データ27cは、X線発生器11にてX線を発生させる際の条件を示すデータであり、X線管に対する印加電圧,撮像時間等を含む。基準X線画像データ27dは、後述する検査位置修正処理において参照されるX線画像データであり、鋳造製品12aの各検査部位をX線の照射領域に正確に配置して透過X線画像を生成した場合の画像データである。尚、メモリ27はデータを蓄積可能であればよく、RAMやEEPROM,HDD等種々の記憶媒体を採用可能である。
X線制御部21は、上記撮像条件データ27cを参照し、X線発生器11を制御して所定のX線を発生させることができる。位置決め機構制御部22は位置決め機構12と接続されており、同位置決め機構12を制御する。位置決め機構12は、多軸ロボットであって鋳造製品12aをクランプし、鋳造製品12aを所望の位置に配置し、所望の姿勢とする。本実施形態における多軸ロボットは、少なくとも鋳造製品12aを所望の位置に搬送する作業と、その姿勢を変更する作業とを実施できるように構成されている。また、位置決め機構制御部22は、上記メモリ27に蓄積されている検査部位データ27bを参照し、鋳造製品12aにおける指定された部位がX線の照射領域に含まれるように鋳造製品12aを搬送することができる。
透過X線画像取得部23はX線検出器13と接続されており、同X線検出器13が出力する検出値によって鋳造製品12aを透過したX線の強度を検出する。本実施形態におけるX線検出器13は、2次元的に分布したセンサを備えており、検出したX線からX線の2次元分布を示す透過X線画像データを生成することができる。尚、本実施形態において透過X線画像取得部23は、X線の強度を濃淡で表現し、強度が弱いほど明るくなるように画像処理を行っている。
出力部26はCPU24での上記透過X線画像等を表示するディスプレイであり、入力部25は利用者の入力を受け付ける操作入力機器である。すなわち、利用者は入力部25を介して種々の入力を実行可能であるし、CPU24の処理によって得られる種々の演算結果や透過X線画像データ、鋳造製品12aの良否判定結果等を出力部26に表示することができる。
CPU24は、メモリ27に蓄積された各種制御プログラムに従って所定の演算処理を実行可能であり、鋳造製品12aの欠陥検査および良否判定を行うために、図1に示す検査位置修正処理部24aとモデル画像算出部24bと欠陥検出部24cと良否判定部24dの演算を実行する。検査位置修正処理部24aは、位置決め機構12による位置制御ずれを補償するための処理を行う。モデル画像算出部24bは、透過X線画像取得部23が取得する透過X線画像データに基づいて、鋳造製品12aが無欠陥である場合の透過X線画像(以下においてはモデル画像と呼ぶ)を示すモデル画像データを生成する。欠陥検出部24cは、上記透過X線画像データとモデル画像データとの差分に基づいて鋳造製品12aにおける欠陥を検出する。良否判定部24dは、当該検出した欠陥に基づいて鋳造製品12aが良品であるか、不良品であるかを判定する。
(2)X線検査処理:
本実施形態においては、上述の構成において図2に示すフローチャートに従って欠陥の検出および鋳造製品の良否判定を行う。位置決め機構12において鋳造製品12aをクランプさせ、検査処理を開始すると、ステップS100では、CPU24が上記検査部位データ27bを取得し、位置決め機構制御部22に受け渡す。位置決め機構制御部22は上記検査部位データ27bを参照し、鋳造製品12aにおいて予め決められた複数の検査部位のうちの一カ所がX線の照射領域に位置するようセットする。
ステップS100にて検査部位の一カ所をX線の照射領域にセットすると、CPU24はステップS105にて上記撮像条件データ27cを取得し、X線制御部21に受け渡す。X線制御部21はこの撮像条件データ27cに従ってX線発生器11での条件設定を行い、X線を照射させる。ステップS105の設定によって照射されたX線は鋳造製品12aを透過してX線検出器13に到達する。そこで、CPU24は、透過X線画像取得部23を制御し、透過X線画像データを取得する。
上記ステップS100において鋳造製品12aがセットされる位置は予め検査部位データ27bによって決められているが、位置決め機構12による制御精度や鋳造製品12aにおける製品バラツキにより、総ての鋳造製品12aにおいて検査部位が特定の位置に精度良くセットされるとは限らない。そこで、ステップS110においてこのような位置ずれの影響を解消するため、検査位置修正処理を行う。この結果、検査部位が高精度で特定の位置に配置されることは要求されなくなり、位置決め機構12を簡易な構成とすることが可能になる。尚、検査位置修正処理の詳細については後述する。
以上の検査位置修正処理によって、必要に応じて位置精度の補償を行った後には、撮影した透過X線画像データの一部が解析対象として切り出されている。図3は、円筒形のボスをX線で撮像した画像を切り出した場合の例を説明する説明図であり、以後、この例に即して図2に示す処理を説明する。図3のAは、円筒形のボスを円筒軸に直交する方向から撮像して得られる透過X線画像の一部を模式的に示している。透過X線画像では、鋳造製品の厚みが厚いほど透過X線量が少なくなり、本実施形態では上述のようにX線量が少ないほど明るくなるように画像を作成している。
従って、円筒形のボスを円筒軸に直交する方向から撮像すると、中空部分に相当する中央部分がその左右部分より暗くなる。図3Aの右側には、位置Pにおける透過X線画像の1次元変化を示しており、このグラフに示すように、中央では透過X線量が多く、その左右では透過X線量が少なくなる。また、鋳造製品12aに欠陥が存在すると、欠陥を透過する際にX線が吸収されないため、周りに比較して透過X線量が多く(暗く)なる。すなわち、透過X線画像においては、図3Aあるいは対応するグラフに示すVのような画像が形成される。
このような透過X線画像が切り出されている状況において、CPU24はステップS115でモデル画像算出部24bにおける処理を実行し、モデル画像データを作成する。すなわち、透過X線画像においては、鋳造製品12aにおける厚みの変化より急峻な変化を含んでおり、この変化を低減して均一化することによって、欠陥がない場合、すなわち鋳造製品12aの厚み変化のみを反映した場合のモデル画像を作成する。この処理は各種の処理を採用することが可能であり、図3Aに示す透過X線画像に対してローパスフィルタを適用しても良いし、透過X線画像の空間的変化からその包絡線を形成しても良いし、透過X線の空間的変化に対して上述の膨張/収縮処理を行っても良い。
図3Bは図3Aから作成したモデル画像を示している。図3Bの右側には、位置Pにおけるモデル画像の1次元変化を示している。このように、モデル画像においては、欠陥による影響も含めて空間的変化が均一化されて滑らかな変化となっている。そこで、このモデル画像と実際に撮像した透過X線画像との差分を算出すれば、透過X線画像の急峻な変化のみを抽出することができる。そこで、CPU24は欠陥検出部24cにおける処理を実行し、ステップS120でモデル画像データと透過X線画像データとの差分を算出する。
図3Cはこのようにして得られたデータを示している。この図に示すように、差分の結果においては、透過X線画像データの変動を反映して複数の位置で有限の差分結果が得られる。そこで、本実施形態においては、予め閾値Tを設定しておき、差分結果の中で閾値を超える大きさの値を持つ位置に欠陥が生じていたとする。このため、欠陥検出部24cは、ステップS125において、上記差分結果の中で有限の値を持つ位置を抽出し、各位置の差分値と閾値Tとを比較する。そして、閾値Tを超える位置については”1”、閾値Tを超えない位置および差分値が”0”以下となっている位置については”0”として、画像を2値化する。尚、閾値Tは上記閾値データ27aとして予め決められている。
図3Dは、この結果得られた2値化画像である。欠陥検出部24cは、さらに、この2値化画像を参照し、ステップS130にて欠陥のサイズと位置を計測する。すなわち、2値化画像において”1”となっている画素の位置から欠陥の位置を取得し、2値化画像において”1”となっている画素の最大径を欠陥サイズとして取得する。このように、本発明においては、実際に測定した透過X線画像のみを用いて欠陥を検出しており、鋳造製品12aを鋳造する際の寸法誤差や透過X線画像とモデル画像との位置ずれに影響されることなく、欠陥を検出することができる。
すなわち、仮に予め作成したモデル画像と実測した透過X線画像とを比較するとすれば、モデル画像と透過X線画像とで対応する位置を正確に特定する必要があり、ずれなく両者の対応位置を特定するのは困難である。また、予めモデル画像を作成するのであれば、鋳造製品12aの良品に基づいて平均的な画像を作成せざるを得ず、個々の鋳造製品12aにおける寸法誤差を反映するのは不可能である。従って、予め作成したモデル画像を利用して精度良く欠陥を検出するのは困難である。しかし、本発明では実際に測定した透過X線画像から生成しているので、非常に高精度に欠陥を検出することができる。
欠陥のサイズと位置とを計測すると、CPU24はステップS135で良否判定部24dにおける処理を実行し、鋳造製品12aの良否判定を行う。尚、良否判定の詳細については後述する。また、上述のように、実測した透過X線画像に基づいて欠陥を検出することによって、高精度に欠陥を検出すると、当該良否判定の精度を著しく向上させることができる。すなわち、良否判定においては、後述するように、鋳造製品12aにおける所定の基準位置と欠陥との距離に基づいて良否を判定しているので、欠陥の位置が正確でなければ良否判定を正確に行うことができないが、本実施形態では欠陥の位置を正確に特定しているので、良否判定精度も非常に高精度となる。
以上のように、良否判定を実施した後、CPU24は、ステップS140にて上記検査部位データ27bを参照し、予め決められた総ての検査部位について欠陥の有無を検査し、良否判定を行ったか否かを判別する。同ステップS140にて総ての検査部位について検査および良否判定を行ったと判別されたときには、ステップS100において未検査の検査部位を照射領域へセットし、ステップS105以降の処理を繰り返す。
(3)検査位置修正処理:
次に、上記ステップS110における検査位置修正処理について詳述する。図4は検査位置修正処理部24aが実施する検査位置修正処理のフローチャートである。この検査位置修正処理においては、上記基準X線画像データの一部を位置決め領域として抽出し、この位置決め領域と実測した透過X線画像とでテンプレートマッチング処理を行うことにより、透過X線画像におけるずれを検出する。この処理は、メモリ27内に予め確保されたバッファに基準X線画像データと透過X線画像データとを記憶しながら行われる。
図5の上段は、基準X線画像データの例を示しており、外側の矩形はバッファの大きさを示している。本来、X線画像は濃淡の画像となるべきであるが、図5においてはその形状が分かり易いように模式的な像を示しており、図5に示す例は、円筒状のボスBoにフランジ状の部位Fと補強部材Rとが連結されている鋳造製品12aの基準X線画像である。尚、このバッファには予め所定の座標軸が設定されており、画像内の各画素の位置を座標で特定することができる。本実施形態においては、鋳造製品12aの左側および下側の端面がそれぞれy軸とx軸とに重なるようになっており、鋳造製品12aが精度良くX線の照射領域に配置されている場合には、このような透過X線画像データが得られることを示している。
図5の下段は、実測した透過X線画像データの例を示している。ここでも外側の矩形はバッファの大きさを示しており、基準X線画像データを記憶しているバッファと同じ容量である。また、図5の上段と同様にx軸とy軸とが設定されている。図5の下段においては鋳造製品12aがx軸とy軸とに対して傾いており、また、左側の端面と下側の端面も軸と一致していない。従って、鋳造製品12aとX線の照射領域との相対位置関係が上述の基準X線画像データと比較してずれている。
検査位置修正処理は、このようなずれを補償して透過X線画像データにおいても鋳造製品12aの透過X線画像とx軸,y軸との相対関係が図5の上段に示すような関係になるよう修正する処理である。この処理を行うため、ステップS200では、検査位置修正処理部24aが上記基準X線画像データ27dを参照し、上記ステップS105にて撮像対象となっていた検査部位に対応する基準X線画像データを抽出してバッファに記憶する。そして、その一部を抽出して位置決め領域として設定する。
ここで、位置決め領域は基準X線画像データと実測した透過X線画像データとを比較するために抽出されれば良く、基準X線画像データにおいて鋳造製品12aの像として特徴的な部位を抽出すればよい。図5の上段に示す例では鋳造製品12aの上部右側に示す矩形T1が位置決め領域である。本実施形態では、この位置決め領域を逐次回転させながら透過X線画像データ内でテンプレートマッチング処理を行う。
そこで、ステップS205では、角度を定義するための変数θに初期の開始角(例えば0°)を設定し、ステップS210では基準X線画像データに対して当該変数θに相当する角度の回転を行う。そして、ステップS215では、回転後の位置決め領域T1に対して外接する矩形を、テンプレートマッチング処理における基準となるテンプレートT2として登録する。図5の中段にはこの様子を示している。すなわち、破線で示す位置決め領域T1がθ回転したとき、この位置決め領域T1に外接する矩形は一点鎖線のように定義することができる。そこで、この一点鎖線に含まれる基準X線画像データをテンプレートT2として登録する。
ステップS220では、当該テンプレートT2によって透過X線画像データをスキャンし、テンプレートマッチング処理を行う。各スキャン位置では、テンプレートT2内の基準X線画像データとスキャン対象となっている透過X線画像データとの一致度を示すスコアSを算出する。スコアSは、両者の一致度を評価するための指標であれば良く、本実施形態においては、両者が一致しているほど数値が大きくなるように設定される。例えば、両画像データの差分を算出し、差分の和の逆数をスコアSとするような構成を採用可能である。また、スキャン範囲は必要充分な範囲を設定することができれば良く、透過X線画像データの全範囲をスキャン範囲とする必要はない。
各位置におけるスコアSを算出した後、ステップS225においては、スコアSの中から最大値を抽出し、そのときのテンプレートT2の位置Xθ,Yθをメモリ27に一時記憶する。また、そのときのスコアをスコアSθとしてメモリ27に一時記憶する。すなわち、テンプレートT2と透過X線画像とが最も一致する位置とスコアとを回転角θに対応づけながら記憶する。尚、テンプレートT2の位置としては、位置を特定することができればテンプレートT2内のどの位置であっても良いが、例えば、テンプレートT2の中心位置を示す座標等を採用可能である。
ステップS230では、変数θが予め設定された最大回転角に達しているか否かを判別し、同ステップS230にて変数θが予め設定された最大回転角に達していると判別されない場合には、ステップS235にて現在の角度θに対して予め決められたステップ角度を加え、これを新たな角度θとしてステップS210以降の処理を繰り返す。
ステップS230にて変数θが予め設定された最大回転角に達していると判別されたときには、テンプレートマッチング処理のスコアが許容範囲であるか否か、すなわち、測定した鋳造製品12aの姿勢ずれが許容範囲であるか否かを判別する。尚、X線検出器13において検出する2次元平面内でのずれは、後述する画像の移動によって補償することができるので、ここでは当該2次元平面に直交する方向へずれが生じているか否かを判別する。このため、ステップS240では、各角度におけるスコアSθの最大値が所定の閾値以下であるか否かを判別する。この閾値は、スコアSθの下限を示しており、予め決められるとともに閾値データ27aとしてメモリ27に記録されている。
図6は、鋳造製品12aの姿勢によって良否判定の精度が低下し得ることを説明するための説明図である。図6に鋳造製品12aは、位置決め機構12によって配置されるべき理想的な位置Iに対して角度αだけ傾いている。この場合、鋳造製品12aの透過X線画像データは、図6の下段に実線で示すように両端がなだらかに変化する。一方、鋳造製品12aが理想的な位置Iに配置されている場合、その透過X線画像データは、図6の下段に破線で示すように両端の変化が急峻である。
本実施形態においては、後述するように鋳造製品12aの端面から欠陥までの距離に基づいて鋳造製品12aの良否判定を行う。図6の下段に破線で示すように両端の変化が急峻であると端面の位置を正確に特定することができるが、実線で示すように端面による影響が範囲Eにまたがって存在すると、端面の位置を正確に特定することができない。従って、良否判定を正確に行うことができない。
そこで、上述のようにスコアSθの下限を設定することで、鋳造製品12aが理想的な位置Iに位置し、理想的な姿勢であったか否かを判定することにしている。すなわち、理想的な位置Iと異なる位置で透過X線画像を撮像すれば、テンプレートマッチング処理を行ったとしても良いスコアSが得られないはずである。これを利用し、テンプレートマッチング処理のスコアSθの最大値と閾値とを比較することによって測定した鋳造製品12aの姿勢が許容範囲であるか否かを判別している。
ステップS240にて各角度におけるスコアSθの最大値が所定の閾値以下であると判別されたときには、ステップS245にてCPU24が位置決め機構制御部22に指示を出し、鋳造製品12aの姿勢を変更する。そして、図2に示すステップS105以降の処理を繰り返す。ステップS240にて各角度におけるスコアSθの最大値が所定の閾値以下であると判別されないときには、ステップS250においてスコアSθが最大となっている角度θを取得し、移動角を示す変数θmaxとしてメモリ27に一時記憶する。
ステップS255では、以上のようにして取得した角度θmaxと位置Xθ,Yθに基づいて、透過X線画像を移動させる。すなわち、透過X線画像を”−θmax”回転させ、さらにx軸方向に”−Xθ”、y軸方向に”−Yθ”移動させる。これにより、図5の下段に示すようにx軸とy軸とに対して傾いている鋳造製品12aの像を図5の上段に示すような状態にすることができる。このように、2次元平面内で鋳造製品12aの像におけるずれを補償した後には、ステップS260において、予め決められた検査対象の領域内の画像を切り出して図2のステップS115以降の処理に復帰する。
(4)良否判定処理:
次に、上記ステップS135における良否判定処理について詳述する。図7は良否判定部24dが実施する良否判定処理のフローチャートである。良否判定を行う際には、透過X線画像から検査対象の領域内の画像が切り出され、さらに、当該切り出された画像内で、欠陥と欠陥以外の部位とを示す2値化画像が得られている。そこで、この欠陥と鋳造製品12aにおける所定の基準位置との距離を算出して良否判定を行う。本実施形態においては、当該所定の基準位置として鋳造製品12aの端面を採用している。
図8は、上記図5に示すような鋳造製品12aにおける画像の切り出しと、2値化画像を示す図である。すなわち、上記位置修正処理によって透過X線画像が回転され、図8の上段に示すように鋳造製品12aの端面がy軸とx軸とに重なるように配置されると、予め決められた検査対象の領域内の画像が切り出される。図8の上段においては、太線の矩形でこの領域を例示している。この像に対してステップS115〜S130の処理が実施されると、図8の下段に示すように欠陥が抽出された2値化画像となる。
ステップS300では、このような2値化画像に基づいて欠陥の輪郭を算出する。すなわち、2値化画像において”1”と”0”とが隣接するような総ての画素を抽出し、各画素の位置を(XE(t),YE(t))として一時記憶する。輪郭の画素が抽出されると、ステップS305において各画素の位置(XE(t),YE(t))から端面ラインまでの距離D(t)を算出する。端面ラインの位置は予め決められているので、端面ラインの式は固定的であり、各画素の位置と端面ラインとの距離D(t)は、予め決められた式で算出することができる。
端面ラインは、上記検査対象の領域を示す矩形の一辺であり、図8の下段においては、2値化画像の上辺と一致する直線Y=Coである。各画素の位置(XE(t),YE(t))から端面ラインまでの距離D(t)を算出すると、ステップS310にてこれらの距離D(t)のうち、最小値D(t)minを抽出する。また、ステップS315にて欠陥の最大径Raを算出する。例えば、各画素同士の距離を計算し、その最大値を最大径Raとする。
次に、ステップS320では、難検出条件を満たしているか否かを判別する。ここで、難検出条件は上記D(t)minと欠陥の輪郭位置(XE(t),YE(t))とについて予め設定されている。すなわち、後の処理によってD(t)minが所定の閾値以上であるか否かを判別するが、ここで、距離D(t)の測定バラツキを考慮したときに、閾値以上であるか否かが不明となる場合がある。そこで、この場合は、ステップS325において検査条件を変更し、ステップS105以降の処理を繰り返す。
また、鋳造製品12aの厚みが大きく変化する部位と欠陥の輪郭位置(XE(t),YE(t))とが重なっている場合には、透過X線画像の変化が欠陥に起因するのかあるいは鋳造製品12aの厚み変化に起因するのかが判別しづらくなる。そこで、鋳造製品12aの厚みが大きく変化する部位と欠陥の輪郭位置(XE(t),YE(t))とが重なっている場合にもステップS325において検査条件を変更し、ステップS105以降の処理を繰り返す。尚、鋳造製品12aの厚みが大きく変化する部位としては、図3Aに示すRtなどが該当する。
ここで、変更対象となる検査条件としては、種々の条件を採用可能である。例えば、X線発生器11におけるX線の照射時間やX線のエネルギー等を変更しても良いし、X線検出器13における検出時の分解能を調整してもよい。さらに、モデル画像算出部24bにおけるモデル画像の算出手法を変更しても良い。すなわち、モデル画像の算出手法としては、画像の品質等に応じてローパスフィルタを用いる手法や透過X線画像の空間的変化からその包絡線を形成する手法、透過X線の空間的変化に対して膨張/収縮処理を適用する手法等を選択可能であるので、この手法を変更する。
さらに、位置決め機構制御部22に指示を行い、鋳造製品12aの姿勢を変更しても良い。この変更は、鋳造製品12aの厚みが大きく変化する部位と欠陥の輪郭位置(XE(t),YE(t))とが重なっている場合に適用して好適である。例えば、欠陥が上述のRtに存在する場合、図3に示す例は、円筒形のボスの透過X線画像であるが、この円筒軸に対してボスを回転させるように姿勢を変更すれば、欠陥を判別しやすい位置に変更することが可能になる。
ステップS320において難検出条件を満たしていると判別されない場合には、ステップS330において、上記最小値D(t)minが所定の閾値以上であるか否かを判別する。ステップS330において、最小値D(t)minが所定の閾値以上であると判別されないときには、さらに、ステップS335にて欠陥の最大径Raが所定の閾値以上であるか否かを判別する。ステップS335にて最大径Raが所定の閾値以上であると判別されたときには、ステップS340にて鋳造製品12aが不良品であると判定する。
すなわち、ある閾値以上の大きさの欠陥が端面ラインに対してある許容範囲より近くに存在するときに、欠陥が鋳造製品12aの破壊の原因になるとし、不良品であると判定する。ステップS330で最小値D(t)minが所定の閾値以上であると判別されたとき、または、ステップS335にて最大径Raが所定の閾値以上であると判別されないときには、ステップS345にて鋳造製品12aが良品であると判定する。尚、ステップS330,S335における閾値は、予め特定され、閾値データ27aとしてメモリ27に記録されている。
(5)他の実施形態:
本発明においては、実測した透過X線画像に基づいてモデル画像を作成して欠陥を検出し、また、欠陥と鋳造製品における所定の基準位置との距離に基づいて良否判定をすることができれば良く、上述の実施形態のような構成が必須というわけではない。例えば、位置決め機構12による位置決め精度が良く、X線検出器13において作成する2次元画像に直交する方向のずれが良否判定の精度に影響を与えないのであれば、上記ステップS240,S245を省略することができる。
また、良否判定に際して予め検査対象の領域を決めておく構成が必須というわけではない。例えば、透過X線画像データ内で鋳造製品における所定の基準位置となる端面等を検出し、画像内で端面を示す直線を決定すれば、この直線と欠陥との距離を算出することが可能である。従って、この処理を採用するのであれば、ステップS200〜S260のような検査位置修正処理は不要である。
さらに、欠陥検出の精度が高く、良否判定精度が高い場合には、上述のように難検出条件であるか否かを検出し検査条件を変更するような処理は必須ではなく、ステップS320,S325を省略することもできる。さらに、良否判定を行う際の基準も上述のような基準に限られない。例えば、欠陥と端面との距離と欠陥の大きさの双方に基づいて良否判定を行うことが必須ではなく、欠陥と端面との距離に基づいて良否判定を行っても良い。また、鋳造製品における所定の基準位置も端面に限らず、応力が集中するような特定の部位であっても良い。
本発明にかかるX線検査装置の概略ブロック図である。 X線検査処理のフローチャートである。 透過X線を解析する様子を説明する説明図である。 検査位置修正処理のフローチャートである。 検査位置修正処理において画像を修正する様子を説明する説明図である。 良否判定の精度が低下し得ることを説明するための説明図である。 良否判定処理のフローチャートである。 良否判定を行う際の例を示す図である。
符号の説明
10…X線撮像機構部
11…X線発生器
12…位置決め機構
12a…鋳造製品
13…X線検出器
20…X線撮像制御部
21…X線制御部
22…位置決め機構制御部
23…透過X線画像取得部
24…CPU
24a…検査位置修正処理部
24b…モデル画像算出部
24c…欠陥検出部
24d…良否判定部
25…入力部
26…出力部
27…メモリ
27a…閾値データ
27b…検査部位データ
27c…撮像条件データ
27d…基準X線画像データ

Claims (11)

  1. X線を鋳造製品に照射するX線照射手段と、
    上記鋳造製品を透過した透過X線の強度を検出する透過X線検出手段と、
    同検出された透過X線の強度に基づいて上記鋳造製品が無欠陥である場合の透過X線の強度を算出する無欠陥透過X線強度算出手段と、
    上記検出された透過X線の強度と上記算出された無欠陥である場合の透過X線の強度とを比較して上記鋳造製品の欠陥を検出する欠陥検出手段と
    上記検出された透過X線の強度に基づいて、上記検出された欠陥と、上記鋳造製品において欠陥が所定の基準距離より近くに存在することによって破壊の原因となり得る所定の基準位置と、の距離を算出し、当該距離が上記所定の基準距離以上であるときに上記鋳造製品が良品であると判定する判定手段と、
    を備えることを特徴とするX線検査装置。
  2. 上記無欠陥透過X線強度算出手段は、透過X線の強度が欠陥に起因して変化している部分を検出し、当該欠陥に起因する変化をキャンセルすることによって上記鋳造製品が無欠陥である場合の透過X線の強度を算出することを特徴とする上記請求項1に記載のX線検査装置。
  3. 上記所定の基準位置は、鋳造製品の輪郭に設定されることを特徴とする上記請求項1または請求項2のいずれかに記載のX線検査装置。
  4. 上記判定手段は、上記検出された欠陥と上記鋳造製品における所定の基準位置との距離が上記所定の基準距離以下であり、かつ当該欠陥が所定の大きさ以上であるときに上記鋳造製品が不良品であると判定することを特徴とする上記請求項1〜請求項のいずれかに記載のX線検査装置。
  5. 上記X線照射手段は、上記鋳造製品とX線の照射領域との相対位置関係を調整する照射領域調整部を備え、上記鋳造製品において予め決められた領域を照射領域に配置してX線を照射することを特徴とする上記請求項1〜請求項のいずれかに記載のX線検査装置。
  6. 上記透過X線検出手段は透過X線の強度の2次元分布を示す透過X線画像を生成し、上記判定手段は当該透過X線画像内で上記鋳造製品における所定の基準位置に相当する部位が予め決められた検査位置となるように、上記透過X線画像を移動させることを特徴とする上記請求項1〜請求項のいずれかに記載のX線検査装置。
  7. 良品の鋳造製品における基準のX線画像を予め作成しておき、上記判定手段は当該基準のX線画像と上記透過X線画像とを比較することによって、上記鋳造製品における所定の基準位置と上記検査位置との偏差を検出することを特徴とする上記請求項に記載のX線検査装置。
  8. 上記X線照射手段は上記鋳造製品とX線の照射領域との相対位置関係を調整する照射領域調整部を備え、上記透過X線検出手段は上記鋳造製品とX線の照射領域との相対位置関係のずれを検出する位置ずれ検出部を備え、当該位置ずれ検出部によって相対位置関係のずれが検出されたときに上記照射領域調整部はこのずれを補償する調整を行うことを特徴とする上記請求項1〜請求項のいずれかに記載のX線検査装置。
  9. 上記位置ずれ検出部は、検出した透過X線の強度の2次元分布を示す透過X線画像を生成し、良品の鋳造製品における基準のX線画像と上記透過X線画像とを比較して両者の一致度が所定の基準を超えない場合に上記鋳造製品が上記2次元分布を形成する平面に対して直交する方向にずれていると判定することを特徴とする上記請求項に記載のX線検査装置。
  10. 鋳造製品の欠陥を検出するX線検査方法であって、
    X線を鋳造製品に照射するX線照射工程と、
    上記鋳造製品を透過した透過X線の強度を検出する透過X線検出工程と、
    同検出された透過X線の強度に基づいて上記鋳造製品が無欠陥である場合の透過X線の強度を算出する無欠陥透過X線強度算出工程と、
    上記検出された透過X線の強度と上記算出された無欠陥である場合の透過X線の強度とを比較して上記鋳造製品の欠陥を検出する欠陥検出工程と、
    上記検出された透過X線の強度に基づいて、上記検出された欠陥と、上記鋳造製品において欠陥が所定の基準距離より近くに存在することによって破壊の原因となり得る所定の基準位置と、の距離を算出し、当該距離が上記所定の基準距離以上であるときに上記鋳造製品が良品であると判定する判定工程と、
    を備えることを特徴とするX線検査方法。
  11. X線を鋳造製品に照射するX線照射手段と、
    上記鋳造製品を透過した透過X線の強度を検出する透過X線検出手段とを備えるX線検査装置を制御するコンピュータにおいて、
    上記透過X線検出手段によって検出された透過X線の強度に基づいて上記鋳造製品が無欠陥である場合の透過X線の強度を算出する無欠陥透過X線強度算出機能と、
    上記透過X線検出手段によって検出された透過X線の強度と、上記算出された無欠陥である場合の透過X線の強度とを比較して上記鋳造製品の欠陥を検出する欠陥検出機能と、
    上記検出された透過X線の強度に基づいて、上記検出された欠陥と、上記鋳造製品において欠陥が所定の基準距離より近くに存在することによって破壊の原因となり得る所定の基準位置と、の距離を算出し、当該距離が上記所定の基準距離以上であるときに上記鋳造製品が良品であると判定する判定機能と、
    を実現することを特徴とするX線検査プログラム。
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